説明

車両周辺認知支援装置

【課題】
ホーンを普段ほとんど使用しない車両100の運転者がいざというときに即座に危険回避行動(ホーンを鳴らす)が取れる車両周辺認知支援装置を提供すること。
【解決手段】
車両100の周辺に存在する物体の物体情報をフロントカメラ11が検出すると、電子制御ユニット1は当該物体情報に基づいて、ステアリングホイール21に備えられたホーンパッド61に設置された発光部71を発光させるため、車両100の運転者はホーンパッド61の位置を容易に認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の歩行者、周辺車両等の運転者による認知を支援する車両周辺認知支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衝突が不可避である場合に、ホーン(クラクション)を自動的に鳴らすことが開示されている。
【0003】
しかしながら、衝突が不可避である情況になる前に運転者自身が事前に気付き、さらに歩行者や他車両に自車の存在に気付かせるためにホーン(クラクション)を鳴らす等の事前回避を行なう事が安全運転行動としては望ましい。
【0004】
また、近年ハイブリッド車や電気自動車が普及するにつれ、エンジン音がしない状態で走行するために、車両周辺の歩行者が車両の接近に気づかず、歩行者が回避行動を取らないケースが増えてきている。このような場合に、運転者はホーン(クラクション)を鳴らす(鳴動する)ことで歩行者に自身の存在を伝えることで安全に走行したいが、普段ホーンをほとんど使用しない運転者にとっては、ホーンを鳴らすためのホーンパッドの位置が分からず即座にホーンを鳴らせないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両周辺に周辺車両が存在するときに、運転者がその危険に気づき、すばやくホーンを押せる車両周辺認知支援装置を提供することにある。換言すると、車両前方の歩行者や車両に衝突しそうになった場合に、運転車自身に危険である事を気付かせると同時に、すばやく危険回避を行い、かつ歩行者や他車にも危険回避動作を促すための支援を行なう事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために本発明に講じられた技術的手段は、操作することで車両のホーンを鳴動させる鳴動指示手段と、車両周辺に存在する物体の物体情報を検出する検出手段と、前記鳴動指示手段に設置される発光手段と、前記物体情報に基づいて、前記発光手段を発光させる発光指示手段とを備えたことを特徴とする車両周辺認知支援装置である。
【0008】
本発明に講じられた技術的手段において、検出手段が車両周辺を撮影する撮像手段であるとより好適である。
【0009】
本発明に講じられた技術的手段において、発光手段が有機ELであると共に、当該発光手段が鳴動指示手段の表面を覆うように配置されるとより好適である。
【0010】
本発明に講じられた技術的手段において、発光指示手段は、前記物体情報に基づいて、車両周辺に存在する物体が移動物体であるときに前記発光手段を発光させるとより好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に講じられた技術的手段によると、ホーンを普段ほとんど使用しない運転者がいざというときに即座に危険回避行動(ホーンを鳴らす)が取れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る車両周辺認知支援装置を備える車両の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るステアリングホイールを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両周辺認知支援装置の概略を示すブロック図である。
【図4】本発明の作動形態を説明するための車両100の運転者の視点から前方を見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る車両周辺認知支援装置50を備える車両100の概略図である。車両100には、車両周辺に存在する物体(歩行者91や周辺車両等)を検出する検出手段としてのフロントカメラ11が備えられる。フロントカメラ11は、車両100の前方の情景を撮影した撮像画像を取得する撮像手段である。このようなフロントカメラ11は、図1に示されるように、車両100のフロント部分に備えられる。フロントカメラ11は、車両周辺に存在する物体を検出する検出手段としてだけでなく、車両周辺認知のために、撮像画像を図示しない車室内のモニタに表示するように機能しても良い。車両100には、さらに、ホーン61とステアリングホイール21、及び、後述する図1に図示しない電子制御ユニット1を備える。
【0015】
図2は、ステアリングホイール21を示すものであって、同図において、81はホイール、61はステアリングホイール21の中央に配設されたホーンパッド、71はホーンパッド61と略同一形状をなして設置された発光部71で、ホーンパッド61の表面に半透明の樹脂材料で形成されたカバーの内部に複数の発光ダイオードを設置して構成されている。
【0016】
図3は、車両周辺認知支援装置50を示すものであって、同図において、1は電子制御ユニットであり、例えば、図示しないマイクロコンピュータ等で構成される。
【0017】
フロントカメラ11は、例えばCCDカメラ等により構成される。フロントカメラ11は、例えば魚眼レンズを用いて構成すると好適である。本実施例におけるフロントカメラ11は、撮影した撮像画像から周辺車両、歩行者91を検出する図示しない画像処理部を有する。画像処理部は、時系列に撮影した複数の撮像画像から周知のオプティカルフロー演算手法(例えば、特開2008−97126)で物体情報(歩行者91や周辺車両の存在及び存在の方位、距離等)を検出する。検出した物体情報は、例えば、シリアル通信等の通信手段で電子制御ユニット1に伝達される。
【0018】
鳴動指示手段としてのホーンパッド31は、ホーンパッド61を押す(操作する)ことにより鳴動し、周辺の歩行者91等に報知することができる。
【0019】
電子制御ユニット1は、発光部71の発光を制御可能に接続されている。
【0020】
なお、発光部71(発光ダイオード)は、エアバックが開く事を想定し、支障の無い位置に配置する。また、エアバックが開く事を想定し、支障が無いように、電気系統の配線(発光部71への配線)が行なわれるよう配慮する。
【0021】
本実施例における車両周辺認知支援装置50の作動形態を説明する。
【0022】
図4は、本発明の作動形態を説明するための車両100の運転者の視点から前方を見たときの図である。ここでは、車両周辺に存在する物体を、歩行者91として説明する。
【0023】
フロントカメラ11が、前述のようにして歩行者91の存在及び存在の方位、距離を検出すると、その物体情報を電子制御ユニット1に伝達する。
【0024】
電子制御ユニット1は、例えば、フロントカメラ11が検出した距離が予め定められたしきい値(発光開始しきい値。例えば5m)以下であれば、発光部71を点滅制御する。フロントカメラ11が検出した距離情報が予め定められたしきい値(発光終了しきい値)以上となった場合は発光部71の点滅制御を終了する。
【0025】
ここで、発光開始しきい値と発光終了しきい値は同一でも良いし、発光終了しきい値が発光開始しきい値よりも大きくてもよい。
【0026】
車両100の運転者は、発光部71が点滅することにより、歩行者91の存在を知ることができるとともに、ホーンパッド61の位置を容易に認識することができる。
【0027】
上記の通り構成することで、ホーンを普段ほとんど使用しない運転者であっても、いざというときに即座に危険回避行動(ホーンを鳴らす)が取れる。
【0028】
さらには、図4に示すように、運転者が前方の障害物(歩行者91)を中心視に合わせながら、かつ同時に周辺視でホーンパッド61の位置を確認できるようにホーンパッド61が発光(ホーンパッド61に設置された発光部71が発光)するため、前方をみながら同時にホーンパッド61が押せるように認知支援ができる。換言すると、ホーンパッド61はステアリングホイール21内に設置されているため、運転者が前方を注視していても、運転者の視界内にホーンパッド61が発光することが認知できるため、歩行者91、周辺車両が存在することを運転者にすばやく報知することができる。
【0029】
本実施形態では、車載カメラ(フロントカメラ11)による画像認識により歩行者91、周辺車両等を検知する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、レーザレーダやミリ波レーダ、ステレオカメラ、超音波センサ等で周辺車両、歩行者等を検知してももよい。
【0030】
本実施形態では、フロントカメラ11に画像処理部を有したが、これに限定されるものではなく、画像処理部をフロントカメラ11に備えずに本実施例における電子制御ユニット1に備えてもよい。
【0031】
本実施形態では、発光部71として発光ダイオードを使用する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、エアバッグが開く際に表面がより容易に破れるように、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)を用いて、当該有機ELをホーンパッド61の表面を覆うように配置してもよい。
【0032】
本実施形態では、発光部71をホーンパッド61と略同一形状をなして配置する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、ホーンパッドの周囲(縁)にのみ発光部71を配置させてもよいし、ホーンパッド61と略同一形状でなく円形状、楕円形状、長方形形状等任意の形状をなして配置させて良い。
【0033】
本実施形態では、歩行者91、周辺車両が存在するときに発光部を点滅する場合を例示したが、点滅に限定されるものではなく、歩行者91、周辺車両が存在するときに、発光(点灯)をしつづけてもよい。
【0034】
本実施形態では、車両のホーンを鳴動させる鳴動指示手段としてホーンパッドの場合を例示したが、車両のホーンを鳴動させる鳴動指示手段としての機能を有するのであれば、ボタン、スイッチ等の他の周知の手段でもよい。
【0035】
また、ホーンを鳴らして自車の存在を報知したいのは障害物(物体)ではなく人間であることから、画像処理等で人間であることが検出されたときに発光部を発光させてもよいし、前述のような周知のオプティカルフロー演算手法等で移動している物体の有無を検出し、当該移動物体が存在するときに発光部を発光させてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1・・・電子制御ユニット(発光指示手段)
11・・・フロントカメラ(検出手段)
31・・・ホーン
50・・・車両周辺認知支援装置
61・・・ホーンパッド(鳴動指示手段)
71・・・発光部(発光手段)
91・・・歩行者(車両周辺に存在する物体)
100・・・車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作することで車両のホーンを鳴動させる鳴動指示手段と、
車両周辺に存在する物体の物体情報を検出する検出手段と、
前記鳴動指示手段に設置される発光手段と、
前記物体情報に基づいて、前記発光手段を発光させる発光指示手段とを備えたことを特徴とする車両周辺認知支援装置。
【請求項2】
前記検出手段は、車両周辺を撮影する撮像手段であることを特徴とする請求項1に記載の車両周辺認知支援装置。
【請求項3】
前記発光手段は、有機ELであると共に、前記鳴動指示手段の表面を覆うように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両周辺認知支援装置。
【請求項4】
前記発光指示手段は、前記物体情報に基づいて、車両周辺に存在する物体が移動物体であるときに前記発光手段を発光させることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両周辺認知支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−34192(P2011−34192A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177801(P2009−177801)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】