説明

車両ドアラッチ装置

【課題】ポールを回転駆動するためのモータがラッチ係止解除位置で停止した場合に、手動でラッチ係止位置に切り替えることが可能な車両ドアラッチ装置の提供。
【解決手段】リリース入力盤170、スライド回動盤175及びリリースレバー165を備え、通常時はそれらが一体回転可能に連結される。スライド回動盤175は、スライドドアに形成された非常操作孔からの押圧操作により動力遮断位置に移動可能となっており、動力遮断位置では回動盤165,170,175同士の連結が解除されてリリース入力盤170とリリースレバー165とが個別回転可能になる。すると、トーションバネの付勢力によりポール30がラッチ係止位置へと回動可能となる。このように、ポール30を手動でラッチ係止位置に切り替えてスライドドアを全閉状態にロックすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに取り付けられて、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチのロック方向への回動を許容しかつロック解除方向への回動を規制するポールとを備えた車両ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両ドアラッチ装置として、ドアが半ドア状態になったときにラッチ駆動モータによりラッチを回転駆動して、ドアを全閉状態にするものが知られている。ここで、ドアが全閉状態になるとドアと車両本体との間で防音部材が押し潰され、その反力によりラッチとポールとが互いに押し付けられて摩擦結合する。そして、その摩擦結合がドアのハンドルを操作する際の操作抵抗になる。そこで、従来の車両ドアラッチ装置では、リリースモータがハンドルの操作に応じてポールを回転駆動し、ラッチから離脱させる構成になっていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−98819号公報(段落[0025]、[0028]、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の車両ドアラッチ装置では、ポールがラッチの回動を許容したラッチ係止解除位置に保持された状態で、リリースモータが異常停止した場合、ドアを全閉状態にロックすることが困難になる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ポールを回転駆動するためのモータがラッチ係止解除位置で停止した場合に、手動でラッチ係止位置に切り替えることが可能な車両ドアラッチ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る車両ドアラッチ装置は、車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置とラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、ポールをラッチ係止位置に付勢するポール付勢手段と、ドアに備えたドア開放操作部の操作に応じて起動するモータと、モータの一方向の回転動力をポールに伝達して、ポールをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置へと回転駆動するためのリリース動力伝達部とを備え、ポールがラッチ係止位置に位置してドアを閉止位置に保持する一方、ドア開放操作部の操作に応じてポールがモータの動力によりラッチ係止位置からラッチ係止解除位置へと回転駆動されてドアを開放可能とする車両ドアラッチ装置において、リリース動力伝達部に設けられて、共通の回動盤回転支軸に回転可能に軸支されたモータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤と、それら3つの回動盤のうち中継回動盤のみに形成されて、回動盤回転支軸が貫通し、中継回動盤を回動盤回転支軸と直交する方向に直動可能とする支軸貫通長孔と、中継回動盤が直動可能範囲の一端側の動力伝達位置に配置された状態で、モータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤を一体回転可能に連結して、モータの一方向の回転動力を、モータ側回動盤、中継回動盤、ポール側回動盤、ポールの順で伝達可能とする一方、中継回動盤が直動可能範囲の他端側の動力遮断位置に配置された状態で、連結を解除してモータ側回動盤とポール側回動盤とを個別回転可能とし、モータ側回動盤と中継回動盤との間、又は、中継回動盤とポール側回動盤との間で、モータとポールとの間の力の伝達を分断する第1キャンセル機構と、ドアに形成された非常用操作孔との対向位置に配置され、ポールがラッチ係止解除位置に配置された状態でモータが停止したときに、手動操作によって中継回動盤を動力伝達位置から動力遮断位置に移動するためのキャンセル操作部とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両ドアラッチ装置において、キャンセル操作部は、ドアのうち車両本体との間に挟まれて隠される位置に形成された非常用操作孔との対向位置に配置されると共に、キャンセル操作部が押圧操作されて中継回動盤が動力伝達位置から動力遮断位置に移動するように構成したところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両ドアラッチ装置において、略水平方向に延びて、一端部が非常用操作孔を介してドアの外側に臨み、他端部が中継回動盤に回動可能に連結された操作力伝達部材を設け、その操作力伝達部材の一端部をキャンセル操作部とし、中継回動盤を軸支する回動盤回転支軸と平行に延びた操作部回転支軸により、操作力伝達部材の中間部を回転可能かつ直動可能に軸支したところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両ドアラッチ装置において、操作力伝達部材のうち操作部回転支軸に対してキャンセル操作部側を、操作部回転支軸に対して中継回動盤側よりも短くしたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の車両ドアラッチ装置において、第1キャンセル機構は、中継回動盤のうち回動盤回転支軸を挟んで操作力伝達部材と反対側に設けられ、回動盤回転支軸と平行な方向に突出し、中継回動盤の動力伝達位置で回動盤回転支軸に接近する一方、中継回動盤の動力遮断位置で回動盤回転支軸から離れる連結旋回突部と、モータ側回動盤に形成され、連結旋回突部を回動盤回転支軸に接離する方向で直動可能に受容すると共に、その直動可能な全範囲で連結旋回突部の側面に係合して中継回動盤とモータ側回動盤とを一体回転可能に連結する突部係合溝と、ポール側回動盤に形成され、連結旋回突部がその直動可能な範囲のうち回動盤回転支軸側の一端部に位置したときに、その連結旋回突部を受容して中継回動盤とポール側回動盤とを一体回転可能に連結すると共に、連結旋回突部がその直動可能な範囲のうち回動盤回転支軸から離れた他端部に位置したときに、その連結旋回突部が離脱して、中継回動盤とポール側回動盤とを個別回転可能にする突部受容凹部と、ポール側回動盤のうち突部受容凹部の側方に形成されて、突部受容凹部から離脱した連結旋回突部に対して回動盤回転支軸側から対向し、連結旋回突部が回動盤回転支軸側に接近することを規制する突部移動規制部とを備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両ドアラッチ装置において、中継回動盤を動力伝達位置側に付勢する中継回動盤付勢手段と、モータ側回動盤を、モータの一方向の回転動力による回転方向と反対側に付勢するモータ側回動盤付勢手段とを設け、ラッチ係止解除位置でモータが停止し、キャンセル操作部の操作により中継回動盤を動力遮断位置に移動すると、ポール付勢手段によりポールがラッチ係止位置へと回動すると共に、ポールに連動して、ポール側回動盤が回動して連結旋回突部が突部移動規制部に係止し、モータが復帰してモータが他方向に回動すると、モータ側回動盤付勢手段によってモータ側回動盤が回転駆動されて、連結旋回突部が突部受容凹部に受容されて中継回動盤が動力伝達位置に復帰するところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項3乃至6の何れかに記載の車両ドアラッチ装置において、キャンセル操作部は、非常用操作孔に突入させたツールによって押圧操作可能な位置に配置されたところに特徴を有する。なお、ツールは、車両のキーでもよいし、車載工具のように普段から車両に搭載されている軸状又は棒状のツール(具体的には、ドライバーなど)でもよい。また、工具に限らず、ペンでもよい。さらにキャンセル操作部を押圧操作するための専用ツールでもよい。
【0012】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の車両ドアラッチ装置において、モータがポールをラッチ係止解除位置に保持した状態で動作不能になった場合に、異常を報知する異常報知手段を備えたところに特徴を有する。
【0013】
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の車両ドアラッチ装置において、リリース動力伝達部には、モータの回転出力軸にギヤ連結され、モータの一方向の回転動力により回転駆動されたときに、モータ側回動盤における回動中心から離れた端部を押圧してモータ側回動盤に動力を伝達するアクティブ回動盤が備えられ、アクティブ回動盤は、モータの他方向の回転動力によってモータ側回動盤から離れる側に回転駆動されたときには、その回転動力をラッチに伝達してラッチをストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動してドアを完全に閉じた全閉状態に移行するように構成したところに特徴を有する。
【0014】
請求項10の発明は、請求項9に記載の車両ドアラッチ装置において、モータとラッチとの間で動力を伝達するクローズ動力伝達部に、第2キャンセル機構を設け、第2キャンセル機構は、アクティブ回動盤のうちその回動軸からオフセットした位置に回動可能に軸支されたシーソー形回動部品と、通常はシーソー形回動部品の一端部を位置決めするシーソー当接位置に配置されかつ、ドア開放操作部の操作に連動して位置決めを解除するシーソー解放位置に移動する位置決可動部材とを備え、位置決可動部材をシーソー当接位置に配置したときに、シーソー形回動部品の一端部が位置決めされた状態でシーソー形回動部品の回動軸がアクティブ回動盤の回動と共に移動することで、シーソー形回動部品の他端部からラッチに動力を付与する一方、位置決可動部材をシーソー解放位置に配置したときに、シーソー形回動部品がアクティブ回動盤に対して自在に回動し、ラッチへの動力が遮断されるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
[請求項1及び8発明]
請求項1の発明によれば、ドア開放操作部の操作に応じて駆動するモータがポールをラッチ係止解除位置に保持した状態で異常停止した場合には、第1キャンセル機構を手動で動力遮断状態にすればよい。こうすると、モータとポールとの間の力の伝達が遮断されるので、ポールがラッチ係止解除位置からラッチ係止位置に移動可能となり、ドアを全閉状態にロックすることが可能になる。
【0016】
詳細には、リリース動力伝達部には、共通の回動盤回転支軸に回転可能に軸支されたモータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤が設けられている。通常は、中継回動盤がその直動可能範囲の一端側の動力伝達位置に配置されており、モータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤は一体回転可能に連結されている。この状態でモータが一方向に回転すると、その回転動力がモータ側回動盤、中継回動盤、ポール側回動盤、ポールの順に伝達されて、ポールがラッチ係止位置からラッチ係止解除位置へと回転駆動される。
【0017】
ここで、モータが一方向に回転したまま異常停止した場合、ポールはラッチ係止解除位置に保持されてしまうため、ラッチの回動を禁止することができなくなる。即ち、ドアを全閉状態にロックすることができなくなる。このような場合には、ドアに形成された非常操作孔からキャンセル操作部を操作し、中継回動盤を動力伝達位置から動力遮断位置に移動させる。すると、上記モータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤の連結が解除され、モータ側回動盤とポール側回動盤とが個別回転可能となるので、ポール付勢手段の付勢力によってポールがラッチ係止位置に戻る。これにより、ラッチとポールとが係止可能となり、ドアを全閉状態にロックすることが可能になる。また、モータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤が共通の回動盤回転支軸に軸支されたので、それら3つの回動盤を備えたことによる大型化を極力抑えることができる。
【0018】
また、請求項8の構成では、モータがポールをラッチ係止解除位置に保持した状態で動作不能になった場合に異常報知手段にて異常を報知するので迅速な対応が可能になる。なお、本発明に係る「ドア解放操作部」としては、ハンドル、ワイヤレスリモコン、運転席スイッチ等が挙げられる。
【0019】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、非常用操作孔を介したキャンセル操作部の押圧操作により、中継回動盤を動力伝達位置と動力遮断位置とに切り換えることができる。また、ドアのうち車両本体との間に挟まれて隠される位置に形成された非常用操作孔にキャンセル操作部を対向配置したことにより、キャンセル操作部が操作目的を知らない者にとって見つけ難くなり、誤って押圧操作されることを防ぐことができる。
【0020】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、中継回動盤が非常用操作孔の奥まった位置に配置されていた場合には、操作力伝達部材によってキャンセル操作部を非常用操作孔の近傍位置に設けることができる。
【0021】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、操作力伝達部材は、キャンセル操作部とは反対側の他端部が中継回動盤に回動可能に連結され、中間部が、操作部回転支軸により回転可能かつ直動可能に軸支されている。従って、中継回動盤の回動に伴い、操作力伝達部材は、操作部回動支軸を支点として揺動する。ここで、操作力伝達部材のうち、操作部回転支軸に対してキャンセル操作部側を、操作部回転支軸に対して中継回動盤側より短くしたことで、中継回動盤の回動に伴うキャンセル操作部の揺動幅を比較的小さくすることができる。
【0022】
[請求項5の発明]
請求項5発明によれば、中継回動盤のうち、回動盤回転支軸を挟んで操作力伝達部材と反対側には、動力伝達位置で回動盤回転支軸に接近する一方、動力遮断位置で回動盤回転支軸から離れる連結旋回突部が設けられ、モータ側回動盤には、連結旋回突部を回動盤回転支軸に接離する方向で直動可能に受容すると共に、その直動可能な全範囲で中継回動盤とモータ側回動盤とを一体回転可能に連結する突部係合溝が形成され、ポール側回動盤には、連結旋回突部が動力伝達位置に位置したときに、その連結旋回突部を受容して中継回動盤とポール側回動盤とを一体回転可能に連結する突部受容凹部が形成されている。
【0023】
そして、中継回動盤を動力遮断位置に移動させた場合、連結旋回突部は回動盤回転支軸から離れる方向に突部係合溝内を移動し、回動盤回転支軸から離れた他端部に位置したときに、ポール側回動盤の突部受容凹部から離脱する。これにより、中継回動盤とポール側回動盤とが個別回転可能になり、ポール付勢手段の付勢力によりポールがラッチ係止位置へと回動する。また。ポールに連動してポール側回動盤が回動し、連結旋回突部と突部移動規制部とが対向配置される。この突部移動規制部により、連結旋回突部が突部係合溝内を回動盤回転支軸側に接近することが規制され、動力遮断位置に保持される。
【0024】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、中継回動盤を手動で動力遮断位置にした後でモータが復帰し、そのモータが他方向に回動すれば、中継回動盤を動力伝達位置に復帰させることができるので、中継回動盤を手動で動力伝達位置に復帰させるという手間を省くことが可能となる。
【0025】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、キャンセル操作部が、むやみに押圧操作され難くなる。ここで、ツールを車両のキーとすれば、キャンセル操作部を操作するための専用ツールが必要なくなる。
【0026】
[請求項9の発明]
請求項9の構成によれば、モータは、ドアを開く際にポールをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置へと回転駆動するための動力源と、ストライカとの係合を深めるロック方向にラッチを回転駆動してドアを全閉状態にするための動力源との両方に兼用することができ、製造コスト及び重量を抑えることができる。
【0027】
[請求項10の発明]
請求項10の構成によれば、ハンドルを操作しない限り、位置決可動部材はシーソー当接位置に配置されてシーソー形回動部品の一端部を位置決めする。すると、モータがアクティブ回動盤を回動したときに、シーソー形回動部品の回動軸がアクティブ回動盤の回動に連動して移動し、シーソー形回動部品の他端部からラッチに動力が付与される。これにより、ラッチをロック方向に回転駆動させてドアを全閉状態にすることができる。また、ハンドルを操作すると、位置決可動部材がシーソー解放位置に配置されてシーソー形回動部品がアクティブ回動盤に対して自在に回動可能になる。これにより、シーソー形回動部品の他端部からラッチへの動力が遮断され、ポールをラッチ係止解除位置に移動したときにラッチとストライカとの噛み合いが解除されて、ドアを開けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図16に基づいて説明する。図1には、車両ドアロックシステム10を備えたスライドドア90を有する車両が示されている。このスライドドア90は、車両本体99の昇降口を閉じた状態から斜め後方に後退しかつ、途中から真っ直ぐ後退して全開状態になる。そして、車両ドアロックシステム10は、スライドドア90を閉鎖状態に保持するための閉鎖ドアロック装置10Aと、全開状態に保持するための全開ドアロック装置10Cと、半ドア状態から全閉状態にするためのクローザ装置10Bと、リモコン装置91とを備えてなる。
【0029】
図2に示すように、閉鎖ドアロック装置10A及び全開ドアロック装置10Cは、スライドドア90の前端縁における高さ方向の中間部と下端部とに配置され、クローザ装置10Bは、スライドドア90の後端縁における高さ方向の中間部に配置されている。これらに対応して、ドア枠99W(昇降口の枠)の内側面における三箇所にストライカ40が設けられている。
【0030】
各ストライカ40は、例えば断面円形の線材を屈曲して形成され、1対の脚部40X,40Xの先端間に連絡棒40Yを差し渡した門形構造をなしている。そして、閉鎖ドアロック装置10Aに対応したストライカ40は、ドア枠99Wの前側内側面から水平後方に延びかつ1対の脚部40X,40Xがドア枠99Wの内外方向に並べられ、それらのうち外寄りに配置された一方の脚部40Xに閉鎖ドアロック装置10Aが係合するようになっている。なお、図3〜図6には、ストライカ40のうち閉鎖ドアロック装置10Aと係合する部分のみの断面図が示されている。また、クローザ装置10Bに対応したストライカ40は、後側内側面から水平前方に延びかつ1対の脚部40X,40Xがドア枠99Wの内外方向に並べられ、それらのうち外寄りに配置された一方の脚部40Xにクローザ装置10Bが係合するようになっている。さらに、全開ドアロック装置10Cに対応したストライカは、図2には表されていないが1対の脚部がドア枠99Wの前側内側面から水平後方に延びかつ上下方向に並べられ、連絡棒に全開ドアロック装置10Cが係合するようになっている。
【0031】
図3に示すように、閉鎖ドアロック装置10Aは、ベース盤11にラッチ20及びポール30を回動可能に組み付けて備えている。ベース盤11は、ボルト固定孔13を複数箇所に備え、スライドドア90の前端壁に内側から宛がわれてボルト固定孔13に通した(又は、螺合した)ボルトにて固定されている。
【0032】
ベース盤11には、水平方向に延びたストライカ受容溝12が備えられている。このストライカ受容溝12の一端部は、車内側に向かって開放したストライカ受容口12Kになっており、他端部は閉じている。また、ベース盤11が取り付けられたスライドドア90の一端壁にもストライカ受容溝12に対応した切り欠き(図示せず)が備えられている。そして、スライドドア90を閉じるとストライカ受容口12Kからストライカ受容溝12内にストライカ40が進入する。
【0033】
ベース盤11のうちストライカ受容溝12より下方には、ポール30が回動可能に軸支されている。ポール30は、ラッチ回動規制片31とストッパ片32とを回動軸30Jから相反する方向に突出して備えている。また、ポール30とベース盤11との間にはトーションバネ30S(図3参照)が備えられ、このトーションバネによってポール30が図3における反時計回り方向に付勢され、通常はストッパ片32がベース盤11に備えたポールストッパ16に当接して位置決めされている。
【0034】
また、ポール30にはベース盤11を隔ててラッチ回動規制片31及びストッパ片32と反対側にポール駆動レバー30Rを備え、そのポール駆動レバー30Rとリモコン装置91とがオープンケーブル93Wにて連結されている。また、オープンケーブル93Wの中間部分は被覆管93Hにて覆われている。そして、オープンケーブル93Wがリモコン装置91側に引かれると、ポール30が図3における時計回り方向に回動してラッチ回動規制片31が次述するラッチ20の回動領域から退避したリリース位置に移動する。
【0035】
ベース盤11のうちストライカ受容溝12より上方にはラッチ20が回動可能に軸支されている。ラッチ20は、金属板を樹脂層で覆って防音を図った構造になっている。ラッチ20には、互いに平行になった1対の係止爪21,22が備えられ、それら係止爪21,22の間がストライカ受容部23になっている。また、ラッチ20は、ベース盤11との間に設けたトーションバネ20S(図3参照)により本発明に係るロック解除方向(図3における時計回り方向)に付勢されている。そして、スライドドア90を開けた状態では、ラッチ20に備えたストッパ当接部24とベース盤11に備えたラッチストッパ14との当接によりラッチ20がアンラッチ位置(図3に示した位置)に位置決めされる。
【0036】
そのアンラッチ位置では、前側の係止爪21がストライカ受容溝12の上方に退避しかつ、後側の係止爪22がストライカ受容溝12を横切った状態になり、ストライカ受容部23の開口端がストライカ受容溝12のストライカ受容口12K側を向く。そして、ストライカ受容溝12に進入したストライカ40がストライカ受容部23内に受容されると共に、ストライカ40が後側の係止爪22を押してラッチ20が本発明に係るロック方向に(図3における反時計回り方向)に回動する。これにより、図4に示すように、ストライカ受容溝12のうちストライカ40よりストライカ受容口12K側が前側の係止爪21によって塞がれると共に、前側の係止爪21がストライカ40の脚部40X,40X(図1参照)の間に突入し、ラッチ20がストライカ40と噛み合った状態になる。
【0037】
スライドドア90に勢いを付与して閉じると、スライドドア90がドア枠99Wとの間の防音部材(図示せず)を最大限に押し潰した位置まで閉じられ、このとき、図6に示すように、ラッチ20は、ポール30を通過しかつそのポール30から僅かに離間したオーバーストローク位置に至る。そして、防音部材の弾発力によりスライドドア90が戻され、これに伴ってラッチ20がオーバーストローク位置からアンラッチ位置側に若干戻されると、図5に示すようにラッチ20の前側の係止爪21とポール30のラッチ回動規制片31とが当接し、ラッチ20がフルラッチ位置に位置決めされる。詳細には、前側の係止爪21の先端部には、上述の樹脂層から露出したポール当接部26が設けられており、そのポール当接部26とラッチ回動規制片31とを構成する金属同士が当接する。これにより、ラッチ20のロック解除方向への回動が規制され、スライドドア90が全閉状態に保持される。
【0038】
また、スライドドア90に閉じる際の勢いが弱いために、ラッチ20がオーバーストローク位置又はフルラッチ位置に至らない状態で、防音部材の弾発力によりスライドドア90が戻されると、図4に示すようにポール30がラッチ20の後側の係止爪22の先端部に当接し、ラッチ20がハーフラッチ位置に位置決めされて、スライドドア90が、所謂、半ドア状態になる。閉鎖ドアロック装置10Aの構成に関する説明は以上である。次に、本発明の「車両ドアラッチ装置」に相当するクローザ装置10Bの構成に関する説明を行う。
【0039】
クローザ装置10Bは、図7〜図15に示されている。図8に示すように、クローザ装置10Bは、閉鎖ドアロック装置10Aと同様のラッチ20、ポール30、ストライカ受容溝12等を有するラッチアンドポール機構20Kを備えている。このラッチアンドポール機構20Kは、ラッチ20の回動軸20Jがストライカ受容溝12(図7参照)より下側、ポール30の回動軸30Jがストライカ受容溝12より上側に配置されている点、後側の係止爪22にラッチ駆動レバー25が備えられている点、前側の係止爪22にハーフラッチ係止突部29及び位置検出ピン28が備えられている点等が閉鎖ドアロック装置10Aと異なる。以下、クローザ装置10Bと閉鎖ドアロック装置10Aとの間で同一の構成に関しては同一符号を付して重複説明を省略し、異なる構成に関してのみ説明する。
【0040】
図7及び図8に示すように、クローザ装置10Bのベース盤11は、板金を鈍角に曲げてその角部にストライカ受容口12Kを備えている。そして、ベース盤11のうち角部より一方側の先端部には、機構板81が重ねた状態にして連結され、他方側の内面には図8に示すようにラッチアンドポール機構20Kが設けられている。また、ラッチアンドポール機構20Kのラッチ20は、図示しないラッチポールカバーによって覆われている。
【0041】
図8に示すように、ラッチ20にはラッチ駆動レバー25、ハーフラッチ係止突部29及び位置検出ピン28が備えられている。ラッチ駆動レバー25及びハーフラッチ係止突部29は、ラッチ20の回動軸20Jの軸方向と直交しかつ相反する方向に延びている。そして、ポール30がラッチ20のハーフラッチ係止突部29に当接して、ラッチ20がハーフラッチ位置(図8参照)に位置した状態で、ラッチ駆動レバー25は斜め下方を向いている。この状態で後述するシーソー形回動盤55(本発明に係る「シーソー形回動部品」に相当する)によってラッチ駆動レバー25が上方に押し上げられると、ラッチ20は、ストライカ40との係合を深めるロック方向に回動し、前側の係止爪22の先端部にポール30が当接したフルラッチ位置(図9参照)へと移動する。また、位置検出ピン28は、ラッチ20のうち回動軸20Jから下方にずれた位置に配置されて、回動軸20Jの軸方向と平行になってベース盤11から離れる方向に延びている。また、位置検出ピン28の先端部は、ラッチポールカバーを貫通して図示しないラッチ位置検出センサに連結されている。そして、このラッチ位置検出センサによってラッチ20が、ハーフラッチ位置(図8参照)、フルラッチ位置(図9参照)及びアンラッチ位置(図11参照)の何れの位置に配置されているかを検出する。
【0042】
ポール30の回動軸30Jは、ベース盤11から離れる方向に延び、その先端部がラッチポールカバー(図示せず)を貫通している。また、その回動軸30Jの先端部から側方にポール駆動レバー133が張り出している。ポール駆動レバー133はストッパ片134と被押下片135とに分かれている。ストッパ片134がラッチポールカバーに備えたストッパ(図示せず)と当接することで、ポール30がラッチ20の回動を規制可能な位置に位置決めされている。また、被押下片135は、後述するオープンレバー60の押下片61によって押し下げ可能になっている。そして、被押下片135が押し下げられることで、ポール30のラッチ回動規制片31がラッチ20の回動領域から退避したリリース位置(本発明の「ラッチ係止解除位置」に相当する)に移動し、ラッチ20の回動規制が解除される。
【0043】
機構板81には、本発明に係る「リリース動力伝達部」及び「クローズ動力伝達部」の構成部品が取り付けられている。具体的には、以下のようである。機構板81の下端寄り位置には、アクティブレバー50(本発明に係る「アクティブ回動盤」に相当する)が回動可能に軸支されている。アクティブレバー50には、その回動軸50Jを挟んでラッチアンドポール機構20Kと反対側に扇形回動板51が備えられ、その扇形回動板51の外周縁にギヤ50Gが形成されている。また、アクティブレバー50には、回動軸50Jよりラッチアンドポール機構20K側に突出した回動支持突片52が備えられ、その回動支持突片52の先端部にシーソー形回動盤55が回動可能に軸支されている。
【0044】
シーソー形回動盤55は、回動軸55Jを挟んで両側に回動片が張り出したシーソー構造をなし、その上縁部からは機構板81と反対側に押上壁56が曲げ起こされている。押上壁56は、シーソー形回動盤55のうち回動軸55Jの上方位置からラッチアンドポール機構20K側の先端部に亘って延び、ラッチ駆動レバー25に下方から当接可能になっている。また、シーソー形回動盤55は、図8に示したトーションコイルバネ58により、押上壁56がラッチ駆動レバー25から離れる方向(図8における時計回り方向)に付勢されている。
【0045】
シーソー形回動盤55のうちラッチアンドポール機構20Kと反対側の端部には当接コロ57が取り付けられ、この当接コロ57に上方側から後述する位置決レバー63(本発明に係る「位置決可動部材」に相当する)が突き当てられている。そして、これらアクティブレバー50、シーソー形回動盤55及び位置決レバー63により本発明に係る「第2キャンセル機構」が構成されており、当接コロ57が位置決レバー63によって位置決めされた状態で、アクティブレバー50が図8の反時計回りに回動すると、シーソー形回動盤55の回動軸55Jが上方に移動し、シーソー形回動盤55の先端部における押上壁56がラッチ駆動レバー25を上方に押し上げる。また、位置決レバー63が当接コロ57から離れた位置に移動すると、シーソー形回動盤55がアクティブレバー50に対して自在に回転可能になり、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55への動力の伝達が遮断され、シーソー形回動盤55の押上壁56によってラッチ駆動レバー25を押し上げることができなくなる。
【0046】
図8に示すように、アクティブレバー50を挟んでラッチアンドポール機構20Kと反対側にはアクチュエータ41が設けられている。アクチュエータ41は、駆動モータ41M(本発明の「モータ」に相当する)と減速機構41Gとからなる。減速機構41Gは、ウォームギヤ41Aとウォームホイール41Bとを内蔵して備え、ウォームギヤ41Aに駆動モータ41Mのモータ出力軸が連結されている。そして、ウォームホイール41Bに一体に備えた小ギヤ41X(図8参照)が扇形回動板51のギヤ50Gに噛合している。これにより駆動モータ41Mによってアクティブレバー50を時計回り方向と反時計回り方向の任意の方向に回動させることができる。
【0047】
図8に示すように、機構板81のうちアクティブレバー50の回動軸50Jの上方には、位置決レバー63及びオープンレバー60が共通の回動軸60Jを中心に回動可能に軸支されている。オープンレバー60のうち回動軸60Jから下方に延びた部位の先端にはオープンケーブル92Wの一端部が連結され、そのオープンケーブル92Wの他端部はリモコン装置91(図16参照)に連結されている。また、オープンケーブル92Wは、両端部を除く全体が被覆管92Hによって覆われている。
【0048】
オープンレバー60の上端部からは、押下片61がポール30側に張り出されている。そして、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引っ張られると、オープンレバー60が回動して押下片61がポール駆動レバー133(被押下片135)を押し下げ、これにより、前述の如く、ポール30がリリース位置に移動して、ポール30によるラッチ20の回動規制が解除される。なお、オープンレバー60は、機構板81との間に設けたトーションコイルバネ62により、押下片61が被押下片135から離れる方向(図8における反時計回り方向)に付勢されている。
【0049】
位置決レバー63はオープンレバー60に重ねて設けられ、位置決レバー63の側縁部から起立した連動当接片63Tが、オープンレバー60の一側縁部に側方から対向している。そして、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引っ張られてオープンレバー60が回動すると、連動当接片63Tがオープンレバー60に押されて位置決レバー63も回動し、当接コロ57から離間することで、前述の如く、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55への動力の伝達が遮断され、シーソー形回動盤55の押上壁56によってラッチ駆動レバー25を押し上げることができなくなる。本実施形態では、位置決レバー63が当接コロ57に当接した位置が、「位置決可動部材」に係る「シーソー当接位置位」に相当し、位置決レバー63が当接コロ57から離間した位置が、「位置決可動部材」に係る「シーソー解放位置」に相当する。
【0050】
オープンレバー60の上方には、リリース入力盤170(本発明の「モータ側回動盤」に相当する)、スライド回動盤175(本発明に係る「中継回動盤」に相当する)及びリリースレバー165(本発明に係る「ポール側回動盤」に相当する)が共通の回動軸65J(本発明の「回動盤回転支軸」に相当する)を中心に回動可能に軸支されて、本発明に係る「第1キャンセル機構」を構成している。リリース入力盤170は、図15(A)に示すように、回動軸65Jから下方に延びた第1回動片170Aと、横方向に延びた第2回動片170Bとを有している。第1回動片170Aの先端部からは、機構板81側に向かって当接ボス170Eが突出している。第2回動片170Bには、横長矩形の突部係合孔170R(本発明の「突部係合溝」に相当する)が形成されている。また、リリース入力盤170は、上方に向かって突出したスプリング係止フック170Cを備えている。
【0051】
そして、駆動モータ41Mにてアクティブレバー50を時計回り方向に回動させたときにアクティブレバー50に備えた加圧部50Tが第1回動片170Aの当接ボス170Eに当接し、リリース入力盤170が、トーションバネ170S(本発明の「モータ側回動盤付勢手段」に相当する)の付勢力に抗して図8の反時計回り方向に回動する。
【0052】
スライド回動盤175は、リリース入力盤170と機構板81との間に配置されている。また、スライド回動盤175は、リリース入力盤170における第2回動片170Bの長手方向に延びている。図15(B)に示すように、スライド回動盤175には、長手方向に沿って延びた長孔177(本発明の「支軸貫通長孔」に相当する)が形成されおり、その長孔177を回動軸65Jが貫通している。また、スライド回動盤175は先端部にスプリング係止フック175Bを突出して備えており、リリース入力盤170に備えたスプリング係止フック170Cとの間がスプリング85(本発明の「中継回動盤付勢手段」に相当する)によって連結されている(図8参照)。
【0053】
リリース入力盤170の先端部からは機構板81から離れる側に連結旋回突部175Aが突出している。この連結旋回突部175Aは、リリース入力盤170の突部係合孔170Rの幅と略同一の幅の角柱形状になし、その突部係合孔170Rを貫通して次述するリリースレバー165の突部受容溝165R(本発明の「突部受容凹部」に相当する)内にも受容されている。
【0054】
そして、スライド回動盤175は、スプリング85によって、長孔177の先端側に回動軸65Jが当接した状態に付勢にされ、スライド回動盤175が回動軸65Jの軸方向と直交する方向に移動することを規制している。また、スライド回動盤175の長手方向に外力を加えると、スプリング85の付勢力に抗してスライド回動盤175をスライドさせることができる。ここで、回動軸65Jが長孔177の先端部(図15(B)の左側端部)即ち、連結旋回突部175Aが突部係合孔170Rの回動軸65J側の端部に配置されたときのスライド回動盤175の位置が、「中継回動盤」に係る「動力伝達位置」に相当し、回動軸65Jが長孔177の基端部(図15(B)の右側端部)即ち、連結旋回突部175Aが突部係合孔170Rの回動軸65Jから離れた側の端部に配置されたときのスライド回動盤175の位置が、「中継回動盤」に係る「動力遮断位置」に相当する。
【0055】
そして、スライド回動盤175を動力伝達位置から動力遮断位置へと直動させるためのキャンセル操作バー176(本発明に係る「操作力伝達部材」に相当する)がスライド回動盤175に連結されている。キャンセル操作バー176は、長孔177を挟んで連結旋回突部175Aとは反対の基端部に連結ピン176Pによって回動可能に連結されている。キャンセル操作バー176は、スライド回動盤175の長手方向と略平行に延びており、その基端部が図8に示すように、機構板81の外縁部から側方に露出している。
【0056】
キャンセル操作バー176の長手方向の中央部より基端側部分には、長手方向に沿って延びた長孔176Rが形成されており、機構板81から起立したピン81Pが長孔176Rを貫通している。これにより、キャンセル操作バー176は、長手方向に直動可能とされかつピン81Pを支点として回動可能になっている。ピン81Pは、本発明の「操作部回転支軸」に相当する。
【0057】
キャンセル操作バー176の基端部には、押圧操作片176A(本発明の「キャンセル操作部」に相当する)が備えられている。押圧操作片176Aは、機構板81から離れる側(図15の紙面手前側)に突出したクランク形状をなしている。押圧操作片176Aは、スライドドア90の後端壁に形成された非常用操作孔90R(図7参照)に対向配置されており、その非常用操作孔90Rから挿入した所定のツールを突き当てることが可能となっている。なお、押圧操作片176Aのうち、機構板81に対して直角な壁部は、非常用操作孔90Rから見た正面が緩やかに湾曲した凹面状をなしている。そして、所定のツールとして先端が尖ったツールを使用した場合に、そのツールの先端部と凹凸係合する滑り止め用凹所176Bが形成されている。
【0058】
リリースレバー165は、図15(C)に示すように、回動軸65Jから斜め下方に延び、その下端部には図8に示すようにリリースケーブル91Wの一端が連結されている。そのリリースケーブル91Wの他端部は、リモコン装置91に連結されると共に、リリースケーブル91Wの中間部は被覆管91Hにて覆われている。ここで、リリースレバー165は後述するリモコン装置91に備えた第1原点保持スプリング98Sによってリリースケーブル91Wが引っ張られることにより、図8における時計回り方向に付勢されている。
【0059】
リリースレバー165は、回動軸65J寄りの基端部から中間部に亘った部分が扇形状に幅が広がっており、そこに突部受容溝165Rが形成されている。突部受容溝165Rは、回動軸65Jと直交する方向(具体的には、ラッチアンドポール機構20Kとは反対側)に開放した「コ」の字形状をなしている。そして、図8〜図11に示すように、スライド回動盤175が動力伝達位置に配置されたときには、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rに受容され、図12に示すように、スライド回動盤175が動力遮断位置に配置されたときには、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rの側方に離脱する。
【0060】
ここで、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rに受容された状態でアクティブレバー50から動力を受けてリリース入力盤170が回動すると、図10から図11の変化に示すように、スライド回動盤175及びリリースレバー165がリリース入力盤170と一体に回動する。これにより、リリースケーブル91Wをリモコン装置91からクローザ装置10B側に引くことができる。
【0061】
また、図11から図12の変化に示すように、スライド回動盤175を動力伝達位置から動力遮断位置に移動して、連結旋回突部175Aを突部受容溝165Rの側方に離脱させると、図13に示すように、スライド回動盤175に対してリリースレバー165が自在に回転可能になる。即ち、連結旋回突部175Aとリリースレバー165との間での力の伝達が遮断される。
【0062】
全開ドアロック装置10Cは、図示しないが閉鎖ドアロック装置10Aと同様に動作するラッチアンドポール機構を有している。全開ドアロック装置10Cのポールにも閉鎖ドアロック装置10Aと同様にポール駆動レバーが備えられ、そのポール駆動レバーとリモコン装置91との間がオープンケーブル94W(図2参照)にて連結されている。
【0063】
図16に概念的に示すように、リモコン装置91は、前記オープンケーブル92W,93W,94Wが一端部に連結されたリモコン回動レバー98を備えている。そのリモコン回動レバー98は第1原点保持スプリング98Sとストッパ98Tとによって原点位置(図16に示した位置)に付勢かつ位置決めされている。また、リモコン回動レバー98のうちオープンケーブル92W,93W,94Wとの連結部分に対して回動中心を挟んで反対側の端部には、前記リリースケーブル91Wが連結されている。これにより、駆動モータ41Mを駆動してリリースケーブル91Wをクローザ装置10B側に引くと、リモコン回動レバー98が原点位置から離れる方向(図16における反時計回り方向)に回動し、オープンケーブル92W,93W,94Wがリモコン装置91側に引かれる。これにより、閉鎖ドアロック装置10A、クローザ装置10B、全開ドアロック装置10Cの全てのポール30がリリース位置に移動し、全てのラッチ20の回動規制が一度に解除される。
【0064】
リモコン装置91には、スライドドア90の内面と外面とに別々に備えられたハンドル95が備えられている。それらハンドル95は、第2原点保持スプリング97Sとストッパ97Tとによって原点位置に付勢かつ保持されている。そして、その第2原点保持スプリング97Sに抗してハンドル95を原点位置から離れる側に移動操作すると、ハンドル95に連結されたハンドル連動部品97が原点位置から所定の単独可動域L1を通過し、リモコン回動レバー98に当接する。そして、この状態でハンドル95を原点位置からさらに離れる側に移動すると、ハンドル連動部品97がリモコン回動レバー98を押して回動させる。また、リモコン装置91には、ハンドル連動部品97が原点位置側から単独可動域L1に進入したことを検出するためのハンドル操作検出センサ96が備えられている。また、上記したハンドル操作検出センサ96の検出信号は、前記ラッチ位置検出センサの検出信号と共に車両本体99に備えた図示しないECUに取り込まれている。そして、ECUが、それら検出信号に基づいて駆動モータ41Mを以下に詳説するように駆動する。
【0065】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、上記構成による本実施形態の作用効果について説明する。スライドドア90を締めると、閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が対応したストライカ40とそれぞれ噛み合って回動する。このとき、スライドドア90を比較的強い力で閉めてスライドドア90が全閉状態になると、閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が図5及び図10に示すようにフルラッチ位置まで回動してそれらラッチ20にポール30(詳細には、ポール30のラッチ回動規制片31)が係合し、各ラッチ20のロック解除方向への回動が規制(禁止)される。これにより、スライドドア90が全閉状態に保持される。
【0066】
また、スライドドア90を比較的弱い力で閉めたために半ドア状態になると、閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が図4及び図8に示すようにハーフラッチ位置まで回動してそれらラッチ20にポール30が係合し、各ラッチ20のロック解除方向への回動が規制(禁止)され、半ドア状態に保持される。すると、クローザ装置10Bのラッチ位置検出センサにより、ラッチ20がハーフラッチ位置に位置していることが検出され、その検出結果がECUに取り込まれる。そして、ECUがクローザ装置10Bに備えた駆動モータ41Mのモータ出力軸を一方に回転させ、アクティブレバー50を図8における反時計回り方向に回転駆動する。このとき、位置決レバー63が当接コロ57に当接してシーソー形回動盤55の一端部を位置決めし、アクティブレバー50によってシーソー形回動盤55の回動軸55Jを持ち上げることで、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55に動力が伝達され、シーソー形回動盤55のの他端部(詳細には、シーソー形回動盤55に備えた押上壁56の先端部)がラッチ20のラッチ駆動レバー25を押し上げる。これにより、ラッチ20が図8に示したハーフラッチ位置から図9に示したフルラッチ位置に移動し、スライドドア90が半ドア状態から全閉状態になって保持される。
【0067】
ここで、半ドア状態から全閉状態に移行する途中でハンドル95を操作すると、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引かれて位置決レバー63がシーソー形回動盤55の当接コロ57から離間する。これにより、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55への動力の伝達が緊急遮断され、半ドア状態から全閉状態への移行をキャンセルすることができる。そして、ハンドル95の操作に連動してオープンレバー60も回動し、そのオープンレバー60の押下片61がポール30のポール駆動レバー133を押し下げるので、仮にクローザ装置10Bのポール30がラッチ20に係合していてもリリース位置に移動することができる。また、他のオープンケーブル93Wもハンドル95の操作によってリモコン装置91側に引っ張られるので、閉鎖ドアロック装置10Aにおけるポール30もリリース位置に移動する。これにより、スライドドア90を開くことができる。
【0068】
スライドドア90が全閉状態になると、スライドドア90とドア枠99Wとの間で防音部材が押し潰され、その反力によって閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ポール30と各ラッチ20とが摩擦係合した状態になる。一方、スライドドア90を開くには、これらポール30とラッチ20との摩擦抵抗に抗して閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの両ポール30をリリース位置に移動する必要があり、手動操作のみで両ポール30をリリース位置に移動するには大きな力を要する。しかしながら、本実施形態では、ハンドル95を操作すると、ポール30とラッチ20との摩擦抵抗がハンドル95にかかる前に、ハンドル操作検出センサ96がハンドル95が操作されたことを検出し、これを受けてECUが駆動モータ41Mのモータ出力軸を他方に回転させる。
【0069】
すると、アクティブレバー50が図10における時計回り方向に回転駆動され、そのアクティブレバー50から動力を受けてリリース入力盤170、スライド回動盤175及びリリースレバー165が同図における反時計回り方向に回動する。そして、図10から図11の変化に示すように、リリースレバー165がリリースケーブル91Wをクローザ装置10B側に引く。これにより、リモコン装置91のリモコン回動レバー98が回動し、オープンケーブル92W,93Wがリモコン装置91側に引かれて、駆動モータ41Mの動力により閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの両ポール30をリリース位置に移動することができ、容易にスライドドア90を開くことができる。
【0070】
また、スライドドア90を全開状態にすると、全開ドアロック装置10Cの図示しないラッチ20とストライカ40とが噛み合い、ポール30がラッチ20と摩擦係合する。この場合も、ハンドル95を操作することで、オープンケーブル94Wがリモコン装置91側に引かれて、駆動モータ41Mの動力により全開ドアロック装置10Cのポール30をリリース位置に移動することができる。これにより、容易にスライドドア90を閉じることができる。
【0071】
さて、図11に示すようにリリースケーブル91Wがリモコン装置91からクローザ装置10B側に引っ張られた状態で、駆動モータ41Mと共にリリース入力盤170、スライド回動盤175及びリリースレバー165が異常停止した場合には、ECUが駆動モータ41Mへの通電状態等からこの異常停止を検出し、例えば、図示しない運転席の警告灯(本発明に係る「異常報知手段」に相当する)を点灯する。この状態では、オープンレバー60がポール駆動レバー133の押下片135を押し下げてポール30がリリース位置から戻らないため、ラッチ20をストライカ40と噛み合った状態に保持することができない。即ち、スライドドア90を完全に閉じた全閉状態にすることができない。
【0072】
このような場合、運転者は、スライド回動盤175を動力遮断位置に切り替えればよい。即ち、スライドドア90の後端壁に設けられた非常用操作孔90Rからツール(車両のキーやドライバー等)を挿入してキャンセル操作バー176を奥に押す。すると、スライド回動盤175が長孔177に沿って直動して連結旋回突部175Aがリリースレバー165の突部受容溝165Rの外側へ押し出され、スライド回動盤175とリリースレバー165との連結が解除される(図12参照)。これにより、連結旋回突部175Aとリリースレバー165との間での力の伝達が遮断されると共に、リリースレバー165がスライド回動盤175に対して自在に回転可能となる。なお、警告灯の消灯は、スライド回動盤175を適切な位置に操作したことを検出することで行われる。そして、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rから押し出されると、リモコン回動レバー98が第1原点保持スプリング98Sによって原点位置(図16に示した位置)に戻され、これにより、リリースケーブル91Wがリモコン装置91側に引かれるので、図13に示すように、リリースレバー165がスライド回動盤175に対して個別に回転して元の位置に戻される。また、リリースレバー165が回動すると、連結旋回突部175Aに対してリリースレバー165の突部移動規制部165Aが回動軸65J側から対向して、連結旋回突部175Aが回動軸65J側に接近することが規制される。即ち、スライド回動盤175は動力遮断位置に維持される。
【0073】
これにより、駆動モータ41Mが異常停止しても、閉鎖ドアロック装置10A、クローザ装置10B、全開ドアロック装置10Cのポール30をリリース位置からラッチ20に係合する位置に戻すことができ、スライドドア90を閉じた状態に保持することが可能になる。
【0074】
さらに、スライド回動盤175が動力遮断位置でかつリリースレバー165だけが単独で元の位置に戻された状態(図13の状態)で、駆動モータ41Mが復帰し、アクティブレバー50がリリース入力盤170(当接ボス170E)から離れる方向に回動すると、図13から図14への変化に示すように、リリース入力盤170及びスライド回動盤175がトーションバネ170S(図8参照)の付勢力にて元の位置に戻る。そして、リリース入力盤170に備えた突部係合孔170Rとリリースレバー165の突部受容溝165Rとが重なって一致すると、スプリング85の付勢力によって、スライド回動盤175の連結旋回突部175Aがリリースレバー165の突部受容溝165Rに再受容される。即ち、スライド回動盤175が自動的に動力伝達位置に復帰すると共に、キャンセル操作バー176がスライドドア90の非常用操作孔90Rに向けて押し戻される(図10参照)。
【0075】
このように本実施形態のクローザ装置10Cによれば、駆動モータ41Mがポール30をリリース位置にした状態で動作不能になった場合には、手動操作によってスライド回動盤175を動力伝達位置から動力遮断位置に移動させることで、駆動モータ41Mとポール30との間の力の伝達が遮断され、トーションバネ30Sの付勢力によってポール30をラッチ係止位置に戻すことができる。これにより、ドア10を全閉状態にロックすることが可能になる。また、駆動モータ41Mがポール30をリリース位置に保持した状態で動作不能になった場合には警告灯にて異常を報知するので迅速な対応が可能になる。なお、異常報知手段としては、警告灯以外にも警告音や警報でもよい。
【0076】
また、キャンセル操作バー176の押圧操作片176Aは、スライドドア90のうち、閉止したときにドア枠99Wとの間に挟まれて隠される位置(スライドドア90の後端壁)に形成された非常用操作孔90Rに対向配置されたので、押圧操作片176Aが操作目的を知らない者にとって見つけ難くなり、誤って操作されることを防ぐことができる。なお、非常用操作孔90Rを常にはシールしておき、必要に応じてシールを取り外し可能にすれば、より確実に誤操作を防ぐことができる。
【0077】
また、スライド回動盤175を手動で動力遮断位置に切り替えた後で駆動モータ41Mが復帰した場合には、スライド回動盤175が自動的に動力伝達位置に復帰するので、手動で動力伝達位置に戻すという作業が不要になる。
【0078】
キャンセル操作バー176の先端部はスライド回動盤175の基端部に連結されているので、図8〜図11に示すように、スライド回動盤175の回動に伴い、キャンセル操作バー176の基端部に設けられた押圧操作片176Aが、ピン81Pを支点として上下に揺動する。これに対し、本実施形態では、キャンセル操作バー176のうち、ピン81Pに対して押圧操作片176A側を、ピン81Pに対してスライド回動盤175側より短くした(換言すれば、ピン81Pを受容した長孔176Rが、キャンセル操作バー176の長手方向の中央部より押圧操作片176A側に設けられている)ので、スライド回動盤175の回動に伴う押圧操作片176Aの揺動幅を比較的小さくすることができる。これにより、押圧操作片176Aと他の部品との干渉を避けるためのクリアランスを小さく抑えることができる。
【0079】
さらに、本実施形態によれば、駆動モータ41Mを、半ドア状態から全閉状態にするための動力源と、スライドドア90を開く際のハンドル操作を補助する動力源との両方に兼用することができ、製造コスト及び重量を抑えることができる。
【0080】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るクローザ装置10Bは図17〜図25に示されており、図23,24にはクローザ装置10Bの部品が色分けして示されている。この第2実施形態は、クローザ装置10Bの第1キャンセル機構の構造と、クローザ装置10Bのラッチアンドポール機構20Kに備えたラッチ及びポール駆動レバーの形状が上記第1実施形態とは異なる。その他の構成については上記第1実施形態と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0081】
図17には、本実施形態のクローザ装置10Bの全体が示されている。同図における符号84はラッチ20を覆ったラッチポールカバーであり、符号83はラッチ20がハーフラッチ位置(図18参照)、フルラッチ位置(図19参照)及びアンラッチ位置(図21参照)の何れの位置に配置されているかを検出するためのラッチ位置検出センサであり、符号84Sはラッチポールカバー84に備えたストッパである。
【0082】
図18に示すように、ラッチ20は、上記第1実施形態におけるハーフラッチ係止突部を備えておらず、ラッチ駆動レバー25及び位置検出ピン28のみを備えている。位置検出ピン28の先端部は、ラッチポールカバー84を貫通してラッチ位置検出センサ83に連結されている(図17参照)。ポール30がラッチ20の前側の係止爪22に当接してラッチ20がハーフラッチ位置(図18参照)にされた状態で、ラッチ駆動レバー25は斜め下方を向いており、この状態でシーソー形回動盤55によってラッチ駆動レバー25が上方に押し上げられると、ラッチ20は、後側の係止爪22の先端部にポール30が当接したフルラッチ位置(図19参照)へと移動する。
【0083】
ポール30の回動軸30Jの先端部からは、側方にポール駆動レバー33が張り出している。ポール駆動レバー33の先端部は二股に分かれており、その二股の先端部の一方からストッパ片34が突出形成されている。そして、ストッパ片34がラッチポールカバー84に備えたストッパ84Sと当接することで、ポール30がラッチ20の回動を規制可能な位置に位置決めされている。また、ポール駆動レバー33の二股の先端部の他方は、オープンレバー60の押下片61によって押し下げ可能になっている。
【0084】
図17に示すように、オープンレバー60の上方には、リリース入力盤70(本発明の「モータ側回動盤」に相当する)、スライド回動盤75(本発明の「中継回動盤」に相当する)及びリリースレバー65(本発明の「ポール側回動盤」に相当する)が共通の回動軸65Jを中心に回動可能に軸支されて、本発明に係る「第1キャンセル機構」を構成している。リリース入力盤70は、図25(A)に示すように、回動軸65Jから下方に延びた第1回動片70Aと、横方向に延びた第2回動片70Bとを有している。第2回動片70Bには、横長矩形の突部係合孔70Rが形成されている。また、第2回動片70Bの先端には、上方を向いたストッパ当接部70Cが形成されている。そして、図17に示すように、機構板81に備えたストッパ81Sにストッパ当接部70Cが当接して、リリース入力盤70が回動可能範囲の一端に位置決めされている。
【0085】
第1回動片70Aには、その下端部を機構板81側に曲げ起こし、その曲げ起こした部分を図17に示すようにラッチアンドポール機構20Kと反対側に突出させかつU字形に湾曲させて湾曲当接部70Tが形成されている。そして、駆動モータ41Mにてアクティブレバー50を時計回り方向に回動させたときにアクティブレバー50に備えた加圧部50Tが湾曲当接部70Tに当接し、リリース入力盤70が同図の反時計回り方向に回動する。
【0086】
スライド回動盤75は、図24に示すように、リリース入力盤70と機構板81との間に配置されている。また、スライド回動盤75は、リリース入力盤70における第2回動片70Bの長手方向に延びており、先端側の幅が先細り形状をなす一方、基端側が末広がり形状になっている。図25(B)に示すように、スライド回動盤75には、長手方向に沿って延びた長孔77(本発明の「支軸貫通長孔」に相当する)が形成されると共に、その長孔77の両側には長孔77と平行に1対のスリット78,78が形成されている。また、長孔77の両内側面には、長孔77の基端寄り位置に(図25(B)の右側端部寄り位置)に1対の突起76A,76Aが突出形成されている。そして、その長孔77の基端部を貫通した回動軸65Jと突起76A,76Aとの係止により、スライド回動盤75が回動軸65Jの軸方向と直交する方向に移動することを規制している。また、スライド回動盤75の長手方向に外力を加えると、長孔77と各スリット78との間の両持ち梁部76を撓ませて突起76A,76Aが回動軸65Jを乗り越え、スライド回動盤75をスライドさせることができる。ここで、回動軸65Jが長孔77の基端部(図25(B)の右側端部)に配置されたときのスライド回動盤75の位置が、本発明に係る「中継回動盤」に係る「動力伝達位置」に相当し、回動軸65Jが長孔77の先端部(図25(B)の左側端部)に配置されたときのスライド回動盤75の位置が、「中継回動盤」に係る「動力遮断位置」に相当する。
【0087】
そして、スライド回動盤75を動力伝達位置と動力遮断位置との間でスライド操作するためのキャンセル操作突部75B(本発明に係る「キャンセル操作部」に相当する)がスライド回動盤75の基端部に設けられている。そのスライド回動盤75の基端部は、図24に示すように、機構板81の外縁部から側方に露出しており、その露出部分からキャンセル操作突部75Bが突出している。また、リリース入力盤70の先端部からは機構板81から離れる側に連結旋回突部75Aが突出している。この連結旋回突部75Aは、リリース入力盤70の突部係合孔70Rの幅と略同一の幅の角柱形状をなし、その突部係合孔70Rを貫通して次述するリリースレバー65のクランク溝65R内に受容されている。
【0088】
リリースレバー65は、図25(C)に示すように、回動軸65Jから斜め下方に延び、その下端部には図17に示すようにリリースケーブル91Wの一端が連結されている。そのリリースケーブル91Wの他端部は、リモコン装置91に連結されると共に、リリースケーブル91Wの中間部は被覆管91Hにて覆われている。また、リリースレバー65は、スプリング82によって図17における時計回り方向に付勢されている。さらに、リリースレバー65は、回動軸65J寄りの基端部から中間部に亘った部分が扇形状に幅が広がっており、そこにクランク溝65Rが形成されている。クランク溝65Rは、図25(C)に示すように、回動軸65Jを中心とした円弧形状の外側円弧溝65R1と、その外側円弧溝65R1より曲率半径が小さい内側円弧溝65R2とを連絡してなり、全体が略クランク状になっている。そして、図17〜図21に示すように、スライド回動盤75が動力伝達位置に配置されたときには、連結旋回突部75Aが外側円弧溝65R1に受容され、図22に示すように、スライド回動盤75が動力遮断位置に配置されたときには、連結旋回突部75Aが内側円弧溝65R2に受容される。
【0089】
ここで、連結旋回突部75Aが外側円弧溝65R1に受容された状態でアクティブレバー50から動力を受けてリリース入力盤70が回動すると、それと一体にスライド回動盤75が回動する。すると、図19から図20の変化に示すように、連結旋回突部75Aが、外側円弧溝65R1を一端から他端に移動し、外側円弧溝65R1の端部の突部当接部65S1に当接する。そして、リリース入力盤70及びスライド回動盤75が更に回動すると、図20から図21の変化に示すように、連結旋回突部75Aが突部当接部65S1を押すことでリリースレバー65がスライド回動盤75から動力を受けて回動し、これによりリリースケーブル91Wをリモコン装置91からクローザ装置10B側に引くことができる。
【0090】
また、図21に示すように、連結旋回突部75Aが突部当接部65S1に当接した状態になると、スライド回動盤75を動力遮断位置に移動して、連結旋回突部75Aを内側円弧溝65R2に移動することができる。すると、連結旋回突部75Aからリリースレバー65への動力の伝達が遮断され、連結旋回突部75Aが内側円弧溝65R2内を相対的に自由に旋回可能になり、スライド回動盤75からリリースレバー65への動力及び反力の伝達が遮断される。
【0091】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、上記構成による本実施形態の作用効果について説明する。なお、閉鎖ドアロック装置10A及び全開ドアロック装置10Cと、クローザ装置10Bのうち第1キャンセル機構以外の動作は、概ね第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0092】
スライドドア90が全閉状態でハンドル95を操作すると、ポール39とラッチ20との摩擦抵抗がハンドル95にかかる前に、ECUが駆動モータ41Mのモータ出力軸を回転させる。
【0093】
すると、アクティブレバー50が図20における時計回り方向に回転駆動され、そのアクティブレバー50から動力を受けてリリース入力盤70及びスライド回動盤75が同図における反時計回り方向に回動する。そして、スライド回動盤75の連結旋回突部75Aがリリースレバー65の外側円弧溝65R1における一端側の突部当接部65S1に当接し、図20から図21の変化に示すように、リリースレバー65がリリース入力盤70及びスライド回動盤75と共に回動して、リリースケーブル91Wをクローザ装置10B側に引く。これにより、リモコン装置91のリモコン回動レバー98が回動し、オープンケーブル92W,93Wがリモコン装置91側に引かれて、駆動モータ41Mの動力により閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの両ポール30をリリース位置に移動することができ、容易にスライドドア90を開くことができる。
【0094】
図21に示すように、リリースケーブル91Wをリモコン装置91からクローザ装置10B側に引いた状態で、駆動モータ41Mと共にリリース入力盤70及びスライド回動盤75が異常停止した場合には、ECUが駆動モータ41Mへの通電状態等からこの異常停止を検出し、例えば、図示しない運転席の警告灯(本発明に係る「異常報知手段」に相当する)を点灯する。この場合、運転者は、キャンセル操作突部75Bを摘んでスライド回動盤75を斜め上方にスライドさせ、動力遮断位置に移動させればよい。すると、連結旋回突部75Aと突部当接部65S1との当接が解除されて、連結旋回突部75Aが内側円弧溝65R2に受容される。これにより、連結旋回突部75Aからリリースレバー65への動力の伝達が遮断される。なお、警告灯の消灯は、スライド回動盤75を適切な位置に操作したことを検出することで行われる。そして、連結旋回突部75Aが内側円弧溝65R2内を相対的に旋回するようにして、リリースレバー65がスプリング82に引っ張られて元の位置に戻る。これにより、リモコン回動レバー98も原点位置に戻り、駆動モータ41Mが異常停止しても、閉鎖ドアロック装置10A、クローザ装置10B、全開ドアロック装置10Cのポール30をリリース位置からラッチ20に係合する位置に戻すことができ、スライドドア90を閉じた状態に保持することが可能になる。このように、本実施形態においても、上記第1実施形態と同等の効果を奏する。
【0095】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0096】
(1)前記実施形態の車両ドアロックシステム10には、本発明を適用したクローザ装置10Bの他に、閉鎖ドアロック装置10Aと全開ドアロック装置10Cとが備えられていたが、図26に示すように、本発明を適用した(前記実施形態のクローザ装置10Bと同様のアクチュエータ41、リリース動力伝達部及びクローズ動力伝達部を備えた)閉鎖ドアロック装置10B1をスライドドア90の前端部に設けて、クローザ装置10B及び全開ドアロック装置10Cは有しない構成としてもよい。また、本発明を適用した閉鎖ドアロック装置10B1と前記実施形態で説明した全開ドアロック装置10Cを備えてクローザ装置10Bを有しない構成としてもよい。さらに、前記実施形態で説明した閉鎖ドアロック装置10Aとクローザ装置10Bとを備えて全開ドアロック装置10Cを有しない構成としてもよい。
【0097】
(2)前記実施形態では、スライドドア90に取り付けたクローザ装置10Cに本発明を適用していたが、図27に示すように、車両本体に回動可能に備えられた回動ドア90Aに取り付けられた回動ドアロック装置10B2に、本発明を適用してもよい。この場合、回動ドアロック装置10B2は、ラッチアンドポール機構、前記アクチュエータ41、リリース動力伝達部及びクローズ動力伝達部を設けた構成にしておけばよい。
【0098】
(3)前記第2実施形態では、クローザ装置10Bの駆動モータ41Mが異常停止した場合には、キャンセル操作突部75Bを操作して駆動モータ41Mとポール30との間の動力の伝達系統を遮断する構成であったが、例えば、別の構成として以下のように構成してもよい。即ち、リモコン装置91のハンドル95が操作されてその可動範囲の始端部から終端部の手前まで移動する間は駆動モータ41Mとポール30との間が動力の伝達が可能な状態に保持され、ハンドル95が可動範囲の終端部に至ったときに動力が遮断された状態に切り替わり、さらに、ハンドル95が可動範囲の始端部に戻ったときに動力の伝達が可能な状態に戻るように構成してもよい。
【0099】
(4)また、駆動モータ41Mが異常停止した場合に操作されるキャンセル操作突部75Bは、スライドドア90のうち車内を向いた内側面に配置してもよいし、例えば、ドアのうちドア枠の内面と対向する面に配置して、ドアを閉めた際に、キャンセル操作突部75Bがドアと車両本体との間に挟まれて隠れるようにしてもよい。そのような構成にすれば、キャンセル操作突部75Bが操作目的を知らない者にとって見つけ難くなり、誤って操作されることを防ぐことができる。
【0100】
(5)前記実施形態では、リリース動力伝達部とクローズ動力伝達部の両方を備えた構成であったが、リリース動力伝達部だけを備えた構成としてもよい。具体的には、シーソー形回動盤55及び位置決レバー63を有しない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両ドアラッチ装置を備えた車両の概念図
【図2】車両ドアラッチ装置を備えたスライドドアの概念図
【図3】アンラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図4】ハーフラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図5】フルラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図6】オーバーラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図7】クローザ装置の側面図
【図8】ハーフラッチ状態のクローザ装置の正面図
【図9】フルラッチ状態のクローザ装置の正面図
【図10】リリースレバーに当接する直前の状態のクローザ装置の正面図
【図11】ラッチ駆動モータの動力によりポールをリリース位置に移動した状態のクローザ装置の正面図
【図12】ラッチ駆動モータの異常停止時にスライド回動盤を動力遮断位置に移動させた直後のクローザ装置の正面図
【図13】リリースレバーが元の位置に戻った状態のクローザ装置の正面図
【図14】ラッチ駆動モータが復帰してスライド回動盤が動力伝達位置に復帰する直前のクローザ装置の正面図
【図15】第1キャンセル機構の構成部品の正面図
【図16】リモコン装置の概念図
【図17】第2実施形態に係るクローザ装置の正面図
【図18】ハーフラッチ状態のクローザ装置の正面図
【図19】フルラッチ状態のクローザ装置の正面図
【図20】リリースレバーに動力を伝達した状態のクローザ装置の正面図
【図21】ラッチ駆動モータの動力によりポールをリリース位置に移動した状態のクローザ装置の正面図
【図22】ラッチ駆動モータの異常停止時にラッチ駆動モータとポールとの間の動力の伝達を遮断した状態のクローザ装置の正面図
【図23】クローザ装置の正面図
【図24】クローザ装置の裏面図
【図25】第1キャンセル機構の構成部品の正面図
【図26】変形例1の車両ドアラッチ装置を備えたスライドドアの概念図
【図27】変形例2の車両ドアラッチ装置を備えた回動ドアの概念図
【符号の説明】
【0102】
10B クローザ装置(車両ドアラッチ装置)
20 ラッチ
30 ポール
30S トーションバネ(ポール付勢手段)
40 ストライカ
41M 駆動モータ(モータ)
50 アクティブレバー(アクティブ回動盤)
55 シーソー形回動盤(シーソー形回動部品)
63 位置決レバー(位置決可動部材)
65,165 リリースレバー(ポール側回動盤)
65J 回動軸(回動盤回動支軸)
65R2 内側円弧溝(突部受容凹部)
70,170 リリース入力盤(モータ側回動盤)
75,175 スライド回動盤(中継回動盤)
75A,175A 連結旋回突部
75B キャンセル操作突部(キャンセル操作部)
77,177 長孔(支軸貫通長孔)
81P ピン(操作部回転支軸)
85 スプリング(中継回動盤付勢手段)
90 スライドドア(ドア)
90R 非常用操作孔
99 車両本体
165A 突部移動規制部
165R 突部受容溝(突部受容凹部)
170S トーションバネ(モータ側回動盤付勢手段)
170R 突部係合孔(突部係合溝)
176 キャンセル操作バー(操作力伝達部材)
176A 押圧操作片(キャンセル操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、
前記ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置と前記ラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、
前記ポールを前記ラッチ係止位置に付勢するポール付勢手段と、
前記ドアに備えたドア開放操作部の操作に応じて起動するモータと、
前記モータの一方向の回転動力を前記ポールに伝達して、前記ポールを前記ラッチ係止位置から前記ラッチ係止解除位置へと回転駆動するためのリリース動力伝達部とを備え、
前記ポールが前記ラッチ係止位置に位置して前記ドアを閉止位置に保持する一方、前記ドア開放操作部の操作に応じて前記ポールが前記モータの動力により前記ラッチ係止位置から前記ラッチ係止解除位置へと回転駆動されて前記ドアを開放可能とする車両ドアラッチ装置において、
前記リリース動力伝達部に設けられて、共通の回動盤回転支軸に回転可能に軸支されたモータ側回動盤、中継回動盤及びポール側回動盤と、
それら3つの回動盤のうち前記中継回動盤のみに形成されて、前記回動盤回転支軸が貫通し、前記中継回動盤を前記回動盤回転支軸と直交する方向に直動可能とする支軸貫通長孔と、
前記中継回動盤が前記直動可能範囲の一端側の動力伝達位置に配置された状態で、前記モータ側回動盤、前記中継回動盤及び前記ポール側回動盤を一体回転可能に連結して、前記モータの一方向の回転動力を、前記モータ側回動盤、前記中継回動盤、前記ポール側回動盤、前記ポールの順で伝達可能とする一方、前記中継回動盤が前記直動可能範囲の他端側の動力遮断位置に配置された状態で、前記連結を解除して前記モータ側回動盤と前記ポール側回動盤とを個別回転可能とし、前記モータ側回動盤と前記中継回動盤との間、又は、前記中継回動盤と前記ポール側回動盤との間で、前記モータと前記ポールとの間の力の伝達を分断する第1キャンセル機構と、
前記ドアに形成された非常用操作孔との対向位置に配置され、前記ポールが前記ラッチ係止解除位置に配置された状態で前記モータが停止したときに、手動操作によって前記中継回動盤を前記動力伝達位置から前記動力遮断位置に移動するためのキャンセル操作部とを備えたことを特徴とする車両ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記キャンセル操作部は、前記ドアのうち前記車両本体との間に挟まれて隠される位置に形成された前記非常用操作孔との対向位置に配置されると共に、前記キャンセル操作部が押圧操作されて前記中継回動盤が前記動力伝達位置から前記動力遮断位置に移動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項3】
略水平方向に延びて、一端部が前記非常用操作孔を介してドアの外側に臨み、他端部が前記中継回動盤に回動可能に連結された操作力伝達部材を設け、
その操作力伝達部材の一端部を前記キャンセル操作部とし、
前記中継回動盤を軸支する前記回動盤回転支軸と平行に延びた操作部回転支軸により、前記操作力伝達部材の中間部を回転可能かつ直動可能に軸支したことを特徴とする請求項2に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記操作力伝達部材のうち前記操作部回転支軸に対して前記キャンセル操作部側を、前記操作部回転支軸に対して前記中継回動盤側よりも短くしたことを特徴とする請求項3に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項5】
前記第1キャンセル機構は、前記中継回動盤のうち前記回動盤回転支軸を挟んで前記操作力伝達部材と反対側に設けられ、前記回動盤回転支軸と平行な方向に突出し、前記中継回動盤の前記動力伝達位置で前記回動盤回転支軸に接近する一方、前記中継回動盤の前記動力遮断位置で前記回動盤回転支軸から離れる連結旋回突部と、
前記モータ側回動盤に形成され、前記連結旋回突部を前記回動盤回転支軸に接離する方向で直動可能に受容すると共に、その直動可能な全範囲で前記連結旋回突部の側面に係合して前記中継回動盤と前記モータ側回動盤とを一体回転可能に連結する突部係合溝と、
前記ポール側回動盤に形成され、前記連結旋回突部がその直動可能な範囲のうち前記回動盤回転支軸側の一端部に位置したときに、その連結旋回突部を受容して前記中継回動盤と前記ポール側回動盤とを一体回転可能に連結すると共に、前記連結旋回突部がその直動可能な範囲のうち前記回動盤回転支軸から離れた他端部に位置したときに、その連結旋回突部が離脱して、前記中継回動盤と前記ポール側回動盤とを個別回転可能にする突部受容凹部と、
前記ポール側回動盤のうち前記突部受容凹部の側方に形成されて、前記突部受容凹部から離脱した前記連結旋回突部に対して前記回動盤回転支軸側から対向し、前記連結旋回突部が前記回動盤回転支軸側に接近することを規制する突部移動規制部とを備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項6】
前記中継回動盤を前記動力伝達位置側に付勢する中継回動盤付勢手段と、
前記モータ側回動盤を、前記モータの一方向の回転動力による回転方向と反対側に付勢するモータ側回動盤付勢手段とを設け、
前記ラッチ係止解除位置で前記モータが停止し、前記キャンセル操作部の操作により前記中継回動盤を前記動力遮断位置に移動すると、前記ポール付勢手段により前記ポールが前記ラッチ係止位置へと回動すると共に、前記ポールに連動して、前記ポール側回動盤が回動して前記連結旋回突部が前記突部移動規制部に係止し、
前記モータが復帰して前記モータが他方向に回動すると、前記モータ側回動盤付勢手段によって前記モータ側回動盤が回転駆動されて、前記連結旋回突部が前記突部受容凹部に受容されて前記中継回動盤が前記動力伝達位置に復帰することを特徴とする請求項5に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項7】
前記キャンセル操作部は、前記非常用操作孔に突入させたツールによって押圧操作可能な位置に配置されたことを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項8】
前記モータが前記ポールを前記ラッチ係止解除位置に保持した状態で動作不能になった場合に、異常を報知する異常報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項9】
前記リリース動力伝達部には、前記モータの回転出力軸にギヤ連結され、前記モータの一方向の回転動力により回転駆動されたときに、前記モータ側回動盤における回動中心から離れた端部を押圧して前記モータ側回動盤に動力を伝達するアクティブ回動盤が備えられ、
前記アクティブ回動盤は、前記モータの他方向の回転動力によって前記モータ側回動盤から離れる側に回転駆動されたときには、その回転動力を前記ラッチに伝達して前記ラッチを前記ストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動して前記ドアを完全に閉じた全閉状態に移行するように構成したことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項10】
前記モータと前記ラッチとの間で動力を伝達するクローズ動力伝達部に、第2キャンセル機構を設け、
前記第2キャンセル機構は、
前記アクティブ回動盤のうちその回動軸からオフセットした位置に回動可能に軸支されたシーソー形回動部品と、
通常は前記シーソー形回動部品の一端部を位置決めするシーソー当接位置に配置されかつ、前記ドア開放操作部の操作に連動して前記位置決めを解除するシーソー解放位置に移動する位置決可動部材とを備え、
前記位置決可動部材を前記シーソー当接位置に配置したときに、前記シーソー形回動部品の一端部が位置決めされた状態で前記シーソー形回動部品の回動軸が前記アクティブ回動盤の回動と共に移動することで、前記シーソー形回動部品の他端部から前記ラッチに動力を付与する一方、
前記位置決可動部材を前記シーソー解放位置に配置したときに、前記シーソー形回動部品が前記アクティブ回動盤に対して自在に回動し、前記ラッチへの動力が遮断されることを特徴とする請求項9に記載の車両ドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−264004(P2009−264004A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115181(P2008−115181)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】