説明

車両拘束ベッド

本発明は、車両、特に、使用可能な滑走路上で止まることができない旅客機を減速させるための拘束ベッドに関するものであって、システムは、0.25cmから15cmにわたる粒子径及び約70から98%の名目空隙率を有する発泡ガラス骨材(1)で満たされたベッドを含む車両拘束領域(A)と、発泡ガラス骨材のベッドの上面を覆う上部カバー(4)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を減速させる、即ち、有効滑走路上で止まることができない航空機等を減速させる拘束ベッドに関する。
【0002】
背景
航空業界における安全性に関する課題の1つは、離陸又は着陸中の航空機が時々有効滑走路を越えて、滑走路先の領域まで行き着くことである。かかる事故のいくつかの例には、物質的損傷及び巻き込まれた人の犠牲/深刻な健康被害の両方に破滅的な結末を伴ったものがある。
【0003】
かかる事故に関する潜在的原因の範囲は、特定されている。例えば、後日明らかになる、離陸の中止を必要とする航空機の機械的故障、航空機ブレーキ(break)の故障、予想外の天候に関する出来事、パイロットエラー等である。オーバーランの原因は広範囲で多様であり、航空機に関するこれらの事態を完全に避けるための手段を導入できる見込みはない。
【0004】
従って、オーバーラン局面での重大な結末を軽減及び回避するために、滑走路を超過する航空機を安全な様式で捕える及び/又は減速させる手段を滑走路に設ける必要がある。滑走路の先に十分な使用可能空間を有する飛行場に関しては、単に滑走路を延長して航空機に十分な空間を与え、それらのブレーキの使用かエンジン出力の反転による停止を可能にすることが1つ明確な答えである。
【0005】
しかしながら、多くの飛行場には、滑走路を充分に延長する使用可能空間を有していない。そして、オーバーランは、航空機のブレーキ系の故障によって引き起こされる出来事でもある。従って、滑走路の末端をオーバーランしている航空機に外部減速力を発揮する1又は複数の手段を飛行場に設けることは有利であり、これにより航空機の機械的構造物(特に着陸装置)及び機内の人に対して許容できる減速率で航空機を停止せることができる。
【0006】
先行技術
航空機(又は、他の車両)を停止させるための公知の解決策の1つは、アレスター区域を設けることである。アレスター区域は、車両の車輪を乗せることが可能な固い物質の上に比較的柔らかい物質の浅いベッドでできている区域である。車両がアレスター区域に入ると、その車輪が柔らかい物質の中にいくぶん沈み込むことで抗力負荷が著しく増加する。従って、アレスター区域の柔らかい集合体が、車両の運動エネルギーを吸収して、それを安全に停止させる。アレスター区域は、事実上受動的であり可動部を有しないため、常に使用の準備が整っていることから飛行場での使用には魅力的である。
【0007】
アレスター区域の一例が開示されているUS3 066 896では、アレスターは、滑走路の末端に位置する長さ約300mの浅い液体充填槽からなり、丈夫であるが柔軟性のある上部カバーで覆われている。上部カバーを備える液体充填槽は、滑走路の末端に、上部カバー上を走行する航空機の車輪によって押し下げられる柔らかい区域を形成する。車輪が上部カバー上を転がるにつれて、下の液体を押しのける必要があるため、くぼんだ区域は、車輪の転がり抵抗を非常に大きくして、航空機に対して減速力を引き起こすアレスター区域として機能する。
【0008】
US3 967 704においては、車両走行路に隣接させたアレスターベッドに対する粉砕可能な物質の使用が開示されている。走行路から外れて走行する車両は、この粉砕可能な物質の層を有する区域に入る; 車両の車輪は、粉砕可能な物質に深く入りこむことで、著しい転がり抵抗を引き起こし車両を減速させる。粉砕可能な物質は、約100から350kPa(15から50psi)にわたる圧縮強度を有する硬化発泡体であり、指定又は0.7 - 0.9gでの航空機の減速度を提供するように計算される。尿素/ホルムアルデヒド樹脂は、適切な硬化性発泡体として言及されている。
【0009】
US5 193 764には、硬くて脆い耐火性の、パネル形成に関する発泡板でできているアレスターベッドを開示している。発泡板は、好ましくは2.5から15.2cmの範囲の厚み及び137から552kPa(20から80psi)の範囲の圧縮強度を有するフェノール発泡体から作られる。
【0010】
米国の連邦航空局は、種々の物質を使用して航空機用アレスター区域を作製して調査してきた。ロバート・クック外による研究"Soft Ground Aircraft Arrestor Systems:Final Report", Washington DC, Federal Aviation Administration, 1987, FAA/PM-87-27及びEvaluation of a Foam Arrestor Bed for Aircraft Safety Overrun Areas", Dayton:University of Dayton Research Institute, 1988, UDR-TR-88-07では、気候が変動する条件で信頼性が高く一貫した機械的挙動を有する柔らかい物質である必要性が述べられている。柔らかい物質(例:粘土又は砂)の機械的挙動は含水率に依存する、即ち、乾燥した粘土は、硬くてほとんど抗力効果を提供しない一方で、湿った粘土は非常に柔らかいので車輪は低く沈み、着陸装置を潰す抗力を受ける可能性がある。浅い水槽は、速度90km/h(50ノット)又はそれ未満の航空機用アレスターベッドとして満足に機能することが明らかではあるが、鳥を引きつけるし、寒冷気候では凍結する問題も抱えている。アレスターベッドの他の潜在的問題は、航空機がアレスターベッド上を高速で通過する際に、航空機の車輪が粒状材料を爆発的に増やし航空機エンジンに取り込まれる可能性があることである。クック外による報告は、様々な発泡アレスター物質の適合性を調査しており、この点に関しては、セメント質発泡体がポリマー発泡体に勝る効果があることも発見した。
【0011】
ホワイト及びアグラワール("Soft Ground Arresting Systems for Airports: Final Report", Washington DC, Federal Aviation Administration, 1993, CT-93-80)によってなされた更なる調査において、粉砕可能な物質(例:フェノール発泡体及び多孔質セメント)には、着陸装置に与える予測可能な抗力負荷及び広い温度範囲に対して一定の機械的特性を提供する点に長所があることを明らかにした。多孔質セメントは、圧壊後のその反発がほぼゼロであり、化学的に不活性な組成物である点に起因する優れた物質となった。
【0012】
US6 726 400には、圧縮多孔質コンクリートである第1及び第2横列のブロックを備える、縦横厚さをもつ多孔質コンクリートのアレスターベッドが開示され、各ブロックは、深さ方向に対する圧縮強度の選択勾配を表す圧縮勾配強度(CGS)特性を、ブロック厚の少なくとも10から60パーセントの侵入度に対して有するものであり、圧縮勾配強度特性は、上記ベッドに入る車両に漸進的な減速を与えるように選択されている。コンクリートブロックは、192から352kg/m3の範囲の乾燥密度を有するように記載されている。第一横列のブロックは、60/80CGS特性(482,6MPa(70psi)と名目上同等)を、第二横列のブロックは、80/100CGS特性(620,5MPa(90psi)と名目上同等)を有する。これは、上記各ブロックの上記侵入度に対する平均値である。
【0013】
ステリーによる研究"Report of Concrete Testing, Project: Engineered Material Arresting System Minneapolis/St. Paul Airport", American Engineering Testing Inc, 2007, 05-03306から、1999年設置のコンクリートを基礎とするアレスターの性能がその後に劣化していることが明らかとなった。
【0014】
本発明の目的
本発明の主な目的は、安全に車両を減速させることが可能なアレスターシステムを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、多様な航空機に対して優れた性能を発揮するアレスターシステムを提供することである。
【0016】
本発明の説明
本発明は、粗く破砕された、ガラスでできている発泡骨材が投資費用を抑え維持管理費用を抑えた車両拘束用アレスターベッドの形成に使用可能であるという認識と、発泡ガラス骨材が圧縮率を増加させるとエネルギー吸収を指数関数的に増加させることを示す発見に基づいている。後者の発見は、以下の点で有利である。アレスターベッド中の物質の圧縮率は、拘束する車両の車輪の浸入度との関数であり、車輪浸入度が増加するにつれてエネルギー吸収が指数関数的に増加することが、発泡ガラス骨材を、重量バリエーションが多い車両に対する使用を意図する多目的アレスターベッドとしての使用に非常に適したものにしている。
【0017】
本明細書で用いられる用語「ガラス」とは、非晶質固体を意味し、通常は、ソーダ石灰ガラス又はソーダガラスと称されるが、他のタイプのガラス(例:ホウケイ酸ガラス)を含めてもよい。ソーダ石灰ガラスは、炭酸ナトリウム(ソーダ)、石灰岩、ドロマイト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び少量の添加物を1又は複数含む原料を溶融することによって、典型的には作られる。ホウケイ酸ガラスは、酸化ホウ素、二酸化ケイ素及び少量の添加物を溶融することによって作られる。本明細書中で使用される用語「発泡ガラス骨材」とは、熔融して、通気して、凝固して、そして、0.25cmから15cm(〜0.1から5.9インチ)にわたるサイズの粒子へと破砕したガラスを意味する。通気したガラスは、名目空隙率が約70から98%であってもよい。
【0018】
従って、第一の態様として、本発明は、車両拘束システムに関するものであって、
0.25cmから15cmにわたる粒子径及び約70から98%の名目空隙率を有する発泡ガラス骨材で満たされたベッドを含む車両拘束領域と、
上記発泡ガラス骨材の上記ベッドの上面を覆う上部カバーと、を備える車両拘束システムである。
【0019】
第二の態様において、本発明は、車両拘束方法に関するものであって、
車両を拘束させようとする地面にベッドを作成することと、
ベッドに0.25cmから15cmにわたる粒子径と、約70から98%の名目空隙率を有する発泡ガラス骨材を充填することと、
上記ベッドの上面を上部カバーで覆うことと、を含む、車両を拘束する方法である。
【0020】
第三の態様において、本発明は、車両拘束システムにおける発泡ガラス骨材の使用に関する。
【0021】
第四の態様において、本発明は、車両拘束システムにおける、粒子径が0.25cmから15cm、そして名目空隙率が約70から98%の発泡ガラス骨材の使用に関する。
【0022】
本明細書中で使用される用語「車両」とは、車輪及び/又はベルトを用いて地上を移動する任意の自走式機械的構造物を意味する。上記用語には、地面/空港を移動する航空機も含まれる。それには、非自走車両(例えば自転車)をも含ませてもよい。
【0023】
本明細書で用いられる用語「上部カバー」とは、骨材の集合体に関する任意のカバーを意味するものであり、浮遊粒子、植物の成長、又は他の環境影響であって発泡ガラス骨材の集合体の性能を妨げるものにより汚染されるか若しくは塞がれることから上記骨材の集合体を防ぐカバーである。上部カバーは、骨材の集合体のバルク部をきれいに保つために機械的に十分強くなければならないが、拘束される車両の車輪が、カバーを通って侵入し骨材の集合体に入ることを妨げるほど強くてはならない。上部カバーに適する例は、高分子防水シート、プラスチック箔、人工芝等である。しかしながら、骨材の集合体を保護することは可能であるが、車両の車輪を乗せることはできない任意のカバーを採用してもよい。上部カバーに、美的に訴求する物を施工することによる装飾的な機能か、環境と調和するように見える装飾的な機能を都合よく与えてもよい。芝生の草の外観に擬態している人工芝は、美的上部カバーの一例としてもよい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「名目空隙率」には、発泡ガラスの微細構造孔及び骨材小片間の間隙から生じる空隙率が包含されるため、全体の名目空隙率は、これら2つの割合をまとめた正味の効果として理解すべきである。従って、名目空隙率は、発泡ガラス骨材全体の密度に対応する。即ち、名目空隙率が0のとき約2500kg/m3の密度を有するケイ酸塩ガラスを使用する場合、98%の名目空隙率は、従って1m3の発泡ガラス骨材は重量約50kgであることを意味する一方で、70%の名目空隙率は、1m3あたり約750kgの重量に対応する。
【0025】
本明細書で用いられる用語「ベッド」は、地面に形成される陥没/くぼみの任意の型を包含する総称として理解される。陥没/くぼみは、単に塊/土構造物を取り除くことによって形成されるものであり、そして、陥没/くぼみに発泡ガラス骨材を充填して、上面を周囲の地表面に合わせた上記骨材のベッドを形成してもよい。あるいは、より強い機械的強度が必要な場合、発泡ガラス骨材のベッドは、ベッドの外周周辺でビーム又は機械的構造物の他の型(即ち、壁)を用いて適切に保つことも可能である。ベッドは、陥没/くぼみを形成せず、代わりに、発泡ガラス骨材のベッドを地面水平面より上側遠方へと突き出すようにして狭い陥没/くぼみを形成することによって地面に敷設してもよい。これらの場合、骨材の集合体は、ベッドの外周に沿うビーム又は機械的構造物の他の型の使用によって内包される必要がある。ビーム/機械構造物が地面レベルより上側遠方に突き出す場合、後者の実施形態は、車両が滑らかな様式で上記骨材のベッドに入る手段(例;即ち、ベッドへと導く傾斜路等)を必要とするかもしれない。ベッドの底部は、即ち、陥没/くぼみの床を提供することで機械的にベッドの底部を補強することを必要に応じて行なってもよい。
【0026】
アレスターベッドの寸法及び位置は、使用目的、即ち、車両の質量、その速度及び発泡ガラス骨材物質に対する車両車輪の圧縮圧力に依存する。骨材物質は、アレスター通過時に車輪が骨材物質の中で遠方へと沈み込んで骨材の集合体の中で走行路/溝/轍を押し付けるような車輪誘導圧縮力に耐えられなくなるまで、車両の車輪に対して抗力を誘導する。したがって、アレスターの機能性は、発泡ガラス骨材の圧縮強度と関連するものであり、発泡ガラスの名目空隙率と、アレスター区域の長さと、発泡ガラス骨材で満たされたベッドの深さとの関数である。
【0027】
原則として、本発明は、公知である任意の名目空隙率を有する発泡ガラスによって機能可能であるが、実際には限度が存在し、拘束される車両の車輪によって誘導される接地圧によって決まる。車輪は、有効な抗力を受けるために骨材の集合体の遠方に沈めることができなければならない。そして、逆もまた同じで、車輪は、より深い所に侵入してはならない。これは、結果として高い抗力及び減速率になり、車両又は機内の人に対して有害となる可能性あるためである。従って実際には、骨材で使用されている発泡ガラスの名目空隙率は、70%の名目空隙率を有する比較的少ないガスの混入から98%の名目空隙率を有する多くガスが混入したガラスまで変化させてもよいと考えられる。これらの2つの値の間の任意の名目空隙率を採用することができ、これらの範囲内で種々の名目空隙率を有する発泡ガラス骨材の任意の混合物を採用することもできる。この範囲外の名目空隙率を有する発泡ガラスを使用することを想定することもできる。
【0028】
Matthew Barsottiら[1]によって実施された、航空機の拘束を目的とするアレスターシステム用発泡ガラス骨材の調査は、密度が154kg/m3(93.8%の名目空隙率に相当)であって、等級別、即ち、0.4 - 6.3cm(0.2 - 2.4インチ)にわたる骨材の粒子径を有し、そして、骨材の平均的なサイズの粒子が4.8cm(1.9インチ)である発泡ガラス骨材が多目的航空機拘束システム用によく適していることを発見した。骨材の粒子径分布は、4から8mmのサイズを有する粒子が0.88重量%、8から12.5mmのサイズが0.29重量%、12.5から14mmのサイズが1.03重量%、14から16mmのサイズが1.91重量%、16から20mmのサイズが4.21重量%、20から31.5mmのサイズが33.45重量%、31.5から40mmのサイズが35.30重量%、40から50mmのサイズが15.13重量%、50から63mmのサイズが5.74の重量%及び63mm超のサイズが0.31重量%である。これらの試験は、乗客席50のボンバルディアCRJ-100/200から乗客席500のボーイングB747-400に及ぶ航空機を拘束できる好適な多目的航空機アレスターを規定する目的で実行された。
【0029】
本明細書で用いられる等級、即ち0.4 - 6.3cmは、メッシュサイズ、即ち粒子を分類するために用いられる格子に関連する。そうすると、0.4 - 6.3cmの等級は、0.4cmのメッシュサイズを有する格子を通過できないくらい十分に大きいが、6.3cmのメッシュサイズを有する格子を通過するのに十分小さいサイズの発泡ガラス粒子を意味する。
【0030】
Barsottiet al.によって実行された試験から、発泡ガラス骨材物質の機械的エネルギー吸収が圧縮歪みに対して指数関数的に増加するという点で、発泡ガラス骨材が有利な特性を有することも示された。この発見が予想外であった理由は、骨材の発泡ガラスの各小片が粉砕可能なガラスで構成されていることから、発泡ブロック型(上記US6 726 400に開示)の現在の車両アレスターにおいて使用される従来型の粉砕可能な物質とは類似の特性を示すと機械的に予想されるためであった。理論に縛られるわけではないが、発泡ガラス骨材が連続体の機械的特性を示すのは、せん断力を受けると緩くかみ合った骨材の小片が多少自由に流れるためであると考えられる。骨材発泡体に関する圧縮プロセスは、微細構造の発泡間隙と骨材小片間の割れ目の間隙とを圧縮することからなる。発泡ガラス骨材に、圧縮歪みが増加するにつれて機械的エネルギー吸収が指数関数的に増加するということが見られるのは、このデュアルモード圧縮が理由だろう。この挙動は、発泡ガラス骨材の2つの粒度階級に対して実行された圧縮試験の負荷履歴を視覚的に示す図1から見られる。
【0031】
試験は、1つの粒度階級の発泡ガラス骨材を内径31.433cm(12.375インチ)の密閉円筒に充填することと、直径30.48cm(12.00インチ)の圧板を定率7.62cm/分(3インチ/分)で円筒に圧を加えることによって実行された。圧板は、骨材粒子の特有のサイズの少なくとも6倍の直径を有して、連続体の物質挙動を確保している。物質は、包装することなく緩く円筒に入れた。
【0032】
図1のグラフに示すように、物質を圧縮するのに必要な誘導応力(従って、物質によって吸収されるエネルギー)が物質の圧縮度について直線的に増大することによって指数関数的に増加するということが見られる。更に、各々試験に関する骨材小片のランダムな性質にもかかわらず、反復試験の負荷データは、著しく整合していたことが試験から明らかとなった。
【0033】
しかしながら、骨材の粒度階級サイズが負荷及びエネルギー吸収に相当な影響を及ぼすことも明らかとなった。従って、アレスターベッドでの使用について、慎重に発泡ガラス骨材の粒度階級を選択する必要がある。これらの試験から得られる他の重要な観察は、発泡ガラス骨材物質が深さを変えられる圧縮性物質として機能し、より深く車輪が侵入すると鉛直方向の負荷が増加することである。これは、より大きい表面積が骨材物質と接触するためだけでなく、圧縮が増加するにつれて物質が連続的に堅くなるためでもある。発泡ガラス骨材が非常に種々のサイズの航空機(最大離陸重量が約24メートルトンの小型機であるジェット機(乗客50)(例えばボンバルディアCRJ-100)から約590メートルトンの航空機(乗客500)(例えばエアバスA380)を扱うことを可能にする多目的アレスターシステムに適するようにしているのは、この特性である。
【0034】
発泡ガラス骨材拘束システムの他の使用は、乗用車用及び/又は公道を進行しているバス/トラック用安全区域である。拘束システムは、道路に対するグリップを失い、制御不能に道路から外れて進む車両を拘束するために、急な坂道等において急カーブの道に隣接して設置することができる。類似の用途は、周回車線を走行するときに、制御を失った自転車を拘束することであってもよい。適度な拘束効果を有する隣接拘束区域は、自転車に乗る人がコントロールを回復するのに要求される必要な制動を支援することができる。拘束システムの更なる用途は、車両攻撃を防止するための物理的な束縛としてである。車両で行われる攻撃に対して防護する必要がある任意の地区又は建築物は、それらの周辺にアレスター区域を形成して地区/建築物への激突を試みる任意の車両が拘束されることを確保することによって保護してもよく、これにより。拘束システムに関するこの用途は、爆発物及び自殺ドライバーを載せているトラック/車による攻撃リスクのある国にある、即ちUN基地に利益があるだろう。拘束システムは、地区に入る車両を物理的に抑制する必要がある軍事施設において使用してもよい。これらの用途については、高い名目空隙率、したがって低い圧縮強度を有する発泡ガラス骨材を使用して、アレスター領域に入ってくる車両が確実に動けなくなることを確保することが想定される。
【0035】
言及の通り、本発明の機能は、発泡ガラスの名目空隙率及び粒子の粒度階級に依存している。即ち、発泡ガラス骨材の破砕強度を、拘束される車両の車輪の接地圧に対応して調整すると本発明の効果は得られる。試験は、粒度階級0.4から6.3cm、平均粒子径4.8cm及び名目空隙率86%を有する発泡ガラス粒子で実行した。そして、これらの試験に基づく算出から拘束ベッドの寸法が長さ200m、深さ90cmの場合に、この骨材が航空機用多目的アレスターとしての用途に適していることが示される。また別の用途では、許容された寸法及び/又は拘束される他の車両に関する種々の抑制を考慮するために、他の粒度階級及び/又は名目空隙率の採用を必要としてもよい。これらの粒度階級及び/又は名目空隙率は、当業者によって、通常の試行錯誤の調査を実行することにより見つけられるだろう。
【0036】
広範囲にわたる拘束システムの潜在的用途には、広範囲にわたる名目空隙率と粒度階級を有する発泡ガラス骨材の使用を要求する。本発明は、新規な拘束物質に関する総合的な活用と理解すべきである。それは、本発明の核心である、環境影響が非常に低いことと、通気したガラスの費用が低いこととが組み合わさった、圧縮率によりエネルギー吸収が指数関数的に増加する発見の活用である。したがって、本発明には、車両用アレスターとしてのこの物質の任意の潜在的用途が含まれる。実際には、名目空隙率は、70から98%のどこかにあり、粒度階級は、0.25cmから15cmのどこかにある。これらの範囲内の任意の名目空隙率及び粒度階級を採用することができる。即ち、発泡ガラス骨材は、0.25、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.5、4.0、4.5、及び5.0cmのうちの1つから始めて、5.5、6.0、6.5、7.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、及び15cmのうちの1つで終わるいずれかの範囲の粒子径を含む粒度階級を有することができる。好ましい範囲は、0.25から10cm; 0.5から8cm; 0.7から7cm;及び1から6cmからの粒度階級である。
【0037】
発泡ガラス骨材は、名目空隙率が相違する複数種の発泡ガラス粒子を使用することもできる。即ち、発泡ガラス粒子に対して1つの名目空隙率を有する骨材の集合体を有することに加え、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、及び94%のうちの1つから始まり、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、及び95%のうちの1つで終わる範囲の名目空隙率の混合物を有する骨材の集合体を代わりに採用することも想定される。好ましい範囲は、80から98%; 70から95%;及び90から94%からの名目空隙率である。
【0038】
発泡ガラス粒子は、閉気泡微小構造が吸水を制限するため、水は粒子の最外部の開気孔だけに侵入することができる。発泡ガラス骨材は、土木工学分野(例:道の基礎及びテラスの軽い充填構造、絶縁及び防霜)で使われている。これらの分野から、発泡ガラス骨材の機械的特性が温度及び湿度の周期的な変化に安定であることが示されている。しかしながら、発泡ガラス粒子を浸漬する貯留水が凍結融解を繰り返す気候においては問題になる可能性がある。その理由は、最外部の水で満たされた開気孔が霜浸食に直面する可能性があることである。これが骨材物質の粒度階級を徐々に低下させる可能性がある。物質に実行した試験から、完全な浸水における50回の凍結融解を繰返した後、物質のエネルギー吸収能力が47%減少したことが明らかとなった。
【0039】
従って、骨材ベッドに排水手段を備えて骨材の集合体における貯水を予防することは有利となる可能性がある。排水手段は、ベッドを排水することが可能な任意の現在公知であるか将来の土木工学設計であってもよい。
【0040】
あるいは、アレスターベッドの発泡ガラス骨材の集合体は、ジオ-プラスチック及び/又はジオ-繊維素材により覆うことによって防水し、透水に対するシーリングを形成させてもよい。この技術は、埋め立てに関する当業者にとっては周知である。
【0041】
アレスター槽の寸法は、本発明の重要な特徴ではなくて、サービスを受ける航空機又は他の車両のタイプによってアレスター基礎毎に設計される。アレスター槽に関する如何なる想定し得るサイズ及び設計も本発明の範囲内である。実際には、アレスター槽の寸法は、約10cmから200cmにわたる深さ及び1mから400mの長さである。槽の設計は、実際の施工に適する任意の幾何学的形態であってもよい。槽の設計の潜在的構成の例は、三角、長方形、円形、楕円形、多角形、台形、又はこれらの任意の組合せを含むが、これに限定されるものではない。
【0042】
アレスターベッドは、周囲の地形/地面に隣接する周辺部に過渡区域を都合よく備えてもよい。過渡区域の機能は、アレスターに入るときに、エッジからバルク部の方向へ走行する際、ベッドの深さが徐々に増加することによって、拘束される車両に抗力負荷を徐々に増加させることである。過渡区域は、ベッドに段階的に上昇するものを備えるかベッドに傾斜壁を備えることによって形成させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】[1]の図11-8の複製であり、粒度階級0.4-6.3cm、平均粒子径4.8cm及び93.8%の名目空隙率の発泡ガラス骨材に関して測定された圧縮応力及びエネルギー吸収を示す。
【図2】図2は、側面から見た本発明にかかる一例示の実施形態に関する模式図である。
【図3】図3は、側面から見た本発明にかかる他の例示の実施形態に関する模式図である。
【図4】図4は[1]の図11-22の複製であり、算出された航空機速度、減速及びノーズストラット着陸装置の力を示す。
【図5】図5は、本発明にかかる、一例示の実施形態に従う、発泡ガラス骨材の粒子径分布を示しているバー線図である。
【図6】図6は、3つの名目空隙率(図4で示す粒子径分布を有する各々)の骨材に対する圧縮試験のグラフ表示を示す。
【0044】
本発明にかかる例示の実施形態
本発明は、航空機拘束システムとして意図される2つの例示の実施形態を通じてより詳細に述べる。これらの実施形態は、いかなる種類の車両も拘束する発泡ガラス骨材を採用する一般的な創意に制限して考えるべきではない。
【0045】
第一の例示の実施形態
車両拘束システムに関する第一の例示の実施形態は、地面に作られたものであり、図2に側面から概略的に示されている。ベッドの長手方向鉛直断面図は、高さBと長さAの台形の形状が地面2の中へ置かれ、拘束区域の上面4が地面2の周囲に形成される平面と整列配置され且つ同じレベルであるように与えられている。垂直台形断面を有するベッドの設計を用いることで、ベッドの両端に滑らかな過渡区域3が設けられる。傾斜角は、典型的には20から30度の範囲であってもよい。ベッドの底部2にベッドの貯水を避けるための排水手段(図示せず)を設けてもよい。
【0046】
ベッドは、発泡ガラス骨材1で満たされている。本実施形態における発泡ガラス骨材の最大深さは、台形の高さBであり、抑制区域の長さは、台形上側の長さAである。骨材ベッドの上面は、人工芝のカバー層4で覆われている。拘束システムに入っている航空機の車輪5が概略的に示されている。車輪は、矢によって示される方向に走行して、上部カバー4を通じて侵入し、滑らかな過渡区域2上を通過してベッドのバルク部に入るにつれて段階的に発泡ガラス中に沈むだろう。
【0047】
発泡ガラス骨材は、名目空隙率が93.8%であり、骨材1の粒子は、0.4 - 6.3cmの集団で平均粒子径が4.8cmである。骨材1の粒子径分布は、4から8mmのサイズを有する粒子が0.88重量%、8から12.5mmのサイズが0.29重量%、12.5から14mmのサイズが1.03重量%、14から16mmのサイズが1.91重量%、16から20mmのサイズが4.21重量%、20から31.5mmのサイズが33.45重量%、31.5から40mmのサイズが35.30重量%、40から50mmのサイズが15.13重量%、50から63mmのサイズが5.74重量%及び63mm超のサイズが0.31重量%である。径分布は、図4に視覚的に示されている。ベッドの深さBは、91cmであり、拘束区域の長さAは、200mである。ベッドの水平断面(図示せず)は、長方形か三角形のいずれかである。長方形断面の場合には、ベッドの幅は、一定であり、アレスターが配置される滑走路と少なくとも同程度の広さでなければならないが、アレスターベッドに入るときに航空機がある程度コースを逸脱することを許容するために、都合よく広げてもよい。アレスターベッドへ入る際にコースを逸脱する航空機を捕える能力は、アレスターベッドを三角水平横断面に形成することによって高めることができる。
【0048】
発明者は、骨材1の粉砕抵抗の測定を、骨材で満たされたバレル(内径30.00cm)の中へ直径29.99cmの円形ピストンを押し付けることによって実行した。実験は、3つの異なる名目空隙率を有する以外は、骨材1と同じ粒度階級についてなされた。結果は、表1に与えられ、視覚的には図5に示されている。3つの骨材の全ては、上記所定の集団であり、それは図4に示されている。
【0049】
[1]によって実行される算出から、本発明にかかる例示の実施形態が130km/h(70ノット)の速度で侵入する航空機を拘束し、航空機がボンバルディアCRJ-200の場合は、110m(360フィート)、ボーイング737-800の場合は、95m(310フィート)、そしてボーイング747-400の場合は、180m(590フィート)で完全に停止させることが可能であると予測された。[1]の図11-22の複製は、算出した航空機速度、減速及びノーズストラット着陸装置の力であって、例示の実施形態に速度130km/hで侵入するボーイング737-800に対する発泡ガラス骨材により誘導されるものを示している。
【0050】
ボンバルディアCRJ-200及びボーイング747-400に関する[1]において提供される算出から、同様の結果が示され、例示の実施形態の発泡ガラス骨材が0.7 - 1.0gの減速率と90から200mの範囲の停止長での安全な様式で航空機を拘束する多目的航空機拘束システムを提供することが実証される。
【0051】
第二の例示の実施形態
第二の例示の実施形態は、第一の例示の実施形態に与えたのと同程度の名目空隙率及び粒子径分布を有する同じ発泡ガラス骨材でアレスターができており、ベッドの長さA及び深さBは、ほとんど同じである点で、第一の例示の実施形態と同じ原理の解決手法に沿ってなされている。例示の実施形態は、図3において側面から示されている。ベッドの長さは、図においては省かれている点に注意されたい。
【0052】
主な相違点は、第二の例示の実施形態における発泡ガラス骨材のベッド1が穴/陥没を形成することなく地面2に直接敷設されている点である(図3を参照)。この場合、発泡ガラスのベッドは、ベッドの周囲に沿う機械的構造物6の使用によって内包される必要がある。機械的構造物は、骨材ベッド1に出入りするための傾斜路としての機能に都合よく設計しなければならない。これは、機械的構造物6を三角形の断面により形成することによって得ることができる。その結果、ベッド1の方向に進む航空機は、傾斜路上を滑らかに走り、車輪5が発泡ガラス骨材中で停止するまで、ベッドにおける傾きのある傾斜内底部3に沿って転がりベッド中に沈み込むことでベッド1に入る。傾斜角は、第一の例示の実施形態で与えたものと同じにしてもよいが、他の傾斜角を採用することもできる。ベッドは、人工芝4の層によってカバーされる。
【0053】
【表1】

【0054】
参考文献
1. Matthew Barsotti et al., report published on 21 January 2010 with title "Developing Improved Civil Aircraft Arresting Systems", in the Airports Cooperative Research Program, administrated by the Transportation Research Board of the National Academies, USA.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.25cmから15cmにわたる粒子径及び約70から98%の名目空隙率を有する発泡ガラス骨材で満たされたベッドを含む車両拘束領域と、
前記発泡ガラス骨材の前記ベッドの上面を覆う上部カバーと、を備える車両拘束システム。
【請求項2】
前記発泡ガラス骨材は、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、及び94%のうちの1つから始まり、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、及び95%のうちの1つで終わる範囲の名目空隙率を有するソーダ石灰ガラス又はソーダ石灰ガラスでできている、請求項1に記載の車両拘束システム。
【請求項3】
前記名目空隙率は、以下の範囲: 80から90%; 83から88%;及び85から87%のうちの1つである、請求項2に記載の車両拘束システム。
【請求項4】
前記発泡ガラス骨材は、0.25、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.5、4.0、4.5、及び5.0cmのうちの1つから始まり、5.5、6.0、6.5、7.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、及び15cmのうちの1つで終わるいずれかの範囲の粒子径を含む粒度階級を有する、請求項2又は3に記載の車両拘束システム。
【請求項5】
前記発泡ガラス骨材は、以下の範囲、0.25から10cm; 0.5から8cm; 0.7から7cm;及び1から6cm、の1つの粒度階級を有する、請求項4に記載の車両拘束システム。
【請求項6】
前記発泡ガラス骨材は、名目空隙率が93.8%であり、前記骨材の粒子は、0.4 - 6.3cmの集団で4.8cmの平均粒子径を有し、前記ベッドの深さは、91cmであり、前記ベッドの長さは、200mである、請求項1に記載の車両拘束システム。
【請求項7】
前記発泡ガラス骨材の粒子径分布は、4から8mmのサイズを有する粒子が0.88重量%、8から12.5mmのサイズが0.29重量%、12.5から14mmのサイズが1.03重量%、14から16mmのサイズが1.91重量%、16から20mmのサイズが4.21重量%、20から31.5mmのサイズが33.45重量%、31.5から40mmのサイズが35.30重量%、40から50mmのサイズが15.13重量%、50から63mmのサイズが5.74重量%、そして63mm超のサイズが0.31重量%である、請求項6に記載の車両拘束システム。
【請求項8】
前記上部カバーは、高分子防水シート、プラスチック箔、及び人工芝のうちの1つからできている、請求項4に記載の車両拘束システム。
【請求項9】
車両を拘束させようとする地面にベッドを作成することと、
前記ベッドに0.25cmから15cmにわたる粒子径と、約70から98%の名目空隙率を有する発泡ガラス骨材を充填することと、
前記ベッドの上面を上部カバーで覆うことと、を含む、車両を拘束する方法。
【請求項10】
拘束される前記車両は、航空機であり、
深さ91cm及び長さ200mのベッドを滑走路の末端に形成することと、
名目空隙率が93.8%であり、前記骨材の粒子は、0,4 - 6.3cmの集団で4.8cmの平均粒子径を有する発泡ガラス骨材を使用することと、
上部カバーとして人工芝で前記発泡ガラス骨材を覆うことと、を含む、請求項9に記載の車両を拘束する方法。
【請求項11】
車両拘束システムにおける発泡ガラス骨材の使用。
【請求項12】
車両拘束システムにおける請求項1から7のいずれかによる発泡ガラス骨材の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517171(P2013−517171A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548910(P2012−548910)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/NO2011/000015
【国際公開番号】WO2011/087375
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512182359)
【Fターム(参考)】