説明

車両用シートの連結装置

【課題】リクライニング装置のように二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する連結装置において、噛合による回転ロックを行うロック部材の構成歯の破損を防止する。
【解決手段】リクライニング装置4のロック部材を構成する各ポール30,30は、ガイド20によって円周方向に支えられた状態としてラチェット10の内周歯面12aに外周歯面30a,30aを噛合させてこれらの相対回転をロックする。ラチェット10には内周歯面12aよりも突出した乗り上げ部12b,12bが形成されている。乗り上げ部12b,12bはポール30,30が噛合移動する移動先の位置に位置することにより、各ポール30,30を乗り上げさせてその噛合移動を阻止する。各ポール30,30の外周歯面30a,30aのうち円周方向の末端に形成された端の歯a1,a1はその末端から二番目の歯a2,a2と同形の歯形であるが、その歯先を描く曲線の半径が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの連結装置に関する。詳しくは、二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する車両用シートの連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックがリクライニング装置を介してシートクッションと連結されており、その背凭れ角度の調整操作が行えるようになっているものが知られている。ここで、下記特許文献1には、上記したリクライニング装置の構成が開示されている。この開示では、リクライニング装置は、シートバックの骨格部に一体的に連結される円盤状のラチェットと、シートクッションの骨格部に一体的に連結される円盤状のガイドとが、互いに相対回転可能に支え合うように軸方向に組み付けられて構成されている。
【0003】
そして、このラチェットとガイドとの間には、噛合によりこれらの相対回転をロックすることのできるポールが配設されている。このポールは、ガイドに対して半径方向の内外方にのみ移動可能となるようにガイドされており、その外周歯面をラチェットの円筒部の内周歯面に噛合させることによってラチェットとガイドとの間の相対回転をロックするようになっている。
【0004】
ところで、上記したラチェットの円筒部の内周面には、その円周方向の一部に、内歯のない突出した乗り上げ部が形成されている。この乗り上げ部は、内周歯面よりも半径方向内方側に突出して形成されており、この乗り上げ部にポールが乗り上げることによってポールの噛合が阻められるようになっている。この乗り上げ部にポールが乗り上がる回転角度領域は、リクライニング装置がロック状態に戻されることのないフリーゾーンとして設定されており、例えば、シートバックが背凭れ使用されない前傾回転領域に設定されることで、シートバックの前倒し操作や起こし上げ操作が簡便に行えるようになっている。
【特許文献1】特開2002−177083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記開示の従来技術では、例えばシートバックが後倒しされた位置からバネ力によって勢い良く起こし上げられて、リクライニング装置が回転運動を伴いながらロックゾーンからフリーゾーンに入る際のところでロック状態に戻されようとすると、ポールの端側の構成歯が強い勢いで乗り上げ部の端面に干渉して同歯の破損を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートのリクライニング装置のように二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する連結装置において、噛合による回転ロックを行うロック部材の構成歯の破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートの連結装置は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する車両用シートの連結装置であり、二枚の連結部材とロック部材とを有する。二枚の連結部材は、二つの対象部材の一方側或いは他方側にそれぞれ一体的に連結されて、互いに相対回転可能に盤合わせ方向に組み付けられる円盤状部分を有する。ロック部材は、二枚の連結部材の間に挟まれて配置されて、一方側の連結部材に組み付けられて円周方向に支えられた状態として、他方側の連結部材に形成された内周歯面に外周歯面を噛合させることにより、両連結部材間の相対回転をロックする構成となっている。他方側の連結部材には、内周歯面よりも半径方向内方側に突出した乗り上げ部が形成されている。乗り上げ部は、ロック部材が噛合移動する移動先の位置に位置することにより、ロック部材を乗り上げさせてその噛合移動を阻止するようになっている。ロック部材の外周歯面を構成する円周方向の末端に形成された第1の構成歯は、その末端から二番目の隣り合う第2の構成歯と同じ形の歯形であるが、その歯先を描く曲線の半径が大きくなっている。
【0008】
この第1の発明によれば、ロック部材が両連結部材の相対回転を伴いながら噛合移動する場合、その円周方向の末端に形成された第1の構成歯が、乗り上げ部の円周方向の端面部分に衝突して強い負荷を受けることがある。しかし、第1の構成歯は、その隣り合う第2の構成歯よりも歯先を描く曲線の半径が大きくなって負荷強度が高められているため、上記のような強い負荷を受けても、潰れたり破断したりしにくくなっている。このように、第1の構成歯の歯先の曲線半径を大きくした簡単な構造によって、ロック部材の構成歯の破損を防止することができる。
【0009】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、他方側の連結部材に形成された内周歯面は、内歯車の内周歯面のように正円状に湾曲して形成されている。そして、ロック部材の外周歯面は、内周歯面と噛合可能に正円の円弧状に湾曲して形成されている。外周歯面の第1の構成歯は、第2の構成歯よりも小さな歯形に形成されている。
【0010】
この第2の発明によれば、第1の構成歯が第2の構成歯よりも小さな歯形に形成されていることにより、ロック部材の外周歯面を他方側の連結部材の正円状に湾曲した内周歯面に対して、半径方向への移動によって滑らかに噛合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
始めに、実施例1の車両用シートの連結装置の構成について、図1〜図9を用いて説明する。ここで、図2には、本実施例の車両用シート1の概略構成が示されている。この車両用シート1は、背凭れとなるシートバック2が、その両サイドの下部位置に配設された左右一対のリクライニング装置4,4によって、着座部となるシートクッション3と連結されている。ここで、リクライニング装置4,4が本発明の車両用シートの連結装置に相当する。
【0013】
これらリクライニング装置4,4は、互いのロック解除の切換え操作を行う操作軸4c,4cが、連結ロッド4rによって互いに一体的に連結されて構成されている。これにより、各リクライニング装置4,4は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態と、この固定状態を解除してシートバック2の背凭れ角度調整を行える状態にする解除状態とに、互いに同期して作動状態が切換えられるようになっている。ここで、各リクライニング装置4,4は、常時はロックした作動状態に附勢によって保持されている。
【0014】
そして、各リクライニング装置4,4は、シートクッション3の側部位置に設けられた操作レバー5の引き上げ操作を行うことにより、それらのロック状態が一斉に解除操作される。これにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれて、背凭れ角度の調整操作が行える状態となる。そして、シートバック2の背凭れ角度を調整し、操作レバー5の解除操作をやめることにより、各リクライニング装置4,4が再び附勢によってロック状態に戻されるため、シートバック2がその調整された背凭れ角度位置に固定される。
【0015】
ここで、シートバック2は、シートクッション3との間に掛着された図示しない附勢ばねの附勢力によって、常時は前倒しの回動方向に附勢されている。したがって、車両用シート1が着座使用されていない状態で、上述した各リクライニング装置4,4のロック状態を解除することにより、シートバック2は附勢によって前倒しされて、シートクッション3の上面部に畳み込まれることとなる。
【0016】
このとき、各リクライニング装置4,4は、通常、シートバック2が背凭れとして使用される角度領域にある時には、操作レバー5の解除操作をやめることによって、附勢によってロック状態に戻される。しかし、各リクライニング装置4,4の回転角度領域には、上記した解除操作をやめた際に附勢によってロック状態に戻されるロックゾーンの角度領域と、解除操作をやめてもロック状態には戻されないフリーゾーンの角度領域とが設定されている。
【0017】
前者のロックゾーンは、通常、シートバック2が背凭れ使用される角度領域、具体的にはシートバック2が直立姿勢となる角度位置から後方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。そして、後者のフリーゾーンは、シートバック2が背凭れ使用されることのない前倒れ姿勢の角度領域、具体的にはシートバック2が直立姿勢となる角度位置から前方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。
【0018】
したがって、シートバック2を前倒しする操作時には、各リクライニング装置4,4のロック状態を解除して、シートバック2が直立姿勢から少しでも前に傾けば、あとは解除操作をやめてしまっても、シートバック2はシートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで自然と倒し込まれていく。以下、リクライニング装置4,4の構成について詳しく説明する。なお、各リクライニング装置4,4は、互いに左右対称の構成となっているが、実質的には同じ構成となっている。したがって、以下ではこれらを代表して、図2の紙面向かって右側に示されているリクライニング装置4の構成についてのみ説明をする。
【0019】
このリクライニング装置4は、図1に示されるように、円盤形状のラチェット10及びガイド20と、これらの円盤面の間に挟まれて配置される上下一対のポール30,30及びスライドカム40と、このスライドカム40をスライド操作するためのヒンジカム50と、このヒンジカム50を回動附勢するための附勢ばね60と、ラチェット10及びガイド20を互いに板厚方向(軸方向)に挟み込んだ状態に保持するための保持部材70とが一つに組み付けられて構成されている。ここで、ガイド20が本発明の一方側の連結部材に相当し、ラチェット10が本発明の他方側の連結部材に相当し、ポール30,30が本発明のロック部材に相当する。
【0020】
詳しくは、ラチェット10には、その円盤部11の外周縁において、板厚方向に円筒状に突出する円筒部12が形成されている。この円筒部12は、円盤部11の外周縁が板厚方向に半抜き加工されて形成されている。そして、この円筒部12の内周面には、内周歯面12aと乗り上げ部12b,12bとが円周方向に並んで形成されている。ここで、乗り上げ部12b,12bは、円筒部12の軸対称となる二箇所の位置に設定されており、それぞれ、内周面が内周歯面12aよりも半径方向内方側に突出した平坦な湾曲面とされて形成されている。
【0021】
上記した乗り上げ部12b,12bは、図6に示されるように、いずれのポール30,30とも干渉しない円周方向の配置状態の時には、各ポール30,30がラチェット10の内周歯面12aと噛合する半径方向外方側への噛合移動を許容する。したがって、これら乗り上げ部12b,12bと各ポール30,30との干渉が起こらない円周方向の回転角度領域が、各ポール30,30とラチェット10の内周歯面12aとの噛合が許容されるロックゾーンとして設定される。
【0022】
しかし、乗り上げ部12b,12bは、各ポール30,30と干渉する円周方向の配置状態となることにより、各ポール30,30がラチェット10の内周歯面12aと噛合しようとする半径方向外方側への動きが、各乗り上げ部12b,12bの内周面上への乗り上げによって阻止される。したがって、これら乗り上げ部12b,12bと各ポール30,30とが干渉する円周方向の回転角度領域が、各ポール30,30とラチェット10の内周歯面12aとの噛合が阻止されるフリーゾーンとして設定される。
【0023】
ところで、上記したラチェット10は、図3に示されるように、その円盤部11の外盤面が、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fの板面と接合されることによって、シートバック2と一体的に連結されている。ここで、バックフレーム2fが本発明の二つの対象部材の一方側に相当する。
【0024】
ここで、ラチェット10の円盤部11には、その外盤面から円筒状に突出する複数のダボ13a・・やDダボ13bが形成されている。これらダボ13a・・やDダボ13bは、円盤部11のより外周縁に近い位置で、円周方向に等間隔に並んで配置形成されている。このうち、Dダボ13bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒形状に突出したダボ13a・・とは形状が区別されるようになっている。
【0025】
一方、バックフレーム2fには、上述したダボ13a・・やDダボ13bを嵌合させることのできるダボ孔2a・・やDダボ孔2bが貫通形成されている。したがって、これらダボ13a・・やDダボ13bを、バックフレーム2fに形成されたダボ孔2a・・やDダボ孔2bにそれぞれ嵌合させて、これら嵌合部を溶着して接合することにより、ラチェット10がバックフレーム2fに対して強固に一体的に連結されている(図5参照)。
【0026】
そして、このラチェット10の円盤部11の中心には、リクライニング装置4のロック解除の切換え操作を行う操作軸4c(図2参照)を挿通するための貫通孔14が形成されている。そして、バックフレーム2fにも、この貫通孔14と同軸線上の位置に、同じ目的で貫通孔2cが形成されている。
【0027】
次に、図1に戻って、ガイド20の構成について説明する。このガイド20は、ラチェット10よりもひとまわり大きな外径をもった円盤形状に形成されている。このガイド20の円盤部21の外周縁には、ラチェット10への組み付け方向となる板厚方向に円筒状に突出する円筒部22が形成されている。この円筒部22は、円盤部21の外周縁が板厚方向に半抜き加工されて形成されている。この円筒部22は、図5に示されるように、ラチェット10の円筒部12を外周側から囲い込むことのできる大きさに形成されている。
【0028】
この円筒部22の筒内にラチェット10の円筒部12が組み付けられた状態では、ガイド20とラチェット10とは、互いの円筒形状を嵌合させた状態として、互いに摺動し合って相対回転することのできる状態とされる。このガイド20は、図4に示されるように、その円盤部21の外盤面が、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fの板面と接合されることによって、シートクッション3と一体的に連結されている。ここで、クッションフレーム3fが本発明の二つの対象部材の他方側に相当する。
【0029】
ここで、ガイド20の円盤部21には、その外盤面から円筒状に突出する複数のダボ24a・・やDダボ24bが形成されている。これらダボ24a・・やDダボ24bは、円盤部21のより外周縁に近い位置で、円周方向に等間隔に並んで配置形成されている。このうち、Dダボ24bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒形状に突出したダボ24a・・とは形状が区別されるようになっている。
【0030】
一方、クッションフレーム3fには、上述したダボ24a・・やDダボ24bを嵌合させることのできるダボ孔3a・・やDダボ孔3bが貫通形成されている。したがって、これらダボ24a・・やDダボ24bを、クッションフレーム3fに形成されたダボ孔3a・・やDダボ孔3bにそれぞれ嵌合させて、これら嵌合部を溶着して接合することにより、ガイド20がクッションフレーム3fに対して強固に一体的に連結されている(図5参照)。
【0031】
そして、このガイド20の円盤部21の中心には、リクライニング装置4のロック解除の切換え操作を行う操作軸4c(図2参照)を挿通するための貫通孔25が形成されている。そして、クッションフレーム3fにも、この貫通孔25と同軸線上の位置に、同じ目的で貫通孔3cが形成されている。この貫通孔3cは、後述する附勢ばね60もその孔内部に収め入れられるように形状が大きく形成されている。
【0032】
そして、図1に戻って、ガイド20の円盤部21には、その内盤面が板厚方向に「十」符号状に凹んだガイド溝23が形成されている。このガイド溝23は、円盤部21が「十」符号状に板厚方向に半抜き加工されることによって形成されている。ここで、前述したダボ24a・・やDダボ24bは、このガイド溝23が形成された外盤面上の位置にそれぞれ突出して形成されている。このガイド溝23は、その図示向かって上側と下側の溝部が、後述する各ポール30,30をそれぞれ内部に収め入れることのできるポール溝23a,23aとして形成されている。
【0033】
これらポール溝23a,23aは、図7に示されるように、その左右両サイドに側壁となって形成される案内壁21a,21bや案内壁21c,21dの形状により、ポール30,30をその溝形状に沿ってガイド20の半径方向の内外方(図示上下方向)にのみスライドさせられるようにガイドする。そして、ガイド溝23の横方向に延びる図示向かって右側と左側とその間の溝部が、後述するスライドカム40を内部に収め入れることのできるスライドカム溝23bとしてひとつなぎに形成されている。
【0034】
このスライドカム溝23bは、その上下両サイドに側壁となって形成される案内壁21a,21cや案内壁21b,21dの形状により、スライドカム40をその溝形状に沿ってガイド20の半径方向の内外方(図示左右方向)にのみスライドさせられるようにガイドする。そして、図1に戻って、ガイド20の円盤部21には、外盤面からピン形状に突出するばね掛部26,26が形成されている。これらばね掛部26,26は、後述する附勢ばね60(巻きばね)の外端62を掛着させるための機能部品となっており、その掛着位置を選択できるように円周方向の二箇所に形成されている。
【0035】
次に、ポール30,30の構成について説明する。これらポール30,30は、前述したガイド20に形成された各ポール溝23a,23aの内部にスライド可能な状態に収容される駒形状に形成されている。これらポール30,30は、互いに上下対称な形状に形成されている。具体的には、各ポール30,30は、その外周縁が、前述したラチェット10の円筒部12の内周面と合致する円弧状に湾曲した形状に形成されている。そして、この円弧状に湾曲した外周面には、上記したラチェット10の内周歯面12aと噛合可能な外周歯面30a,30aが形成されている。
【0036】
したがって、各ポール30,30は、図6に示されるように、後述するスライドカム40に押圧されて半径方向外方側にスライドすることにより、各外周歯面30a,30aがラチェット10の内周面に形成された内周歯面12aと噛合する。これにより、各ポール30,30とラチェット10とは、互いの噛合力によって、円周方向に一体的な状態となる。しかし、各ポール30,30は、ガイド20との関係においては、案内壁21a,21cや案内壁21b,21dによるガイドによって半径方向の内外方にしかスライドできないようになっている。
【0037】
したがって、ラチェット10は、各ポール30,30を介してガイド20に対する相対回転が規制された状態となる。そしてこれにより、リクライニング装置4が回転ロックされた状態となる。このリクライニング装置4の回転ロック状態は、図7に示されるように、各ポール30,30が半径方向内方側に引き込まれて、ラチェット10との噛合状態から外されることによって解除される。
【0038】
ここで、各ポール30,30を半径方向の内外方にスライドさせる操作は、ポール30,30の間に配設されたスライドカム40のスライド動作によって行われる。このスライドカム40は、図1に示されるように、前述したガイド20に形成されたスライドカム溝23bの内部に収容される駒形状に形成されている。このスライドカム40は、上下対称な形状に形成されており、その図示上下側の縁部に、各ポール30,30を半径方向外方側に押し出すための肩部42,42と、各ポール30,30を半径方向内方側に引き込むためのフック44,44とが形成されている。
【0039】
ここで、前述したポール30,30は、その半径方向内方側の形状が一部肉抜きされた門型形状に形成されている。そして、各ポール30,30は、その門型の両脚をなす脚部32,32を、それぞれスライドカム40の上縁側と下縁側の面部とに当接させることにより、スライドカム40によって半径方向外方側に押圧操作されるようになっている。具体的には、図6に示されるように、各ポール30,30は、スライドカム40が図示左方側にスライドした状態では、各脚部32,32をスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げさせた状態として半径方向外方側に押し出された状態に保持される。
【0040】
これにより、各ポール30,30は、常時はそれらの外周歯面30a,30aをラチェット10の内周歯面12aに噛合させた状態として保持されている。そして、各ポール30,30は、図7に示されるように、スライドカム40が図示右方側にスライド操作されることにより、その門型の内側に形成された各掛部31,31にスライドカム40の各フック44,44が引掛けられて、半径方向内方側に引き込まれる。これにより、各ポール30,30の脚部32,32が、スライドカム40の肩部42,42に乗り上げていた位置から、その左脇位置にある各溝部43,43の内部へと引き込まれて、各ポール30,30とラチェット10との噛合状態が解除される。
【0041】
これら溝部43,43は、各肩部42,42から滑らかに凹み込む形状に形成されており、スライドカム40が図6に示されるように右方側にスライドすることで、各ポール30,30の脚部32,32が各溝部43,43の形状に案内されながら各肩部42,42に乗り上げた状態となる。ここで、スライドカム40を図示左右方向にスライドさせる操作は、スライドカム40の中央部に貫通形成されたカム孔41内に組み付けられたヒンジカム50の回転動作に伴って行われる。
【0042】
このヒンジカム50は、図1に示されるように、スライドカム40の中心部に貫通形成されたカム孔41内に回動可能に組み付けられている。このヒンジカム50は、ガイド20との間に掛着された附勢ばね60(巻きばね)の附勢力によって、常時は図1に示される時計回り方向に回動附勢されている。ここで、附勢ばね60は、図4に示されるように、予め捩り込まれた状態として、その内端61がヒンジカム50のばね掛部51に掛着されており、外端62がガイド20のばね掛部26に掛着されている。
【0043】
これにより、ヒンジカム50は、図6に示されるように、常時はその外周部に突出形成された操作突起52によって、スライドカム40をカム孔41の内周面側から押圧して図示左方側にスライドさせるようになっている。そしてこれにより、各ポール30,30は、各脚部32,32をスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げさせた状態として、ラチェット10と噛合した状態に保持される。
【0044】
このヒンジカム50は、図2において前述した操作軸4cと一体的に連結されている。これにより、ヒンジカム50は、操作レバー5(図2参照)の引き上げ操作に伴って、図1に示される附勢ばね60の附勢に抗した図示反時計回りに回動操作されるようになっている。すなわち、ヒンジカム50は、上記した操作によって、図6の時計回り方向に回動操作される。これにより、図7に示されるように、スライドカム40が図示右方側にスライド操作されて、各ポール30,30が、ラチェット10との噛合状態から外される。
【0045】
次に、図1に戻って、保持部材70について説明する。この保持部材70は、薄い鋼板がリング状に打ち抜かれて軸方向に半抜き加工されることにより、図示右奥の一端側に、軸方向に面を向けたフランジ状の第1座面部71と第2座面部72とを段差状に有する円筒型形状に形成されている。ここで、図5に示されるように、第1座面部71は、保持部材70の円筒内にラチェット10を組み付けた際に、このラチェット10の円筒部12の外盤面に軸方向に対面するように形成されている。
【0046】
そして、第2座面部72は、保持部材70の円筒内にガイド20を組み付けた際に、このガイド20の円筒部22の内盤面に面当接するように形成されている。そして、この第2座面部72の外周縁部からは、軸方向に円筒状に突出する円筒部が形成されており、この円筒部の先には、ラチェット10やガイド20の組み付け後に、半径方向内方側に折り曲げられてかしめ処理される折曲面部73が設定されている。
【0047】
したがって、上記構成の保持部材70の円筒内にラチェット10を挿通することにより、ラチェット10は、その円筒部12の外盤面が、第1座面部71の内板面上に突出形成された各突部71a・・と点接触する位置で、保持部材70に対して軸方向の挿通位置が位置決めされた状態として組み付けられる。そして、この組み付けにより、ラチェット10は、その円筒部12の外周縁部が、保持部材70の第1座面部71と第2座面部72との繋ぎ部分である円筒部分によって囲い込まれた状態として組み付けられる。
【0048】
そして次に、ラチェット10の円盤部11上にポール30,30やスライドカム40等の組み付け部品を組み付けて、次いで保持部材70の円筒内にガイド20を挿通することにより、ガイド20は、その円筒部22の内盤面が第2座面部72と面当接する位置で、保持部材70に対して軸方向の挿通位置が位置決めされた状態として組み付けられる。
【0049】
そして、上記した組み付け後に、ガイド20の円筒部22の外盤面側に突出する円筒部の先(折曲面部73)を半径方向内方側に折り曲げて、円筒部22の外盤面にかしめることにより、保持部材70がガイド20と一体に結合固定される。これにより、ラチェット10及びガイド20が、保持部材70によって軸方向に挟み込まれて外れ止めされた状態として組み付けられる。
【0050】
ここで、図5を参照して、ラチェット10の円筒部12は、ポール30,30やスライドカム40等の組み付け部品を間に挟んで、ガイド20の円盤部21と保持部材70の第1座面部71との間に軸方向に僅かな隙間を有して組み付けられるようになっている。これにより、ラチェット10のガイド20に対する回転移動が保持部材70との摺動摩擦によって阻害されることなくスムーズに行えるようになっている。
【0051】
ところで、図8に示されるように、前述した各ポール30,30の外周歯面30a,30aは、それらの円周方向に並ぶ各構成歯の大きさが、中央から両端側に向かうにしたがって少しずつ小さくなっていくように形成されている。これにより、半径方向にのみ移動可能とされた各ポール30,30の外周歯面30a,30aを、ラチェット10の正円状に湾曲した内周歯面12aに対して、滑らかに噛合させたり外したりできるようになっている。
【0052】
ここで、各ポール30,30の図示時計回り方向の末端に形成された端の歯a1,a1は、その末端から二番目の歯a2,a2と同じ形の歯形(但し、歯形は小さい)であるが、その歯先を描く曲線の半径が大きくなって形成されている。詳しくは、端の歯a1,a1と二番目の歯a2,a2は、それらの歯先を除いた歯形部分が同じ形の曲線(インボリュート曲線)によって描かれており、互いに相似の関係となる歯形形状に形成されている(図9参照)。ここで、端の歯a1,a1が本発明の第1の構成歯に相当し、二番目の歯a2,a2が本発明の第2の構成歯に相当する。なお、図9において仮想線で示された歯形は、端の歯a1,a1の歯形の大きさを二番目の歯a2,a2の歯形と同じ大きさに拡大した時の歯形である。
【0053】
上記構成の各ポール30,30は、図8に示されるように、例えば、シートバック2(図2参照)が後倒しされた位置からバネ力によって勢い良く起こし上げられて、リクライニング装置4がロックゾーンからフリーゾーンに入る際のところでロック状態に戻されようとすると、ラチェット10の図示反時計回り方向の相対回転によって、各ポール30,30の図示時計回り方向の端側にある端の歯a1,a1が、乗り上げ部12b,12bの傾斜した端面bt,btに衝突することがある。
【0054】
しかし、端の歯a1,a1は、その隣り合う二番目の歯a2,a2よりも歯先を描く曲線の半径が大きく形成されて負荷強度が高められているため、上記のような強い負荷を受けても、潰れたり破断したりしにくくなっている。このように、端の歯a1,a1の歯先の曲線半径を大きくした簡単な構造によって、各ポール30,30の構成歯の破損を防止することができる。また、端の歯a1,a1は、その歯先を描く曲線の半径が大きく形成されていることにより、乗り上げ部12b,12bの傾斜した端面bt,btに押し当てられた際に、この端面bt,btの傾斜に沿ってラチェット10の内周歯面12aに噛合する方向に移動案内され易くなる。
【0055】
したがって、上記のような回転方向に附勢のかかった状態であっても、各ポール30,30をロックゾーンとフリーゾーンとの際の位置で、良好にロック状態に戻すことができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、上記実施例では、本発明の車両用シートの連結装置を、シートバック2をシートクッション3に対して背凭れ角度調整可能に連結するリクライニング装置4として適用したものを示した。しかし、この連結装置は、傾動式シートバックを車体フロアに対して連結する用途にも適用することができる。
【0057】
また、連結装置を、シート本体を車体フロアに対して旋回方向に回転させられるように連結する用途にも適用することができる。また、連結装置を、着座者の下腿部を下方側から持ち上げて支持するいわゆるオットマン装置をシートクッションや車体フロアに対して傾動可能に連結する用途にも適用することができる。
【0058】
また、各ポール30,30の外周歯面30a,30aは、その端の歯a1,a1が二番目の歯a2,a2よりも歯形が小さく形成されたものを示したが、同じ大きさの歯形に形成されたものであってもよい。
【0059】
また、リクライニング装置4について、二個のポール30,30を半径方向に同時に進退移動させるための操作部材としてスライドカム40を示したが、例えば特開2005−312891号公報に開示されているような、三個以上のポールを同時に進退操作させられる回転式のカムを用いた構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1のリクライニング装置の分解斜視図である。
【図2】車両用シートの概略構成を表した斜視図である。
【図3】リクライニング装置の組み付け状態を表した斜視図である。
【図4】リクライニング装置の組み付け状態を表した斜視図である。
【図5】図4のV-V線断面図である。
【図6】リクライニング装置のロック状態を表した図3のVI-VI線断面図である。
【図7】図6の状態からリクライニング装置のロック状態を解除した状態を表した断面図である。
【図8】ポールの端部がラチェットの乗り上げ部に円周方向に当たった状態を表した構成図である。
【図9】端の歯と二番目の歯とを重ねて表した模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用シート
2 シートバック
2f バックフレーム(二つの対象部材の一方側)
2a ダボ孔
2b Dダボ孔
2c 貫通孔
3 シートクッション
3f クッションフレーム(二つの対象部材の他方側)
3a ダボ孔
3b Dダボ孔
3c 貫通孔
4 リクライニング装置(車両用シートの連結装置)
4c 操作軸
4r 連結ロッド
5 操作レバー
10 ラチェット(他方側の連結部材)
11 円盤部
12 円筒部
12a 内周歯面
12b 乗り上げ部
bt 端面
13a ダボ
13b Dダボ
14 貫通孔
20 ガイド(一方側の連結部材)
21 円盤部
21a〜21d 案内壁
22 円筒部
23 ガイド溝
23a ポール溝
23b スライドカム溝
24a ダボ
24b Dダボ
25 貫通孔
26 ばね掛部
30 ポール(ロック部材)
30a 外周歯面
a1 端の歯(第1の構成歯)
a2 二番目の歯(第2の構成歯)
31 掛部
32 脚部
40 スライドカム
41 カム孔
42 肩部
43 溝部
44 フック
50 ヒンジカム
51 ばね掛部
52 操作突起
60 附勢ばね
61 内端
62 外端
70 保持部材
71 第1座面部
71a 突部
72 第2座面部
73 折曲面部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する車両用シートの連結装置であって、
前記二つの対象部材の一方側或いは他方側にそれぞれ一体的に連結されて互いに相対回転可能に盤合わせ方向に組み付けられる円盤状部分を有する二枚の連結部材と、
該二枚の連結部材の間に挟まれて配置され、一方側の連結部材に組み付けられて円周方向に支えられた状態として他方側の連結部材に形成された内周歯面に外周歯面を噛合させることにより当該両連結部材間の相対回転をロックすることのできるロック部材とを有し、
前記他方側の連結部材には前記内周歯面よりも半径方向内方側に突出した乗り上げ部が形成されており、該乗り上げ部は前記ロック部材が噛合移動する移動先の位置に位置することにより該ロック部材を乗り上げさせてその噛合移動を阻止するようになっており、
前記ロック部材の外周歯面を構成する円周方向の末端に形成された第1の構成歯はその末端から二番目の隣り合う第2の構成歯と同じ形の歯形であるがその歯先を描く曲線の半径が大きくなっていることを特徴とする車両用シートの連結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの連結装置であって、
前記他方側の連結部材に形成された内周歯面は内歯車の内周歯面のように正円状に湾曲して形成されており、前記ロック部材の外周歯面は前記内周歯面と噛合可能に正円の円弧状に湾曲して形成されており、該外周歯面の第1の構成歯は前記第2の構成歯よりも小さな歯形に形成されていることを特徴とする車両用シートの連結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−900(P2010−900A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161384(P2008−161384)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】