説明

車両用サスペンション装置

【課題】バンプ時の過大な入力を緩衝的に吸収しつつショックアブソーバの変位を規制すると共に、ピストンロッドが挿通される挿通孔へのバンプストッパの潜り込みを防ぐことができる車両用サスペンション装置を提供することにある。
【解決手段】ショックアブソーバ1のピストンロッド3の周りを覆うように軸方向に延設される筒状部材であって、ショックアブソーバ1のシリンダ2の上端部2aに設けられるバンプストッパ21と、ピストンロッド3の上端部側に固定されてショックアブソーバ1のバンプ時にバンプストッパ21の上部突起部21cが当接するブラケット4と、バンプストッパ21とシリンダ2の上端部2aとの間に設けられるとともに、バンプストッパ21の下端部21bに装着され、バンプストッパ21の下端部21b側の軸心方向への変形を防止するバンプストッパガイド23を備えようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両のサスペンション装置におけるショックアブソーバには、シリンダから突出されて先端側が車体側に固定されたピストンロッドの摺動部等へのダストの侵入を防止するため、ピストンロッドの周りを取り囲むようにゴムまたは樹脂製のダストカバーが設けられている。
【0003】
上述したようなサスペンション装置では、ピストンロッドが車体側に固定される箇所に、発泡ウレタンなどの発泡弾性体、いわゆるバンプストッパが設けられている。バンプストッパは、ショックアブソーバのバンプ時に、その下端側にシリンダ上端が当接することでショックアブソーバの変位を緩衝的に制限している(例えば、特許文献1,2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−294511号公報(例えば、明細書の段落[0008]−[0010]、[図1]など参照)
【特許文献2】特開2010−7692号公報(例えば、明細書の段落[0010]−[0026]、[図1]〜[図6]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1,2に提案される技術では、ショックアブソーバのバンプ時にシリンダが当接してバンプストッパ(バンパラバー、バウンドストッパ)が圧縮変形したときにピストンロッドが挿通される挿通孔とピストンロッドとの隙間に当該バンプストッパの下端部側が潜り込むという現象が生じる虞があった。このような現象が生じると挿通孔に設けたオイルシールが損傷し、挿通孔のシール性が低下してオイル漏れが生じる可能性があった。また、ダストカバーの下方が開放されているため、シリンダとダストカバーとの間からダストが侵入してシリンダの上端部にダストなどが溜まる場合があり、ダストが溜まった状態でバンプストッパの下端部側が挿通孔に潜り込む現象が生じると、オイルシールの損傷だけでなく、ダストなどを挿通孔からシリンダ内に押し込んでしまい、ショックアブソーバの性能を大きく低下させる可能性があった。また、シリンダの上端部とバンプストッパの下端部とが当接する構成とされているので、バンプ時の衝撃が直接シリンダ側に入力されるため、例えばフルバンプ時にはシリンダ側への入力が過大となり、少なからずシリンダに悪影響を及ぼす可能性があった。
【0006】
以上のことから、本発明は、上述したような問題を解決するために為されたものであって、ショックアブソーバのバンプ時において、過大な入力を緩衝的に吸収しつつショックアブソーバの変位を規制すると共に、ピストンロッドが挿通される挿通孔へのバンプストッパ下端部の潜り込みを防ぐことができる車両用サスペンション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する本発明に係る車両用サスペンション装置は、ショックアブソーバのピストンロッドの周りを覆うように軸方向に延設される筒状部材であって、前記ショックアブソーバのシリンダの上端部に設けられるバンプストッパと、前記ピストンロッドの上端部側に固定されて前記ショックアブソーバのバンプ時に前記バンプストッパの上端部が当接するブラケットと、前記バンプストッパと前記シリンダの上端部との間に設けられるとともに、当該バンプストッパの下端部に装着され、当該バンプストッパ下端部側の軸心方向への変形を防止するバンプストッパガイドを備えたことを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係る車両用サスペンション装置は、前述した発明に係る車両用サスペンション装置であって、前記バンプストッパガイドは、中央に前記ピストンロッドが挿通される穴部が設けられた底板部と、前記底板部の前記穴部の周縁から上方に立設された内壁部とを備え、前記バンプストッパガイドに前記バンプストッパが装着された状態で、前記内壁部が前記バンプストッパ下端部の内壁面より内側に位置するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決する本発明に係る車両用サスペンション装置は、前述した発明に係る車両用サスペンション装置であって、前記バンプストッパの上方に配置されて前記ピストンロッドの周りを覆うダストカバーが備えられており、前記ダストカバーは、外周面が蛇腹状に形成された筒状で、その下端部が前記バンプストッパに連結されていることを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する本発明に係る車両用サスペンション装置は、前述した発明に係る車両用サスペンション装置であって、前記ダストカバーと前記バンプストッパとが一体に成形されていることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する本発明に係る車両用サスペンション装置は、前述した発明に係る車両用サスペンション装置であって、前記バンプストッパは、その上部に、前記ダストカバーの下端部が外周縁部近傍に接続される大径部と、前記大径部より小径で前記大径部の上部から上方に延設されてバンプ時に前記ブラケットに当接される小径部とを備えており、前記小径部は、その軸方向の長さが前記ダストカバーの収縮状態での軸方向の長さより長く形成されていることを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する本発明に係る車両用サスペンション装置は、前述した発明に係る車両用サスペンション装置であって、上端部が前記ブラケットに装着されるとともに下端部側が前記バンプストッパガイドよりも下方に延在されて、前記バンプストッパの外周を囲むよう形成された筒状のダストカバーを備えており、前記バンプストッパの外周部には、周方向に亘って径方向外側へ向けて延在する外周側突起部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用サスペンション装置によれば、シリンダ上端部に設けたバンプストッパによりバンプ時の過大な入力を緩衝的に吸収しつつショックアブソーバの変位を規制すると共に、バンプストッパガイドによりバンプストッパ下端部の変形を抑えてピストンロッドが挿通される挿通孔にバンプストッパが潜り込む現象を確実に防ぐことができる。
また、バンプストッパをショックアブソーバのシリンダ上端部に固定する構成としたので、ダストの侵入経路がより車両上方側となり、シリンダ上端部へのダストの侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係る車両用サスペンション装置の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る車両用サスペンション装置が備えるバンプストッパガイドの説明図であって、図2(a)にその斜視を示し、図2(b)にその断面を示す。
【図3】本発明の第2の実施例に係る車両用サスペンション装置の説明図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る車両用サスペンション装置の説明図である。
【図5】図4における囲み線Vの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る車両用サスペンション装置を実施するための形態について、各実施例にて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例に係る車両用サスペンション装置について、図1および図2を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施例に係る車両用サスペンション装置は、ショックアブソーバ1を備える。ショックアブソーバ1は、シリンダ2と、シリンダ2の上端部2aに設けられた挿通孔2bより上方へ突出するピストンロッド3を備える。挿通孔2b内には、ピストンロッド3との間にオイルシール(図示せず)が設けられている。なお、シリンダ2の下端部には筒状の取付部17が形成されている。
【0018】
ピストンロッド3は、上端部側にピストンロッド3の軸径よりも大径をなす段部3aと、この段部3aより上方に設けられたねじ部3bを備える。段部3a上には、ブラケット4と下部プレート5が溶接された状態で係止される。ブラケット4は、下方側に向けて開口するカップ状に形成されている。ピストンロッド3の段部3aの上方のねじ部3bにカラー7が外嵌され、当該カラー7の外周側に上半部8aおよび下半部8bで構成される弾性ブッシュ8が装着される。ピストンロッド3における弾性ブッシュ8より上方には上部プレート6が係止され、上方からナット9が螺着されることにより、弾性ブッシュ8が上部プレート6と下部プレート5により締め付けられる。弾性ブッシュ8の上半部8aと下半部8bの間には、ブッシュ受け金具11が溶接された上部ばね受け10が装着される。上部ばね受け10にはゴムシート12が装着される。
【0019】
シリンダ2の上端部2aには、下部ばね受け14が溶接されたブラケット13が装着される。上述した上部ばね受け10に装着されたゴムシート12と下部ばね受け14の間にコイルスプリング15が配置される。
【0020】
ピストンロッド3に設けられたブラケット4の下方には、シリンダ2の上端部2aとの間でピストンロッド3の周囲を覆うダストカバー22およびバンプストッパ21が一体で設けられている。バンプストッパ21およびダストカバー22は、ゴムもしくは樹脂により成形されている。バンプストッパ21は、ピストンロッド3の軸方向に延在された筒状の部材で、ピストンロッド3が挿通された状態でシリンダ2の上方に配置される。ダストカバー22は、ピストンロッド21の軸方向に延在された筒状をなし、バンプストッパ21の上方に配置される。ダストカバー22は、周面が蛇腹状に形成されて軸方向に収縮可能とされている。ダストカバー22の上端部22aは、ブラケット4内に配置され、ダストカバー22の下端部22bは、バンプストッパ21の上端部21aの外周縁部分に連結されている。バンプストッパ21の上端部21aにおける中央部近傍には、上方へ突出する上部突起部21cが設けられており、ショックアブソーバ1のフルバンプ時には、ブラケット4内にてダストカバー22が収縮すると共に、バンプストッパ21の上部突起部21cがブラケット4に当接する構成となっている。
【0021】
シリンダ2の上端部2aのブラケット13の上面には、プレート24を介してバンプストッパガイド23が固定される。ブラケット13、プレート24、バンプストッパガイド23は、それぞれ互いに接合された状態でシリンダ2の上端部2aに固定される。バンプストッパガイド23には、バンプストッパ21の下端部21bが装着される。つまり、上述したバンプストッパ21は、バンプストッパガイド23を介してシリンダ2の上端部2aに固定される。
【0022】
バンプストッパガイド23は、例えば、鋼板で作製された円板形状の部材であって、図2(a)および図2(b)に示すように、中央にピストンロッド3が挿通可能な穴部23eが設けられた底板部23aと、底板部23aの穴部23eの周縁に上方に立設する内壁部23bと、底板部23aの外周縁から径方向外側かつ上方に傾斜して延在する傾斜部23cとを備える。つまり、バンプストッパガイド23は、全体が円形の皿状で、中央部に穴部23eと当該穴部23eの周囲を囲む円筒状の内壁部23bを備えた形状とされている。内壁部23bの高さh1は、傾斜部23cの高さh2より高く形成されている。そして、バンプストッパガイド23は、穴部23eにピストンロッド3が挿通された状態で下面がプレート24に溶接等によって接合され、シリンダ2の上端部2aが固定されている。このような形状のバンプストッパガイド23にバンプストッパ21の下端部21bが装着されている。バンプストッパガイド23の内壁部23bは、バンプストッパ21が装着された状態で、バンプストッパ21の下端部21bの内壁面21gより内側に位置され、その外周面が内壁面21gに当接(接触)された状態となる。つまり、バンプストッパガイド23の内壁部23bがバンプストッパ21の下端部21bの内壁面21gの内側に嵌入されて、バンプストッパ21の下端部21bがピストンロッド3側(バンプストッパ21の軸心側)に変形するのを抑える構成とされている。なお、バンプストッパガイド23の形状は、底板部23aの外周側の部位(傾斜部23cに相当する部位)が上方に延設されてバンプストッパ21の下端部21bの外周を縦壁で囲むようなカップ状に形成されてもよい。また、バンプストッパガイド23は、鋼板で作製されたものに限らず、樹脂で作製された部材であってもよい。
【0023】
バンプストッパ21のバンプストッパガイド23への装着方法としては、例えば、バンプストッパ21の下端部21bに下部突起部(図示せず)を設ける一方、バンプストッパガイド23に前記下部突起部が嵌合可能な嵌合穴23dを設け、前記下部突起部を嵌合穴23dに嵌合する方法が挙げられる。また、バンプストッパ21をバンプストッパガイド23に加硫接着する方法や、バンプストッパガイド23にバンプストッパ21を圧入する方法などにより、バンプストッパをバンプストッパガイドに装着することも可能である。
【0024】
本実施例に係るサスペンション装置は、上記のような構成とされているので、例えば、ショックアブソーバ1がフルバンプしたときには、シリンダ2と一緒にバンプストッパ21が上方に移動され、バンプストッパ21の上部突起部21cがブラケット4に当接して当該バンプストッパ21が圧縮変形される。つまり、シリンダ2側にはバンプストッパ21を介して衝撃が入力される構成となっている。これにより、過大な入力を緩衝的に吸収しつつシリンダ2の上方への変位を規制することができる。さらに、フルバンプによる圧縮によりバンプストッパ21の下端部21bがピストンロッド3側、すなわち、バンプストッパ21の軸心側に変形しようとするが、その下端部21b側はバンプストッパガイド23に装着されており、バンプストッパ21の下端部21bの内壁面21gがバンプストッパガイド23の内壁部23bにより抑えられているので、バンプストッパ21の軸心側への変形が阻止される。これにより、バンプストッパ21の下端部21bがシリンダ2の挿通孔2bへ潜り込む現象を確実に防止することができる。
【0025】
なお、ショックアブソーバ1のフルバンプ時においては、ダストカバー22は収縮してブラケット4内に収容された状態となるので、バンプストッパ21の上部突起部21cがブラケット4に接触する際に邪魔になることはない。
【0026】
また、本実施例では、シリンダ2の上部にバンプストッパ21を配置し、さらにバンプストッパ21の上方をダストカバー22で囲むようにして、ダスト等の侵入経路ができるだけ車両上方側となるように構成している。これにより、ダストがダストカバー22やバンプストッパ21の内周側に侵入しにくくなるので、ダスト等がシリンダ2の上端部2aへ溜まることを抑制することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施例に係る車両用サスペンション装置によれば、ショックアブソーバ1のシリンダ2の上端部2aにバンプストッパガイド23を介してバンプストッパ21を装着しているので、ショックアブソーバ1のフルバンプ時において、バンプストッパ21の上端部21a側が圧縮変形することによりシリンダ2への過大な入力を緩衝的に吸収しつつシリンダ2の変位を規制すると共に、バンプストッパ21の下端部21b側の圧縮変形がバンプストッパガイド23により防止されてバンプストッパ21の挿通孔2bへの潜り込みを防ぐことができる。
【0028】
したがって、オイルシールが損傷してシール性が低下したり、シリンダ2の上端部2aに溜まったダスト等がシリンダ2の挿通孔2bからシリンダ2内に押し込まれたりすることが無くなるので、ショックアブソーバ1の性能を低下させる要因を確実に減らすことができる。
【0029】
なお、本実施例では、バンプストッパ21とダストカバー22は、コストや部品点数削減の観点から一体で成形されるのが好ましいが、別体であってもよい。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2実施例に係る車両用サスペンション装置について、図3を参照して説明する。
本実施例に係る車両用サスペンション装置は、上述した第1の実施例に係る車両用サスペンション装置が備えるバンプストッパおよびダストカバーおよびブラケットの形態を変更したものであって、それ以外は上述した第1の実施例に係る車両用サスペンション装置と同じ部材を備え、作用効果も同じである。したがって、ここでは、第1の実施例と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施例では、第1の実施例に係る車両用サスペンション装置と同じ部材には同一の符号を付記している。
【0031】
図3に示すように、本実施例のバンプストッパ31は、第1の実施例に係るバンプストッパ同様、ショックアブソーバ1のピストンロッド3の周囲を覆う筒状でシリンダ2の上端部2aに固定されたバンプストッパガイド23に下端部31bが装着されて配置される。バンプストッパ31は、その上部側に大径部31dと、この大径部31dよりも小径をなし当該大径部31dから上方に延設された小径部31eとを備える。小径部31eの上端、すなわちバンプストッパ31の上端部31aには、上部突起部31cが設けられる。
【0032】
ピストンロッド3の段部3aに係止されるブラケット34は、板状の部材で周縁に下方側に延びるフランジを備えている。
【0033】
ブラケット34とバンプストッパ31との間には、筒状のダストカバー32が設けられている。ダストカバー32は、周面が蛇腹状に形成されて軸方向に伸縮可能とされている。ダストカバー32の上端部32aがブラケット34に装着されるとともに、下端部32bがバンプストッパ31の大径部31dにおける外周縁部近傍に連結されている。すなわち、ダストカバー32の内側にバンプストッパ31の小径部31eが配置された構成となっている。そして、小径部31eにおける軸方向の長さL1の部分は、ダストカバー32が軸方向に収縮した時の厚み(軸方向での長さ)より長く形成されている。
【0034】
上述したように、本実施例の車両用サスペンション装置では、バンプストッパ31とブラケット4との間をダストカバー32で連結することによりピストンロッド3を隙間無く覆う構成としている。これにより、バンプストッパ31の内側、すなわちピストンロッド3側へのダスト等の侵入経路を遮断することができる。
【0035】
また、フルバンプ時には、バンプストッパ31(小径部31e)の上部突起部31cがブラケット34に当接し、当該バンプストッパ31が圧縮変形され、同時にダストカバー32がバンプストッパ31の大径部31dとブラケット34との間で圧縮されて小径部31e外周側で収縮した状態となる。このとき、バンプストッパ31の小径部31eの軸方向の長さがダストカバー32の収縮状態での厚み(軸方向での長さ)より長く形成されているので、ダストカバー32の収縮状態での厚み分を吸収することができる。したがって、ダストカバー32への入力を抑制することができ、ダストカバー32が必要以上に変形したり破損したりすることを防止することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施例に係る車両用サスペンション装置によれば、上述した第1の実施例に係る車両用サスペンション装置と同様の作用効果に加えて、ダスト等の侵入経路を確実に遮断することができるので、シリンダ2の上端部に溜まるダスト等をより一層抑制することができる。
【0037】
なお、本実施例では、バンプストッパ31とダストカバー32は、コストや部品点数低減の観点から一体で成形されるのが好ましいが、別体であってもよい。
【実施例3】
【0038】
本発明の第3の実施例に係る車両用サスペンション装置について、図4および図5を参照して説明する。
本実施例に係る車両用サスペンション装置は、上述した第1の実施例に係る車両用サスペンション装置が備えるバンプストッパおよびダストカバーおよびブラケットの形態を変更したものであって、それ以外は上述した第1の実施例に係る車両用サスペンション装置と同じ部材を備え、作用効果も同じである。したがって、ここでは、第1の実施例と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施例では、第1の実施例に係る車両用サスペンション装置と同じ部材には同一の符号を付記している。
【0039】
図4および図5に示すように、本実施例のバンプストッパ41は、第1の実施例のバンプストッパ同様、ショックアブソーバ1のピストンロッド3の周囲を覆う筒状でシリンダ2の上端部2aに固定されたバンプストッパガイド23に下端部41bが装着されて配置される。
【0040】
ピストンロッド3の段部3a上に係止されるブラケット34は、板状の部材で周縁に下方側に延びるフランジを備えている。
【0041】
ダストカバー42は、周面が蛇腹状に形成された筒状であり、上端部42aがブラケット34の周縁に連結されている。ダストカバー42は、ピストンロッド3が伸長した状態にて、その下端部42bがシリンダ2の上端部2a近傍の周囲を覆うようにストッパガイド23よりも下方に延在している。すなわち、バンプストッパ41は、その外周側をダストカバー42によって囲まれている。なお、ダストカバー42は、筒状の部材であれば、周面が蛇腹状になっていなくともよい。
【0042】
バンプストッパ41は、上端部41aに上部突起部41cが設けられ、当該上部突起部41cがバンプ時にブラケット34に当接するよう構成されている。バンプストッパ41の下端部41b近傍の外周部には、外周側突起部41fを備えている。外周側突起部41fは、バンプストッパ41の外周部の周方向に亘って延在すると共に、径方向外側に向けて延在し、上方側に円弧をなすリップ形状に形成されている。すなわち、外周側突起部41fは、ダストカバー42の内周面に向かって延びて、バンプストッパ41とダストカバー42の間の隙間を塞ぐように設けられている。これにより、バンプストッパ41とダストカバー42の間の隙間を小さくすることができる。なお、外周側突起部41fは、その外周縁(先端側)がダストカバー42の内周面と当接しない程度に設けられているのが好ましいが、常時当接される構成であってもよい。
【0043】
上述したように、本実施例の車両用サスペンション装置では、ダストカバー42でシリンダ2上部まで覆うよう構成したダストカバー42が別体に設けられるタイプのサスペンション装置において、ダスト等の侵入経路であるバンプストッパ41とダストカバー42との隙間を小さくすることができる。したがってピストンロッド3側へのダスト等の侵入を確実に抑制できる。
【0044】
以上説明したように、本実施例に係る車両用サスペンション装置によれば、上述した第1の実施例に係る車両用サスペンション装置と同様の作用効果に加えて、バンプストッパ41とダストカバー42とを別体で設けたタイプのサスペンション装置においてもダスト等の侵入を確実に抑制することができる。
【0045】
なお、本実施例では、下端部41b近傍の外周部に突起部41fが設けられたバンプストッパ41を備える車両用サスペンション装置について説明したが、突起部を設ける箇所は、バンプストッパの外周部における下端部近傍に限らず当該下端部以外の箇所に設けることも可能である。また、突起部41fが1箇所に設けられたバンプストッパ41を備えるサスペンション装置について説明したが、突起部の設置数量は、1箇所に限らず2箇所以上の複数箇所に設置することが可能である。このようなサスペンション装置であっても、上述の第3の実施例に係る車両用サスペンション装置と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る車両用サスペンション装置は、ショックアブソーバのバンプ時に、過大な入力を緩衝的に吸収しつつショックアブソーバの変位を規制すると共に、ピストンロッドが挿通される挿通孔へのバンプストッパの潜り込みを防ぐことができるため、ショックアブソーバの性能低下の要因を減らすことができるので、自動車産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ショックアブソーバ
2 シリンダ
2b 挿通孔
3 ピストンロッド
4 ブラケット
5 下部プレート
6 上部プレート
7 カラー
8 弾性ブッシュ
9 ナット
10 上部ばね受け
11 ブッシュ受け金具
12 ゴムシート
13 ブラケット
14 下部ばね受け
15 コイルスプリング
21 バンプストッパ
21a 上端部
21b 下端部
21c 上部突起部
22 ダストカバー
22a 上端部
22b 下端部
23 バンプストッパガイド
23a 底板部
23b 内壁部
23c 傾斜部
23d 嵌合穴
23e 穴部
24 プレート
31 バンプストッパ
31a 上端部
31b 下端部
31c 上部突起部
31d 大径部
31e 小径部
32 ダストカバー
32a 上端部
32b 下端部
41 バンプストッパ
41a 上端部
41b 下端部
41c 上部突起部
41f 外周側突起部
42 ダストカバー
42a 上端部
42b 下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのピストンロッドの周りを覆うように軸方向に延設される筒状部材であって、前記ショックアブソーバのシリンダの上端部に設けられるバンプストッパと、
前記ピストンロッドの上端部側に固定されて前記ショックアブソーバのバンプ時に前記バンプストッパの上端部が当接するブラケットと、
前記バンプストッパと前記シリンダの上端部との間に設けられるとともに、当該バンプストッパの下端部に装着され、当該バンプストッパ下端部側の軸心方向への変形を防止するバンプストッパガイドを備えた
ことを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用サスペンション装置であって、
前記バンプストッパガイドは、中央に前記ピストンロッドが挿通される穴部が設けられた底板部と、前記底板部の前記穴部の周縁から上方に立設された内壁部とを備え、
前記バンプストッパガイドに前記バンプストッパが装着された状態で、前記内壁部が前記バンプストッパ下端部の内壁面より内側に位置するように構成されている
ことを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された車両用サスペンション装置であって、
前記バンプストッパの上方に配置されて前記ピストンロッドの周りを覆うダストカバーが備えられており、
前記ダストカバーは、外周面が蛇腹状に形成された筒状で、その下端部が前記バンプストッパに連結されている
ことを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用サスペンション装置であって、
前記ダストカバーと前記バンプストッパとが一体に成形されている
ことを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された車両用サスペンション装置であって、
前記バンプストッパは、その上部に、前記ダストカバーの下端部が外周縁部近傍に接続される大径部と、前記大径部より小径で前記大径部の上部から上方に延設されてバンプ時に前記ブラケットに当接される小径部とを備えており、
前記小径部は、その軸方向の長さが前記ダストカバーの収縮状態での軸方向の長さより長く形成されている
ことを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載された車両用サスペンション装置であって、
上端部が前記ブラケットに装着されるとともに下端部側が前記バンプストッパガイドよりも下方に延在されて、前記バンプストッパの外周を囲むよう形成された筒状のダストカバーを備えており、
前記バンプストッパの外周部には、周方向に亘って径方向外側へ向けて延在する外周側突起部が設けられている
ことを特徴とする車両用サスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−225475(P2012−225475A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95702(P2011−95702)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】