説明

車両用アウトサイドミラー

【課題】駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを抑制することのできる車両用アウトサイドミラーを提供すること。
【解決手段】プレート40の逃げ部44とスクリュー挿通孔42との間にリブ46を設け、ギヤケース25のクラッチ機構60用の収納部26と螺孔30との間に溝部32を設ける。プレート40はスクリュー80によってギヤケース25に固定し、その際に、リブ46は溝部32に入り込む。これにより、駆動用ギヤの一部として収納部26に収納されている第2ウォームギヤ73のグリス98がプレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間に入った場合でも、前記リブ46と前記溝部32によってグリス98を遮断し、グリス98がスクリュー80の方向に進行することを抑制できる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アウトサイドミラーに関するものである。特に、本発明は、部品同士に固定を確実なものとすることのできる車両用アウトサイドミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用アウトサイドミラーは、当該車両用アウトサイドミラーが装備されている車両の駐車時に、外部への突出を低減するためミラー本体部を起立状態(車両用アウトサイドミラーの使用時の状態)から後方に傾倒し、格納可能になっている。また、従来の車両用アウトサイドミラーでは、利便性の向上のため車両の室内に設けられた操作スイッチを操作することにより、上記の格納を電動で行えるように構成されているものがある。例えば、特許文献1では、スイッチ機構によって任意に作動させることのできるモータをプレートに固定し、当該プレートをユニットブラケットに固定している。また、このユニットブラケットには収納部が設けられており、収納部には各種駆動用ギヤ等が収納されている。この駆動用ギヤ等のうちの一部はシャフトに固定されており、このシャフトは、ミラーベースを介して車両に固定されている。この車両用アウトサイドミラーが装備されている車両の室内に設けられた操作スイッチを操作することにより、スイッチ機構を介してモータが作動し、各種駆動用ギヤ等がモータの動力を伝達して前記シャフトの中心軸を中心としてミラー本体部が回動する。これにより、ミラー本体部の格納、及び起立を電動で行うことができる。
【0003】
【特許文献1】実開平6−27336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記プレートは固定手段となるスクリューによってユニットブラケットに固定されており、当該ユニットブラケットの収納部に収納される駆動用ギヤには、駆動力を円滑に伝達するために潤滑材としてグリスが塗布されている。この駆動用ギヤは、車両用アウトサイドミラーの格納、或いは起立への作動時に回転をするため、この回転により前記グリスは跳ね上げられ、収納部の外に出て前記プレートとユニットブラケットとの間に浸入する虞がある。前記プレートは上記のようにスクリューによってユニットブラケットに固定されているため、このようにプレートとユニットブラケットとの間に浸入したグリスがスクリューに達した場合には、当該グリスによってスクリューに緩みが生じる虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを抑制することのできる車両用アウトサイドミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る車両用アウトサイドミラーは、駆動手段と、前記駆動手段の駆動力を伝達する駆動用ギヤと、前記駆動手段を保持するプレートと、前記駆動用ギヤを収納する収納部が設けられているギヤケースと、前記プレートと前記ギヤケースとを一体に固定する固定手段と、前記収納部と前記固定手段との間に形成された潤滑材遮断構造と、を具備することを特徴とする。
【0007】
この発明では、収納部と固定手段との間に潤滑材遮断構造を設けているので、前記駆動用ギヤが回転をして駆動用ギヤに塗布されている潤滑材が跳ね上げられ、プレートとギヤケースとの間に浸入した場合でも、当該潤滑材遮断構造により潤滑材の進行を遮断することができる。これにより、潤滑材が固定手段に到達することを抑制できる。この結果、駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを抑制することができる。
【0008】
また、この発明に係る車両用アウトサイドミラーは、前記潤滑材遮断構造は、前記プレートと前記ギヤケースとの対向する面のうちの一方の面に形成される溝部と、他方の面に形成され、且つ、形成される面から突出しており、さらに、前記溝部に入り込むリブと、により構成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、潤滑材遮断構造を溝部と、当該溝部に入り込むリブとによって構成している。これにより、プレートとギヤケースとの間における前記収納部から固定手段への方向への直線的な経路を確実に遮断することができる。このため、プレートとギヤケースとの間に潤滑材が浸入した場合でも、潤滑材の進行方向は遮断されているので、潤滑材が固定手段に到達することを、より確実に抑制できる。この結果、駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0010】
また、この発明に係る車両用アウトサイドミラーは、前記溝部は、溝底が下方に位置する向きで形成されており、前記リブは、先端部が下方に位置する向きで形成され、且つ、前記溝部に対して上方から入り込むことを特徴とする。
【0011】
この発明では、溝底が下方に位置する向きで溝部が形成されているので、リブによって遮断された潤滑材を溝部の溝底方向に流すことができる。これにより、プレートとギヤケースとの間に浸入した潤滑材を、より確実に遮断することができ、潤滑材が固定手段に到達することを、より確実に抑制できる。この結果、駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0012】
また、この発明に係る車両用アウトサイドミラーは、前記溝部は、前記リブが前記溝部に入り込んで前記プレートと前記ギヤケースとを一体に固定した際に、前記リブの先端部から溝底が離れるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、プレートとギヤケースとの間に浸入し、リブによって遮断された潤滑材をリブの先端部と溝部の溝底との間の空間に溜めることができる。このため、多くの潤滑材をリブで遮断した場合でも、潤滑材が溝部から溢れることを低減させることができるので、より多くの潤滑材を遮断することができる。これにより、プレートとギヤケースとの間に浸入した潤滑材が固定手段に到達することを、より確実に抑制できる。この結果、駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを、より確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる車両用アウトサイドミラーは、駆動用ギヤに塗布されている潤滑材による固定手段の緩みを抑制することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる車両用アウトサイドミラーの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、以下の説明は、本発明の車両用アウトサイドミラーを備えた車両の前方、後方、上方、下方を、車両用アウトサイドミラーにおいても前方、後方、上方、下方として説明する。また、本発明にかかる車両用アウトサイドミラーは様々な形態が考えられるが、実施例として車両のドアに固定されるドアミラーについて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明にかかる車両用アウトサイドミラーを示す図である。図2は、図1のA−A矢視図である。図1の車両用アウトサイドミラーの一例であるドアミラー1は、車両のドア(図示省略)に固定されるミラーベース6と、当該ミラーベース6に対して回動可能なミラー本体部5によって構成されている。ミラー本体部5は、ミラーハウジング10とミラー11とを備えており、ミラーハウジング10内には格納駆動ユニット20及びパワーユニット15が設けられている。ミラー本体部5はこの格納駆動ユニット20によって、後述するシャフト90の中心軸95を中心として回動可能に設けられている。また、前記パワーユニット15は、前記ミラーハウジング10に固定されている。前記ミラー11は、このパワーユニット15に取り付けられており、パワーユニット15を作動させることによりミラーハウジング10に対して向きが変わるように設けられている。
【0017】
図3は、格納駆動ユニットの分解斜視図である。前記ミラーベース6には、シャフト90を立設したシャフトホルダー91が固定されている。前記格納駆動ユニット20は、このシャフト90にボール92とワッシャー93を介して回転可能に軸支される。また、この格納駆動ユニット20は、ギヤケース25とプレート40とカバー55とを備えている。このギヤケース25とカバー55とは、互いに対応する位置に設けられた係合部56を係合させることによって一体に形成可能となっている。また、前記プレート40は、このように一体に形成されるギヤケース25とカバー55とによって画成される内部に配設されており、固定手段となるスクリュー80によってギヤケース25に固定されている。さらに、このギヤケース25とカバー55とによって画成される内部には、クラッチ機構60、減速機構70、モータ81及びスイッチ回路基板82がそれぞれ配設されている。
【0018】
前記ギヤケース25は、PAG(ポリアミド硝子繊維入り)等の樹脂材料によって形成されており、当該ギヤケース25には、クラッチ機構60の収納部26と減速機構70の収納部27とが併設されている。このクラッチ機構60の収納部26、及び減速機構70の収納部27は、下方に凹んだ形状で形成されている。このクラッチ機構60の収納部26の内部にはクラッチ機構60が配設され、減速機構70の収納部27の内部には減速機構70が配設される。また、クラッチ機構60の収納部26の底部には、前記シャフト90の挿通孔(図示省略)が形成されており、この挿通孔には、シャフト90が貫通して挿入される。このシャフト90には、クラッチ機構60がワッシャー67を介して取り付けられる。さらに、ギヤケース25には外周壁28が形成されており、外周壁28の内側の面には、複数のリブ29が設けられている。
【0019】
前記プレート40は、POM(ポリアセタール)等、前記ギヤケース25を形成する材料よりも柔らかい樹脂材料によって形成されている。このプレート40は、前記外周壁28の内側、或いはリブ29の内側に嵌合され、且つ、スクリュー80によってギヤケース25に固定される。また、このプレート40には、モータ保持部41が設けられている。モータ保持部41は、モータ81の外形の形状に沿った立壁の形状で形成されており、駆動手段となるモータ81は、このモータ保持部41に囲まれ、出力軸(図示省略)を下方に向けた状態で保持される。さらにモータ81は、プレート40に固定されるスイッチ回路基板82に固定される。また、モータ保持部41の底部には、モータ81の前記出力軸用の挿通孔(図示省略)が形成されている。モータ81の出力軸は、この挿通孔を挿通して減速機構70の第1ウォームギヤ71にジョイント83を介して結合される。
【0020】
前記クラッチ機構60は、クラッチホルダー61と、クラッチギヤ63と、スプリング65と、プッシュナット66とを備える。このクラッチ機構60は、クラッチ機構60の収納部26に挿入されたシャフト90に、ワッシャー67、クラッチホルダー61、クラッチギヤ63、スプリング65を順次嵌め合わせ、プッシュナット66でスプリング65を縮設することにより構成される。このとき、クラッチホルダー61の上面に形成された凸部62は、クラッチギヤ63の内面に形成された凹部64に噛み合っている。このクラッチギヤ63は、駆動用ギヤの一部として形成されている。また、クラッチギヤ63の中心軸68と前記シャフト90の中心軸95とは、ほぼ一致している。
【0021】
減速機構70は複数のギヤを有しており、この複数のギヤは駆動用ギヤとして形成されている。この複数のギヤによって構成される減速機構70は、前記第1ウォームギヤ71と、この第1ウォームギヤ71に噛み合うヘリカルギヤ72と、回転軸74によってヘリカルギヤ72と連結されている第2ウォームギヤ73とを備えている。また、この減速機構70の第2ウォームギヤ73は、クラッチ機構60のクラッチギヤ63に噛み合って配設される。
【0022】
前記カバー55には、円形の孔である軸支部57が形成されており、上記のように形成された各部を組み立てた後に、シャフト90を当該軸支部57に挿通して、カバー55を前記ギヤケース25に係合させる。その際に、シャフト90は、シャフト90とカバー55との間にO−リング86を介して軸支部57に挿通する。
【0023】
図4は、図3のB−B断面図である。図5は、図4のD−D断面図である。前記プレート40には、前記スクリュー80を挿通させる孔であるスクリュー挿通孔42が2つ形成されており、さらに、前記モータ81の出力軸を挿通させる出力軸挿通孔43が形成されている。また、このプレート40には、当該格納駆動ユニット20を組み立てた際に前記クラッチ機構60が位置する部分に逃げ部44が形成されている。この逃げ部44は、前記ギヤケース25に形成された当該クラッチ機構60の収納部26の形状である、後述する円形の形状の一部の形状である円弧状の形状で形成されている。さらに、前記2つのスクリュー挿通孔42のうちの1つのスクリュー挿通孔42と、この逃げ部44との間には、リブ46が形成されている。このリブ46は、当該プレート40において前記ギヤケース25に対向し、ギヤケース25に取り付ける面である取付面45に形成されており、取付面45から下方に突出した板状の形状で前記スクリュー挿通孔42と逃げ部44とを遮るように形成されている。つまり、当該リブ46は、先端部47が下方に位置する向きで形成されている。
【0024】
図6は、図3のC−C断面図である。図7は、図6のE−E断面図である。前記ギヤケース25には、前記スクリュー80と螺合する孔である螺孔30が2つ形成されている。この螺孔30は、前記プレート40の2つのスクリュー挿通孔42と対応する位置に形成されている。この螺孔30は、当該ギヤケース25において前記プレート40に対向し、プレート40が取り付けられる面である取付面31に形成されている。また、当該ギヤケース25には、上記のクラッチ機構60の収納部26と、減速機構70の収納部27とが設けられており、クラッチ機構60の収納部26は、前記クラッチ機構60と前記第2ウォームギヤ73が収納される形状で形成されている。つまり、クラッチ機構60の収納部26は、クラッチ機構60のクラッチギヤ63が収納できるように、上方から見た形状は大部分が円形の形状となっており、さらに、第2ウォームギヤ73が収納できるように、一部が略矩形状の形状で形成されている。また、減速機構70の収納部27は、減速機構70のヘリカルギヤ72と第2ウォームギヤ73の回転軸74が収納できるように、上方から見た場合、ヘリカルギヤ72を収納する略矩形と第2ウォームギヤ73の回転軸74を収納する略矩形が組み合わされた形状で形成されている。
【0025】
また、2つの螺孔30のうち、前記プレート40のリブ46によって逃げ部44と遮られているスクリュー挿通孔42に対応する螺孔30と、前記クラッチ機構60の収納部26との間には、溝部32が形成されている。この溝部32は、当該ギヤケース25の取付面31の、前記螺孔30と収納部26との間で、溝底33が下方に位置する向きで形成されており、前記プレート40のリブ46に対応する位置に形成されている。また、この溝部32の溝幅は、前記リブ46の幅、即ちリブ46の形状である板状の形状の板厚よりも広く、溝部32の溝深さは、前記リブ46の高さ、即ちプレート40の取付面45からリブ46の先端部47までの距離よりも深い深さで形成されている。
【0026】
図8は、プレートをギヤケースに固定し、クラッチ機構を組み立てた状態を示す要部詳細図である。図9は、図8のF部詳細図である。この実施例に係るドアミラー1は、以上のように構成されており、以下に当該ドアミラー1の組立てについて説明する。上記のように構成されているドアミラー1を組み立てる際には、各ギヤ部、即ち、第1ウォームギヤ71、ヘリカルギヤ72、第2ウォームギヤ73及びクラッチギヤ63に、潤滑材としてグリス98を塗布する。同様に、クラッチ機構60の摺動部となるクラッチホルダー61の凸部62とクラッチギヤ63の凹部64にもグリス98を塗布する。また、リブ46が形成されている前記プレート40を、溝部32が形成されているギヤケース25にスクリュー80によって固定する際には、前記リブ46が溝部32に対して上方から入り込むようにして固定する。
【0027】
これにより、プレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31とをそれぞれ対向させてプレート40をギヤケース25に固定した状態では、プレート40のリブ46はギヤケース25の溝部32に入り込む。その際に、リブ46のリブ壁48と溝部32の溝壁34のうち、スクリュー挿通孔42側に位置するリブ壁48と、螺孔30側に位置する溝壁34とは接触しており、また、リブ46が形成されているプレート40の材質はギヤケース25を形成する材質よりも柔らかいので、リブ46は撓んで前記溝壁34に押え付けられる。さらに、リブ46の高さよりも溝部32の溝深さの方が深いため、リブ46の先端部47は溝部32の溝底33から離れている。つまり、リブ46の先端部47と溝部32の溝底33との間には空間部35を有している。また、このリブ46と溝部32とは、潤滑材遮断構造として形成されている。
【0028】
図10は、ミラー本体部の格納時及び起立時の状態を示す図である。このようにして組み立てられるドアミラー1を格納する際には、車内に設けられた操作スイッチ(図示省略)を、ドアミラー1を格納するように操作することにより、前記スイッチ回路基板82に配設されたスイッチ回路(図示省略)を介して前記モータ81を作動させる。モータ81が作動してモータ81の出力軸が回転をすると、前記ジョイント83を介して第1ウォームギヤ71が回転をする。第1ウォームギヤ71はヘリカルギヤ72と噛み合っているため、この第1ウォームギヤ71の回転はヘリカルギヤ72に伝達されてヘリカルギヤ72が回転する。また、ヘリカルギヤ72が回転することにより、前記回転軸74によって、このヘリカルギヤ72と連結されている第2ウォームギヤ73が回転をする。
【0029】
第2ウォームギヤ73は前記クラッチギヤ63と噛み合っているが、クラッチギヤ63は、当該クラッチギヤ63に形成された凹部64と前記クラッチギヤ63に形成された凸部62とが噛み合った状態では、前記シャフト90に対して回動方向に固定されている。つまり、クラッチギヤ63は、シャフト90に対して回動不可となっている。このため、第2ウォームギヤ73の回転がクラッチギヤ63に伝達される際には、第2ウォームギヤ73がクラッチギヤ63に噛み合いつつクラッチギヤ63の周囲を回動する。即ち、第2ウォームギヤ73を有する格納駆動ユニット20全体がクラッチギヤ63の周囲を回動する。
【0030】
さらに、この格納駆動ユニット20はミラー本体部5に固定されており、クラッチギヤ63の中心軸68と前記シャフト90の中心軸95とはほぼ一致しているため、格納駆動ユニット20がクラッチギヤ63の周囲を回動するように作動することにより、ミラー本体部5がシャフト90の中心軸95を中心として回動する。これにより、ミラー本体部5は後方に傾倒し、格納状態になる(図10、a)。このように、減速機構70及びクラッチ機構60が備える各駆動用ギヤによって、モータ81の駆動力を各部に伝達することにより、ミラー本体部5を格納状態にすることができる。
【0031】
また、格納状態となっているミラー本体部5を起立状態にするには、前記操作スイッチを、ドアミラー1を起立させるように操作する。これにより、モータ81は格納時の回転方向と逆方向に回転する。モータ81がこのように回転することにより、第1ウォームギヤ71、ヘリカルギヤ72、第2ウォームギヤ73は、それぞれ格納時の回転方向と逆方向に回転し、ミラー本体部5もシャフト90の中心軸95を中心として逆方向に回動する。これにより、格納状態にあるミラー本体部5は起立状態になる(図10、b)。
【0032】
このようにしてミラー本体部5を格納状態、或いは、起立状態にするためにモータ81を作動させると、モータ81の作動に伴って上記のように各ギヤ部が回転をする。その際に、各ギヤ部にはグリス98が塗布してあるため、この回転によりグリス98が跳ね上げられる場合がある。特に、クラッチ機構60の収納部26に収納され、クラッチギヤ63と噛み合っている第2ウォームギヤ73が回転した場合には、第2ウォームギヤ73に跳ね上げられたグリス98がプレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間に入り込む虞がある。このようにプレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間に入り込んだグリス98は、ギヤケース25の取付面31に形成されている溝部32に入る。また、溝部32にはリブ46が入り込んでおり、前記のグリス98が溝部32を通過しようとする場合でも、このグリス98はリブ46によって遮断されて溝部32に入る。この溝部32の溝底33と、リブ46の先端部47との間には空間部35を有しているため、溝部32に入ったグリス98は、この空間部35に溜められる。また、リブ46の、スクリュー挿通孔42側のリブ壁48と、溝部32の、螺孔30側の溝壁34とは接触し、リブ46は前記溝壁34に押え付けられているため、このリブ壁48と溝壁34とによって空間部35に入り込んだグリス98は遮られ、螺孔30側の取付面31には進行しない。
【0033】
以上の車両用アウトサイドミラーであるドアミラー1は、クラッチギヤ63及び第2ウォームギヤ73が収納されている収納部26と、スクリュー挿通孔42及び螺孔30との間に、潤滑材遮断構造となるリブ46及び溝部32を設けているので、これらのギヤに塗布されたグリス98がスクリュー挿通孔42或いは螺孔30方向に進行することを抑制できる。即ち、駆動用ギヤの一部である第2ウォームギヤ73の回転によってグリス98が跳ね上げられ、プレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間に入り込んだ場合でも、リブ46と溝部32とによってグリス98の進行を遮断することができるので、グリス98がスクリュー80と螺孔30との間に入り込むことを抑制できる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを抑制することができる。
【0034】
また、第2ウォームギヤ73が収納される収納部26と、スクリュー80及び螺孔30との間に溝部32を設け、当該溝部32にリブ46を入り込ませているので、プレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間における、収納部26からスクリュー80及び螺孔30方向への直線的な経路を確実に遮断することができる。これにより、第2ウォームギヤ73の回転によりグリス98が跳ね上げられ、プレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間にグリス98が入り込んだ場合でも、グリス98の進行方向は遮断されているので、グリス98がスクリュー80に到達し、スクリュー80と螺孔30との間に入り込むことを、より確実に抑制することができる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0035】
また、溝部32をギヤケース25の取付面31に形成し、溝底33が下方に位置する向きで形成しているので、リブ46によって遮断されたグリス98を溝底33方向に流すことができる。これにより、プレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間に入り込んだグリス98がスクリュー80の方向に進行することを、より確実に遮断することができる。このため、グリス98がスクリュー80に到達し、スクリュー80と螺孔30との間に入り込むことを、より確実に抑制することができ、この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0036】
また、リブ46の先端部47と溝部32の溝底33とに間に空間部35を有しているので、溝部32に入り込んだグリス98をこの空間部35に溜めることができる。このため、多くのグリス98を、リブ46及び溝部32によって遮断した場合でも、グリス98が溝部32から溢れることを低減させることができ、より多くのグリス98を遮断することができる。これにより、プレート40の取付面45とギヤケース25の取付面31との間に入り込んだグリス98がスクリュー80の方向に進行することを、より確実に抑制することができる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0037】
また、このように空間部35を設けることにより、当該空間部35をギヤケース25の外部に対して開口することができる。空間部35を外部に対して開口した場合には、空間部35に溜まったグリス98を外部に排出できるので、より多くのグリス98をリブ46及び溝部32で遮断することができる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0038】
また、リブ46の、スクリュー挿通孔42側のリブ壁48と、溝部32の、螺孔30側の溝壁34とは接触しており、さらに、リブ46は前記溝壁34に押え付けられているため、このリブ壁48と溝壁34とによって空間部35に入り込んだグリス98が螺孔30が位置する前記取付面31の方向に進行することを、より確実に抑制できる。これにより、プレート40の取付面45及びギヤケース25の取付面31のうち、スクリュー80付近の取付面45、31の方向に進行することを、より確実に抑制することができる。これにより、グリス98がスクリュー80と螺孔30との間に入り込むことを、より確実に抑制することができる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを、より確実に抑制することができる。
【0039】
また、潤滑材遮断構造を、プレート40の取付面45に一体に形成されるリブ46と、ギヤケース25の取付面31に形成される溝部32とによって構成しているので、潤滑材遮断構造を容易に設けることができる。この結果、潤滑材遮断構造を設けた場合でも、製造が困難にならないため製造コストを抑えることができる。また、プレート40をギヤケース25にスクリュー80で固定した際に、リブ46を溝部32に入り込ませることにより潤滑材遮断構造を構成しているので、潤滑材遮断構造を設けた場合でも製造工程が増加しない。この結果、潤滑材遮断構造を設けても容易に製造することができ、また、潤滑材遮断構造を設けた際の製造工程の増加による製造コストの上昇を抑えることができる。また、上記のようにスクリュー80の緩みを抑制することにより、スクリュー80の緩みに起因する部品同士のガタつきを抑制し、品質を著しく向上させることができる。
【0040】
なお、上記のリブ46は溝部32の溝壁34に接触させているが、リブ46は溝壁34に接触させなくてもよい。リブ46は溝壁34に接触させなくても、クラッチ機構60の収納部26と前記スクリュー80との間にリブ46及び溝部32を設けることにより、収納部26からのグリス98をリブ46で遮断し、溝部32内に落とすことができる。この結果、駆動用ギヤに塗布されているグリス98によるスクリュー80の緩みを抑制することができる。また、リブ46を溝壁34に接触させない場合には、リブ46及び溝部32の製造時の寸法許容差を大きくすることができるため、より容易にリブ46及び溝部32を設けることができる。この結果、潤滑材遮断構造を設ける際の製造コストの増加を、より確実に抑制することができる。
【0041】
また、上記の説明は、本発明の車両用アウトサイドミラーの一例として車両のドアに固定される電動格納式のドアミラー1を説明しているが、電動格納式の車両用アウトサイドミラーは車両のドアに固定される以外のものでもよい。例えば、トラックの電動格納式の車両用アウトサイドミラーなど、ステーに固定された電動格納式の車両用アウトサイドミラーなどであってもよい。電動格納式の車両用アウトサイドミラーであれば、その固定場所は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる車両用アウトサイドミラーは、電動格納式の車両用アウトサイドミラーに有用であり、特に、駆動用ギヤの近傍に固定手段が配設されている車両用アウトサイドミラーに適している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかる車両用アウトサイドミラーを示す図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】格納駆動ユニットの分解斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】図4のD−D断面図である。
【図6】図3のC−C断面図である。
【図7】図6のE−E断面図である。
【図8】プレートをギヤケースに固定した状態を示す要部詳細図である。
【図9】図8のF部詳細図である。
【図10】ミラー本体部の格納時及び起立時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ドアミラー
5 ミラー本体部
6 ミラーベース
10 ミラーハウジング
11 ミラー
15 パワーユニット
20 格納駆動ユニット
25 ギヤケース
26 収納部(クラッチ機構用)
27 収納部(減速機構用)
28 外周壁
29 リブ
30 螺孔
31 取付面
32 溝部
33 溝底
34 溝壁
35 空間部
40 プレート
41 モータ保持部
42 スクリュー挿通孔
43 出力軸挿通孔
44 逃げ部
45 取付面
46 リブ
47 先端部
48 リブ壁
55 カバー
56 係合部
57 軸支部
60 クラッチ機構
61 クラッチホルダー
62 凸部
63 クラッチギヤ
64 凹部
65 スプリング
66 プッシュナット
67 ワッシャー
68 中心軸
70 減速機構
71 第1ウォームギヤ
72 ヘリカルギヤ
73 第2ウォームギヤ
74 回転軸
80 スクリュー
81 モータ
82 スイッチ回路基板
83 ジョイント
86 O−リング
90 シャフト
91 シャフトホルダー
92 ボール
93 ワッシャー
95 中心軸
98 グリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段と、
前記駆動手段の駆動力を伝達する駆動用ギヤと、
前記駆動手段を保持するプレートと、
前記駆動用ギヤを収納する収納部が設けられているギヤケースと、
前記プレートと前記ギヤケースとを一体に固定する固定手段と、
前記収納部と前記固定手段との間に形成された潤滑材遮断構造と、
を具備することを特徴とする車両用アウトサイドミラー。
【請求項2】
前記潤滑材遮断構造は、前記プレートと前記ギヤケースとの対向する面のうちの一方の面に形成される溝部と、
他方の面に形成され、且つ、形成される面から突出しており、さらに、前記溝部に入り込むリブと、
により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー。
【請求項3】
前記溝部は、溝底が下方に位置する向きで形成されており、
前記リブは、先端部が下方に位置する向きで形成され、且つ、前記溝部に対して上方から入り込むことを特徴とする請求項2に記載の車両用アウトサイドミラー。
【請求項4】
前記溝部は、前記リブが前記溝部に入り込んで前記プレートと前記ギヤケースとを一体に固定した際に、前記リブの先端部から溝底が離れるように形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用アウトサイドミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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