説明

車両用の空調エアー吹出構造

【課題】ステアリングメンバの車幅方向中央部に対する補強対策が不要な車両用の空調エアー吹出構造を提供する。
【解決手段】空調エアーをセンタベント開口13から出す場合は、シャットドア12を閉めて、センタベントドア14を開ける。すると、空調エアーはセンタベント開口13から図示せぬインストルメントパネルの吹出口を介して車室内へ直接吹出される。センタベント開口13をステアリングメンバ1でなく、空調ユニット6側に形成したため、ステアリングメンバ1の剛性が低下せず、ステアリングメンバ1に従来のような補強対策を施す必要がない。従って、ステアリングメンバ1において補強対策に要していた分の重量軽減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の空調エアー吹出構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルの内部には、車幅方向に沿った状態でステアリングメンバが配されている。このステアリングメンバは金属製の筒形状をしており、本来的には、車体構造材として、或いはステアリングコラム等の支持のために使用されるが、筒形状のために、空調ダクトとして兼用される場合もある。
【0003】
空調ダクトとして使用する場合には、ステアリングメンバにおける車幅方向中央下部に導入口が開口形成される。そして、ステアリングメンバの導入口には、下側から組み付けられた空調ユニットの排出口が接続される。従って、空調ユニットで処理された空調エアーをステアリングメンバ内に導入することができる。
【0004】
ステアリングメンバには車幅方向中央位置に一対のセンタベント開口が形成され、車幅方向両端位置にサイドベント開口がそれぞれ形成されている。そして、それらのベント開口からインストルメントパネルの吹出口を介して車室内へ空調エアーを吹き出すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−172923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ステアリングメンバの車幅方向中央部に、空調ユニットと接続するための導入口とは別に、一対のセンタベント開口も形成されていたため、ステアリングメンバの車幅方向中央部における断面二次モーメントが低下する。それを補うために、従来はステアリングメンバの車幅方向中央部に、肉厚を上げたり或いはリブを立てたりする補強対策が必要となり、その分、ステアリングメンバの重量増加を招いていた。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ステアリングメンバの車幅方向中央部に対する補強対策が不要な車両用の空調エアー吹出構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車幅方向に沿って配された筒状のステアリングメンバにおける略車幅方向中央位置の下部に導入口を形成し、該ステアリングメンバの略車幅方向中央位置に空調ユニットを下側から組み付けて、該空調ユニットの排出口とステアリングメンバの導入口とを接続することにより、空調ユニットからの空調エアーをステアリングメンバ内に導入可能とし、ステアリングメンバの車幅方向両端部にサイドベント開口を形成して、ステアリングメンバ内に導入された空調エアーを吹き出し可能とし、且つ空調ユニットにセンタベント開口を形成して、該センタベント開口から空調エアーを吹き出し可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、センタベント開口をステアリングメンバでなく、ステアリングメンバの略車幅方向中央に組み付けられる空調ユニット側に形成したため、ステアリングメンバの剛性が低下せず、補強対策が不要となる。従って、ステアリングメンバにおいて補強対策に要していた分の重量軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、ステアリングメンバの車幅方向中央部に対する補強対策が不要な車両用の空調エアー吹出構造を提供するという目的を、車幅方向に沿って配された筒状のステアリングメンバにおける略車幅方向中央位置の下部に導入口を形成し、該ステアリングメンバの略車幅方向中央位置に空調ユニットを下側から組み付けて、該空調ユニットの排出口とステアリングメンバの導入口とを接続することにより、空調ユニットからの空調エアーをステアリングメンバ内に導入可能とし、ステアリングメンバの車幅方向両端部にサイドベント開口を形成して、ステアリングメンバ内に導入された空調エアーを吹き出し可能とし、且つ空調ユニットにセンタベント開口を形成して、該センタベント開口から空調エアーを吹き出し可能としたことで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
図1及び図2は、本発明の一実施例を示す図である。車室内の前方に設置されているインストルメントパネル(図示せず)の内部には、車幅方向に沿ってステアリングメンバ1が架設されている。このステアリングメンバ1はマグネシウム又はアルミニウム軽合金(強化繊維含有樹脂でも可)で形成されている。従って、必要な強度を確保しながら、軽量化を図ることができる。
【0011】
ステアリングメンバ1は、角部が丸い四角筒形状で、内部及び外部には断熱材2が形成され、内部には円形の通路3が形成されている。ステアリングメンバ1の車幅方向中央下部には導入口4が開口形成されている。また、ステアリングメンバ1の車幅方向両端部には、それぞれ後向きのサイドベント開口5が形成されている。ステアリングメンバ1の車幅方向両端末は塞がれた状態で車体サイド部に結合されている。
【0012】
ステアリングメンバ1の車幅方向中央部には空調ユニット6が下側から組み付けられている。空調ユニット6は、ユニットケース7内に、送風機8、冷却用熱交換器9、加熱用熱交換器10を収納したコンパクト構造になっている。空調ユニット6は上部に排出口11を有し、この排出口11がステアリングメンバ1の導入口4と接続される。排出口11には開閉自在なシャットドア12が設けられている。
【0013】
また、空調ユニット6の上部後方にはセンタベント開口13が形成され、センタベント開口13には開閉自在なセンタベントドア14が設けられている。冷却用熱交換器9と加熱用熱交換器10の間にはフルクール開口15が形成され、フルクール開口15には開閉自在なフルクールドア16が設けられている。また、冷却用熱交換器9の上部には図示せぬフロントデフへ通じるフロントデフ開口17が形成され、フロントデフ開口17には開閉自在なフロントデフドア18が設けられている。
【0014】
送風機8からの送風は、基本的に冷却用熱交換器9と加熱用熱交換器10の両方を通過する。そして、加熱用熱交換器10の後側から上部へ回り込んで、センタベント開口13、排出口11、フロントデフ開口17へ導かれる。
【0015】
冷房の場合は、加熱用熱交換器10に温水を流さない。暖房の場合は、冷却用熱交換器9に冷媒を流さない。温度調整する場合は、冷却用熱交換器9に冷媒を流し、加熱用熱交換器10に温水を流すが、温水の温度を調整することにより、そこを通過する送風の温度を調整する。特に急速冷房を行う場合は、フルクールドア16を開けて、冷却用熱交換器9を通過した冷風の一部を直接導く。
【0016】
空調処理された空調エアーをサイドベント開口5から出す場合は、シャットドア12を開けて、排出口11から導入口4を経てステアリングメンバ1内に導入する。そして、ステアリングメンバ1の車幅方向両端のサイドベント開口5から図示せぬインストルメントパネルの吹出口を介して車室内へ空調エアーを吹出す。
【0017】
空調エアーをセンタベント開口13から出す場合は、シャットドア12を閉めて、センタベントドア14を開ける。すると、空調エアーはセンタベント開口13から図示せぬインストルメントパネルの吹出口を介して車室内へ直接吹出される。
【0018】
この実施例によれば、以上説明したように、センタベント開口13をステアリングメンバ1でなく、空調ユニット6側に形成したため、ステアリングメンバ1の剛性が低下せず、ステアリングメンバ1に従来のような補強対策を施す必要がない。従って、ステアリングメンバ1において補強対策に要していた分の重量軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上の実施例では、略垂直に立てた冷却用熱交換器9を例にしたが、V型、ハ字型、コ字型等の多面体構造にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングメンバ及び空調ユニットを示す斜視図。
【図2】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 ステアリングメンバ
4 導入口
5 サイドベント開口
6 空調ユニット
11 排出口
13 センタベント開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に沿って配された筒状のステアリングメンバ(1)における略車幅方向中央位置の下部に導入口(4)を形成し、該ステアリングメンバ(1)の略車幅方向中央位置に空調ユニット(6)を下側から組み付けて、該空調ユニット(6)の排出口(11)とステアリングメンバ(1)の導入口(4)とを接続することにより、空調ユニット(6)からの空調エアーをステアリングメンバ(1)内に導入可能とし、
ステアリングメンバ(1)の車幅方向両端部にサイドベント開口(5)を形成して、ステアリングメンバ(1)内に導入された空調エアーを吹き出し可能とし、且つ空調ユニット(6)にセンタベント開口(13)を形成して、該センタベント開口(13)から空調エアーを吹き出し可能としたことを特徴とする車両用の空調エアー吹出構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−210466(P2007−210466A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32914(P2006−32914)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】