説明

車両ランプシステム

【課題】自車の走行の優先度をランプの点灯状態によって報知することで、他車における不要な操作を無くし、安全走行を確保するとともに車両の円滑な走行を確保する車両ランプシステムを提供する。
【解決手段】自車の走行情報を検出する自車走行情報検出手段14と、他車の走行情報を検出する他車走行情報検出手段他15と、自車走行情報と他車走行情報に基づいて自車と他車の優先度を演算する優先度演算手段16と、得られた優先度に基づいて自車のランプHL,TSLの点灯形態を変化制御するランプ制御手段17を備える。他車のランプの点灯形態を視認することで自車間の優先度を確認し、これに対応した走行を行うことで円滑な走行が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に備えられる照明用あるいは標識用のランプに関し、特に接近する車両間における走行の優先度を他車に報知することを可能にした車両ランプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車における運転補助のため、ナビゲーション装置から得られる道路情報や、車両と道路に設置した通信装置との間で情報通信を行って得られる路車間通信情報、さらには車両相互間で情報通信を行って得られる車々間通信情報を利用することが考えられている。特に、路車間通信や車々間通信では他車の車速や加減速等の情報を入手することが可能であるため、これらの情報に基づいて自動車の安全走行を確保したシステムの構築が可能になる。特許文献1では自車(第1車両)が走行する前方の交差道路に到達するまでの時間を演算し、この時間を周波数情報として送信する技術が提案されている。この技術を利用することで、他車(第2車両)は第1車両から送信される周波数情報を受信し、第2車両は交差道路に到達するまでの時間を演算して衝突の可能性の有無を判断し、衝突のおそれがある場合には回避行動を起こすことで、第1車両との衝突を未然に防ぐことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−64331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、各車両は互いに他車の状況を判断して衝突の可能性について判定し、この判定の後の衝突回避の処理を行っているが、この処理は自車において単独に行うものであるため他車において認識することができない。そのため、交差道路に進入してくる他車を確認し、先に交差道路に進入する優先度が自車にあるのか他車にあるのかを判定した場合でも他車がこのことを認識していることを確認することができない。他車に優先度がある場合には自車を加速することなく交差道路に進入すればよく、それほど問題になることはない。しかし、自車に優先度があるのにかかわらず他車がこれを認識していることを確認できないため、ひょっとすると他車が先に交差道路に進入してしまうのではないかと考え、自車の運転者は他車が確実に遅れて交差道路に進入することを確認するまで慎重な走行、例えば減速を行わざるを得ない。そのため、本来は不要な減速操作が行われることになり、その結果自車が交差道路に進入するタイミングが遅れ、却って他車に接近してしまうこともある。また、他車においても同様に減速操作を行うことになり、結果として自車や他車の後続車も減速することが余儀なくされ、道路上における車両の円滑な走行の障害になり、渋滞を発生する要因の一つにもなる。
【0005】
本発明の目的は自車における優先度をランプの点灯状態によって報知することにより、他車が優先度を認識できるようにし、車両における不要な走行操作を無くし、安全走行を確保するとともに車両の円滑な走行を確保することを可能にした車両ランプシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車の走行情報を検出する自車走行情報検出手段と、他車の走行情報を検出する他車走行情報検出手段と、自車走行情報と他車走行情報に基づいて自車と他車の走行に際しての優先度を演算する優先度演算手段と、得られた優先度に基づいて自車のランプの点灯形態を変化制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
例えば、ランプはヘッドランプであり、ランプ制御手段は得られた優先度に基づいてヘッドランプの照明光の一部の色を変化制御する構成とする。自車の優先度が高いときに照明光の一部を刺激度の高い色に着色し、優先度が低いときには刺激度の低い色で着色する。
【0008】
あるいは、ランプはターンシグナルランプであり、ランプ制御手段は得られた優先度に基づいてターンシグナルランプの点滅パターンを変化制御する。例えば、自車に配設された複数のターンシグナルランプの点滅パターンを変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自車と他車の優先度に基づいて自車のランプの点灯形態を変化させ、この点灯形態によって自車の優先度を他車に認識させることができる。また、他車のランプの点灯形態から他車の優先度を確認することができる。これにより、自車と他車のそれぞれが優先度を確認し、当該優先度に応じた走行を行うことで、走行の安全性を確保するとともに、無駄な減速が不要になり渋滞の発生を未然に防止した円滑な走行が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のシステムの概略を示す概念構成図。
【図2】本発明のシステムを構築する自動車のブロック構成図。
【図3】車両間の優先度を説明する模式図。
【図4】ヘッドランプの縦断面図と正面図。
【図5】優先度に対応したヘッドランプの配光図。
【図6】優先度に対応したターンシグナルランプの点滅形態図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の車両ランプシステムの概念構成図である。主線道路MRを走行する自動車(以下、第1車両)CAR1と、この道路の前方において交差するあるいは合流する道路SRを走行する自動車(以下、第2車両)CAR2と、その他の自動車、ここでは第1車両CAR1の斜め後方の近傍を走行する第3車両CAR3を示している。道路MR,SRには車両センサや監視カメラ等を備えた例えばITS(高度道路交通システム)等の端末装置を含む固定監視装置SSDが配設されており、当該道路を走行する自動車との間で赤外線や超短波による無線通信が可能である。各車両CARは自車の車速、走行車線、加減速状態等の走行情報を検出し、これを固定監視装置SSDに送信する。また、各車両は当該固定監視装置SSDから他車の車速、走行車線、加減速状態等の走行情報を取得することも可能とされている。さらに、各車両は、検出した自車の走行情報を他車に対しても送信可能であり、その反対に他車の走行情報を当該他車から受信して取得することも可能である。このように、各車両は固定監視装置SSDを介して、あるいは車々間で直接的に他車の走行情報を取得することが可能とされている。
【0012】
図2は各車両CAR1〜3の構成を示すブロック図である。各車両は自車の前方領域を撮像し、当該道路の前方における標識、路面表示、道路形状、先行車等を検出するための前方監視カメラ10を備えている。また、GPSを利用したナビゲーション装置11を備えており、このナビゲーション装置11により走行する道路の道路情報が取得可能である。この道路情報としては、当該道路を含む地域における走行道路地図情報はもとより、当該地域における車両速度制限、一時停止義務、一方通行規制等の当該地域に固有の道路情報を取得できるように構成されている。また、前記したように固定監視装置SSDとの間で通信を行う路車間通信装置12と、他車との間で相互通信を行う車々間通信装置13を備えている。さらに、詳細については省略するが、自車のナビゲーション装置の情報に加えて、車速センサSv、加減速センサSa、操舵センサSs等の各センサ出力に基づいて自車の現在の車速、加減速、走行車線等の走行情報を検出する自車走行情報検出装置14を備えている。また、他車走行情報検出装置15を備えており、路車間通信装置12での通信により地上監視装置から送信されてくる、あるいは車々間通信装置13での通信により他車から送信されてくる他車走行情報を検出することが可能である。
【0013】
さらに、図2に示すように、優先度演算装置16を備えている。この優先度演算装置16は、前記ナビゲーション装置11から得られる道路情報と、前記自車走行情報検出装置14で検出した自車走行情報と、前記他車走行情報検出装置15で検出した他車走行情報とに基づいて所要のアルゴリズムでの演算を行い、自車と他車との走行時、特に交差または合流する際の優先度を演算する。ここではナビゲーション装置11からの道路情報から得られる自車の前方の交差道路において、自車と、これと交差あるいは合流する他車のいずれが先に交差道路を進行することが車両走行の安全性、円滑性から好適であるかの優先度を演算して出力する。
【0014】
例えば、図3において、高速道路の主線MRを走行する第1車両CAR1を自車とした場合、自車が走行する道路が優先道路であるので自車を高優先度とし、合流道路SRを走行してくる第2車両CAR2を低優先度として出力する。優先道路の区別がない交差道路の場合には、第1車両CAR1と第2車両CAR2の現在の位置と各自動車の車速や加減速に基づく演算を行い、第1車両が交差道路に到達するまでの時間が第2車両よりも短い場合に第1車両を高優先度とし、第2車両を低優先度とする。時間が反対の場合には第1車両が低優先度とし、第2車両を高優先度とする。
【0015】
なお、優先度演算装置16は、第1車両と第2車両がこのまま走行したときには両車が交差道路で遭遇せず走行安全上の問題が生じないと演算された場合には特に優先度を出力しないようにしてもよい。また、両車の車速が例えば25km/hよりも低速で、既に交差道路で渋滞等が生じていて交差する自動車が交互に通過あるいは合流しているような場合にも優先度を出力しないように構成してもよい。
【0016】
さらに、運転者が運転席に備えた優先度強制スイッチSWを手操作したときに、前記優先度演算装置16の出力を強制的に自車を高優先度とし、あるいはその反対に自車を低優先度とすることを可能にした手動優先度設定装置18を備えている。
【0017】
また、図2において、ランプ制御装置17を備えている。このランプ制御装置17は前記優先度演算装置16から出力される自車の優先度に基づいて、自車のランプの点灯形態を変化制御するものである。また、自車のランプとして、この実施形態ではヘッドランプHLの場合とターンシグナルランプTSLの点灯形態を変化制御するものとする。
【0018】
前記ランプとしてヘッドランプHLに適用した場合には、ヘッドランプHLは通常のランプ構成に加えて所定の色光を切り替えて照射することが可能な構成としている。図4はLEDを光源とするロービーム配光のヘッドランプの概略構成図であり、図4(a)はランプ光軸に沿った断面図、図4(b)は正面方向から見た図である。光源としてベース22上に搭載されている白色LED21を備えており、この白色LED21から出射された白色光を一旦第2焦点F2に集光するための回転楕円面形状をしたリフレクタ23と、集光された光の一部を遮光して配光上のカットラインを形成するためのメインシェード24と、後述するように左右両側領域において上方に向けて投影される光を遮光するサブシェード25と、これらのシェード24,25で遮光されない光を前方に向けて所要の配光パターンで投影する投影レンズ26とを備えている。さらに、リフレクタ23により反射された光が集光される第2焦点F2の近傍位置に、レンズ機能を有する着色フィルタ27を配設し、この着色フィルタ27をフィルタ駆動装置28によってランプ光の光路内に進退可能に構成している。
【0019】
すなわち、フィルタ駆動装置28は駆動ロッド28aを上下方向に3段階に往復移動可能にしたソレノイド機構で構成されており、通常では駆動ロッド28aは最下方の第1位置S1にあり、前記ランプ制御装置17から所定の信号が入力されたときに駆動ロッド28aを上方の第2位置S2、第3位置S3と段階的に上動させるように構成されている。前記着色フィルタ27はこの駆動ロッド28aの上端部に支持されており、ランプ正面から見たときにはランプ左右の両側領域に対応するように左右2箇所のそれぞれにおいて上側の青色と下側の赤色の2つのフィルタfb,frを一体化した構成とされている。これら青色と赤色のフィルタfb,frは、透過する白色光を着色してそれぞれ刺激度の低い青色光、刺激度の高い赤色光として出射するとともに、透過する光の光軸を幾分上方に向けて偏向させる偏向レンズとしても構成されたものである。そして、通常では駆動ロッド28aが第1位置S1にあるときには着色フィルタ27はヘッドランプの光路上に配置されることはないが、駆動ロッド28aが第2位置S2に上動されたときには青色フィルタfbが光路上に配置され、投影レンズ26により投影される配光パターンの左右両側領域を青色に着色するとともに、この青色着色領域を水平線よりも多少上方に向けた方向とする。さらに、駆動ロッド28aが第3位置S3に上動されたときには赤色フィルタfrが光路状に配置され投影レンズ26により投影される配光パターンの左右両側領域を赤色に着色するとともに、この赤色着色領域を水平線よりも多少上方に向けた方向とする。なお、第3位置S3のとき、青色フィルタfbはサブシェード25によって遮光されるため、青色光が配光されることはない。
【0020】
また、図2に示したように、前記ランプは自動車のターンシグナルランプTSLによっても構成されるが、このターンシグナルランプ自体は通常の構成であるので説明は省略する。ここでは、前記ランプ制御装置17での制御によって車体の左右に配置されるターシグナルランプの間で、あるいは左右前後に配置されるターンシグナルランプの間でそれぞれの点灯または点滅状態を変化制御するように構成されている。この点については後述する。
【0021】
以上の構成による本実施形態のシステムの動作について説明する。
今、図3に示したように、高速道路の主線MRを第1車両CAR1が走行し、その前方において合流する合流路SRを第2車両CAR2が走行しているものとする。第1車両CAR1では、前方監視カメラ10で自車の前方領域の道路情報を検出するとともにナビゲーション装置11で道路情報を得てこれを優先度演算装置16に出力する。また、同時に自車走行情報検出装置14において自車の車速や加減速等を検出し、これを路車間通信装置12や車々間通信装置13を介して送信する一方で、検出した自車走行情報を優先度演算装置16に出力する。これは第2車両CAR2においても同様である。また、第1車両CAR1は他方で、路車間通信装置12や車々間通信装置13を介して他車走行情報、すなわち第2車両CAR2の走行情報を取得し、これを優先度演算装置16に出力する。これは第2車両においても同様に第1車両CAR1の走行情報を自車の優先度演算装置16に出力する。このようにすることで、第1車両CAR1と第2車両CAR2はいずれも自車の優先度演算装置16において自車走行情報と他車走行情報を取得し、これらの情報に基づいて所要の演算を行い、合流地点において自車と他車(第1車両と第2車両)のいずれが先に進行すべきであるかを判定し、この判定に基づいて自車が先に進行すべき場合は自車を高優先度とし、他車を低優先度とする。判定が逆の場合には自車を低優先度とし、他車を高優先度とすることは言うまでもない。
【0022】
このようにして得られた優先度の情報は、路車間通信装置12あるいは車々間通信装置13を介して第1車両CAR1と第2車両CAR2との間で情報交換を行うことで、各車両において判定した優先度を確認させることが可能である。例えば、各車両の運転席に優先度を表示する表示器を備えるようにし、運転者がこの表示を確認することで自車の優先度を認識できるようにすればよい。なお、自車での優先度の判定と、他車から送信されてくる自車の優先度が一致しない場合には、いずれか一方の車両での判定を優先し、他方の車両での判定を無効にし、当該一方の車両の判定に統一させるような補正処理を行うようにすることも可能である。
【0023】
ランプ制御装置17は優先度演算装置16からの出力に基づいてヘッドランプHLの点灯形態を制御する。ここではヘッドランプHLはロービーム配光に設定されており、通常のロービーム配光は図5(a)のように所要のカットラインを有する白色光での配光である。優先度演算装置16の出力によって自車が高優先度の場合には、ランプ制御装置17は、ヘッドランプHLを点灯するとともにフィルタ駆動装置28を駆動して着色フィルタ27を第3位置s3に設定し、赤色フィルタfrを光路上に配設する。そのため、自車のヘッドランプHLから投影される光の配光は、図5(b)のように中央領域では白色Wであるが、左右両側の領域では赤色フィルタfrのレンズ作用とフィルタ作用によって水平線よりも上方の領域にまで赤色光Rが投影されることになる。また、自車が低優先度の場合には、ランプ制御装置17は、ヘッドランプHLを点灯するとともに着色フィルタ27を第2位置s2に設定し、青色フィルタfbを光路上に配設する。そのため、自車のヘッドランプから投影される光の配光は、図5(c)のようには中央領域では白色Wであるが、左右両側の領域では青色フィルタfbのレンズ作用とフィルタ作用によって水平線よりも上方の領域にまで青色光Bが投影されることになる。
【0024】
したがって、図3の場合において、第1車両CAR1が高優先度で第2車両CAR2が低優先度とすれば、第1車両CAR1は赤色光Rを投影し、第2車両CAR2は青色光Bを投影する。第1車両CAR1の運転者は自車の投影光が赤色であり、第2車両CAR2の投影光が青色であることを確認することで自車が高優先度であることを判断し、このことは同時に第2車両CAR2の運転者も認識していると判断できるので、合流地点を先に進行する。第2車両CAR2の運転者は自車の投影光が青色であり、第1車両CAR1の投影光が赤色であることを確認することで自車が低優先度であると判断できるので合流地点では第1車両CAR1を先に進行させ、自車はその後を進行することになる。このように、第1車両CAR1と第2車両CAR2の運転者はそれぞれ自車のヘッドランプの投影光色と他車のヘッドランプの投影光色を視認するだけで、自車と他車のいずれが先に進行すべきかが判断できるようになる。そのため、未熟な運転者も容易にかつ安全に合流し、あるいは他車を合流させることができるようになり、無用な減速が不要になり交通渋滞を未然に回避することが可能になる。
【0025】
なお、図4に示した着色フィルタ27の構成として、図示は省略するが、フィルタ駆動装置28の第1位置S1に対応する部位、すなわち青色フィルタfbの上側に遮光フィルタまたは減光フィルタを連結しておき、ヘッドランプの通常の点灯時には遮光フィルタまたは減光フィルタを光路上に位置させて両側領域の実質的な照明を行わないようにして所定のロービーム配光を実現し、前記した交差道路での走行時の点灯に際して前記したようにロービーム配光の両外側に青色光、赤色光を照射するように構成することで、青色光と赤色光を左右の広い範囲に向けて照射し、他車に対する報知性を高めることが可能となる。
【0026】
また、以上の動作は優先度演算装置16が演算した優先度に基づいてランプ制御装置17がヘッドランプHLの制御を行っているが、運転者の判断により優先度強制スイッチSWを手操作して、自車を強制的に高優先度とし、あるいはその反対に自車を低優先度とする手動設定を行うことも可能である。この場合には、自車のヘッドランプHLは強制的に手動設定した優先度に基づいて青色光または赤色光を照射することになる。この場合、自車で強制設定した優先度の情報を他車に送信し、他車の優先度についても強制設定するように構成することも可能である。ただし、この場合には他車の運転者に対して手動設定したことを確実に報知するための手段を備えることが必要である。
【0027】
以上の説明ではヘッドランプを構成する1つのランプの配光パターンの両側領域を着色する構成であるが、複数のランプユニットの配光を組み合わせて所要の配光を得るようにした多灯式ヘッドランプの場合には、いずれか1つのランプユニットを着色させる構成としてもよい。例えば、複数のランプユニットのうち、最も外側領域を照明するランプユニットの配光を着色するように構成することで、左右両側領域を含む周辺領域を着色した配光が得られる。
【0028】
以上の説明は車両が合流する合流道路の例であるが、信号機がない交差道路等において第1車両と第2車両のいずれが先に交差道路に進入した方が安全上、また円滑な走行を確保する上で有効であるかを判断する場合においても同様に適用することが可能である。また、歩行者や軽車両に対して自車の優先度を明らかにすることも可能である。
【0029】
前記ランプとして自動車のターンシグナルランプで構成した場合の動作について説明する。図3に示したように、第1車両CAR1と第2車両CAR2には前後左右にそれぞれ1つずつ、合計で4つのターンシグナルランプTSLが配設されているものとする。そして、この合流道路での走行に際し、第1車両CAR1の優先度演算装置では自車が高優先度で他車(第2車両)CAR2が低優先度であると演算したとする。図6に模式的に示すように、第1車両CAR1では、ランプ制御装置17は自車の4つのターンシグナルランプTSLのうち自車の右側、すなわち第2車両CAR2に向いた側の前後のターンシグナルランプTSLf,TSLrを点滅させる。このとき自車が高優先度であるため、図6にタイミングチャート示すように、前側ターンシグナルランプTSLfを複数回だけ高周波数で点滅した後に、後側ターンシグナルランプTSLrを1〜2回だけ低周波数で点滅させる。図6において、横軸が時間TIMEであり、塗り潰しが点灯を、白抜きが消灯を示している。この点滅パターンをここでは高優先パターンと定義しており、この高優先パターンを1サイクル1Cとし、所要の無点灯時間を介在させながら以下同じ点滅パターンを繰り返す。
【0030】
一方、低優先度の第2車両CAR2では、4つのターンシグナルランプTSLのうち、自車の左側、すなわち第1車両CAR1を向いた側の前後のターンシグナルランプTSLf,TSLrを点滅させる。このとき自車が低優先度であるため、図6に示すように、前側ターンシグナルランプTSLfを1〜2回だけ低周波数で点滅した後に、後側ターンシグナルランプTSLrを複数回だけ高周波数で点滅させる。この点滅パターンをここでは低優先パターンと定義しており、この低優先パターンを1サイクル1Cとし、所要の無点灯時間を介在させながら以下同じ点滅パターンを繰り返す。
【0031】
したがって、第1車両CAR1の運転者は第2車両CAR1のターンシグナルランプTSLの点滅パターンが低優先パターンであることを視認したときには第2車両CAR2が低優先度を認識していることが確認でき、合流地点では自車が第2車両CAR2の前に進行する。第2車両CAR2の運転者は第1車両CAR1のターンシグナルランプTSLの点滅パターンが高優先パターンであることを視認すると、合流地点では自車が第1車両CAR1の後に進行する。このように、第1車両CAR1と第2車両CAR2の運転者はそれぞれ他車のターンシグナルランプTSLの点滅パターンを視認するだけで、自車と他車のいずれが先に進行すべきかが判断できるようになる。そのため、未熟な運転者も容易にかつ安全に合流し、あるいは他車を合流させることができるようになり、無用な減速が不要になり交通渋滞を未然に回避することが可能になる。
【0032】
なお、この高優先パターンと低優先パターンの点滅パターンは一例であり、任意のパターンを採用することが可能であるが、全ての運転者が点滅パターンを見たときに優先度の違いを明確に認識できるような点滅パターンとすることが好ましい。また、図1に示したように、第1車両CAR1の近傍を走行する第3車両CAR3から見たときに、第1車両CAR1と第2車両CAR2の各ターンシグナルランプの点滅が通常の進路変更時や緊急時での点滅とは明確に区別できるような点滅パターンにすることも必要である。
【0033】
本発明は、必ずしも自車と他車の間で優先度を相互に通信する場合にかぎられるものではなく、自車単独で優先度を判断したときには自車のランプを単独で点灯制御して他車に対する自車の優先度を主張するように構成してもよい。特に、車々間通信機能を有しない他車に対し、自車の運転者により優先度を強制的に設定し、これを他車に対して一方的に報知することで、他車に対する自車の優先度を認識させることができるとともに、他車の運転者における運転支援ともなり得る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は車々間通信や路車間通信が可能で、少なくとも自車と他車と相互間における走行に際しての優先度を判断することが可能な車両に備えたランプに採用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
11 ナビゲーション装置
12 路車間通信装置
13 車々間通信装置
14 自車走行情報検出装置
15 他車走行情報検出装置
16 優先度演算装置
17 ランプ制御装置
18 手動優先度設定装置
21 白色LED
23 リフレクタ
24 メインシェード
25 サブシェード
26 投影レンズ
27 着色フィルタ
28 フィルタ駆動装置
HL ヘッドランプ
TSL ターンシグナルランプ
CAR1〜3 第1車両〜第3車両



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の走行情報を検出する自車走行情報検出手段と、他車の走行情報を検出する他車走行情報検出手段と、前記自車走行情報と他車走行情報に基づいて自車と他車の走行に際しての優先度を演算する優先度演算手段と、得られた優先度に基づいて自車のランプの点灯形態を変化制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする車両ランプシステム。
【請求項2】
前記ランプはヘッドランプであり、前記ランプ制御手段は得られた優先度に基づいてヘッドランプの照明光の一部の色を変化制御することを特徴とする請求項1に記載の車両ランプシステム。
【請求項3】
自車の優先度が高いときに照明光の一部を刺激度の高い色に着色し、優先度が低いときには刺激度の低い色で着色することを特徴とする請求項2に記載の車両ランプシステム。
【請求項4】
前記ランプはターンシグナルランプであり、前記ランプ制御手段は得られた優先度に基づいてターンシグナルランプの点滅パターンを変化制御することを特徴とする請求項1に記載の車両ランプシステム。
【請求項5】
自車に配設された複数のターンシグナルランプの点滅パターンを変更する請求項4に記載の車両ランプシステム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178257(P2011−178257A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43802(P2010−43802)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】