説明

車両制御システム

【課題】架線から電力供給を受けて走行する鉄道車両において、その供給元である変電所がダウンした場合や、同一変電区間に車両が大幅に増加した場合に車両の架線電圧が大幅に低下したら、各車両に対して架線電圧の補償を行うように制御する。
【解決手段】外部の電力供給体101と電力を送受する送受給部103と、車両システムを駆動するための駆動手段104と、電力を蓄積する電力蓄積手段105と、前記駆動手段に駆動指令を与える統括制御手段107とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電力供給体からの電力供給を受けて動作するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
架線から電力供給を受けて走行する鉄道車両において、その供給元である変電所がダウンした場合や、同一変電区間に車両が大幅に増加した場合には、車両の架線電圧が大幅に低下してしまい、走行性能の大幅な低下による遅延や、場合によっては走行不能になることがある。これを解決するための技術として、特許文献1に示す様に、地上に蓄電装置を置くことで架線電圧を補償する技術がある。また、特許文献2として地上に電力蓄積手段を、各車両には車両位置検出装置と通信装置を設けて、前記通信装置を用いて前記電力蓄積手段に、各車両が検出した車両位置を伝達することで、電力蓄積手段の充放電スケジュールを決定し運用する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−162076号公報
【特許文献2】特開2009−67206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、蓄電装置が地上に設置されているため、蓄電装置によって電圧を補償できる範囲が限られていることから、蓄電装置の設置位置から離れた所を走行する車両は、まったく電圧を補償されないケースが存在する。また、蓄電装置が管理する領域に複数車両が存在する場合であっても、蓄電装置の出力が不足すると、各車両が必要とする電圧補償をすることができないという問題がある。なお、蓄電装置を無限に設置することが可能であれば、この問題は解決するがコスト増や設置スペースの問題があるため限界がある。また、特許文献2では、通信装置を経由して得られる各車両位置を用いて充放電スケジュールを決定しなければ効果的な運用ができないという問題がある。本発明の目的は、車両に対する架線電圧の補償をより確実に行うように制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、外部の電力供給手段と電力を送受給する電力送受給部と、電力を蓄積する電力蓄積手段と、電力送受給部および電力蓄積手段からの電力により車両を駆動可能な駆動手段と、電力送受給部の電圧に基づき、電力蓄積手段へ充放電制御指令を与える統括制御手段を有することにより実現できる。
【0006】
好ましくは、統括制御手段は、電力送受給部の電圧と電力蓄積手段の充電量情報を基に、電力蓄積手段に対する充放電制御指令を決定することにより実現できる。
【0007】
好ましくは、電力送受給部の電圧が第1の電圧閾値よりも小さい場合に、充放電制御指令として電力蓄積手段に放電を行わせる指令を生成する。
【0008】
好ましくは、電力送受給部の電圧が第2の電圧閾値よりも大きく、第1の電圧閾値よりも小さい場合に、充放電制御指令として、電力蓄積手段の最大放電電力および駆動手段での必要電力よりも小さい電力値の放電指令を生成する。
【0009】
好ましくは、電力送受給部の電圧が第3の電圧閾値よりも大きい場合に、充放電制御指令として電力蓄積手段に充電を行わせる指令を生成する。
【0010】
好ましくは、第1乃至第3の電圧閾値の少なくとも一つを、電力蓄積手段の充電量の増減に応じて同様に増減させる。
【0011】
好ましくは、前記第3の電圧閾値は回生電流の絞込みを開始する電圧とする。
【0012】
または、統括制御手段は、車両位置を計測する車両位置計測手段と、車両速度を計測する車両速度計測手段とを備え、駆動手段へ送信される駆動指令と、電力送受給部の電圧と、車両位置と、車両速度に基づいて、充放電制御指令を生成する。
【0013】
または、電力蓄積手段を電力発電手段と置き換え、放電指令を発電指令と、充電指令をエンジンブレーキ指令と置き換えても良い。
【発明の効果】
【0014】
車両に対する架線電圧の補償をより確実に実施することが可能となり、走行性能の大幅な低下を防ぎダイヤを遵守することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例を実現するためのシステム構成図の一例。
【図2】本発明の第1の実施例を実現するための統括制御手段のブロック図。
【図3】本発明の第1の実施例を実現するための電圧閾値設定手段での各電圧閾値。
【図4】本発明の第1の実施例を実現するための充放電指令決定手段の処理フロー。
【図5】本発明の第1の実施例を実現するための充放電指令値算出方法の一例。
【図6】本発明の第1の実施例を実現するための充放電指令値算出方法の一例。
【図7】本発明の第1の実施例を実施した場合の結果の一例。
【図8】本発明の第2の実施例を実現するためのシステム構成図の一例。
【図9】本発明の第2の実施例を実現するための統括制御手段のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を用いて、各実施形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明を実現するための車両システム構成図の一例である。
【0018】
本発明を実現する車両システム100(例えば、予め定められた軌道上を走行する鉄道車両)は、自車両の外部の電力供給体101(例えば、変電所)と電力102を送受する送受給部103(例えば、集電装置)と、車両システムを駆動するための駆動手段104(例えば、インバータ及び電動機)と、電力を蓄積する電力蓄積手段105と、前記駆動手段104に駆動指令106を与える統括制御手段107とを備えている。また、前記統括制御手段107は、送受給部103の電圧108および前記電力蓄積手段105の充電量情報109を基に、前記電力蓄積手段105に対して充放電制御指令110を与える。本実施例では、統括制御手段107が駆動指令106および充放電制御指令110を出力する例を示すが、充放電制御指令110の出力は統括制御手段107により行い、駆動指令106の出力は他の装置により行っても良い。
【0019】
図2に、前記統括制御手段107の処理ブロックを示す。
【0020】
前記統括制御手段107は、電圧閾値設定手段201と、充放電指令決定手段202と、駆動指令を生成する駆動指令生成部909より構成される。電圧閾値設定手段201は、充電量情報109を基に、前記電力蓄積手段105から電力の供給を実施するかどうかを判断するために使用する第1の電圧閾値203、車両システムとして走行時間を遵守するために最低限必要な電圧である第2の電圧閾値204および、前記電力蓄積手段105に対して充電するかどうかを判断するために使用する第3の電圧閾値205を求める。前記充放電指令決定手段202は、前記第1の電圧閾値203,前記第2の電圧閾値204,前記第3の電圧閾値205および前記電圧108を用いて充放電制御指令110を決定する。
【0021】
図3に、電圧閾値設定手段201における前記第1の電圧閾値203,前記第2の電圧閾値204,前記第3の電圧閾値205の算出方法の一例を示す。横軸は電力蓄積手段の充電量、縦軸は電圧閾値とする。本例では、電力蓄積手段の蓄電量が低ければ低いほど、それぞれの電圧閾値を低くなるようにしている。つまり、電力蓄電手段の充電量の増加に対応して増加し、電力蓄電手段の充電量の減少に対応して減少するように各電圧閾値を設定する。このように設定することで、充電量が少ない場合において、車両が回生中である場合には低い電圧から充電を開始することができ充電量を向上させることが可能となる。また、車両が駆動中である場合には、電圧の補償範囲が下がることになるため、蓄電装置の充電量に応じた電圧補償範囲が設定できることになる。次に、充電量が多い場合において、車両が回生中である場合には、充電開始電圧が高くなるため充電量を一定に保つ効果が得られる。また、車両が駆動中である場合には、電圧の補償範囲が上がり、効果的な運用が期待できる。なお、本例ではそれぞれの電圧閾値(第1〜第3の閾値)が平行となるように設定しているが、お互いが重ならない範囲であれば、必ずしも平行でなくても良い。また、電圧閾値(第1〜第3の閾値)は、充電量に依らず一定値として設定しても問題はない。なお、通常は定格電圧の90%程度で走行できることを前提としていることから、第1の電圧閾値としては、定格電圧の90%程度にすることが望ましい。また、第2の電圧閾値としては定格電圧の80%程度にすることが望ましい。また、回生時はある一定の電圧を超えると回生性能を絞り込む軽負荷回生が行われるのが一般的であるため、軽負荷回生を開始する電圧を第3の電圧閾値とすることが望ましい。
【0022】
次に、図4に、統括制御手段107における充放電制御指令113の算出方法の一例について示す。
【0023】
ステップ401では、電圧閾値設定手段111によって設定した第1の電圧閾値203,第2の電圧閾値204,第3の電圧閾値205をそれぞれ内部値V1,V2,V3とする。
【0024】
ステップ402では、駆動手段へ与えた駆動指令から駆動手段で必要な電力P0を算出する。次に、ステップ403に進む。
【0025】
ステップ403ではステップ402で求めた駆動手段の必要電力P0が正かどうかを判断し、正であれば駆動であるのでステップ404に進む。負であれば回生であるのでステップ410に進む。
【0026】
次に、ステップ404では、電力蓄積手段の最大放電電力BDmaxとステップ402で得た駆動手段で必要な電力P0を比較し、小さい方を必要電力Pとする。次に、ステップ405に進む。
【0027】
ステップ405では、送受給部の電圧V0がステップ401で設定したV1以下かどうかをチェックし、Yesであればステップ406に進む。大きくなければステップ408に進む。
【0028】
ステップ406では、送受給部の電圧V0がV2よりも大きいかどうかをチェックし、大きければステップ407に進む。大きくなければステップ409に進む。
【0029】
ステップ407では、ステップ702で算出した必要電力Pと、送受給部の電圧V0とV1およびステップ401で設定したV2を用いて電力蓄積手段への放電電力指令Xを決定する。例えば、図5に示す形を用いれば、
X=P・(V0−V1)/(V2−V1)
で求めることが可能である。以上で終了となる。なお、これは1次曲線で記述している場合であるが、図6のように高次曲線で記述しても本発明の内容を妨げない。
【0030】
このように送受給部の電圧が第1の閾値と第2の閾値の間の値である場合に、必要電力P(電力蓄電手段の最大放電電力BDmaxと前記駆動手段で必要な電力P0の小さい方)よりも小さい電力を放電するように電力蓄電装置へ指令することにより、駆動手段の入力電圧を車両システムとして最低限必要な電圧である第2の閾値電圧よりも高く保つことができる。また、図5と図6に記載の電力決定方法は、どちらも駆動手段の入力電圧をV2以上に保つという点では共通している。この2つの電力決定方法による効果の違いとしては、図5の方が、V2からV1の間はPを高めに制御しているため、より多く電流を出すことになるため、時間的にはよりV1に近づきやすいが、図6に比べて蓄電装置の負担が大きくなります。図6は電圧が上がるにつれて、電流の絞りを多くしているため、長時間かけてV1に近づけようとするので、図5に比べて蓄電装置の負担は減ります。これらの電力決定方法は、路線/走行本数等に応じて好ましい方を選択すれば良い。
【0031】
次に、ステップ405から派生したステップ408では、電力蓄積手段への放電電力指令Xは0として終了となる。次に、ステップ406から派生したステップ409では、電力蓄積手段への放電電力指令XはPとして終了となる。
【0032】
一方、ステップ410では、電力蓄積手段の最大充電電力BCmaxとステップ402で得た駆動手段で必要な電力P0について絶対値を比較し、絶対値の小さい方を必要電力Pとする。次に、ステップ411に進む。
【0033】
ステップ411では、送受給部の電圧V0がステップ401で設定したV3以上かどうかをチェックし、送受給部の電圧V0がV3以上であればステップ412に進む。上記が成立しなければステップ413に進む。
【0034】
ステップ412では、ステップ408で算出した必要電力Pを蓄電装置に充電するように指令する。以上で終了となる。
【0035】
また、ステップ413では、電力蓄積手段への放電電力指令Xは0として終了となる。
【0036】
なお、送受給部の電圧V0を送受給部の電圧の履歴から予測した電圧Vxとしても本発明は差し支えない。
【0037】
図7に本実施形態を鉄道車両に適用した場合の動作について4つのグラフを用いて説明する。横軸は時刻を表し、縦軸は、速度,架線電圧,充電量,位置を表す。また、本実施形態を実施する場合については実線で示す。また、速度,位置および、架線電圧(時刻t0−t3)については、比較対象として本実施形態を実施しない場合を点線で示す。なお、点線がないところは実線と同じ動きとなる。時刻毎についてそれぞれ示す。
【0038】
時刻t0−t1間は、車両が加速する場合を表している。この時刻中における架線電圧はV1以上であるため、電力蓄積手段からの供給はなしとなることから、充電量は変化しない。このため、本実施形態を実施する、実施しないに関わらず、同じ動きとなる。
【0039】
次に、時刻t1−t2間になると架線電圧がV1よりも下回るため、電力蓄積手段から電力が供給され、架線電圧が一定範囲内に保たれる。このため、本実施形態を適用しない場合に比べて加速性能が上昇する。一方、本実施形態を適用しない場合には架線電圧が下がっていることがわかる。また、基準電圧であるV1,V2,V3は電力蓄積手段の充電量によって変更しており、その電圧を用いて制御されていることも確認できる。
【0040】
次に、時刻t2−t3間では、本実施形態を適用しない場合には加速を続けているが、本実施形態を適用した場合には最高速度に到達するため定速走行へと動作が変わっている。定速走行は加速に比べて電力を使用しないため、架線電圧が上昇しV1よりも大きいため電力蓄積手段からの供給はなく、電力蓄積手段の充電量は変わらない。このため、基準電圧であるV1,V2,V3も変わらない。
【0041】
次に、時刻t3−t4間は、架線電圧がV1以上V3以下であることから電力蓄積手段からの電力の供給は行われず、電力蓄積手段の充電量は変わらない。このため、基準電圧であるV1,V2,V3も変わらない。
【0042】
次に、時刻t4−t5間では、車両が制動を開始したため、架線電圧が上昇するが、架線電圧がV1以上V3以下であることから電力蓄積手段からの電力の供給は行われず、電力蓄積手段の充電量は変わらない。このため、基準電圧であるV1,V2,V3も変わらない。
【0043】
次に、時刻t5−t6間では、車両が制動中であり架線電圧が上昇し、架線電圧がV3以上となったことから電力蓄積手段への充電が行われ、電力蓄積手段の充電量が増加する。また、基準電圧であるV1,V2,V3も変化する。
【0044】
以上の処理により時刻t6には到着位置に到達する。しかし、本実施形態を適用しない場合には時刻t2−t3間での加速が不足するため時刻t6では到達せず、時刻t7に到達することになる。このように、架線電圧の補償をすることで、走行時間の短縮が可能となり、ダイヤを遵守することが可能となる。
【0045】
なお、本例では電力蓄積手段を用いているが、例えば、エンジンのような電力発生手段を用いた場合でも本発明は妨げない。その理由は、駆動時はエンジンを用いて発電すれば良く、回生時にはエンジンブレーキをすることで、発生したエネルギーを消費することが可能であるためである。
【実施例2】
【0046】
図8は本発明を実現するためのシステム構成図の一例である。なお、図1と同じものについては同じ番号を用いて説明する。
【0047】
本発明を実現する車両システム800は、外部の電力供給体101と電力102を送受する送受給部103と、車両システムを駆動するための駆動手段104と、電力を蓄積する電力蓄積手段105と、前記駆動手段104に駆動指令106を与える統括制御手段801と、車両位置802を計測する車両位置計測手段803,車両速度804を計測する車両速度計測手段805を備えている。また、前記統括制御手段801は、前記駆動指令106と前記送受給部103の電圧108と前記車両位置802および前記車両速度804とを基に、充放電制御指令806を生成し、前記電力蓄積手段105に対して当該充放電制御指令806を与える。本実施例では、統括制御手段801が駆動指令106および充放電制御指令806を出力する例を示すが、充放電制御指令806の出力は統括制御手段801により行い、駆動指令106の生成は他の装置により行っても良い。
【0048】
図9に、前記統括制御手段801の処理ブロックを示す。
【0049】
前記統括制御手段801は、供給予測変電所位置入手手段901と、架線電圧予測手段902,充放電指令決定手段903およびすべての変電所位置のデータを登録してあるデータベース904(さらに架線やレールの抵抗値を登録しても良い。)と、駆動指令を生成する駆動指令生成部909により構成される。供給予測変電所位置入手手段901は、前記車両位置802と前記データベース904に基づいて、先頭方向に対して最も近い変電所位置905および後尾方向に対して最も近い変電所位置906と、変電所位置905と変電所位置906間の架線/レール抵抗907を生成する。また、架線電圧予測手段902は、前記駆動指令106,前記車両速度804,前記車両位置802,前記変電所位置905および906、および架線/レール抵抗907から、予測架線電圧908を以下のようにして求める。
PV=変電所の定格電圧−SQRT(P×|A−X|/|A−B|×R)
によって求める。但し、PV:予測架線電圧,P:駆動指令106および車両速度804から求まる電力,X:車両位置802,A:変電所位置905,B:変電所位置906,R:架線/レール抵抗907とする。
【0050】
また、充放電指令決定手段903は、駆動指令106,車両速度804,前記送受給部103の電圧108,予測架線電圧908から充放電制御指令806を以下のようにして求める。
CC=(VT/PV−1)×P
【0051】
但し、CC:充放電制御指令806,P:駆動指令106および車両速度804から求まる電力,PV:予測架線電圧908,VT:電圧108。この時、CC=0であれば、実施例1と同様の判断に基づき実施し、それ以外のケースではCCに従い実施する。
【0052】
以上のように充放電制御することで、他車両の影響を考慮した形で充放電制御指令を生成することができる。すなわち、VT<PV(CC<0)なら同一区間を存在している他車両が力行しているため、電圧VTが予測架線電圧PVよりも低い。この時、自車両の蓄電装置から放電することで、架線からの電流を低減し自車両の電圧VTを予測架線電圧PV付近まで押し上げることで、1車両の時と同様に制御することが可能となる。また、自車両の蓄電装置の充電は、VT>PVの時に充電することで行う。VT>PVの時は、同一区間に存在している他車両が回生している場合である。この時に、車両の通常の走行に必要な電流だけでなく、車両の蓄電装置に充電するように電流を要求する。これにより、電圧VTが予測架線電圧PV付近まで落ちるが、車両の蓄電装置の充電が可能となる。これを繰り返せば、車両は常に1車両で走行している場合と同じ電圧変動で走行することができる。また、CC=0(VT=PV)なら自車両のみ同一変電区間に存在することになるため、1車両の時と同じように制御すればよい。
【実施例3】
【0053】
なお、上記した実施例では電力蓄積手段を用いているが、例えば、エンジンのような電力発生手段を用いた場合でも本発明を適用することは可能である。その理由は、上記実施例における電力蓄積手段からの放電時はエンジン/発電機を用いて発電すれば良く、上記実施例における電力蓄積手段への充電時にはエンジンブレーキを利用することで、発生したエネルギーを消費することが可能であるためである。
【0054】
この実施例の構成について以下に説明する。なお実施例1および2と共通する構成については説明を省略する。
【0055】
本実施例においては、上記各実施例における充放電制御指令は、発電制御指令に置換わる。また、第1の閾値は発電するか否かを決定するための閾値であり、第3の閾値はエンジンブレーキを実施するか否かを決定するための閾値であり、第2の閾値は車両システムとして補償したい最低電圧である。
【0056】
送受給部の電圧が第3の閾値よりも大きい場合には、発電制御指令としてエンジンブレーキをかける指令が生成される。送受給部の電圧が第1の電圧閾値よりも小さい場合には、発電制御指令として発電動作を行う指令が生成される。また、送受給部の電圧が第1の電圧閾値より小さく、第2の電圧閾値よりも大きい場合は、図5または図6に示す通り、必要電力P(電力発電手段の最大発電電力BDmaxと前記駆動手段で必要な電力P0の小さい方)よりも小さい電力を発電するような発電制御指令が電力発電装置へ出力される。
【0057】
また、電力発電装置には、充電量の概念が無いため、電圧閾値(第1〜第3の閾値)は一定の値となる。なお、電圧閾値は一定値である必要はなく、充電量以外の他のパラメータに応じて変動させても良い。
【符号の説明】
【0058】
100,800 車両システム
101 外部の電力供給体
102 電力
103 送受給部
104 駆動手段
105 電力蓄積手段
106 駆動指令
107,801 統括制御手段
108 電圧
109 充電量情報
110,806 充放電制御指令
201 電圧閾値設定手段
202,903 充放電指令決定手段
203 第1の電圧閾値
204 第2の電圧閾値
205 第3の電圧閾値
802 車両位置
803 車両位置計測手段
804 車両速度
805 車両速度計測手段
901 供給予測変電所位置入手手段
902 架線電圧予測手段
904 データベース
905,906 変電所位置
907 架線/レール抵抗
908 予測架線電圧
909 駆動指令生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の電力供給手段から電力を送受給する車両の車両制御システムにおいて、
前記車両は前記電力供給手段と電力を送受給する電力送受給部と、
電力を蓄積する電力蓄積手段と、
前記電力送受給部および前記電力蓄積手段からの電力により車両を駆動可能な駆動手段と、
前記電力送受給部の電圧に基づき、前記電力蓄積手段へ充放電制御指令を与える統括制御手段を有することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、前記電力送受給部の電圧と前記電力蓄積手段の充電量情報を基に、前記電力蓄積手段に対する前記充放電制御指令を決定する充放電指令決定手段を有することを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御システムにおいて、
前記充放電指令決定手段は、前記電力蓄積手段の充電量の増加に対応して増加し、前記電力蓄積手段の充電量の減少に対応して減少する第1の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第1の電圧閾値よりも小さい場合に、前記充放電制御指令として前記電力蓄積手段に放電を行わせる指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御システムにおいて、
前記充放電指令決定手段は、前記電力蓄積手段の充電量の増加に対応して増加し、前記電力蓄積手段の充電量の減少に対応して減少する第2の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第2の電圧閾値よりも大きく、前記第1の電圧閾値よりも小さい場合に、前記充放電制御指令として、前記電力蓄積手段の最大放電電力および前記駆動手段での必要電力よりも小さい電力値の放電指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御システムにおいて、
前記充放電指令決定手段は、前記電力蓄積手段の充電量の増加に対応して増加し、前記電力蓄積手段の充電量の減少に対応して減少する第3の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第3の電圧閾値よりも大きい場合に、前記充放電制御指令として前記電力蓄積手段に充電を行わせる指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、前記電力蓄積手段の放電開始の要否を決定するための第1の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第1の電圧閾値よりも小さい場合に、前記充放電制御指令として前記電力蓄積手段に放電を行わせる指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、第2の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第2の電圧閾値よりも大きく、前記第1の電圧閾値よりも小さい場合に、前記充放電制御指令として、前記電力蓄積手段の最大放電電力および前記駆動手段での必要電力よりも小さい電力値の放電指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、充電開始の要否を決定するための第3の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第3の電圧閾値よりも大きい場合に、前記充放電制御指令として前記電力蓄積手段に充電を行わせる指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、車両位置を計測する車両位置計測手段と、車両速度を計測する車両速度計測手段とを備え、
前記駆動手段へ送信される駆動指令と、前記電力送受給部の電圧と、前記車両位置と、前記車両速度に基づいて、前記充放電制御指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項10】
請求項9の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、変電所の位置が登録されたデータベースと、
前記車両位置および前記データベースから得られる変電所の位置に基づいて、先頭方向で最も近い変電所位置と後尾方向で最も近い変電所位置と、前記2つの変電所間の架線およびレール抵抗と、を求める供給予測変電所位置入手手段と、
前記駆動指令,前記車両速度,前記車両位置,前記2つの変電所位置、および前記2つの変電所間の架線およびレール抵抗から予測架線電圧を求める架線電圧予測手段と、
前記予測架線電圧と、前記電力送受給部の電圧と、前記駆動指令と、前記車両速度と、から求まる電力を基に、前記充放電制御指令を決定する充放電指令決定手段により構成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項11】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記電力蓄積手段に換えて、電力を発生させる電力発生手段を有し、
前記統括制御部は、前記電力送受給部の電圧に基づき、前記充放電制御指令に換えて発電制御指令を前記電力発生手段に与えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、前記電力発電手段の発電開始の要否を決定するための第1の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第1の電圧閾値よりも小さい場合に、前記発電制御指令として前記発電手段に電力を発電させる指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の車両制御システムにおいて、
前記統括制御手段は、エンジンブレーキ開始の要否を決定するための第3の電圧閾値を有し、
前記電力送受給部の電圧が前記第3の電圧閾値よりも大きい場合に、前記発電制御指令としてエンジンブレーキを行う指令を生成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項14】
請求項5または請求項8または請求項13に記載の車両において、
前記第3の電圧閾値は回生電流の絞込みを開始する電圧とすることを特徴とする車両制御システム。
【請求項15】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両は、予め定められた軌道上を走行する鉄道車両であり、
前記外部の電力供給手段は、変電所であり、
前記電力送受給部は、前記変電所からの電力を電力線を介して授受する集電装置であり、
前記駆動手段は、車両駆動用の電動機および当該電動機を制御する電力変換器であることを特徴とする車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139013(P2012−139013A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289093(P2010−289093)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】