説明

車両用シート装置

【課題】乗降性に優れた車両用シート装置を提供すること。
【解決手段】シートクッション1の座面11とシートバック2背当面21とに設けられ、車外側部11a,21aと車内側部11b,21bとで面高を変更可能に形成されたシートアクチュエータ31,32と、シートアクチュエータ31,32の作動を制御するコントローラ4と、を備えた車両用シート装置であって、コントローラ4は、乗降検出手段5が乗降を検出したときには、車内側部11b,21bに対して車外側部11a,21aが相対的に低くなるようにシートアクチュエータ31,32を作動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート形状を変形させるシート変形手段を備えた車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シート装置として、シートのクッション部分を変形さえて、シートのホールド性や振動抑制などにより運転の快適性を向上させたり、運転者に注意を促したりすることができる車両用シート装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の車両用シート装置は、支持フレームに固定された複数の支持クッションを備え、支持クッションは、圧電材料などを用いて通電により変形可能なアウタシェルを備え、走行状態に応じ通電を制御してアウタシェルの形状を変化可能に構成されている。
【特許文献1】特開2004−243863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の乗降時には、例えば、シートクッションの形状が、外側部分が中央部分に比べて高くなっている形状の場合などには、乗降しにくいという問題がある。
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、運転の快適性の向上や、最大牽引力の走行状態を報せて運転者に注意を促したりすることを目的としたもので、乗降性を考慮したものではなかったため、上述の乗降性の改善を図ることができなかった。
【0006】
本発明は、上述の問題に着目して成されたもので、乗降性に優れた車両用シート装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するため、乗降検出手段が乗降を検出したときには、制御手段がシート変形手段を作動させて、シートクッションの座面とシートバックの背当面のうちで少なくとも座面の面高が、車内側部に対して車外側部が相対的に低くなるようにようにした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、乗降時に、シートクッションの座面とシートバックの背当面のうちで少なくとも座面の面高が車内側部に対して車外側部が相対的に低くなる。このため、座面あるいはそれに加えて背当面が一定形状であるのと比較して、座面あるいはそれに加えて背当面の車外側部が乗員の移動を妨げにくくなるとともに、乗員の足が地面に着けやすくなり、乗降性が向上する。
しかも、乗員が着座した状態では、上記の座面形状変化あるいはそれに加えて背当面形状変化により、着座した乗員に対して車外側向きのモーメントが生じて、乗員をアシストし、これによっても乗降性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この実施の形態の車両用シート装置は、車両のドアの側方に配置されたシートクッション(1)の乗員(HM)が着座する座面(11)とシートバック(2)の乗員(HM)の背中を支持する背当面(21)とのうち少なくとも座面(11)に設けられ、前記ドアに近い側の端部である車外側部(11a,21a)と前記ドアから遠い側の車内側部(11b,21b)とで面高を変更可能に形成されたシート変形手段(31,32)と、このシート変形手段(31,32)の作動を制御する制御手段(4)と、を備えた車両用シート装置であって、前記乗員(HM)の乗降時を検出する乗降検出手段(5)が設けられ、前記制御手段(4)は、前記乗降検出手段(5)が乗降を検出したときには、前記面高が車内側部(11b,21b)に対して車外側部(11a,21a)が相対的に低くなるように前記シート変形手段(31,32)を作動させることを特徴とする車両用シート装置である。
【実施例1】
【0010】
図1〜図10に基づいて本発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用シート装置について説明する。
【0011】
まず、構成について説明する。
この実施例1の車両用シート装置Aは、車両の運転席あるいは助手席用として図示を省略した車両左側に設けられたドアの内側に配置されたものであり、図1に示すように、シートクッション1とシートバック2とを有したシートSEを備えている。
【0012】
シートクッション1は、乗員HM(図6参照)が着座する車両上方(矢印UPR方向)を向いた座面11を備えている。
この座面11は、中央の平坦部11dを囲う車外方向(矢印OTR方向)の車外側部11aとその反対側の車内側部11bと車両前方側の前端縁部11cとが、平坦部11dに比べて、車両上方に高くなった凸断面形状に形成されている。
【0013】
シートバック2は、乗員HMの背中を支持する車両前方(矢印FR方向)を向いた背当面21を備えている。
この背当面21は、中央の平坦部21dの車幅方向両側の車外側部21aおよび車内側部21bとが、平坦部21dに比べて車両前方へ突出した凸断面形状に形成されている。
【0014】
さらに、座面11および背当面21には、シート変形手段としてのシートアクチュエータ31,32が、車外側部11a,21a、車内側部11b,21b、前端縁部11cの外縁部まで巻き込むように、座面11および背当面21の全面を覆って設けられている。すなわち、シートアクチュエータ31,32は、座面11および背当面21をマトリックス状に連続して配置された集合体である。このマトリックス状の各区画は、それぞれ密閉袋で形成され、内部に、通電する極性に応じて伸縮する導電性高分子材料で形成された図示を省略した導電性アクチュエータが設けられているとともに、液体状の充填材が充填されている。なお、導電性高分子材料としては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体のうちの一種あるいは複数種の混合物などを用いることができる。
【0015】
導電性アクチュエータは、プラス電位をかけられた場合に伸張し、このとき、シートアクチュエータ31,32では、その厚み(シートアクチュエータ31にあっては車両上下方向の寸法、シートアクチュエータ32にあっては車両前後方向の寸法)が増すとともに固さが増すように構成されて。
【0016】
図2はシートアクチュエータ31,32の導電性アクチュエータに電圧を印加した一例を示しており、この図において、横軸は、シートアクチュエータ31,32の車幅方向の配列を表している。
この図のように、シートアクチュエータ31,32において、初期電圧Vよりも高い電圧レベルを印加している領域では、シートアクチュエータ31,32の厚みtは、初期電圧Vを印加しているときの厚さtよりも厚くなる。また、このとき図外の導電性アクチュエータの伸張により充填材が押し退けられてシートアクチュエータ31,32の固さが増加する。
【0017】
一方、シートアクチュエータ31,32において、初期電圧Vよりも低い電圧レベルを印加している領域では、シートアクチュエータ31,32の厚さtは初期電圧Vを印加しているときの厚さtよりも薄くなる。また、このとき図外の導電性アクチュエータが収縮することで柔軟性が増す。
【0018】
なお、初期電圧Vは、本実施例1では、図3に示すように、シートアクチュエータ31,32の全域において一定レベルに設定されている。
【0019】
シートアクチュエータ31,32には、図1に示すように、図外の導電性アクチュエータに印加する電圧レベルを制御するコントローラ4が接続されている。また、コントローラ4には、乗降時を検出する乗降検出手段5が接続されている。この乗降検出手段5としては、例えば、図外のドアハンドルを操作して図外のドアロックがロック解除されたときに乗降検出手段としてのドアロックスイッチや、ドアが閉じているときと、開いたときとでON,OFFが切り換わるドアスイッチを用いることができる。前者のドアロックスイッチの場合は、ドアロックが解除されたときを乗降時と判断する。また、後者のドアスイッチの場合は、ドアが開かれたときを乗降時と判断する。
【0020】
次に、コントローラ4によるシート変形制御の処理の流れを図4のフローチャートにより説明する。
このシート変形制御は、図外のイグニッションスイッチがONとなった時点でスタートする。
【0021】
そして、ステップS1では、乗降時であるか否かを判断し、非乗降時には、ステップS2に進んで、シートアクチュエータ31,23に、図3に示す特性の初期電圧Vを印加する。この場合、シートアクチュエータ31,32は、図5(a)に示すように、全体に均一な厚さに制御される。なお、図5ではシートアクチュエータ31,32の車幅方向の並びの厚さを示している。
【0022】
このとき、シートクッション1にあっては、図6(a)に示すように、座面11が車両上方を向くように制御され、シートバック2では、図7(a)に示すように、背当面21が車両前方を向くように制御される。また、このときのシートSEの形状が、図1に示す状態であり、この状態を以下、通常状態と称する。
なお、図6,図7では、シートアクチュエータ31,32の厚さ示して全体を平らに表しているが、座面11および背当面21は、実際には、図1に示すように、車外側部11a,21aおよび車内側部11b,21bが凸断面形状を成している。
【0023】
一方、ステップS1において、乗降時と判定された場合には、ステップS3に進んで、シートアクチュエータ31,32に対して、あらかじめ設定された乗降時特性電圧を印加する。この乗降時特性電圧は、図2に示すように、シートアクチュエータ31,32において、車幅方向で平坦部11d,21dと車外側部11a,21aの間近傍に設定された基準点OTRを挟んで、車外側は初期電圧Vよりも低く、車内側が初期電圧Vよりも高く設定されている。そして、最低値は、最も車外側の位置に設定され、一方、最高値は、最も車内側よりも1段内側の位置に設定されている。
【0024】
この図2に示す乗降時特性電圧が印加された場合、シートアクチュエータ31,32は、図5(b)に示すように、車外側部11a,21aは、初期電圧Vの印加時よりも薄く制御される一方で、車内側部11b,21bは、初期電圧Vの印加時よりも厚く制御される。
【0025】
この場合、シートクッション1では、座面11の向きが、図6(b)に示すように、車外方向を向くように傾き、シートバック2では、背当面21が、図7(b)に示すように、車外方向を向ように傾く。このときのシートSEの状態を、以下、乗降時変形状態と称する。
【0026】
なお、シートアクチュエータ31,32では、乗降時特性電圧が印加された場合、厚さtが厚く制御された部分ほど固くなるため、座面11および背当面21にあっては、乗員HMに対する反力が図8に示すように、車内側ほど高く車外側ほど低く発生する。
【0027】
さらに、本実施例1では、乗降時特性電圧を印加する際の、電圧レベルの上昇速度の傾きknが、年齢が低いほどその値が高くなるようにしている。図9はこの傾き特性を示しており、傾きknは、この図に示すように、年齢に応じ段階的に変化させてもよいし、あるいは連続的に変化させてもよい。
【0028】
ここで、図9において、若年層における傾きk1と、高年齢層における傾きk2との電圧上昇特性の違いを図10に示す。この図に示すように、乗員の年齢に応じ、年齢が低いほど短時間で電圧レベルが高くなるのに対し、年齢が高いほど、ゆっくりと電圧レベルが高くなる。
【0029】
なお、この年齢の入力は、携帯式のキーとシートポジションを登録する際に、同時に入力するようにしている。また、助手席では、別途、図外のモニター画面などを操作して設定することができるものとする。
【0030】
次に、実施例1の作用を説明する。
実施例1の車両用シート装置Aに乗員HMが着座し、図外のイグニッションスイッチをONにすると、シートアクチュエータ31,32には、初期電圧Vが印加される(図4のステップS1→S2の流れによる)。
【0031】
この場合、各シートアクチュエータ31,32は、図5(a)に示すように均一な厚みに制御され、シートSEは、図1に示す通常状態となっている。この通常状態では、シートクッション1にあっては、図6(a)に示すように、座面11が左右対称に略水平に制御される。また、シートバック2にあっても、図7(a)に示すように、背当面21が車両前方を向くように左右対称に制御されている。
【0032】
次に、乗員の降車時には、乗降検出手段5が乗降を検出すると、シートアクチュエータ31,32には、図2に示す乗降時特性電圧が印加され(図4のステップS1→S3の流れによる)、シートSEは、乗降時変形状態に変形する。
【0033】
このときシートアクチュエータ31,32は、図5(b)に示すように車外側のものほど薄く、かつ柔らかく制御される一方、車内側のものほど厚く、かつ固く制御される。
【0034】
よって、車外側部11a,21aによる突出量が小さくなり、乗員HMと車外側部11a,21aとの干渉が生じにくくなるため、車外側部11a,12aの突出量が変化しない場合に比べて、乗員HMの車外方向の移動がスムーズになるとともに、地面への乗員HMの足の着き易さである足着き性が向上し、これにより乗降性が向上する。
【0035】
しかも、シートクッション1の座面11では、図6(b)に示すように車内側部11bが高く車外側部11aが低くなるよう高低差が形成され、乗員に対して矢印M1で示すように、車外方向に向いたモーメントが生じる。
【0036】
同時に、シートバック2の背当面21にあっても、図7(b)に示すように、車内側部21bが車両前方に配置される一方、車外側部21aが車両後方へ配置される高低差が形成され、乗員HMに対して、矢印M2で示す車外方向に向いたモーメントが生じる。
【0037】
これらの矢印M1,M2で示すモーメントにより、乗員HMに対して車外方向へ移動させるアシスト力が作用するため、このように、座面11および背当面21に傾斜が生じない場合に比べて、乗員HMの車外方向への移動が容易となり、これによっても乗降性を向上させることができる。
【0038】
加えて、シートアクチュエータ31,32では、上述の厚さ変化に伴い固さが変化するため、座面11および背当面21における乗員HMに対する反力が、図8に示すように、図外のドアから離れた車内側ほど大きくなる一方で、車外側ほど小さくなる。このため、反力が車幅方向で均一な場合と比較して、上述のモーメントM1,M2がより大きく生じ、いっそう乗降性を向上させることができる。
【0039】
さらに、乗降時特性電圧の印加時には、電圧レベルの上昇速度が乗員HMの年齢が低いほど速く、年齢が高いほど緩やかに成される。この場合、乗員HMの年齢が低いほど、上述のモーメント(矢印M1,M2)の立上りが早いとともに、反力の高まりも速くなる。逆に、乗員HMの年齢が高いほど、上記モーメント(矢印M1,M2)の立上りが緩やかになり、反力の高まりも緩やかになる。
このため、乗員HMの身体特性、すなわち、乗員HMの移動速度に応じたアシストが成され、さらに、乗降性を向上させることができる。
【0040】
また、実施例1では、シートアクチュエータ31,32を、座面11および背当面21の全体にマトリックス状に配置したため、座面11および背当面21の一部に配置するのに比べて、各シートアクチュエータ31,32の厚さ(面高)変化を細かに制御可能であり、より乗降性を高めることが可能となる。
【0041】
以上、降車時について説明したが、乗車時には、シートSEを上述したように乗降時変形状態に変形させることもできるし、あるいは変形させないようにすることもできる。
【0042】
例えば、乗降検出手段5が、図外のドアのロックを車内側から解除するインサイドハンドルに設けた場合には、乗車時には、乗降が検出されないが、前述のようにドアの開閉に連動するドアスイッチにもうけた場合には、乗車時にも乗降が検出されてシートSEにおいて、上述の変形が生じる。
【0043】
乗車時にシートSEが乗降時変形状態に変形された場合、座面11および背当面21が、図1に示す形状に一定に保たれるのと比較して、車外側部11a,21aが低くなり、乗り込みが容易となる。
【0044】
また、図外のドアを閉じて非乗車検出状態となると、シートアクチュエータ31,32に初期電圧Vが印加され、シートSEの形状が通常時状態に戻る。このときの座面11および背当面21の変形により、乗員HMに対して、図6および図7の矢印M1,M2とは逆向きのモーメントがアシスト力として作用する。このため、アシスト力を受けるだけ、アシスト力を受けない場合よりも、姿勢変化が容易と成り、乗降性が向上する。
【実施例2】
【0045】
次に、図11に基づいてこの発明の実施の形態の実施例2の車両用シート装置について説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、実施例1と相違する部分を中心として説明する。
【0046】
この実施例2の車両用シート装置は、乗降時印加電圧特性の傾き制御において、電圧印加初期に比べて印加終了期の変化を抑えるようにした例である。
すなわち、実施例2では、図11の傾き特性に示すように、電圧印加初期の上昇速度を速く、電圧印加終了期の上昇速度を遅くするようにしている。
【0047】
このように制御することで、乗員HMに与えるアシスト力を乗降初期には大きくして移動容易とする一方で、乗降後期にはアシスト力変化を抑えて、乗員HMの姿勢安定化を図ることができる。これにより、さらに乗降性を高めることができる。
なお、他の構成および作用効果は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0048】
次に、図12に基づいてこの発明の実施の形態の実施例3の車両用シート装置について説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、実施例1と相違する部分を中心として説明する。
【0049】
この実施例3の車両用シート装置は、ステップS2において印可する初期電圧Vを、座面11および背当面21の圧力分布に応じた値とするようにしている。
【0050】
すなわち、実施例3では、シートアクチュエータ31,32に設けられている導電性高分子アクチュエータを圧力分布検出手段として用いて座面11および背当面21の圧力分布を検出し、この圧力分布に応じて初期電圧Vを印加するようにしている。図12に示す初期電圧Vは、その一例を示している。
【0051】
さらに、本実施例3では、初期電圧Vを、図において点線で示す幅で変更可能としている。なお、この変更は、乗員がスイッチなどを操作して、任意に変更するようにしている。
【0052】
また、実施例3では、乗降時特性電圧を印加する場合、初期電圧Vに対して、図12において棒グラフ状に示す、シートアクチュエータ31,32の場所に応じてあらかじめ設定された差分の電圧を、初期電圧Vに加減して印加するようにしている。
【0053】
以上のように構成された実施例3では、初期電圧Vを、座面11および背当面21の圧力分布に応じて決定するようにしている。このため、座面11および背当面21が乗員HMの体格に応じた形状および固さに制御され、座り心地が向上する。また、必要に応じて、形状および固さを変更することができるため、いっそう乗員HMの好みに合わせることができる。
【0054】
しかも、乗降時には、この初期電圧Vにあらかじめ設定された差分電圧を加減するため、座面11および背当面21の面高が、圧力分布に応じた形状から所定量変化する。このため、座面11および背当面21を、乗員HMの体格に応じた形状としていても、乗降時には、乗員HMの体格に応じて実施例1のようにモーメント(矢印M1,M2)を生じさせてアシスト力が確実に得られるだけのストロークさせることができる。
他の作用効果については実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1ないし実施例3を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1ないし実施例3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、実施例1〜3では、乗降時には、非乗降時に比べて車外側を低くする一方で、車内側を高くするようにした例を示したが、相対的に車外側が車内側に比べて低くなるのであれば、これに限られない。例えば、車外側は非乗降時の面高のままで、車内側を非乗降時よりも高くするようにしてもよいし、その逆に、車内側は非乗降時のままで車外側を非乗降時よりも低くするようにしてもよい。
【0056】
また、実施例1〜3では、シートクッション1およびシートバック2の全幅に亘ってシート変形手段としてのシートアクチュエータ31,32を設けたが、上述のように車外側と車内側のいずれか一方の面高を変える場合、シート変形手段は、シートクッション1およびシートバック2の車内側と車外側のいずれか一方のみに設けるようにしてもよい。すなわち、シート変形手段を、車内側のみに設けた場合には、乗降検出時には、シート変形手段により座面あるいは背当面の面高を高くする。また、シート検出手段を車外側のみに設けた場合には、乗降検出時には、座面あるいは背当面の面高を低くする。
【0057】
また、実施例1〜3では、乗降時特性電圧の上昇の傾き特性を、年齢に応じて変更するようにしたが、年齢に応じる以外にも、乗員が好みの傾き選択できるようにしてもよい。
【0058】
また、実施例1〜3では、座面11および背当面21の形状は、車外側部11a,21aと車内側部11b,21bとが、その中間の平坦部11d,21dに比べて凸形状となってホールド性を高くした例を示した。しかし、これに限定されず、座面および背当面の全体が平坦な形状のものにも適用することができ、この場合も、乗降性が改善される。さらに、乗降時特性電圧を印加する開始タイミングを、乗降検出からある程度遅らせるようにしてもよい。また、この遅らせ時間も、年齢や好みにより設定可能とし、例えば、高齢となるほど、印加タイミングを遅らせるようにしてもよい。
【0059】
また、実施例1〜3では、シート変形手段として、導電性高分子アクチュエータを用いたものを示したが、これに限定されず、例えば、エアなどの流体を、気密室に導入して面高を高くするとともに固くし、逆に、流体を排出して面高を低くするとともに柔らかくする手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aを示す全体図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aにおける乗降時電圧特性を示す電圧レベル特性図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aにおける初期電圧Vの特性を示す電圧レベル特性図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aにおけるシート変形制御の処理流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aのシートアクチュエータ31,32の車幅方向の厚みの説明図であり、(a)は非乗降時を示し、(b)は乗降時を示している。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aのシートクッション1に設けられたシートアクチュエータ31の作動説明図であり、(a)は非乗降時を示し、(b)は乗降時を示している。
【図7】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aのシートバック2に設けられたシートアクチュエータ32の作動説明図であり、(a)は非乗降時を示し、(b)は乗降時を示している。
【図8】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aにおけるシートアクチュエータ31,32の乗降時電圧特性で印加したときの反力を示す反力特性図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aにおける乗降時電力特性で印加する場合の電圧上昇特性図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例1の車両用シート装置Aの乗降時電力特性の電圧上昇の傾きの説明図である。
【図11】本発明の実施の形態の実施例2の車両用シート装置の乗降時電力特性の電圧上昇の傾きの説明図である。
【図12】本発明の実施の形態の実施例3の車両用シート装置における印加電圧特性の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 シートクッション
2 シートバック
4 コントローラ(制御手段)
5 乗降検出手段
11 座面
11a 車外側部
11b 車内側部
21 背当面
21a 車外側部
21b 車内側部
31 シートアクチュエータ(シート変形手段)
32 シートアクチュエータ(シート変形手段)
HM 乗員
初期電圧
SE シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの側方に配置されたシートのシートクッションの乗員が着座する座面とシートバックの乗員の背中を支持する背当面とのうち少なくとも座面に設けられ、前記ドアに近い側の端部である車外側部と前記ドアから遠い側の車内側部とで面高を変更可能に形成されたシート変形手段と、
このシート変形手段の作動を制御する制御手段と、
を備えた車両用シート装置であって、
前記乗員の乗降を検出する乗降検出手段が設けられ、
前記制御手段は、前記乗降検出手段が乗降を検出したときには、前記面高を車内側部に対して車外側部が相対的に低くなるように前記シート変形手段を作動させることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
前記シート変形手段は、印加する電圧レベルに応じて伸縮する導電性高分子アクチュエータを備え、この導電性高分子アクチュエータの伸張時には伸張前に比べて前記面高が高くなるのに加えて固さが増すよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記シート変形手段が、前記座面と背当面のうち少なくとも座面の全面に亘ってマトリックス状に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記制御手段は、非乗降検出時には、前記導電性高分子アクチュエータに対してあらかじめ設定された初期電圧を印加し、乗降検出時には、前記車内側部では初期電圧印加時よりも伸長するよう設定されている一方で、車外側部では初期電圧印加時よりも収縮するよう設定された乗降時特性電圧を印加し、かつ、この乗降時特性電圧の印加時に、初期電圧から徐々に電圧レベルを変化させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用シート装置。
【請求項5】
前記制御手段は、乗降時特性電圧の印加時の電圧レベル変化速度を、乗員に応じ変更可能としたことを特徴とする請求項4に記載の車両用シート装置。
【請求項6】
前記座面と背当面との少なくとも座面における圧力分布を検出する圧力分布検出手段を備え、
前記制御手段は、前記圧力分布検出手段が検出する圧力分布に基づいて、前記初期電圧の電圧レベルの分布を設定することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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