説明

車両位置報知システム及びこのシステムに用いられる車両側装置

【課題】車両の周囲環境に依らず正確に車両の存在方位を特定してその方位情報をユーザに報知することができる車両位置報知システムの提供。
【解決手段】車両に搭載された車両側装置と、ユーザが持ち運び可能な携帯機に搭載された携帯機側装置とを備え、携帯機側装置は、車両探索信号を車両側装置に送信する送信部を含み、車両側装置は、互いに離れた位置にあり携帯機側装置から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、各受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて携帯機に対する車両の存在方位を算出する演算部と、存在方位を示す方位信号を携帯機側装置に送信する送信部とを含み、携帯機側装置は、さらに車両側装置から送信された方位信号を受信する受信部と、受信部が受信した方位信号に基づき存在方位をユーザに報知する報知部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置報知システム及びこのシステムに用いられる車両側装置に関し、より詳しくは、車両の周囲環境に依らず正確に車両位置を報知することができる車両位置報知システム及びこのシステムに用いられる車両側装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車車両から離れたユーザに車両位置を報知する車両位置報知システムとして、例えば、以下のものが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている車両位置報知システムは、車両側装置と、ユーザが持ち運び可能な携帯機とから構成されている。
【0004】
車両側装置および携帯機はそれぞれ、絶対方位を検知する地磁気センサを含む。車両側装置は、絶対方位に合わせて複数の方位に方位識別信号を送信する。具体的には、車両側装置は複数の指向性送信アンテナを備えており、各アンテナからそれぞれ東、西、南、北の方位識別信号を送信する。
【0005】
携帯機は、受信した方位識別信号に基づいて車両の存在方位を特定し、ユーザにその方位を報知する。具体的には、携帯機は、方位識別信号の受信強度に基づいて車両の存在方位を特定する。例えば、東の方位識別信号と北の方位識別信号を受信し、それらの受信強度が同じである場合、携帯機は、自機に対して車両が南西方向に位置していると判断し、その方向を矢印で表示部に表示する。
【0006】
このシステムによれば、ユーザは、車両の存在方位情報を携帯機から取得することができる。
【特許文献1】特開2006−125983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術には以下のような課題が存在した。
携帯機は、方位識別信号の受信強度に基づいて車両の存在方位を特定する。車両の周囲に電波を吸収又は反射し易い障害物が存在する場合、方位識別信号がその障害物で吸収又は反射されてしまう。この場合、携帯機は、方位識別信号を本来受信すべき強度で受信することができず、その結果、車両の存在方位を正確に特定できない可能性があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、車両の周囲環境に依らず正確に車両の存在方位を特定してその方位情報をユーザに報知することができる車両位置報知システム及びこのシステムに用いられる車両側装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両位置報知システムは、
車両から離れたユーザに上記車両の位置を報知するためのシステムであって、
車両に搭載された車両側装置と、
ユーザが持ち運び可能な携帯機に搭載された携帯機側装置とを備え、
上記携帯機側装置は、
車両探索信号を上記車両側装置に送信する送信部を含み、
上記車両側装置は、
互いに離れた位置にあり、上記携帯機側装置から送信された上記車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各上記受信アンテナが上記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて上記携帯機に対する上記車両の存在方位を算出する演算部と、
上記存在方位を示す方位信号を上記携帯機側装置に送信する送信部とを含み、
上記携帯機側装置は、さらに
上記車両側装置から送信された上記方位信号を受信する受信部と、
上記受信部が受信した上記方位信号に基づき上記存在方位をユーザに報知する報知部とを含む。
【0010】
上記の如く、車両側装置は、互いに離れた位置にあり携帯機側装置から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、各受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて携帯機に対する車両の存在方位を算出する演算部とを備えている。
つまり、演算部は、車両側装置の各受信アンテナへの信号伝送時間の差に基づいて車両の存在方位を算出する。信号伝送時間は、車両の周囲環境の影響を受けにくい。
従って、本発明によれば、車両の周囲環境に依らず正確に車両の存在方位を特定してその方位をユーザに報知することができる。
【0011】
本発明においては、
前記演算部は、
各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて前記車両と前記携帯機間の距離をさらに算出し、前記送信部は、算出された前記距離を示す距離信号を前記携帯機に送信し、
前記携帯機は、
前記受信部が前記距離信号を受信し、前記報知部が、受信した前記距離信号に基づいて前記距離を報知することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
この場合、車両側装置は、携帯機と車両間の距離を算出するので、その距離と車両存在方位の双方をユーザに報知することができる。
【0013】
本発明においては、
上記演算部は、
上記車両側装置の各上記受信アンテナのうち最初に上記車両探索信号を受信した受信アンテナの受信時刻と他の上記受信アンテナが上記車両探索信号を受信した時刻との各間隔を算出する手段と、
各上記間隔について電波速度との積を算出する手段と、
上記他の受信アンテナの位置を各々中心とし且つ対応する各上記積を半径とする円に接するとともに最初に上記車両探索信号を受信した上記受信アンテナの位置を通る円の中心を上記携帯機の位置として算出する手段と、
その算出した位置に基づいて上記携帯機に対する上記車両の存在方位を算出する手段とを有することが好ましい。
【0014】
この場合、車両側装置の各受信アンテナのうち最初に車両探索信号を受信した受信アンテナの受信時刻を基準とし、その基準とした時刻と他の受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻との各間隔に基づいて車両の存在方位を算出する。従って、車両側装置において携帯機からの信号の発信時刻が不明な場合でも、車両側装置は車両の存在方位を算出することができる。また、車両側装置は車両に対する携帯機の位置を特定するので、車両と携帯機間の距離も算出することができる。
【0015】
本発明においては、
上記演算部は、
上記車両側装置の各上記受信アンテナが上記車両探索信号を受信した時刻と上記携帯機が上記車両探索信号を送信した時刻に基づいて各上記受信アンテナと上記携帯機の距離を算出する手段と、
各上記受信アンテナの位置を中心とし且つ対応する上記距離を半径とする円の交点を上記携帯機の位置として算出する手段と、
その算出した位置に基づいて上記携帯機に対する上記車両の存在方位を算出する手段とを有することが好ましい。
【0016】
この場合、車両側装置の各受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻と携帯機が車両探索信号を送信した時刻に基づいて各受信アンテナと携帯機の距離を算出し、それら各距離に基づいて車両の存在方位を算出する。従って、車両側装置において携帯機からの信号の発信時刻が判明している場合、車両側装置は車両の存在方位を算出することができる。また、車両側装置は車両に対する携帯機の位置を特定するので、車両と携帯機間の距離も算出することができる。
【0017】
本発明においては、
上記車両側装置の各上記受信アンテナは、上記車両に搭載された他のシステムの受信アンテナと共用されていることが好ましい。
【0018】
この場合、車両側装置専用の受信アンテナを設けることなく、車両側装置は車両探索信号を受信し、携帯機に対する車両の存在方位を算出することができる。
【0019】
本発明においては、
上記携帯機から上記車両探索信号が送信された際、上記車両側装置の各上記受信アンテナが最初に受信した当該車両探索信号を上記方位算出に使用することが好ましい。
【0020】
この場合、携帯機から車両側装置へ車両探索信号を送信したときにそれらの間で信号のマルチパスが生じたとしても、その影響を受けることなく、車両側装置は携帯機に対する車両の存在方位を正確に算出することができる。
【0021】
また、本発明に係る車両位置報知システムは、
車両から離れたユーザに上記車両の位置を報知するためのシステムであって、
車両に搭載された車両側装置と、
ユーザが持ち運び可能な携帯機に搭載された携帯機側装置とを備え、
上記携帯機側装置は、
車両探索信号を上記車両側装置に送信する送信部を含み、
上記車両側装置は、
互いに離れた位置にあり、上記携帯機側装置から送信された上記車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各上記受信アンテナが上記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて上記車両に対する上記携帯機の存在方位を算出する演算部と、
上記存在方位を示す方位信号を上記携帯機側装置に送信する送信部とを含み、
上記携帯機側装置は、さらに
上記車両側装置から送信された上記方位信号を受信する受信部と、
上記方位信号に基づき上記携帯機に対する上記車両の存在方位を算出する演算部と、
算出された上記車両の存在方位をユーザに報知する報知部とを含む。
【0022】
上記の如く、車両側装置は、互いに離れた位置にあり、携帯機側装置から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、各受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて車両に対する携帯機の存在方位を算出する演算部とを備えている。
つまり、演算部は、車両側装置の複数の受信アンテナへの信号伝送時間の差に基づいて車両に対する携帯機の存在方位を算出する。信号伝送時間は、車両の周囲環境の影響を受けにくい。携帯機は、車両に対する携帯機の存在方位を基に、携帯機に対する車両の存在方位を算出する。
従って、本発明によれば、車両の周囲環境に依らず正確に車両の存在方位を特定してその方位をユーザに報知することができる。
【0023】
本発明に係る車両側装置は、
車両から離れたユーザに上記車両の位置を報知するためのシステムにおける車両側装置であって、
ユーザが持ち運び可能な携帯機から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各上記受信アンテナが上記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて上記携帯機に対する上記車両の存在方位を算出する演算部と、
上記車両の存在方位を示す方位信号を上記携帯機側装置に送信する送信部とを含む。
【0024】
上記の如く、車両側装置は、互いに離れた位置にあり携帯機側装置から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、各受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて携帯機に対する車両の存在方位を算出する演算部とを備えている。
つまり、演算部は、車両側装置の各受信アンテナへの信号伝送時間の差に基づいて車両の存在方位を算出する。信号伝送時間は、車両の周囲環境の影響を受けにくい。
従って、本発明によれば、車両の周囲環境に依らず正確に車両の存在方位を特定することができる。
【0025】
また、本発明に係る車両側装置は、
車両から離れたユーザに上記車両の位置を報知するためのシステムにおける車両側装置であって、
ユーザが持ち運び可能な携帯機から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各上記受信アンテナが上記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて上記車両に対する上記携帯機の存在方位を算出する演算部と、
上記携帯機の存在方位を示す方位信号を上記携帯機側装置に送信する送信部とを含む。
【0026】
上記の如く、車両側装置は、互いに離れた位置にあり携帯機側装置から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、各受信アンテナが車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて車両に対する携帯機の存在方位を算出する演算部とを備えている。
つまり、演算部は、車両側装置の各受信アンテナへの信号伝送時間の差に基づいて車両に対する携帯機の存在方位を算出する。信号伝送時間は、車両の周囲環境の影響を受けにくい。
従って、本発明によれば、車両の周囲環境に依らず正確に車両に対する携帯機の存在方位を特定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、車両の周囲環境に依らず携帯機に対する車両の存在方位を正確に特定してその方位をユーザに報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る車両位置報知システムについて、図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1実施形態に係る車両位置報知システムの全体構成を示す図である。図2は、第1実施形態における携帯機側装置の構成を示すブロック図である。図3は、第1実施形態に係る携帯機の外観を示す図である。図4は、第1実施形態における車両側装置の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示されるように、第1実施形態に係る車両位置報知システム1は、車両2から離れたユーザに車両2の方位を矢印25等で報知するためのシステムである。
【0030】
図1に示されるように、車両位置報知システム1は、車両2に搭載された車両側装置3と、ユーザが持ち運び可能な携帯機4に搭載された携帯機側装置5とを備える。
【0031】
携帯機側装置5は、車両探索信号6を車両側装置3に送信する送信部7(図2参照)を含む。車両探索信号6は、車両側装置3に対して車両2の位置情報を要求する信号である。
携帯機側装置5を搭載する携帯機4は、例えば、図3に示されるようにエンジンキーとすることができる。この場合、エンジンキーの鍵穴挿入部23を送受信アンテナとすることができる。
【0032】
図4に示されるように、車両側装置3は、少なくとも3つの受信アンテナ8と、絶対方位検知部24と、演算部9と、送信部10とを含む。
【0033】
少なくとも3つの受信アンテナ8は、互いに離れた位置にあり、携帯機側装置5から送信された車両探索信号6をそれぞれ受信する。受信アンテナ8の数は3つ以上であれば特に限定されないが、例えば3つとすることができ、或は4つ以上とすることもできる。少なくとも3つの受信アンテナ8は、互いに離れた位置にあれば、特にその位置関係は限定されないが、受信アンテナ8の数を3つとする場合には、図1に示されるように、例えば、2つは車両2の前端部左端と前端部右端に設け、他の1つは車両2の後端部に設けることができる。
【0034】
絶対方位検知部24は、東西南北等の絶対方位を検知するものであって、例えば従来公知のものを採用することができ、その具体的構成は特に限定されない。
【0035】
演算部9は、各受信アンテナ8(図4に示す例では3つの受信アンテナ8)が車両探索信号6を受信した時刻の差と、絶対方位検知部24で検知した絶対方位とに基づいて携帯機4に対する車両2の存在方位を算出する。その具体的算出手段については後述する。
【0036】
送信部10は、演算部9で算出された方位、つまり携帯機4に対する車両2の存在方位を示す方位信号11を携帯機側装置5に送信する。図4に示される例では、送信部10と受信部は別々に設けられ、送信アンテナと受信アンテナ8も別々に設けられているが、送信部10と受信部は送受信部として1つにまとめられていてもよいし、送信部7のアンテナは受信アンテナ8と共用されていてもよい。
【0037】
図2に示されるように、携帯機側装置5は、さらに、受信部12と、絶対方位検知部26と、演算部27と、報知部13とを含む。
【0038】
受信部12は、車両側装置3から送信された方位信号11を受信する。
【0039】
絶対方位検知部26は、東西南北等の絶対方位を検知するものであって、例えば従来公知のものを採用することができ、その具体的構成は特に限定されない。
【0040】
演算部27は、受信部12が受信した方位信号11と、絶対方位検知部26で検知した絶対方位とに基づき、車両2の存在方位が携帯機4の基準方位に対してどちらに向いているか等を算出する。例えば、携帯機4をエンジンキーとし、鍵穴挿入部23の向き(絶対方位)を基準方位とした場合、演算部27は、絶対方位を示す信号として方位信号11を受信すると、鍵穴挿入部23の絶対方位に対する車両2の相対方位を算出することができる。
【0041】
報知部13は、演算部27が算出した、携帯機4に対する車両2の相対方位をユーザに報知する。報知部13の具体的構成は特に限定されないが、例えば、図3に示されるように、表示部21、音声出力部22とすることができる。表示部21は、図3に示されるように、例えば矢印等で車両2の相対方位を表示することができる。音声出力部22は、音声で車両2の相対方位或は絶対方位を報知することができる。
【0042】
なお、携帯機側装置3の演算部9は、各受信アンテナ8が車両探索信号6を受信した時刻の差に基づいて車両2と携帯機4間の距離をさらに算出するものであってもよい。
この場合、送信部7は、算出された距離を示す距離信号を携帯機4に送信する。携帯機4では、受信部12が距離信号を受信し、報知部13が、受信した距離信号に基づいて車両2と携帯機4間の距離を報知する。
【0043】
演算部9の構成および処理の流れについて説明する。以下の説明では、受信アンテナ8が3つ設けられている場合について説明する。
図5は、第1実施形態における車両側装置3の演算部9の構成を示すブロック図である。図6は、演算部9で行われる処理の概念を幾何学的に示す図である。
図5に示されるように、演算部9は、第1の算出手段14と、第2の算出手段15と、第3の算出手段16と、第4の算出手段17とを有する。
【0044】
まず、第1の算出手段14は、図6に示されるように、車両側装置3の各受信アンテナ8a,8b,8cのうち最初に車両探索信号6を受信した受信アンテナ8aの受信時刻と他の受信アンテナ8b,8cが車両探索信号6を受信した時刻との各間隔すなわち各時間Δt1,Δt2を算出する。
【0045】
次いで、第2の算出手段15は、図6に示されるように、第1の算出手段14で算出された各間隔Δt1,Δt2について電波速度vとの積v×Δt1,v×Δt2を算出する。
【0046】
次いで、第3の算出手段16は、図6に示されるように、他の受信アンテナ8b,8cの位置を各々中心とし且つ対応する各積v×Δt1,v×Δt2を半径とする円B、Cに接するとともに最初に車両探索信号6を受信した受信アンテナ8aの位置を通る円Aの中心を携帯機4の位置として算出する。
【0047】
次いで、第4の算出手段17は、図6に示されるように、第3の算出手段16で算出された携帯機4の位置に基づいて、携帯機4に対する車両2の存在方位(図6中の矢印)を算出する。具体的には、第4の算出手段17は、携帯機4の位置から車両2の中心に向かうベクトルの向きを車両2の存在方位とする。第4の算出手段17は、算出した車両2の存在方位を、絶対方位検知部24で検知した絶対方位に重ね合わせる。これにより、携帯機4に対する車両2の絶対方位を算出することができる。
【0048】
このように、演算部9は、車両側装置3の各受信アンテナ8a,8b,8cのうち最初に車両探索信号6を受信した受信アンテナ8aの受信時刻を基準とし、その基準とした時刻と他の受信アンテナ8b,8cが車両探索信号6を受信した時刻との各間隔Δt1、Δt2に基づいて車両2の存在方位を算出する。従って、車両側装置3において携帯機4から送信された信号6の発信時刻が不明な場合でも、車両側装置3は車両2の存在方位を算出することができる。また、車両側装置3は車両2に対する携帯機4の位置を特定するので、車両2と携帯機4間の距離も算出することができる。
【0049】
次に、第1実施形態に係る車両位置報知システム1の動作について図1、6、7を参照しつつ説明する。図7は、車両位置報知システム1の動作を示すフローチャートである。
【0050】
まず、車両2から離れているユーザが、携帯機4に対し、車両2の位置情報要求操作を行う。すると、携帯機側装置5は、車両側装置3に対して車両4の位置情報を要求する車両探索信号6を送信する(ステップS1)。
【0051】
次いで、車両側装置3が少なくとも3つのアンテナ8a,8b,8cで車両探索信号6を受信する。ここで、車両探索信号6が少なくとも3つのアンテナ8a,8b,8cで車両探索信号6を受信できないときは、方位信号11が車両側装置3から携帯機4へ送信されない。この場合、携帯機側装置5は、所定時間内に車両側装置3から応答がないのを確認してから(ステップS2)、表示部21に通信エラーメッセージを表示し(ステップS3)、処理を終了する。
【0052】
一方、車両探索信号6が少なくとも3つのアンテナ8a,8b,8cで車両探索信号6を受信できたときは、ステップS4に進む。車両側装置3は、各受信アンテナ8a,8b,8cが車両探索信号6を受信した時刻の差と、各受信アンテナ8a,8b,8cの位置情報と、絶対方位情報とに基づき、携帯機4に対する車両2の存在方位を算出する(ステップS5)。ステップS5の処理は、演算部9で行われる。
【0053】
次いで、車両側装置3は、携帯機4に対する車両2の存在方位(絶対方位)を示す方位信号11を携帯機側装置5に送信する(ステップS6)。
【0054】
次いで、携帯機4は、車両側装置3から送信された方位信号11を受信する(ステップS7)。
【0055】
次いで、携帯機4は、受信した方位信号11と携帯機4の絶対方位とに基づき、携帯機4に対する車両2の存在方位(相対方位又は絶対方位)をユーザに報知する(ステップS8)。存在方位の報知方法は、特に限定されるものではなく、例えば、表示部21に矢印等で表示してもよいし、或は、音声出力部22から音声で報知してもよい。
【0056】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両位置報知システム1においては、演算部9は、車両側装置3の各受信アンテナ8a,8b,8cへの信号伝送時間の差に基づいて車両2の存在方位を算出する。信号伝送時間は、車両2の周囲環境の影響を受けにくい。従って、車両位置報知システム1は、車両2の周囲環境に依らず正確に車両2の存在方位を特定し、その方位をユーザに報知することができる。
【0057】
なお、第1実施形態においては、車両側装置3の各受信アンテナ8は、車両2に搭載された他のシステムの受信アンテナ(例えば、TPMS用アンテナ)と共用されていてもよい。
【0058】
この場合、車両側装置3専用の受信アンテナを設けることなく、車両側装置3は車両探索信号6を受信し、携帯機4に対する車両2の存在方位を算出することができる。
【0059】
また、第1実施携帯においては、携帯機4から車両探索信号6が送信された際、車両側装置3の各受信アンテナ8a,8b,8cがそれぞれ最初に受信した車両探索信号6を携帯機4に対する車両2の方位算出に使用することが好ましい。
【0060】
この場合、携帯機4から車両側装置3へ車両探索信号6を送信したときにそれらの間で信号6のマルチパスが生じたとしても、その影響を受けることなく、車両側装置3は携帯機4に対する車両2の存在方位を正確に算出することができる。
【0061】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る車両位置報知システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0062】
図8は、第2実施形態における車両側装置の演算部の構成を示すブロック図である。図9は、その演算部で行われる処理の概念を幾何学的に示す図である。
【0063】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、演算部9を演算部90に置き換えた点であり、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0064】
演算部90の構成および処理の流れについて説明する。以下の説明では、受信アンテナ8が3つ設けられている場合について説明する。
【0065】
図7に示されるように、演算部90は、第1の算出手段18と、第2の算出手段19と、第3の算出手段20とを有する。
【0066】
まず、第1の算出手段18は、図9に示されるように、車両側装置3の各受信アンテナ8a,8b,8cが車両探索信号6を受信した時刻と携帯機4が車両探索信号6を送信した時刻に基づいて各受信アンテナ8a,8b,8cと携帯機4の距離を算出する。具体的には、各受信アンテナ8a,8b,8cの受信時刻と携帯機4の送信時刻の各間隔すなわち各時間t1,t2,t3について電波速度vとの積v×t1,v×t2,v×t3を算出する。その積v×t1,v×t2,v×t3が上記の距離となる。
【0067】
次いで、第2の算出手段19は、図9に示されるように、各受信アンテナ8a,8b,8cの位置を中心とし且つ対応する距離v×t1,v×t2,v×t3を半径とする円A,B,Cの交点を携帯機4の位置として算出する。
【0068】
第3の算出手段20は、第2の算出手段19で算出された携帯機4の位置に基づいて、携帯機4に対する車両2の存在方位(図9中の矢印)を算出する。具体的には、第3の算出手段20は、携帯機4の位置から車両2の中心に向かうベクトルの向きを車両2の存在方位とする。第3の算出手段20は、算出した車両2の存在方位を、絶対方位検知部26で検知した絶対方位に重ね合わせる。これにより、携帯機4に対する車両2の絶対方位を算出することができる。
【0069】
このように、演算部90は、車両側装置30の各受信アンテナ8a,8b,8cが車両探索信号6を受信した時刻と携帯機4が車両探索信号6を送信した時刻に基づいて各受信アンテナ8a,8b,8cと携帯機4の距離を算出し、算出した各距離に基づいて車両2の存在方位を算出する。従って、車両側装置30において携帯機4からの信号の発信時刻が判明している場合、車両側装置30は車両2の存在方位を算出することができる。また、車両側装置30は車両2に対する携帯機4の位置を特定するので、車両2と携帯機4間の距離も算出することができる。
【0070】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る車両位置報知システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図10は、第3実施形態に係る車両位置報知システムの全体構成を示す図である。図11は、第3実施形態における車両側装置の構成を示すブロック図である。図12は、第3実施形態における携帯機側装置の構成を示すブロック図である。
【0072】
第3実施形態に係る車両位置報知システム11が第1実施形態と異なる点は、車両側装置31において演算部9が演算部91に置き換わっている点と、携帯機側装置51において演算部27が演算部28に置き換わっている点である。以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0073】
車両側装置31(図11参照)の演算部91は、各受信アンテナ8が車両探索信号6を受信した時刻の差と、絶対方位検知部24で検知した絶対方位とに基づいて車両2に対する携帯機4の存在方位を絶対方位として算出する。車両2に対する携帯機4の存在方位を示す方位信号111は、送信部7を介して携帯機側装置51へ送信される。
【0074】
携帯機側装置51(図12参照)は、受信部12を介して方位信号111が受信される。携帯機側装置51において演算部28は、受信部12が受信した方位信号111と、絶対方位検知部26で検知した絶対方位とに基づき、携帯機4に対する車両2の存在方位(相対方位)を算出する。例えば、携帯機4をエンジンキーとし、鍵穴挿入部23の絶対方位を基準方位とした場合、演算部28は、絶対方位を示す信号として方位信号111を受信すると、鍵穴挿入部23の向き(絶対方位)に対する車両2の相対方位を算出することができる。
【0075】
携帯機4に対する車両2の存在方位(相対方位又は絶対方位)は、報知部13を介してユーザに報知される。
【0076】
第3実施形態に係る車両位置報知システム11においては、演算部91は、車両側装置3の各受信アンテナ8への信号伝送時間の差に基づいて車両2に対する携帯機4の存在方位を算出する。信号伝送時間は、車両2の周囲環境の影響を受けにくい。従って、車両位置報知システム11は、車両2の周囲環境に依らず正確に車両2の存在方位を特定し、その方位をユーザに報知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る車両位置報知システム及びこのシステムに用いられる車両側装置は、車両を離れたユーザがその車両の位置を容易に把握するためのシステム及びこのシステムに用いられる車両側装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1実施形態に係る車両位置報知システムの全体構成を示す図
【図2】第1実施形態における携帯機側装置の構成を示すブロック図
【図3】第1実施形態に係る携帯機の外観を示す図
【図4】第1実施形態における車両側装置の構成を示すブロック図
【図5】第1実施形態における車両側装置の演算部の構成を示すブロック図
【図6】第1実施形態における車両側装置の演算部で行われる処理の概念を幾何学的に示す図
【図7】第1実施形態に係る車両位置報知システムの動作を示すフローチャート
【図8】第2実施形態における車両側装置の演算部の構成を示すブロック図
【図9】第2実施形態における車両側装置の演算部で行われる処理の概念を幾何学的に示す図
【図10】第3実施形態に係る車両位置報知システムの全体構成を示す図
【図11】第3実施形態における車両側装置の演算部の構成を示すブロック図
【図12】第3実施形態における携帯機側装置の演算部の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0079】
1、11 車両位置報知システム
2 車両
3、31 車両側装置
4 携帯機
5、51 携帯機側装置
6 車両探索信号
7 携帯機側装置の送信部
8 受信アンテナ
9、90、91 車両側装置の演算部
10 車両側装置の送信部
11 携帯機に対する車両の存在方位を示す方位信号
12 携帯機側装置の受信部
13 報知部
14 演算部の第1算出手段(第1実施形態)
15 演算部の第2算出手段(第1実施形態)
16 演算部の第3算出手段(第1実施形態)
17 演算部の第4算出手段(第1実施形態)
18 演算部の第1算出手段(第2実施形態)
19 演算部の第2算出手段(第2実施形態)
20 演算部の第3算出手段(第2実施形態)
21 表示部
22 音声出力部
25 矢印(車両の存在方位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から離れたユーザに前記車両の位置を報知するためのシステムであって、
車両に搭載された車両側装置と、
ユーザが持ち運び可能な携帯機に搭載された携帯機側装置とを備え、
前記携帯機側装置は、
車両探索信号を前記車両側装置に送信する送信部を含み、
前記車両側装置は、
互いに離れた位置にあり、前記携帯機側装置から送信された前記車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて前記携帯機に対する前記車両の存在方位を算出する演算部と、
前記存在方位を示す方位信号を前記携帯機側装置に送信する送信部とを含み、
前記携帯機側装置は、さらに
前記車両側装置から送信された前記方位信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記方位信号に基づき前記存在方位をユーザに報知する報知部とを含む、車両位置報知システム。
【請求項2】
前記演算部は、
各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて前記車両と前記携帯機間の距離をさらに算出し、前記送信部は、算出された前記距離を示す距離信号を前記携帯機に送信し、
前記携帯機は、
前記受信部が前記距離信号を受信し、前記報知部が、受信した前記距離信号に基づいて前記距離を報知することを特徴とする請求項1に記載の車両位置報知システム。
【請求項3】
前記演算部は、
前記車両側装置の各前記受信アンテナのうち最初に前記車両探索信号を受信した受信アンテナの受信時刻と他の前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻との各間隔を算出する手段と、
各前記間隔について電波速度との積を算出する手段と、
前記他の受信アンテナの位置を各々中心とし且つ対応する各前記積を半径とする円に接するとともに最初に前記車両探索信号を受信した前記受信アンテナの位置を通る円の中心を前記携帯機の位置として算出する手段と、
その算出した位置に基づいて前記携帯機に対する前記車両の存在方位を算出する手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両位置報知システム。
【請求項4】
前記演算部は、
前記車両側装置の各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻と前記携帯機が前記車両探索信号を送信した時刻に基づいて各前記受信アンテナと前記携帯機の距離を算出する手段と、
各前記受信アンテナの位置を中心とし且つ対応する前記距離を半径とする円の交点を前記携帯機の位置として算出する手段と、
その算出した位置に基づいて前記携帯機に対する前記車両の存在方位を算出する手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両位置報知システム。
【請求項5】
前記車両側装置の各前記受信アンテナは、前記車両に搭載された他のシステムの受信アンテナと共用されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1の請求項に記載の車両位置報知システム。
【請求項6】
前記携帯機から前記車両探索信号が送信された際、前記車両側装置の各前記受信アンテナが最初に受信した当該車両探索信号を前記方位算出に使用することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1の請求項に記載の車両位置報知システム。
【請求項7】
車両から離れたユーザに前記車両の位置を報知するためのシステムであって、
車両に搭載された車両側装置と、
ユーザが持ち運び可能な携帯機に搭載された携帯機側装置とを備え、
前記携帯機側装置は、
車両探索信号を前記車両側装置に送信する送信部を含み、
前記車両側装置は、
互いに離れた位置にあり、前記携帯機側装置から送信された前記車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて前記車両に対する前記携帯機の存在方位を算出する演算部と、
前記存在方位を示す方位信号を前記携帯機側装置に送信する送信部とを含み、
前記携帯機側装置は、さらに
前記車両側装置から送信された前記方位信号を受信する受信部と、
前記方位信号に基づき前記携帯機に対する前記車両の存在方位を算出する演算部と、
算出された前記車両の存在方位をユーザに報知する報知部とを含む、車両位置報知システム。
【請求項8】
車両から離れたユーザに前記車両の位置を報知するためのシステムにおける車両側装置であって、
ユーザが持ち運び可能な携帯機から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて前記携帯機に対する前記車両の存在方位を算出する演算部と、
前記車両の存在方位を示す方位信号を前記携帯機側装置に送信する送信部とを含む、車両側装置。
【請求項9】
車両から離れたユーザに前記車両の位置を報知するためのシステムにおける車両側装置であって、
ユーザが持ち運び可能な携帯機から送信された車両探索信号を受信する少なくとも3つの受信アンテナと、
各前記受信アンテナが前記車両探索信号を受信した時刻の差に基づいて前記車両に対する前記携帯機の存在方位を算出する演算部と、
前記携帯機の存在方位を示す方位信号を前記携帯機側装置に送信する送信部とを含む、車両側装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−31210(P2009−31210A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197602(P2007−197602)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】