説明

車両用シートのリクライニング装置

【課題】リクライニング装置の軸方向における厚みを薄くして装置全体のコンパクト化を図るとともに、簡素な構造にして部品点数及び重量の削減を可能にするリクライニング構造を提供する。
【解決手段】ロア部材7に対してアッパ部材6が回動に支持され、かつロア部材7に対するアッパ部材6の角度を操作レバー10の手動操作によって調整し得るようになされ、ロア部材7に対してアッパ部材6を前傾方向に付勢する渦巻きバネ13の一端がアッパ部材6に設けられた固定部材11に係合するとともに、他端がロア部材7に設けられた固定部材12に係合するように構成されたリクライニング装置であって、ロア部材7に設けられた固定部材12に係合する渦巻きバネ13の他端の係合部分から折り返すようにして延設され、その延設された渦巻きバネ13の端部が操作レバー10に設けられた係合部10aに係合するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックをシートクッションに対して傾斜角度自在に調整及び支持するリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献に記載された従来のリクライニング装置は、シートクッション側に支持されるロアアームと、該ロアアームに回動自在に支持されシートバック側に支持されるアッパアームと、アッパアームのロアアームに対する回動を規制するロック機構と、該ロック機構を作動させるようにロアアームとアッパアームとの間に配設されるカムと、該カムに係合するシャフトと、該シャフトの軸心に対して対称配置され、前記カムとの当接により該シャフトの径方向に移動して前記アッパアームの前記ロアアームに対する回動規制、或いは許容する複数のポールと、前記シャフトに固定された操作レバーと、該操作レバーを反時計方向に回動させるように付勢するスプリングと、前記ロアアームに対して前記アッパアームを反時計方向に回動させるスプリングとを備えている。
【0003】
上述の従来構造では、前記操作レバーを反時計方向に回動させるように付勢するスプリングと前記ロアアームに対して前記アッパアームを反時計方向に回動させるスプリングは、前記シャフトの軸方向に重ねるようにして配設されており、その為、リクライニング装置の軸方向の厚みが厚くなっていた。
また、前記操作レバーと前記アッパアームのそれぞれに専用のスプリングが必要な構造となっており、部品点数や重量の増加の原因となっている懸念があった。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献】 特開2001−128768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みて創案されたものであり、リクライニング装置の軸方向における厚みを薄くして装置全体のコンパクト化を図るとともに、簡素な構造にして部品点数及び重量の削減を可能にするリクライニング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による請求項1に記載のリクライニング装置は、シートクッション側にロア部材が、シートバック側にアッパ部材が設けられ、ロア部材に対してアッパ部材が回動に支持され、かつロア部材に対するアッパ部材の角度を操作レバーの手動操作によって調整し得るようになされ、ロア部材に対してアッパ部材を前傾方向に付勢する渦巻きバネの一端がアッパ部材に設けられた固定部材に係合するとともに、他端がロア部材に設けられた固定部材に係合するように構成されたリクライニング装置において、ロア部材に設けられた固定部材に係合する渦巻きバネの他端の係合部分から折り返すようにして延設され、その延設された渦巻きバネの端部が操作レバーに設けられた固定部材に係合するようにしたことを特徴としている。
【0007】
本発明による請求項2に記載のリクライニング装置は、渦巻きバネの他端の係合部分から折り返すようにして延設された部分に切欠きを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、操作レバーをロック解除位置からロック位置に復元方向に回動させるように付勢するスプリングの機能と、ロア部材に対してアッパ部材を前傾方向に回動させるように付勢するスプリングの機能とを一つの渦巻きバネで行えるようにしたことで、リクライニング装置の軸方向の厚みを薄くして装置全体のコンパクト化を図ることができるともに、部品点数や重量を削減することができる。
【0009】
本発明による請求項2によれば、延設された部分に切欠きを設けたことにより、その切欠き部分のバネ力が弱まり、操作レバーをロック解除位置からロック位置に復元させる付勢力を、アッパ部材を前傾させる付勢力よりも小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明によるリクライニング装置の側面図である。
【図3】本発明によるリクライニング装置を構成するロック装置の分解斜視図である。
【図4】図3のロック装置のロック機構を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るリクライニング装置を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るリクライニング装置を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るリクライニング装置を示す図である。
【図8】本発明によるリクライニング装置に使用される渦巻きバネに形成された切欠き部を示す要部拡大図である。
【図9】本発明によるリクライニング装置に使用される渦巻きバネがアッパ部材に設けられた固定部材に係合した状態を示す要部拡大図である。
【図10】本発明によるリクライニング装置に使用される渦巻きバネがロア部材に設けられた固定部材に係合した状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明に係る車両用シート1は、図1に示すように、乗員が着座する座面となるシートクッション2と、背凭れとなるシートバック3と、シートクッション2に対してシートバック3の角度調節可能なリクライニング装置4とで構成されている。
また、車両用シート1は、車体フロアにシートスライド装置5を介して固定され、シート全体を車体フロアに対して前後方向に位置調節できるようになっている。
【0013】
図2は、本発明によるリクライニング装置4の側面を示している。該リクライニング装置4は、アッパ部材6と、ロア部材7と、アッパ部材6とロア部材7とで挟持するように配設されたロック装置8と、該ロック装置8の回動軸9に固定された操作レバー10と、一端側がアッパ部材6に設けられた固定部材11に係合し、他端側がロア部材7に設けられた固定部材12に係合し、回動軸9周りに配設された渦巻きバネ13とで構成されている。
【0014】
図3は、本発明によるリクライニング装置4を構成するロック装置8の分解状態を示している。該ロック装置8は、内周面にロック歯14aが形成された円形状の第1ケース体14と、該第1ケース体14に対向配置されて嵌合し得るようになされた円形状の第2ケース体15と、該第2ケース体15上に摺動可能に配置され、ロック歯16aが形成されたロックプレート16と、該ロックプレート16をロック位置に変位させるカム体17と、該カム体17と一体的に回動する回動軸9と、ロックプレート16をロック解除位置に変位させるロック解除制御板18とで構成されている。
【0015】
回動軸9には、一端部に形成されたセレーションが操作レバー10に係合して、操作レバーからの入力を回動軸に伝達するようになっており、また、軸方向の中間部に矩形部9aが形成されており、該矩形部9aがカム体17の中央部に形成された矩形孔17bに係合し、回動軸9とカム体17は一体的に回動するようになされている。
【0016】
カム体17には、軸方向に突出する係合ピン17aが形成されており、該係合ピン17aがロック解除制御板18の中央部に形成された係合孔18bに係合し、カム体17とロック解除制御板18は、一体的に回動するようになされている。
ロック解除制御板18の周縁部分には、長孔18aが形成され、ロックプレートに形成された凸部16bが移動し得るようになっている。
【0017】
ロック装置8は、図4に示すように、回動軸9から入力される渦巻きバネ13のバネ力によってカム体17が反時計方向に回動する力が働き、ロックプレート16に形成されたロック歯16aが第1ケース体14に形成されたロック歯14aに対して噛み合うように付勢される。
操作レバー10を巻きバネ13のバネ力に抗して回動操作すると、カム体17とともにロック解除制御板18が回動し、凸部16bが回動軸の中心側に引き寄せられることによって、ロックプレート16に形成されたロック歯16aが第1ケース体14に形成されたロック歯14aから係合離脱する。
【0018】
図5は、本発明によるリクライニング装置4における渦巻きバネ13の取付状態を示している。
該渦巻きバネ13は、一端側に係合部13aが形成され、該係合部13aがアッパ部材6に備えられた固定部材11に係合するとともに、他端側に係合部13bが形成され、ロア部材7に備えられた固定部材12に係合している。
渦巻きバネ13の係合部13aは、図9に示すように、固定部材11に形成された凹部11aに係合し、係合部13bは、図10に示すように、固定部材12に形成された凹部12aに係合している。
他端側の係合部13bは、その折り返し部分から延長される延設部13cが設けられており、該延設部13cの端部に係合部13dが形成され、該フック13dが操作レバー10に設けられた係合部10aに係合している。
係合部10aは、操作レバー10の前端を一部切起して一体的に形成されているが、図6に示すように、操作レバー10の略中央部にピンを立設してもよいし、図7に示すように、操作レバー10の後端を一部切起して一体的に形成してもよい。
上述の構成によって、ロア部材7に対してアッパ部材6が反時計方向に回動付勢されるとともに、操作レバー10が反時計方向に回動付勢される。
【0019】
渦巻きバネ13には、図5〜図8に示すように、係合部13bから延長される延設部13cの起点辺りに切込み部13eが形成され、操作レバー10に作用する反時計方向の付勢力を弱めている。
【0020】
なお、本願発明は、このままの実施例に限定されるものでなく、本願発明の技術的思想の範囲で、様々な変形例が実現できるものと解される。
【符号の説明】
【0021】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 リクライニング装置
5 スライド装置
6 アッパ部材
7 ロア部材
8 ロック装置
9 回動軸
9a 矩形部
10 操作レバー
10a 係合部
11 固定部材
11a 凹部
12 固定部材
12a 凹部
13 渦巻きバネ
13a 係合部
13b 係合部
13c 延設部
13d 係合部
13e 切欠き部
14 第1ケース体
14a ロック歯
15 第2ケース体
16 ロックプレート
16a ロック歯
16b 凸部
17 カム体
17a 係合ピン
17b 矩形孔
18 ロック解除制御板
18a 長孔
18b 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション側にロア部材が、シートバック側にアッパ部材が設けられ、前記ロア部材に対して前記アッパ部材が回動に支持され、かつ前記ロア部材に対する前記アッパ部材の角度を操作レバーの手動操作によって調整し得るようになされ、前記ロア部材に対して前記アッパ部材を前傾方向に付勢する渦巻きバネの一端が前記アッパ部材に設けられた固定部材に係合するとともに、他端が前記ロア部材に設けられた固定部材に係合するように構成されたリクライニング装置において、前記ベース部材に設けられた係合部に係合する前記渦巻きバネの他端の係合部分から折り返すようにして延設され、その延設された渦巻きバネの端部が操作レバーに設けられた固定部材に係合するようにしたことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記渦巻きバネの他端の係合部分から折り返すようにして延設された部分に切欠きを設けたことを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−100069(P2013−100069A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255512(P2011−255512)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000151760)株式会社東洋シート (142)
【Fターム(参考)】