説明

車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両

【課題】均等化回路を簡単な回路構成としながら電池の電圧を高い精度で検出する。
【解決手段】車両用の電源装置は、複数の電池2を直列に接続してなる走行用バッテリ1と、走行用バッテリ1の各電池2の電圧を検出する電圧検出回路3と、走行用バッテリ1の電池2を放電して各電池2を均等化させる均等化回路4とを備える。均等化回路4は、放電スイッチ22と放電抵抗23とを直列に接続している放電回路21を備えると共に、この放電回路21を電圧検出ライン9を介して電池2に接続している。電圧検出回路3は、放電スイッチ22をオンに切り換えて、放電回路21を電池2に接続する状態における電圧検出ライン9の電圧降下による補正電圧を検出する補正回路5を備えている。電源装置は、放電スイッチ22のオン状態において、電圧検出回路3が、補正回路5で検出する補正電圧でもって、検出される電池2の検出電圧を補正して電池電圧を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、出力を大きくするために、多数の電池を直列に接続して電圧を高くしている。この電源装置は、直列に接続している電池を同じ充電電流で充電し、また同じ電流で放電する。したがって、全ての電池が全く同じ特性であれば、電池電圧や残容量にアンバランスは発生しない。しかしながら、現実には、全く同じ特性の電池は製造できない。電池のアンバランスは、充放電を繰り返すときに、電圧や残容量のアンバランスとなる。さらに、電池電圧のアンバランスは、特定の電池を過充電し、あるいは過放電させる原因となる。この弊害を防止するために、各々の電池の電圧を検出してアンバランスを解消する車両用の電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−300701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される車両用の電源装置は、走行用バッテリを構成する各々の電池と並列に放電回路を接続している。放電回路は、電圧の高くなった電池を放電して電圧を低下させて、電池のアンバランスを解消し、電池特性の均等化を行っている。
【0005】
車両用の電源装置は、車両が停止している状態において、均等化回路でもって電圧の高い電池を放電して各々の電池を均等化している。この電源装置は、車両の停止状態のみで電圧の高い電池を放電して均等化するので、イグニッションスイッチをオンとして、車両を走行させる状態では電池を均等化しない。この電源装置は、電池を均等化する時間に制約を受けるので、速やかに電池を均等化するために、放電電流を大きくする必要がある。放電電流が大きいと、放電抵抗のジュール熱による発熱が大きくなる。ジュール熱による発熱が、放電電流の自乗に比例して大きくなるからである。車両用の電源装置は、出力電圧を高くするために、多量の電池を直列に接続して、各々の電池を均等化するので、均等化する電池の個数が相当に多く、放電抵抗の発熱が大きくなると、トータルの発熱量が極めて大きくなる。この弊害は、放電抵抗の電気抵抗を大きくして、放電電流を小さくして防止できる。ただ、放電電流を小さくすると、電池の均等化に時間がかかる欠点がある。
【0006】
車両用の電源装置は、車両の停止状態のみでなく、車両の走行状態においても、電池を均等化することで、電池を均等化する時間を長くできる。このように、車両の走行状態で電池を均等化する電源装置は、放電抵抗による放電電流を小さくしながら、各々の電池を均等化できる。
【0007】
さらに、車両用の電源装置は、イグニッションスイッチをオンに切り換えて車両を走行させる状態において、各々の電池の電圧を電圧検出回路で検出している。電圧検出回路が、各々の電池の電圧を検出して、走行用バッテリを構成している各々の電池の状態を判定するためである。この電源装置は、電圧検出回路で各々の電池の電圧を検出して、走行用バッテリの充放電をコントロールして、全ての電池の過放電や過充電を防止できる。電圧検出回路は、各々の電池の電圧を検出するために、入力側を電圧検出ラインを介して電池に接続している。電圧検出ラインは、全ての電池の正負の端子を電圧検出回路に接続する。この電圧検出ラインには、電流容量の小さい、すなわち相当に細いリード線や回路基板が使用される。電圧検出回路の入力インピーダンスが極めて高いからである。入力インピーダンスの高い電圧検出回路は、電池に接続されて電圧検出ラインの電流を極めて小さくできる。このため、電圧検出ラインの電圧降下を無視して、電池の電圧を正確に検出できる。電圧検出ラインの電圧降下が、電圧検出ラインの電気抵抗と電流の積に比例するからである。
【0008】
ところで、均等化回路は、放電スイッチと放電抵抗との放電回路を備えているが、均等化回路も各々の電池を放電して均等化するので、各々の電池に接続している電圧検出ラインに放電回路を接続することで、各々の電池を放電して均等化できる。この電源装置は、電圧検出回路を各々の電池に接続する電圧検出ラインを、均等化回路を各々の電池に接続する接続ラインに併用できる。このため、電圧検出回路と均等化回路とを専用の接続ラインで各々の電池に接続する必要がなく、回路構成を簡単にできる。
【0009】
とくに、車両用の電源装置は、多数の電池を直列に接続しているので、各々の電池の電圧を検出するために多数の電圧検出ラインを設ける必要がある。たとえば、100個の電池を直列に接続している電源装置は、各々の電池の電圧を検出するために、101の電圧検出ラインを介して各々の電池を電圧検出回路に接続する必要がある。また、各々の電池を均等化するには、101の接続ラインを介して均等化回路の放電回路を各々の電池に接続する必要がある。このため、電圧検出回路と均等化回路とを専用の接続ラインで電池に接続する電源装置は、202本もの接続ラインを介して電池に接続する必要がある。
【0010】
電圧検出回路の電圧検出ラインを均等化の接続ラインに併用する電源装置は、均等化回路を構成する放電回路を電池に接続するために専用の接続ラインを設ける必要がなく、回路構成を相当に簡素化できる。この電源装置は、接続ラインを簡素化できる特徴はあるが、車両を走行させる状態において、各々の電池電圧を正確に検出できなくなる欠点がある。それは、均等化回路が電圧検出ラインの電圧降下を変化させて、これが電池の電圧を検出する誤差の原因となるからである。
【0011】
均等化回路の放電スイッチのオン状態において、電圧検出ラインに流れる放電電流は、電圧検出ラインの電気抵抗と放電電流の積に相当する電圧降下を発生させる。電圧検出ラインの電圧降下は、電圧検出回路に検出される電池電圧の誤差となる。電池の電圧が、電圧降下によって低く検出されるからである。この電圧降下は常に一定でない。放電スイッチをオフとして、放電電流を流さない状態で、電圧降下が発生しないからである。したがって、放電スイッチのオン状態とオフ状態とで、電圧検出回路が検出する電池の電圧が変化する。
【0012】
車両用の電源装置は、高い精度で電池電圧を検出することで、各々の電池の状態をより正確に判定でき、これによって全ての電池の劣化を有効に防止しながら充放電できる。走行用バッテリをリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池とする電源装置は、電池電圧をより高い精度で検出することが要求される。
【0013】
本発明は、電池の電圧を検出する電圧検出ラインを均等化回路の接続ラインに併用することで、均等化回路を簡単な回路構成とし、さらに、車両の走行状態で電池の均等化を実現することで、均等化する放電電流を小さくして電池を均等化でき、しかも均等化しながら電池の電圧を極めて高い精度で検出できる車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0014】
本発明の車両用の電源装置は、車両を走行させるモータ11に電力を供給する複数の充電できる電池2を直列に接続してなる走行用バッテリ1と、この走行用バッテリ1を構成している電池2に電圧検出ライン9を介して接続されて、各々電池2の電圧を検出する電圧検出回路3と、走行用バッテリ1を構成する電池2を放電して各々の電池2を均等化させる均等化回路4とを備えている。均等化回路4は、放電スイッチ22と放電抵抗23とを直列に接続している放電回路21を備えると共に、この放電回路21を電圧検出ライン9を介して電池2に接続している。電圧検出回路3は、放電スイッチ22をオンに切り換えて、放電回路21を電池2に接続する状態における電圧検出ライン9の電圧降下による補正電圧を検出する補正回路5を備えている。電源装置は、放電スイッチ22のオン状態において、電圧検出回路3が、補正回路5で検出する補正電圧でもって、検出される電池2の検出電圧を補正して電池電圧を検出する。
【0015】
以上の電源装置は、電池の電圧を検出する電圧検出ラインを均等化回路の接続ラインに併用するので均等化回路を簡単な回路構成にできる。放電スイッチと放電抵抗の放電回路を各々の電池に接続する専用の接続ラインを設ける必要がなく、電池の電圧を検出するために設けている電圧検出ラインを接続ラインに併用するからである。
【0016】
また、以上の電源装置は、イグニッションスイッチをオフとする状態のみでなく、車両を走行させる状態においても、電池の均等化をしながら各々電池の電圧を極めて高い精度で検出できる特徴も実現する。それは、車両を走行させながら電池を均等化するために、放電スイッチをオンオフに切り換えても、電池の電圧を正確に検出できるからである。この特徴は、放電スイッチのオン状態で発生する電圧検出ラインの電圧降下を補正電圧として検出して、検出される電池の電圧を補正することで実現できる。
【0017】
さらにまた、以上の電源装置は、車両の走行状態においても、電池を均等化できるので、電池を均等化できる時間帯を長くでき、このことによって、電池を均等化する放電電流を小さくしながら電池を均等化することができる。このことは、多数の電池で構成される走行用バッテリの均等化には極めて大切である。それは、電池を均等化する放電電流が大きくなって放電抵抗の発熱量が大きくなると、多数の電池を放電する状態で多数の放電抵抗が発熱して、トータルの発熱量が極めて大きくなるからである。また、放電抵抗の発熱量を小さくできることは、放電抵抗を極めて小さい抵抗器とすることができ、多数の放電抵抗を小さいスペースに配置できる特徴も実現する。
【0018】
本発明の車両用の電源装置は、電圧検出回路3で検出される電池2を、ひとつの二次電池又は直列に接続してなる複数の二次電池とすることができる。
【0019】
本発明の車両用の電源装置は、電圧検出回路3が車両のイグニッションスイッチ15のオン状態を検出する検出回路25を備えて、この検出回路25がイグニッションスイッチ15のオン状態を検出して、補正回路5が電圧検出ライン9の電圧降下を検出することができる。
以上の電源装置は、イグニッションスイッチをオンに切り換える毎に電圧検出ラインの電圧降下を検出して、検出される電池の電圧を補正するので、電圧検出ラインの電気抵抗が経時的に変化しても、電池の電圧をより正確に検出できる。
【0020】
本発明の車両用の電源装置は、電圧検出回路3が、走行用バッテリ1を車両側の負荷に接続するコンタクタ16のオフ状態を検出するコンタクタ検出回路26を備えて、このコンタクタ検出回路26がコンタクタ16のオフ状態を検出して、補正回路5が補正電圧を検出することができる。
以上の電源装置は、コンタクタのオフ状態、すなわち走行用バッテリを放電しない状態で、電圧検出ラインの電圧降下、すなわち補正電圧を検出するので、多数の電池の電圧をより正確に検出できる。
【0021】
本発明の車両用の電源装置は、均等化回路4が、各々の電池2の電圧を検出して放電スイッチ22をオンオフに制御する制御回路24を備えて、この制御回路24が放電スイッチ22をオンオフに接続して、各々の電池2を均等化することができる。
【0022】
本発明の車両用の電源装置は、電圧検出ライン9がリード線とコネクタとを介して電圧検出回路3を電池2に接続することができる。
以上の電源装置は、リード線とコネクタの電圧降下を検出しながら、電池の電圧を正確に検出できる。
【0023】
本発明の車両用の電源装置は、電圧検出回路3が、補正回路5で検出される電圧検出ライン9の電圧降下を設定電圧に比較して、電圧検出ライン9の故障を判定することができる。
以上の車両用の電源装置は、補正回路が補正電圧を検出することで、経時的に発生する電圧検出ラインの故障を判定できる。
【0024】
本発明の車両は、上記のいずれかの電源装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置のブロック図である。
【図2】図1に示す車両用の電源装置の電池の電圧を検出する回路の等価回路図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置が電池電圧を検出するフローチャートである。
【図4】エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図5】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両を例示するものであって、本発明は車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0027】
車両用の電源装置は、図1のブロック図に示すように、車両を走行させるモータ11に電力を供給する複数の充電できる電池2を直列に接続してなる走行用バッテリ1と、この走行用バッテリ1を構成している電池2に電圧検出ライン9を介して接続されて、各々電池2の電圧を検出する電圧検出回路3と、走行用バッテリ1を構成する電池2を放電して各々の電池2を均等化させる均等化回路4とを備えている。
【0028】
さらに、図1のブロック図に示す電源装置は、走行用バッテリ1の出力側にコンタクタ16を接続している。このコンタクタ16を介して、走行用バッテリ1を車両側の負荷であるDC/ACインバータ10に接続している。DC/ACインバータ10は、車両を走行させるモータ11と、走行用バッテリ1を充電する発電機12とに接続している。DC/ACインバータ10は、コントロールユニット14に制御される。コントロールユニット14は、DC/ACインバータ10を介して走行用バッテリ1の電力を走行モータ11に供給して車両をモータ11で走行させる。また、発電機12を制御して、発電機12で走行用バッテリ1を充電する。
【0029】
さらに、コントロールユニット14は、イグニッションスイッチ15を接続しており、このイグニッションスイッチ15から入力される信号で、コンタクタ16をオンオフに切り換える。イグニッションスイッチ15がオンに切り換えられると、コントロールユニット14は、コンタクタ16をオンに切り換える。ただし、コントロールユニット14は、イグニッションスイッチ15がオンに切り換えられた後、初期の動作確認を終了した後、コンタクタ16をオフからオンに切り換えて、走行用バッテリ1をDC/ACインバータ10に接続する。イグニッションスイッチ15がオフに切り換えられると、コントロールユニット14は、コンタクタ16をオフに切り換えて、走行用バッテリ1をDC/ACインバータ10から切り離す。
【0030】
走行用バッテリ1を構成する電池2は、ひとつの二次電池、又は直列に接続している複数の二次電池である。走行用バッテリ1の電池2は、リチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池である。二次電池をリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池とする走行用バッテリ1は、電池2をひとつの二次電池で構成する。この電源装置は、各々の電池2の電圧を電圧検出回路3で検出し、また、均等化回路4で各々の電池2を均等化する。ただし、電池は、ニッケル水素電池などの充電できる全ての二次電池とすることができる。電池をニッケル水素電池とする電源装置は、複数の二次電池を直列に接続してひとつの電池とし、各々の電池、すなわち複数の二次電池を直列に接続している電池の電圧を検出し、またこの電池を均等化する。
【0031】
電圧検出回路3は、電圧検出ライン9を介して入力側を各々の電池2の正負の端子に接続している。電圧検出回路3は、この電圧検出ライン9を介して、各々の電池2の電圧を検出する。電圧検出回路3は、検出する電圧を補正する補正回路5も備えている。補正回路5は、後述する均等化回路4の放電スイッチ22のオンオフによって、検出される電圧を補正して、電池2の正確な電圧を検出する。
【0032】
均等化回路4は、電池2のセル電圧を均等化してアンバランスを解消して均等化する。均等化回路4は、各々の電池2の電圧を検出して、各々の電池2の電圧のアンバランスを解消して均等化する。均等化回路4は、イグニッションスイッチ15のオン状態、すなわち車両を走行できる状態のみでなく、車両を走行させないオフ状態においても、電池2を均等化する。ただし、全ての電池2が均等化された後は、均等化回路4は動作を停止する。
【0033】
均等化回路4は、図1に示すように、電圧が高い電池2を放電抵抗23で放電して、アンバランスを解消する。図の均等化回路4は、放電抵抗23に放電スイッチ22を直列に接続している放電回路21と、放電スイッチ22をオンオフに制御する制御回路24とを備える。放電回路21は、各々の電池2を独立して放電して均等化するので、電池2の個数と同じ数、たとえば、100個の電池を直列に接続している電源装置にあっては、100組の放電回路が設けられる。各々の放電回路21を構成する放電スイッチ22と放電抵抗23は、回路基板(図示せず)に実装され、電圧検出回路3の電圧検出ライン9を介して各々の電池2に接続される。
【0034】
均等化回路4は、電池2の電圧で放電スイッチ22をオンオフに制御する制御回路24を備えている。図1の制御回路24は、電圧検出回路3で検出される電池2の電圧で各々の放電スイッチ22をオンオフに制御する。この均等化回路4は、電圧検出回路3を電池2の電圧を検出する回路に併用している。ただし、均等化回路は、電池の電圧を検出するために専用の電圧検出回路を設けることもできる。
【0035】
制御回路24は、電圧検出回路3で検出される各々の電池2の電圧を比較して、全ての電池2の電圧を均等化するように放電スイッチ22を制御する。この制御回路24は、高すぎる電池2に接続している放電回路21の放電スイッチ22をオンに切り変えて放電させる。電池2は放電するにしたがって電圧が低下する。放電スイッチ22は、電池2の電圧が他の電池2とバランスするまで低下すると、オンからオフに切り変えられる。放電スイッチ22がオフになると、電池2の放電は停止される。このように、制御回路24は、高い電圧の電池2を放電して、全ての電池2の電圧をバランスさせる。
【0036】
均等化回路4は、イグニッションスイッチ15のオン状態のみでなく、オフ状態においても電池2を均等化する。図1の電源装置は、電圧検出回路3を各々の電池2に接続している電圧検出ライン9を介して、均等化回路4の放電回路21を各々の電池2に接続している。したがって、電圧検出回路3が各々の電池2の電圧を検出するとき、ある電池2に接続している放電スイッチ22はオン、また他の電池2に接続している放電スイッチ22はオフ状態となる。放電スイッチ22がオン状態にあると、電圧検出ライン9には放電抵抗23を介して流れる放電電流によって電圧降下が発生し、放電スイッチ22がオフ状態にあると、放電電流が流れないので、電圧検出ライン9の電圧降下は発生しない。したがって、電圧検出回路3が各々の電池2の電圧を検出するとき、放電スイッチ22のオンオフによって、電圧検出ライン9の電圧降下が変化して検出する電圧に誤差が発生する。
【0037】
この弊害を解消して、電圧検出回路3が常に電池電圧を高精度に検出するために、図1の車両用の電源装置は、電圧検出回路3に補正回路5を設けている。補正回路5は、放電スイッチ22をオンに切り換えて、放電回路21を電池2に接続する状態における電圧検出ライン9の電圧降下による補正電圧を検出する。補正回路5は、放電スイッチ22をオフ状態として検出されるオフ電圧から、放電スイッチ22をオン状態として検出するオン電圧を減算して検出できる。放電スイッチ22のオフ状態では電圧検出ライン9の電圧降下がなく、オン状態では電圧検出ライン9に電圧降下が発生するので、その差電圧から電圧降下を検出できる。
【0038】
補正回路5は、車両のイグニッションスイッチ15がオンに切り換えられて、初期の動作確認をするタイミングで、放電スイッチ22をオンオフに切り換えて、その差電圧から電圧検出ライン9の電圧降下の補正電圧を検出する。イグニッションスイッチ15をオンに切り換えてから初期の動作確認をするタイミングでは、コンタクタ16をオフ状態として、走行用バッテリ1を充放電しないので、各々の電池2の電圧が安定して変化せず、補正回路5は、より正確に補正電圧を検出できる。ただし、コンタクタ16をオン状態として、走行用バッテリ1を負荷に接続して充放電する状態においても、走行用バッテリ1の充放電の電流が設定値よりも小さい状態で、放電スイッチ22をオンオフに切り換えて補正電圧を検出することもできる。走行用バッテリ1の電流が設定値よりも小さいと、電池2の電圧変動がほとんど無視できるからである。
【0039】
図1に示す電圧検出回路3は、イグニッションスイッチ15のオン状態を検出する検出回路25を備えている。この電圧検出回路3は、イグニッションスイッチ15がオンに切り換えられたことを検出回路25で検出して、補正回路5が電圧検出ライン9の電圧降下を検出することができる。この電圧検出回路3は、例えば、イグニッションスイッチ15をオンに切り換える毎に電圧検出ライン9の電圧降下を検出して、検出される電池2の電圧を補正することができる。さらに、図に示す電圧検出回路3は、走行用バッテリ1を車両側の負荷に接続するコンタクタ16のオフ状態を検出するコンタクタ検出回路26も備えている。この電圧検出回路3は、コンタクタ16がオフに切り換えられたことをコンタクタ検出回路26で検出して、補正回路5が補正電圧を検出することができる。この電圧検出回路3は、コンタクタ16のオフ状態を検出して電圧検出ライン9の電圧降下を検出するので、走行用バッテリ1を放電しない状態において、電池2の電圧を正確に検出できる。
【0040】
補正回路5は、各々の放電スイッチ22をオンオフに切り換えて、各々の電池2の電圧を検出する電圧検出ライン9の電圧降下、すなわち各々の電池2の補正電圧を検出する。図2に示すように、電圧検出ライン9は、リード線の電気抵抗やコネクタの接触抵抗による電気抵抗R1、R2がある。この電気抵抗R1、R2に電流が流れると、電気抵抗R1、R2と電流の積に相当する電圧降下が発生する。放電スイッチ22のオフ状態において、電圧検出ライン9に放電電流は流れないので、電圧検出ライン9の電気抵抗R1、R2による電圧降下は発生しない。正確には、電圧検出回路3の入力側に流れる電流によって極めてわずかに電圧検出ライン9の電気抵抗R1、R2による電圧降下は発生するが、電圧検出回路3の入力インピーダンスが極めて大きく、この電圧降下は無視できるほどに小さい。このため、放電スイッチ22のオフ状態において、電圧検出ライン9の電圧降下は0Vとなる。したがって、この状態において、電圧検出回路3は、電池2の電圧(E0)を正確に検出する。
【0041】
ところが、放電スイッチ22をオンに切り換えて、電圧検出ライン9を介して電池2を放電すると、この放電電流と電圧検出ライン9の電気抵抗R1、R2の積に相当する電圧降下が発生する。したがって、電圧検出回路3の検出電圧(E)は、電池2の電圧(E0)から電圧降下の電圧(E1)を減算した電圧となる。したがって、検出電圧(E)は以下のようになる。
E=E0−E1
【0042】
電圧検出ライン9で電圧降下の発生しない電池2の電圧(E0)は、放電スイッチ22をオフとする状態で検出されるので、放電スイッチ22をオフとする状態で検出される電圧から、放電スイッチ22をオンとする状態で検出される電圧を減算して、電圧検出ライン9の電圧降下(E1)は検出される。
【0043】
補正回路5は、放電スイッチ22をオンオフに切り換えて、全ての電池2の電圧から、全ての電池2の電圧を検出する状態における電圧降下を補正電圧として検出する。補正電圧は、電圧検出回路3のメモリに記憶される。電圧検出回路3は、記憶している補正電圧でもって、検出される電池2の検出電圧を補正して電池電圧を正確に検出する。すなわち、電圧検出回路3が、オン状態の放電スイッチ22を並列に接続している電池2の電圧を検出すると、検出電圧に補正電圧を加算して、電池2の電圧とし、オフ状態の放電スイッチ22を並列に接続している電池2の電圧を検出するときは、検出する電圧を電池2の電圧として、各々の電池2の電圧を正確に検出できる。放電スイッチ22は、均等化回路4の制御回路24でオンオフに制御されるので、電圧検出回路3は、制御回路24から入力される放電スイッチ22のオンオフ信号で、検出電圧に補正電圧を加算するかどうかを判定して、電池2の電圧を正確に検出できる。
【0044】
さらに、電圧検出回路3は、補正回路5で検出される電圧検出ライン9の電圧降下を設定電圧に比較して、電圧検出ライン9の故障を判定することができる。リード線とコネクタで構成される電圧検出ライン9は、リード線が損傷し、あるいはコネクタが接触不良等をおこすと、電気抵抗が大きくなる。したがって、電圧検出回路3は、補正回路5で検出される電圧検出ライン9の電圧降下が設定電圧よりも大きくなると、電圧検出ライン9の故障と判定することができる。これにより、経時的に発生する電圧検出ライン9の故障を速やかに検出して、装置の安全性を向上できる。
【0045】
以上の車両用の電源装置は、図3のフローチャートに示すように、以下の動作をして走行用バッテリ1の電池2を均等化しながら、各々の電池2の電圧を正確に検出する。
[n=1のステップ]
コンタクタ16をオフに切り換えて、走行用バッテリ1の充放電を停止する。
[n=2のステップ]
均等化回路4の全ての放電スイッチ22をオフに切り換える。
[n=3のステップ]
電圧検出回路3で各々の電池2の電圧を検出する。
[n=4のステップ]
均等化回路4の全ての放電スイッチ22をオンに切り換える。
[n=5のステップ]
電圧検出回路3で各々の電池2の電圧を検出する。
[n=6のステップ]
補正回路5が、n=3のステップで検出された放電スイッチ22がオフ状態の電池電圧と、n=5のステップで検出された放電スイッチ22がオン状態の電池電圧との差電圧から、各々の電池2の電圧を検出する電圧検出ライン9の電圧降下、すなわち各々の電池2の補正電圧を検出してメモリに記憶する。
[n=7のステップ]
コンタクタ16をオンに切り換えて、走行用バッテリ1の充放電を開始する。
[n=8〜12のステップ]
電圧検出回路3が、各々の電池2の電圧を検出する。このとき、電圧検出回路3は、電圧が検出される電池2に並列に接続している放電スイッチ22のオンオフを検出し、接続している放電スイッチ22がオン状態にあると、検出電圧に補正電圧を加算して電池2の電圧とし(n=10のステップ)、また、接続している放電スイッチ22がオフ状態にあると、検出電圧を電池2の電圧とする(n=11のステップ)。
以上のようにして、全ての電池2の電圧を検出する。
[n=13のステップ]
検出された電池電圧から各々の電池2の残容量を演算する。その後、n=1のステップに戻る。
【0046】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車などの電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
【0047】
(ハイブリッド車用電源装置)
図4は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置90を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置90と、電源装置90の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置90は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置90の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、たとえば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置90から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置90の電池を充電する。
【0048】
(電気自動車用電源装置)
また、図5は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置90を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置90と、この電源装置90の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置90は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置90から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置90の電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る電源装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の車両用の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…走行用バッテリ
2…電池
3…電圧検出回路
4…均等化回路
5…補正回路
9…電圧検出ライン
10…DC/ACインバータ
11…モータ
12…発電機
14…コントロールユニット
15…イグニッションスイッチ
16…コンタクタ
21…放電回路
22…放電スイッチ
23…放電抵抗
24…制御回路
25…検出回路
26…コンタクタ検出回路
90…電源装置
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
EV…車両
HV…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させるモータ(11)に電力を供給する複数の充電できる電池(2)を直列に接続してなる走行用バッテリ(1)と、この走行用バッテリ(1)を構成している電池(2)に電圧検出ライン(9)を介して接続されて、各々電池(2)の電圧を検出する電圧検出回路(3)と、前記走行用バッテリ(1)を構成する電池(2)を放電して各々の電池(2)を均等化させる均等化回路(4)とを備えており、
前記均等化回路(4)は、放電スイッチ(22)と放電抵抗(23)とを直列に接続している放電回路(21)を備えると共に、この放電回路(21)を前記電圧検出ライン(9)を介して電池(2)に接続しており、
前記電圧検出回路(3)が、前記放電スイッチ(22)をオンに切り換えて、前記放電回路(21)を電池(2)に接続する状態における電圧検出ライン(9)の電圧降下による補正電圧を検出する補正回路(5)を備えており、
前記放電スイッチ(22)のオン状態において、前記電圧検出回路(3)が、前記補正回路(5)で検出する補正電圧でもって、検出される電池(2)の検出電圧を補正して電池電圧を検出するようにしてなる車両用の電源装置。
【請求項2】
前記電圧検出回路(3)で検出される電池(2)が、ひとつの二次電池又は直列に接続してなる複数の二次電池である請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
前記電圧検出回路(3)が、車両のイグニッションスイッチ(15)のオン状態を検出する検出回路(25)を備えており、この検出回路(25)がイグニッションスイッチ(15)のオン状態を検出して、前記補正回路(5)が電圧検出ライン(9)の電圧降下を検出する請求項1又は2に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
前記電圧検出回路(3)が、走行用バッテリ(1)を車両側の負荷に接続するコンタクタ(16)のオフ状態を検出するコンタクタ検出回路(26)を備えており、
このコンタクタ検出回路(26)がコンタクタ(16)のオフ状態を検出して、前記補正回路(5)が補正電圧を検出する請求項1ないし3のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
前記均等化回路(4)が、各々の電池(2)の電圧を検出して前記放電スイッチ(22)をオンオフに制御する制御回路(24)を備えており、この制御回路(24)が放電スイッチ(22)をオンオフに接続して、各々電池(2)を均等化する請求項1ないし4のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
前記電圧検出ライン(9)がリード線とコネクタとを介して電圧検出回路(3)を電池(2)に接続してなる請求項1ないし5のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
前記電圧検出回路(3)が、前記補正回路(5)で検出される前記電圧検出ライン(9)の電圧降下を設定電圧に比較して、電圧検出ライン(9)の故障を判定する請求項1ないし6のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載される電源装置を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55825(P2013−55825A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193354(P2011−193354)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】