説明

車両扉開閉制御装置

【課題】車両扉のラッチ解除に使用されるモータに対する常時給電状態を回避することの可能な車両扉開閉制御装置を提供する。
【解決手段】車両扉のラッチ解除に使用されるモータを駆動する駆動回路と、一定条件下で前記車両扉の開放操作が為された場合に前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御する制御部とを備える車両扉開閉制御装置であって、前記モータに接続された外部接続端子と前記駆動回路との間の電流経路に電流遮断スイッチが介挿されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両扉開閉制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両を利用するユーザの利便性向上を図るために、一定条件下でユーザによるスイッチ操作或いはリモコン操作が為された場合に、スライドドアやリアゲート(バックドア或いはテールゲートと同義)等の車両扉を自動的に開閉する車両扉自動開閉システム(所謂、パワースライドドアシステムやパワーリアゲートシステム等)を搭載した車両が普及している(下記特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、この車両扉自動開閉システムは、車両扉のラッチ状態をハーフラッチ状態(半ドア状態)からフルラッチ状態(全閉状態)に自動的に切替えるクロージャーユニットを備えている(下記特許文献2参照)。クロージャーユニットは、制御ユニットから供給される駆動電流によって回転するクロージャーモータを備えており、このクロージャーモータの正転動作時に車両扉のラッチが解除される(フルラッチ状態からハーフラッチ状態となる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−159605号公報
【特許文献2】特開2006−9485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、制御ユニットの内部故障によって、クロージャーモータに対して常時給電状態になると、クロージャーモータの制御が不能となり、車両扉のラッチが解除され、ドアロックが解除状態またはラッチが解除されドアが開放状態となる可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両扉のラッチ解除に使用されるモータに対する常時給電状態を回避することの可能な車両扉開閉制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、車両扉開閉制御装置に係る第1の解決手段として、車両扉のラッチ解除に使用されるモータを駆動する駆動回路と、一定条件下で前記車両扉の開放操作が為された場合に前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御する制御部とを備える車両扉開閉制御装置であって、前記モータに接続された外部接続端子と前記駆動回路との間の電流経路に電流遮断スイッチが介挿されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、車両扉開閉制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部とは別に設けられ、前記電流遮断スイッチを、前記一定条件下で車両扉の開放操作が為された場合にオフからオンに制御する制御論理回路を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、車両扉開閉制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部は、前記一定条件下で車両扉の開放操作が為された場合で、且つ前記駆動回路と前記電流遮断スイッチとの間の電流経路の電圧値が前記モータの駆動電圧と異なる場合、前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御すると共に、前記電流遮断スイッチをオフからオンに制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、車両扉開閉制御装置に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部は、前記一定条件下で車両扉の開放操作が為された場合、前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御すると共に、前記電流遮断スイッチをオフからオンに制御し、ラッチ解除後に前記電流遮断スイッチをオフに制御しても前記外部接続端子の電圧値に変化が無い場合、前記モータが停止するよう前記駆動回路を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、車両扉開閉制御装置に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記制御部は、ラッチ解除後に前記電流遮断スイッチをオフに制御しても前記外部接続端子の電圧値に変化が無い場合で、且つイグニションスイッチのオフを検知した場合に、前記モータが停止するよう前記駆動回路を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両扉のラッチ解除に使用されるモータに接続された外部接続端子と駆動回路との間の電流経路に電流遮断スイッチを介挿することにより、駆動回路が故障してもモータが常時給電状態となることを回避することができ、その結果、予期せぬタイミングで車両扉のラッチが解除され、ドアロックが解除状態またはラッチが解除されドアが開放状態となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るパワーリアゲートシステムを搭載した車両100の後部を側面から視たシステム概略図である。
【図2】本実施形態に係るパワーリアゲートシステムのブロック構成図である。
【図3】クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するためのパワーリアゲートECU30の第1の構成を示す図である。
【図4】クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するためのパワーリアゲートECU30の第2の構成(a)及び第3の構成(b)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、本発明に係る車両扉開閉制御装置として、車両扉自動開閉システム、特にリアゲート(車両扉)の自動開閉を行うパワーリアゲートシステムを統括制御するパワーリアゲートECU(Electronic Control Unit)を例示して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るパワーリアゲートシステムを搭載した車両100の後部を側面から視たシステム概略図である。なお、図中に記載しているXYZ直交座標系のX軸は車両100の長さ方向を、Y軸は車両100の幅方向を、Z軸は車両100の高さ方向を示している。また、図2は、本実施形態に係るパワーリアゲートシステムのブロック構成図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るパワーリアゲートシステムは、車両100のルーフ101の後端部にヒンジ機構102を介して上下に開閉自在に連結されたリアゲート103を、一定条件下でユーザによるスイッチ操作或いはリモコン操作が為された場合に自動的に開閉するシステムである。また、リアゲート103は、手動で開閉することも可能である。
【0017】
なお、手動或いは自動によるリアゲート103の開放動作を補助するために、車両100のリアピラー105とリアゲート103との間には、リアゲート103に対して開方向の押し上げ力を付勢するダンパー104が設けられている。このダンパー104は、車両100の幅方向に対して左右に1本ずつ設けられている。
【0018】
リアピラー105の内側には、リアゲートモータ11及び該リアゲートモータ11の回転動作をリアゲート103の開閉動作に変換する機械要素12、13、14、15から成るリアゲート駆動ユニット10が設けられている。
【0019】
リアゲートモータ11は、後述のパワーリアゲートECU30から供給される駆動電流に応じて回転するDCモータである。機械要素12は、リアピラー105の内側にZ軸から後方へ向かって一定角度傾斜した状態で固定されたガイドレールである。機械要素13は、ガイドレール12に沿って昇降自在(往復自在)に装着されたラックギアである。
【0020】
機械要素14は、一端がラックギア13の上端部にY軸周りに回動自在に連結され、且つ他端がリアゲート103の所定位置にY軸周りに回動自在に連結された棒状のアームである。機械要素15は、リアゲートモータ11の回転軸の回転動作をラックギア13の昇降運動(ガイドレール12上の往復運動)に変換するピニオンギア等の各種ギア群を内蔵するギアボックスである。
【0021】
これらの機械要素12、13、14、15によって、リアゲートモータ11の正転時にはラックギア13がガイドレール12に沿って上昇し、アーム15による押し上げ力がリアゲート103に付加されてリアゲート103の開放動作が実現される。一方、リアゲートモータ11の逆転時にはラックギア13がガイドレール12に沿って下降し、アーム15による引き下げ力がリアゲート103に付加されてリアゲート103の閉鎖動作が実現される。
【0022】
なお、このギアボックス15内には、後述のパワーリアゲートECU30による制御に応じてリアゲートモータ11の回転軸と後段の各種ギア群(図2中の符号16)との機械的な接続を切断するクラッチ機構(図2中の符号17)が設けられている。また、このギアボックス15内には、リアゲートモータ11の回転角度を検出するホールセンサ等の角度センサ(図2中の符号18)も設けられている。
【0023】
リアゲート103の下端中央部には、リアゲート103のラッチ状態をハーフラッチ状態(ほぼリアゲート103が閉じられているが、完全に車体のストライカに対してラッチされていない状態:半ドア状態)からフルラッチ状態(リアゲート103が車体のストライカに対して完全にラッチされた状態:全閉状態)へ自動的に切替えるクロージャーユニット20が設けられている。
【0024】
このクロージャーユニット20は、図2に示すように、クロージャーモータ21、ラッチ機構22及びラッチ状態検出スイッチ23を備えている。クロージャーモータ21は、後述のパワーリアゲートECU30から供給される駆動電流に応じて回転するDCモータである。ラッチ機構22は、クロージャーモータ21の回転動作をリアゲート103のラッチ状態の切替動作に変換する機械要素から構成されている。
【0025】
このラッチ機構22は、クロージャーモータ21の正転時には、リアゲート103をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ切替え、クロージャーモータ21の逆転時には、リアゲート103をフルラッチ状態からハーフラッチ状態へ切替える。ラッチ状態検出スイッチ23は、リアゲート103のラッチ状態(ハーフラッチ状態か、或いはフルラッチ状態か)を検出するスイッチ群であり、具体的にはラッチスイッチ、カーテシスイッチ、中立状態スイッチ等である。
【0026】
リアゲート駆動ユニット10の下部には、車両100の所定位置に設置された各種スイッチやセンサ或いは他の車載ユニット(いずれも図1では図示省略)から得られる情報を基に、リアゲート駆動ユニット10及びクロージャーユニット20を制御する(つまりリアゲート103の自動開閉制御を行う)パワーリアゲートECU30が設置されている。
【0027】
具体的には、このパワーリアゲートECU30は、図2に示すように、電源回路31、リアゲートモータ駆動回路32、クロージャーモータ駆動回路33、クラッチ駆動回路34、LIN(Local Interconnect Network) やCAN(Controller Area Network)等の車両通信レシーバ35及びマイコン36を基本的な構成要素として備えている。
【0028】
また、パワーリアゲートECU30は、外部接続端子として、第1電源端子P1、第2電源端子P2、グランド端子P3、第1入力端子P4、第2入力端子P5、第3入力端子P6、第4入力端子P7、第5入力端子P8、第6入力端子P9、第7入力端子P10、第1出力端子P11、第2出力端子P12、第3出力端子P13、第4出力端子P14、第5出力端子P15及び通信線接続端子P16を備えている。
【0029】
第1電源端子P1は、車両100に搭載されたバッテリ41の正極端子と第1ヒューズ42を介して接続されている。第2電源端子P2は、上記バッテリ41の正極端子と、イグニションスイッチ(IGスイッチ)43及び第2ヒューズ44を介して接続されている。グランド端子P3は、上記バッテリ41の負極端子と接続されている。なお、バッテリ41の負極端子は車体アースされている。
【0030】
電源回路31の入力端子は第1電源端子P1と接続され、出力端子はマイコン36と接続されている。この電源回路31は、例えばDC/DCコンバータであり、第1電源端子P1を介してバッテリ41から供給されるバッテリ電源電圧VPB(例えば12V)を、マイコン36等の低電圧回路の駆動に必要な内部電源電圧Vdd(例えば3.3V〜5V)に変換する。この内部電源電圧Vddは、マイコン36に供給されると共に、共通のVddラインを介してその他の低電圧回路に供給される。
【0031】
また、第1電源端子P1を介してバッテリ41から供給されるバッテリ電源電圧VPBは、共通のVPBラインを介してリアゲートモータ駆動回路32、クロージャーモータ駆動回路33及びクラッチ駆動回路34等に供給されている。また、グランド端子P3(つまりバッテリ41の負極端子)はパワーリアゲートECU30内の各電子部品に共通のGNDラインと接続されている。なお、第2電源端子P2はマイコン36と接続されており、マイコン36は第2電源端子P2の電圧を監視することで、IGスイッチ43のオン/オフ状態を認識可能となっている。
【0032】
第1入力端子P4は、運転席側に設置されたメインスイッチ45と接続されている。このメインスイッチ45は、第1入力端子P4を介してマイコン36と接続されており、そのオン/オフ状態によって、リアゲート103の自動開閉制御が許可されている状態か否かをマイコン36に認識させるためのスイッチである。
【0033】
第2入力端子P5は、運転席側に設置されたリアゲート開閉スイッチ46と接続されている。このリアゲート開閉スイッチ46は、第2入力端子P5を介してマイコン36と接続されており、そのオン/オフ状態によって、ユーザによるリアゲート103の開放操作が為されたか、或いは閉鎖操作が為されたかをマイコン38に認識させるためのスイッチである。
【0034】
第3入力端子P6は、パワーリアゲート駆動ユニット10に内蔵された角度センサ18と接続されている。つまり、角度センサ18の出力信号(リアゲートモータ11の回転角度に応じた信号)は、第3入力端子P6を介してマイコン36に入力される。第4入力端子P7は、クロージャーユニット20に内蔵されたラッチ状態検出スイッチ23と接続されている。ラッチ状態検出スイッチ23は、第4入力端子P7を介してマイコン36と接続されており、そのオン/オフ状態によって、リアゲート103がハーフラッチ状態か、フルラッチ状態かをマイコン36に認識させるためのスイッチである。
【0035】
第5入力端子P8は、リアゲート103に設置されたリアゲート開放スイッチ47と接続されている。このリアゲート開放スイッチ47は、第5入力端子P8を介してマイコン36と接続されており、そのオン/オフ状態によって、ユーザによるリアゲート103の開放操作が為されたことをマイコン36に認識させるためのスイッチである。
【0036】
第6入力端子P9は、リアゲート103に設置されたリアゲート閉鎖スイッチ48と接続されている。このリアゲート閉鎖スイッチ48は、第6入力端子P9を介してマイコン36と接続されており、そのオン/オフ状態によって、ユーザによるリアゲート103の閉鎖操作が為されたことをマイコン36に認識させるためのスイッチである。
【0037】
第7入力端子P10は、リアゲート103に設置されたタッチセンサ49と接続されている。このタッチセンサ49は、第7入力端子P10を介してマイコン36と接続されており、そのオン/オフ状態によって、リアゲート103の閉動作中に、リアゲート103と車体との間に挟み込みが発生したか否かをマイコン36に認識させるためのセンサスイッチである。
【0038】
第1出力端子P11はリアゲートモータ11の正極端子と接続され、第2出力端子P12はリアゲートモータ11の負極端子と接続されている。リアゲートモータ駆動回路32は、マイコン36から供給されるPWM(Pulse Width Modulation)信号によって個別にオン/オフ制御される2つのスイッチ素子32a、32bを備えている。
【0039】
スイッチ素子32aは、オン状態時にVPBライン(12Vライン)と第1出力端子P11(つまりリアゲートモータ11の正極端子)とを接続し、オフ状態時にGNDラインと第1出力端子P11とを接続する。スイッチ素子32bは、オン状態時にVPBラインと第2出力端子P12(つまりリアゲートモータ11の負極端子)とを接続し、オフ状態時にGNDラインと第2出力端子P12とを接続する。
【0040】
つまり、スイッチ素子32bをオフ状態に維持したままで、スイッチ素子32aのオン/オフ状態をPWM制御すると、リアゲートモータ11の正極端子から負極端子へデューティ比に応じた駆動電流が流れて、リアゲートモータ11は正転動作する。一方、スイッチ素子32aをオフ状態に維持したままで、スイッチ素子32bのオン/オフ状態をPWM制御すると、リアゲートモータ11の負極端子から正極端子へデューティ比に応じた駆動電流が流れて、リアゲートモータ11は逆転動作する。
【0041】
第3出力端子P13はクロージャーモータ21の正極端子と接続され、第4出力端子P14はクロージャーモータ21の負極端子と接続されている。クロージャーモータ駆動回路33は、マイコン36から供給されるスイッチ制御信号によって個別にオン/オフ制御される2つのスイッチ素子33a、33bを備えている。
【0042】
スイッチ素子33aは、オン状態時にVPBラインと第3出力端子P13(つまりクロージャーモータ21の正極端子)とを接続し、オフ状態時にGNDラインと第3出力端子P13とを接続する。スイッチ素子33bは、オン状態時にVPBラインと第4出力端子P14(つまりクロージャーモータ21の負極端子)とを接続し、オフ状態時にGNDラインと第4出力端子P14とを接続する。
【0043】
つまり、スイッチ素子33aをオン状態に及びスイッチ素子33bをオフ状態に制御すると、クロージャーモータ21の正極端子から負極端子へバッテリ電源電圧VPBに応じた駆動電流が流れてクロージャーモータ21は正転動作する。一方、スイッチ素子33aをオフ状態に及びスイッチ素子33bをオン状態に制御すると、クロージャーモータ21の負極端子から正極端子へバッテリ電源電圧VPBに応じた駆動電流が流れてクロージャーモータ21は逆転動作する。
【0044】
第5出力端子P15は、リアゲート駆動ユニット10に内蔵されたクラッチ機構17と接続されている。クラッチ駆動回路34は、マイコン36から供給されるクラッチ制御信号によってオン/オフ制御されるスイッチ素子34aを備えている。このスイッチ素子34aは、オン状態時にVPBラインと第5出力端子P15(つまりクラッチ機構17)とを接続し、オフ状態時にGNDラインと第5出力端子P15とを接続する。
つまり、スイッチ素子34aのオン状態時に、クラッチ機構17に駆動電流が供給されて、リアゲートモータ11の回転軸と後段の各種ギア群16とが機械的に接続される。
【0045】
通信線接続端子P16は、通信バス50を介して他の車載ユニット(図示省略)と接続されている。車両通信レシーバ35は、通信線接続端子P16とマイコン36との間に設けられており、LINプロトコル或いはCANプロトコルに準拠した通信をマイコン36と他の車載ユニットとの間で行う通信インターフェースである。
【0046】
マイコン36(制御部)は、ROM及びRAM等のメモリ、CPUコア、CPUリセット回路、入出力インターフェースなどが一体的に組み込まれたマイクロコントローラであり、リアゲート103の自動開閉制御の中心を担うものである。
具体的には、このマイコン36は、メインスイッチ45、リアゲート開閉スイッチ46、リアゲート開放スイッチ47、リアゲート閉鎖スイッチ48、タッチセンサ49及びラッチ状態検出スイッチ23のオン/オフ状態と、角度センサ18の出力信号と、車両通信レシーバ35を介して他の車載ユニットから受信した車両情報とに基づいて、リアゲートモータ駆動回路32、クロージャーモータ駆動回路33及びクラッチ駆動回路34を制御する。なお、正確には、リアゲート103の自動開閉制御は、マイコン36に内蔵されたCPUが、ROMに記憶されている制御プログラムに従って実行するものである。
【0047】
以上が本実施形態におけるパワーリアゲートECU30の基本的な構成であるが、図2からわかるように、クロージャーモータ駆動回路33が故障して、スイッチ素子33aがオン状態に固着すると、クロージャーモータ21が常時給電状態になり、予期せぬタイミングでリアゲート103のラッチが解除されて半ドア状態となる可能性がある。以下では、図3及び図4を参照しながら、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための構成について説明する。なお、以下では3種類の構成について説明するが、これらのいずれを採用しても構わない。
【0048】
<クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための第1の構成>
図3は、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するためのパワーリアゲートECU30の第1の構成を示す図である。なお、以下では、図2と重複する構成要素に同一符号を付して説明を省略する。また、図3では、説明の便宜上、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための代表的な構成要素のみを示し、他の説明不要な構成要素については省略している。
【0049】
図3に示すように、パワーリアゲートECU30の第1の構成では、クロージャーモータ21に接続された第3出力端子P13(外部接続端子)と、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aとの間の電流経路に電流遮断スイッチ37が介挿されていると共に、マイコン36とは別に、ハードウェア処理によって、電流遮断スイッチ37を、一定条件下でリアゲート103の開放操作が為された場合にオフからオンに制御する制御論理回路38が設けられている。
【0050】
一方、マイコン36は、ソフトウェア処理によって、一定条件下でリアゲート103の開放操作が為された場合に、クロージャーモータ21が正転動作するよう、つまりリアゲート103がラッチ解除されるよう、クロージャーモータ駆動回路33(スイッチ素子33a、33b)を制御するものである。
【0051】
なお、制御論理回路38は、マイコン36と同様に、メインスイッチ45、リアゲート開閉スイッチ46、リアゲート開放スイッチ47及びラッチ状態検出スイッチ23と接続されていると共に、マイコン36からリモコンによるリアゲート103の開放操作が為されたことを示す信号が入力される。
【0052】
このような第1の構成におけるパワーリアゲートECU30のリアゲート開放時の動作は以下の通りである。マイコン36は、メインスイッチ45がオン状態(リアゲート103の自動開閉制御が許可されている状態)で、且つリアゲート103がフルラッチ状態(全閉状態)という条件下で、運転席のリアゲート開閉スイッチ46或いはリアゲート103のリアゲート開放スイッチ47がオン操作されるか、または他の車載ユニットからリモコンによるリアゲート103の開放操作が為されたことを示す情報を受信した場合に、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aをオンに、スイッチ素子33bをオフに制御する。
【0053】
一方、制御論理回路38は、メインスイッチ45がオン状態で、且つリアゲート103がフルラッチ状態という条件下で、運転席のリアゲート開閉スイッチ46或いはリアゲート103のリアゲート開放スイッチ47がオン操作されるか、またはマイコン36からリモコンによるリアゲート103の開放操作が為されたことを示す信号が入力された場合に、電流遮断スイッチ37をオフからオンに制御する。
これにより、クロージャーモータ21の正極端子から負極端子へバッテリ電源電圧VPBに応じた駆動電流が流れてクロージャーモータ21が正転動作し、リアゲート103はラッチ解除される。
【0054】
マイコン36は、ラッチ状態検出スイッチ23のオン/オフ状態を基に、ラッチ解除が完了したことを検知すると(ハーフラッチ状態を検知すると)、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aをオンからオフに制御する。一方、制御論理回路38も、ラッチ状態検出スイッチ23のオン/オフ状態を基に、ラッチ解除が完了したことを検知すると、電流遮断スイッチ37をオンからオフに制御する。なお、ラッチ状態検出スイッチ23からのラッチ解除信号をマイコン36が判断し、制御論理回路38に入力を与えて電流遮断スイッチ37をオフさせることも可能である。
これにより、クロージャーモータ21には駆動電流が流れなくなり、クロージャーモータ21は停止する。
【0055】
以降、マイコン36は、クラッチ駆動回路34のスイッチ素子34aをオン状態にすることでリアゲート駆動ユニット10のクラッチ機構17に駆動電流を供給し、リアゲートモータ11の回転軸と後段の各種ギア群16とを機械的に接続させる。そして、マイコン36は、リアゲートモータ駆動回路32のスイッチ素子32a、32bをPWM制御することでリアゲートモータ11を正転動作させて、リアゲート103を全開位置まで開放させる。なお、この時、マイコン36は、角度センサ18の出力信号を基にリアゲートモータ11の回転速度、つまりリアゲート103の移動速度を把握し、リアゲート103の移動速度が目標速度となるようにリアゲートモータ11をフィードバック制御する。
【0056】
このように、第1の構成では、リアゲート103の開放時において、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aと電流遮断スイッチ37とが、それぞれ独立しながらも同じ制御ロジックでオン/オフ制御される。従って、例えば、クロージャーモータ駆動回路33が故障して、スイッチ素子33aがオン状態に固着したとしても、ユーザによる開放操作が為されるまで電流遮断スイッチ37がオフ状態に維持されるため、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避することができる。一方、電流遮断スイッチ37が故障してオン状態に固着した場合でも、ユーザによる開放操作が為されるまでクロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aがオフ状態に維持されるため、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避することができる。
【0057】
以上のように、第1の構成におけるパワーリアゲートECU30によれば、クロージャーモータ駆動回路33或いは電流遮断スイッチ37が故障しても、クロージャーモータ21が常時給電状態となることを回避することができ、その結果、予期せぬタイミングでリアゲート103のラッチが解除されて半ドア状態となることを防ぐことができる。
【0058】
<クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための第2の構成>
図4(a)は、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するためのパワーリアゲートECU30の第2の構成を示す図である。なお、以下では、図2及び図3と重複する構成要素に同一符号を付して説明を省略する。また、図4(a)では、説明の便宜上、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための代表的な構成要素のみを示し、他の説明不要な構成要素については省略している。
【0059】
図4(a)に示すように、パワーリアゲートECU30の第2の構成では、クロージャーモータ21に接続された第3出力端子P13と、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aとの間の電流経路に電流遮断スイッチ37が介挿されている。
【0060】
一方、マイコン36は、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aと電流遮断スイッチ37との間の電流経路の電圧値V1を監視する機能を有しており、一定条件下でリアゲート103の開放操作が為された場合で、且つ上記電圧値V1がクロージャーモータ21の駆動電圧(つまりバッテリ電源電圧VPB)と異なる場合、クロージャーモータ21が正転動作するようクロージャーモータ駆動回路33を制御すると共に、電流遮断スイッチ37をオフからオンに制御する。
【0061】
このような第2の構成におけるパワーリアゲートECU30のリアゲート開放時の動作は以下の通りである。マイコン36は、メインスイッチ45がオン状態で、且つリアゲート103がフルラッチ状態という条件下で、運転席のリアゲート開閉スイッチ46或いはリアゲート103のリアゲート開放スイッチ47がオン操作されるか、または他の車載ユニットからリモコンによるリアゲート103の開放操作が為されたことを示す情報を受信した場合で、且つ上記電圧値V1がバッテリ電源電圧VPBと異なる場合に、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aをオンに、スイッチ素子33bをオフに制御すると共に、電流遮断スイッチ37をオフからオンに制御する。
これにより、クロージャーモータ21の正極端子から負極端子へバッテリ電源電圧VPBに応じた駆動電流が流れてクロージャーモータ21が正転動作し、リアゲート103はラッチ解除される。
【0062】
マイコン36は、ラッチ状態検出スイッチ23のオン/オフ状態を基に、ラッチ解除が完了したことを検知すると(ハーフラッチ状態を検知すると)、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aをオンからオフに制御すると共に、電流遮断スイッチ37をオンからオフに制御する。
これにより、クロージャーモータ21には駆動電流が流れなくなり、クロージャーモータ21は停止する。以降の制御は第1の構成と同様なので説明を省略する。
【0063】
このように、第2の構成では、電圧値V1がバッテリ電源電圧VPBと異なる場合、つまりクロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aが正常な場合に、クロージャーモータ21が正転動作してリアゲート103はラッチ解除される。また、クロージャーモータ駆動回路33が故障して、スイッチ素子33aがオン状態に固着したとしても、ユーザによる開放操作が為されるまで電流遮断スイッチ37がオフ状態に維持されるため、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避することができる。
【0064】
<クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための第3の構成>
図4(b)は、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するためのパワーリアゲートECU30の第3の構成を示す図である。なお、以下では、図4(a)と重複する構成要素に同一符号を付して説明を省略する。また、図4(b)では、説明の便宜上、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避するための代表的な構成要素のみを示し、他の説明不要な構成要素については省略している。
【0065】
図4(b)に示すように、パワーリアゲートECU30の第3の構成において第2の構成と異なる点は、マイコン36が第3出力端子P13の電圧値V2を監視する機能を有し、一定条件下でリアゲート103の開放操作が為された場合に、クロージャーモータ21が正転動作するようクロージャーモータ駆動回路33を制御すると共に、電流遮断スイッチ37をオフからオンに制御し、ラッチ解除後に電流遮断スイッチ37をオフに制御しても上記電圧値V2に変化が無い場合には、クロージャーモータ21が停止するようクロージャーモータ駆動回路33を制御する点である。
【0066】
このような第3の構成におけるパワーリアゲートECU30のリアゲート開放時の動作は以下の通りである。マイコン36は、メインスイッチ45がオン状態で、且つリアゲート103がフルラッチ状態という条件下で、運転席のリアゲート開閉スイッチ46或いはリアゲート103のリアゲート開放スイッチ47がオン操作されるか、または他の車載ユニットからリモコンによるリアゲート103の開放操作が為されたことを示す情報を受信した場合、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aをオンに、スイッチ素子33bをオフに制御すると共に、電流遮断スイッチ37をオフからオンに制御する。
これにより、クロージャーモータ21の正極端子から負極端子へバッテリ電源電圧VPBに応じた駆動電流が流れてクロージャーモータ21が正転動作し、リアゲート103はラッチ解除される。
【0067】
そして、マイコン36は、ラッチ状態検出スイッチ23のオン/オフ状態を基に、ラッチ解除が完了したことを検知すると、電流遮断スイッチ37をオフに制御して、上記電圧値V2に変化が無いか否かを監視する。ここで、マイコン36は、ラッチ解除後に電流遮断スイッチ37をオフに制御しても上記電圧値V2に変化が無い場合には、クロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aをオンからオフに制御する。
これにより、クロージャーモータ21には駆動電流が流れなくなり、クロージャーモータ21は停止する。以降の制御は第1の構成と同様なので説明を省略する。
クロージャーモータ駆動回路33の制御はスイッチ素子33aをオンからオフにすることでクロージャーモータ21に対し電流遮断することになるが、電流遮断スイッチ37及びスイッチ素子33aをオフにしても電圧値V2がVPB相当の電圧であった場合、スイッチ素子33bをオフすることでクロージャーモータ21への電流供給、具体的にはクロージャーモータ21の動作を停止させることも可能である。
【0068】
このように、第3の構成では、ラッチ解除後に電流遮断スイッチ37をオフに制御しても上記電圧値V2に変化が無い場合、つまり電流遮断スイッチ37が故障(オン状態に固着)している場合でも、ユーザによる開放操作が為されるまでクロージャーモータ駆動回路33のスイッチ素子33aがオフ状態に維持されるため、クロージャーモータ21の常時給電状態を回避することができる。
【0069】
また、第3の構成において、マイコン36がIGスイッチ43のオン/オフ状態を検出する機能を有することを利用して、ラッチ解除後に電流遮断スイッチ37をオフに制御しても電圧値V2に変化が無い場合で、且つIGスイッチ43のオフを検知した場合に、クロージャーモータ21が停止するようクロージャーモータ駆動回路33を制御しても良い。これにより、ユーザが危険を感じてIGスイッチ43のオフにするような場合でも、リアゲート103のラッチ解除を回避することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を変更しても良いことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、車両扉としてリアゲート103の自動開閉制御を行うパワーリアゲートECU30を例示したが、スライドドアなどの他の車両扉の自動開閉制御を行う車両扉開閉制御装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
30…パワーリアゲートECU(車両扉開閉制御装置)、10…リアゲート駆動ユニット、20…クロージャーユニット、21…クロージャーモータ、33…クロージャーモータ駆動回路、36…マイコン(制御部)、37…電流遮断スイッチ、38…制御論理回路、41…バッテリ、100…車両、103…リアゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両扉のラッチ解除に使用されるモータを駆動する駆動回路と、一定条件下で前記車両扉の開放操作が為された場合に前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御する制御部とを備える車両扉開閉制御装置であって、
前記モータに接続された外部接続端子と前記駆動回路との間の電流経路に電流遮断スイッチが介挿されていることを特徴とする車両扉開閉制御装置。
【請求項2】
前記制御部とは別に設けられ、前記電流遮断スイッチを、前記一定条件下で車両扉の開放操作が為された場合にオフからオンに制御する制御論理回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両扉開閉制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記一定条件下で車両扉の開放操作が為された場合で、且つ前記駆動回路と前記電流遮断スイッチとの間の電流経路の電圧値が前記モータの駆動電圧と異なる場合、前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御すると共に、前記電流遮断スイッチをオフからオンに制御することを特徴とする請求項1に記載の車両扉開閉制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記一定条件下で車両扉の開放操作が為された場合、前記モータの回転によってラッチ解除されるよう前記駆動回路を制御すると共に、前記電流遮断スイッチをオフからオンに制御し、ラッチ解除後に前記電流遮断スイッチをオフに制御しても前記外部接続端子の電圧値に変化が無い場合、前記モータが停止するよう前記駆動回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両扉開閉制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、ラッチ解除後に前記電流遮断スイッチをオフに制御しても前記外部接続端子の電圧値に変化が無い場合で、且つイグニションスイッチのオフを検知した場合に、前記モータが停止するよう前記駆動回路を制御することを特徴とする請求項4に記載の車両扉開閉制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207392(P2012−207392A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72059(P2011−72059)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】