説明

車両側部構造

【課題】車両の側壁及びサスペンションタワーの車幅方向における剛性を高くする。
【解決手段】車両側部構造10では、ホイルハウスガセット30がサスペンションタワー28に結合されており、ホイルハウスガセット30は、ルーフサイドインナ16の挿入孔22に挿入されて、両側壁がそれぞれルーフサイドアウタ26の両側壁に車両前後方向において結合されている。このため、サスペンションタワー28及びルーフサイドアウタ26に車幅方向への荷重が入力しても、ルーフサイドアウタ26とホイルハウスガセット30とが結合垂直方向への荷重を受けるため、ルーフサイドアウタ26とホイルハウスガセット30との車幅方向における結合剛性を高くでき、車両12の側壁14及びサスペンションタワー28の車幅方向における剛性を高くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側壁及びサスペンションタワーを補強する車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両側部構造としては、車両の側壁を構成するルーフサイドインナパネルに補強部材が結合されると共に、サスペンションタワーに設けられたガセットがルーフサイドインナパネル及び補強部材に結合されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、この車両側部構造では、補強部材とガセットとが車幅方向において結合されている。これにより、車両の走行時に、サスペンションタワー、ガセット、ルーフサイドインナパネル及び補強部材に車幅方向への荷重(車幅方向へ傾動させる荷重)が入力すると、補強部材とガセットとが結合剥離方向(反結合方向)への荷重を受けるため、車両の側壁及びサスペンションタワーの車幅方向における剛性が低い可能性がある。
【特許文献1】実開平5−619072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、車両の側壁及びサスペンションタワーの車幅方向における剛性を高くできる車両側部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両側部構造は、車両の側壁を構成し、挿入孔が貫通形成された側壁部材と、前記側壁部材の車幅方向外側に配置され、前記側壁を補強する補強部材と、車両のサスペンションタワーに結合され、前記側壁部材の車幅方向外側に前記挿入孔を介して挿入されると共に、前記補強部材に車両前後方向において結合された結合部材と、を備えている。
【0006】
請求項2に記載の車両側部構造は、請求項1に記載の車両側部構造において、前記結合部材を車両のホイルハウスに結合した、ことを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の車両側部構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両側部構造において、前記補強部材と前記結合部材とを上下方向に離間した複数の位置において結合した、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の車両側部構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両側部構造において、車両のシートベルトを巻き取る巻取機構を前記補強部材及び結合部材の少なくとも一方に結合した、ことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の車両側部構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両側部構造において、車両のシートベルトを巻き取る巻取機構を前記側壁部材の車幅方向外側に前記挿入孔を介して挿入した、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の車両側部構造では、車両の側壁を構成する側壁部材の車幅方向外側に補強部材が配置されており、補強部材は車両の側壁を補強している。さらに、車両のサスペンションタワーに結合部材が結合されている。
【0011】
ここで、側壁部材に挿入孔が貫通形成されており、結合部材が側壁部材の車幅方向外側に挿入孔を介して挿入されると共に、補強部材に結合部材が車両前後方向において結合されている。このため、サスペンションタワー、結合部材及び補強部材に車幅方向への荷重が入力しても、補強部材と結合部材とが結合垂直方向への荷重を受けるため、補強部材と結合部材との車幅方向における結合剛性を高くでき、車両の側壁及びサスペンションタワーの車幅方向における剛性を高くすることができる。
【0012】
請求項2に記載の車両側部構造では、結合部材が車両のホイルハウスに結合されている。このため、結合部材の剛性を高くでき、車両の側壁及びサスペンションタワーの車幅方向における剛性を一層高くすることができる。
【0013】
請求項3に記載の車両側部構造では、補強部材と結合部材とが上下方向に離間した複数の位置において結合されている。このため、補強部材と結合部材との車幅方向における結合剛性を一層高くでき、車両の側壁及びサスペンションタワーの車幅方向における剛性を一層高くすることができる。
【0014】
請求項4に記載の車両側部構造では、車両のシートベルトを巻き取る巻取機構が補強部材及び結合部材の少なくとも一方に結合されている。このため、巻取機構を結合する部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0015】
請求項5に記載の車両側部構造では、車両のシートベルトを巻き取る巻取機構が側壁部材の車幅方向外側に挿入孔を介して挿入されている。このため、巻取機構を側壁部材の車幅方向外側に挿入するための孔を側壁部材に別途設ける必要がなく、側壁部材の構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には、本発明の実施の形態に係る車両側部構造10が車両左斜め前方から見た斜視図にて示されている。さらに、図2には、車両側部構造10の主要部が上方から見た断面図(図1の2−2線断面図)にて示されており、図3には、車両側部構造10の主要部が車両前方から見た断面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0017】
本実施の形態に係る車両側部構造10は、所謂2BOX車両やワゴン車両である車両12に適用されている。
【0018】
車両12の車幅方向両側端部の側壁14には、側壁部材としての板状のルーフサイドインナ16が設けられており、ルーフサイドインナ16は、車両12のピラー18(車両前側から3番目のCピラー)を含む側壁14の車幅方向内側(車室側)の側面を構成している。ルーフサイドインナ16の上側部分には、ピラー18の車両後側において、窓部材としてのクォータガラス20が取り付けられており、ルーフサイドインナ16の下側部分には、クォータガラス20の車両前側において、矩形状の挿入孔22が貫通形成されている。
【0019】
ルーフサイドインナ16の下端部には、挿入孔22の下方において、略半円筒状のホイルハウスアウタ24A(リヤホイルハウスアウタ)が一体に形成されており、ホイルハウスアウタ24Aは、ルーフサイドインナ16から車幅方向外側へ突出されて、車両12のホイルハウス24(リヤホイルハウス)を構成している。
【0020】
側壁14の内部(ルーフサイドインナ16の車幅方向外側)には、クォータガラス20の車両前側において、補強部材としての断面U字形板状のルーフサイドアウタ26が設けられており、ルーフサイドアウタ26は、幅方向両端部(車両前側端部及び車両後側端部)においてルーフサイドインナ16にスポット溶接によって結合されると共に、下端においてホイルハウスアウタ24Aにスポット溶接によって結合されて、ルーフサイドインナ16及びホイルハウスアウタ24A(側壁14)を補強している。また、ルーフサイドアウタ26は、ピラー18内に配置されると共に、ルーフサイドアウタ26の内部は、ルーフサイドインナ16の車幅方向内側(車室側)に挿入孔22によって連通されている。
【0021】
ホイルハウスアウタ24Aの車幅方向内側には、略半円筒状のホイルハウスインナ24B(リヤホイルハウスインナ)が設けられており、ホイルハウスインナ24Bは、車幅方向内側が閉じられると共に、車幅方向外側端の外周部がホイルハウスアウタ24Aの外周部(ルーフサイドインナ16)にスポット溶接によって結合されて、ホイルハウスアウタ24Aと共にホイルハウス24を構成している。
【0022】
ホイルハウスインナ24Bの車幅方向内側部には、サスペンションタワー28(リヤサスペンションタワー)が一体に形成されており、サスペンションタワー28は、頂壁を有する略円筒状にされて、車両12の図示しない車輪(後輪)を図示しないサスペンション(リヤサスペンション)を介して支持している。
【0023】
ホイルハウスインナ24Bの上側には、結合部材としての略U字形板状のホイルハウスガセット30が設けられており、ホイルハウスガセット30は、幅方向両端部(車両前側端部及び車両後側端部)においてホイルハウスインナ24Bにスポット溶接によって結合されると共に、車幅方向内側端部においてサスペンションタワー28の頂壁にスポット溶接によって結合されて、ホイルハウスインナ24B(ホイルハウス24)及びサスペンションタワー28を補強している。
【0024】
ホイルハウスガセット30の車幅方向外側端部は、ルーフサイドインナ16の挿入孔22の下側部分を介してルーフサイドアウタ26の内部に挿入されており、ホイルハウスガセット30は、両側壁(車両前側壁及び車両後側壁)がそれぞれルーフサイドアウタ26の両側壁(車両前側壁及び車両後側壁)にスポット溶接32によって車両前後方向において結合されて、ルーフサイドアウタ26とサスペンションタワー28及びホイルハウスインナ24Bとを連結している。また、ホイルハウスガセット30の両側壁とルーフサイドアウタ26の両側壁とをそれぞれ結合するスポット溶接32は、上下方向において離間した複数(本実施の形態では2つ)の位置において行われている。
【0025】
ホイルハウスガセット30の車幅方向外側端部には、上壁において、結合部としての板状のブラケット部34が所謂切り起こしによって一体に形成されており、ブラケット部34は、ホイルハウスガセット30の上壁から上側に突出されると共に、ルーフサイドアウタ26の内部に配置されている。ブラケット部34には、巻取機構としての図示しないリトラクタが取り付けられており、リトラクタは、ルーフサイドインナ16の挿入孔22の上側部分を介してルーフサイドアウタ26の内部に挿入されている。リトラクタには、車両12の図示しないシート(後席)用のシートベルトが巻き取られており、シートベルトは、ピラー18の上部から車室側へ延出されている。
【0026】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0027】
以上の構成の車両側部構造10では、ルーフサイドインナ16及びホイルハウスアウタ24Aが側壁14内のルーフサイドアウタ26によって補強されると共に、ルーフサイドアウタ26の内部がルーフサイドインナ16の挿入孔22を介してルーフサイドインナ16の車幅方向内側に開放されている。さらに、ホイルハウスインナ24Bの上側にホイルハウスガセット30が結合されており、ホイルハウスガセット30の車幅方向内側端部はサスペンションタワー28に結合されている。
【0028】
ここで、ホイルハウスガセット30の車幅方向外側端部はルーフサイドインナ16の挿入孔22を介してルーフサイドアウタ26の内部に挿入されており、ホイルハウスガセット30の両側壁はそれぞれルーフサイドアウタ26の両側壁にスポット溶接32によって車両前後方向において結合されている。
【0029】
このため、車両12の走行時に、車両12の車輪から、サスペンションタワー28、ホイルハウスガセット30(ホイルハウスインナ24Bを含む)、ルーフサイドアウタ26及びルーフサイドインナ16(ホイルハウスアウタ24Aを含む)に車幅方向への荷重(車幅方向へ傾動させる荷重)が入力しても、ルーフサイドアウタ26とホイルハウスガセット30とが結合垂直方向への荷重を受けるため、ルーフサイドアウタ26とホイルハウスガセット30とが互いに結合される側壁に沿って当該荷重を受けることができる。これにより、ルーフサイドアウタ26とホイルハウスガセット30との車幅方向における結合剛性を高くでき、車両12の側壁14(特にピラー18)及びサスペンションタワー28の車幅方向における剛性を高くすることができて、車両12の操縦安定性及び静粛性を高くすることができる。しかも、車両12の曲げ及び捩りに対する剛性を高くすることができ、車両12の曲げ及び捩りに対する剛性を高くするための剛性部材を別途設ける必要がなく、コスト及び重量を低減することができる。
【0030】
さらに、ホイルハウスガセット30の両側壁とルーフサイドアウタ26の両側壁とは、それぞれ上下方向に離間した複数の位置においてスポット溶接32によって結合されている。これにより、ルーフサイドアウタ26とホイルハウスガセット30との車幅方向における結合剛性を一層高くでき、車両12の側壁14(特にピラー18)及びサスペンションタワー28の車幅方向における剛性を一層高くすることができる。
【0031】
しかも、上述の如く、ホイルハウスガセット30がホイルハウスインナ24Bの上側に結合されている。このため、ホイルハウスガセット30の剛性を高くでき、車両12の側壁14(特にピラー18)及びサスペンションタワー28の車幅方向における剛性を一層高くすることができる。
【0032】
また、リトラクタがルーフサイドインナ16の挿入孔22の上側部分を介してルーフサイドアウタ26の内部に挿入されている。このため、リトラクタをルーフサイドアウタ26の内部に挿入するための孔をルーフサイドインナ16に別途設ける必要がなく、ルーフサイドインナ16の構成を簡単にすることができる。
【0033】
さらに、ホイルハウスガセット30のブラケット部34にリトラクタが取り付けられている。このため、リトラクタを取り付ける部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができて、コストを低減することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、リトラクタを取り付けるブラケット部34をホイルハウスガセット30に設けた構成としたが、リトラクタを取り付けるブラケット部34をルーフサイドアウタ26に設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両側部構造を示す車両左斜め前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両側部構造の主要部を示す上方から見た断面図(図1の2−2線断面図)である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両側部構造の主要部を示す車両前方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 車両側部構造
12 車両
14 側壁
16 ルーフサイドインナ(側壁部材)
22 挿入孔
24 ホイルハウス
26 ルーフサイドアウタ(補強部材)
28 サスペンションタワー
30 ホイルハウスガセット(結合部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側壁を構成し、挿入孔が貫通形成された側壁部材と、
前記側壁部材の車幅方向外側に配置され、前記側壁を補強する補強部材と、
車両のサスペンションタワーに結合され、前記側壁部材の車幅方向外側に前記挿入孔を介して挿入されると共に、前記補強部材に車両前後方向において結合された結合部材と、
を備えた車両側部構造。
【請求項2】
前記結合部材を車両のホイルハウスに結合した、ことを特徴とする請求項1記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記補強部材と前記結合部材とを上下方向に離間した複数の位置において結合した、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両側部構造。
【請求項4】
車両のシートベルトを巻き取る巻取機構を前記補強部材及び結合部材の少なくとも一方に結合した、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両側部構造。
【請求項5】
車両のシートベルトを巻き取る巻取機構を前記側壁部材の車幅方向外側に前記挿入孔を介して挿入した、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−49723(P2008−49723A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225051(P2006−225051)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】