説明

車両周辺監視装置

【課題】 被写体の撮影アングルが異なる複数視野の撮影画像を組み合わせつつも、同一被写体の存在や動きを直感的に把握することができる車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】 他車両Tの位置が後方左視野71から直後方視野73へ移るのに対応して、車両50の直近領域に向かう他車両Tへの注意を促す補助画像M’を、直後方画像表示領域73において後方左画像表示領域71の移動軌跡Fに連なる向きF’に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3511892号公報
【0003】
特許文献1には、自車両の直後方と、後方左及び後方右を撮影する3つのカメラを設け、それらのカメラの画像をモニタリングできるようにした監視装置が開示されている。図12に示すように、3つのカメラの撮影画像71,73,72は、自動車のリア側のウィンドウを連想させるマスク領域74によりトリミングされ、直感的な画像把握のための便宜が図られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の監視装置では、リア側室内を連想させるのはマスク領域の形状のみであって、そこに映し出される画像、特に左右後側方の画像71,72が現実のリアウィンドウからの見え方と大きくかけ離れており、ユーザーに違和感を感じさせる欠点がある。すなわち、図2に示すごとく、車両後方に取り付けられた3つのカメラ201,401,101の視野は、基本的には自車両後方を横切る車両Tの移動方向において不連続であり、これら3つの画像視野X,Y,Zを車両Tが横切りつつ走行するとき、対応する3つの表示領域71,73,72には、視野の切れ目のところで車両Tの画像が少しずつ途切れながら受け渡されることになる。この場合、3つの表示領域71,73,72における車両Tの画像の移動方向が互いにつながっていれば、画像の途切れはそれほど気にならず、3つの表示領域を貫いて移動する画像が、同じ自動車Tのものであることがすぐに認識できる。
【0005】
ところが、実際には、後側方の表示領域71,72は直後方の表示領域73の上方において水平方向にラップする形で配置されており、また、後側方を撮影するカメラ201,101と直後方を撮影するカメラ401との撮影アングルも相違する(前者は斜め前方もしくは斜め後方から撮影するアングルとなり、後者は該自動車Tを真横から撮影するアングルとなる)ことから、次のような不具合を生ずる。すなわち、例えば、後方左側から接近する自動車Tは、図12のA→B→Cに示すごとく、左後方の表示領域71に斜め上方から徐々に大きくなりながら領域右側に流れ去り、その後、Dに示すごとく、左側から拡大された形で唐突に直後方の表示領域73に現われるので、画像表示の不連続感や断絶感が強くなる。その結果、左後方の表示領域71から直後方の表示領域73に画像が受け渡される際に、自動車Tが画像上から一瞬消えてしまうような錯覚を起こし、ユーザーの戸惑いが大きい他、左後方の表示領域71に表示されていた画像と、直後方の表示領域73に表示される画像とが、同じ自動車Tであることを認識できるまでに時間がかかってしまう問題がある。このような画像の断絶感は、表示領域71と表示領域73との間にトリミングのためのマスク領域が介在しているとさらに助長される。
【0006】
本発明の課題は、被写体の撮影アングルが異なる複数視野の撮影画像を組み合わせつつも、同一被写体の存在や動きを直感的に把握することができる車両周辺監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の車両周辺監視装置は、上記の課題を解決するために、
車両に搭載され、該車両の周囲に向けて接近する移動体を、該移動体の接近方向上流側を向く第一視野にて撮影する第一撮影手段と、
第一視野の接近方向下流側にて、車両の直近領域を包含する第二視野にて移動体を撮影する第二撮影手段と、
第一撮影手段による撮影画像を表示する第一表示領域と、第二撮影手段による撮影画像を表示する第二表示領域とを、第一視野を横切った移動体が第二視野に進入するに伴い、第一表示領域から第二表示領域により移動体の画像が、当該第一表示領域での移動軌跡の延長から外れた画像出現位置にて第一表示領域とは異なる移動軌跡方向に引き継ぎ表示されるよう、互いに隣接させた形で配置した移動体画像表示手段と、
移動体の位置が第一視野から第二視野へ移るのに対応して、車両の直近領域に向かう移動体への注意を促す補助画像を、第二表示領域において第一表示領域の移動軌跡に連なる向きに表示する補助画像表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
特許文献1の装置においては、同じ移動体(自動車T)の撮影画像が異なる2つの表示領域間で受け渡される際に、画像の断絶感が強くなる要因が、最初の表示領域(第一表示領域:図12では左後方表示領域71)を動く移動体の画像が、次の表示領域(第二表示領域:図12では直後方表示領域73)では、当該第一表示領域での移動軌跡の延長から外れた位置(図12では左端)に出現し、さらに、第一表示領域とは異なる方向に移動してゆく点にある。そこで本発明においては、移動体の位置が第一視野から第二視野へ移るのに対応して、車両の直近領域に向かう移動体への注意を促す補助画像を、第二表示領域において第一表示領域の移動軌跡に連なる向きに表示する。すなわち、ユーザーは、第一表示領域上を移動する画像は、第二表示領域上においてもその移動方向から予測される向きに現われることを期待する。しかし、実際は、この向きには移動体画像が現われないので、上記期待する向き、すなわち第二表示領域において第一表示領域の移動軌跡に連なる向きに別の補助画像を出現させることで、画像断絶感を和らげつつユーザーの目を第二表示領域上へスムーズに導くことができる。これにより、被写体の撮影アングルが異なる複数視野の撮影画像を組み合わせつつも、同一被写体の存在や動きを直感的に把握することができるようになる。
【0009】
この場合、第一視野及び第二視野を横切る移動体の移動速度を特定する移動速度特定手段を設けることができる。補助画像表示手段は、第一表示領域の移動軌跡に連なる補助画像案内軌跡に沿って補助画像を、取得される移動速度に対応した速度にて移動表示するように構成できる。これにより、移動体の接近状況を、補助画像の動きによりより正確に把握することが可能となる。
【0010】
移動体の実画像は第一表示領域上に最初に現われる。そこで、その第一表示領域上にて、その移動体の画像位置を特定する移動体画像位置特定手段と、特定された移動体画像位置に、当該移動体位置を強調するための強調画像を、移動体画像とともに移動表示する強調画像表示手段とを設けておくと、自車両後方に接近してくるた車両など注意の対象となる移動体の存在を強調画像によりユーザーにアピールでき、速いタイミングでのユーザーへの注意喚起を促すことができる。この場合、補助画像表示手段は、第一表示領域上を移動してくる強調画像を引き継ぐ形で、補助画像を補助画像案内軌跡に沿って移動表示するものとして構成することができる。これにより、強調画像の移動の流れを第二表示領域上にて補助画像により途切れなく引き継ぐことができ、第二表示領域における移動体の実画像の出現に向けてユーザーの注意をスムーズに導くことができる。
【0011】
強調画像は、例えば移動体画像を警告色(例えば、赤や黄色)枠で囲んだり、移動体画像そのものを警告色にて着色表示したものも概念として含む。しかし、強調画像は、移動体の画像上に重ね合成される強調図形画像(例えば、円や多角形などの一定形状のマーキング画像)とする形でもユーザーの注意を引く効果は十分に達成でき、また、移動体画像とは別に強調画像を作成して重ね合わせるだけなので、画像処理手順の簡略化を図ることができる。この強調画像は、移動体の画像を隠蔽する形で該移動体の画像上に重ね合成される強調図形画像としておくと、移動体画像と強調画像との一体性が高められ、もっぱら強調画像により移動体位置を把握するようユーザーを誘導することができる。その結果、第二表示領域において移動体画像位置とは不一致となる補助画像へも、ユーザーの注意をよりスムーズに引き継ぐことが可能となる。
【0012】
また、移動体と車両との距離を検出する移動体距離検出手段を設け、強調画像表示手段を、強調図形画像を距離が小さくなるほど大寸法となるように表示するよう構成することも可能である。これにより、接近により次第に画像寸法を増す移動体へのユーザーの注意を、これに合わせて寸法拡大する強調図形画像により的確に持続させることができ、また、移動体までの距離感を的確に把握させることができる。特に、強調図形画像により移動体画像の一部を隠蔽する場合は、強調図形画像を移動体画像に合わせて拡大することで、移動体までの距離によらず一定の隠蔽効果を保つことができる。
【0013】
そして、前述の補助画像は、強調図形画像と同形状をなす補助図形画像としておくのがよい。これにより、移動体画像と図形画像との実対応関係が失われる第二表示領域においても、当該の補助図形画像が、移動体の強調図形画像を引き継ぐものであることをユーザーに直ちに認識させることができる。そして、この場合も、移動体と車両との距離を検出する移動体距離検出手段を設け、補助画像表示手段を、補助図形画像を距離が小さくなるほど大寸法となるように表示することが、移動体までの距離感を的確に把握させる観点において望ましい。
【0014】
前記の補助画像案内軌跡の向きは、第二表示領域における移動体画像の移動軌跡の方向と異なるため、両者は必ずどこかに交点を生ずる。そして、該補助画像案内軌跡に沿って補助画像を移動体の移動速度と同期して移動させる場合、補助画像案内軌跡上の補助画像は、該交差位置にて唯一実際の移動体画像位置を指し示すものとなる(また、このときが、移動体が自車両に最接近する位置でもある)。
【0015】
上記の交差位置(最接近位置)に移動体画像が到達したときの表示形態としては2通りありえる。その第一においては、補助画像表示手段は、補助画像案内軌跡と、同じく第二表示領域における移動軌跡との交差位置にて、補助画像を移動体の画像上に、当該移動体の画像が少なくとも一部隠蔽されるように重ね配置するよう構成する。ユーザーは、移動体画像が第一表示領域に存在するときから移動体位置を強調画像もしくは補助画像により継続的に把握しているので、上記最接近位置においても同じ補助画像により移動体画像を隠蔽しつつ表示することで、当該最接近位置への移動体の到来を的確に把握させることができる。
【0016】
他方、第一表示領域の画像により移動体が何であるかをユーザーが十分特定できている場合(例えば、第一表示領域では強調画像を表示しないか、表示していても移動体の隠蔽率が小さい場合)においては、ユーザーは移動体の現在位置を、第一表示領域上での移動体実画像の位置トレースにより把握していることもある。この場合、補助画像表示手段は、補助画像案内軌跡と第二表示領域での移動軌跡との交差位置に移動体の画像が到達するタイミングにて、補助画像を非表示とすること、すなわち、最接近位置においてのみ移動体の実画像により注意を促すことも十分効果的であるといえる。
【0017】
第一撮影手段は、第一視野として車両の後側方視野を撮影するものとすることができる。また、第二撮影手段は、第二視野として車両の直後方視野を撮影するものとすることができる。車両の直後方視野を後側方視野とともに表示することで、直接は見辛い自車両後方をその周囲とともに容易に視認することができ、後方を横切る他車の動きも的確に把握できる。特に、道路に面した駐車場から後退で車両を退出させる場合や、死角の大きい狭い路地陰から自車両が走行中の道路へ右左折により他車両が合流してくる場合は有効である。
【0018】
移動体は、自車両後方の右側から接近してくる場合と左から接近してくる場合との二通りがある。これに対応するために、車両の後方左視野を撮影する後方左撮影手段と、車両の後方右視野を撮影する後方右撮影手段とを設けることができる。この場合、これらの撮影手段のうち、移動体が車両に接近してくる側に位置するものが本発明の概念における第一撮影手段として使用されることとなる。移動体画像表示手段は、直後方視野の画像を表示する直後方画像表示領域の左右上方に隣接する形で、後方左視野の画像を表示する後方左画像表示領域と、後方右視野の画像を表示する後方右画像表示領域とが配置される。そして、後方左画像表示領域と後方右画像表示領域とのうち移動体の車両への接近側となるものが第一表示領域として使用され、直後方画像表示領域が第二表示領域として使用される。
【0019】
直後方画像領域と後方左画像表示領域と後方右画像表示領域とは、表示装置の共通の画面上にて画像マスク領域により、それぞれ車両の対応するウィンドウ形状を連想させる形態にトリミングされた形で形成することができる。このようにすると、運転席側から車室内後方を振り返ったときに類似したイメージで画像が表示されるので、直後方及び後方左ないし右の撮影画像上にて、移動体の位置関係や遠近感をより把握しやすくなる。他方、トリミングにより、隣接する領域間で移動体の実画像の途切れ感は増大するが、本発明により補助画像を表示することでトリミングによる該影響も効果的に和らげることができる。
【0020】
後方左画像表示領域と後方右画像表示領域とのうち、移動体の車両からの離間側となるものを、自車両から遠ざかってゆく移動体を映し出す第三表示領域として活用することができる。補助画像表示手段は、補助画像案内軌跡と、同じく第二表示領域における移動軌跡との交差位置と、移動体の第三表示領域上における移動軌跡との間にも補助画像を表示するものとすることができる。移動体画像が、第二表示領域にて直近位置(前述の交差位置:直後方位置)を通過し遠ざかってゆく際にも、移動体画像が受け渡される第三表示領域に向けてフォローの補助画像を表示することで、自車両後方における移動体の接近から通過までを確実に把握することができる。この場合、補助画像表示手段は、補助画像を、前述の交差位置から第三表示領域側の移動軌跡に向けて設定される補助画像案内軌跡に沿って移動表示することが可能である。また、第三表示領域上にて移動体の画像位置を特定する移動体画像位置特定手段と、該第三表示領域上にて、特定された移動体画像位置に、当該移動体位置を強調するための強調画像を、移動体画像とともに移動表示する強調画像表示手段と設けておけば、第二表示領域から第三表示領域に受け渡された移動体画像により、注意を向けていた移動体が遠ざかってゆく様子をわかりやすく把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る車両周辺監視装置1の電気的構成の一例を示すブロック図である。車両周辺監視装置1は自車両の後方をモニタするためのもので、車両の左右後方を撮像するCCDカメラ101,201に加えて、第3の方向として真後ろ方向を撮像するCCDカメラ401を備える。図2に示すように、CCDカメラ101,201はリアバンパーの両角に設置され、真後ろ方向を撮像するCCDカメラ401はリアバンパーの中央部に設置される。これによってほぼ180°以上をカバーできる撮像範囲が確保される。CCDカメラ101は、車両50の一方の後側方視野である後方左視野Xを撮影する後方左撮影手段を構成する。また、CCDカメラ102は、同じく車両50の後方右視野Zを撮影する後方右撮影手段を構成する。さらに、CCDカメラ401は車両50の直後方視野を撮影する直後方撮影手段を構成する。
【0022】
これらのCCDカメラ101,201,401の映像信号は、コントロールユニット60Bを介して車室内の後部に前方を向いて設置された表示装置70(移動体画像表示手段)に出力される。表示装置70は液晶ディスプレイ等で構成され、上記以外にナビゲーション情報、テレビ(TV)などの映像を表示することができる。コントロールユニット60は機能上、カメラドライバー102d,202d,401d、広角映像歪み補正装置62、画像合成出力制御装置63及び画像作成装置65を含んで構成される。
【0023】
CCDカメラ101、201、401は、それぞれカメラドライバー102d、202d、402dを介して広角映像歪み補正装置62に接続される。広角映像歪み補正装置62では、各カメラの装着された広角レンズによる映像歪みを補正し、修正された映像信号を画像合成出力制御装置63に出力する。画像合成出力制御装置63には画像作成装置65が接続されている。画像作成装置65は専用のグラフィックICにて構成され、後述するトリミング映像、車両画像(移動体画像)及び後述する強調画像及び補助画像を作成する。画像合成出力制御装置63はマイコンハードウェアにて構成される。
【0024】
次に、図3に示すように、車両50の後部において各CCDカメラ101,201,401に対応する位置には、各カメラの撮影方向に存在する障害物(図2において、他車両Tや歩行者M)を検出するためのレーダー501,601,801が取り付けられている。これらのレーダー501,601,801は、対応する各カメラの視野を横切る移動体Tの速度及び自車両50から該移動体Tまでの距離ひいては視野内の位置を測定するためのもので、移動速度特定手段、移動体画像位置特定手段及び移動体距離検出手段の主体をなす。図1に示すように、これらのレーダー501,601,801の検出情報は画像合成出力制御装置63に入力される。
【0025】
画像合成出力制御装置63は、搭載されたソフトウェアの実行により、3つのCCDカメラ101,201,401からの撮影画像を、図4に示すレイアウトにて1つの画像に合成し、さらに、画像作成装置65が作成するトリミング映像、強調画像及び補助画像を重ねることによりモニタ画像データとし、そのデータに基づく映像信号を表示装置70に出力する。3つのCCDカメラ101,201,401が撮影する他車両(移動体)の位置及び速度は上記レーダー501,601,801の検出情報に基づいて算出され、その算出結果に基づいて各撮影画像上の当該他車両の画像位置及び速度が特定される。強調画像及び補助画像は、特定された該他車両の画像位置と速度の情報に基づいてその撮影画像上への合成位置が決定される。すなわち、該画像合成出力制御装置63は、強調画像表示手段及び補助画像表示手段を構成する。
【0026】
また、画像合成出力制御装置63には、カーナビゲーションシステムやTVなど他の映像信が入力可能となっており、制御信号として車速信号、スイッチ信号が入力される。スイッチ信号は表示画面を切り替えるときに操作されたスイッチが発生する信号であり、該スイッチ信号の入力によって、例えば車両速度が所定値を超えたときナビゲーション情報だけを表示する制御を行なう。表示装置70では、ナビゲーション映像、TV映像を表示するとともに、選択によってモニタ画像を表示する。
【0027】
図2において、3つのCCDカメラは、車両50の周囲に向けて接近する他車両T(移動体)を、該他車両Tの接近方向上流側を向く第一視野Xにて撮影するものが第一撮影手段となり、該接近方向における第一視野Xの下流側にて車両の直近領域を包含する第二視野Yにて移動体を撮影するものが第二撮影手段となる。図2においては、車両50の周囲後方に向けて右又は左から接近する他車両Tが撮影対象であり、接近してくる他車両Tが入る視野Xを有したものが第一撮影手段として使用され、車両50の直後方にて他車両Tを撮影するCCDカメラ401が第二撮影手段として使用される。この場合、他車両Tが車両50に対して後方左から接近してくる場合は、後方左視野Xを撮影するCCDカメラ101が第一撮影手段となり、同じく後方右から接近してくる場合は、後方右視野Zを撮影するCCDカメラ201が第一撮影手段となる(図2は、他車両Tの車両50に対し後方左から接近してくる場合を示している)。
【0028】
また、表示装置70は、図4に示すように、直後方視野Yの画像を表示する直後方画像表示領域73の左右上方に隣接する形で、後方左視野の画像を表示する後方左画像表示領域71と、後方右視野の画像を表示する後方右画像表示領域72とを共通の液晶ディスプレイ上に配列表示するものであり、後方左画像表示領域71と後方右画像表示領域72とのうち他車両Tの車両50への接近側となるものが第一表示領域として使用され、直後方画像表示領域73が第二表示領域として使用される。この実施形態では、他車両Tが車両50に対し後方左から接近してくる場合で代表させて説明を行なう。
【0029】
図2に示すごとく、後方左視野Xを横切った他車両Tが直後方視野Yに進入するに伴い、該他車両Tの画像は、図6及び図7(状態1〜状態8)に示すように、後方左画像表示領域71から直後方画像表示領域73により、当該後方左画像表示領域71での移動軌跡Fの延長から外れた画像出現位置Qにて後方左画像表示領域71とは異なる移動軌跡G方向に引き継ぎ表示されることとなる。すなわち、状態1〜4に示すように、左後方の表示領域71に斜め上方から徐々に大きくなりながら領域右側に流れ去り、その後、状態5〜7に示すごとく、左側から拡大された形で直後方表示領域73に現われる。しかし、状態4及び状態5に示すごとく、他車両Tの位置が後方左視野Xから直後方視野Yへ移るのに対応して、補助画像M’が直後方画像表示領域73において後方左画像表示領域71の移動軌跡Fに連なる向きF’に表示される。
【0030】
他車両Tの画像が後方左画像表示領域71上を状態1〜状態4のごとく移動してくれば、ユーザーは、直後方画像表示領域73上においてもその移動方向から予測される向きに現われることを期待する。しかし、実際は、この向きには他車両Tの画像が現われないので、他車両Tの実画像に係る表示の不連続感や断絶感を生ずる。そこで、上記期待する向き、すなわち、直後方画像表示領域73において後方左画像表示領域71の移動軌跡Fに連なる向きF’に別の補助画像M’を出現させることで、画像断絶感を和らげつつユーザーの目を直後方画像表示領域73上へスムーズに導くことができ、ひいては車両50の直後方位置に向かう他車両Tへの注意を継続させることができる。図2において、後方左視野X及び直後方視野Yを横切る他車両Tの移動速度は、図3のレーダー501,801により特定される。図6及び図7において、補助画像M’は、後方左画像表示領域71の移動軌跡Fに連なる補助画像案内軌跡F’に沿って、その取得される移動速度に対応した速度にて移動表示される。
【0031】
また、図2の後方左視野X内を移動する他車両Tの位置は、図3のレーダー501により刻々検出され、その位置情報に基づいて、後方左画像表示領域71上の他車両Tの画像位置が特定される。そして、図4に示すように、特定された他車両Tの画像位置に、当該他車両Tの位置を強調するための強調画像Mが表示される。そして、図7の状態5及び6に示すように、補助画像M’(EM)は、後方左画像表示領域71上を移動してくる強調画像Mを引き継ぐ形で補助画像案内軌跡F’に沿ってこれを移動表示する。ただし、図11に示すように、補助画像案内軌跡F’沿って静止した強調画像Mを表示することも可能である。ここでは、補助画像案内軌跡F’に沿って基準点Xmに至る向きを示す強調画像Mを、対応する矢印状の図形として示している。
【0032】
なお、視野内に歩行者Wなど、他の移動体も存在する場合も同様の強調画像Mが表示される(図4においては、後方右画像表示領域72)。この実施形態では、画像の輪郭形状や移動速度から、移動体が車両であるか歩行者であるかが判別され、互いに異なる形態の強調画像が表示されるようになっている。他車両Tと車両50との距離はレーダー501により検出され、強調図形画像Mは、その距離が小さくなるほど大寸法となるように表示されている(図6:状態1〜3)。
【0033】
強調画像Mは、他車両Tの画像上に重ね合成される強調図形画像、ここでは警告色(例えば、赤や黄色)を有した一定線幅の円状の図形画像とされている。この強調画像Mは、線状の画像輪郭部が不透明とされ、他車両Tの画像を隠蔽する形で該他車両Tの画像上に重ね合成されている。該画像輪郭部の内側は透明であり他車両Tが見えているが、図9に示すように、内部も塗りつぶす形で不透明としてもよい。なお、強調画像Mは、例えば他車両Tの画像を枠で囲んだり、他車両Tの画像にαブレンドされる警告色のマーキングとしてもよい。
【0034】
また、図7の状態5に示すように、補助画像M’は、強調図形画像Mと同形状(つまり、円状)をなす補助図形画像とされている。直後方視野Yに入った他車両Tまでの距離はレーダー801により検出され、該補助図形画像M’も、その距離が小さくなるほど大寸法となるように表示すされる。
【0035】
図5に示すように、補助画像案内軌跡F’の向きは、直後方画像表示領域73における他車両Tの画像移動軌跡Fの方向と異なる。本実施形態では、直後方画像表示領域73上の他車両Tの移動軌跡を示す基準線G上にて、左右対称に形成される直後方画像表示領域73の左右両縁間の中心位置(つまり、直後方位置:他車両Tが自車両50に最接近する位置)に基準点Xmを定めてある。そして、直後方画像表示領域73における他車両Tの画像移動軌跡F(終端点はX0)を直後方画像表示領域73側に延長したときの当該領域73の周縁との交点をX1とし、該X1と基準点Xmとを結ぶ直線を補助画像案内軌跡F’として定めてある。
【0036】
補助画像M’は、該補助画像案内軌跡F’に沿って、レーダー801が検出する他車両Tの位置(又は移動速度)と同期して移動表示される。各CCDカメラ101,401,201の取付位置及びアングルは固定なので、補助画像案内軌跡F’の起点X1と基準点Xmに対応する後方路上での実距離L0は既知である。そこで、レーダー801が検出する他車両Tの位置から、起点X1に対応する路上位置から見た他車両Tの路上現在位置までの距離Lcを求める。そして、画像上にてX1からXmに至る補助画像案内軌跡F’上の補助画像M’の表示位置をMCとし、X1からXmまでの距離をJ0、X1からMCまでの距離をJcとすれば、
Jc/J1=Lc/L1 ‥(1)
なので、補助画像M’の表示位置MCを示す距離Jcは、
Jc=(Lc/L1)×J1 ‥(1)’
にて計算できる。
【0037】
また、補助画像M’の表示寸法(ここでは、半径rとして定める)は、例えば、Lc=L0のときr=r0となり、距離Lcに比例してrが変化するように定めれば、任意距離Lcの時の半径rを、
r=(Lc/L1)×J0 ‥(2)
として計算できる。
【0038】
さて、他車両Tが直後方視野Y内に入れば、該他車両Tの実画像は、図7の状態5に示す水平方向の移動軌跡Gに沿って移動し、やがて状態6に示すように、基準点Xm(交差位置:最接近位置)に到達する。この実施形態においては、該基準点Xmに補助画像EMを他車両Tの画像上に、当該他車両Tの画像が少なくとも一部隠蔽されるように重ね配置するよう表示している。ここでは、前述の(2)式が示すLc=L0のときの、」半径r0の円形画像よりもさらに大きい矩形不透明の補助画像EMを表示することにより、他車両Tの実画像に対する隠蔽率を高めている。また、他車両Tの実画像の輪郭形状から当該他車両Tの種別(ここではトラック)が特定され、その種別名が補助画像EM上に表示されている。
【0039】
なお、図10に示すように、基準点Xmに他車両Tの画像が到達するタイミングにて、補助画像M’を非表示とすること(つまり、その前後でのみ補助画像M’を表示する)も可能である。
【0040】
次に、図4において、後方左画像表示領域71と後方右画像表示領域72とのうち、他車両Tの車両50からの離間側となるもの、ここでは後方右画像表示領域72が、自車両50から遠ざかってゆく他車両Tを映し出す第三表示領域として活用される。図7の状態7に示すように、基準点Xmと、上記後方右画像表示領域72(第三表示領域)上における他車両Tの移動軌跡Fとの間にも補助画像M’が表示される。図5に示すように、この場合は、基準点(交差位置)Xmから後方右画像表示領域72側の移動軌跡Fに向けて設定される補助画像案内軌跡F”に沿って、補助画像M’が移動表示される。この実施形態にて補助画像案内軌跡F”は、直後方画像表示領域73上の移動軌跡Gに対し、基準点Xmを通ってこれと直交する中心線Oに関し接近側の補助画像案内軌跡F’を対称に投影して得られる直線として定めている。
【0041】
他車両Tの実画像は、図8の状態8〜10に示すように、その後後方右画像表示領域72(第三表示領域)に受け渡されるので、レーダー201による位置ないし速度特定に基づいて、同様の強調画像Mを特定された他車両Tの画像位置に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の車両周辺監視装置に係る電気的構成の一例を示すブロック図。
【図2】車載カメラ群の配置形態の一例を、その視野とともに示す平面模式図。
【図3】同じくレーダーの配置形態を示す模式図。
【図4】表示画面の一例を示す図。
【図5】補助画像の移動軌跡と画像表示位置の決定方法を説明する図。
【図6】本発明の作用を示す状態流れ図。
【図7】図6に続く状態流れ図。
【図8】図7に続く状態流れ図。
【図9】補助画像の表示形態の第一変形例を示す図。
【図10】同じく第二変形例を示す図。
【図11】同じく第三変形例を示す図。
【図12】従来の車両周辺監視装置の問題点を説明する図。
【符号の説明】
【0043】
1 車両周辺監視装置
50 車両
63 画像合成出力制御装置(補助画像表示手段)
70 表示装置(移動体画像表示手段)
71 後方左画像表示領域(第一表示領域)
72 後方右左画像表示領域(第三表示領域)
73 直後方画像表示領域(第二表示領域)
74 画像マスク領域
101 CCDカメラ(第一撮影手段)
201 CCDカメラ
401 CCDカメラ(第二撮影手段)
501,801 レーダー(移動速度特定手段)
T 移動体
X 第一視野
Y 第二視野
F 移動軌跡
F’ 補助画像案内軌跡
Q 画像出現位置
M’ 補助画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両の周囲に向けて接近する移動体を、該移動体の接近方向上流側を向く第一視野にて撮影する第一撮影手段と、
前記第一視野の前記接近方向下流側にて、前記車両の直近領域を包含する第二視野にて前記移動体を撮影する第二撮影手段と、
前記第一撮影手段による撮影画像を表示する第一表示領域と、前記第二撮影手段による撮影画像を表示する第二表示領域とを、前記第一視野を横切った前記移動体が前記第二視野に進入するに伴い、前記第一表示領域から前記第二表示領域により前記移動体の画像が、当該第一表示領域での移動軌跡の延長から外れた画像出現位置にて前記第一表示領域とは異なる移動軌跡方向に引き継ぎ表示されるよう、互いに隣接させた形で配置した移動体画像表示手段と、
前記移動体の位置が前記第一視野から前記第二視野へ移るのに対応して、前記車両の前記直近領域に向かう移動体への注意を促す補助画像を、前記第二表示領域において前記第一表示領域の移動軌跡に連なる向きに表示する補助画像表示手段と、
を備えたことを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
前記第一視野及び前記第二視野を横切る前記移動体の移動速度を特定する移動速度特定手段を備え、
前記補助画像表示手段は、前記第一表示領域の移動軌跡に連なる補助画像案内軌跡に沿って前記補助画像を、取得される前記移動速度に対応した速度にて移動表示する請求項1記載の車両周辺監視装置。
【請求項3】
前記第一表示領域上にて前記移動体の画像位置を特定する移動体画像位置特定手段と、
特定された移動体画像位置に、当該移動体位置を強調するための強調画像を、前記移動体画像とともに移動表示する強調画像表示手段とを有し、
前記補助画像表示手段は、前記第一表示領域上を移動してくる前記強調画像を引き継ぐ形で、前記補助画像を前記補助画像案内軌跡に沿って移動表示する請求項2に記載の車両周辺監視装置。
【請求項4】
前記強調画像は、前記移動体の画像上に重ね合成される強調図形画像である請求項3記載の車両周辺監視装置。
【請求項5】
前記強調画像は、前記移動体の画像を隠蔽する形で該移動体の画像上に重ね合成される強調図形画像である請求項4記載の車両周辺監視装置。
【請求項6】
前記移動体と前記車両との距離を検出する移動体距離検出手段を備え、
前記強調画像表示手段は、前記強調図形画像を前記距離が小さくなるほど大寸法となるように表示する請求項4又は請求項5に記載の車両周辺監視装置。
【請求項7】
前記補助画像は前記強調図形画像と同形状をなす補助図形画像とされてなる請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両周辺監視装置。
【請求項8】
前記移動体と前記車両との距離を検出する移動体距離検出手段を備え、
前記補助画像表示手段は、前記補助図形画像を前記距離が小さくなるほど大寸法となるように表示する請求項7記載の車両周辺監視装置。
【請求項9】
前記補助画像表示手段は、前記補助画像案内軌跡と、同じく前記第二表示領域における移動軌跡との交差位置にて、前記補助画像を前記移動体の画像上に、当該移動体の画像が少なくとも一部隠蔽されるように重ね配置される請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両周辺監視装置。
【請求項10】
前記補助画像表示手段は、前記補助画像案内軌跡と前記第二表示領域での移動軌跡との交差位置に前記移動体の画像が到達するタイミングにて、前記補助画像を非表示とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両周辺監視装置。
【請求項11】
前記第一撮影手段は、前記第一視野として前記車両の後側方視野を撮影するものであり、
前記第二撮影手段は、前記第二視野として前記車両の直後方視野を撮影するものである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両周辺監視装置。
【請求項12】
前記車両の後方左視野を撮影する後方左撮影手段と、前記車両の後方右視野を撮影する後方右撮影手段とを有し、それら後方左撮影手段と後方右撮影手段とのうち、前記移動体が前記車両に接近してくる側に位置するものが前記第一撮影手段として使用され、
前記移動体画像表示手段は、前記直後方視野の画像を表示する直後方画像表示領域の左右上方に隣接する形で、前記後方左視野の画像を表示する後方左画像表示領域と、前記後方右視野の画像を表示する後方右画像表示領域とを配置したものであり、前記後方左画像表示領域と前記後方右画像表示領域とのうち前記移動体の前記車両への接近側となるものが前記第一表示領域として使用され、前記直後方画像表示領域が前記第二表示領域として使用される請求項11記載の車両周辺監視装置。
【請求項13】
前記直後方画像領域と前記後方左画像表示領域と前記後方右画像表示領域とが、表示装置の共通の画面上にて画像マスク領域により、それぞれ車両の対応するウィンドウ形状を連想させる形態にトリミングされた形で形成される請求項12に記載の車両周辺監視装置。
【請求項14】
前記後方左画像表示領域と前記後方右画像表示領域とのうち、前記移動体の前記車両からの離間側となるものを第三表示領域として、前記補助画像表示手段は、前記補助画像案内軌跡と、同じく前記第二表示領域における移動軌跡との交差位置と、前記移動体の前記第三表示領域上における移動軌跡との間に前記補助画像を表示する請求項12又は請求項13に記載の車両周辺監視装置。
【請求項15】
前記補助画像表示手段は前記補助画像を、前記交差位置から前記第三表示領域側の移動軌跡に向けて設定される補助画像案内軌跡に沿って移動表示する請求項14記載の車両周辺監視装置。
【請求項16】
前記第三表示領域上にて前記移動体の画像位置を特定する移動体画像位置特定手段と、
特定された移動体画像位置に、当該移動体位置を強調するための強調画像を、前記移動体画像とともに移動表示する強調画像表示手段とを有する請求項14又は請求項15に記載の車両周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−258822(P2008−258822A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97471(P2007−97471)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】