説明

車両制御システム

【課題】適正にエネルギーを蓄積することができる車両制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】車両制御システム1−1は、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置31に蓄えること、及び、蓄圧装置31に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両100の駆動輪7に対して出力することが可能な圧力変換装置32と、入力される動力を電力に変換して蓄電装置5に蓄えることが可能な電力変換装置4とを備え、作動流体の温度が予め設定された第1所定温度以上である場合に、蓄圧装置31に蓄えられた圧力エネルギーを圧力変換装置32、及び、電力変換装置4によって電力に変換して蓄電装置5に蓄えることを特徴とする。したがって、車両制御システム1−1は、適正にエネルギーを蓄積することができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄積したエネルギーを利用して車両を走行させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、エンジンにより駆動される発電機からの電気エネルギーで駆動される電動モータと、エンジンにより駆動される油圧ポンプからの圧油で駆動される油圧モータと、電動モータからの出力及び油圧モータからの出力を合成する遊星歯車機構と、遊星歯車機構で直接的に駆動される走行用のホイールとを備えるハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両は、例えば、制動時には、電動モータを発電機として機能させたり、油圧モータを油圧ポンプとして機能させたりすることでエネルギー回生を行い、回生された電気エネルギーをバッテリーに充電し、回生された油圧でエンジンブレーキを作用させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−221921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載のハイブリッド車両は、例えば、エネルギーの蓄積の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正にエネルギーを蓄積することができる車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両制御システムは、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄えること、及び、前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な圧力変換装置と、入力される動力を電力に変換して蓄電装置に蓄えることが可能な電力変換装置とを備え、前記作動流体の温度が予め設定された第1所定温度以上である場合に、前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを前記圧力変換装置、及び、前記電力変換装置によって電力に変換して前記蓄電装置に蓄えることを特徴とする。
【0007】
また、上記車両制御システムでは、前記作動流体の温度が予め設定された第2所定温度以下である場合に、前記圧力変換装置に入力される動力を当該圧力変換装置よって前記作動流体の圧力エネルギーに変換して前記蓄圧装置に蓄えるものとすることができる。
【0008】
また、上記車両制御システムでは、前記作動流体の温度が予め設定された第3所定温度以下であり、前記蓄電装置の蓄電量が予め設定される所定量以上であり、かつ、前記蓄電装置の温度が予め設定された第4所定温度以上である場合に、前記電力変換装置による電力への回生変換を抑制し、前記圧力変換装置による圧力エネルギーへの回生変換を増加するものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両制御システムは、適正にエネルギーを蓄積することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態に係る車両制御システムが適用されるハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態に係る車両制御システムにおける高油温時エネルギー変換制御の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、油圧システム及びM/Gの回生効率の一例を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係る車両制御システムにおける低油温時エネルギー変換制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施形態に係る車両制御システムにおける低油温時エネルギー変換制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る車両制御システムが適用されるハイブリッド車両の概略構成図、図2は、実施形態に係る車両制御システムにおける高油温時エネルギー変換制御の一例を示すフローチャート、図3は、油圧システム及びM/Gの回生効率の一例を示す図、図4、図5は、実施形態に係る車両制御システムにおける低油温時エネルギー変換制御の一例を示すフローチャートである。
【0013】
本実施形態に係る車両制御システム1−1は、図1に示すように、いわゆるハイブリッドシステムを構成し、例えば、ハイブリッド車両100に搭載される。ハイブリッド車両100は、油圧式の力行/回生装置(油圧ポンプモータ32)と、電気式の力行/回生装置(M/G4)とを備えている。本実施形態のハイブリッド車両100は、電気式のライトなハイブリッドシステムと、油圧エネルギーによりHV走行可能な油圧システム3とを組み合わせている。このハイブリッド車両100は、M/G4及び油圧ポンプモータ32をそれぞれ高効率となる領域で動作させることで、総合的なエネルギー利用効率の向上を図ることができる。
【0014】
ハイブリッド車両100の車両制御システム1−1は、内燃機関としてのエンジン1、トランスミッション(T/M)2、油圧システム3、電力変換装置としてのモータジェネレータ(M/G)4、蓄電装置としてのバッテリー5、インバータ6、制御装置としてのECU30等を備えている。
【0015】
エンジン1は、ハイブリッド車両100の動力源である。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを出力軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1の出力軸は、T/M2の入力軸と接続されている。T/M2は、例えば、自動変速機であり、エンジン1から入力される動力を変速して出力軸2aに出力する。T/M2の出力軸2aは、第一クラッチC1を介して第一ギアG1に接続されている。第一ギアG1は、第二クラッチC2を介して駆動輪7と接続されている。
【0016】
油圧システム3は、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄えることができると共に、蓄えた圧力エネルギーを動力に変換して出力することができる。油圧システム3は、蓄圧装置としてのアキュームレータ31、油圧による駆動力の出力及び回生が可能な圧力変換装置としての油圧ポンプモータ32、リザーブタンク33等を有する。
【0017】
アキュームレータ31は、作動流体を加圧状態で蓄える。本実施形態の油圧システム3は、作動流体として例えば作動油を用いることができる。アキュームレータ31は、高圧の作動油を蓄えることが可能な蓄圧容器であり、高圧油路34を介して油圧ポンプモータ32と接続されている。アキュームレータ31は、油圧の蓄圧及び油圧ポンプモータ32への油圧の供給が可能である。油圧ポンプモータ32は、低圧油路35を介してリザーブタンク33と接続されている。リザーブタンク33は、作動油を貯留する貯留タンクである。油圧ポンプモータ32の回転軸32aは、第三クラッチC3を介して第二ギアG2と接続されている。
【0018】
油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとしての機能を有すると共に、油圧モータとしての機能も有している圧力変換装置である。油圧ポンプモータ32は、入力される動力を作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えること、及び、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換してハイブリッド車両100の駆動輪7に対して出力することが可能である。
【0019】
具体的には、油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとして機能する場合、第三クラッチC3を介して回転軸32aに入力される動力によって駆動されることにより、低圧油路35を介してリザーブタンク33の作動油を吸引し、吸引した作動油を加圧して高圧油路34に吐出する。高圧油路34に吐出された作動油は、アキュームレータ31に蓄圧される。例えば、油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪7から伝達される動力を圧力に変換して出力することができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを作動油の圧力に回生変換して出力する圧力回生装置としての機能も有する。
【0020】
また、油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして機能する場合、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって駆動されることにより、作動油の圧力エネルギーを動力に変換して回転軸32aに出力する。油圧ポンプモータ32が出力する動力は、第三クラッチC3が係合状態である場合に、第三クラッチC3、第二ギアG2及び第一ギアG1及び第二クラッチC2を介して駆動輪7に伝達されてハイブリッド車両100を走行させることができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーをハイブリッド車両100の走行用の動力に変換して駆動輪7に対して出力することができる。このとき、油圧ポンプモータ32を駆動した作動油は、低圧油路35を介してリザーブタンク33に流入する。
【0021】
油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして出力する動力の大きさ、及び油圧ポンプとして機能するときの負荷の大きさを可変に制御することができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、斜板ポンプや斜軸ポンプ等の可変容量式のポンプモータとすることができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、容量0から最大容量まで無段階にポンプ容量/モータ容量を制御できるものとすることができる。油圧ポンプモータ32は、ポンプ容量を増減させることによってポンプ負荷、すなわち負荷トルクを増減させることができる。また、油圧ポンプモータ32は、モータ容量を増減させることによって回転軸32aに出力する動力、すなわち出力トルクを増減させることができる。
【0022】
M/G4は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。つまり、M/G4は、電力による駆動力の出力及び回生が可能な回転電機である。M/G4としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。M/G4は、インバータ6を介してバッテリー5と接続されている。バッテリー5は、電力を蓄えること、及び、蓄えた電力を放電することが可能な蓄電装置である。インバータ6は、直流電流と交流電流との変換を行う装置である。また、インバータ6は、M/G4の出力トルク及び発電量を制御することができる。
【0023】
M/G4の回転軸4aは、第四クラッチC4を介して第三ギアG3と接続されている。M/G4は、電動機として機能する場合、バッテリー5からインバータ6を介して供給される電力を動力に変換して回転軸4aに出力する。M/G4が出力する動力は、第四クラッチC4が係合状態である場合に、第三ギアG3、第二ギアG2、第一ギアG1及び第二クラッチC2を介して駆動輪7に対して出力される。つまり、M/G4は、バッテリー5に蓄えられた電力をハイブリッド車両100の走行用の動力に変換して駆動輪7に対して出力することができる。
【0024】
また、M/G4は、発電機として機能する場合、第四クラッチC4を介して回転軸4aに入力される動力によって駆動されて発電する。例えば、M/G4は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪7から第二クラッチC2、第一ギアG1、第二ギアG2、第三ギアG3及び第四クラッチC4を介して回転軸4aに入力される動力により駆動されて発電することができる。つまり、M/G4は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを電力に回生変換して出力する電力回生装置として機能することができる。M/G4によって発電された電力は、例えばインバータ6を介してバッテリー5に充電される。バッテリー5は、回生電力の蓄電及びM/G4への電力の供給が可能な蓄電装置である。
【0025】
この車両制御システム1−1は、第一ギアG1と第二ギアG2とが常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。また、車両制御システム1−1は、第二ギアG2と第三ギアG3とが常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。したがって、車両制御システム1−1は、第一ギアG1と第三ギアG3とが第二ギアG2を介して相互に動力を伝達することができる。
【0026】
ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行制御を行う走行制御装置としての機能を有している。また、本実施形態のECU30は、回生制御を行う回生制御装置としての機能を有している。ECU30は、エンジン1、T/M2、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32、バッテリー5、インバータ6及び各クラッチC1,C2,C3,C4等が電気的に、あるいは、油圧制御装置等を介して接続されている。エンジン1、T/M2、油圧ポンプモータ32、インバータ6及び各クラッチC1,C2,C3,C4は、ECU30によって制御される。
【0027】
バッテリー5は、バッテリー5の充放電状態や電圧等を検出する充電状態検出器30aが接続されている。ECU30は、この充電状態検出器30aによる検出結果に基づいて、バッテリー5の充電状態SOCやバッテリー温度を取得することができる。充電状態SOCは、バッテリー5の蓄電量等に応じたパラメータである。アキュームレータ31は、アキュームレータ31内の作動油の圧力、温度を検出する圧力センサ30b、温度センサ30c等が設けられている。ECU30は、圧力センサ30bによる検出結果に基づいて、アキュームレータ31内の油圧を取得することができる。
【0028】
各クラッチC1,C2,C3,C4は、それぞれ開放状態と係合状態とに切替え可能である。各クラッチC1,C2,C3,C4は、油圧等によって開放状態と係合状態とを切替えるアクチュエータをそれぞれ有している。この車両制御システム1−1は、これらのアクチュエータがECU30から出力される指令に応じて作動することにより、各クラッチC1,C2,C3,C4の状態が制御される。なお、各クラッチC1,C2,C3,C4は、完全係合状態のみならず、半係合状態に制御することも可能であり、更に、半係合状態における動力の伝達度合いを制御することも可能である。
【0029】
ECU30は、エンジン1、油圧システム3、M/G4の少なくともいずれか1つが出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることができる。例えば、ECU30は、少なくともエンジン1の動力によってハイブリッド車両100を走行させるエンジン走行を実行することができる。ECU30は、エンジン1が出力する動力を駆動輪7に出力する場合、第一クラッチC1及び第二クラッチC2を係合状態とする。また、ECU30は、エンジン走行において、シフトポジションや走行状態に応じてT/M2の変速比を制御する。
【0030】
ECU30は、エンジン走行において、油圧システム3あるいはM/G4の少なくともいずれか一方が出力する動力を駆動輪7に伝達してハイブリッド車両100を走行させることもできる。ECU30は、例えば、ハイブリッド車両100の加速時等にエンジン1のトルクが不足する場合に、油圧システム3あるいはM/G4の少なくとも一方にエンジン1をアシストさせる。
【0031】
例えば、ECU30は、油圧システム3によって動力を出力させる場合、第三クラッチC3を係合状態とすると共に、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって油圧ポンプモータ32を駆動する。アキュームレータ31内の加圧された作動油は、油圧ポンプモータ32に供給され、油圧ポンプモータ32を駆動して回転軸32aを回転させる。つまり、この車両制御システム1−1は、油圧ポンプモータ32において、油圧エネルギーが回転軸32aの回転動作に変換される。回転軸32aに出力された動力は、第三クラッチC3、第二ギアG2、第一ギアG1及び第二クラッチC2を介して駆動輪7に伝達される。
【0032】
ECU30は、M/G4によって動力を出力させる場合、第四クラッチC4を係合状態とすると共に、バッテリー5に充電された電力によってM/G4を駆動する。M/G4が出力する動力は、第四クラッチC4、第三ギアG3、第二ギアG2、第一ギアG1及び第二クラッチC2を介して駆動輪7に伝達される。ECU30は、油圧システム3及びM/G4にそれぞれ動力を出力させてエンジン1をアシストさせることもできる。
【0033】
また、油圧システム3及びM/G4は、それぞれエンジン1の動力によらずに単独でハイブリッド車両100を走行させることが可能である。例えば、ECU30は、エンジン1の動力によらずに油圧システム3が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させる油圧走行を実行することができる。また、ECU30は、エンジン1の動力によらずにM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させるEV走行を実行することができる。また、ECU30は、エンジン1の動力によらずに油圧システム3及びM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることも可能である。
【0034】
ECU30は、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて、駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2、油圧システム3、インバータ6及びクラッチC1,C2,C3,C4を制御する。要求トルクや要求駆動力は、ハイブリッド車両100の走行負荷に対応する。
【0035】
例えば、油圧システム3は、大きなパワーを出力する場合に有利である。これは、油圧式はバッテリーを使用する電気式と比較して高いパワー密度を確保可能であることによる。バッテリー5は、エネルギー密度は高いがパワー密度は低いという特性を有する。一方、油圧式は、バッテリーと比較してパワー密度が高いという特性を有する。
【0036】
大きなパワーを得ようとする場合、車両制御システム1−1の大型化につながるが、油圧式は、電気式と比較してシステムの大型化を抑制しつつパワーアップを図ることが可能である。このため、油圧システム3は、例えば、大型車両に搭載される場合の車両制御システム1−1のコンパクト化において有利である。
【0037】
また、ECU30は、軽負荷でトルクの小さな領域は基本的にM/G4の動力でハイブリッド車両100を走行させる。このとき、ECU30は、エンジン1を停止し、かつ第一クラッチC1及び第三クラッチC3を開放状態とし、第二クラッチC2及び第四クラッチC4を係合状態としてEV走行モードとする。
【0038】
また、発進などの大きなトルクが必要な領域では油圧エネルギーでハイブリッド車両100を走行させる。このとき、ECU30は、エンジン1を停止し、かつ第一クラッチC1及び第四クラッチC4を開放状態とし、第二クラッチC2及び第三クラッチC3を係合状態として油圧走行モードとする。なお、ECU30は、エンジン1を停止させることに代えて、第四クラッチC4のみを開放状態としてエンジン1を油圧エネルギーでアシストさせてハイブリッド車両100を走行させることもできる。
【0039】
また、ECU30は、ハイブリッド車両100の減速時に回生制御を行うことができる。回生制御は、例えば、ハイブリッド車両100において制動要求が検出されている場合になされる。本実施形態のハイブリッド車両100は、油圧システム3及びM/G4のそれぞれによって回生を行うことができる。例えば、ECU30は、M/G4に回生発電を行わせる場合、第二クラッチC2及び第四クラッチC4を係合状態とし、かつM/G4に発電を行わせる。また、ECU30は、油圧システム3に回生蓄圧を行わせる場合、第二クラッチC2及び第三クラッチC3を係合状態とし、かつ油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させる。
【0040】
回生時においては、ECU30は、例えば、油圧を優先して回生を実施するとよい。油圧での回生時は、第一クラッチC1及び第四クラッチC4を開放状態とし、第二クラッチC2及び第三クラッチC3を係合状態とし、油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させてアキュームレータ31に油圧を蓄圧する。このように、車両制御システム1−1は、油圧を優先して回生を行うことで、例えば、発進時等の大きなトルクが要求される場面に備えてアキュームレータ31に蓄圧しておくことができる。
【0041】
その後、ECU30は、アキュームレータ31の油圧が所定の圧力以上になると、第四クラッチC4を係合状態とし第三クラッチC3を開放状態として電気側で回生を実施する。ECU30は、油圧及び電気のいずれのエネルギーも一杯となると、第一クラッチC1を係合状態としかつ第三クラッチC3及び第四クラッチC4を開放状態として、エンジンブレーキとブレーキ装置による機械的なブレーキで車両の運動エネルギーを消費する。なお、回生時には補機負荷などに応じてエンジン1を停止したまま回生したり、エンジン1を運転させたまま回生をしたりするなど、回生の態様を状況によって切り替えてもよい。
【0042】
上記のように、車両制御システム1−1は、走行中に油圧ポンプモータ32による回生を行ってアキュームレータ31に油圧を蓄圧しておくことで、油圧によるアシストや油圧走行が可能となり、走行性能を向上できる。
【0043】
そして、本実施形態の車両制御システム1−1は、作動油の温度、ここでは、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が予め設定された第1所定温度以上である場合に、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーを油圧ポンプモータ32及びM/G4によって電力に変換してバッテリー5に蓄える。つまりこの場合、車両制御システム1−1は、温度制御装置として機能するECU30の制御によってアキュームレータ31に蓄えられた作動油の圧力エネルギーを解放し、この圧力エネルギーの解放に伴う油圧ポンプモータ32による動力アシストトルクをM/G4により回生し発電する。
【0044】
ここで、第1所定温度は、油圧システム3の仕様等に応じて予め設定される温度であり、例えば、油圧システム3におけるシール部等からの作動油の漏れ量や作動油の粘度等に応じて設定される。この油圧システム3は、典型的には、作動油の温度が上昇すると作動油の粘度が低下し漏れ量が増加する傾向にある。ここでは、第1所定温度は、例えば、作動油の漏れ量が所定以上になる温度として設定される。
【0045】
これにより、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第1所定温度以上である場合に、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーが電力に変換されることで、圧力エネルギーが解放され、これにより、作動油を冷却し作動油の温度を下げることができる。この結果、車両制御システム1−1は、例えば、駆動力アシスト要求がない場合においても、圧力エネルギーを他のエネルギーに変換して蓄積することで圧力エネルギーを無駄にすることなく、作動油の温度の過上昇を抑制することができ、作動油の温度の過上昇に伴う油圧システム3の劣化、例えば、各部のシール性能の劣化、作動油漏れ量の増加等を抑制することができ、故障の抑制や耐久性の向上を図ることができる。
【0046】
ここでは、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第1所定温度以上である場合で、ハイブリッド車両100の加速要求がない場合に作動油の圧力エネルギーを用いてM/G4にて発電を行い、作動油の温度を低下させる。一方、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第1所定温度以上である場合であっても、ハイブリッド車両100の加速要求がある場合には、作動油の圧力エネルギーを用いて油圧ポンプモータ32を駆動してエンジン1をアシストする。この場合、車両制御システム1−1は、通常制御における作動油の圧力エネルギーを用いたアシストよりアシスト量を増加し、すなわち、通常制御時よりも作動油の圧力エネルギーを用いたアシストを行いやすくする。
【0047】
いずれにしても、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第1所定温度以上である場合には、エンジン1のアシスト量の増加、あるいは、M/G4による発電量の増加によって、積極的に作動油の圧力エネルギーの解放を行って、作動油の温度を低下させる制御を行う。
【0048】
次に、図2のフローチャートを参照してECU30による高油温時エネルギー変換制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0049】
ECU30は、温度センサ30cの検出結果に基づいて作動油の油温が予め設定される第1所定温度としての第1設定温度以上であるか否かを判定する(ST1)。
【0050】
ECU30は、作動油の油温が第1設定温度より低いと判定した場合(ST1:No)、通常の制御を実行し(ST2)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0051】
ここでいう通常制御とは、上述したように、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2、油圧システム3、インバータ6及びクラッチC1,C2,C3,C4を制御する通常の制御である。ECU30は、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて要求駆動力を算出し、例えば、エンジン1、油圧システム3、M/G4の個別要求に応じて出力、蓄圧量、発電量、アシスト量、回生量等の要求値を定め、要求値を実現するように各部を制御する。
【0052】
ECU30は、作動油の油温が第1設定温度以上であると判定した場合(ST1:Yes)、アクセル開度等に基づいてドライバの加速要求があるか否かを判定する(ST3)。
【0053】
ECU30は、ドライバの加速要求がないと判定した場合(ST3:No)、油圧から電気へのエネルギー変換を実行し、すなわち、油圧エネルギー(作動油の圧力エネルギー)を用いてM/G4にて発電を行って(ST4)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。つまり、ECU30は、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーを解放し、この圧力エネルギーの解放に伴って油圧ポンプモータ32によって変換された動力をM/G4によって電力に変換してバッテリー5に蓄える。
【0054】
この場合、ECU30は、例えば、第一クラッチC1及び第二クラッチC2を開放状態とし、第三クラッチC3及び第四クラッチC4を係合状態として、アキュームレータ31の圧力を解放する。これにより、車両制御システム1−1は、油圧ポンプモータ32が油圧によって駆動されて回転軸32aに動力を出力する。油圧ポンプモータ32によって出力された動力は、第三クラッチC3、第二ギアG2、第三ギアG3及び第四クラッチC4を介してM/G4の回転軸4aに入力される。M/G4は、油圧ポンプモータ32から伝達される動力によって駆動されて発電し、バッテリー5を充電する。つまり、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーが、油圧ポンプモータ32によって動力に変換され、M/G4によってその動力を電力に変換してバッテリー5に蓄える。これにより、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーが電力に変換されることで、作動油を冷却し作動油の温度を下げることができる。典型的には、ECU30は、アキュームレータ31の作動油の温度が予め定められた所定温度以下に低下するまでエネルギー変換制御を行う。
【0055】
ここでは、この車両制御システム1−1は、第二クラッチC2が開放状態とされていることで、エンジン1、油圧ポンプモータ32及びM/G4と駆動輪7との動力の伝達が遮断されており、これにより、油圧ポンプモータ32が出力する動力は、駆動輪7に伝達されることなくM/G4を駆動して発電させることができる。この間、この車両制御システム1−1は、第二クラッチC2が開放状態とされることで、駆動輪7がエンジン1、油圧ポンプモータ32及びM/G4から切り離され、したがって、ハイブリッド車両100は、駆動輪7に対してエンジンブレーキ等の負荷が作用しないフリーランの状態となる。
【0056】
なお、上記のエネルギー変換制御では、圧力エネルギーから電力への変換効率が高くなるように油圧ポンプモータ32及びM/G4を制御することが望ましい。例えば、図3において、横軸はトルク、縦軸は回生効率を示す。実線は、油圧システム3の回生効率、すなわち油圧システム3において動力を油圧エネルギーに変換する際の変換効率を示す。また、破線は、M/G4の回生効率、すなわちM/G4において動力を電力に変換する際の変換効率を示している。
【0057】
図3からわかるように、油圧システム3は、低トルクの領域、すなわち回生パワーが小さな領域では、回生効率が低下し、かつトルクが小さくなるほど回生効率が低下する。一方、M/G4の回生効率は、低トルクの領域であっても油圧システム3の回生効率ほどには低下しない。例えば、TQ1よりも低トルクの領域では、油圧システム3の回生効率は、M/G4の回生効率よりも低く、かつトルクが小さくなるほど油圧システム3の回生効率とM/G4の回生効率との乖離が大きくなる。
【0058】
また、高トルクの領域では、油圧システム3の回生効率が高く、かつトルクが大きくなるほど回生効率が高くなる。M/G4の回生効率は、高トルクの領域において油圧システム3の回生効率ほどには上昇しない。例えば、本実施形態では、TQ2よりも高トルクの領域において、油圧システム3の回生効率がM/G4の回生効率を上回り、かつトルクが大きくなるほど油圧システム3の回生効率とM/G4の回生効率との乖離が大きくなる。なお、油圧システム3の出力効率は、実線の回生効率と同様の傾向を示し、M/G4の出力効率は、破線の回生効率と同様の傾向を示す。
【0059】
ECU30は、例えば、エネルギー変換制御において、M/G4における回生効率が高い領域でM/G4に回生を行わせることができるように、回転数や油圧ポンプモータ32の出力トルクを制御する。一例として、ECU30は、M/G4に入力されるトルクがTQ1以上のトルクとなるように、油圧ポンプモータ32のモータ容量(吐出量)が制御される。更に、油圧ポンプモータ32の出力効率が考慮されてもよい。例えば、ECU30は、油圧ポンプモータ32の出力効率とM/G4の変換効率を含むエネルギー変換制御の総合効率が高くなるように油圧ポンプモータ32及びM/G4を制御するようにしてもよい。
【0060】
図2に戻って、ECU30は、ドライバの加速要求があると判定した場合(ST3:Yes)、油圧アシスト増加制御を実行し、すなわち、油圧エネルギー(作動油の圧力エネルギー)を用いて油圧ポンプモータ32を駆動してエンジン1をアシストすると共に、このときの油圧アシスト量を上記のような通常制御時よりも増加して(ST5)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0061】
この場合、ECU30は、例えば、第一クラッチC1、第二クラッチC2及び第三クラッチC3を係合状態とし、第四クラッチC4を開放状態として、アキュームレータ31の圧力を解放する。これにより、車両制御システム1−1は、油圧ポンプモータ32が油圧によって駆動されて回転軸32aに動力を出力する。油圧ポンプモータ32によって出力された動力は、第三クラッチC3、第二ギアG2、第一ギアG1及び第二クラッチC2を介して駆動輪7に入力される。この結果、車両制御システム1−1は、ハイブリッド車両100の加速要求がある場合には、作動油の圧力エネルギーを用いて油圧ポンプモータ32を駆動してエンジン1をアシストすることができると共に、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーが駆動輪7における駆動力に変換されることで、作動油を冷却し作動油の温度を下げることができる。典型的には、ECU30は、アキュームレータ31の作動油の温度が予め定められた所定温度に低下するまで油圧アシスト増加制御を行う。
【0062】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム1−1によれば、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えること、及び、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換してハイブリッド車両100の駆動輪7に対して出力することが可能な油圧ポンプモータ32と、入力される動力を電力に変換してバッテリー5に蓄えることが可能なM/G4とを備え、作動油の温度が予め設定された第1所定温度以上である場合に、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーを油圧ポンプモータ32、及び、M/G4によって電力に変換してバッテリー5に蓄える。
【0063】
したがって、車両制御システム1−1は、作動油の温度が第1所定温度以上である場合に、作動油の圧力エネルギーを電力に変換して蓄積することで蓄積した圧力エネルギーを無駄にすることなく作動油の温度を下げることができ、作動油の温度の過上昇に伴う油圧システム3の劣化を抑制することができ、故障の抑制や耐久性の向上を図ることができ、この結果、適正にエネルギーを蓄積することができる。
【0064】
なお、この車両制御システム1−1は、さらに、作動油の温度が予め設定された第2所定温度以下である場合に、油圧ポンプモータ32に入力される動力をこの油圧ポンプモータ32によって作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることが好ましい。この場合、車両制御システム1−1は、エンジン1から第一クラッチC1、第一ギアG1、第二ギアG2、第三クラッチC3を介して油圧ポンプモータ32に入力される動力、あるいは、M/G4から第四クラッチC4、第三ギアG3、第二ギアG2、第三クラッチC3を介して油圧ポンプモータ32に入力される動力を、この油圧ポンプモータ32によって作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄える。
【0065】
ここで、第2所定温度は、油圧システム3の仕様等に応じて予め設定される温度であり、例えば、油圧システム3における作動油の粘度やこれに応じて変動する効率等に応じて設定される。この油圧システム3は、典型的には、作動油の温度が低下すると作動油の粘度が増加し効率が低下する傾向にある。ここでは、第2所定温度は、例えば、作動油の粘度が所定以上になる温度として設定され、典型的には、第1所定温度より低い温度に設定される。
【0066】
これにより、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第2所定温度以下である場合に、エンジン1やM/G4からの動力を油圧ポンプモータ32によって作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることから、作動油を暖機し作動油の温度を上げることができる。
【0067】
次に、図4のフローチャートを参照してECU30による低油温時エネルギー変換制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0068】
ECU30は、温度センサ30cの検出結果に基づいて作動油の油温が予め設定される第2所定温度としての第2設定温度以下であるか否かを判定する(ST21)。
【0069】
ECU30は、作動油の油温が第2設定温度より高いと判定した場合(ST21:No)、通常の制御を実行し(ST22)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0070】
ここでいう通常制御とは、上述したように、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2、油圧システム3、インバータ6及びクラッチC1,C2,C3,C4を制御する通常の制御である。ECU30は、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて要求駆動力を算出し、例えば、エンジン1、油圧システム3、M/G4の個別要求に応じて出力、蓄圧量、発電量、アシスト量、回生量等の要求値を定め、要求値を実現するように各部を制御する。
【0071】
ECU30は、作動油の油温が第2設定温度以下であると判定した場合(ST21:Yes)、充電状態検出器30aの検出結果に基づいてバッテリー5の蓄電量等に応じたパラメータである充電状態SOCを取得し、充電状態SOCが予め設定された閾値以上であるか否か、典型的には、バッテリー5の蓄電量が予め設定される所定量以上であるか否かを判定する(ST23)。充電状態SOCに対して設定される閾値(蓄電量に対して設定される所定量)は、バッテリー5の仕様等に応じて予め設定される。
【0072】
ECU30は、充電状態SOCが閾値未満である、すなわち、バッテリー5の蓄電量が所定量未満であると判定した場合(ST23:No)、エンジン1による動力から油圧エネルギー(作動油の圧力エネルギー)へのエネルギー変換を実行し、すなわち、エンジン1により蓄圧を行って(ST24)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0073】
この場合、ECU30は、例えば、第一クラッチC1及び第三クラッチC3を係合状態とし、第二クラッチC2及び第四クラッチC4を開放状態とする。ECU30は、エンジン1を駆動して動力を出力させる。エンジン1からの動力は、T/M2、第一クラッチC1、第一ギアG1、第二ギアG2、第三クラッチC3を介して油圧ポンプモータ32の回転軸32aに伝達される。油圧ポンプモータ32は、エンジン1から伝達された動力によって駆動され、この動力を作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄える。これにより、車両制御システム1−1は、動力を作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることで、作動油を暖機し作動油の温度を上げることができる。典型的には、ECU30は、アキュームレータ31の作動油の温度が予め定められた所定温度以上に上昇するまでエネルギー変換制御を行う。
【0074】
ここでは、この車両制御システム1−1は、第二クラッチC2が開放状態とされていることで、エンジン1、油圧ポンプモータ32及びM/G4と駆動輪7との動力の伝達が遮断されており、これにより、エンジン1が出力する動力は、駆動輪7に伝達されることなく油圧ポンプモータ32を駆動して蓄圧させることができる。この間、この車両制御システム1−1は、第二クラッチC2が開放状態とされることで、駆動輪7はエンジン1、油圧ポンプモータ32及びM/G4から切り離され、したがって、ハイブリッド車両100は、駆動輪7に対してエンジンブレーキ等の負荷が作用しないフリーランの状態となる。
【0075】
ECU30は、充電状態SOCが閾値以上である、すなわち、バッテリー5の蓄電量が所定量以上であると判定した場合(ST23:Yes)、M/G4による動力から油圧エネルギー(作動油の圧力エネルギー)へのエネルギー変換を実行し、すなわち、M/G4により蓄圧を行って(ST25)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0076】
この場合、ECU30は、例えば、第三クラッチC3及び第四クラッチC4を係合状態とし、第一クラッチC1及び第二クラッチC2を開放状態とする。ECU30は、バッテリー5に蓄えられた電力によってM/G4を駆動して回転軸4aに動力を出力させる。M/G4が出力した動力は、第四クラッチC4、第三ギアG3、第二ギアG2及び第三クラッチC3を介して油圧ポンプモータ32の回転軸32aに伝達される。油圧ポンプモータ32は、M/G4から伝達された動力によって駆動され、この動力を作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄える。これにより、車両制御システム1−1は、動力を作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることで、作動油を暖機し作動油の温度を上げることができる。典型的には、ECU30は、アキュームレータ31の作動油の温度が予め定められた所定温度以上に上昇するまでエネルギー変換制御を行う。
【0077】
ここでは、この車両制御システム1−1は、第二クラッチC2が開放状態とされていることで、エンジン1、油圧ポンプモータ32及びM/G4と駆動輪7との動力の伝達が遮断されており、これにより、M/G4が出力する動力は、駆動輪7に伝達されることなく油圧ポンプモータ32を駆動して蓄圧させることができる。この間、この車両制御システム1−1は、第二クラッチC2が開放状態とされることで、駆動輪7はエンジン1、油圧ポンプモータ32及びM/G4から切り離され、したがって、ハイブリッド車両100は、駆動輪7に対してエンジンブレーキ等の負荷が作用しないフリーランの状態となる。
【0078】
この結果、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第2所定温度以下である場合に、エンジン1やM/G4からの動力を油圧ポンプモータ32によって作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることから、作動油の圧力エネルギーが蓄積され作動油を暖機し作動油の温度を上げることができ、これにより、作動油の粘度の増加による効率の低下や油圧システム3の劣化、故障等を抑制することができる。
【0079】
また、この車両制御システム1−1は、さらに、作動油の温度が予め設定された第3所定温度以下であり、バッテリー5の蓄電量が予め設定される所定量以上であり、かつ、バッテリー5の温度が予め設定された第4所定温度以上である場合に、M/G4による電力への回生変換を抑制し、油圧ポンプモータ32による圧力エネルギーへの回生変換を増加するようにしてもよい。言い換えればこの場合、車両制御システム1−1は、M/G4による電力への回生変換より、油圧ポンプモータ32による圧力エネルギーへの回生変換を優先させる。つまり、車両制御システム1−1は、M/G4による回生量の割合を減らして、油圧ポンプモータ32による回生量の割合を増やす。
【0080】
ここで、第3所定温度は、油圧システム3の仕様等に応じて予め設定される温度であり、例えば、油圧システム3における作動油の粘度やこれに応じた効率等に応じて設定される。ここでは、第3所定温度は、例えば、作動油の粘度が所定以上になる温度として設定され、典型的には、上記の第2所定温度と同等に設定される。また、第4所定温度は、バッテリー5の仕様等に応じて予め設定される。ここでは、第4所定温度は、例えば、バッテリー5の適正な動作を確保することができる温度に設定される。
【0081】
これにより、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第3所定温度以下である場合に、例えば、駆動輪7からの動力を油圧ポンプモータ32によって作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることから、作動油を暖機し作動油の温度を上げることができる。
【0082】
次に、図5のフローチャートを参照してECU30による低油温時エネルギー変換制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0083】
ECU30は、温度センサ30cの検出結果に基づいて作動油の油温が予め設定される第3所定温度としての第3設定温度以下であるか否かを判定する(ST31)。
【0084】
ECU30は、作動油の油温が第3設定温度以下であると判定した場合(ST31:Yes)、充電状態検出器30aの検出結果に基づいてバッテリー5の蓄電量等に応じたパラメータである充電状態SOC、バッテリー温度を取得し、充電状態SOC、バッテリー温度がそれぞれ予め設定された閾値以上であるか否か、典型的には、バッテリー5の蓄電量が予め設定される所定量以上であり、かつ、バッテリー5の温度が予め設定された第4所定温度以上であるか否かを判定する(ST32)。充電状態SOC、バッテリー温度に対してそれぞれ設定される閾値(蓄電量に対して設定される所定量、バッテリー温度に対して設定される第4所定温度)は、バッテリー5の仕様等に応じて予め設定される。
【0085】
ECU30は、ST31にて、作動油の油温が第3設定温度より高いと判定した場合(ST31:No)、ST32にて、充電状態SOCが閾値未満である、あるいは、バッテリー温度が閾値未満であると判定した場合(ST32:No)、通常の制御を実行し(ST33)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0086】
ここでいう通常制御とは、上述したように、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2、油圧システム3、インバータ6及びクラッチC1,C2,C3,C4を制御する通常の制御である。ECU30は、車速及びアクセル開度などの条件に基づいて要求駆動力を算出し、例えば、エンジン1、油圧システム3、M/G4の個別要求に応じて出力、蓄圧量、発電量、アシスト量、回生量等の要求値を定め、要求値を実現するように各部を制御する。
【0087】
ECU30は、ST32にて、充電状態SOC、バッテリー温度共に閾値以上である、すなわち、バッテリー5の蓄電量が所定量以上であり、かつ、バッテリー5の温度が第4所定温度以上であると判定した場合(ST32:Yes)、動力から油圧エネルギー(作動油の圧力エネルギー)へのエネルギー変換を実行し、すなわち、油圧ポンプモータ32による動力の回生を行うと共に、このときの回生量を上記のような通常制御時よりも増加して(ST34)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。ここでは、ECU30は、M/G4による電力への回生変換より、油圧ポンプモータ32による圧力エネルギーへの回生変換を優先させる。
【0088】
この場合、ECU30は、例えば、ハイブリッド車両100の減速時に第二クラッチC2及び第三クラッチC3を係合状態としかつ油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させることで、例えば、駆動輪7からの動力をもとに油圧システム3に回生蓄圧を行わせる一方、第二クラッチC2及び第四クラッチC4を係合状態としかつM/G4に発電を行わせることで、例えば、駆動輪7からの動力をもとにM/G4に回生発電を行わせる。このとき、ECU30は、ST33で説明した通常制御時と比較して、M/G4による回生量(発電量)の割合を相対的に減らし、油圧ポンプモータ32による回生量(蓄圧量)の割合を相対的に増やして、M/G4による電力への回生変換より、油圧ポンプモータ32による圧力エネルギーへの回生変換を優先させる。ECU30は、バッテリー5の温度が相対的に高い場合など、場合によっては、M/G4による回生量を0としてもよい。典型的には、ECU30は、アキュームレータ31の作動油の温度が予め定められた所定温度以上に上昇するまでエネルギー変換制御を行う。
【0089】
この結果、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第3所定温度以下である場合に、例えば、駆動輪7からの動力を油圧ポンプモータ32によって作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることから、圧力エネルギーを蓄積して作動油を暖機し作動油の温度を上げることができ、これにより、作動油の粘度の増加による効率の低下や油圧システム3の劣化、故障等を抑制することができる。さらにこの場合、車両制御システム1−1は、バッテリー5の過度の温度上昇を抑制した上で、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを無駄にすることなく作動油の圧力エネルギーを電力に変換して蓄積することができる。
【0090】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両制御システムは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0091】
以上の説明では、車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第1所定温度以上である場合であっても、ハイブリッド車両100の加速要求がある場合には、作動油の圧力エネルギーを用いて油圧ポンプモータ32を駆動してエンジン1をアシストするものとして説明したがこれに限らない。車両制御システム1−1は、アキュームレータ31に蓄圧されている作動油の温度が第1所定温度以上である場合で、ハイブリッド車両100の加速要求がある場合であっても、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーを油圧ポンプモータ32、及び、M/G4によって電力に変換してバッテリー5に蓄えるようにしてもよい。
【0092】
以上の説明では、電力変換装置は、M/G4であるものとして説明したが、これには限定されない。電力変換装置は、入力される動力を電力に変換して蓄電装置に蓄えることが可能なものであればよく、例えば、オルタネータ等であってもよい。
【0093】
また、ハイブリッド車両100は、エンジン1を搭載しないものであってもよい。例えば、ハイブリッド車両100は、油圧システム3とM/G4の2つを動力源として走行するものであってもよい。
【0094】
また、油圧システム3は、図示したものには限定されない。油圧システム3は、蓄圧された作動流体の圧力を動力に変換して出力すること、及び入力される動力を作動流体の圧力に変換して蓄圧することができるものであればよい。
【符号の説明】
【0095】
1−1 車両制御システム
1 エンジン
3 油圧システム
4 M/G(電力変換装置)
5 バッテリー(蓄電装置)
6 インバータ
7 駆動輪
30 ECU
31 アキュームレータ(蓄圧装置)
32 油圧ポンプモータ(圧力変換装置)
33 リザーブタンク
34 高圧油路
35 低圧油路
100 ハイブリッド車両(車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄えること、及び、前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な圧力変換装置と、
入力される動力を電力に変換して蓄電装置に蓄えることが可能な電力変換装置とを備え、
前記作動流体の温度が予め設定された第1所定温度以上である場合に、前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを前記圧力変換装置、及び、前記電力変換装置によって電力に変換して前記蓄電装置に蓄えることを特徴とする、
車両制御システム。
【請求項2】
前記作動流体の温度が予め設定された第2所定温度以下である場合に、前記圧力変換装置に入力される動力を当該圧力変換装置よって前記作動流体の圧力エネルギーに変換して前記蓄圧装置に蓄える、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記作動流体の温度が予め設定された第3所定温度以下であり、前記蓄電装置の蓄電量が予め設定される所定量以上であり、かつ、前記蓄電装置の温度が予め設定された第4所定温度以上である場合に、前記電力変換装置による電力への回生変換を抑制し、前記圧力変換装置による圧力エネルギーへの回生変換を増加する、
請求項1又は請求項2に記載の車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210102(P2012−210102A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74742(P2011−74742)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】