説明

車両用シートスライド装置

【課題】シートスライド装置のロック状態における、車両前後方向のガタ付きや異音の発生の防止、さらにはロック解除操作時の異音の発生の防止を、簡素なロック構造によって実現する。
【解決手段】シートスライドロック装置のロック部材6は、一対のロックプレート7、8からなり、各ロックプレート7、8は夫々、下端部に複数のロック歯が形成され、アッパーレールに挿通孔5aが設けられ、該挿通孔5aにロック部材6の上側部が挿通されて支持され、アッパーレールの内側に設けられたロックホルダーにはロックプレート保持孔10fが設けられ、該ロックプレート保持孔10fに前記一対のロックプレート7、8に設けられたロック歯が夫々、挿通されて支持されることによって、ロック部材6が上下方向に変位可能に設けられ、ロック歯のうち1つのロック歯の前方側端部がロアレールに設けられたロック孔4hに当接するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロア側に設けられるロアレールと、車両用シート側に設けられ、ロアレールに前後移動可能に嵌合するアッパーレールとからなるシートスライド装置において、ロアレールに対するアッパーレールの前後移動を禁止して車両用シートを任意の位置に調節するロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来のシートスライド装置は、車体フロア側に設けられたロアレールのロック孔に、シートクッション側に設けられたアッパーレールに上下方向に変位可能に取り付けられたロックプレートに形成された係止歯が係合することでアッパーレールのロアレールに対する移動規制され、ロック孔からロックプレートに形成された係止歯が係合離脱することでアッパーレールのロアレールに対する移動規制が解除されるように構成されている。
【0003】
ロックプレートは、アッパーレールに回動自在に支持された揺動杆の一端に係合されており、揺動杆の一端が上方に変位すると、ロックプレートが上方に引き上げられてロック解除となり、一端が下方に変位すると、ロックプレートは下方に下がりロックするようになっている。
【0004】
揺動杆の他端は、アッパーレールに設けられた圧縮ばねによって、常時、ロック方向に付勢されており、揺動杆の他端を圧縮ばねの付勢力に抗して下方へ押圧すると、ロックプレートが上方に引き上げられてロック解除となる。
【0005】
軸方向が車両前後方向となるようにシート側に配設された操作軸を回動させると、操作軸の端部に設けられた固定片が、軸方向が車両幅方向となるようにベースフレームに回動自在に枢支された回転軸の略中央に固設された連動片に当接して回動軸が回動し、それに伴って回転軸の端部に固定された回転片が回動する。
回転片が回動すると、ベースフレームの側部に回動自在に枢支され、回転片にワイヤで端部が連結された回動レバーが回動する。
回動レバーが回動すると、端部に形成された折曲部が揺動杆の端部に形成されたガイド片に当接し、ロックプレートが上方に引き上げられてロック解除となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開平9−123810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来構造において、アッパーレールに設けられた支板、スリット及びスライダーにロックプレートが上下方向に摺動自在に支持されており、アッパーレールに設けられた支板、スリット及びスライダーとロックプレートとの間には、該ロックプレートがスムーズに摺動するように所定の遊びが設けられている。そのため、この遊びが、シートスライド装置のロック状態において車両前後方向でのガタ付き、異音の原因となっていた。
本発明はこのような問題に鑑みて創案されたものであり、シートスライド装置のロック状態において、特に車両前後方向におけるガタ付き、異音の発生の防止、さらにはロック解除操作時の異音の発生の防止を、簡素なロック構造によって実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明による請求項1に記載のシートスライド装置のロック機構は、アッパーレール上面部に挿通孔が設けられ、該挿通孔にロック部材の上部が挿通されて支持されるとともに、アッパーレールの内側に設けられたロックホルダーには挿通孔が設けられ、該挿通孔にロック部材の下部が挿通されて支持され、ロック部材が上下方向に変位可能に設けられ、該ロック部材を構成する一方のロックプレートにおいては、該ロックプレートの上部側の前方側端部がアッパーレールに設けられた挿通孔の前端部に当接するとともに、前記ロックプレートの中部側の後方側端部がロックホルダーに設けられた挿通孔の後端部に当接し、前記ロック歯のうち1つのロック歯の前方側端部がロアレールに設けられた係合孔の前端部に当接し、該ロック部材を構成する他方のロックプレートにおいては、該ロックプレートの上部側の後方側端部がアッパーレールに設けられた挿通孔の後端部に当接するとともに、前記ロックプレートの中部側の前方側端部がロックホルダーに設けられた挿通孔の前端部に当接し、前記ロック歯のうち1つのロック歯の後方側端部がロアレールに設けられた係合孔の後端部に当接するようになされ、さらに前記ロックプレートには、その中部側の後方側端部に、ロック解除操作時に前記ロック解除レバーの当接部が当接して押し上げることによって、前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の後端部から前記ロックプレートの上部側の後方側端部が離接するとともに、該ロックプレートの上部側の前方側端部が前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の前端部に当接するようになされた延設部が設けられたことを特徴としている。
【0009】
本発明による請求項2に記載のシートスライド装置のロック機構は、アッパーレール側に、ロアレールに設けられたロック孔に係合するロック部材を設け、該ロック部材が、下端に歯部が形成された一対のロックプレートから構成され、該ロックプレートのロック歯の上方の平面部分には、係合穴と係合突起が備えられ、互いに一方のロックプレートの係合突起が他方のロックプレートの係合穴に所定の遊びを持って挿入されるように各ロックプレートが重ね合わされて配置され、さらに各ロックプレートの略中央平面部分には、ねじりバネが挿通されて配置される挿通孔が設けられ、各ロックプレート間に配置されたねじりバネの一端部が重ね合された一方のロックプレートの側辺部に係止されるとともに、ねじりバネの他端部が他方のロックプレートの側辺部に係止され、互いに反対方向に傾動するように付勢されていることを特徴としている。
【0010】
本発明による請求項3に記載のシートスライド装置のロック機構は、ロック部材を構成する一対のロックプレートの中央から上方に至る平面領域に配置されたねじりバネの、ロック部材から外方へ露出した円筒状部分が、アッパーレール上面部の裏面側に常時、圧接するように設けられ、これによって、ロック部材がロック方向に常時、付勢されるようにしたことを特徴としている。
【0011】
本発明による請求項4に記載のシートスライド装置のロック機構は、ロック部材を構成する一対のロックプレートに形成された前記ロック歯の上方の平面部に幅方向に長い横長孔形状の係合孔と半抜きされた係合突起が形成され、互いに一方のロックプレートの係合突起が他方のロックプレートの係合孔に所定の遊びを持って挿入されて重ね合わされた状態で配置された各ロックプレートは、互いに反対方向に傾動することが許容されつつ、ほぼ同時に上下動するように規制されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、ロック部材を構成する一対のロックプレートの一方においては、該ロックプレートの上部側の前方側端部がアッパーレールに設けられた挿通孔の前端部に当接するとともに、前記ロックプレートの中部側の後方側端部がロックホルダーに設けられた挿通孔の後端部に当接し、前記ロックプレートの下部側のロック歯のうち1つのロック歯の前方側端部がロアレールに設けられた係合孔の前端部に当接し、かつ前記ロックプレートの他方においては、該ロックプレートの上部側の後方側端部がアッパーレールに設けられた挿通孔の後端部に当接するとともに、前記ロックプレートの中部側の前方側端部がロックホルダーに設けられた挿通孔の前端部に当接し、前記ロックプレートの下部側のロック歯のうち1つのロック歯の後方側端部がロアレールに設けられた係合孔の後端部に当接するように構成し、一方のロックプレートが車両前方の移動を規制し、他方のロックプレートが車両後方の移動を規制するようにしたことで、車両前後方向におけるガタ付き、異音の発生を効果的に防止することができる。
また、前記ロックプレートには、その中部側の後方側端部に、ロック解除操作時に前記ロック解除レバーの当接部が当接して押し上げることによって、前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の後端部に当接したロックプレートの上部側の後方側端部が離接するとともに、該ロックプレートの上部側の前方側端部が前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の前端部に当接するようになされた延設部が設けられ、ロック解除操作時に前記ロックプレートが上方へ摺動する際、前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の後端部及び前記ロックホルダーに設けられた挿通孔の前端部に対する前記ロックプレートの圧接力、即ち摺動抵抗が減少し、該ロックプレートの摺動時における異音の発生を効果的に低減することができる。
なお、上記圧接力は、通常の乗員着座状態において、上記シートスライド装置が後傾するようにスライド角が設定されているので、特に後方向の移動を規制する側のロックプレートが強く作用している。
【0013】
本発明による請求項2によれば、ロック部材を構成する一対のロックプレート間に配置されたねじりバネの一端部が、重ね合された一方のロックプレートの側辺部に係止されるとともに、前記ねじりバネの他端部が他方のロックプレートの側辺部に係止され、互いに反対方向に傾動する如く付勢されるように構成したので、一方のロックプレートにおいては、該ロックプレート上部の前方側端部がアッパーレールに設けられた挿通孔の前端部に当接するとともに、その後方側端部がロックホルダーに設けられた挿通孔の後端部に当接し、ロック歯のうち1つのロック歯の前方側端部がロアレールに設けられた係合孔の前端部に当接し、かつ他方のロックプレートにおいては、該ロックプレート上部の後方側端部がアッパーレールに設けられた挿通孔の後端部に当接するとともに、その前方側端部がロックホルダーに設けられた挿通孔の前端部に当接し、ロック歯のうち1つのロック歯の後方側端部がロアレールに設けられた係合孔の後端部に当接することが、強制的に実現される。以って、車両前後方向におけるガタ付き、異音の発生をより効果的に防止することができる。
【0014】
本発明による請求項3によれば、ロック部材を構成する一対のロックプレートの中央から上方に至る平面領域に配置されたねじりバネの、ロック部材から外方へ露出した円筒状部分が、アッパーレール上面部の裏面側に常時、圧接するように構成したことにより、一対のロックプレートをロック方向に常時、付勢するバネ機能と、一対のロックプレートが互いに反対方向に傾動するように常時、付勢するバネ機能を1つの部材で達成することができるようにしたことで、シートスライド装置のロック機構の部品点数を削減し、重量を軽減することができる。
【0015】
本発明による請求項4によれば、ロック部材を構成する一対のロックプレートに形成された前記ロック歯の上方の平面部に幅方向に長い横長孔形状の係合孔と半抜きされた係合突起が形成され、互いに一方のロックプレートの係合突起が他方のロックプレートの係合孔に所定の遊びを持って挿入されて重ね合わされた状態で配置された各ロックプレートは、互いに反対方向に傾動することが許容されつつ、ほぼ同時に上下動するように規制されるように構成したことにより、片方のロックプレートのみがロアレールに係合して半ロック状態となり、ガタ付きが大きく、ロック強度が十分に得られないという事態を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明に係るシートスライド装置を示す全体図である。
【図2】 図1に示したシートスライド装置の一方の分解斜視図である。
【図3】 図1に示したシートスライド装置のA−A線断面を示した図である。
【図4】 シートスライド装置を構成するロアレールを示した斜視図である。
【図5】 シートスライド装置を構成するアッパーレールを示した斜視図である。
【図6】 シートスライド装置を構成する一対のロックプレートからなるロック部材を示した斜視図である。
【図7】 (イ)はロック部材に配置されるバネ部材を、 (ロ)は連結部材を構成するバネ部材を示した斜視図である。
【図8】 シートスライド装置のロックホルダーを示した斜視図である。
【図9】 シートスライド装置のロック解除レバーを示した斜視図である。
【図10】 連結部材を構成するレバーブラケットを示した斜視図である。
【図11】 操作部材が取り付けされたレバーブラケット装着前のシートスライド装置のアッパーレール部を示した斜視図である。
【図12】 ロック状態にあるシートスライド装置のアッパーレール部を示した側面図である。
【図13】 ロック解除状態にあるシートスライド装置のアッパーレール部を示した側面図である。
【図14】 ロック部材を構成する一対のロックプレートの作動状態を示す概略図である。
【図15】 延設部が設けられたロックプレートのロック解除操作時の作動状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本願発明に係るシートスライド装置1を示している。図2は、シートスライド装置1を構成する各部材を分解図示している。
【0018】
シートスライド装置1は、シート(図示省略)の車幅方向両側にそれぞれシート前後方向に向けて配置された左右一対のスライドレール2、3を備えて構成されるが、ここでは説明の便宜上、これら一対のスライドレール2、3のうち、一方のスライドレール3を例にとって説明する。
【0019】
シートスライド装置1は、図1および図2に示すように、ロアレール4とアッパーレール5とが摺動可能に嵌合されてなるスライドレール3と、アッパーレール5をロアレール4に対して長手方向に規制するロック部材6と、該ロック部材6をアッパーレール5に対して上下動可能に保持するロックホルダー10と、ロック部材6を常時、下方(規制位置方向)に付勢するバネ部材9と、ロック部材6をバネ部材9の付勢力に抗して規制解除位置に変位させてロック解除するロック解除レバー11と、該ロック解除レバー11を手動操作によって回動させ、ロック部材6を上方(規制解除位置方向)に変位させる操作部材15と、該操作部材15とロック解除レバー11とを連結する連結部材14とを備えて構成される。該連結部材14は、レバーブラケット16と、バネ部材13とで構成される。
また、ロック解除レバー11と、操作部材15と、連結部材14とで、ロック部材6を手動操作によってロック解除位置に変位させるためのロック解除操作機構17が構成される。
【0020】
ロアレール4は、車体フロア面(図示省略)上に車両前後方向に向けて固定配置されるものであって、図3、図4に示すように、所定幅の底壁面4aと、該底壁面4aの左右両縁からそれぞれ起立する左右一対の側壁面4b、4cと、該一対の側壁面4b、4cの上縁からそれぞれ底壁面4aと略平行に内側へ延出する左右一対の上壁面4d、4eと、該一対の上壁面4d,4eの内側縁からそれぞれ下方へ垂下する左右一対の垂壁面4f、4gとを備えた略「C」字形の断面形状に形成されている。
また、ロアレール4の前記底壁面4aには、矩形形状に開口しているロック孔4hが、該ロアレール4の長手方向に所定間隔で複数個形成されている。
【0021】
アッパーレール5は、シートクッション下面に固定配置されるものであって、図3、図5に示すように、上壁面5aと、該上壁面5aの左右両縁からそれぞれ下方へ垂下する左右一対の側壁面5b、5cと、該一対の側壁面5b、5cの下縁からそれぞれ外側に向かって延出する略「く」字形の断面形状を有する一対の折り返し側壁面5d、5eとを備えた略逆「U」字形の断面形状に形成されている。
また、一対の折り返し側壁面5d、5eの上端部のそれぞれに、ロック部材6が備えられている前後方向の領域及びその直近の前後領域の範囲内に、上方に延びるフランジ部5g、5hが形成されている。該フランジ部5g、5hは、ロック状態にあるスライドレール3に剥離する方向に荷重が掛かった場合に、フランジ部5g、5hがロアレール4の上壁面4d、4eの内側面に当接することで、ロアレール4に対するアッパーレール5の剥離方向の変位を抑制するために設けられている。この剥離方向への変位抑制作用によって、後述するロック部材6を構成するロックプレート7、8に形成されたロック歯7a、8aの、ロアレール4に形成されたロック孔4hに対する噛み合い量が減少するのを防止できる。
アッパーレール5の上壁面5aには、挿通孔5fが設けられて後述するロック部材6の上下動を許容し、また、一方の側壁面5bには、その内側に切起して成形された切起し部5iが設けられており、該切起し部5iに後述するバネ部材13が配設される。
【0022】
ロック部材6は、図6に示すように、一対のロックプレート7、8からなり、該一対のロックプレート7、8はそれぞれの下端部に、先端が細いテーパー形状の複数のロック歯7a、8aが形成されるとともに、該ロック歯7a、8aの上方の平面部分には、幅方向に長い横長孔形状の係合孔7c、8cと半抜きされた係合突起7d、8dが形成されている。そして、ロックプレート7の係合突起7dがロックプレート8の係合孔8cに所定の遊びを持って挿入され、同様にロックプレート8の係合突起8dがロックプレート7の係合孔7cに所定の遊びを持って挿入され、図3に示すように、各ロックプレート7、8が重ね合わされた状態で配置されている。これによって、各ロックプレート7,8は、互いに反対方向に傾動することが許容されつつ、ほぼ同時に上下動するように規制される。
また、ロックプレート7、8には、それらが重ね合わされた状態で歯部7a、8aが形成されている側の下半部分における部材間に所定の隙間ができるように、略中間位置にそれぞれ、段差7h、8hが形成されている。
さらに、ロックプレート8には、ロック解除操作時にロック解除レバー11の当接部11aが当接して押し上げることによって、図15に示すように、ロックプレート8の上部側の後方側端部がアッパーレール5に設けられた挿通孔5fの後端部5kから離接するとともに、該ロックプレート8の上部側の前方側端部がアッパーレール5に設けられた挿通孔5fの前端部5jに当接するようになされた延設部8eが設けられている。
各ロックプレート7、8の略中央平面部分には、後述するバネ部材9の円筒部9aが挿通され、かつ上下方向に移動可能に配置される長孔形状の挿通孔7b、8bが設けられるとともに、バネ部材9の各端部9b、9cがそれぞれ係止される係止孔7g、8gが設けられる。−方、前記各端部9b、9cがそれぞれ係止されないようにするため、係止孔7g、8gより、孔の大きさが若干、大きくなるように下方向に延設された逃し孔7f、8fが設けられる。これは、バネ部材9の各端部9b、9cがそれぞれ係止孔7g、8gのみに係止されるようにするためのものである。
また、逃し孔7f、8fは、孔の大きさを大きくしなくとも、若干、下方向へシフトさせて設けてもよい。
【0023】
バネ部材9は、図7の(イ)に示す形状をしており、図11、図12、図13に示すように、ロック部材6を構成する一対のロックプレート7、8の挿通孔7b、8bに挿通配置され得るように円筒部9aを中央に備えるとともに、重ね合された各ロックプレート7、8の係止孔7g、8gのそれぞれに係止される、先端が略「L」字形状に形成された端部9b、9cを両端に備えており、各ロックプレート7、8を互いに反対方向に傾動するように付勢力を付与している。
また、一対のロックプレート7、8の挿通孔7b、8bに配置されたバネ部材9は、図3、図11、図12、図13に示すように、円筒部9aの両端がロックプレート7、8の各外面から突出した状態で、アッパーレール5の上壁面5aの内側面に弾性的に圧接するように配設され、ロックプレート7、8を下方(ロック歯7a、8aがロック孔4hに係合する方向)に付勢している。
【0024】
ロックホルダー10は、図8に示すように、底壁面10aと、該底壁面10aの左右両縁からそれぞれ斜め上方に起立する左右位置の側壁面10b,10cと、該一対の側壁面10b,10cの上縁からそれぞれ底壁面10aと略平行に外側へ延出する一対の上壁面10d,10eとを備えた略「U」字形の断面形状に形成されている。
また、ロックホルダー10の底壁面10aには、ロック部材6のロックプレート7、8にそれぞれ形成された複数のロック歯7a、8aが並列した状態で挿通されるロックプレート保持孔10fが、車両前後方向に所定間隔をもって形成されている。
さらに、ロックホルダー10の上壁面10d,10eには、アッパーレール5の一対の側壁面5b、5cの下端に形成された凸部5j、5kに嵌合する嵌合孔10g、10hが設けられている。
【0025】
前述の構成により、図14に示すように、ロック部材6を構成する一方のロックプレート7においては、該ロックプレート7上部側の前方側端部がアッパーレール5の上壁面5aに設けられた挿通孔5fの前端部5jに当接するとともに、ロックプレート7中部側の後方側端部がロックホルダー10の底壁面10aに設けられた挿通孔10fの後端部10jに当接し、ロック歯7aのうち1つのロック歯の前方側端部がロアレール4の底壁面4aに設けられた係合孔4hの前端部4iに当接し、かつロック部材6を構成する他方のロックプレート8においては、該ロックプレート8上部側の後方側端部がアッパーレール5の上壁面5aに設けられた挿通孔5fの後端部5kに当接するとともに、ロックプレート8中部側の前方側端部がロックホルダー10の底壁面10aに設けられた挿通孔10fの前端部10iに当接し、ロック歯8aのうち1つのロック歯の後方側端部がロアレール4の底壁面4aに設けられた係合孔4hの後端部4jに当接するように強制される。
【0026】
ロック解除レバー11は、図2、図9、図11、図12、図13に示すように、その中央から端に近づくにつれて徐々に幅が狭くなる略菱形の平面形状の板材からなり、アッパーレール5の一対の側壁面5b,5c間に枢支ピン12によって揺動可能に枢支されている。
ロック解除レバー11の略中央部には、枢支ピン12が挿通される挿通孔11fが穿設されている。そして、ロック解除レバー11の一端側には、ロックプレート7に設けられた突起7eに係止する当接部11aが形成され、その近傍位置には、アッパーレール5の上壁面5aの内側面に当接してロック解除方向の回動を制止させるストッパー部11bが形成されている。
また、ロック解除レバー11の他端側の上部には、後述する略コの字形状の操作部材15の端部15bに設けられたレバーブラケット16の矩形形状に開口した係合部16dに係合するフック部11dが形成されているとともに、ロック解除レバー11の他端側の下部には、ロック解除レバー11を常時、ロック方向に付勢させるバネ部材13の端部13bが係止する凹部11cが形成され、フック部11dの近傍位置には、アッパーレール5の上壁面の内側面に当接してロック解除レバー11の矢印a方向の回動を制止させるストッパー部11eが形成されている。
図12、図13に示すように、ロック解除レバー11の端部がレバーブラケット16の端部とバネ部材13の端部で上下に挟持されることによって、レバーブラケット16の端部とロック解除レバー11の端部が連結される。
【0027】
操作部材15は、図1、図2に示すような略「コ」字形状のパイプ材からなっており、着座者が手動で操作するための把手部15aを備えている。
【0028】
連結部材14は、図2に示すように、一端が操作部材15の端部に固定され、他端がロック解除レバー11に連結されるレバーブラケット16と、ロック解除レバー11の端部をレバーブラケット15の端部とで弾性的に挟持するバネ部材13とで構成されている。
レバーブラケット16は、図10に示すように、逆「L」字形の断面形状に形成された板材からなり、側壁面16bと上壁面16aを有している。そして、上壁面16aの略中央部には、操作部材15の揺動支点となる突起部16cが形成されており、一端側にはロック解除レバー11の他端部に形成されたフック部11dに係合する矩形形状に開口した係合孔16dが設けられている。
また、上壁面16aの他端側には、突起部16cの近傍位置に、バネ部材13の他端部13cが係合する矩形形状に開口した係合孔16eが設けられている。
さらに、レバーブラケット16の他端部の側壁面16bと上壁面16aに対して、操作部材15の端部15bが溶接によって固着されている。
バネ部材13は、図7(ロ)に示すように、ねじりバネであり、両端がそれぞれ、略「L」字形状に形成された端部13b、13cを有している。
また、バネ部材13は、図11、図12、図13に示すように、アッパーレール5の一方の側壁面5bから内側に切起された切起し部5iにバネ部材13の円筒部13aが差し込まれて保持され、一端部13bはロック解除レバー11の端部に形成された凹部11cに係止されるとともに、他端部はレバーブラケット16の係合孔16eに係合されている。
レバーブラケット16は、アッパーレール5の内側において、バネ部材13の付勢力によって、レバーブラケット16の揺動支点となる突起部16cがアッパーレール5の上壁面5aの内側面に常時、圧接するようにして支持されている。ここで、揺動支点は、レバーブラケット上にあればよく、レバーブラケット16の上壁部16a上に突起部16cを設けずに、アッパーレール5の上壁面5aの内側面から下方に突出する突起部を設けてもよい。
【0029】
なお、本願発明は、この実施例に限定されるものでなく、本願発明の技術的思想の範囲で、様々な変形例が実現できるものと解される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、自動車、船舶、航空機等の座席を前後方向等任意の位置に調節できるシートスライド装置に適している。
【符号の説明】
【0031】
1 シートスライド装置
2、3 スライドレール
4 ロアレール
4a 底壁面
4b、4c 側壁面
4d、4e 上壁面
4f、4g 垂壁面
4h ロック孔
4i ロック孔の前端部
4j ロック孔の後端部
5 アッパーレール
5a 上壁面
5b、5c 側壁面
5d、5e 折り返し側壁面
5f 挿通孔
5g、5h フランジ部
5i 切り起し部
5j 挿通孔の前端部
5k 挿通孔の後端部
6 ロック部材
7、8 ロックプレート
7a、8a ロック歯
7b、8b 挿通孔
7c、8c 係合孔
7d、8d 係合突起
8e 延設部
7g、8g 係止孔
7f、8f 逃し孔
7h、8h 段差
9 バネ部材
9a 円筒部
9b、9c 端部
10 ロックホルダー
10a 底壁面
10b、 10c 側壁面
10d、10e 上壁面
10f ロックプレート保持孔
10g、10h 嵌合孔
10i ロックプレート保持孔の前端部
10j ロックプレート保持孔の後端部
11 ロック解除レバー
11a 当接部
11b ストッパー部
11c 凹部
11d フック部
11e ストッパー部
12 枢支ピン
13 バネ部材
13a 円筒部
13b、13c 端部
15 操作部材
15a 把手部
16 レバーブラケット
16a 上壁部
16b 側壁部
16c 突起部
16d、16e 係合部
17 ロック解除操作機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロア側に固定されたロアレールと、車両用シート側に固定されたアッパーレールと、アッパーレールの内側に設けられたロックホルダーと、該ロックホルダーに上下動可能に保持されたロック部材と、該ロック部材をロック解除方向に変位させるロック解除レバーと、該ロック部材を常時、ロック方向に付勢するバネ部材と、該ロック部材に形成された複数のロック歯が、ロアレールに形成された複数のロック孔に係入することによってロックし、係合離脱することによってロック解除となるようにしたシートスライドのロック装置において、ロック部材は、一対のロックプレートからなり、各ロックプレートは夫々、下端部に複数のロック歯が形成され、前記アッパーレール上壁面に挿通孔が設けられ、該挿通孔に前記ロック部材の上側部が挿通されて支持され、前記アッパーレールの内側に設けられた前記ロックホルダーにはロックプレート保持孔が設けられ、該ロックプレート保持孔に前記一対のロックプレートに設けられたロック歯が夫々、挿通されて支持されることによって、前記ロック部材が上下方向に変位可能に設けられ、該ロック部材を構成する一方の前記ロックプレートにおいては、該ロックプレートの上部側の前方側端部が前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の前端部に当接するとともに、前記ロックプレートの中部側の後方側端部が前記ロックホルダーに設けられた前記挿通孔の後端部に当接し、前記ロック歯のうち1つのロック歯の前方側端部が前記ロアレールに設けられた係合孔の前端部に当接し、前記ロック部材を構成する他方の前記ロックプレートにおいては、該ロックプレートの上部側の後方側端部が前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の後端部に当接するとともに、前記ロックプレートの中部側の前方側端部が前記ロックホルダーに設けられた前記挿通孔の前端部に当接し、前記ロック歯のうち1つロック歯の後方側端部が前記ロアレールに設けられた係合孔の後端部に当接するようになされ、さらに前記ロックプレートには、その中部側の後方側端部に、ロック解除操作時に前記ロック解除レバーの当接部が当接して押し上げることによって、前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の後端部からロックプレートの上部側の後方側端部が離接するとともに、該ロックプレートの上部側の前方側端部が前記アッパーレールに設けられた前記挿通孔の前端部に当接するようになされた延設部が設けられたことを特徴とするシートスライドのロック装置。
【請求項2】
前記ロック部材を構成する一対のロックプレートの下端部の各々に形成された前記ロック歯の上方平面部には、係合穴と係合突起が備えられ、互いに一方のロックプレートの係合突起が他方のロックプレートの係合穴に所定の遊びを持って挿入されるように前記ロックプレートの各々が重ね合わされて配置され、さらに該ロックプレートの各々の中央から上方に至る平面領域には、ねじりバネが挿通されて配置される挿通孔が設けられ、前記ロックプレート間に配置された前記ねじりバネの一端部が重ね合された一方のロックプレートの側辺部に係止されるとともに、ねじりバネの他端部が他方のロックプレートの側辺部に係止され、互いに反対方向に傾動するように付勢されていることを特徴とする請求項1記載のシートスライドのロック装置。
【請求項3】
前記ロック部材を構成する一対のロックプレートの中央から上方に至る平面領域に配置された前記ねじりバネの、前記ロック部材から外方へ露出した円筒状部分が、前記アッパーレール上壁面の内側面に常時、圧接するように配設され、これによって、前記ロック部材がロック方向に常時、付勢されていることを特徴とする請求項2記載のシートスライドのロック装置。
【請求項4】
前記ロック部材を構成する一対のロックプレートに形成された前記ロック歯の上方の平面部に幅方向に長い横長孔形状の係合孔と半抜きされた係合突起が形成され、互いに一方のロックプレートの係合突起が他方のロックプレートの係合孔に所定の遊びを持って挿入されて重ね合わされた状態で配置された各ロックプレートは、互いに反対方向に傾動することが許容されつつ、ほぼ同時に上下動するように規制されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載のシートスライドのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−100067(P2013−100067A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255510(P2011−255510)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000151760)株式会社東洋シート (142)
【Fターム(参考)】