車両用ウィンドウガラスの破損検出装置
【課題】車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる車両用ウィンドウガラスの破損検出装置を提供する。
【解決手段】クリップ40は、車両のウィンドウガラス5に取り付けられ、ウィンドウガラス5の面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。磁気センサによりウィンドウガラス5の破損に伴うクリップ40の落下が検出される。クリップ40から側方に不正工具挿入防止用突起54が突出しており、ウィンドウガラス5とアウタパネルとの隙間が狭くなっている。クリップ40から下方に検出具保持防止用突起67が突出しており、不正工具によるクリップ40の保持を防止している。
【解決手段】クリップ40は、車両のウィンドウガラス5に取り付けられ、ウィンドウガラス5の面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。磁気センサによりウィンドウガラス5の破損に伴うクリップ40の落下が検出される。クリップ40から側方に不正工具挿入防止用突起54が突出しており、ウィンドウガラス5とアウタパネルとの隙間が狭くなっている。クリップ40から下方に検出具保持防止用突起67が突出しており、不正工具によるクリップ40の保持を防止している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウィンドウガラスの破損検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においてウィンドウガラス破損検出具が開示されており、このウィンドウガラス破損検出具は、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢し、ウィンドウガラスの破損に伴うウィンドウガラスの一部領域での粉砕を行なう。そして、この検出具の落下をセンサにて検出することによりウィンドウガラスの破損が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−96448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検出具の落下からウィンドウガラスの破損を検出する装置においては、ドアのウェザーストリップを取り外して特殊な工具(帯板の先端を曲げたもの等)をドアの内部に差し込んで検出具を落下しないように固定し、この状態でウィンドウガラスを破損するとウィンドウガラスの破損を検出できない可能性がある。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる車両用ウィンドウガラスの破損検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ウィンドウガラス破損検出具が車両のウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。一方、ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出する不正工具挿入防止用突起により、ウィンドウガラスと車体との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ウィンドウガラス破損検出具が車両のウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。一方、ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出する検出具保持防止用突起により、不正工具によるウィンドウガラス破損検出具の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、を備えたことを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ウィンドウガラス破損検出具が車両のウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。一方、ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出する不正工具挿入防止用突起により、ウィンドウガラスと車体との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具の挿入が防止される。また、ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出する検出具保持防止用突起により、不正工具によるウィンドウガラス破損検出具の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0012】
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置において、前記ウィンドウガラスは車両のドアに開閉可能に設けられた開閉式ウィンドウガラスであるとよい。
【0013】
請求項5に記載のように、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置において、前記ウィンドウガラス破損検出具は、前記ウィンドウガラスの下端部においてウィンドウガラスを挟持し、かつ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で互いに逆方向に自身の弾性にて付勢してウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの一部領域での粉砕を行なうクリップであるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用車における右前ドアでの分解斜視図。
【図2】乗用車における右前ドアでの概略正面図。
【図3】図2のA−A線での縦断面図。
【図4】第1の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の斜視図。
【図5】クリップの分解斜視図。
【図6】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図7】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図8】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図9】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図10】不正工具の斜視図。
【図11】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図12】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図13】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図14】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図15】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための正面図。
【図16】(a)は別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図17】(a)は別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図18】別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図。
【図19】別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図。
【図20】第2の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の斜視図。
【図21】(a)は第3の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は(a)のA−A線での断面図。
【図22】(a)は第4の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の正面図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を説明する。
図1は、乗用車における右前ドアでの分解斜視図であり、図2は乗用車における右前ドアでの概略正面図である。
【0017】
図1に示すように、車両ドア1はアウタパネル2とインナパネル3を具備している。アウタパネル2とインナパネル3の間に、強化ガラスからなるウィンドウガラス5が配置されている。ウィンドウガラス5の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。車両ドア1のインナパネル3の内側にはドアトリムが取り付けられている。
【0018】
車両ドア1の内部には、ウィンドウガラス5を上下動するウィンドウレギュレータ10が収納されている。本実施形態においては、ウィンドウレギュレータ10としてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いている。インナパネル3にはドア部品組付穴3aが穿設されており、このドア部品組付穴3aを塞ぐようにモジュラーパネル6が設けられている。
【0019】
Xアーム式ウィンドウレギュレータ10は、ベースプレート(固定ベース)11を介して、モジュラーパネル6の室外側の面に支持されている。即ち、モジュラーパネル6の室外側の面に固定するベースプレート11には、Xアーム式ウィンドウレギュレータ10のリフトアーム12の軸13が支持されている。ベースプレート11には電動駆動ユニット14が固定されている。リフトアーム12は、図2に示すように軸13を中心とするセクタギヤ(ドリブンギヤ)15を一体に有しており、図1の電動駆動ユニット14は、このセクタギヤ15と噛み合うピニオン16(図2)及びその駆動モータ(図示せず)を備えている。
【0020】
図2において、リフトアーム12の長さ方向の中間部分には、軸17でイコライザアーム18の中間部分が枢着されている。リフトアーム12とイコライザアーム18の上端部(先端部)にはそれぞれ、ガイドピース(ローラ)19,20が回転及び傾動可能に枢着されており、イコライザアーム18の下端部には、ガイドピース(ローラ)21が枢着されている。
【0021】
このリフトアーム12のガイドピース19と、イコライザアーム18のガイドピース20とは、ウィンドウガラスブラケット22に移動自在に嵌められ、イコライザアーム18のガイドピース21は、図1のモジュラーパネル6の室外側の面に固定するイコライザアームブラケット(姿勢維持レール)23に移動自在に案内される。
【0022】
一方、ウィンドウガラス5の下縁にはその前後においてウィンドウガラスホルダ24が固定されている。このウィンドウガラスホルダ24は、予めウィンドウガラス5の下縁に固定され、このウィンドウガラスホルダ24を有するウィンドウガラス5が、アウタパネル2とインナパネル3の隙間から挿入されて、ボルト25によりウィンドウガラスブラケット22に固定されている。
【0023】
図2に示すように、前後一対のガラスラン26が立設されている。このガラスラン26はゴム材よりなる。レール部材としての前後一対のガラスラン26により車両のウィンドウガラス5が移動自在に支持されている。即ち、ウィンドウガラス5の前後の端部がガラスラン26に案内されて上下に移動することができるようになっている。
【0024】
図1の電動駆動ユニット14を介してピニオン16を正逆に駆動すると、セクタギヤ15を介してリフトアーム12が軸13を中心に揺動し、その結果、ウィンドウガラスブラケット22(ウィンドウガラス5)が、イコライザアーム18、ガイドピース19,20,21、イコライザアームブラケット23により略水平状態に保持されながら昇降運動する。このようにウィンドウガラス5が昇降され、ウィンドウガラス5により車両の開口部4が開閉自在となっている。
【0025】
図2のA−A線での縦断面を図3に示す。図3において、不正侵入防止用の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置30が車両ドア1の内部に配置されている。破損検出装置30は、ウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40と磁気センサ80を有している。
【0026】
図4には車両用ウィンドウガラスの破損検出装置30の斜視図を示す。図5にはクリップ40の分解斜視図を示し、図6(a),(b),(c)はクリップ40を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図である。
【0027】
図3において、アウタパネル2とインナパネル3との間にウィンドウガラス5がウェザーストリップ7によりシールされた状態で配置されている。また、インナパネル3の内側にはドアトリム8が配置されている。クリップ40はウィンドウガラス5の下端部に配置され、ウィンドウガラス5を挟んでいる(ウィンドウガラス5に取り付けられている)。
【0028】
図5に示すように、クリップ40は、ウィンドウガラス5に対し挟持力を付与する金具としてのクリップ本体50と、樹脂成形品60と、磁石70により構成されている。樹脂成形品60は、ウィンドウガラス5とクリップ本体50との間に介在されると共に永久磁石70を封止保持している(磁石70を樹脂でモールドしている)。図4,6に示すように、クリップ本体50における正面側には永久磁石70が配置されている。
【0029】
図5に示すように、クリップ本体50は、一枚の板ばね用鋼板を折り曲げて構成されている。クリップ本体50は、ウィンドウガラスを挟む第1および第2部材51,52と折り曲げ部(連結部)53を有している。背面側の第1部材51は正方形状をなし、正面側の第2部材52は左右の立設部52a,52bを有している。背面側の第1部材51と正面側の第2部材52の間にウィンドウガラス5が配置され(図6参照)、第1部材51と第2部材52はウィンドウガラス5に対し互いに接近する方向に付勢されている。
【0030】
折り曲げ部53は第1部材51と第2部材52を連結している。この折り曲げ部53は、二段に折り曲げられ、二段目の折り曲げ部53bの幅はウィンドウガラス5の厚みよりも狭く、一段目の折り曲げ部53aにおいてウィンドウガラス5の端面が位置している(図6参照)。つまり、クリップ本体50の折り曲げ部53には段差部が形成され、段差部に図6に示すようにウィンドウガラス5の端面が位置しており、かつ、ウィンドウガラス5の下端まで嵌らないようになっている(下辺部付近でウィンドウガラス5を挟み込まないようになっている)。
【0031】
図5において、第2部材52での左右の立設部52a,52bの上端部からアーム部52c,52dが互いに接近する方向に延びている。第2部材52での立設部52a,52bおよびアーム部52c,52dで囲まれた領域に対応する箇所に第1部材51が位置している。
【0032】
樹脂成形品60は、前面プレート部61と下面台座部62と磁石封止部63と背面側保持部64を有し、これらは一体成形されている。図5、図6(b)に示すように、下面台座部62は上面が平坦に形成され、当該平坦部にウィンドウガラス5が載置されている。そして、図6(b)に示すように、下面台座部62がクリップ本体50の折り曲げ部53とウィンドウガラス5の間に位置する。また、下面台座部62の前端から板状の前面プレート部61が立設されている。前面プレート部61は長方形状をなし、中央部には長方形の貫通孔61aが形成されている。そして、図6(b)に示すように、前面プレート部61がクリップ本体50の第2部材52とウィンドウガラス5の間に位置する。
【0033】
さらに、樹脂成形品60において、左右に延びる下面台座部62における前端での中央部には磁石封止部63が立設されている。磁石封止部63は、その内部に四角板状の磁石(フェライト磁石)70を封止しており、磁石封止部63も四角板状をなしている。磁石封止部63は、図6(a)に示すように、左右に延びる貫通孔61aにおける中央部に上下に延びるように配置されている。図6(a)において、磁石封止部63の上部は貫通孔61aの内部に位置し、下部は貫通孔61aよりも下方に位置している。磁石封止部63の下端から背面側保持部64が延設されている。そして、図6(c)に示すように、背面側保持部64がクリップ本体50の第1部材51とウィンドウガラス5の間に位置する。ここで、クリップ本体50の第1部材51には貫通孔51a(図5、図6(c)参照)が形成され、この貫通孔51aに樹脂成形品60の背面側保持部64に形成した突起64aが嵌合している。
【0034】
図6(b)に示すように、クリップ本体50は、第2部材52がウィンドウガラス5の室内側の面(裏面5b側)に位置し、第1部材51がウィンドウガラス5の室外側の面(表面5a側)に位置している。そして、クリップ本体50の第1部材51は、図6(a)に示すように第2部材52での立設部52a,52bおよびアーム部52c,52dで囲まれた領域に対応する場所で、図6(c)に示すようにウィンドウガラス5の表面5aから付勢している。よって、第2部材52におけるウィンドウガラス5への付勢部はウィンドウガラス5の面内において2箇所に離間して第1部材51におけるウィンドウガラス5への付勢部を挟むように設けられている。
【0035】
図5、図6(c)に示すように、樹脂成形品60の磁石封止部63と背面側保持部64とは対向している。樹脂成形品60の背面側保持部64の前面側とウィンドウガラス5とは両面テープ65(図9(c)参照)で接着固定されている。また、樹脂成形品60の磁石封止部63の背面側とウィンドウガラス5とは両面テープ66(図9(c)参照)で接着固定されている。
【0036】
組み立て順序としては、図5に示すように、ウィンドウガラス5の裏面5bに樹脂成形品60の磁石封止部63を両面テープ66で接着固定する。また、ウィンドウガラス5の表面5aに樹脂成形品60の背面側保持部64を両面テープ65で接着固定する。これにより樹脂成形品60がウィンドウガラス5に固定される。その後、ウィンドウガラス5に対し樹脂成形品60の外方からクリップ本体50をウィンドウガラス5を挟み込むように取り付ける。このとき、クリップ本体50の第1部材51の貫通孔51aに樹脂成形品60の背面側保持部64の突起64aが嵌合して樹脂成形品60にクリップ本体50が嵌合にて固定される。
【0037】
このようにして、金具としてのクリップ本体50は、ウィンドウガラス5が配置される第1部材51と第2部材52の間において第1部材51と第2部材52がウィンドウガラス5の面内でずれた位置で互いに接近する方向に付勢されている。即ち、ウィンドウガラス5の表面5aと裏面5bにおいて違う場所でウィンドウガラス5に対し力が加わる。また、クリップ本体50はウィンドウガラス5の下端部を所定の力以上で挟持(把持)している。
【0038】
また、クリップ40には、車両外部からの不正工作を防止するために、図3,6等に示すように突起54,67が設けられている。詳しくは、突起54は、クリップ40における第1部材51の上端から水平方向に突出しており、ウィンドウガラス5と、車体としてのアウタパネル2との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起となっている。不正工具挿入防止用突起54は四角板状をなし、鋼板を曲げ加工することにより形成されている。突起67は、クリップ40における磁石封止部63の下面から下方に突出しており、不正工具によるウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40の保持を防止する検出具保持防止用突起となっている。検出具保持防止用突起67は図6(a)に示すように左端を頂点とする三角板状をなし、樹脂成形品60(磁石封止部63)と一体成形にて形成されている。なお、クリップ40の磁石封止部63の下面はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置し、磁石封止部63から下方に突出する検出具保持防止用突起67の下端もウィンドウガラス5の下端より下方に位置している。
【0039】
磁気センサ80は、図3に示すように、インナパネル3に固定されている。ここで、鉛直方向をX方向とするとともに、水平方向をY方向とする。クリップ40はX方向(鉛直方向)に移動、即ち、落下することになる。
【0040】
磁気センサ80は、ウィンドウガラス5全閉時の磁石70と同じ高さに配置されている(磁石70に対しY方向に所定の距離だけ離間して配置されている)。磁気センサ80は磁石70との距離に応じた信号を出力する。磁気センサ80としてホール素子を挙げることができる。
【0041】
磁気センサ80によりウィンドウガラス5の破損に伴うウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40の落下を検出することができるようになっている。つまり、磁気センサ80における磁束密度の変化からガラス割れ時の磁石70の落下を検出することができる。
【0042】
磁気センサ80には図3に示すようにコントローラ90が接続されている。コントローラ90はA/D変換器やマイコンを具備しており、マイコンは磁気センサ80からの信号をA/D変換したものを取り込む。コントローラ90には警報部91が接続されている。
【0043】
次に、このように構成した車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用、即ち、ウィンドウガラス5が壊された(割られた)ときの動作を説明する。
通常時においては、図6に示すように、乗員が車両から離れるときにウィンドウガラス5を全閉または数cmほど少し開いている。コントローラ90は磁気センサ80の出力レベルからウィンドウガラス5の位置を検出しており、パーキングブレーキが操作されている時にウィンドウガラス5が全閉または数cm開いているとガラスの割れ検知モードを設定する。一方、ウィンドウガラス5の端部に配置したクリップ40がウィンドウガラス5の端部を挟持している。詳しくは、クリップ40のクリップ本体50の自身の弾性力にて第1部材51と第2部材52との間にウィンドウガラス5を挟持している。また、磁気センサ80の前方に磁石70が位置している。
【0044】
この状態から、ウィンドウガラス5が破損すると、その強度が低下する。つまり、強化ガラスからなるウィンドウガラス5の一部が破損すると、図7に示すようにウィンドウガラス5のすべてにひびが入り強度が著しく低下する(ガラス割れ時にガラス強度が低下する)。
【0045】
この強度低下に伴って図8に示すようにクリップ40がその挟持力によりウィンドウガラス5の一部領域である端部(下端部)を粉砕する。つまり、自身のばね力により強化ガラスからなるウィンドウガラス5が部分的に完全に粉砕される(粉々にされる)。これにより、図9に示すように、クリップ40が落下する。詳しくは、図7,8に示すように、第1部材51によりウィンドウガラス5が押圧され、ウィンドウガラス5が粉々に粉砕されて、クリップ40が落下する。
【0046】
磁気センサ80において、ウィンドウガラス5が破損される前においては磁気センサ80の出力値は、所定の閾値以上の値を示すが、ウィンドウガラス5の破損に伴いクリップ40が落下すると、磁気センサ80の出力値が所定の閾値以上の値を示さなくなる。これにより、クリップ40の落下、即ち、ウィンドウガラス5の破損が検出される。よって、ウィンドウガラス5の破損に伴いウィンドウガラス5が完全に粉砕せずに残るような場合でもウィンドウガラス5の破損を確実に検出することができる。
【0047】
このようにして、強化ガラスは一部が割れるとすべてにひびが入り強度が著しく低下する特徴を利用して未検知、誤検知を極力少なくすることができる。
また、図2に示すように、ウィンドウガラス5が全閉位置にないときも、ウィンドウガラス5が破損するとクリップ40が落下するため、ウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0048】
また、図6のクリップ本体50は板ばね用鋼板を折り曲げて対向させた第1部材51と第2部材52を有し、ウィンドウガラス5が配置される第1部材51と第2部材52の間において第1部材51と第2部材52がウィンドウガラス5の面内でずれた位置で自身の弾性にてガラス面(ウィンドウガラスの表面5a、裏面5b)に対して互いに逆方向に(互いに接近する方向)に付勢されている。これにより、ウィンドウガラス5の表面5aと裏面5bにおいて違う場所でウィンドウガラス5に対し力が加わっているので、ウィンドウガラス5の破損に伴って(ウィンドウガラス5の強度の低下に伴って)ウィンドウガラス5の端部を確実に粉砕してウィンドウガラス5の破損を確実に検出することができる。
【0049】
図3において、磁気センサ80の出力値によってクリップ40の落下を検出することによりウィンドウガラス5の破損が検出されると、コントローラ90は警報部91を作動して警報を発する。
【0050】
次に、ドア1のウェザーストリップ7を取り外し、図10に示す不正工具150をドアの内部に差し込んでクリップ40を落下しないように固定しようとした場合について説明する。即ち、ウィンドウガラス5を破損してもウィンドウガラス5の破損を検出できない不正が行なわれようとした場合について説明する。つまり、ガラス割れ時、磁石落下による磁束密度変化をセンサで検知する構成を採っているため、特殊な工具(不正工具150)をドア1の内部に挿入しクリップ40(磁石70)を固定した上で(外部から不正工作をした上で)ウィンドウガラス5が割られるとクリップ40(磁石70)が落下せずにガラス割れを検知不能とすることに対する対策を講じた本実施形態の作用を説明する。図10に示す不正工具150は、帯板の先端を曲げたものである。
【0051】
クリップ40から側方に突出する不正工具挿入防止用突起54によって、ウィンドウガラス5と、車体としてのアウタパネル2との隙間が狭くなっている。これにより、図11に示すように、不正工具150の挿入スペースを不正工具挿入防止用突起54の長さW3分だけ狭くでき、不正工具挿入防止用突起54がない場合の挿入スペース幅W1を、突起54を設けることによりW2(=W1−W3)にすることができる。さらに、図12に示すように、不正工具挿入防止用突起54により不正工具150を突起54の長さW3分だけクリップ40(磁石70)から遠ざけることができ、クリップ40(磁石70)を保持させにくくすることができる。
【0052】
また、クリップ40から下方に突出する検出具保持防止用突起67によって、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40の保持が防止される。つまり、図13に示すように、不正工具150の進行経路に突起67が配置され、突起67により不正工具150の進行が遮られる。これにより、不正工具150のすべり挿入を防ぐことができ、クリップ40(磁石70)を保持させなくすることができる。つまり、図14に示すように、検出具保持防止用突起67がない場合には、不正工具150のすべりによる挿入が可能となるが、検出具保持防止用突起67を設けることによりクリップ40(磁石70)の保持を防止することができる。
【0053】
さらに、検出具保持防止用突起67は、図15の正面図に示すように、突起下面が斜状をなし、不安定な形状となっている。よって、突起下面が水平である場合に比べて、ウィンドウガラス5が割れた時に不正工具150で磁石70を支えにくくすることができ、磁石70を立ったままの状態に保持できない。その結果、磁石70が倒れてしまい磁石70の向きが変わりガラス割れを検出することができる(異常を検出できる)。
【0054】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40から側方に突出する不正工具挿入防止用突起54により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0055】
(2)不正工具150が挿入された時に、クリップ40から下方に突出する検出具保持防止用突起67により、不正工具150によるクリップ40の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0056】
(3)ウィンドウガラス5は車両のドアに開閉可能に設けられた開閉式ウィンドウガラスであるので、ドアでの不正を防止できる。
(4)ウィンドウガラス破損検出具は、ウィンドウガラス5の下端部においてウィンドウガラス5を挟持し、かつ、ウィンドウガラス5の面内でずれた位置で互いに逆方向に自身の弾性にて付勢してウィンドウガラス5の破損に伴うウィンドウガラス5の一部領域での粉砕を行なうクリップ40である。よって、確実にウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0057】
本実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・図16に示す不正工具挿入防止用突起100を用いてもよい。突起100はクリップ40の第1部材51の上端ではなく高さ方向の中央部に設けている。
【0058】
・図17に示す検出具保持防止用突起101を用いてもよい。突起101はその下面が水平方向に延設されている。特に、図17の突起101は先端(下端)が尖っており、これにより不正工具150をすべり込ませにくくしている。
【0059】
・図18に示す検出具保持防止用突起102を用いてもよい。突起102はその下面が水平方向の中央部において先端が尖った形状をなしている。この突起102においても不正工具150に対して磁石70を不安定にして不正工具150で磁石70を支えにくくしている。
【0060】
・図19に示す検出具保持防止用突起103を用いてもよい。突起103はクリップ40の磁石封止部63での左右方向の一端部に設けられ、下方向に突出している。この突起103においても不正工具150に対して磁石70を不安定にして不正工具150で磁石70を支えにくくしている。
【0061】
・磁石70に不正工具挿入防止用突起(54)や検出具保持防止用突起(67)を設けてもよい。
・不正工具挿入防止用突起(54)と検出具保持防止用突起(67)は、クリップ40(磁石70)と一体であっても別部材であってもよい。
【0062】
・不正工具挿入防止用突起(54)のみ設けても、検出具保持防止用突起(67)のみ設けてもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0063】
本実施形態においては図20に示す構成となっている。図20において、ウィンドウガラス破損検出具199は、ウィンドウガラス5の一部領域においてウィンドウガラス5の片面に貼着される。よって、本実施形態では検出具199はウィンドウガラス5の端部でなくてもよい。一方、ウィンドウガラス5の破損に伴う検出具199の少なくとも一部の変位が磁気センサ80により検出される。
【0064】
検出具199は、本体部200と磁石70により構成されている。本体部200は、板ばね用鋼板、詳しくは帯板を折り曲げて構成され、第1接触部201と第2接触部202と第3接触部203と第1付勢用アーム部204と第2付勢用アーム部205を有している。第1接触部201は平板状をなし、その左側面から円弧状をなすアーム部204が延び、そのアーム部204の先端には平板状の第2接触部202が連結されている。同様に、第1接触部201の右側面から円弧状をなすアーム部205が延び、そのアーム部205の先端には平板状の第3接触部203が連結されている。第1接触部201には板状の永久磁石70が固定されている。
【0065】
検出具199をウィンドウガラス5に取り付ける前においては本体部200の第1接触部201がウィンドウガラス5の片面に当接している状態では第2接触部202と第3接触部203がウィンドウガラス5の片面から離間している。そして、本体部200の第2接触部202と第3接触部203とを本体部200のばね力に抗してウィンドウガラス5に接着する。すると、本体部200の第2接触部202と第3接触部203は力F1にてウィンドウガラス5の裏面5b側へ付勢され、第1接触部201は力F2にてウィンドウガラス5の表面5a側へ付勢される。この状態では、ウィンドウガラス5の片面においてウィンドウガラス5の面内でずれた位置でウィンドウガラス5のガラス面(5a,5b)に対し互いに逆方向にウィンドウガラス5を付勢している。即ち、互い違いに力F1,F2が加わっている。
【0066】
この状態から、ウィンドウガラス5が破損すると、ウィンドウガラス5の強度が低下することによって本体部200がその付勢力により、ウィンドウガラス5の破損に伴うウィンドウガラス5の一部領域での粉砕を行う。これにより、検出具199(磁石70)が落下し、磁石70の落下が磁気センサ80により検出される。その結果、ウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0067】
さらに、検出具199には、検出具199から側方に突出する不正工具挿入防止用突起210,211が設けられている。詳しくは、検出具199における本体部200の第2接触部202の下端から突起210が延び、この突起210はウィンドウガラス5の下から水平方向かつ室外側に突出している。同様に、本体部200の第3接触部203の下端から突起211が延び、この突起211はウィンドウガラス5の下から水平方向かつ室外側に突出している。この突起210,211により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止してウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0068】
また、検出具199には、検出具199から下方に突出する検出具保持防止用突起212が設けられている。詳しくは、検出具199における本体部200の第1接触部201の下端から突起212が下方に突出し、突起212の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。この突起212により、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具199の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止してウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0069】
なお、突起210,211はウィンドウガラス5との接触を避けるべく下方に延ばした後に側方に突出させたが、これに代わり、ウィンドウガラス5を貫通させて直接、側方に突出させてもよい。また、磁石70に不正工具挿入防止用突起(210,211)や検出具保持防止用突起(212)を設けてもよい。また、不正工具挿入防止用突起(210,211)と検出具保持防止用突起(212)は、検出具199(磁石70)と一体であっても別部材であってもよい。また、不正工具挿入防止用突起(210,211)のみ設けても、検出具保持防止用突起(212)のみ設けてもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態においては図21に示す構成となっている。図21において、ウィンドウガラス5には貫通孔5cが形成されている。貫通孔5cは上下方向に延びる長穴である。ウィンドウガラス破損検出具219はウィンドウガラス5の貫通孔5cを貫通する状態で固定され、ウィンドウガラス5の裏面5bにおいてプレート部222,223がウィンドウガラス5の裏面5bに当接し、また、ウィンドウガラス5の裏面5bにおいて磁石71を把持している。
【0071】
検出具219は本体部220と磁石71により構成されており、本体部220は正面側において永久磁石71を車両用ウィンドウガラスの非破損時において把持し、破損時には把持を解除することができるようになっている。永久磁石71は四角板状をなし、かつ、左右両側面にコ字状の切り欠き(凹部)71aが形成されている。
【0072】
本体部220は固定部221とプレート部222,223を有し、固定部221とプレート部222,223は、左右方向に延びる一枚の帯板状の板ばね用鋼板を折り曲げて構成されている。固定部221は略コ字状に形成され、ウィンドウガラス5の貫通孔5cに変形して挿入される。プレート部222,223は左右に延びる長方形をなし、固定部221から左右に方向に延びている。ウィンドウガラス5の表面5a側において固定部221の係合部221aがウィンドウガラス5の貫通孔5cよりも幅が広くなっており、ウィンドウガラス5の貫通孔5cの縁部で接触している。また、ウィンドウガラス5の裏面5b側においてプレート部222,223が、自身のばね力に抗して変形しており、ウィンドウガラス5の裏面5bを付勢している。つまり、固定部221の係合部221aとプレート部222,223によりウィンドウガラス5の貫通孔5cを通してウィンドウガラス5の両面から挟持し、かつ、力F3,F4で表したようにウィンドウガラス5の一方の面と他方の面で貫通孔5cからの距離が異なる位置で互いに接近する方向に付勢している。即ち、図21(b)に二点鎖線にてウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられる前の位置を表し、ウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられると、プレート部222,223がウィンドウガラス5の裏面5b側に変形してウィンドウガラス5の裏面5bを付勢する。
【0073】
検出具219の本体部220において永久磁石71を保持するための一対のアーム225,226が設けられている。この一対のアーム225,226によりプレート部222,223と協働して永久磁石71をウィンドウガラスの非破損時において把持し、破損時には把持を解除することができるようになっている。詳しくは、検出具219の本体部220において左右方向の中央部には透孔224が形成されている。本体部220において透孔224の左右の側壁から一対のアーム225,226が中央部に向けて突出している。アーム225,226は直線的に延びる帯板状をなし、先端部において2回折り曲げられている。検出具219をウィンドウガラス5に取り付けた状態で永久磁石71の角部(切り欠き71aでの角部)がアーム225,226の先端の磁石係止部225a,226aに係合して永久磁石71が左右方向および上下方向に移動できないようになっている。即ち、ウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられる前では磁石71から離れた場所に位置する。そして、ウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられると、アーム225,226が磁石係止部225a,226aにて磁石71の両側を正面側から固定する。
【0074】
そして、ウィンドウガラス5が破損すると、ウィンドウガラス5の強度が低下する。これにより、検出具219の本体部220がその付勢力によりウィンドウガラス5の貫通孔5cの周辺部を粉砕する。つまり、ウィンドウガラス破損検出具219の本体部220が車両のウィンドウガラス5の面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢しており、ウィンドウガラス5の破損に伴い把持を解除された磁石71が落下し、センサ80により磁石70の落下が検出される。これによりウィンドウガラス5の破損が検出できる。
【0075】
さらに、検出具219には、検出具219から側方に突出する不正工具挿入防止用突起230が設けられている。詳しくは、検出具219における本体部220の固定部221から突起230が水平方向かつ室外側に突出している。この突起230により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止してウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0076】
また、検出具219には、検出具219から下方に突出する検出具保持防止用突起231,232が設けられている。詳しくは、検出具219における本体部220のプレート部222の下端から突起231が下方に突出し、突起231の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。同様に、本体部220のプレート部223の下端から突起232が下方に突出し、突起232の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。この突起231,232により、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具219の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0077】
なお、磁石71に不正工具挿入防止用突起(230)や検出具保持防止用突起(231,232)を設けてもよい。また、不正工具挿入防止用突起(230)と検出具保持防止用突起(231,232)は、検出具219(磁石71)と一体であっても別部材であってもよい。また、不正工具挿入防止用突起(230)のみ設けても、検出具保持防止用突起(231,232)のみ設けてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0078】
本実施形態においては図22に示す構成となっている。図22において、ウィンドウガラス破損検出具240は、円弧部241と連結部242と固定部243と磁石72により構成されている。円弧部241は弾性部材よりなり、円弧状(お椀形)をなしている。円弧部241の内面側の中央部には円筒状の連結部242が固定されている。連結部242の径はウィンドウガラス5の貫通孔5dの径よりも僅かに小さくなっており、連結部242はウィンドウガラス5の裏面5b側から貫通孔5dに挿入される。また、円筒状の連結部242の内周面242aは螺刻されている。円弧部241の外周面には磁石72が固定されている。固定部243はネジ構造を有し、頭部243aからネジ部243bが突出している。頭部243aはウィンドウガラス5の貫通孔5dの径よりも僅かに大きな径を有している。そして、ウィンドウガラス5の表面5a側から固定部243のネジ部243bを連結部242の内周面242aに螺入することにより、円弧部241を平らな状態で取り付ける。このとき、力F3,F4が作用して互い違いに力F3,F4が加わる。これにより、ウィンドウガラス5の両面から挟持してウィンドウガラス5の一方の面と他方の面で貫通孔5dからの距離が異なる位置で互いに接近する方向にウィンドウガラス5を付勢している。
【0079】
そして、ウィンドウガラス5が破損すると、ウィンドウガラス5の強度が低下する。これにより、検出具240が付勢力F3,F4によりウィンドウガラス5の貫通孔5dの周辺部を粉砕して検出具240(磁石72)が落下する。磁気センサ80により磁石72の落下が検出される。これによりウィンドウガラス5の破損が検出できる。また、検出具240はウィンドウガラス5に接着することなくウィンドウガラス5に取り付けることができる。
【0080】
さらに、検出具240には、検出具240から側方に突出する不正工具挿入防止用突起250が設けられている。詳しくは、検出具240の固定部243の頭部243aから突起250が水平方向かつ室外側に突出している。この突起250により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0081】
また、検出具240には、検出具240から下方に突出する検出具保持防止用突起251が設けられている。詳しくは、検出具240の円弧部241から突起251が下方に突出し、突起251の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。この突起251により、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具240の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0082】
なお、磁石72に不正工具挿入防止用突起(250)や検出具保持防止用突起(251)を設けてもよい。また、不正工具挿入防止用突起(250)と検出具保持防止用突起(251)は、検出具240(磁石72)と一体であっても別部材であってもよい。また、不正工具挿入防止用突起(250)のみ設けても、検出具保持防止用突起(251)のみ設けてもよい。
【0083】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・側方に突出する不正工具挿入防止用突起は必ずしも真横の方向(水平方向)に突出させなくてもよい。
【0084】
・下方に突出する検出具保持防止用突起は必ずしも真下(鉛直方向)に突出させなくてもよい。
・ウィンドウレギュレータとしてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いたが、ケーブル式ウィンドウレギュレータを用いてもよい。
【0085】
・駆動手段としてはモータを有するものだけではなく、乗員の手動によるものでもよい。
・ウィンドウガラスの破損検出装置を乗用車における右前ドアに適用したが、他の側部ドアに適用してもよいことは云うまでもなく、また、側部ドアの他にも、後部ドアや屋根に設けられた開閉式ガラスルーフに適用してもよい。
【0086】
・磁気センサに代わり、赤外線センサを用い、例えばクリップ40に赤外線センサと対向するように赤外線反射膜を設けてもよい。
・クリップ40等はウィンドウガラス5の下端部に設置したが、これに限ることなく、例えばウィンドウガラス5の側面での下部に設置してもよい。
【0087】
・開閉式ウィンドウガラスではなく固定式(嵌め込み式)のウィンドウガラスに取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
2…アウタパネル、5…ウィンドウガラス、40…クリップ、54…不正工具挿入防止用突起、67…検出具保持防止用突起、70…磁石、71…磁石、72…磁石、80…磁気センサ、100…不正工具挿入防止用突起、101…検出具保持防止用突起、102…検出具保持防止用突起、103…検出具保持防止用突起、199…ウィンドウガラス破損検出具、210…不正工具挿入防止用突起、211…不正工具挿入防止用突起、212…検出具保持防止用突起、219…ウィンドウガラス破損検出具、230…不正工具挿入防止用突起、231…検出具保持防止用突起、232…検出具保持防止用突起、240…ウィンドウガラス破損検出具、250…不正工具挿入防止用突起、251…検出具保持防止用突起。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウィンドウガラスの破損検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においてウィンドウガラス破損検出具が開示されており、このウィンドウガラス破損検出具は、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢し、ウィンドウガラスの破損に伴うウィンドウガラスの一部領域での粉砕を行なう。そして、この検出具の落下をセンサにて検出することによりウィンドウガラスの破損が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−96448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検出具の落下からウィンドウガラスの破損を検出する装置においては、ドアのウェザーストリップを取り外して特殊な工具(帯板の先端を曲げたもの等)をドアの内部に差し込んで検出具を落下しないように固定し、この状態でウィンドウガラスを破損するとウィンドウガラスの破損を検出できない可能性がある。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる車両用ウィンドウガラスの破損検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ウィンドウガラス破損検出具が車両のウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。一方、ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出する不正工具挿入防止用突起により、ウィンドウガラスと車体との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ウィンドウガラス破損検出具が車両のウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。一方、ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出する検出具保持防止用突起により、不正工具によるウィンドウガラス破損検出具の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、を備えたことを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ウィンドウガラス破損検出具が車両のウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢している。一方、ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出する不正工具挿入防止用突起により、ウィンドウガラスと車体との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具の挿入が防止される。また、ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出する検出具保持防止用突起により、不正工具によるウィンドウガラス破損検出具の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0012】
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置において、前記ウィンドウガラスは車両のドアに開閉可能に設けられた開閉式ウィンドウガラスであるとよい。
【0013】
請求項5に記載のように、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置において、前記ウィンドウガラス破損検出具は、前記ウィンドウガラスの下端部においてウィンドウガラスを挟持し、かつ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で互いに逆方向に自身の弾性にて付勢してウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの一部領域での粉砕を行なうクリップであるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用車における右前ドアでの分解斜視図。
【図2】乗用車における右前ドアでの概略正面図。
【図3】図2のA−A線での縦断面図。
【図4】第1の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の斜視図。
【図5】クリップの分解斜視図。
【図6】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図7】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図8】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図9】(a)はクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図10】不正工具の斜視図。
【図11】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図12】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図13】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図14】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための縦断面図。
【図15】車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用を説明するための正面図。
【図16】(a)は別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図17】(a)は別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図18】別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図。
【図19】別例の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置におけるクリップの正面図。
【図20】第2の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の斜視図。
【図21】(a)は第3の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は(a)のA−A線での断面図。
【図22】(a)は第4の実施形態における車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の正面図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を説明する。
図1は、乗用車における右前ドアでの分解斜視図であり、図2は乗用車における右前ドアでの概略正面図である。
【0017】
図1に示すように、車両ドア1はアウタパネル2とインナパネル3を具備している。アウタパネル2とインナパネル3の間に、強化ガラスからなるウィンドウガラス5が配置されている。ウィンドウガラス5の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。車両ドア1のインナパネル3の内側にはドアトリムが取り付けられている。
【0018】
車両ドア1の内部には、ウィンドウガラス5を上下動するウィンドウレギュレータ10が収納されている。本実施形態においては、ウィンドウレギュレータ10としてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いている。インナパネル3にはドア部品組付穴3aが穿設されており、このドア部品組付穴3aを塞ぐようにモジュラーパネル6が設けられている。
【0019】
Xアーム式ウィンドウレギュレータ10は、ベースプレート(固定ベース)11を介して、モジュラーパネル6の室外側の面に支持されている。即ち、モジュラーパネル6の室外側の面に固定するベースプレート11には、Xアーム式ウィンドウレギュレータ10のリフトアーム12の軸13が支持されている。ベースプレート11には電動駆動ユニット14が固定されている。リフトアーム12は、図2に示すように軸13を中心とするセクタギヤ(ドリブンギヤ)15を一体に有しており、図1の電動駆動ユニット14は、このセクタギヤ15と噛み合うピニオン16(図2)及びその駆動モータ(図示せず)を備えている。
【0020】
図2において、リフトアーム12の長さ方向の中間部分には、軸17でイコライザアーム18の中間部分が枢着されている。リフトアーム12とイコライザアーム18の上端部(先端部)にはそれぞれ、ガイドピース(ローラ)19,20が回転及び傾動可能に枢着されており、イコライザアーム18の下端部には、ガイドピース(ローラ)21が枢着されている。
【0021】
このリフトアーム12のガイドピース19と、イコライザアーム18のガイドピース20とは、ウィンドウガラスブラケット22に移動自在に嵌められ、イコライザアーム18のガイドピース21は、図1のモジュラーパネル6の室外側の面に固定するイコライザアームブラケット(姿勢維持レール)23に移動自在に案内される。
【0022】
一方、ウィンドウガラス5の下縁にはその前後においてウィンドウガラスホルダ24が固定されている。このウィンドウガラスホルダ24は、予めウィンドウガラス5の下縁に固定され、このウィンドウガラスホルダ24を有するウィンドウガラス5が、アウタパネル2とインナパネル3の隙間から挿入されて、ボルト25によりウィンドウガラスブラケット22に固定されている。
【0023】
図2に示すように、前後一対のガラスラン26が立設されている。このガラスラン26はゴム材よりなる。レール部材としての前後一対のガラスラン26により車両のウィンドウガラス5が移動自在に支持されている。即ち、ウィンドウガラス5の前後の端部がガラスラン26に案内されて上下に移動することができるようになっている。
【0024】
図1の電動駆動ユニット14を介してピニオン16を正逆に駆動すると、セクタギヤ15を介してリフトアーム12が軸13を中心に揺動し、その結果、ウィンドウガラスブラケット22(ウィンドウガラス5)が、イコライザアーム18、ガイドピース19,20,21、イコライザアームブラケット23により略水平状態に保持されながら昇降運動する。このようにウィンドウガラス5が昇降され、ウィンドウガラス5により車両の開口部4が開閉自在となっている。
【0025】
図2のA−A線での縦断面を図3に示す。図3において、不正侵入防止用の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置30が車両ドア1の内部に配置されている。破損検出装置30は、ウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40と磁気センサ80を有している。
【0026】
図4には車両用ウィンドウガラスの破損検出装置30の斜視図を示す。図5にはクリップ40の分解斜視図を示し、図6(a),(b),(c)はクリップ40を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図である。
【0027】
図3において、アウタパネル2とインナパネル3との間にウィンドウガラス5がウェザーストリップ7によりシールされた状態で配置されている。また、インナパネル3の内側にはドアトリム8が配置されている。クリップ40はウィンドウガラス5の下端部に配置され、ウィンドウガラス5を挟んでいる(ウィンドウガラス5に取り付けられている)。
【0028】
図5に示すように、クリップ40は、ウィンドウガラス5に対し挟持力を付与する金具としてのクリップ本体50と、樹脂成形品60と、磁石70により構成されている。樹脂成形品60は、ウィンドウガラス5とクリップ本体50との間に介在されると共に永久磁石70を封止保持している(磁石70を樹脂でモールドしている)。図4,6に示すように、クリップ本体50における正面側には永久磁石70が配置されている。
【0029】
図5に示すように、クリップ本体50は、一枚の板ばね用鋼板を折り曲げて構成されている。クリップ本体50は、ウィンドウガラスを挟む第1および第2部材51,52と折り曲げ部(連結部)53を有している。背面側の第1部材51は正方形状をなし、正面側の第2部材52は左右の立設部52a,52bを有している。背面側の第1部材51と正面側の第2部材52の間にウィンドウガラス5が配置され(図6参照)、第1部材51と第2部材52はウィンドウガラス5に対し互いに接近する方向に付勢されている。
【0030】
折り曲げ部53は第1部材51と第2部材52を連結している。この折り曲げ部53は、二段に折り曲げられ、二段目の折り曲げ部53bの幅はウィンドウガラス5の厚みよりも狭く、一段目の折り曲げ部53aにおいてウィンドウガラス5の端面が位置している(図6参照)。つまり、クリップ本体50の折り曲げ部53には段差部が形成され、段差部に図6に示すようにウィンドウガラス5の端面が位置しており、かつ、ウィンドウガラス5の下端まで嵌らないようになっている(下辺部付近でウィンドウガラス5を挟み込まないようになっている)。
【0031】
図5において、第2部材52での左右の立設部52a,52bの上端部からアーム部52c,52dが互いに接近する方向に延びている。第2部材52での立設部52a,52bおよびアーム部52c,52dで囲まれた領域に対応する箇所に第1部材51が位置している。
【0032】
樹脂成形品60は、前面プレート部61と下面台座部62と磁石封止部63と背面側保持部64を有し、これらは一体成形されている。図5、図6(b)に示すように、下面台座部62は上面が平坦に形成され、当該平坦部にウィンドウガラス5が載置されている。そして、図6(b)に示すように、下面台座部62がクリップ本体50の折り曲げ部53とウィンドウガラス5の間に位置する。また、下面台座部62の前端から板状の前面プレート部61が立設されている。前面プレート部61は長方形状をなし、中央部には長方形の貫通孔61aが形成されている。そして、図6(b)に示すように、前面プレート部61がクリップ本体50の第2部材52とウィンドウガラス5の間に位置する。
【0033】
さらに、樹脂成形品60において、左右に延びる下面台座部62における前端での中央部には磁石封止部63が立設されている。磁石封止部63は、その内部に四角板状の磁石(フェライト磁石)70を封止しており、磁石封止部63も四角板状をなしている。磁石封止部63は、図6(a)に示すように、左右に延びる貫通孔61aにおける中央部に上下に延びるように配置されている。図6(a)において、磁石封止部63の上部は貫通孔61aの内部に位置し、下部は貫通孔61aよりも下方に位置している。磁石封止部63の下端から背面側保持部64が延設されている。そして、図6(c)に示すように、背面側保持部64がクリップ本体50の第1部材51とウィンドウガラス5の間に位置する。ここで、クリップ本体50の第1部材51には貫通孔51a(図5、図6(c)参照)が形成され、この貫通孔51aに樹脂成形品60の背面側保持部64に形成した突起64aが嵌合している。
【0034】
図6(b)に示すように、クリップ本体50は、第2部材52がウィンドウガラス5の室内側の面(裏面5b側)に位置し、第1部材51がウィンドウガラス5の室外側の面(表面5a側)に位置している。そして、クリップ本体50の第1部材51は、図6(a)に示すように第2部材52での立設部52a,52bおよびアーム部52c,52dで囲まれた領域に対応する場所で、図6(c)に示すようにウィンドウガラス5の表面5aから付勢している。よって、第2部材52におけるウィンドウガラス5への付勢部はウィンドウガラス5の面内において2箇所に離間して第1部材51におけるウィンドウガラス5への付勢部を挟むように設けられている。
【0035】
図5、図6(c)に示すように、樹脂成形品60の磁石封止部63と背面側保持部64とは対向している。樹脂成形品60の背面側保持部64の前面側とウィンドウガラス5とは両面テープ65(図9(c)参照)で接着固定されている。また、樹脂成形品60の磁石封止部63の背面側とウィンドウガラス5とは両面テープ66(図9(c)参照)で接着固定されている。
【0036】
組み立て順序としては、図5に示すように、ウィンドウガラス5の裏面5bに樹脂成形品60の磁石封止部63を両面テープ66で接着固定する。また、ウィンドウガラス5の表面5aに樹脂成形品60の背面側保持部64を両面テープ65で接着固定する。これにより樹脂成形品60がウィンドウガラス5に固定される。その後、ウィンドウガラス5に対し樹脂成形品60の外方からクリップ本体50をウィンドウガラス5を挟み込むように取り付ける。このとき、クリップ本体50の第1部材51の貫通孔51aに樹脂成形品60の背面側保持部64の突起64aが嵌合して樹脂成形品60にクリップ本体50が嵌合にて固定される。
【0037】
このようにして、金具としてのクリップ本体50は、ウィンドウガラス5が配置される第1部材51と第2部材52の間において第1部材51と第2部材52がウィンドウガラス5の面内でずれた位置で互いに接近する方向に付勢されている。即ち、ウィンドウガラス5の表面5aと裏面5bにおいて違う場所でウィンドウガラス5に対し力が加わる。また、クリップ本体50はウィンドウガラス5の下端部を所定の力以上で挟持(把持)している。
【0038】
また、クリップ40には、車両外部からの不正工作を防止するために、図3,6等に示すように突起54,67が設けられている。詳しくは、突起54は、クリップ40における第1部材51の上端から水平方向に突出しており、ウィンドウガラス5と、車体としてのアウタパネル2との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起となっている。不正工具挿入防止用突起54は四角板状をなし、鋼板を曲げ加工することにより形成されている。突起67は、クリップ40における磁石封止部63の下面から下方に突出しており、不正工具によるウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40の保持を防止する検出具保持防止用突起となっている。検出具保持防止用突起67は図6(a)に示すように左端を頂点とする三角板状をなし、樹脂成形品60(磁石封止部63)と一体成形にて形成されている。なお、クリップ40の磁石封止部63の下面はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置し、磁石封止部63から下方に突出する検出具保持防止用突起67の下端もウィンドウガラス5の下端より下方に位置している。
【0039】
磁気センサ80は、図3に示すように、インナパネル3に固定されている。ここで、鉛直方向をX方向とするとともに、水平方向をY方向とする。クリップ40はX方向(鉛直方向)に移動、即ち、落下することになる。
【0040】
磁気センサ80は、ウィンドウガラス5全閉時の磁石70と同じ高さに配置されている(磁石70に対しY方向に所定の距離だけ離間して配置されている)。磁気センサ80は磁石70との距離に応じた信号を出力する。磁気センサ80としてホール素子を挙げることができる。
【0041】
磁気センサ80によりウィンドウガラス5の破損に伴うウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40の落下を検出することができるようになっている。つまり、磁気センサ80における磁束密度の変化からガラス割れ時の磁石70の落下を検出することができる。
【0042】
磁気センサ80には図3に示すようにコントローラ90が接続されている。コントローラ90はA/D変換器やマイコンを具備しており、マイコンは磁気センサ80からの信号をA/D変換したものを取り込む。コントローラ90には警報部91が接続されている。
【0043】
次に、このように構成した車両用ウィンドウガラスの破損検出装置の作用、即ち、ウィンドウガラス5が壊された(割られた)ときの動作を説明する。
通常時においては、図6に示すように、乗員が車両から離れるときにウィンドウガラス5を全閉または数cmほど少し開いている。コントローラ90は磁気センサ80の出力レベルからウィンドウガラス5の位置を検出しており、パーキングブレーキが操作されている時にウィンドウガラス5が全閉または数cm開いているとガラスの割れ検知モードを設定する。一方、ウィンドウガラス5の端部に配置したクリップ40がウィンドウガラス5の端部を挟持している。詳しくは、クリップ40のクリップ本体50の自身の弾性力にて第1部材51と第2部材52との間にウィンドウガラス5を挟持している。また、磁気センサ80の前方に磁石70が位置している。
【0044】
この状態から、ウィンドウガラス5が破損すると、その強度が低下する。つまり、強化ガラスからなるウィンドウガラス5の一部が破損すると、図7に示すようにウィンドウガラス5のすべてにひびが入り強度が著しく低下する(ガラス割れ時にガラス強度が低下する)。
【0045】
この強度低下に伴って図8に示すようにクリップ40がその挟持力によりウィンドウガラス5の一部領域である端部(下端部)を粉砕する。つまり、自身のばね力により強化ガラスからなるウィンドウガラス5が部分的に完全に粉砕される(粉々にされる)。これにより、図9に示すように、クリップ40が落下する。詳しくは、図7,8に示すように、第1部材51によりウィンドウガラス5が押圧され、ウィンドウガラス5が粉々に粉砕されて、クリップ40が落下する。
【0046】
磁気センサ80において、ウィンドウガラス5が破損される前においては磁気センサ80の出力値は、所定の閾値以上の値を示すが、ウィンドウガラス5の破損に伴いクリップ40が落下すると、磁気センサ80の出力値が所定の閾値以上の値を示さなくなる。これにより、クリップ40の落下、即ち、ウィンドウガラス5の破損が検出される。よって、ウィンドウガラス5の破損に伴いウィンドウガラス5が完全に粉砕せずに残るような場合でもウィンドウガラス5の破損を確実に検出することができる。
【0047】
このようにして、強化ガラスは一部が割れるとすべてにひびが入り強度が著しく低下する特徴を利用して未検知、誤検知を極力少なくすることができる。
また、図2に示すように、ウィンドウガラス5が全閉位置にないときも、ウィンドウガラス5が破損するとクリップ40が落下するため、ウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0048】
また、図6のクリップ本体50は板ばね用鋼板を折り曲げて対向させた第1部材51と第2部材52を有し、ウィンドウガラス5が配置される第1部材51と第2部材52の間において第1部材51と第2部材52がウィンドウガラス5の面内でずれた位置で自身の弾性にてガラス面(ウィンドウガラスの表面5a、裏面5b)に対して互いに逆方向に(互いに接近する方向)に付勢されている。これにより、ウィンドウガラス5の表面5aと裏面5bにおいて違う場所でウィンドウガラス5に対し力が加わっているので、ウィンドウガラス5の破損に伴って(ウィンドウガラス5の強度の低下に伴って)ウィンドウガラス5の端部を確実に粉砕してウィンドウガラス5の破損を確実に検出することができる。
【0049】
図3において、磁気センサ80の出力値によってクリップ40の落下を検出することによりウィンドウガラス5の破損が検出されると、コントローラ90は警報部91を作動して警報を発する。
【0050】
次に、ドア1のウェザーストリップ7を取り外し、図10に示す不正工具150をドアの内部に差し込んでクリップ40を落下しないように固定しようとした場合について説明する。即ち、ウィンドウガラス5を破損してもウィンドウガラス5の破損を検出できない不正が行なわれようとした場合について説明する。つまり、ガラス割れ時、磁石落下による磁束密度変化をセンサで検知する構成を採っているため、特殊な工具(不正工具150)をドア1の内部に挿入しクリップ40(磁石70)を固定した上で(外部から不正工作をした上で)ウィンドウガラス5が割られるとクリップ40(磁石70)が落下せずにガラス割れを検知不能とすることに対する対策を講じた本実施形態の作用を説明する。図10に示す不正工具150は、帯板の先端を曲げたものである。
【0051】
クリップ40から側方に突出する不正工具挿入防止用突起54によって、ウィンドウガラス5と、車体としてのアウタパネル2との隙間が狭くなっている。これにより、図11に示すように、不正工具150の挿入スペースを不正工具挿入防止用突起54の長さW3分だけ狭くでき、不正工具挿入防止用突起54がない場合の挿入スペース幅W1を、突起54を設けることによりW2(=W1−W3)にすることができる。さらに、図12に示すように、不正工具挿入防止用突起54により不正工具150を突起54の長さW3分だけクリップ40(磁石70)から遠ざけることができ、クリップ40(磁石70)を保持させにくくすることができる。
【0052】
また、クリップ40から下方に突出する検出具保持防止用突起67によって、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40の保持が防止される。つまり、図13に示すように、不正工具150の進行経路に突起67が配置され、突起67により不正工具150の進行が遮られる。これにより、不正工具150のすべり挿入を防ぐことができ、クリップ40(磁石70)を保持させなくすることができる。つまり、図14に示すように、検出具保持防止用突起67がない場合には、不正工具150のすべりによる挿入が可能となるが、検出具保持防止用突起67を設けることによりクリップ40(磁石70)の保持を防止することができる。
【0053】
さらに、検出具保持防止用突起67は、図15の正面図に示すように、突起下面が斜状をなし、不安定な形状となっている。よって、突起下面が水平である場合に比べて、ウィンドウガラス5が割れた時に不正工具150で磁石70を支えにくくすることができ、磁石70を立ったままの状態に保持できない。その結果、磁石70が倒れてしまい磁石70の向きが変わりガラス割れを検出することができる(異常を検出できる)。
【0054】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ウィンドウガラス破損検出具としてのクリップ40から側方に突出する不正工具挿入防止用突起54により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0055】
(2)不正工具150が挿入された時に、クリップ40から下方に突出する検出具保持防止用突起67により、不正工具150によるクリップ40の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0056】
(3)ウィンドウガラス5は車両のドアに開閉可能に設けられた開閉式ウィンドウガラスであるので、ドアでの不正を防止できる。
(4)ウィンドウガラス破損検出具は、ウィンドウガラス5の下端部においてウィンドウガラス5を挟持し、かつ、ウィンドウガラス5の面内でずれた位置で互いに逆方向に自身の弾性にて付勢してウィンドウガラス5の破損に伴うウィンドウガラス5の一部領域での粉砕を行なうクリップ40である。よって、確実にウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0057】
本実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・図16に示す不正工具挿入防止用突起100を用いてもよい。突起100はクリップ40の第1部材51の上端ではなく高さ方向の中央部に設けている。
【0058】
・図17に示す検出具保持防止用突起101を用いてもよい。突起101はその下面が水平方向に延設されている。特に、図17の突起101は先端(下端)が尖っており、これにより不正工具150をすべり込ませにくくしている。
【0059】
・図18に示す検出具保持防止用突起102を用いてもよい。突起102はその下面が水平方向の中央部において先端が尖った形状をなしている。この突起102においても不正工具150に対して磁石70を不安定にして不正工具150で磁石70を支えにくくしている。
【0060】
・図19に示す検出具保持防止用突起103を用いてもよい。突起103はクリップ40の磁石封止部63での左右方向の一端部に設けられ、下方向に突出している。この突起103においても不正工具150に対して磁石70を不安定にして不正工具150で磁石70を支えにくくしている。
【0061】
・磁石70に不正工具挿入防止用突起(54)や検出具保持防止用突起(67)を設けてもよい。
・不正工具挿入防止用突起(54)と検出具保持防止用突起(67)は、クリップ40(磁石70)と一体であっても別部材であってもよい。
【0062】
・不正工具挿入防止用突起(54)のみ設けても、検出具保持防止用突起(67)のみ設けてもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0063】
本実施形態においては図20に示す構成となっている。図20において、ウィンドウガラス破損検出具199は、ウィンドウガラス5の一部領域においてウィンドウガラス5の片面に貼着される。よって、本実施形態では検出具199はウィンドウガラス5の端部でなくてもよい。一方、ウィンドウガラス5の破損に伴う検出具199の少なくとも一部の変位が磁気センサ80により検出される。
【0064】
検出具199は、本体部200と磁石70により構成されている。本体部200は、板ばね用鋼板、詳しくは帯板を折り曲げて構成され、第1接触部201と第2接触部202と第3接触部203と第1付勢用アーム部204と第2付勢用アーム部205を有している。第1接触部201は平板状をなし、その左側面から円弧状をなすアーム部204が延び、そのアーム部204の先端には平板状の第2接触部202が連結されている。同様に、第1接触部201の右側面から円弧状をなすアーム部205が延び、そのアーム部205の先端には平板状の第3接触部203が連結されている。第1接触部201には板状の永久磁石70が固定されている。
【0065】
検出具199をウィンドウガラス5に取り付ける前においては本体部200の第1接触部201がウィンドウガラス5の片面に当接している状態では第2接触部202と第3接触部203がウィンドウガラス5の片面から離間している。そして、本体部200の第2接触部202と第3接触部203とを本体部200のばね力に抗してウィンドウガラス5に接着する。すると、本体部200の第2接触部202と第3接触部203は力F1にてウィンドウガラス5の裏面5b側へ付勢され、第1接触部201は力F2にてウィンドウガラス5の表面5a側へ付勢される。この状態では、ウィンドウガラス5の片面においてウィンドウガラス5の面内でずれた位置でウィンドウガラス5のガラス面(5a,5b)に対し互いに逆方向にウィンドウガラス5を付勢している。即ち、互い違いに力F1,F2が加わっている。
【0066】
この状態から、ウィンドウガラス5が破損すると、ウィンドウガラス5の強度が低下することによって本体部200がその付勢力により、ウィンドウガラス5の破損に伴うウィンドウガラス5の一部領域での粉砕を行う。これにより、検出具199(磁石70)が落下し、磁石70の落下が磁気センサ80により検出される。その結果、ウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0067】
さらに、検出具199には、検出具199から側方に突出する不正工具挿入防止用突起210,211が設けられている。詳しくは、検出具199における本体部200の第2接触部202の下端から突起210が延び、この突起210はウィンドウガラス5の下から水平方向かつ室外側に突出している。同様に、本体部200の第3接触部203の下端から突起211が延び、この突起211はウィンドウガラス5の下から水平方向かつ室外側に突出している。この突起210,211により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止してウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0068】
また、検出具199には、検出具199から下方に突出する検出具保持防止用突起212が設けられている。詳しくは、検出具199における本体部200の第1接触部201の下端から突起212が下方に突出し、突起212の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。この突起212により、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具199の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止してウィンドウガラス5の破損を検出することができる。
【0069】
なお、突起210,211はウィンドウガラス5との接触を避けるべく下方に延ばした後に側方に突出させたが、これに代わり、ウィンドウガラス5を貫通させて直接、側方に突出させてもよい。また、磁石70に不正工具挿入防止用突起(210,211)や検出具保持防止用突起(212)を設けてもよい。また、不正工具挿入防止用突起(210,211)と検出具保持防止用突起(212)は、検出具199(磁石70)と一体であっても別部材であってもよい。また、不正工具挿入防止用突起(210,211)のみ設けても、検出具保持防止用突起(212)のみ設けてもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態においては図21に示す構成となっている。図21において、ウィンドウガラス5には貫通孔5cが形成されている。貫通孔5cは上下方向に延びる長穴である。ウィンドウガラス破損検出具219はウィンドウガラス5の貫通孔5cを貫通する状態で固定され、ウィンドウガラス5の裏面5bにおいてプレート部222,223がウィンドウガラス5の裏面5bに当接し、また、ウィンドウガラス5の裏面5bにおいて磁石71を把持している。
【0071】
検出具219は本体部220と磁石71により構成されており、本体部220は正面側において永久磁石71を車両用ウィンドウガラスの非破損時において把持し、破損時には把持を解除することができるようになっている。永久磁石71は四角板状をなし、かつ、左右両側面にコ字状の切り欠き(凹部)71aが形成されている。
【0072】
本体部220は固定部221とプレート部222,223を有し、固定部221とプレート部222,223は、左右方向に延びる一枚の帯板状の板ばね用鋼板を折り曲げて構成されている。固定部221は略コ字状に形成され、ウィンドウガラス5の貫通孔5cに変形して挿入される。プレート部222,223は左右に延びる長方形をなし、固定部221から左右に方向に延びている。ウィンドウガラス5の表面5a側において固定部221の係合部221aがウィンドウガラス5の貫通孔5cよりも幅が広くなっており、ウィンドウガラス5の貫通孔5cの縁部で接触している。また、ウィンドウガラス5の裏面5b側においてプレート部222,223が、自身のばね力に抗して変形しており、ウィンドウガラス5の裏面5bを付勢している。つまり、固定部221の係合部221aとプレート部222,223によりウィンドウガラス5の貫通孔5cを通してウィンドウガラス5の両面から挟持し、かつ、力F3,F4で表したようにウィンドウガラス5の一方の面と他方の面で貫通孔5cからの距離が異なる位置で互いに接近する方向に付勢している。即ち、図21(b)に二点鎖線にてウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられる前の位置を表し、ウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられると、プレート部222,223がウィンドウガラス5の裏面5b側に変形してウィンドウガラス5の裏面5bを付勢する。
【0073】
検出具219の本体部220において永久磁石71を保持するための一対のアーム225,226が設けられている。この一対のアーム225,226によりプレート部222,223と協働して永久磁石71をウィンドウガラスの非破損時において把持し、破損時には把持を解除することができるようになっている。詳しくは、検出具219の本体部220において左右方向の中央部には透孔224が形成されている。本体部220において透孔224の左右の側壁から一対のアーム225,226が中央部に向けて突出している。アーム225,226は直線的に延びる帯板状をなし、先端部において2回折り曲げられている。検出具219をウィンドウガラス5に取り付けた状態で永久磁石71の角部(切り欠き71aでの角部)がアーム225,226の先端の磁石係止部225a,226aに係合して永久磁石71が左右方向および上下方向に移動できないようになっている。即ち、ウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられる前では磁石71から離れた場所に位置する。そして、ウィンドウガラス5に検出具219が取り付けられると、アーム225,226が磁石係止部225a,226aにて磁石71の両側を正面側から固定する。
【0074】
そして、ウィンドウガラス5が破損すると、ウィンドウガラス5の強度が低下する。これにより、検出具219の本体部220がその付勢力によりウィンドウガラス5の貫通孔5cの周辺部を粉砕する。つまり、ウィンドウガラス破損検出具219の本体部220が車両のウィンドウガラス5の面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢しており、ウィンドウガラス5の破損に伴い把持を解除された磁石71が落下し、センサ80により磁石70の落下が検出される。これによりウィンドウガラス5の破損が検出できる。
【0075】
さらに、検出具219には、検出具219から側方に突出する不正工具挿入防止用突起230が設けられている。詳しくは、検出具219における本体部220の固定部221から突起230が水平方向かつ室外側に突出している。この突起230により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止してウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0076】
また、検出具219には、検出具219から下方に突出する検出具保持防止用突起231,232が設けられている。詳しくは、検出具219における本体部220のプレート部222の下端から突起231が下方に突出し、突起231の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。同様に、本体部220のプレート部223の下端から突起232が下方に突出し、突起232の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。この突起231,232により、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具219の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0077】
なお、磁石71に不正工具挿入防止用突起(230)や検出具保持防止用突起(231,232)を設けてもよい。また、不正工具挿入防止用突起(230)と検出具保持防止用突起(231,232)は、検出具219(磁石71)と一体であっても別部材であってもよい。また、不正工具挿入防止用突起(230)のみ設けても、検出具保持防止用突起(231,232)のみ設けてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0078】
本実施形態においては図22に示す構成となっている。図22において、ウィンドウガラス破損検出具240は、円弧部241と連結部242と固定部243と磁石72により構成されている。円弧部241は弾性部材よりなり、円弧状(お椀形)をなしている。円弧部241の内面側の中央部には円筒状の連結部242が固定されている。連結部242の径はウィンドウガラス5の貫通孔5dの径よりも僅かに小さくなっており、連結部242はウィンドウガラス5の裏面5b側から貫通孔5dに挿入される。また、円筒状の連結部242の内周面242aは螺刻されている。円弧部241の外周面には磁石72が固定されている。固定部243はネジ構造を有し、頭部243aからネジ部243bが突出している。頭部243aはウィンドウガラス5の貫通孔5dの径よりも僅かに大きな径を有している。そして、ウィンドウガラス5の表面5a側から固定部243のネジ部243bを連結部242の内周面242aに螺入することにより、円弧部241を平らな状態で取り付ける。このとき、力F3,F4が作用して互い違いに力F3,F4が加わる。これにより、ウィンドウガラス5の両面から挟持してウィンドウガラス5の一方の面と他方の面で貫通孔5dからの距離が異なる位置で互いに接近する方向にウィンドウガラス5を付勢している。
【0079】
そして、ウィンドウガラス5が破損すると、ウィンドウガラス5の強度が低下する。これにより、検出具240が付勢力F3,F4によりウィンドウガラス5の貫通孔5dの周辺部を粉砕して検出具240(磁石72)が落下する。磁気センサ80により磁石72の落下が検出される。これによりウィンドウガラス5の破損が検出できる。また、検出具240はウィンドウガラス5に接着することなくウィンドウガラス5に取り付けることができる。
【0080】
さらに、検出具240には、検出具240から側方に突出する不正工具挿入防止用突起250が設けられている。詳しくは、検出具240の固定部243の頭部243aから突起250が水平方向かつ室外側に突出している。この突起250により、ウィンドウガラス5とアウタパネル2との隙間が狭くなっており、車両外部からの不正のための工具(不正工具150)の挿入が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0081】
また、検出具240には、検出具240から下方に突出する検出具保持防止用突起251が設けられている。詳しくは、検出具240の円弧部241から突起251が下方に突出し、突起251の下端はウィンドウガラス5の下端よりも下方に位置している。この突起251により、不正工具150によるウィンドウガラス破損検出具240の保持が防止される。その結果、車両外部からの不正工作を防止して車両用ウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0082】
なお、磁石72に不正工具挿入防止用突起(250)や検出具保持防止用突起(251)を設けてもよい。また、不正工具挿入防止用突起(250)と検出具保持防止用突起(251)は、検出具240(磁石72)と一体であっても別部材であってもよい。また、不正工具挿入防止用突起(250)のみ設けても、検出具保持防止用突起(251)のみ設けてもよい。
【0083】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・側方に突出する不正工具挿入防止用突起は必ずしも真横の方向(水平方向)に突出させなくてもよい。
【0084】
・下方に突出する検出具保持防止用突起は必ずしも真下(鉛直方向)に突出させなくてもよい。
・ウィンドウレギュレータとしてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いたが、ケーブル式ウィンドウレギュレータを用いてもよい。
【0085】
・駆動手段としてはモータを有するものだけではなく、乗員の手動によるものでもよい。
・ウィンドウガラスの破損検出装置を乗用車における右前ドアに適用したが、他の側部ドアに適用してもよいことは云うまでもなく、また、側部ドアの他にも、後部ドアや屋根に設けられた開閉式ガラスルーフに適用してもよい。
【0086】
・磁気センサに代わり、赤外線センサを用い、例えばクリップ40に赤外線センサと対向するように赤外線反射膜を設けてもよい。
・クリップ40等はウィンドウガラス5の下端部に設置したが、これに限ることなく、例えばウィンドウガラス5の側面での下部に設置してもよい。
【0087】
・開閉式ウィンドウガラスではなく固定式(嵌め込み式)のウィンドウガラスに取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
2…アウタパネル、5…ウィンドウガラス、40…クリップ、54…不正工具挿入防止用突起、67…検出具保持防止用突起、70…磁石、71…磁石、72…磁石、80…磁気センサ、100…不正工具挿入防止用突起、101…検出具保持防止用突起、102…検出具保持防止用突起、103…検出具保持防止用突起、199…ウィンドウガラス破損検出具、210…不正工具挿入防止用突起、211…不正工具挿入防止用突起、212…検出具保持防止用突起、219…ウィンドウガラス破損検出具、230…不正工具挿入防止用突起、231…検出具保持防止用突起、232…検出具保持防止用突起、240…ウィンドウガラス破損検出具、250…不正工具挿入防止用突起、251…検出具保持防止用突起。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、
を備えたことを特徴とする車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項2】
車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、
を備えたことを特徴とする車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項3】
車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、
を備えたことを特徴とする車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項4】
前記ウィンドウガラスは車両のドアに開閉可能に設けられた開閉式ウィンドウガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項5】
前記ウィンドウガラス破損検出具は、前記ウィンドウガラスの下端部においてウィンドウガラスを挟持し、かつ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で互いに逆方向に自身の弾性にて付勢してウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの一部領域での粉砕を行なうクリップであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項1】
車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、
を備えたことを特徴とする車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項2】
車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、
を備えたことを特徴とする車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項3】
車両のウィンドウガラスに取り付けられ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で接触する状態で、自身の弾性にてガラス面に対し互いに逆方向に付勢して前記ウィンドウガラスの破損を検出するためのウィンドウガラス破損検出具と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から側方に突出し、前記ウィンドウガラスと車体との隙間を狭くする不正工具挿入防止用突起と、
前記ウィンドウガラス破損検出具から下方に突出し、不正工具による前記ウィンドウガラス破損検出具の保持を防止する検出具保持防止用突起と、
を備えたことを特徴とする車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項4】
前記ウィンドウガラスは車両のドアに開閉可能に設けられた開閉式ウィンドウガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項5】
前記ウィンドウガラス破損検出具は、前記ウィンドウガラスの下端部においてウィンドウガラスを挟持し、かつ、ウィンドウガラスの面内でずれた位置で互いに逆方向に自身の弾性にて付勢してウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの一部領域での粉砕を行なうクリップであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ウィンドウガラスの破損検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−102097(P2011−102097A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258119(P2009−258119)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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