説明

車両用エアバッグ装置

【課題】エアバッグの展開性能とインストルメントパネルの見栄え品質を両立させる。
【解決手段】リテーナ6の一方の扉支持部61Aには、インストルメントパネル1のセンターライン15aのティア溝15に嵌まり込んでインストルメントパネル1のセンターライン15aを裂開させる裂開用突起部62と、略コの字形に屈曲形成されると共に、その2箇所の屈曲部63a、63bは弾性変形可能なインテグラルヒンジから構成され、一方の平行線部63cの端部は一方の扉支持部61Aの裏面から延設され他方の平行線部63dの端部は裂開用突起部62を有する裂開用本体部63と、一方の扉支持部61Aに穿設され、裂開用突起部62を有する他方の平行線部63dが挿入されることで、当該裂開用突起部62をインストルメントパネル1のセンターライン15aのティア溝15に誘導する貫通孔64とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用エアバッグ装置に係り、特に、エアバッグが膨張すると、車両内装部材をティア溝に沿って破断してエアバッグドアを両開きさせて、当該エアバッグを展開させる車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、衝突時における乗員の保護手段としてエアバッグを装備している。このエアバッグは図3に示すように、運転席側ではステアリングホイール2の中央部21に内蔵され、助手席側ではグローブボックス3の上部側に位置するインストルメントパネル1の内側に設けられている。
【0003】
特に、助手席側のエアバッグを膨張することにより展開させるエアバッグ装置は図4、図5(A)に示すように、インストルメントパネル1の裏面に、両開きする一対の扉11A、11Bが当該インストルメントパネル1に一体に形成されているエアバッグドア10と、エアバッグドア10の裏側に設けられ、一対の扉11A、11Bそれぞれの裏面に固定されている一対の扉支持部41A、41Bがそれぞれヒンジ部42によって両開き可能に形成されると共に、エアバッグ5を保持するリテーナ4と、エアバッグ5にガスを噴出するインフレータ(図示せず。)とを備えている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。なお、図5(A)、(B)においては、インストルメントパネル1とリテーナ4とは、見易くするために離れて図示されているが、実際は振動溶着等によって固定されている。
【0004】
インストルメントパネル1は図6(A)に示すように、パネル基材12上に発泡材層13を介して表皮14を備えている積層構造体である。このパネル基材12の裏面には図4、図6(A)に示すように、リテーナ4の一対の扉支持部41A、41Bの周辺を囲むフランジ部43が接合されている。さらに、パネル基材12の裏面には図6(A)、(B)に示すように、漢字の「日」の字の形状にティア溝15を連続して設けることで、両開きする一対の扉11A、11Bから成るエアバッグドア10を形成している。
【0005】
ティア溝15は、一対の扉11A、11Bの境界線であるセンターライン15aと、一対の扉11A、11Bの両側端部に相当する両側のサイドライン15bと、エアバッグドア10の上下端部に相当しセンターライン15aに対して平行な上下の横ライン15cとから形成され、漢字の「日」の字の形状に設けられている。このティア溝15は、横ライン15c、サイドライン15b及びセンターライン15aの順に深くなるように形成されている。このようにティア溝15を形成することで、最初にセンターライン15aが破断し、次にサイドライン15bが破断するように、部位別に破断順序を制御することができるので、インストルメントパネル1のエアバッグドア10がエアバック5の膨出展開時に両開きで外側に開き易くすることが可能になる。
【0006】
このように構成されたエアバッグ装置は図5(A)、(B)に示すように、自動車の車体の適所に配設されたセンサー(図示せず。)が所定値以上の衝突に伴う荷重を検出すると、エアバッグECU(図示せず。)がその検出信号に基づきインフレータに制御信号を送信するので、インフレータはその制御信号に基づき火薬を爆発させることによって生じたガスをエアバッグ5に送り込む。エアバッグ5がガスで膨張すると、そのガスの膨張圧力でリテーナ4の一対の扉支持部41A、41Bがそれぞれヒンジ部42によって外側に開かれるように押圧されことから、一対の扉支持部41A、41Bに固定されているインストルメントパネル1の一対の扉11A、11Bのセンターライン15aが破断され、さらに、サイドライン15bが破断されるので、一対の扉11A、11Bを両開きさせることができる。このようにインストルメントパネル1のエアバッグドア10を破断することで、エアバッグ5を展開させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−45970号公報
【特許文献2】特開2009−67236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した背景技術に記載したエアバッグ装置では、エアバッグ5を安定した状態で膨張展開させるためには、インストルメントパネル1の一対の扉11A、11Bを画成するセンターライン15aのティア溝15やサイドライン15bのティア溝15を深く掘らなければならない。センターライン15aのティア溝15やサイドライン15bのティア溝15を深く掘らなければならないのは図7に示すように、インストルメントパネル1にティア溝が掘られていなかったり、そのティア溝の深さが浅かったりした場合には、エアバッグ5が膨張してもインストルメントパネル1が破断するまでに時間が掛かるので、エアバッグ5の膨張圧力が高くなるからである。エアバッグ5の膨張圧力が高くなると、エアバッグ5のインストルメントパネル1に対する押圧力が高くなるので、インストルメントパネル1を破壊させたりエアバッグ5自体を破裂させたりする虞がある。なお、図7においては、インストルメントパネル1とリテーナ4とは、見易くするために離れて図示されているが、実際は振動溶着等によって固定されている。
【0009】
一方、インストルメントパネル1は、一対の扉11A、11Bを画成するティア溝15の加工自体や加工の痕跡が、太陽熱等による熱歪によっても表面外観に現れなくなるというインビジブル性が要求されているので、ティア溝15を深く掘るには限度があった。
【0010】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、エアバッグを安定した状態で膨張展開させることができると共に、インストルメントパネルのインビジブル性を満足させることができる車両用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成する第1の態様である車両用エアバッグ装置は、車両内装部材の裏面に、両開きする一対の扉の形状に沿って連続したティア溝が形成され、車両内装部材に一体に形成されているエアバッグドアと、エアバッグドアの裏側に設けられ、一対の扉それぞれの裏面に固定される一対の扉支持部がそれぞれヒンジ部によって両開き可能に形成されているリテーナと、リテーナに保持され、膨張することにより当該リテーナの一対の扉支持部を押圧して車両内装部材をティア溝に沿って破断してエアバッグドアを両開きさせるエアバッグとを備えた車両用エアバッグ装置において、リテーナの一対の扉支持部のうち何れか一方の扉支持部には、車両内装部材の最初に破断する部位のティア溝に嵌まり込んで当該車両内装部材の当該最初に破断する部位を裂開させる裂開用突起部と、略コの字形に屈曲形成されると共に、その2箇所の屈曲部は弾性変形可能なインテグラルヒンジから構成され、一対の平行線部のうち一方の平行線部の端部は一方の扉支持部の裏面から延設され他方の平行線部の端部は裂開用突起部を有する裂開用本体部と、一方の扉支持部に穿設され、裂開用突起部を有する他方の平行線部が挿入されることで当該他方の平行線部を移動可能に保持して、当該裂開用突起部を車両内装部材の最初に破断する部位のティア溝に誘導する貫通孔とが設けられているものである。なお、本明細書において「裂開」とは裂いて開くことを意味する。また、本明細書において「延設」とは延びた状態に設けることを意味する。また、本明細書において「穿設」とは穴をあけることを意味する。
【0012】
このような第1の態様である車両用エアバッグ装置は、車両が衝突することでエアバッグが膨張すると、一方の扉支持部の裏面から延設されている裂開用本体部が一対の扉支持部よりエアバッグに近づいて形成されているので、エアバッグは一対の扉支持部より先に裂開用本体部を押圧する。裂開用本体部はエアバッグで押圧されると、2箇所の屈曲部が弾性変形可能なインテグラルヒンジで形成されていることから、一方の扉支持部に穿設されている貫通孔に挿入されている裂開用本体部の他方の平行線部は、当該貫通孔に保持された状態でインストルメントパネル方向に移動することで、車両内装部材の最初に破断する部位のティア溝に嵌まり込んで、裂開用突起部を当該車両内装部材の最初に破断する部位のティア溝に当接することができる。即ち、裂開用突起部は、車両内装部材の最初に破断する部位に応力集中させることができるので、エアバッグが一対の扉支持部を押圧する前に車両内装部材の最初に破断する部位を切り裂くことができる状態に変移させることができる。したがって、車両内装部材の最初に破断する部位を切り裂くことができる状態に変移させてから、エアバッグが一対の扉支持部を押圧することができることから、ティア溝が車両内装部材のインビジブル性を満足させることができる深さで掘られていても、エアバッグの膨張圧力が異常圧力になる前に車両内装部材をティア溝に沿って破断してエアバッグドアを両開きさせることができるので、エアバッグを安定した状態で膨張展開することができるようになる。
【0013】
本発明の第2の態様は第1の態様である車両用エアバッグ装置において、裂開用本体部は、エアバッグが膨張すると、当該エアバッグが一対の扉支持部に当接する前に2箇所の屈曲部を連設する直線部を押圧して、裂開用突起部で車両内装部材の最初に破断する部位を裂開するように構成されているものである。なお、本明細書において「連設」とは連なった状態で接続されることを意味する。
【0014】
このような第2の態様である車両用エアバッグ装置によれば、エアバッグが一対の扉支持部に当接する前に、2箇所の屈曲部を連設する直線部を押圧して裂開用突起部で車両内装部材の最初に破断する部位を確実に裂開することができることから、エアバッグドアを両開きさせる時間を短縮させることができるので、エアバッグの展開時間も短縮され衝突時の衝撃から乗員を瞬時に保護することが可能になる。
【0015】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である車両用エアバッグ装置において、裂開用本体部及び貫通孔は、車両内装部材の最初に破断する部位のティア溝に沿って複数設けられているものである。
【0016】
このような第3の態様である車両用エアバッグ装置によれば、車両内装部材の最初に破断する部位を、裂開用本体部及び貫通孔が1つだけ設けられている場合より早く裂開させることができることから、エアバッグドアを両開きさせる時間を短縮させることができるので、エアバッグの展開時間も短縮され衝突時の衝撃から乗員を瞬時に保護することが可能になる。
【0017】
本発明の第4の態様は第1の態様から第3の態様のうち何れか1つの態様である車両用エアバッグ装置において、車両内装部材は、パネル基材上に発泡材層を介して表皮を備えているものである。
【0018】
このような第4の態様である車両用エアバッグ装置によれば、パネル基材のみにティア溝を掘るだけで、第1の態様から第3の態様までのそれぞれの作用、効果を得ることができる。これは、発泡材層は破断抵抗が極めて小さく、また、表皮は厚みが一般的には薄く形成されているからで、インビジブル性をより満足できるようになる。
【0019】
本発明の第5の態様は第1の態様から第4の態様のうち何れか1つの態様である車両用エアバッグ装置において、車両内装部材はインストルメントパネルであり、エアバッグドアは当該インストルメントパネルの助手席側に設けられているものである。
【0020】
このような第5の態様である車両用エアバッグ装置によれば、特にインビジブル性を要求されている助手席側のインストルメントパネルにおいても、第1の態様から第4の態様までのそれぞれの作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両用エアバッグ装置によれば、エアバッグを安定した状態で膨張展開させることができると共に、インストルメントパネルのインビジブル性を満足させることができるので、エアバッグの展開性能とインストルメントパネルの見栄え品質を両立させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の車両用エアバッグ装置の好ましい実施の形態例を示す図で、(A)はインストルメントパネルとリテーナとの関係を示す斜視図、(B)は要部斜視図、(C)は(B)のA−A断面図である。
【図2】図1に示すインストルメントパネルとリテーナとの関係を示す断面図で、(A)はエアバッグとの関係を示す図、(B)は要部の作動前における図、(C)は要部の作動後における図である。
【図3】車両用エアバッグ装置が適用される自動車のインストルメントパネルを示す正面図である。
【図4】従来の車両用エアバッグ装置におけるインストルメントパネルとリテーナとの関係を示す斜視図である。
【図5】図1に示すインストルメントパネル、リテーナ及びエアバッグとの関係を示すA−A断面の断面図で、(A)はエアバッグの膨張展開前の図、(B)はエアバッグの膨張展開後の図である。
【図6】車両用エアバッグ装置のインストルメントパネルを示す図で、(A)は図5(A)のインストルメントパネルが積層構造体の場合における当該インストルメントパネル及びリテーナとの関係を示す断面図、(B)はインストルメントパネルの裏面側から見たエアバッグドアの一対の扉の形状を示す説明図である。
【図7】従来の車両用エアバッグ装置の不具合点を示すためのインストルメントパネル、リテーナ及びエアバッグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の車両用エアバッグ装置を実施するための形態例について、図面を参照して説明する。なお、本明細書の全体を通じて同一要素には同一参照番号を付す。また、本発明の車両用エアバッグ装置は従来の車両用エアバッグ装置とほぼ同様の構成で、リテーナに改良を施したものであるので、このリテーナについては参照番号を従来の車両用エアバッグ装置とは別の番号を付するものとする。さらに、以下に示す形態例においては、図3に示す自動車のインストルメントパネルに適用したもので説明する。
【0024】
本発明の車両用エアバッグ装置は、図1(A)、図2(A)に示すように、助手席側のインストルメントパネル1の裏面に、両開き(観音開き)する一対の扉11A、11Bの形状に沿って連続したティア溝15が形成され、インストルメントパネル1に一体に形成されているエアバッグドア10と、エアバッグドア10の裏側に設けられ、一対の扉11A、11Bそれぞれの裏面に固定される一対の扉支持部61A、61Bがそれぞれヒンジ部66によって両開き可能に形成されているリテーナ6と、リテーナ6に保持され、膨張することにより当該リテーナ6の一対の扉支持部61A、61Bを押圧してインストルメントパネル1をティア溝15に沿って破断してエアバッグドア10を両開きさせるエアバッグ5とを備えている。
【0025】
インストルメントパネル1は図6(A)に示すように、例えば、ポリプロピレン(PP)等から所要形状に形成された合成樹脂製のパネル基材12上にウレタン製の発泡材層13を介してTPO(サーモプラスチックオレフィン)製の表皮14を備えている積層構造体である。インストルメントパネル1をこのように構成させるのは、発泡材層13は破断抵抗が極めて小さく、また、表皮14は厚みが一般的には薄く形成されているからで、インビジブル性をより満足できるようになる。なお、見栄えをよくするための表皮14とパネル基材12との間に発泡材層13を介在させるのは、セーフティーパッドの役目を果たさせるためである。
【0026】
このインストルメントパネル1に一体に形成されているエアバッグドア10のティア溝15は図6(B)に示す従来の車両用エアバッグ装置と同様の形状で、一対の扉11A、11Bの境界線であるセンターライン15aと、一対の扉11A、11Bの両側端部に相当する両側のサイドライン15bと、エアバッグドア10の上下端部に相当しセンターライン15aに対して平行な上下の横ライン15cとから形成され、漢字の「日」の字の形状に設けられている。このティア溝15は、横ライン15c、サイドライン15b及びセンターライン15aの順に深くなるように形成されているが、インビジブル性を満足できる深さで掘り込まれている。なお、図6(A)に示すリテーナ4は、本発明の車両用エアバッグ装置においてはリテーナ6となる。
【0027】
リテーナ6は図1(A)、(B)、(C)、図2(A)に示すように、一方の扉支持部61Aには、インストルメントパネル1の最初に破断する部位であるセンターライン15aのティア溝15に嵌まり込んで当該インストルメントパネル1の当該センターライン15aを裂開させる裂開用突起部62と、略コの字形に屈曲形成されると共に、その2箇所の屈曲部63a、63bは弾性変形可能なインテグラルヒンジから構成され、一対の平行線部63c、63dのうち一方の平行線部63cの端部は一方の扉支持部61Aの裏面から延設され他方の平行線部63dの端部は裂開用突起部62を有する裂開用本体部63と、一方の扉支持部61Aに穿設され、裂開用突起部62を有する他方の平行線部63dが挿入されることで当該他方の平行線部63dを移動可能に保持して、当該裂開用突起部62をインストルメントパネル1のセンターライン15aのティア溝15に誘導する貫通孔64とが設けられている。なお、図2(A)、(B)においては、インストルメントパネル1とリテーナ6とは、見易くするために離れて図示されているが、実際は振動溶着等によって固定されている。また、インストルメントパネル1は単層構造体で示されているが、実際には図6(A)に示す積層構造体である。
【0028】
また、インストルメントパネル1のパネル基材12の裏面には図1(A)、図2(A)に示すように、リテーナ6の一対の扉支持部61A、61Bの周辺を囲むフランジ部65が接合されている。
【0029】
このように構成された本発明の車両用エアバッグ装置によるエアバッグ5の展開動作について、以下、図2(A)、(B)、(C)に基づき説明する。
【0030】
自動車の車体の適所に配設されたセンサー(図示せず。)が所定値以上の衝突に伴う荷重を検出すると、エアバッグECU(図示せず。)がその検出信号に基づきインフレータに制御信号を送信するので、インフレータはその制御信号に基づき火薬を爆発させることによって生じたガスをエアバッグ5に送り込む。エアバッグ5がガスで膨張すると、リテーナ6の一方の扉支持部61Aの裏面から延設されている裂開用本体部63が一対の扉支持部61A、61Bよりエアバッグ5に近づいて形成されているので、図2(A)に示すように、エアバッグ5は一対の扉支持部61A、61Bより先に裂開用本体部63を押圧する。
【0031】
裂開用本体部63はエアバッグ5で押圧されると、図2(B)、(C)に示すように、2箇所の屈曲部63a、63bが弾性変形可能なインテグラルヒンジで形成されていることから、一方の扉支持部61Aに穿設されている貫通孔64に挿入されている裂開用本体部63の他方の平行線部63dは、当該貫通孔64に保持された状態でインストルメントパネル1方向に移動することで、インストルメントパネル1のセンターライン15aのティア溝15に嵌まり込んで、裂開用突起部62を当該インストルメントパネル1のセンターライン15aのティア溝15に当接することができる。即ち、裂開用突起部62は、インストルメントパネル1のセンターライン15aに応力集中させることができるので、エアバッグ5が一対の扉支持部61A、61Bを押圧する前にインストルメントパネル1のセンターライン15aを切り裂くことができる状態に変移させることができる。
【0032】
したがって、インストルメントパネル1のセンターライン15aを切り裂くことができる状態に変移させてから、エアバッグ5が一対の扉支持部61A、61Bを押圧することができることから、ティア溝15がインストルメントパネル1のインビジブル性を満足させることができる深さで掘られていても、エアバッグ5の膨張圧力が異常圧力になる前にインストルメントパネル1をティア溝15に沿って破断してエアバッグドア10を両開きさせることができるので、エアバッグ5を安定した状態で膨張展開することができるようになる。即ち、エアバッグ5におけるガスの膨張圧力でリテーナ6の一対の扉支持部61A、61Bがそれぞれヒンジ部66によって外側に開かれるように押圧されることから、一対の扉支持部61A、61Bに固定されているインストルメントパネル1の一対の扉11A、11Bのセンターライン15aが破断され、さらに、サイドライン15bが破断されるので、一対の扉11A、11B/はインストルメントパネル1の横ライン15c、15cによる部位をヒンジにして両開きさせることができる。
【0033】
また、上述した本発明の車両用エアバッグ装置によれば、インストルメントパネルが発泡材層を含まない積層体構造において、ティア溝がインストルメントパネルのインビジブル性を満足させることができる深さで掘られていても、エアバッグの膨張圧力が異常圧力になる前にインストルメントパネルをティア溝に沿って破断してエアバッグドアを両開きさせることができるので、エアバッグを安定した状態で膨張展開することができるようになる。
【0034】
なお、リテーナ6は、樹脂成形によって裂開用突起部62と共に一体に形成されている。この樹脂材料としては、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(Thermal Plastic Olefin:所謂TPO)を利用することができるが、他の樹脂材料を用いてもよい。
【0035】
また、本発明の車両用エアバッグドア装置の裂開用本体部63は、エアバッグ5が膨張すると、当該エアバッグ5が一対の扉支持部61A、61Bに当接する前に2箇所の屈曲部63a、63bを連設する直線部63eを押圧して、裂開用突起部62でインストルメントパネル1のセンターライン15aを裂開するように構成するとよい。このように、裂開用本体部63を構成することで、エアバッグ5がリテーナ6の一対の扉支持部61A、61Bに当接する前に、2箇所の屈曲部63a、63bを連設する直線部63eを押圧して裂開用突起部62でインストルメントパネル1のセンターライン15aを確実に裂開することができることから、エアバッグドア10を両開きさせる時間を短縮させることができるので、エアバッグ5の展開時間も短縮され衝突時の衝撃から乗員を瞬時に保護することが可能になる。
【0036】
また、本発明の車両用エアバッグドア装置は、裂開用突起部62を含む裂開用本体部63及び貫通孔64は、インストルメントパネル1のセンターライン15aのティア溝15に沿って複数設けられていてもよい。このように裂開用突起部62を含む裂開用本体部63及び貫通孔64を設けることで、インストルメントパネル1のセンターライン15aを、裂開用突起部62を含む裂開用本体部63及び貫通孔64が1つだけ設けられている場合より早く裂開させることができることから、エアバッグドア10を両開きさせる時間を短縮させることができるので、エアバッグ5の展開時間も短縮され衝突時の衝撃から乗員を瞬時に保護することが可能になる。
【0037】
また、本発明の車両用エアバッグドア装置は、両開きする一対の扉11A、11Bを漢字の「日」の字の形状で構成させていたが、これに限定されるものではなく、アルファベットの「H」の字の形状など、両開きする一対の扉を構成できる形状ならば、どのような形状のものでも利用することができる。
【0038】
また、本発明の車両用エアバッグドア装置は、自動車の助手席側のインストルメントパネル1に設けられていたが、これに限定されるものではなく、自動車の天井、フロントシート後面、リアデッキ、ピラガーニッシュ等、車両用エアバッグドア装置で乗員を保護することが必要な箇所に適用可能で、さらには、組み込むことができればどのような車両にも適用させることができる。
【0039】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0040】
1……インストルメントパネル(車両内装部材)
10……エアバッグ
11A、11B……一対の扉
12……パネル基材
13……発泡材層
14……表皮
15……ティア溝
5……エアバッグ
6……リテーナ
61A、61B……一対の扉支持部
62……裂開用突起部
63……裂開用本体
63a、63b……2箇所の屈曲部
63c、63d……一対の平行線部
63e……2箇所の屈曲部を連設する直線部
64……貫通孔
66……ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材の裏面に、両開きする一対の扉の形状に沿って連続したティア溝が形成され、前記車両内装部材に一体に形成されているエアバッグドアと、
前記エアバッグドアの裏側に設けられ、前記一対の扉それぞれの裏面に固定される一対の扉支持部がそれぞれヒンジ部によって両開き可能に形成されているリテーナと、
前記リテーナに保持され、膨張することにより当該リテーナの前記一対の扉支持部を押圧して前記車両内装部材を前記ティア溝に沿って破断して前記エアバッグドアを両開きさせるエアバッグとを備えた車両用エアバッグ装置において、
前記リテーナの前記一対の扉支持部のうち何れか一方の扉支持部には、
前記車両内装部材の最初に破断する部位の前記ティア溝に嵌まり込んで当該車両内装部材の当該最初に破断する部位を裂開させる裂開用突起部と、
略コの字形に屈曲形成されると共に、その2箇所の屈曲部は弾性変形可能なインテグラルヒンジから構成され、一対の平行線部のうち一方の平行線部の端部は前記一方の扉支持部の前記裏面から延設され他方の平行線部の端部は前記裂開用突起部を有する裂開用本体部と、
前記一方の扉支持部に穿設され、前記裂開用突起部を有する前記他方の平行線部が挿入されることで当該他方の平行線部を移動可能に保持して、当該裂開用突起部を前記車両内装部材の最初に破断する部位の前記ティア溝に誘導する貫通孔とが設けられていることを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記裂開用本体部は、前記エアバッグが膨張すると、当該エアバッグが前記一対の扉支持部に当接する前に前記2箇所の屈曲部を連設する直線部を押圧して、前記裂開用突起部で前記車両内装部材の前記最初に破断する部位を裂開するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記裂開用本体部及び前記貫通孔は、前記車両内装部材の前記最初に破断する部位の前記ティア溝に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記車両内装部材は、パネル基材上に発泡材層を介して表皮を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記車両内装部材はインストルメントパネルであり、前記エアバッグドアは当該インストルメントパネルの助手席側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載の車両用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−153207(P2012−153207A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12631(P2011−12631)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】