説明

車両周辺監視装置、車両、車両周辺監視プログラム

【課題】対象物の種類を効率よく判定することができる装置等を提供する。
【解決手段】本発明の車両周辺監視装置10によれば、対象物がそのレーダ距離が指定距離範囲に包含されるという「第1分類要件」を満たしているか否かが判定される。さらに対象物が第1分類要件を満たしていないと判定された履歴がないという「第2分類要件」を満たしているか否かが判定される。そして、第1分類要件および第2分類要件が満たされている対象物が指定距離範囲に対応する第1指定区分に分類される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺を監視する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波等を送信し、その反射波を受信してこの反射波の強度を測定するレーダ手段を用いて、物体が車両に該当するか否かを判定する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−184332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、車両から近距離に存在するすべての物体が車両および非車両の判別対象とされている。このため、この判別に要する演算処理時間が長くなって非効率であり、また、物体の種類判別精度が低下する可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、対象物の種類を効率よく判定することができる装置等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の車両周辺監視装置は、電磁波または弾性振動波を前記車両の周辺に送信し、前記電磁波または前記弾性振動波の反射波を受信し、かつ、前記反射波の強度を測定するレーダ装置を用いて、前記車両から対象物までの距離をレーダ距離として測定するとともに、前記対象物が前記レーダ距離が指定距離範囲に包含されるという第1分類要件を満たしているか否かを判定し、前記対象物が前記第1分類要件を満たしていないと判定された履歴がないという第2分類要件を満たしているか否かを判定し、前記第1分類要件および前記第2分類要件を満たしている前記対象物を前記指定距離範囲に対応して定義されている第1指定区分に分類する第1分類要素とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1発明の車両周辺監視装置によれば、対象物がそのレーダ距離が指定距離範囲に包含されるという「第1分類要件」を満たしているか否かが判定される。さらに対象物が第1分類要件を満たしていないと判定された履歴がないという「第2分類要件」を満たしているか否かが判定される。そして、第1分類要件および第2分類要件が満たされている対象物が指定距離範囲に対応する第1指定区分に分類される。これにより、最初に測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含される状態である対象物はただちに第1指定区分に分類される。その一方、先に測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含されず、その後に測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含される状態になった対象物は、第1指定区分への第1分類要素による分類対象から除外される。したがって、対象物が第1指定区分に分類される種類であるか、あるいは、それ以外の種類であるかが効率よく判別されうる。
【0007】
第2発明の車両周辺監視装置は、第1発明の車両周辺監視装置において、前記車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた前記対象物の画像に基づき、前記第1分類要素により前記第1指定区分に分類されなかった前記対象物を第2指定区分またはそれ以外の区分に分類する第2分類要素を備えていることを特徴とする。
【0008】
第2発明の車両周辺監視装置によれば、第1分類要件または第2分類要件が満たされていないと判定され、第1分類要素により第1指定区分に分類されなかった対象物が、その画像に基づいて第2分類要素により第2指定区分またはこれ以外の区分に分類される。なお、第2指定区分は第1指定区分と同じでも異なっていてもよい。これにより、第1指定区分に分類済みの対象物が、第2分類要素による第2指定区分への分類対象から除外される。したがって、対象物が第2指定区分に分類される種類であるか、あるいは、それ以外の種類であるかが効率よく判別されうる。
【0009】
第3発明の車両は、電磁波または弾性振動波を送信し、前記電磁波または前記弾性振動波の反射波を受信し、かつ、前記反射波の強度を測定するレーダ装置と、第1発明の車両周辺監視装置とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第3発明の車両によれば、車両周辺監視装置により対象物が第1指定区分に分類される種類であるか、あるいは、それ以外の種類であるかが効率よく判別されうるので、当該判別結果に鑑みて車載機器の動作が適当に制御されうる。
【0011】
第4発明の車両周辺監視プログラムは、電磁波または弾性振動波を送信し、前記電磁波または前記弾性振動波の反射波を受信し、かつ、前記反射波の強度を測定するレーダ装置が搭載されている車両に搭載されているコンピュータを第1発明の車両周辺監視装置として機能させることを特徴とする。
【0012】
第4発明の車両周辺監視プログラムによれば、車載のコンピュータを、対象物が第1指定区分に分類される種類であるか、あるいは、それ以外の種類であるかを効率よく判別する車両周辺監視装置として機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の車両周辺監視装置等の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示されている車両(四輪自動車)1には、車両周辺監視装置10と、単一の赤外線カメラ(撮像装置)11と、レーダ装置12とが搭載されている。図1に示されているように原点Oが車両1の前側に位置し、X軸、Y軸およびZ軸のそれぞれが車両1の左右方向、上下方向および前後方向のそれぞれに延びるように実空間座標系が定義されている。赤外線カメラ11は車両1の前方を撮像するために、車両1の前側に取り付けられている。なお、撮像装置として赤外線カメラ11に代えて可視光等、他の波長領域に感度が調節されたカメラが採用されてもよい。また、図2に示されているように車両1には、車両1のヨーレート、速度およびブレーキの状態のそれぞれに応じた信号を出力するヨーレートセンサ13、速度センサ14およびブレーキセンサ15等の種々のセンサが搭載されている。さらに、図2に示されているように車両1には音声出力装置16および画像出力装置17が搭載されている。画像出力装置17としては、車両1のフロントウィンドウに画像を表示するHUD(ヘッドアップディスプレイ)のほか、車両1の走行状況を示す表示計またはナビゲーション装置を構成するディスプレイ装置等が採用されてもよい。
【0015】
レーダ装置12は車両1の前側に赤外線カメラ11の上方に位置するように取り付けられている。レーダ装置12は上方から見たときに図3に示されているように赤外線カメラ11の撮像領域より狭い幅で広がるミリ波(電磁波)のビームBMを車両1の前方に送信する。レーダ装置12は走査型のレーダ装置であり、車両1の前方領域が車両1の左右方向に走査されるように、一定強度のビームBMがその送信角度を一定角度ずつずらしながら送信される。ビームBMの左右方向の走査範囲は赤外線カメラ11の撮像領域を水平方向についてすべて包含するように設定されている。また、ビームBMの上下方向の幅は、赤外線カメラ11の上下方向の視野を含むように設定されている。そして、レーダ装置12はこのミリ波の反射波、すなわち、車両1の前方に存在する対象物により反射されたミリ波を上下方向に配列された受信アンテナ(図示略)により受信する。また、レーダ装置12は照射範囲ごとに反射波の強度を測定し、かつ、反射強度と、車両1から、反射波の原因となった物体までの距離との相関関係を表わす反射強度データを車両周辺監視装置10に出力する。なお、レーダ装置としてはミリ波等の電磁波(レーザー光など)のほか、超音波等の弾性振動波を用いるレーダ装置が採用されてもよい。
【0016】
車両周辺監視装置10はコンピュータ(CPU,ROM,RAMならびにI/O回路およびA/D変換回路等の電子回路等により構成されている。)により構成されている。車両周辺監視装置10には、赤外線カメラ11、ヨーレートセンサ13、車速センサ14およびブレーキセンサ15等から出力されたアナログ信号がA/D変換回路を介してデジタル化されて入力されるとともに、レーダ装置12により取得された反射強度データも入力される。当該入力データに基づき、メモリに格納されている「車両周辺監視プログラム」にしたがって、人間や他車両などの対象物の存在を認識する処理、車両1と認識した対象物との接触可能性の高低を判定する処理、および、この判定結果に応じて音声を音声出力装置16に出力させたり、画像を画像出力装置17に出力させたりする処理が当該コンピュータにより実行される。なお、プログラムは任意のタイミングでサーバからネットワークや衛星を介して車載コンピュータに配信または放送され、そのRAM等の記憶装置に格納されてもよい。車両周辺監視装置10は位置のECUにより構成されていてもよいが、分散制御システムを構成する複数のECUにより構成されていてもよい。
【0017】
車両周辺監視装置10は図2に示されているように第1分類要素110と、第2分類要素120とを備えている。車両周辺監視装置10はレーダ装置12により取得された反射強度データに基づき、車両1から対象物までの距離をレーダ距離として測定する。第1分類要素110は対象物が第1分類要件および第2分類要件のそれぞれを満たしているか否かを判定し、これら2つの分類要件を満たしている対象物を第1指定区分に分類する。「第1分類要件」は測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含されるという要件である。「第2分類要件」は第1分類要件が満たされていないと判定された履歴がないという要件である。第2分類要素120は赤外線カメラ11を通じて取得された対象物の画像に基づき、第1分類要素110により第1指定区分に分類されなかった対象物を分類する。
【0018】
前記構成の車両1および車両周辺監視装置10の機能について説明する。
まず、車両周辺監視装置10により赤外線カメラ(撮像装置)11を通じて取得された画像に基づき、対象物の位置が測定される。具体的には、赤外線カメラ11の出力信号である赤外線画像がA/D変換されることによりグレースケール画像が取得される(図4/S202)。また、グレースケール画像が2値化処理されることにより2値化画像が取得される。「2値化処理」はグレースケール画像を構成する各画素をその輝度が閾値以上であるか否かに応じて「1」(白)および「0」(黒)に区分する処理である。グレースケール画像および2値化画像はそれぞれ別の画像メモリに記憶される。さらに、2値化画像の高輝度領域を構成する「1」に区分されたまとまった画素群が、画像の縦方向(y方向)に1画素分の幅を有して横方向(x方向)延在するラインに分類され、各ラインがその位置(画像における2次元位置)の座標と長さ(画素数)とからなるランレングスデータに変換される。そして、このランレングスデータにより表されるラインのうち、画像縦方向に重なりを有するライン群のそれぞれにラベル(識別子)が付され、当該ライン群が対象物として検出される(図4/S204)。これにより、たとえば図5(a)および(b)のそれぞれの右側に示されているような対象物(2値化対象物)A,BおよびCが検出される。対象物には人間(歩行者)などの生物のほか、他車両などの人口構造物も含まれる。なお、同一物体の複数の局所部分が対象物として認識される場合もある。
【0019】
また、対象物の追跡処理、すなわち、車両周辺監視装置10の演算処理周期ごとに検出された対象物が同一であるか否かを判定する処理が実行される(図4/S206)。たとえば、特開2001−6096号公報に記載されている手法にしたがって時刻k−1およびk(k:制御サイクルを表わす指数)のそれぞれの2値化画像において検出された対象物の形状やサイズ、グレースケール画像における輝度分布の相関性などに基づいて実行されうる。そして、これら対象物が同一であると判定された場合、時刻kにおける対象物のラベルが時刻k−1における対象物のラベルと同じラベルに変更される。
【0020】
さらに、画像に基づき、車両1から対象物検出要素102により検出された対象物までの距離を画像距離として測定する。具体的には、2値化画像における対象物の重心位置が算定され、かつ、対象物の外接四角形が設定される。対象物の重心位置は、この対象物に対応するランレングスデータの各ラインの中心位置の座標に当該各ラインの長さを乗じた結果をすべてのラインについて加算し、その加算結果を画像における対象物の面積により除算することにより求められる。なお、対象物の重心に代えて、対象物の外接四角形の重心(中心)の位置が算定されてもよい。また、異なる時刻において同一のラベルが付された対象物を表わす対象物領域のサイズの変化率Rateが評価される。具体的には、時刻kにおける対象物領域の大きさ(外接四角形の縦幅、横幅または面積により表わされる。)Size(k)に対する、時刻k−1における対象物領域の大きさSize(k−1)の比率が変化率Rate(k)=Size(k−1)/Size(k)(<1)として決定される。ヨーレートセンサ13および速度センサ14のそれぞれの出力に基づき、車両1の速度およびヨーレートが測定され、ヨーレートの測定値が積分されることにより、車両1の回頭角(方位角)が算出される。
【0021】
また、変化率Rateに加え、車両1の速度vおよび赤外線カメラ11の撮像時間間隔δTに基づき、式(1)にしたがって車両1から対象物までの画像距離Z2が測定される(図4/S208)。
【0022】
(数1)
2(k)=Rate(k)v(k)δt/(1−Rate(k))‥(1)
【0023】
また、車両周辺監視装置10により、画像距離Z2に基づいて対象物の実空間位置P2=(X2,Y2,Z2)が画像距離として測定される(図4/S210)。具体的には、画像距離Z2と、赤外線カメラ11の焦点距離fと、撮像画像における対象物に対応した領域の画像座標xおよびyとに基づき、式(2)にしたがって実空間座標系におけるX座標およびY座標が算定される。撮像画像の中心、右方向および下方向のそれぞれが、画像座標系における原点o、+x方向および+y方向として定義されている。また、ヨーレートセンサ15の出力に基づいて測定される回頭角に基づき、各対象物の画像位置P2が回頭角補正される。
【0024】
(数2)
2(k)=x(k)・Z2(k)/f,
2(k)=y(k)・Z2(k)/f ‥(2)
【0025】
また、対象物の画像位置P2の測定処理(図4/S202〜S210)に並行して、車両周辺監視装置10により、レーダ装置12により取得された反射強度データに基づき、対象物のレーダ位置が測定される。具体的には、反射強度データが取得される(図4/S102)。また、反射強度が閾値を超えたピークを示していること等を要件として、レーダ装置12の走査範囲(図3参照)における対象物の存在が認識される(図4/S104)。さらに、反射強度データに基づき、反射強度が閾値を超えているピークを示す距離が車両1から対象物までのレーダ距離Z1として測定される(図4/S106)。そして、レーダ装置12による走査方位角または電磁波の送信方位角に基づき、実空間座標系におけるX座標がレーダ位置P1として測定される(図4/S108(図3参照))。なお、レーダ位置P1も画像位置P2と同様に回頭角補正される。
【0026】
さらに、第1分類要素110により反射強度データに基づいて検出された対象物が「第1分類要件」を満たしているか否かが判定される(図4/S110)。「第1分類要件」とは、レーダ距離が指定距離範囲に包含されるという要件である。たとえば、図5(a)左側に示されているようにレーダ距離が測定された対象物AおよびBが、斜線で示されている指定距離範囲に包含されていない場合、第1分類要件は満たされていないと判定される。この場合、図5(a)右側に示されているように2値化画像において対象物AおよびBに加えて、レーダ距離が測定されていない対象物Cの存在が認識されている。その一方、図5(b)左側に示されているようにレーダ距離が測定された対象物A,BおよびCが、斜線で示されている指定距離範囲に包含されている場合、第1分類要件は満たされていると判定される。この場合、図5(b)右側に示されているように2値化画像において対象物A,BおよびCの存在が認識されている。
【0027】
対象物が第1分類要件を満たしていると判定されたことを要件として(図4/S110‥YES)、第1分類要素110により、この対象物がさらに「第2分類要件」を満たしているか否かが判定される(図4/S112)。「第2分類要件」とは、第1分類要件を満たしていないと判定された履歴がないという要件である。一方、対象物が第1分類要件を満たしていないと判定されたことを要件として(図4/S110‥NO)、この対象物にID(識別子)が付され(図4/S114)、さらに、この対象物の追跡処理、すなわち、車両周辺監視装置10の演算処理周期ごとに検出された対象物が同一であるか否かを判定する処理が実行される(図4/S116)。たとえば、時刻k−1およびk(k:制御サイクルを表わす指数)のそれぞれの2値化画像において検出された対象物のレーダ位置P1の変位量が閾値以下であるか否かが判定されることにより、追跡処理が実行される。
【0028】
また、反射強度データに基づいて存在が認識された対象物と、画像に基づいて存在が認識された対象物とのマッチング処理が実行される(図4/S118)。たとえば、第1対象物のレーダ位置P1および第2対象物の画像位置P2の偏差または距離が閾値以下であることを要件として、第1対象物および第2対象物が同一の対象物であると認識される。これにより、たとえば図5(a)の右側および左側のそれぞれに示されている対象物AおよびBのそれぞれが同一の対象物に該当すると認識される。
【0029】
そして、第1分類要素110により対象物が第2分類要件を満たしている(対象物にIDが付されている(図4/S114参照))と判定されたことを要件として(図4/S112‥YES)、この対象物が「歩行者等の人間」等の第1指定区分に分類される(図4/S120)。第1指定区分は指定距離範囲に対応して定義されており、車両周辺監視装置10を構成する記憶装置にあらかじめ格納されている。たとえば、図5(a)左側に示されているように存在が認識されていなかったが、その後、図5(b)左側に示されているように存在が認識された対象物Cは第2分類要件を満たしていると判定され、第1指定区分に分類される。一方、第1分類要素110により対象物が第2分類要件を満たしていないと判定されたことを要件として(図4/S112‥NO)、第2分類要素120により2値化画像等、赤外線カメラ11を通じて得られた画像に基づき、この対象物が第2指定区分またはこれ以外の区分に分類される(図4/S122)。たとえば、左右一対の対象物が逆位相で周期的に上下していること等を要件としてこの対象物が「自転車に乗って移動している人間(の両脚)」等の第2指定区分またはこれ以外の区分に分類される。なお、対象物は鹿等の動物、樹木等の植物や建造物等の固定物等の第1または第2指定区分に分類されてもよい。第1指定区分および第2指定区分は同一であっても、一部同一(一部重複)であっても、または、相違していてもよい。
【0030】
また、異なる時刻における各対象物の実空間位置P(k)に基づき、たとえば特開2001−6096号公報に記載された衝突可能性の判定手法にしたがって、車両1と各対象物との接触可能性の高低または有無が判定される(図4/S0130)。そして、車両1と対象物との接触可能性が高いと判定された場合(図4/S130‥YES)、分類要素134により判定された対象物の種類に応じた態様で注意喚起処理が実行される(図4/S132)。具体的には、当該接触可能性の判定結果および対象物の分類結果に応じた音声および画像(当該対象物を強調表示するためのフレームなど)のそれぞれが音声出力装置16および画像出力装置17のそれぞれを通じて出力される。たとえば対象物が「人間」等の第1指定区分に分類された場合、対象物がこの第1指定区分に分類された場合よりも、この対象物の存在を車両1の運転者に強く認識させるように音声および画像の出力態様が調節される。なお、当該音声および画像のうち一方のみが出力されてもよい。また、ブレーキセンサ15の出力に基づいて運転者による車両1のブレーキが操作されていないことが確認されたこと、または、速度センサ14または加速度センサ(図示略)の出力に基づいて車両1の減速度が閾値以下であることが確認されたことを要件として注意喚起処理が実行されてもよい。一方、車両1と対象物との接触可能性が低いと判定された場合(図4/S130‥NO)、注意喚起処理は実行されない。
【0031】
また、車両1のステアリング装置、ブレーキ装置およびアクセル装置のうち一部または全部がアクチュエータにより操作され、車両1の走行挙動が操作される場合、注意喚起処理に代えてまたは並行して車両挙動が制御されてもよい。具体的には、車両1との接触可能性が高いと判定された対象物との接触を回避するように、または、回避が容易になるように車両1のステアリング装置、ブレーキ装置およびアクセル装置のうち一部または全部の動作が車両制御ユニット(図示略)により制御されてもよい。たとえば、運転者によるアクセルペダルの必要踏力が、対象物との接触を回避する必要がない通常の場合よりも大きくなるようにアクセル装置を制御して加速しにくくする。また、車両1と対象物との接触を回避するために要求されるステアリング装置の操舵方向側へのステアリングハンドルの要求回転力を、反対側へのステアリングハンドルの要求回転力よりも低くして、当該操舵方向側へのステアリングハンドルを容易に操作しうるようにする。さらに、ブレーキ装置のブレーキペダルの踏み込み量に応じた車両1の制動力の増加速度を、通常の場合よりも高くする。このようにすることで、対象物との接触を避けるための車両1の運転が容易になる。
【0032】
前記機能を発揮する車両周辺監視装置10によれば、対象物がそのレーダ距離Z1が指定距離範囲に包含されるという「第1分類要件」を満たしているか否かが判定される(図4/S110参照)。さらに、対象物が第1分類要件を満たしていないと判定された履歴がないという「第2分類要件」を満たしているか否かが判定される(図4/S112参照)。そして、第1分類要件および第2分類要件が満たされている対象物が、第1分類要素により指定距離範囲に対応する第1指定区分に分類される(図4/S120参照)。これにより、たとえば図5(b)左側に示されているように、最初に測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含される状態である対象物Cはただちに第1指定区分に分類される。対象物が人間等の生物である場合、車両1からある程度遠く離れている状態ではレーダ距離Z1が測定されがたいものの、車両1からある程度近い状態ではレーダ距離Z1が測定される。このような事情に鑑みて、指定距離範囲が車両1に近い側に定義されることにより、第1分類要件および第2分類要件を満たす対象物は、最初は車両1から遠かったものの、その後、車両1に近くなった人間等の生物である蓋然性が高い。したがって、歩行者等の人間、または、鹿等の動物といった第1指定区分がこの指定距離範囲に対応して定義されることにより、対象物が第1指定区分に分類されるか、あるいは、その他の区分に分類されるかが高精度で判別されうる。
【0033】
その一方、先に測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含されず、その後に測定されたレーダ距離が指定距離範囲に包含される状態になった対象物は、第1指定区分への第1分類要素110による分類対象から除外される。これにより、レーダ装置12を用いて図5(a)左側に示されているように検出された後、図5(b)左側に示されているようにさらに検出された対象物AおよびBは第1指定区分に葉分類されない。したがって、対象物が第1指定区分に分類されるか、あるいは、それ以外の区分に分類されるかが効率よく判別されうる。
【0034】
さらに、第1分類要件または第2分類要件が満たされていないと判定され、第1分類要素により第1指定区分に分類されなかった対象物が、その画像に基づいて第2分類要素により第2指定区分またはこれ以外の区分に分類される(図4/S122参照)。これにより、第1指定区分に分類済みの対象物が、第2分類要素による第2指定区分への分類対象から除外される。したがって、対象物が第2指定区分に分類される種類であるか、あるいは、それ以外の種類であるかが効率よく判別されうる。そして、当該対象物の分類結果に応じて車両1の搭載機器(音声出力装置16、画像出力装置17、ステアリング装置、ブレーキ装置およびアクセル装置)の動作が車両1とこの対象物との接触回避等の観点から適当に制御されうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の車両の構成説明図
【図2】本発明の車両周辺監視装置の構成説明図
【図3】レーダ装置の走査範囲に関する説明図
【図4】本発明の車両周辺監視装置の機能を示すフローチャート
【図5】対象物の分類方法に関する説明図
【符号の説明】
【0036】
1‥車両、10‥車両周辺監視装置、11‥赤外線カメラ(撮像装置)、12‥レーダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を監視する装置であって、
電磁波または弾性振動波を前記車両の周辺に送信し、前記電磁波または前記弾性振動波の反射波を受信し、かつ、前記反射波の強度を測定するレーダ装置を用いて、前記車両から対象物までの距離をレーダ距離として測定するとともに、
前記対象物が前記レーダ距離が指定距離範囲に包含されるという第1分類要件を満たしているか否かを判定し、前記対象物が前記第1分類要件を満たしていないと判定された履歴がないという第2分類要件を満たしているか否かを判定し、前記第1分類要件および前記第2分類要件を満たしている前記対象物を前記指定距離範囲に対応して定義されている第1指定区分に分類する第1分類要素とを備えていることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両周辺監視装置において、
前記車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた前記対象物の画像に基づき、前記第1分類要素により前記第1指定区分に分類されなかった前記対象物を第2指定区分またはそれ以外の区分に分類する第2分類要素を備えていることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項3】
電磁波または弾性振動波を送信し、前記電磁波または前記弾性振動波の反射波を受信し、かつ、前記反射波の強度を測定するレーダ装置と、請求項1記載の車両周辺監視装置とを備えていることを特徴とする車両。
【請求項4】
電磁波または弾性振動波を送信し、前記電磁波または前記弾性振動波の反射波を受信し、かつ、前記反射波の強度を測定するレーダ装置が搭載されている車両に搭載されているコンピュータを請求項1記載の車両周辺監視装置として機能させることを特徴とする車両周辺監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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