説明

車両用シートのリクライニング装置

【課題】シートバックの傾斜角度の変更範囲を制限可能なリクライニング装置において、部品点数を少なくすることを課題とする。
【解決手段】バックフレームに固定的に立設された第1円筒部86を有する第1連結部材52と、第1円筒部に相対回転可能に嵌入されるとともに、クッションフレームに固定的に立設された第2円筒部62を有する第2連結部材50と、第1円筒部と第2円筒部との相対回転を任意の位置で規制するロック機構とを備え、シートバックの傾斜角度を変更可能なリクライニング装置10において、第1円筒部から径方向に延び出す延出部152が、第1円筒部と第2円筒部との相対回転に伴って、クッションフレームに形成された当接部166に当接するように構成する。この構成により、傾斜角度の変更範囲を制限するための部品を新たに設けることなく、シートバックの傾斜角度の変更範囲を制限することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置、詳しくは、シートクッションとシートバックとを、それらの相対角度を変更可能に連結する車両用シートのリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リクライニング装置は、通常、シートクッションとシートバックとを連結し、それらシートクッションとシートバックとの相対角度を調整するように構成されている。具体的には、例えば、下記特許文献に記載されているように、リクライニング装置は、(a)第1円筒部を有し、その第1円筒部がシートクッションのクッションフレームとシートバックのバックフレームとの一方に立設された状態でその一方に固定的に連結される第1連結部材と、(b)第1円筒部に相対回転可能に嵌入される第2円筒部を有し、その第2円筒部がクッションフレームとバックフレームとの他方に立設された状態でその他方に固定的に連結される第2連結部材とを備えており、第1円筒部と第2円筒部との相対回転を任意の位置で規制することで、シートクッションとシートバックとの相対角度を調整するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−252912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートクッションとシートバックとの相対角度を調整可能なリクライニング装置の多くには、その相対角度の変更可能な範囲を制限するための機構が設けられており、上記特許文献に記載のリクライニング装置では、バックフレームに固定的に設けられたストッパ片が、シートクッションとシートバックとの相対角度変更時にクッションフレームに当接することで、相対角度の変更範囲が制限されている。このように、相対角度の変更範囲を制限するためにストッパ片等をクッションフレーム等に固定していては、リクライニング装置の部品点数が増加し、リクライニング装置の車両用シートへの組付け時における工程も増加する。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、シートクッションとシートバックとの相対角度の変更範囲を制限可能なリクライニング装置において、部品点数を少なくするとともに、リクライニング装置の車両用シートへの組付け時における工程を少なくすることが可能なリクライニング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載のリクライニング装置は、シートクッションとシートバックとを、それらの相対角度を変更可能に連結する車両用シートのリクライニング装置であって、第1円筒部を有し、その第1円筒部が前記シートクッションのクッションフレームと前記シートバックのバックフレームとの一方に立設された状態でその一方に固定的に連結される第1連結部材と、前記第1円筒部に相対回転可能に嵌入される第2円筒部を有し、その第2円筒部が前記クッションフレームと前記バックフレームとの他方に立設された状態でその他方に固定的に連結される第2連結部材と、前記第1円筒部と前記第2円筒部との相対回転を任意の位置で規制するロック機構とを備え、前記第1連結部材が、前記第1円筒部から径方向に延び出す延出部を有し、その延出部が、前記第1円筒部と前記第2円筒部との相対回転に伴って、前記クッションフレームとバックフレームとの他方に形成された当接部に当接することで、前記シートクッションと前記シートバックとの相対角度の変更可能な範囲を制限することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載のリクライニング装置は、請求項1に記載のリクライニング装置において、前記当接部が、前記第2円筒部の径方向に延び出し、前記延出部と前記当接部との一方が、それの先端部において前記延出部と前記当接部との他方に向かって屈曲されたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載のリクライニング装置は、請求項2に記載のリクライニング装置
において、前記第1連結部材が、前記バックフレームに固定的に連結され、前記第2連結部材が、前記バックフレームの車両用シートの外側に位置する前記クッションフレームに固定的に連結され、前記クッションフレームに形成された前記当接部が、それの先端部において前記延出部に向かって屈曲されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載のリクライニング装置では、第1連結部材の第1円筒部から径方向に延び出す延出部が、第1円筒部と第2円筒部との相対回転に伴って、クッションフレーム若しくはバックフレームに形成された当接部に当接することで、シートクッションとシートバックとの相対角度の変更範囲が制限される。これにより、リクライニング装置の部品点数を少なくするとともに、リクライニング装置の車両用シートへの組み付け工程を少なくすることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載のリクライニング装置では、延出部と当接部との一方の先端部が、他方に向かって屈曲されている。これにより、比較的シンプルな構造の機構によって、相対角度の変更範囲を制限することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載のリクライニング装置では、バックフレームの車両用シートの外側に位置するクッションフレームに当接部が形成され、その当接部の先端部が、バックフレームに固定される第1連結部材の延出部に向かって屈曲されている。つまり、クッションフレームの当接部は車両用シートの内側に向かって屈曲されることになり、リクライニング装置をコンパクト化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例であるリクライニング装置が取り付けられた車両用シートを示す斜視図である。
【図2】図1に示すリクライニング装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示すリクライニング装置のクッションフレーム側からの視点における側面図である。
【図4】図3に示すAA線における断面図である。
【図5】図3に示すBB線における断面図である。
【図6】シートバックの傾斜角度の変更が禁止された状態での図4及び5に示すCC線における断面図である。
【図7】シートバックの傾斜角度の変更が許容された状態での図4及び5に示すCC線における断面図である。
【図8】本発明の変形例であるリクライニング装置の分解斜視図である。
【図9】図8に示すリクライニング装置のクッションフレーム側からの視点における側面図である。
【図10】図9に示すDD線における断面図である。
【図11】本発明の第2実施例であるリクライニング装置の分解斜視図である。
【図12】図11に示すリクライニング装置のクッションフレーム側からの視点における側面図である。
【図13】図12に示すEE線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0014】
[第1実施例]
図1に、本発明の実施例のリクライニング装置10を装備した車両用シート20を示す。リクライニング装置10は、車両用シート20の左右に1対設けられている。それら1対のリクライニング装置10は、着座部として機能するシートクッション22と背凭れとして機能するシートバック24とを連結するとともに、シートバック24とシートクッション22との相対角度、つまり、シートバック24のシートクッション22に対する傾斜角度を変更することが可能とされている。
【0015】
1対のリクライニング装置10は、それぞれ、シートクッション22の後端部とシートバック24の下端部とを連結しており、各リクライニング装置10には、軸線回りに回転可能な操作軸26が挿通されている。操作軸26は、シートバック24のシートクッション22に対する傾斜角度のロックを解除するものであり、1対の操作軸26は、同軸的に設けられており、連結ロッド28によって一体的に連結されている。その連結ロッド28は、シートクッション22の側部に設けられた操作レバー30に連結されており、該操作レバー30の操作によって傾斜角度のロックを解除し、シートバックの傾斜角度を変更することが可能となっている。
【0016】
以下に、リクライニング装置10について詳しく説明する。ちなみに、1対のリクライニング装置10は、互いに左右対称の構造であり、略同じ構造とされているため、1対のリクライニング装置10の一方、詳しくは、図1での右側に示されているリクライニング装置10についてのみ説明する。なお、その一方のリクライニング装置10の分解斜視図を図2に、正面図を図3に、断面図を図4〜図7に、それぞれ示す。
【0017】
リクライニング装置10は、図2に示すように、概して円盤形状のラチェット50と、そのラチェット50が相対回転可能に嵌入されるガイド52と、それらラチェット50とガイド52との相対回転を規制するためのロック機構54と、ラチェット50とガイド52とを互いに板厚方向(軸方向)に挟み込んだ状態に保持するための保持部材56とを備えている。
【0018】
ラチェット50は、円板部60と、その円板部60の外周縁からガイド52に向かって突出する短円筒部62とから構成されている。この短円筒部62は、円板部60の外周縁が板厚方向にプレス加工されることによって押し出されて形成されている。短円筒部62の内周面には、図6及び7に示すように、内歯の形成された内歯形成面64と、内歯の形成されていない平坦な円弧面66とが円周方向に並んで形成されている。円弧面66は、短円筒部62の軸対称となる二箇所の位置に配置されており、それぞれ、内周面が内歯形成面64よりも半径方向の内側に突出した平坦な湾曲面とされて形成されている。
【0019】
ラチェット50の円板部60には、図2に示すように、短円筒部62の突出方向とは反対の方向に突出するようにして、周方向の6等配の位置に5つのダボ68と1つのDダボ70が形成されている。それらダボ68及びDダボ70は、シートクッション22のフレームであるクッションフレーム72に形成された5つのダボ孔74及びDダボ孔76に嵌合されており、溶着等により接合されることで、ラチェット50がクッションフレーム72に強固に連結されている。ラチェット50の円板部60の中心部には、さらに、リクライニング装置10のロック解除の切換え操作を行う操作軸26を挿通するための貫通孔78が形成されており、クッションフレーム72にも、その貫通孔78と同軸上に、同じ目的の貫通孔80が形成されている。
【0020】
また、ガイド52は、図4及び5に示すように、ラチェット50より大きな外径の円盤形状とされており、それの中心部が板厚方向に突出するように、プレス加工によって有蓋円筒部82が形成されている。その有蓋円筒部82は、蓋部84と短円筒部86とによって構成されており、短円筒部86の内径は、ラチェット50の短円筒部62の外径より僅かに大きくされている。そして、ガイド52の短円筒部86に、ラチェット50の短円筒部62が嵌入され、それら2つの端円筒部62,86が摺接した状態で、ガイド52とラチェット50とが相対回転可能とされている。
【0021】
ガイド52の蓋部84には、図2に示すように、短円筒部86の突出方向とは反対の方向に突出するようにして、周方向の4等配の位置に4つのダボ88が形成されている。それら4つのダボ88は、シートバック24のフレームであるバックフレーム(図4及び5参照)90に形成された4つのダボ孔(図では2つ示している)92に嵌合されており、溶着等により接合されることで、ガイド52がバックフレーム90に強固に連結されている。これにより、クッションフレーム72とバックフレーム90、つまり、シートクッション22とシートバック24とが相対角度を変更可能に、ガイド52とラチェット50とを介して連結される。なお、ガイド52の蓋部84の中心部には、操作軸26を挿通するための貫通孔96が形成されている。
【0022】
また、ロック機構54は、そのシートクッション22とシートバック24との相対角度の変更を禁止するものであり、ラチェット50の円板部60とガイド52の蓋部84との間に挟まれて配置される1対のポール100及びスライドカム102と、このスライドカム102をスライド操作するためのヒンジカム104と、このヒンジカム104を回動附勢するための附勢ばね106とを備えている。
【0023】
ガイド52の蓋部84には、図6及び7に示すように、1対のポール100及びスライドカム102が配置される側の面に板厚方向に十字形状に凹んだガイド溝108が形成されている。このガイド溝108では、図での上側と下側の溝部が、1対のポール100をそれぞれスライド移動可能に内部に収め入れることのできるポール溝110として形成されている。一方、図での左側と右側の溝部とそれらの間の溝部が、スライドカム102をスライド移動可能に内部に収め入れることのできるスライドカム溝112として形成されている。
【0024】
ポール溝110及びスライドカム溝112は、4つの案内壁114によって区画されており、ポール溝110の幅、つまり、ポール溝110を区画する2つの案内壁114の間の距離は、ポール100が案内壁114に沿ってガイド52の径方向(図での上下方向)にスライド可能なものとされている。一方、スライドカム溝112の幅、つまり、スライド溝112を区画する2つの案内壁114の間の距離は、スライドカム102が案内壁114に沿ってガイド52の径方向(図での左右方向)にスライド可能なものとされている。
【0025】
1対のポール100は、それぞれ、駒形状とされており、互いに上下対称な形状とされている。1対のポール100の各々は、外周面が前述したラチェット50の短円筒部62の内周面と合致する円弧状に湾曲した形状に形成されており、この円弧状に湾曲した外周面には、短円筒部62の内歯形成面64に形成された内歯と噛合可能な外歯116が形成されている。これにより、ポール100の外周面が、短円筒部62の内歯形成面64と向かい合っている際に、ポール100が径方向外側にスライドすると、ポール100に形成された外歯116が短円筒部62の内歯形成面64に噛合し、ガイド52とラチェット50との相対回転が禁止される。つまり、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更が禁止される。
【0026】
スライドカム溝112にスライド可能に収容されるスライドカム102は、概して矩形の駒形状とされており、1対のポール100によって挟まれている。スライドカム102は、上下対称な形状とされており、図での上下側の縁部に、1対のポール100に向かって突出する1対のフック120が形成されるとともに、それら1対のフック120の各々を挟むようにして1対の凹部122が形成されている。
【0027】
そのスライドカム102を挟む1対のポール100の各々は、スライドカム102のフック120が挿入されるように、それの半径方向内側の形状が一部肉抜きされた門型形状に形成されている。その門型の内側には、スライドカム102のフック120の先端と向かい合うように掛部124が形成されており、その掛部124にフック120の先端部が引っ掛かることで、ポール100が、半径方向内側に引き込まれるようになっている。そして、ポール100が、半径方向内側に引き込まれると、ポール100の門型の両脚をなす脚部126が、スライドカム102の凹部122に入り込むようになっている。
【0028】
詳しく言えば、図6に示すように、スライドカム102のフック120の先端部がポール100の掛部124から離間する方向にスライドカム102がスライドされ、その掛部124にフック120の先端部が引っ掛けられていない場合には、ポール100の脚部126は、スライドカム102の凹部122に入り込んでおらず、凹部122に隣接する肩部128に乗り上げている。ポール100の脚部126がスライドカム102の肩部128に乗り上げている状態では、ポール100は半径方向外側にスライドされており、ポール100に形成された外歯116が短円筒部62の内歯形成面64に噛合し、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更が禁止される。
【0029】
そして、図7に示すように、フック120の先端部が掛部124に接近する方向にスライドカム102がスライドされ、その掛部124にフック120の先端部が引っ掛けられている場合には、ポール100の脚部126が、スライドカム102の凹部122に入り込む。ポール100の脚部126が凹部122に入り込んでいる状態では、ポール100は半径方向内側にスライドされており、ポール100に形成された外歯116は短円筒部62の内歯形成面64に噛合していない。このため、ガイド52とラチェット50との相対回転が許容されることになり、シートクッション22とシートバック24との相対角度を変更できるようになっている。
【0030】
そのスライドカム102のスライド操作は、ロック機構54を構成するヒンジカム104によって行われる。ヒンジカム104は、スライドカム102の中央部に貫通形成されたカム孔130内に回動可能に組み付けられている。ヒンジカム104の一端は、図4及び5に示すように、ガイド52に向かってカム孔130から突出しており、ガイド52の貫通孔96も通り抜け、ガイド52のスライドカム102が配置されていない側の面に突出している。その突出しているヒンジカム104の一端には、附勢ばね106が掛着されており、その附勢ばね106の附勢力によって、ヒンジピン104は、常時、図6及び7に示される反時計回り方向に回動附勢されている。なお、ガイド52が固定されるバックフレーム90には、附勢ばね106との干渉を避けるための貫通孔131が形成されている。
【0031】
附勢ばね106は、予め捩り込まれた状態で、内端がヒンジカム104のばね掛部132に掛着されており、外端がガイド52のばね掛部134(図2参照)に掛着されている。これにより、ヒンジカム104は、図6に示すように、その外周部に突出形成された操作突起136によって、スライドカム104をカム孔130の内周面側から押圧して図での右側にスライドされており、ポール100は、半径方向の外側に向かってスライドされている。
【0032】
このヒンジカム104は、前述した操作軸26に一体的に連結されており、操作レバー30(図1参照)の引き上げ操作に伴って、附勢ばね106の附勢に抗した方向に回動操作されるようになっている。つまり、ヒンジカム104は、操作レバー30の操作によって、図6及び7の時計回り方向に回動操作される。これにより、ヒンジカム104は、図7に示すように、操作突起136によって、スライドカム104をカム孔130の内周面側から押圧して図での左側にスライドされ、ポール100は、半径方向の内側に向かってスライドされる。
【0033】
このような構造により、ポール100は、常時、半径方向の外側に向かってスライドされ、ポール100に形成された外歯116がラチェット50の短円筒部62の内歯形成面64に噛合することで、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更が禁止されている。そして、操作レバー30の操作によって、ポール100が、半径方向の内側に向かってスライドされ、ポール100の外歯116とラチェット50の内歯形成面64との噛合が解除されることで、シートクッション22とシートバック24との相対角度を変更することが可能となっている。
【0034】
ただし、操作レバー30の操作が解除され、附勢ばね106の附勢力によって、ヒンジカム104が、図6での右側にスライドされるとともに、ポール100が半径方向の外側に向かってスライドされている際であっても、ポール100の外歯116がラチェット50の内歯形成面64に噛合しない場合がある。つまり、操作レバー30の操作が解除されていても、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更を禁止できない場合がある。
【0035】
詳しく説明すれば、ラチェット50の短円筒部62の内周面には、上述したように、ポール100の外歯116が噛合するための内歯が形成されていない平坦な円弧面66が存在しており、この円弧面66は、内歯形成面64よりも半径方向の内側に突出している。このため、ラチェット50の短円筒部62と、ガイド52の短円筒部86とが相対回転し、ポール100の外歯116とラチェット50の短円筒部62の円弧面66とが向かい合っている場合には、操作レバー30の操作が解除され、ポール100が半径方向の外側にスライドされても、ポール100の外歯116は円弧面66に乗り上がることになる。これにより、ポール100の外歯116はラチェット50の内歯形成面64に噛合することができなくなり、操作レバー30の操作が解除されていても、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更を禁止できなくなる。
【0036】
ちなみに、操作レバー30の非操作時に、ポール100の外歯116がラチェット50の円弧面66に乗り上がることなく、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更を禁止可能な範囲は、シートバック24が背凭れとして使用される角度領域、具体的にはシートバック24が直立姿勢となる角度位置から後方に倒し込まれる角度領域に設定されている。
【0037】
一方、操作レバー30の非操作時に、ポール100の外歯116がラチェット50の円弧面66に乗り上り、シートクッション22とシートバック24との相対角度の変更を禁止できない範囲は、シートバック24が背凭れとして使用されることのない前倒れ姿勢の角度領域、具体的にはシートバック24が直立姿勢となる角度位置から前方に倒し込まれる角度領域に設定されている。なお、シートバック24は、図示を省略する附勢ばねによって、前方に倒し込まれる方向に、常時、附勢されている。このため、シートバック24を前倒し操作するために、操作レバー30を操作して、シートバック24が直立姿勢から少しでも前に傾いたら、操作レバー30の操作を解除しても、シートバック24はシートクッション22の上面部に畳み込まれるようになっている。
【0038】
また、上述したラチェット50とガイド52とは、概してリング形状の保持部材56によって、それらが離れないように保持されている。保持部材56は、図4及び5に示すように、軸方向に面を向けた第1フランジ部140と、そのフランジ部140の外縁から軸方向に向かって延び出す段差部142と、その段差部142の延び出した端部から半径方向外側に延び出す第2フランジ部144と、その第2フランジ部144の外縁から段差部142の延出方向と同じ方向に向かって延び出す舌片状の6つの保持片(図2参照)146とから構成されている。6つの保持片146は、曲板状とされ、第2フランジ部144の外縁の6等配の位置から延び出しており、それら6つの保持片146のうちの隣り合うもの同士の間は、開口部148(図2参照)とされている。なお、段差部142の内径は、ラチェット50の短円筒部62の外径より僅かに大きくされている。
【0039】
また、ガイド52の外周縁は、図6及び7に示すように、凹凸形状とされており、その外周縁の6等配の位置に、5つの第1凸部150と1つの第2凸部152が形成されている。第1凸部150及び第2凸部152は、半径方向外側に向かって突出しており、第2凸部152は、第1凸部150より大きく突出している。そして、6つの凸部150,152のうちの隣り合うもの同士の間は、凹部154とされており、6つの凹部154がガイド52の外周縁の6等配の位置に形成されている。各凹部154の周方向の長さは、各保持片146の周方向の長さより僅かに長くされており、各保持片146を各凹部154に挿通させることが可能とされている。
【0040】
保持部材56は、上記構造により、段差部142内にラチェット50を収容した状態で、各保持片146を各凹部154に挿通させて、ガイド52を固定的に保持することが可能となっている。詳しく言えば、図4及び5に示すように、ガイド52の短円筒部86内に嵌入された状態のラチェット50の短円筒部62を保持部材56の段差部142内にクリアランスのある状態で挿入するとともに、ガイド52の外周縁に形成された各凹部154に、保持部材56の各保持片146を挿通させる。この際、ガイド52の短円筒部86のラチェット50側の端面は、第2フランジ部144に当接するが、短円筒部62の円板部60に連続する端面は、第1フランジ部140に当接することなく、その第1フランジ部140と向かい合う。そして、ガイド52の短円筒部86の端面を第2フランジ部144に当接させた状態で、各保持片146の先端部を屈曲させることで、保持部材56とガイド52とを固定させる。これにより、保持部材56は、ラチェット50とガイド52との相対回転を許容した状態で、ラチェット50とガイド52とが離れないようにそれらを保持している。
【0041】
本リクライニング装置10では、このような構造によって、シートバック24が直立姿勢となる角度位置から後方に倒し込まれる角度領域において、操作レバー30の操作がされていない場合には、シートクッション22とシートバック24との相対角度、つまり、シートバック24の傾斜角度が維持され、操作レバー30の操作によって、シートバック24の傾斜角度を変更することが可能となっている。そして、シートバック24の傾斜角度の変更により、シートバック24が直立姿勢から少しでも前に傾斜した場合には、操作レバー30の操作に関わらず、シートバック24は、附勢ばね(図示省略)の附勢力によって前方に倒れ込むようになっている。なお、シートバック24の前方への倒れ込みは、ガイド52の外周縁から半径方向外側に突出する第2凸部152がクッションフレーム72に当接することで制限されるようになっている。
【0042】
詳しく言えば、ラチェット50が固定されるクッションフレーム72は、図3に示すように、概して矩形状の矩形部160と、その矩形部160の長辺から略半円形状に突出する半円部162とに区分けされ、その半円部162の外径は、ラチェット50の外径と略同じとされている。このため、リクライニング装置10がクッションフレーム72に取り付けられた状態では、クッションフレーム72側からの視点において、ガイド52の外周縁と保持部材56の保持片146のみが露出している。
【0043】
そのガイド52の外周縁に形成された6つの凸部150,152のうちの最も大きく突出した凸部、つまり、第2凸部152の突出量は、クッションフレーム72の半円部162の両側部に形成された1対の段差部164の長さより長くされており、各段差部164の半径方向外側の端部から矩形部150に連続する箇所にガイド52に向かって突出する1対の突出部166が形成されている。
【0044】
これにより、シートバック24が附勢ばね(図示省略)の附勢力によって前方に倒れ込んだ場合には、ラチェット50とガイド52とが相対回転し、ガイド52の外周縁から突出する第2凸部152が、クッションフレーム72に形成された1対の突出部166のうちの図3での左側のものに当接することで、シートバック24の前方への倒れ込みが制限される。また、操作レバー30が操作され、シートバック24が後方に倒された場合にも、ラチェット50とガイド52とが相対回転し、第2凸部152が1対の突出部166のうちの図3での右側のものに当接するようになっており、シートバック24の後方への倒れ込みも制限することが可能となっている。
【0045】
このように、リクライニング装置10では、第2凸部152と1対の突出部166とから構成される機構によって、シートバック24の傾斜角度の変更可能な範囲が制限されるようになっており、傾斜角度の変更可能な範囲を制限するための機構を比較的シンプルな構造とすることが可能となっている。また、第2凸部152は、ガイド52の外縁部を突出させたものであり、1対の突出部166は、クッションフレーム72の外縁部を屈曲させたものである。つまり、リクライニング装置10の部品点数を増加させることなく、シートバック24の傾斜角度の変更範囲を制限することが可能となっている。さらに、クッションフレーム72の突出部166は、図5に示すように、バックフレーム90側に屈曲されている。これにより、リクライニング装置10の厚さを薄くすることが可能となり、コンパクト化を図ることが可能となる。
[第2実施例]
【0046】
上記リクライニング装置10では、クッションフレーム72の外縁部をガイド52に向かって屈曲させて、その屈曲させた部分と、ガイド52の第2凸部152とが当接するように構成されていたが、クッションフレーム72の外縁部の代わりにガイド52の第2凸部152を屈曲させる構成であってもよい。このように構成されたリクライニング装置を、第2実施例のリクライニング装置170として図8〜図10に示す。第2実施例のリクライニング装置170は、ガイド172を除き、上記リクライニング装置10と略同様の構成であるため、上記リクライニング装置10と同様の機能の構成要素については、同じ符号を用いて説明を省略あるいは簡略に行うものとする。
【0047】
リクライニング装置170のガイド172は、それの外周縁に形成された第2凸部176を除いて、上記リクライニング装置10のガイド52と略同じ形状とされている。詳しく言えば、ガイド172の第2凸部176は、半径方向外側に向かって突出する径方向突出部178と、その径方向突出部178の先端部からラチェット50に向かって軸方向に突出する軸方向突出部180とに区分けされる。つまり、第2凸部176は、先端部がラチェット50に向かって屈曲した形状とされている。また、その第2凸部176が当接するクッションフレーム182は、上記リクライニング装置10でのクッションフレーム72から1対の突出部166を取り除いたものと同じ形状とされている。
【0048】
このような構造によって、リクライニング装置170では、シートバック24の傾斜角度が変更された際に、第2凸部176の軸方向突出部180がクッションフレーム182の1対の段差部164のいずれかに当接することで、シートバック24の傾斜角度の変更範囲が制限されるようになっている。詳しく言えば、シートバック24が附勢ばね(図示省略)の附勢力によって前方に倒れ込んだ場合には、図9に示すように、第2凸部176の軸方向突出部180が、クッションフレーム182の1対の段差部164の図での左側のものに当接することで、シートバック24の前方への倒れ込みが制限されるようになっている。一方、操作レバー30が操作され、シートバック24が後方に倒された場合には、第2凸部176の軸方向突出部180が、クッションフレーム182の1対の段差部164の図での右側のものに当接することで、シートバック24の後方への倒れ込みが制限されるようになっている。
[3実施例]
【0049】
上記2つのリクライニング装置10,170では、ラチェット50がクッションフレーム72,174に固定され、ガイド52,172がバックフレーム90に固定されているが、ラチェットがバックフレームに固定され、ガイドがクッションフレームに固定される構成であってもよい。このように構成されたリクライニング装置を、第3実施例のリクライニング装置190として図11〜図13に示す。第3実施例のリクライニング装置190は、ガイド192を除き、上記リクライニング装置170と略同様の構成であるため、上記リクライニング装置170と同様の機能の構成要素については、同じ符号を用いて説明を省略あるいは簡略に行うものとする。
【0050】
リクライニング装置190のガイド192は、第1凸部150の外周面に形成された噛合歯196を除いて、上記リクライニング装置170のガイド172と同じ形状とされている。そして、そのガイド192が固定されるクッションフレーム198は、上方側が開口した略U字形状とされており、その開口にガイド192の4つの第1凸部150と3つの凹部154とを受け入れるようになっている。
【0051】
詳しく言えば、クッションフレーム198は、図12に示すように、それの開口の内周面が凹凸形状とされており、その内周面に4つの凸部200と3つの凹部202とが交互に隣接して形成されている。そして、各凸部200には、ガイド192の第1凸部150の噛合歯196と噛み合うことが可能な噛合歯204が形成されている。一方、各凹部202は、ガイド192の凹部154に取り付けられた保持部材56の保持片146を回避することが可能となっている。これにより、ガイド192の4つの第1凸部150とクッションフレーム198の4つの凸部200とが噛合し、クッションフレーム198の凹部202内に保持片146が取り付けられたガイド192の凹部154が納められている。そして、ガイド192の第1凸部150とクッションフレーム198の凸部200との噛合箇所が溶着等により接合されることで、ガイド192がクッションフレーム198に強固に連結されている。
【0052】
一方、ラチェット50が固定されるバックフレーム210には、図13に示すように、ラチェット50の5つのダボ68及び1つのDダボ70が嵌合可能な5つのダボ孔212及びDダボ孔214(図では、2つ示している)が形成されており、各ダボ孔212,214に各ダボ68,70が嵌合されて溶着等により接合されることで、ラチェット50がバックフレーム210に強固に連結されている。バックフレーム210には、さらに、リクライニング装置190の操作軸26(図1参照)を挿通するための貫通孔216が形成されるとともに、ガイド192の第2凸部176の軸方向突出部180を挿通させるための長孔218が形成されている。
【0053】
その長孔218は、図12に示すように、円弧形状に切欠かれた形状とされており、シートバック24の傾斜角度の変更可能な範囲において、第2凸部176の軸方向突出部180がバックフレーム210に当接しないようになっている。そして、シートバック24が附勢ばね(図示省略)の附勢力によって前方に倒れ込んだ場合には、第2凸部176の軸方向突出部180が、長孔218の図での左側の側壁220に当接することで、シートバック24の前方への倒れ込みが制限されるようになっている。一方、操作レバー30が操作され、シートバック24が後方に倒された場合には、第2凸部176の軸方向突出部180が、長孔218の図での右側の側壁222に当接することで、シートバック24の後方への倒れ込みが制限されるようになっている。
【0054】
ちなみに、上記実施例において、リクライニング装置10,170,190は、リクライニング装置の一例であり、ガイド52,172,192は、第1連結部材の一例である。ガイド52,172,192の短円筒部86は、第1円筒部の一例であり、ガイド52,172,192の第2凸部152,176は、延出部の一例である。ラチェット50は、第2連結部材の一例であり、ラチェット50の短円筒部62は、第2円筒部の一例である。ロック機構54は、ロック機構の一例である。また、車両用シート20は、車両用シートの一例であり、シートクッション22及びシートバック24は、シートクッション及びシートバックの一例である。クッションフレーム72,180,198及びバックフレーム90,210は、クッションフレーム及びバックフレームの一例であり、クッションフレーム72の突出部166、クッションフレーム180の段差部164、バックフレーム210の側壁220,222は、当接部の一例である。
【符号の説明】
【0055】
10:リクライニング装置
20:車両用シート
22:シートクッション
24:シートバック
50:ラチェット(第2連結部材)
52:ガイド(第1連結部材)
54:ロック機構
62:短円筒部(第1円筒部)
72:クッションフレーム
86:短円筒部(第2円筒部)
90:バックフレーム
152:第2凸部(延出部)
164:段差部(当接部)
166:突出部(当接部)
170:リクライニング装置
172:ガイド(第1連結部材)
176:第2凸部(延出部)
180:クッションフレーム
190:リクライニング装置
192:ガイド(第1連結部材)
210:バックフレーム
220:側壁(当接部)
222:側壁(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとを、それらの相対角度を変更可能に連結する車両用シートのリクライニング装置であって、
第1円筒部を有し、その第1円筒部が前記シートクッションのクッションフレームと前記シートバックのバックフレームとの一方に立設された状態でその一方に固定的に連結される第1連結部材と、
前記第1円筒部に相対回転可能に嵌入される第2円筒部を有し、その第2円筒部が前記クッションフレームと前記バックフレームとの他方に立設された状態でその他方に固定的に連結される第2連結部材と、
前記第1円筒部と前記第2円筒部との相対回転を任意の位置で規制するロック機構と
を備え、
前記第1連結部材が、前記第1円筒部から径方向に延び出す延出部を有し、
その延出部が、
前記第1円筒部と前記第2円筒部との相対回転に伴って、前記クッションフレームとバックフレームとの他方に形成された当接部に当接することで、前記シートクッションと前記シートバックとの相対角度の変更可能な範囲を制限することを特徴とする車両用シートのリクライニング装置。
【請求項2】
前記当接部が、前記第2円筒部の径方向に延び出し、
前記延出部と前記当接部との一方が、
それの先端部において前記延出部と前記当接部との他方に向かって屈曲されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートのリクライニング装置。
【請求項3】
前記第1連結部材が、前記バックフレームに固定的に連結され、
前記第2連結部材が、前記バックフレームの車両用シートの外側に位置する前記クッションフレームに固定的に連結され、
前記クッションフレームに形成された前記当接部が、それの先端部において前記延出部に向かって屈曲されたことを特徴とする請求項2に記載の車両用シートのリクライニング装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−52759(P2013−52759A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192349(P2011−192349)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】