説明

車両用カウル構造

【課題】 フロントウインドシールドガラスの支持剛性を確保しつつ、衝突体がカウルの車幅方向端部の前部に衝突した場合に衝突体が受ける衝撃を低減する。
【解決手段】 カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部と、この部位の下方に配設されたカウルインナパネル14の底部14Aとの間には、所定の間隔の隙間が形成されている。また、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの前端部が、上壁部12Aの車幅方向端部に連結されており、車幅方向端部12Fにおける側壁部12Gの前端部が、前壁部12Bの車幅方向端部に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロントウインドシールドガラスの下端部を支持する車両用カウル構造に関し、特に、車両へ衝突した衝突体を保護することが考慮された車両用カウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両へ衝突した衝突体を保護することが考慮された車両用カウル構造においては、フロントウインドシールドガラスの下端縁部を支持するカウルアウタパネルの前端部と、その下方側の他の部品との間に隙間を形成し、この隙間によって、衝突体が衝突した際に、上方からの入力荷重に対するカウルアウタパネルの変形量を十分に確保することで、衝突体が受ける衝撃を低減した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−327165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の車両用カウル構造では、フロントウインドシールドガラスの支持剛性を確保するため、カウルアウタパネルの車幅方向端部が車体前後方向の全域に渡って、閉断面構造とされ剛性の高いフロントピラー及びエプロンアッパメンバの上部に固定されている。この結果、衝突体がカウルアウタパネルの車幅方向端部の前部に衝突した場合に、カウルアウタパネルの車幅方向端部の前部における下方への変形量を十分に確保できない。このため、カウルアウタパネルの車幅方向端部の前部における衝撃エネルギの吸収力が低下する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、フロントウインドシールドガラスの支持剛性を確保しつつ、衝突体がカウルの車幅方向端部の前部に衝突した場合に衝突体が受ける衝撃を低減できる車両用カウル構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の車両用カウル構造は、フロントウインドシールドガラスの下端縁部を支持する第1ガラス支持部を有し、該第1ガラス支持部の車幅方向端部が下方に配設された部品と離間しているカウルアウタパネルと、
前記カウルアウタパネルにおける前記第1ガラス支持部の前端部に下方へ向かって形成された前壁部と、
前記カウルアウタパネルの車幅方向端部に形成され前記フロントウインドシールドガラスの車幅方向縁部を支持すると共に、前端部が前記第1ガラス支持部に連結された第2ガラス支持部と、
前記カウルアウタパネルにおける前記第2ガラス支持部の車幅方向端部に下方へ向かって形成され、前端部が前記前壁部に連結された側壁部と、
を有し、前記側壁部の前部を除く部位と前記第2ガラス支持部の前部を除く部位が車体前部の骨格部材に結合されていることを特徴とする。
【0006】
従って、カウルアウタパネルにおけるフロントウインドシールドガラスの下端縁部を支持する第1ガラス支持部の車幅方向端部が、下方に配設された部品と離間していると共に、カウルアウタパネルの車幅方向端部に形成されフロントウインドシールドガラスの車幅方向縁部を支持すると共に、前端部が第1ガラス支持部に連結された第2ガラス支持部の前部を除く部位と、カウルアウタパネルにおける第2ガラス支持部の車幅方向端部に下方へ向かって形成され、前端部が第1ガラス支持部の前端部に下方へ向かって形成された前壁部に連結された側壁部の前部を除く部位と、が車体前部の骨格部材に結合されているため、フロントウインドシールドガラスの下端縁部における車幅方向端部に衝突体が車体上方側から車体下方側に向かって衝突した場合には、カウルアウタパネルにおける車幅方向端部の前部が車体下方側へ変形できる。この結果、衝突体がカウルの車幅方向端部の前部に衝突した場合に衝突体が受ける衝撃を低減できる。
【0007】
また、フロントウインドシールドガラスの下端縁部を支持する第1ガラス支持部の前端部が、カウルアウタパネルの車幅方向端部に形成されフロントウインドシールドガラスの車幅方向縁部を支持する第2ガラス支持部に連結されており、カウルアウタパネルの第1ガラス支持部の前端部に下方へ向かって形成された前壁部が、カウルアウタパネルの第2ガラス支持部の車幅方向端部に下方へ向かって形成された側壁部の前端部に連結され、更に、側壁部の前部を除く部位と第2ガラス支持部の前部を除く部位が車体前部の骨格部材に結合されている。この結果、車体前部の骨格部材よってカウルアウタパネルの第2ガラス支持部の支持剛性を確保できると共に第1ガラス支持部の支持剛性も確保できる。このため、カウルアウタパネルによるフロントウインドシールドガラスの支持剛性を確保できる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の車両用カウル構造において、前記カウルアウタパネルの車幅方向端部は、エプロンアッパメンバ又はフードヒンジマウントブラケットから上方へ離間した位置に配設されていることを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の内容に加えて、カウルアウタパネルの車幅方向端部がエプロンアッパメンバ又はフードヒンジマウントブラケットから上方へ離間した位置に配設されているため、カウルアウタパネルの車幅方向端部の前部が下方へ変形する際に、カウルアウタパネルの車幅方向端部の前部がエプロンアッパメンバ又はフードヒンジマウントブラケットに当接するのを防止できる。この結果、衝突体が受ける衝撃を更に低減できる。
【0010】
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の車両用カウル構造において、前記フードヒンジマウントブラケットは車体上方から車体下方へ向かって作用する荷重に対して前記フードヒンジマウントブラケットの変形を促進する変形促進手段を有することを特徴とする。
【0011】
従って、請求項2に記載の内容に加えて、カウルアウタパネルの車幅方向端部の前部がフードヒンジマウントブラケットに当接し、フードヒンジマウントブラケットに車体上方から車体下方へ向かって荷重が作用した場合には、変形促進手段によってフードヒンジマウントブラケットの変形が促進される。この結果、衝突体が受ける衝撃を更に低減できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明の車両用カウル構造は、フロントウインドシールドガラスの下端縁部を支持する第1ガラス支持部を有し、第1ガラス支持部の車幅方向端部が下方に配設された部品と離間しているカウルアウタパネルと、カウルアウタパネルにおける第1ガラス支持部の前端部に下方へ向かって形成された前壁部と、カウルアウタパネルの車幅方向端部に形成されフロントウインドシールドガラスの車幅方向縁部を支持すると共に、前端部が第1ガラス支持部に連結された第2ガラス支持部と、カウルアウタパネルにおける第2ガラス支持部の車幅方向端部に下方へ向かって形成され、前端部が前壁部に連結された側壁部と、を有し、側壁部の前部を除く部位と第2ガラス支持部の前部を除く部位が車体前部の骨格部材に結合されているため、フロントウインドシールドガラスの支持剛性を確保しつつ、衝突体がカウルの車幅方向端部の前部に衝突した場合に衝突体が受ける衝撃を低減できるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の車両用カウル構造において、カウルアウタパネルの車幅方向端部は、エプロンアッパメンバ又はフードヒンジマウントブラケットから上方へ離間した位置に配設されているため、請求項1に記載の効果に加えて、衝突体が受ける衝撃を更に低減できるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の車両用カウル構造において、フードヒンジマウントブラケットは車体上方から車体下方へ向かって作用する荷重に対してフードヒンジマウントブラケットの変形を促進する変形促進手段を有するため、請求項2に記載の効果に加えて、衝突体が受ける衝撃を更に低減できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における車両用カウル構造の一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0016】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0017】
図1及び図2に示される如く、本実施形態のカウル10は、カウル10の車体外側部を構成するカウルアウタパネル12と、カウル10の車体内側部を構成するカウルインナパネル14とで構成されている。
【0018】
図3に示される如く、カウルアウタパネル12における車幅方向中間部の車幅方向から見た断面形状は、開口部を下方に向けたハット断面形状となっている。即ち、カウルアウタパネル12の車幅方向中間部における車幅方向から見た断面形状は、ウインドシールドガラス16の前端縁部16Aを支持する第1ガラス支持部としての上壁部12Aの前端部から略車体下方へ向かって前壁部12Bが形成されており、前壁部12Bの下端部には、略車体前方へ向かって前フランジ12Cが形成されていると共に、上壁部12Aの後端部から略車体下側後方へ向かって後壁部12Dが形成されており、後壁部12Dの下端部には、略車体後方へ向かって後フランジ12Eが形成されている。
【0019】
一方、カウルインナパネル14における車幅方向中間部の車幅方向から見た断面形状は、開口部を上方に向けたハット断面形状となっている。即ち、カウルインナパネル14の車幅方向中間部における車幅方向から見た断面形状は、底部14Aの前端部から略車体上方へ向かって前壁部14Bが形成されており、前壁部14Bの上端部には、略車体前方へ向かって前フランジ14Cが形成されていると共に、底部14Aの後端部から略車体上方へ向かって後壁部14Dが形成されており、後壁部14Dの上端部には、略車体後方へ向かって後フランジ14Eが形成されている。
【0020】
カウルアウタパネル12の上壁部12Aの上面には、ウインドシールドガラス16の前端縁部16Aが接着剤18によって固定されている。また、カウルアウタパネル12の後フランジ12Eは、カウルインナパネル14の後フランジ14Eの上面に溶着されており、カウルアウタパネル12の上壁部12A、前壁部12B、前フランジ12C及び後壁部12Dと、これらの部位の下方に配設されたカウルインナパネル14の底部14Aとの間には、所定の間隔の隙間20が形成されている。
【0021】
従って、衝突体Kが、ウインドシールドガラス16の前端縁部16Aに車体前方斜め上方側から車体後方斜め下方側(図3の矢印A方向)へ向かって衝突した場合には、カウルアウタパネル12の上壁部12A、前壁部12B、前フランジ12C及び後壁部12Dが、車体下方(図3の矢印B方向)へ変形することで、衝突体Kが受ける衝撃を低減できるようになっている。
【0022】
図2に示される如く、カウルアウタパネル12における車幅方向端部(カウルサイド)12F(図2では、車体右側の端部のみを示している)の車体前後方向から見た断面形状は、開口部を下方に向けたハット断面形状となっている。即ち、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの車体前後方向から見た断面形状は、ウインドシールドガラス16の車幅方向縁部16Bを支持する第2ガラス支持部としての上壁部12Hの車幅方向外側端部に略車体下方へ向かって側壁部12Gが形成されており、側壁部12Gの下端部には略車幅方向外方へ向かってフランジ12Kが形成されていると共に、上壁部12Hの車幅方向内側端部には略車幅方向内側下方へ向かって傾斜壁部12Qが形成されており、傾斜壁部12Qの車幅方向内側端部には、後フランジ12Eの車幅方向端部が連結されている。
【0023】
カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの前端部は、カウルアウタパネル12の上壁部12Aの車幅方向端部に連結されており、上壁部12Hと上壁部12Aとは同一平面になっている。また、側壁部12Gの前端部は、前壁部12Bの車幅方向端部に連結されている。
【0024】
この結果、上壁部12Hと側壁部12Gとの境となる稜線12Lと、上壁部12Aと前壁部12Bとの境となる稜線12Mとが連結されることで、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fとカウルアウタパネル12の車幅方向中間部との連結部の剛性を確保できるようになっている。
【0025】
更に、本実施形態では、側壁部12Gとフランジ12Kとの境となる稜線12Nと、前壁部12Bと前フランジ12Cとの境となる稜線12Pとが連結されることで、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fとカウルアウタパネル12の車幅方向中間部との連結部の剛性を更に高くできるようになっている。
【0026】
図2に示される如く、カウルインナパネル14の後壁部14Dにおける上部の車幅方向端部には、車体後方へ向かって側壁部14Fが形成されており、側壁部14Fの上端縁部は後フランジ14Eの車幅方向外側縁部14Hに直交して連結されている。また、カウルインナパネル14の後壁部14Dにおける下部の車幅方向端部には、車幅方向内側へ向けて切込み14Lが形成され、この切込み14Lの下方となる後壁部14Dの車幅方向端部からは車体前方へ向かって突片14Gが形成されており、突片14Gの下端縁部は底部14Aの車幅方向外側縁部に連結されている。
【0027】
図4に示される如く、カウルアウタパネル12の側壁部12Gの後部は、カウルインナパネル14の側壁部14Fの車幅方向外側面に溶着されており、カウルインナパネル14の側壁部14Fは、車体前部の骨格部材としてのフロントピラーの側壁部を構成するサイドアウタパネル22の側壁部22Aにおける上部の車幅方向外側面に溶着されている。即ち、カウルアウタパネル12の側壁部12Gの後部はカウルインナパネル14の側壁部14Fを挟んで車体前部の骨格部材としてのフロントピラーの側壁部を構成するサイドアウタパネル22の側壁部22Aにおける上部の車幅方向外側面に溶着されている。
【0028】
従って、カウルアウタパネル12の側壁部12Gの後部におけるサイドアウタパネル22の側壁部22Aとの結合部Pは、前壁部12Bの車幅方向端部を車体後方へ屈曲し、カウルアウタパネル12の側面に回し込んだ形状となっており、結合部Pはサスペンションからボデー(フロントピラー)への入力に対して剪断方向(図4の矢印E方向)の結合になっている。
【0029】
また、サイドアウタパネル22の側壁部22Aの上端部には、車幅方向内側へ向かってフランジ22Bが形成されており、フランジ22Bは、カウルインナパネル14の後フランジ14Eにおける車幅方向端部14Hの下面に溶着されている。また、カウルインナパネル14の後フランジ14Eの車幅方向端部14Hは、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの後部の下面に溶着されている。
【0030】
また、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの上面には、ウインドシールドガラス16の車幅方向縁部16Bが接着剤18によって固定されている。
【0031】
従って、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部を除く部位、即ち、カウルアウタパネル12の側壁部12Gの前部を除く部位が、フロントピラーを構成するサイドアウタパネル22の側壁部22Aに溶着されており、上壁部12Hの前部12Jを除く部位が、フロントピラーを構成するサイドアウタパネル22のフランジ22Bに溶着されている。
【0032】
図2に示される如く、サイドアウタパネル22の側壁部22Aの上部における前端部には、車幅方向内側へ向かってフランジ22Cが形成されており、フランジ22Cの上端部は、フランジ22Bの前端部に連結されている。
【0033】
図6に示される如く、サイドアウタパネル22の車幅方向内側部には、フロントピラーインナパネル26が配設されている。フロントピラーインナパネル26の前部26Aは、サイドアウタパネル22の側壁部22Aとフランジ22Cに溶着されている。また、サイドアウタパネル22の後方側のフランジ22Dは、フロントピラーインナパネル26の後方側のフランジ26Bに溶着されており、サイドアウタパネル22とフロントピラーインナパネル26とによってフロントピラー閉断面28が形成されている。
【0034】
図5に示される如く、ウインドシールドガラス16の車幅方向縁部16Bにおける前縁部16Cは、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの前部12Jの上面に接着剤18によって結合されている。
【0035】
また、カウルインナパネル14の後フランジ14Eにおける車幅方向端部14Hは、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの後部の下面に溶着されており、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの前部12J、前壁部12B、前フランジ12Cと、これらの部位の下方に配設されたカウルインナパネル14の底部14Aとの間には、所定の間隔の隙間29が形成されている。
【0036】
従って、衝突体Kが、ウインドシールドガラス16の車幅方向縁部16Bの前端縁部16Cに車体前方斜め上方側から車体後方斜め下方側(図5の矢印C方向)へ向かって衝突した場合には、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部が、車体下方(図5矢印D方向)へ変形することで、衝突体Kの衝撃を低減できるようになっている。
【0037】
図1及び図2に示される如く、カウルインナパネル14の車幅方向外側には、フードヒンジマウントブラケット30が配設されており、フードヒンジマウントブラケット30は、エプロンアッパメンバ32の後部の上面に配設されている。また、エプロンアッパメンバ32の後部の下方側には、カウルトップサイドアウタ34の後部が配設されている。
【0038】
図4に示される如く、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aの車幅方向内側端部には、下方へ向かってフランジ30Bが形成されており、フランジ30Bは、サイドアウタパネル22の側壁部22Aに溶着されている。また、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aの車幅方向外側端部には、下方へ向かって縦壁部30Cが形成されており、縦壁部30Cの下端部には、車幅方向外側へ向かってフランジ30Dが形成されている。
【0039】
エプロンアッパメンバ32の上壁部32Aの車幅方向内側端部には、下方へ向かってフランジ32Bが形成されており、フランジ32Bは、サイドアウタパネル22の側壁部22Aに溶着されている。また、エプロンアッパメンバ32の上壁部32Aの車幅方向外側端部にはフランジ32Cが形成されており、このフランジ32Cは、フードヒンジマウントブラケット30のフランジ30Dの下面に溶着されている。
【0040】
カウルトップサイドアウタ34の下壁部34Aの車幅方向内側端部には、下方へ向かってフランジ34Bが形成されており、フランジ34Bは、サイドアウタパネル22の側壁部22Aに溶着されている。また、カウルトップサイドアウタ34の下壁部34Aの車幅方向外側端部には上方に向かって縦壁部34Cが形成されており、縦壁部34Cの上端部には車幅方向外側へ向かってフランジ34Dが形成されている。また、カウルトップサイドアウタ34のフランジ34Dは、エプロンアッパメンバ32のフランジ32Cの下面に溶着されている。
【0041】
なお、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおけるフランジ12Kと、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aとは上下方向に距離L離間しており、図5に示される如く、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部が、車体下方(図5矢印D方向)へ変形する際に、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部と、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aとが干渉しないようになっている。
【0042】
図1及び図2に示される如く、フードヒンジマウントブラケット30の縦壁部30Cの前後方向中央部と後部には、変形促進手段としての円形の貫通孔36、38が形成されている。また、フードヒンジマウントブラケット30における縦壁部30Cの前端部の上部には変形促進手段としての貫通孔39が形成されており、縦壁部30Cの前端部の下部には変形促進手段としての隙間41が形成されている。
【0043】
これらの貫通孔39と隙間41は、縦壁部30Cにおける前端縁部の上下方向中間部に車幅方向前方へ向けて形成した突片30Eの前部30Fを車幅方向内側へ屈曲し、突片30Eの前部30Fを、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aの前端部に車体下方へ向かって形成した前壁部30Gの後側面に結合することで形成されている。
【0044】
従って、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部が車体下方へ向かって移動し、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aと干渉した場合には、貫通孔36、38、39と隙間41によってフードヒンジマウントブラケット30の縦壁部30Cが容易に潰れるようになっている。
【0045】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0046】
本実施形態では、図3に示される如く、衝突体Kが、ウインドシールドガラス16の前端縁部16Aに車体前方斜め上方側から車体後方斜め下方側(図3の矢印A方向)へ向かって衝突した場合には、カウルアウタパネル12の下方に隙間20を形成したことにより、カウルアウタパネル12の上壁部12A、前壁部12B、前フランジ12C及び後壁部12Dが、車体下方(図3の矢印B方向)へ変形するため、衝突体Kが受ける衝撃を低減できる。
【0047】
一方、図5に示される如く、衝突体Kが、カウル10の車幅方向端部の前部となるウインドシールドガラス16の車幅方向縁部16Bの前端縁部16Cに、車体前方斜め上方側から車体後方斜め下方側(図5の矢印C方向)へ向かって衝突した場合には、カウルアウタパネル12の下方に隙間29を形成したことにより、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部、即ち、側壁部12Gの前部、フランジ12Kの前部、上壁部12Hの前部12J、前壁部12B及び前フランジ12Cが、車体下方(図5矢印D方向)へ変形するため、衝突体Kが受ける衝撃を低減できる。
【0048】
この結果、衝突体Kがカウル10の車幅方向端部の前部に衝突した場合に衝突体Kが受ける衝撃を低減できる。
【0049】
また、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおけるフランジ12Kと、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aとが上下方向に距離L離間しているため、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部が、車体下方(図5矢印D方向)へ変形する際に、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fと、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aとが当接するのを防止できる。この結果、衝突体Kが受ける衝撃を更に低減できる。
【0050】
また、本実施形態では、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの前部が車体下方へ向かって移動し、フードヒンジマウントブラケット30の上壁部30Aと干渉した場合には、貫通孔36、38、39と隙間41を形成したフードヒンジマウントブラケット30の縦壁部30Cが容易に潰れる。この結果、衝突体Kが受ける衝撃を更に低減できる。
【0051】
また、本実施形態では、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fにおける上壁部12Hの前端部が、カウルアウタパネル12の上壁部12Aの車幅方向端部に連結されており、側壁部12Gの前端部が、前壁部12Bの車幅方向端部に連結されている。このため、上壁部12Hと側壁部12Gとの境となる稜線12Lと、上壁部12Aと前壁部12Bとの境となる稜線12Mとが連結されることで、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fとカウルアウタパネル12の車幅方向中間部との連結部の剛性を確保できる。この結果、フロントピラーでカウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fの後部を支持することで、カウルアウタパネル12の車幅方向端部12Fと車幅方向中間部の支持剛性を確保できる。このため、カウルアウタパネル12によるウインドシールドガラス16の支持剛性を確保できる。
【0052】
このように、本実施形態では、フロントウインドシールドガラス16の支持剛性を確保しつつ、衝突体Kがカウル10の車幅方向端部の前部に衝突した場合に衝突体Kが受ける衝撃を低減できる。
【0053】
また、本実施形態では、側壁部12Gとフランジ12Kとの境となる稜線12Nと、前壁部12Bと前フランジ12Cとの境となる稜線12Pとが連結されることで、カウルアウタパネル12の車幅方向中間部におけるフロントウインドシールドガラス16の支持剛性を更に高くできる。
【0054】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0055】
例えば、上記実施形態では、フードヒンジマウントブラケット30に変形促進手段としての貫通孔36、38、39と隙間41を形成したが、変形促進手段は貫通孔36、38、39と隙間41に限定されず、薄肉部、スリット等の他の構成としても良い。
【0056】
また、本実施形態では、カウルアウタパネル12の側壁部12Gをカウルインナパネル14の側壁部14Fを挟んで車体前部の骨格部材としてのフロントピラーの側壁部を構成するサイドアウタパネル22の側壁部22Aにおける上部の車幅方向外側面に溶着したが、カウルアウタパネル12の側壁部12Gを結合する車体前部の骨格部材はフロントピラーに限定されない。
【0057】
また、本実施形態では、フードヒンジマウントブラケット30をエプロンアッパメンバ32の後部の上面に配設したが、フードヒンジマウントブラケット30をエプロンアッパメンバ32の後部の上面に配設せず、他の部位に配設した構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用カウル構造を示す車体斜め前方外側から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用カウル構造を示す車体斜め前方外側から見た分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線の沿った部位の拡大断面図である。
【図4】図1の4−4線の沿った部位の拡大断面図である。
【図5】図1の5−5線の沿った部位の拡大断面図である。
【図6】図1の6−6線の沿った部位の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 カウル
12 カウルアウタパネル
12A カウルアウタパネルの上壁部(第1ガラス支持部)
12B カウルアウタパネルの前壁部
12G カウルアウタパネルの側壁部
12H カウルアウタパネルの上壁部(第2ガラス支持部)
14 カウルインナパネル
16 ウインドシールドガラス
20 所定の間隔の隙間
22 サイドアウタパネル
26 フロントピラーインナパネル
28 フロントピラー閉断面
29 所定の間隔の隙間
30 フードヒンジマウントブラケット
32 エプロンアッパメンバ
34 カウルトップサイドアウタ
36 貫通孔(変形促進手段)
38 貫通孔(変形促進手段)
39 貫通孔(変形促進手段)
41 隙間(変形促進手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインドシールドガラスの下端縁部を支持する第1ガラス支持部を有し、該第1ガラス支持部の車幅方向端部が下方に配設された部品と離間しているカウルアウタパネルと、
前記カウルアウタパネルにおける前記第1ガラス支持部の前端部に下方へ向かって形成された前壁部と、
前記カウルアウタパネルの車幅方向端部に形成され前記フロントウインドシールドガラスの車幅方向縁部を支持すると共に、前端部が前記第1ガラス支持部に連結された第2ガラス支持部と、
前記カウルアウタパネルにおける前記第2ガラス支持部の車幅方向端部に下方へ向かって形成され、前端部が前記前壁部に連結された側壁部と、
を有し、前記側壁部の前部を除く部位と前記第2ガラス支持部の前部を除く部位が車体前部の骨格部材に結合されていることを特徴とする車両用カウル構造。
【請求項2】
前記カウルアウタパネルの車幅方向端部は、エプロンアッパメンバ又はフードヒンジマウントブラケットから上方へ離間した位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用カウル構造。
【請求項3】
前記フードヒンジマウントブラケットは車体上方から車体下方へ向かって作用する荷重に対して前記フードヒンジマウントブラケットの変形を促進する変形促進手段を有することを特徴とする請求項2に記載の車両のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−15808(P2006−15808A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193152(P2004−193152)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】