説明

車両シート継手を作る方法

車両シート継手を作る方法において、滑り軸受ブッシュ(28)が軸方向において第1継手部分(11)のレセプタクルに圧入される。圧入される滑り軸受ブッシュ(28)は、径方向に突出する固定領域(28b)を有する。固定領域(28b)は圧入の操作の前又は後に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有する車両シート継手を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1継手部分のレセプタクルに滑り軸受ブッシュを挿入する方法が開示されている。この目的のため、第1ステップでは、第1継手部分がツールのホルダに締め付けられ、滑り軸受ブッシュが当該ツールの心金に配置される。第2ステップでは、滑り軸受ブッシュが、心金とホルダとの相対的な動きによって第1継手部分のレセプタクルに圧入される。滑り軸受ブッシュの外部寸法は、締りばめを背景として、第1継手部分のレセプタクルの内部寸法よりもわずかに大きくなるように選択される。その結果、心金の動きに対する滑り軸受の後方端部に集まる材料が変位して軸方向固定の機能を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第4411214(C2)号明細書
【特許文献2】独国特許第19548809(C1)号明細書
【特許文献3】独国特許第102007010078(B4)号明細書
【特許文献4】米国特許第6,799,806号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第4436101(A1)号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、導入部で述べたタイプの方法を改善することにある。本目的は、請求項1の特徴を有する継手による本願発明に従って達成される。有利な実施例が下位請求項の主題を形成する。
【0005】
滑り軸受ブッシュの(第2継手部分から離れる)軸方向変位に対する軸方向固定の機能を果たす滑り軸受ブッシュの固定領域を形成することは、当該軸方向固定が圧入操作により達成されることがない、すなわち公差から独立するようになる、という利点を有する。わずかに大きな滑り軸受ブッシュと第1継手部分のわずかに小さいレセプタクルとの径方向の重なりを小さく維持することができる。これにより、圧入の操作中に力を使うことが低減される。
【0006】
偏心器を受け入れる第1継手部分にギアリングを形成することと、偏心器を支持する第2継手部分にギアホイールを形成することは、第2継手部分において当該継手を取り付けるための十分に大きな接続領域を利用可能としながらも第2継手部分の径方向外側の周縁上にギアホイールを構成することができること(第2継手部分はその後、第1継手部分に締め付けられるクランプリングを取り囲むのが好ましい)により、材料及び施工空間を節約する。第2継手部分の径方向外側の周縁上にあるギアホイールはその後、第1継手部分に締め付けられるクランプリングによって取り囲まれるのが好ましい。クランプリングの実質的に平坦な形状により、L字形状の態様で形成された周知の構成と比べて必要な材料が少なくなるので、重量及びコストの節約となる。
【0007】
偏心器を受け入れる第1継手部分における、ギアリングとは別個の歯付き部分により、特許文献2に開示されているような、当該継手の非駆動状態に偏心器をロックすることを採用するというコンセプトが可能となる。これに開示されているロック要素がなければ、動的な動作条件下、すなわち移動中、ガタガタとノッキングして動くことによるウェッジセグメントの動きが生じ得る。これはひいては、継手部分の相対的な動き、いわゆる「スプーリング」をもたらす。ロック要素は、一方では、開口の周縁を使用して、かつ、ウエッジセグメントに作用するばねの端部フィンガを使用して、ウェッジセグメントを固定することにより、他方では、これに構成されたラッチラグを使用して継手部分の一方と協働することにより、スプーリングを防止する。
【0008】
ギアリングをスタンピングする場合、その反対側には、外側を向いた対向歯付き部分が作られる。ギアリングとは別個に歯付き部分を構成することにより、ロック要素及び歯付き部分の幾何学的構造の順応が可能となる。これにより施工空間が節約される。
【0009】
ロック要素は、2つの曲線からなる環状の形状を有するのが好ましく、滑り軸受ブッシュの重なり上に配置されるのが好ましい。当該重なりを使用して第1継手部分は偏心器を受け入れる。対応するばねアームにより非確動的な接続が保証される。オプションとして、当該重なりへの取り付けを改善するガイド部分が設けられる。ばね鋼製の一体構成により、ロック要素のフィーチャを簡単に統合することができる。径方向内側を向いた歯を有するギアリングとして構成されるのが好ましい第1継手部分の歯付き部分と協働するべく、径方向外側を向いたロックラグが設けられるのが好ましい。2つのウェッジセグメントからなるのが好ましい偏心器と協働するべく、当該偏心器のばねが貫通する開口が設けられるのが好ましい。駆動要素と協働するべく支持フィンガが設けられるのが好ましい。当該支持フィンガに対し、駆動要素は打撃によって作用することができる。
【0010】
ロック要素が滑り軸受ブッシュ上の(特許文献2)、又は滑り軸受ブッシュによって裏打ちされたレセプタクルのカラー上の、歯付き部分と協働するソリューションに関連して、この場合は、ロックするトルクを得るべく、歯付き部分の大きな半径が大きなレバーアームを画定するのが有利である。
【0011】
ロック要素は主に、動荷重下で継手をロックするべく機能する。偏心器と2つの継手部分の一方との摩擦によりロックが適用される場合の主な部材は、第2継手部分が好ましい。これは、偏心器を支持するカラーを含むのが好ましい。設けられるのが好ましく、かつ、偏心器を画定するウェッジセグメントは、ギアホイール及びギアリングの転動をロックしかつもたらすべく機能する。
【0012】
偏心エピサイクリック歯車により、バックレストの傾斜の無段階調整が可能となる。遊星歯車システムに対する中心ピニオンを省くことにより、継手部分の相対回転に重畳される波打つ動きを作ることができる。偏心エピサイクリック歯車は手動により又はモータにより駆動できる。
【0013】
以下において、図面に示される実施例を参照して本発明が詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】継手の分解図を示す。
【図2】駆動要素なしの継手の部分図を示す。
【図3】図2とは反対の方向から見た駆動要素、ばね、及びロック要素の図を示す。
【図4】継手を通る部分断面図を示す。
【図5】ロック要素の図を示す。
【図6】車両シートの概略図を示す。
【図7】前方端部に固定領域を形成する前の圧入滑り軸受ブッシュの部分断面図を示す。
【図8】第1継手部分の凹部に配列される固定領域を形成した後の図7の部分断面図を示す。
【図9】パンチ上のカット要素の、図8に対応する部分断面図を示す。
【図10】滑り軸受ブッシュの部分断面図を示し、カット要素を使用して滑り軸受ブッシュの固定領域が後方端部に作られる。
【図11】滑り軸受ブッシュの部分断面図を示し、滑り軸受ブッシュの固定領域が予備形成される。
【図12】滑り軸受ブッシュの部分断面図を示し、滑り軸受ブッシュの固定領域が、第1継手部分の前面に対して支承される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
自動車用車両シート1は、シート部分3及びバックレスト4を含む。バックレスト4は、シート部分3に対する傾斜が調整される。駆動シャフト7は、バックレスト4の傾斜を手動で、例えばハンドホイール5を使用して、又はモータにより、例えば電気モータを使用して、調整するべく回転される。前記駆動シャフトは、シート部分3とバックレスト4との移行領域に水平に配列される。車両シート1の両側において、駆動シャフト7は、一つの対応する継手10に回転方向に固定されて係合される。駆動シャフト7は、円筒座標系を使用した方向情報を画定する。
【0016】
継手10は、第1継手部分11及び第2継手部分12を含む。これらは互いに相対的に回転する。いずれの場合も2つの継手部分11及び12は、概ね円板形状に記載される。軸方向に作用する力を受け入れるべく、例えば継手部分11及び12を一緒に保持するべく、クランプリング13が設けられる。クランプリングを使用する取り付けは、例えば特許文献4に開示されている。好ましい金属クランプリング13が、2つの継手部分11及び12の一方に固定的に接続される。この場合、第1継手部分11は、外周部が、例えば溶接又は圧着される。オプションとして、クランプリング13は、径方向内側の周縁を使用して別個の滑りリングを介在させることによって、相対的に可動な2つの継手部分11及び12の他方の径方向外側を、2つの継手部分11及び12の相対回転を妨げることなく取り囲む。したがって、構成の点では、2つの継手部分11及び12は一緒になって円板形状ユニットを形成する(クランプリング13とともに)。
【0017】
継手10を取り付けるときは、例えば、第1継手部分11がバックレスト4の構造物に固定的に接続される。すなわち当該バックレスト部分に固定される。次に、第2継手部分12は、シート部分3の構造物に固定的に接続される。すなわち当該シート部分に固定される。しかしながら、継手部分11及び12の関係は交換できる。すなわち、第1継手部分11をシート部分に固定し、第2継手部分12をバックレストに固定することができる。したがって、継手10は、バックレスト4とシート部分3との間の力の束の中に置かれる。これゆえに、2つの継手部分11及び12は金属、好ましくは鋼、からなる。
【0018】
継手10は、第1継手部分11と第2継手部分12とが調整及び固定用のギアユニットを使用して互いに接続されるギア継手として構成される。詳しくは、この場合は自己ロックの偏心エピサイクリック歯車を使用して構成される。これは例えば、特許文献4に開示されている。
【0019】
ギアユニットを形成するべく、第2継手部分12には外歯付きギアホイール16が形成され、第1継手部分11には内歯付きギアリング17が形成される。これらの要素は互いに噛合する。ギアホイール16の外歯付き部分の歯先円の直径は、ギアリング17の内歯付き部分の歯底円の直径よりも、少なくとも一歯たけ分小さい。少なくとも一歯分の、ギアホイール16及びギアリング17の歯の数の対応する違いにより、ギアリング17がギアホイール16上で転動することができる。ギアホイール16及びギアリング17の形成は、継手部分11及び12がこれらの原材料から同時に打ち出されるスタンピング・パンチング工程により行われるのが好ましい。この場合、ギアホイール16が、第2継手部分12の径方向外側の周縁を形成する。すなわち、第2継手部分12はギアホイール16の径方向外側において終端する。
【0020】
2つの継手部分11及び12の一方はカラー19を含む。この場合、第2継手部分12がギアホイール16と同心となる。カラー19は、前記継手部分にカラー延長部として一体的に形成され(すなわち一体に構成され)、又は当該継手部分に別個のスリーブとして締め付けられる。駆動要素21は、ハブ22を使用してカラー19に回転可能に取り付けられる。駆動要素21はプラスチック材料からなるのが好ましい。駆動要素21のハブ22が、駆動シャフト7を受け入れるべくボア23の中心に設けられる。ボア23の形状は、駆動シャフト7の形状に整合するべく構成される。この場合、スプラインシャフト形状である。駆動要素21は、そのハブ22に隣接して、ハブ22よりも直径が大きなカバーディスク25を含む。これは、ハブ22と一体的に形成される。
【0021】
2つのウェッジセグメント27は、その内部曲面がカラー19に支持され、前記ウェッジセグメントは、その外部曲面が2つの継手部分11及び12の他方、この場合は第1継手部分11、を支承する。この目的のため、最後に挙げた継手部分のレセプタクルが、滑り軸受ブッシュ28によって裏打ちされる。好ましくは、回転によって固定的に圧入される。ウェッジセグメント27の外表面がこれに対して支承される。用語「支持」及び「支承」は、継手10を通る力の束の特定の方向に限られない。当該方向は、継手10の取り付けに依存するからである。
【0022】
駆動要素21は、ハブ22から径方向に離間した駆動要素セグメント29を含む。駆動要素セグメント29は、ウェッジセグメント27の狭い面同士の間にクリアランスをもって把持される。前記駆動要素セグメントは、カバーディスク25及びハブ22と一体的に構成される。ウェッジセグメント27は、広い側面同士が互いに、各場合において、Ω形状のばね35の折り曲げられた端部フィンガ35aを、例えば突出材料部分により画定された一の対応凹部によって、受け入れる。ばね35は、ウェッジセグメント27に対し周方向に作用して、特にこれらを強制的に分離する。ウェッジセグメント27の広い側面は操作中に互いに接触し、互いに作用し合う。
【0023】
駆動要素21は、固定リング43によって、カラー19を含む継手部分の外表面に軸方向において固定される。好ましくはクリップ留めされる。滑り軸受ブッシュ28を含む継手部分(この場合は第1継手部分11)の外表面において、その径方向外側の周縁とカバーディスク25との間には封止リング44が設けられる。前記封止リングは、例えばゴム又は軟質プラスチック製であり、カバーディスク25に接続される。特にクリップ留めされる。
【0024】
ウェッジセグメント27(及びばね35)により偏心器が画定され、前記偏心器はギアホイール16を、当該偏心方向の延長にある係合点においてギアリング17に圧入する。(繰り返し)回転する駆動シャフト7により駆動されると、トルクが最初に駆動要素21に伝達され、次に、駆動要素セグメント29により、それゆえに画定された当該偏心器に伝達される。当該偏心器は、当該偏心方向の変位により、及びひいてはギアリング17におけるギアホイール16の係合点の変位により、滑り軸受ブッシュ28に沿って滑る。これは、波打ち転動をなす。すなわち波打ち動が重畳された相対的回転である。その結果、バックレスト4の傾斜が、いくつかの使用位置間で無段階的に調整可能となる。
【0025】
動的な動作挙動を改善するべくロックばね51が、さらなるロック要素として設けられる。これは、例えば特許文献2に開示されている。この場合のロックばね51は、ばね鋼の一片として構成される。
【0026】
実質的に環状のロックばね51は、第1継手部分11と平行な平面内に配列された基本曲線51aと、基本曲線51aに対してずれた平面内に配列された支承曲線51bとを含む。支承曲線51bは、両側が、一の対応する折り曲げ部分によって基本曲線51aに隣接して環形状をなす。自由端を有する2つのばねアーム51cが互いに対向する。互いに離間する当該端によって基本曲線51aに一体的に形成される。基本曲線51a及び支承曲線51bは、周方向及び径方向において前記2つの平面の内側に概ね配置される。2つのばねアーム51cは、前記2つの平面の間において軸方向に延びる。オプションとして、2つの反り返って円筒状に曲がったガイド部分51dが、基本曲線51aから突出する。前記ガイド部分もまた、前記2つの平面の間において軸方向に延びる。最後に、ロックばね51はまたさらにロックラグ51eと、2つの支持フィンガ51fと、2つの開口51gとを含む。ロックラグ51eは基本曲線51aから径方向(外側)に突出し、支持フィンガ51fは基本曲線51から(又は代替的に支承曲線51bから)軸方向に突出し、開口51gは基本曲線51aに形成される。
【0027】
この場合の滑り軸受ブッシュ28は、これによって裏打ちされたレセプタクルよりも大きな軸方向寸法を有する。その結果、滑り軸受ブッシュ28は、これに関連づけられた継手部分、すなわちこの場合では第1継手部分11、から軸方向において突出して重なり28aを画定する。ロックばね51は、滑り軸受ブッシュ28の重なり28aにおいて、一方では支承曲線51bにより支持され、他方では支承曲線51bに対して径方向に対向する側面で支持される。存在する場合は、ガイド部分51dが滑り軸受ブッシュ28の重なり28aに対して支承される。ばねアーム51cは、滑り軸受ブッシュ28の重なり28aに対する張力がかけられる。ばね35の端部フィンガ35aが開口51gを貫通する。
【0028】
ロックばね51は、滑り軸受ブッシュ28と同心の歯付き部分55と協働し、前記滑り軸受ブッシュの径方向外側の第1継手部分11上に配列される。その歯は径方向内側に面する。すなわち、前記歯は、追加ギアリングとして、この場合はギアリング17の反対側の面であって、これと同心に、構成される。ロックばね51はウェッジセグメント27を、歯付き部分55と係合するロックラグによって、継手10の非駆動状態にロックする。ウェッジセグメント27の動きは、ばね35の端部フィンガ35aが、対応する開口51gの周縁に対して支承されることにより妨げられる。開口51gは端部フィンガ35aの断面積よりも大きいので、当該支承は、ウェッジセグメント27の少なくとも一方が、当該公差に応じてわずかに動いた後、すなわちわずかな偏心回転の後、に生じる。
【0029】
駆動される駆動要素21はロックばね51を、前記駆動要素が支持フィンガ51fの一方に対して支承されるようになることによって解放する。これは、カバーディスク25上に構成されるのが好ましい制御カム25aを使用して行われる。各回転方向に対して、一つの対応する制御カム25a及び支持フィンガ51fが設けられる。駆動要素21が支持フィンガ51fに作用すると、ロックラグ51eが歯付き部分55から引っ張り出され始める。すなわち、径方向内側に引っ張られ始める。その後、滑り軸受ブッシュ28に回転可能に取り付けられたロックばね51は、駆動要素21とともに回転する。互いに離間した開口51gの周縁が、径方向に対して斜めに延びる。後方の端部フィンガ35aが、関連する開口51gの、後方の斜めの周縁に対して支承されるようになるとすぐに、ロックばね51の領域がロックラグ51eとともに動く。すなわち、基本曲線51aが、さらに径方向内側に動く。その後、ロックラグ51eと歯付き部分55とは、係合を完全に解かれる。同時に又は引き続き、駆動要素セグメント29が、2つのウェッジセグメント27のうち後方のウェッジセグメントに対して支承されるようになる。ここで偏心器が回転(旋回)し始める。駆動要素21が停止すると、ばねアーム51cは再び、ロックラグ51eの歯付き部分55との係合をもたらす。その結果、ウェッジセグメント27は再びロックされる。
【0030】
滑り軸受ブッシュ28は、重なり28aから離間した端部において、径方向に突出する固定領域28bを含む。これは、第2継手部分12から軸方向に離れる滑り軸受ブッシュ28の変位に対する軸方向固定の作用をする。第2継手部分12に向かう軸方向において、当該第2継手部分は、滑り軸受ブッシュ28の変位に対する軸方向固定の作用をする。滑り軸受ブッシュ28を第1継手部分11のレセプタクルに導入するべく、第1ステップにおいて、第1継手部分11は、ツールのホルダH上に位置決めされて、予め中心合わせがされる。滑り軸受ブッシュ28は、当該ツールの心金D上に位置決めされる。第2ステップにおいて、心金DとホルダH(第1継手部分11を受け入れる)との相対的な動きにより、滑り軸受ブッシュ28は第1継手部分のレセプタクルに圧入される。締りばめを背景として、滑り軸受ブッシュ28の外部寸法は、第1継手部分11のレセプタクルの内部寸法と同じか又は好ましくは(公差補償のため)これよりもわずかに大きくなるように選択される。その結果、前記締りばめは、当該軸方向固定を支援する。第1継手部分11の材料は好ましくは、先に行われた硬化工程により、滑り軸受ブッシュ28の材料よりも硬くされる。圧入操作中の寸法の違いにより変位される可能な余分の材料が、滑り軸受ブッシュ28の、心金Dの動きに対する後方端に集まる。
【0031】
固定領域28bをもたらすにはいくつかのオプションが存在する。この場合、もたらされた固定領域28bは、滑り軸受ブッシュ28のためのレセプタクルまわりにある第1継手部分11の環状凹部11bに配列され得るか(図8、9、10、11)、又は第1継手部分11の前面上に支承される(図12)。すなわち軸方向に突出する。
【0032】
固定領域28bは、滑り軸受ブッシュ28の、心金Dの動きに対する前方端部上に形成される。この目的のために、上述の第1ステップにおいて、第1継手部分11がホルダHと対向ホルダGとの間にクランプされる。上述の第2ステップにおいて、滑り軸受ブッシュ28は、当該後方端部上に重なり28aが作られ、かつ、当該前方端部に追加の重なりが作られる(図7)程度まで十分に圧入される。その後、前記追加の重なりの材料は第3ステップにおいて、例えばパンチSを使用して径方向外側に力が加えられることにより成形される。パンチSは、対向ホルダGの代わりに設けられて心金Dに対して動く一方、ホルダH及び心金Dは互いに対して不動のままである。固定領域28b(図8)は、成形工程によって作られる。好ましくは、カット要素EがパンチS上に形成される(図9)。カット要素Eは、周方向の少なくとも一部において、すなわち心金Dから離間するように回る。カット要素Eは、滑り軸受ブッシュ28に切り込みを入れて材料を当該斜面により径方向外側に押しやることによって、固定領域28bの形成を簡単にする。
【0033】
代替的に、固定領域28bは、滑り軸受ブッシュ28の、心金Dの動きに対する後方端部上に形成され得る。ホルダHに対し、心金Dは、図7に示す方向とは反対の方向に動く。この場合、2つの変形例が可能となる。一つの変形例(図10)では、固定領域28bが引き続き形成される。滑り軸受ブッシュ28は上述の第2ステップにおいて、重なり28aが前方端部上に作られかつ追加の重なりが後方端部上に作られる程度まで十分に、心金Dにより圧入される。第2ステップが終わると、例えば、重なり28aがホルダHに対して支承されるようになる場合、滑り軸受ブッシュ28の動きが止まる。その後、当該後方端部上における当該追加の重なりの材料は第3ステップ(第2ステップと継ぎ目なくつながる)において、径方向外側に押しやられることにより成形され、固定領域28bが作られる。好ましくは、心金Dはその動きを継続するが、ホルダHは滑り軸受ブッシュ28を支持する。成形された輪郭、好ましくはカット要素Eが心金D上に形成される(図10)。図9の実施例に対応して、カット要素Eは少なくとも一部が周方向に回る。カット要素Eは滑り軸受ブッシュ28に切り込みを入れ、当該斜面により径方向外側に材料を押しやることで、固定領域28bが形成される。環状凹部11bは対向パンチとして機能する。変形例において、固定領域28bは、別個のパンチ、偏心したウォブルリベッティング等を使用して形成される。開示の異なるステップは、一以上のステップを形成するように組み合わせてもよい。
【0034】
他の変形例(図11、12)において、固定領域28bは、滑り軸受ブッシュ28への圧入前においてすでに予備形成されているか又は完全形成されている。固定領域28bが圧入操作の前に予備形成のみされている場合、滑り軸受ブッシュ28は第2ステップにおいて圧入されて、当該前方端部に重なり28aが作られ、かつ、当該後方端部(図11)に追加の重なりが、少なくとも環状凹部11bに対して作られるまでになる。第3ステップにおいて、予備形成された固定領域28bは、これが完全になるまで、すなわちカラーの態様で径方向に突出するまで、成形される。当該成形は、例えば、図10に示すように、ホルダHが滑り軸受ブッシュ28を支持することと心金Dが前方に動くこととによりもたらされる。心金Dはこの場合、成形輪郭、好ましくはカット要素Eを含む。当該成形は、例えば、別個のパンチを使用してももたらされる。環状凹部11bは対向パンチとして機能する。固定領域28bが圧入操作の前に、例えば(径方向に突出する)カラーとしてすでに完全形成されている場合、滑り軸受ブッシュ28は第2ステップにおいて圧入されて、当該前方端部に重なり28aが作られ、かつ、当該後方端部の端部位置に到達する。すなわち環状凹部11b(図8に示す滑り軸受ブッシュ28の端部位置)に載置されるようになるか又は第1継手部分11(図12)の前面に対して支承されるようになる。
【符号の説明】
【0035】
1 車両シート
3 シート部分
4 バックレスト
5 ハンドホイール
7 駆動シャフト
10 継手
11 第1継手部分
11b 環状凹部
12 第2継手部分
13 クランプリング
16 ギアホイール
17 ギアリング
19 カラー
21 駆動要素
22 ハブ
23 ボア
25 カバーディスク
25a 制御カム
27 ウェッジセグメント
28 滑り軸受ブッシュ
28a 重なり
28b 固定領域
29 駆動要素セグメント
35 ばね
35a 端部フィンガ
43 固定リング
44 封止リング
51 ロックばね、ロック要素
51a 基本曲線
51b 支承曲線
51c ばねアーム
51d ガイド部分
51e ロックラグ
51f 支持フィンガ
51g 開口
55 歯付き部分
D 心金
E カット要素
G 対向ホルダ
H ホルダ
S パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り軸受ブッシュ(28)が軸方向において第1継手部分(11)のレセプタクルに圧入される車両シート継手(10)を作る方法であって、
圧入される前記滑り軸受ブッシュ(28)は、径方向に突出する固定領域(28b)を含み、
前記固定領域(28b)は前記圧入の操作の前又は後に形成される方法。
【請求項2】
前記固定領域(28b)は、前記滑り軸受ブッシュ(28)の材料が径方向外側に押しやられることによって、好ましくは前記圧入の操作の後にカット要素(E)を使用して、前記圧入の動作中における前方端部に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固定領域(28b)は、滑り軸受ブッシュ(28)の材料が径方向外側に押しやられることによって、好ましくは前記圧入の操作の後にカット要素(E)を使用して、前記圧入の動作中における後方端部に完全形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固定領域(28b)は、前記滑り軸受ブッシュ(28)を圧入する前にすでに予備形成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記滑り軸受ブッシュ(28)を圧入する前に、前記固定領域(28b)はすでに、前記圧入の操作中における後方端部に完全形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固定領域(28b)は、前記圧入の操作の後に、前記第1継手部分(11)の凹部に配列される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固定領域(28b)は、前記圧入の操作の後に、前記第1継手部分(11)の前面に対して支承される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
軸方向の重なり(28a)が、前記圧入の操作の後に、前記固定領域(28b)から離間した前記滑り軸受ブッシュ(28)の端部に形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
圧入される前記滑り軸受ブッシュ(28)は偏心器(27、27)を受け入れ、
前記偏心器(27、27)は、互いに噛合するギアホイール(16)及びギアリング(17)を使用して前記第1継手部分(11)とギア接続される第2継手部分(12)に支持され、
前記偏心器は、駆動要素(21)による循環態様で駆動されて、前記ギアホイール(16)及びギアリング(17)の相対的な転動をもたらし、
特にロック要素(51)が設けられ、
前記ロック要素は、前記第1継手部分(11)に形成された歯付き部分(55)との協働により、前記偏心器(27、27)を前記継手(10)の非駆動状態にロックし、及び、前記駆動要素(21)により駆動される場合に前記偏心器(27、27)を解放し、
前記ロック要素(51)は、特に、前記滑り軸受ブッシュ(28)の軸方向の重なり(28a)に取り付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法により作られた継手(10)であって、
2つの継手部分(11、12)の一方により車両シート(1)のシート部分(3)に接続され、
前記2つの継手部分(11、12)の他方により前記車両シート(1)のバックレスト(4)に接続される継手(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−521185(P2013−521185A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556386(P2012−556386)
【出願日】平成22年12月4日(2010.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007375
【国際公開番号】WO2011/116799
【国際公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(511007886)カイパー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (16)
【Fターム(参考)】