説明

車両用シート

【課題】着座時の違和感が少なく、且つより高いマッサージ機能を備えた車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シート1は、フレームと、着座面全体を構成するパッド26と、マッサージ手段とを備えるシートバック4を有する。パッド26には、着座面からその反対側の面まで貫通する少なくとも1つの穴37が形成され、マッサージ手段は、ガスの吸入及び排出によって伸縮可能に形成されるとともに当該伸縮方向に弾性変形可能なマッサージ部材12を備える。マッサージ部材12は、穴37の内部を穴37の貫通方向に沿って伸縮および弾性変形するように配置されている。マッサージ部材12は、乗員が着座した際、乗員の身体がシートバックに加える圧力によりパッド26とともに弾性変形により収縮する。また、マッサージ部材12は、パッド26を介さず着座者の背部を押圧でき、より高いマッサージ機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に据え付けられる車両用シートであってマッサージ機能を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート、特に高級乗用車のシートには、乗り心地の向上を目的として、運転席以外のシートにフットレスト(オットマン)が設置されたり、運転席のシートに、傾きや張り出し具合を調節可能なランバーサポート(腰部支持体)が設けられたりしている。また、ロングドライブなどでは、長時間にわたって同じ姿勢を保持することによって筋肉等のこりを生じやすいことから、マッサージ手段が付加されたシートが開示されている(例えば、特許文献1、参照。)マッサージ手段は、シートバックを構成するパッドに形成された貫通穴に、あるいは、パッドの厚みを減少させた部分の裏側にハンマーを備えている。このハンマーはモータによって駆動されて着座者の背部を断続的に押圧して、マッサージをする。
【特許文献1】実開昭63−46136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両室内では走行中に種々の揺れや振動が発生する。車両用シートはこれらの揺れや振動を緩和して乗員に伝える役目を有することから、柔軟性と弾性とを併せ持つ。しかしながら、マッサージ用のハンマー等をパッドをくり貫いて設けると、ハンマー部分にはパッドがないため、着座時、特に揺れた時に違和感を生じるおそれが高い。また、パッドの裏側にハンマー等を配置した構成では、着座時の違和感は軽減されるが、パッドがハンマー等による押圧をも吸収するため、マッサージにおいて乗員に伝わる圧力や振動が小さくなる。
【0004】
そこで、本発明では、着座時の違和感が少なく、且つより高いマッサージ機能を備えた車両用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、フレームと、着座面全体を構成するパッドと、マッサージ手段とを備えるシートバックを有する車両用シートであって、前記パッドには、着座面からその反対側の面まで貫通する少なくとも1つの穴が形成され、前記マッサージ手段は、ガスの吸入及び排出によって伸縮可能に形成されるとともに当該伸縮方向に弾性変形可能なマッサージ部材を備え、前記マッサージ部材は、前記穴内を穴の貫通方向に沿って伸縮および弾性変形するように配置されることを特徴とする、車両用シートである。
この発明によれば、マッサージ部材は、パッドの穴の貫通方向に沿って弾性変形するため、このシートに乗員が着座した際、乗員の身体がシートバックに加える圧力によりマッサージ部材が収縮する。したがって、着座状態では、パッドだけでなくマッサージ部材も収縮し、マッサージ部材が局所的に乗員の背部に圧接されることが軽減あるいは回避される。一方、マッサージ部材は、パッドの貫通する穴に設けられており、パッドを介さず着座者の背部を押圧できる。このため、ガスの吸入及び排出によって伸縮することで着座者の背部をより確実に押圧及び押圧解除することができる。したがって、本発明に係る車両用シートは、着座時の違和感が少なく、且つより高いマッサージ機能を備えている。
本発明の第2発明は、第1発明において、前記マッサージ部材は、前記伸縮方向に連続する蛇腹構造を有し、この蛇腹構造によって弾性変形可能に形成されている車両用シートを提供する。
この発明によれば、蛇腹構造によって弾性変形可能に形成されることにより、マッサージ部材全体により均一な柔軟性を付与することができ、マッサージ部材に起因する着座時の違和感を良好に軽減あるいは解消することができる。
また、本発明の第3発明は、第1又は第2発明において、前記マッサージ部材の着座面側の端部は、前記パッドの穴の着座面における内径に沿う形状に形成されている車両用シートを提供する。
この発明によれば、マッサージ部材の着座面における面積をより大きくして、着座時においてマッサージ部材が尖った感触、すなわち突き刺さる感触を与えることを抑制できる。また、パッドとマッサージ部材との境界を隙間として着座者が感じることを防ぐことができる。
また、特に、マッサージ部材が蛇腹構造を備える構成では、マッサージ部材の着座面の端部をパッドの穴の内径に沿う形状に形成することにより、穴の内壁によって穴の貫通方向に沿うマッサージ部材の伸縮をサポートすることができる。したがって、着座時のマッサージ部材の弾性変形をスムーズにすることができる。また、蛇腹構造をガスの吸引、排出による伸縮部分として、より安定して機能させることが可能である。
さらに、第4発明は、第1〜第3発明のいずれかにおいて、前記マッサージ部材の着座面側の最突出部は、直径30mmの円以上の大きさを有する平面に形成されている車両用シートを提供する。
この発明によれば、着座時にマッサージ部材に乗員背部が接触して感じられる尖った感触を良好に緩和できるとともに、マッサージのときには、人間が行う手のひらマッサージに類似するマッサージを施すことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着座時の違和感が少なく、且つより高いマッサージ機能を備えた車両用シートを提供することにより、マッサージ機能を使用しないときと使用するときのいずれにおいても乗り心地を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係る車両用シート1を示す。車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック4と、ヘッドレスト6とを有し、マッサージ手段10を備えている。シートクッション2およびヘッドレスト6は、公知の構成である。シートバック4は、その着座面に、マッサージ手段10のマッサージ部材12を備えている。マッサージ手段10は、マッサージ部材12の他、マッサージ部材12を駆動するための駆動手段14を備えている。駆動手段14は、本実施形態では、シートバック4やシートクッション2とは別体で形成されており、チューブ16によってマッサージ部材12に接続されている。
【0008】
図2を参照してシートバック4について説明する。本実施形態のシートバック4は、上部が他の部分に対して着座面側に回動する中折れタイプである。シートバック4は、フレーム20とパッド26とカバー28とを備える。
【0009】
フレーム20は、公知の構成とすることができ、金属パネル等が曲げ成形されて形成される四角形状の枠である。フレーム20は、シートバック4の下側を構成する下部フレーム20bと、シートバック4の上部を構成し、下部フレーム20bに対して着座面側に回動可能な上部フレーム20aとを備える。上部フレーム20aは、シートバック4の上面および上部の左右両側を構成する枠に形成されており、上部フレーム20aの下部に左右両側の枠にわたって延びる下の枠を備えている。また、上面の枠に対応する部分に、ヘッドレスト6のステー7を固定可能なステー受け22を備える。下部フレーム20bは、下部フレーム20bの上端を構成しシートバック4の中央を左右に延びる中間枠と、中央から下部にかけての左右両側を構成する枠、およびシートクッション2への接続部分(図示省略)を形成する。上部フレーム20aは、下部フレーム20bに対して、着座面側に回動可能となるように着座面寄りに回動中心を備えるヒンジ25で回動可能に連結されている。また、図示しないが、着座面と反対側の面寄りに、上部フレーム20aを回動させるための公知の駆動機構が設けられている。これは、例えば、上部フレームから下方に向かってのびるボルトと、このボルトに螺合する形状で、下部フレームの所定位置に固定されたナットと、ボルトをボルトの軸回りに回転させる駆動手段とを備える公知の回転駆動機構とすることができる。
【0010】
フレーム20は、マッサージ部材12を弾性支持するための支持ばねを備える。本実施形態では、上部フレーム20aおよび下部フレーム20bのそれぞれに設けられている。上部フレーム20に設けられた支持ばね24aは、上部フレーム20aの下部中央に位置しており、上部フレーム20aの左右両側の枠に連結されている。また、下部フレーム20bに設けられた支持ばね24bは、下部フレーム20bの中央から下部にかけての範囲に位置しており、下部フレーム20bの左右両側の枠に連結されている。支持ばね24a,24bは、それぞれ、中央が着座面から後方、すなわち着座面と反対側に張り出して形成されており、着座面に近づく方向と離れる方向とに弾性的に移動可能である。支持ばね24a,24bの構造は特に限定されない。図2では、支持ばね24a,24bは、複数のワイヤが組み合わされて形成されており、ワイヤの移動および弾性変形によって弾性的に移動する。
【0011】
パッド26は、着座者をクッション感およびフィット感をもって受容する部材であり、着座面部分に所定の厚みを有すると共に、シートバック4の外形を形成可能な形状に形成されている。パッド26は、車両用のシートに使用される公知のパッド材料、例えば、軟質ウレタン等よりなる。図2に示すように、本実施形態のパッド26は、着座面側に複数の切れ込みが形成されて本体部30と上部31と2つの側部32,33とに区分されている。本体部30は、着座面の中央から下部を構成し、上部31は上部フレーム20aに対応する部分を、2つの側部はフレーム20の左右両端の枠に対応する部分をそれぞれ構成する。上部31の上面には、ヘッドレスト6のステー7を挿入可能な上下方向に延びる一対の孔35が設けられている。
【0012】
パッド26の上部31の下部、および本体部30の中央には、複数の穴37が形成されている。穴37は、パッド26の着座面から反対の面まで貫通している。穴37は、フレーム20の支持ばね24a,24bに対応する位置、すなわちマッサージ部材12が配される位置に設けられる。本実施形態では、穴37は、パッド26の縦中心から25〜30mm離れて左右対称に設けられており、上部31には一組、本体部30には上下方向に3組設けられている。各穴37は、内径60mmの略円形の断面を有しており、これらの中心は、パッド26の縦中心から50〜60mmの位置にある。
【0013】
カバー28は、パッド26の表面を被覆する布状部材で、図2に示すように、パッド26の外面に概ね沿う形状に形成されている。カバー28は、公知の構成でよく、例えば、種々の織布、編布、フィルム等より成る複数のパーツを縫合、溶着等によって結合一体化することで形成される。
【0014】
図2に示すように、フレーム20の支持ばね24a,24bに、マッサージ手段10のマッサージ部材12が取り付けられる。マッサージ部材12は、ガスを導入可能なホース41が連結され、ベースプレート43に取り付けられた状態で、ベースプレート43を介して支持ばね24a,24bに固定される。ベースプレート43は、各マッサージ部材12につき1つずつ設けても良いが、本実施形態では、上部フレーム20aに配置される1組のマッサージ部材12a,12bが取り付けられる上部ベースプレート43aと、下部フレーム20bに配置される3組のマッサージ部材12c,12d,12e,12f,12g,12hが取り付けられる下部ベースプレート43bとを有する。ベースプレート43は樹脂やファイバーボード、金属など公知の材料で形成される。ベースプレート43は、金具によるクランプやワイヤの巻き付けなど、公知の方法で支持ばね24a,24bに固定される。
【0015】
図2に示す本実施形態では、マッサージ手段10の一部として振動手段47を備える。振動手段47は、公知の振動発生装置、いわゆるバイブレータとすることができ、典型的には、電動式を用いる。振動手段47は、支持ばね24bにベースプレート43と同様の方法で固定可能な振動手段用ベースプレート48を介して固定される。これにより、振動手段47によって発生する振動を下部ベースプレート43bに固定される3組のマッサージ部材12に伝達可能になっている。
【0016】
シートバック4は、マッサージ部材12が取り付けられたベースプレート43および振動手段47が取り付けられた振動手段用ベースプレート48をフレーム20に固定し、パッド26およびカバー28をフレーム20に組みつけることで組み立てられる。
【0017】
次に、図3,4を参照して、マッサージ部材12の一実施例について説明する。マッサージ部材12は、ガスを収容する収容体50と、ホース41と収容体50とを連結する連結具60とを備える。収容体50は、少なくともガスの吸引および排出によって所定方向において伸縮し、且つこの伸縮方向に、それ自体が弾性変形可能に形成されている部材である。本実施形態では、底部50aおよび蓋部50bを有する円筒形の容器に形成されており、周面が蛇腹状に形成されている。周面の蛇腹構造により、収容体50は、円筒の軸線方向に弾性変形可能である。また、この蛇腹構造により、収容体50は、ガスが収容体50の内部に供給されることで円筒の軸線方向に伸長可能、且つ収容体50内のガスが排出されることで円筒の軸線方向に収縮可能に形成されている。
【0018】
図4に示すように、収容体50の底部50aから下方に突出して、開口部52と係止部54とが設けられている。開口部52は、収容体50の内部と連通する開口を備える部位である。本実施形態では、収容体50の底部50aから下方へ向かって径が小さくなる円錐台状部分と、円錐台状部分の下部から収容体50の半径方向外側に向かって延びる円管状部分とを有する形状に形成されている。開口部52は全体が中空に形成されている。開口部52の円錐台状部分は、外面に収容体50の底部50aに向かって放射状に延びる肉厚の補強部分を備える。
【0019】
係止部54は、収容体50の底部50aから下方に突出する中実の柱状部分と、柱状部分の下端に、柱状部分より大径の半球状に形成されたかさ部分とを備える。係止部54は、特に図示しないが、図2に示すベースプレート43に形成された穴に圧入されることでベースプレート43に係止する。この係止により、マッサージ部材12がベースプレート43に固定される。
【0020】
連結具60は、一端が収容体50の開口部52の開口に気密状態で連結され、他端が図2に示すホース41の開口に気密状態で連結される部材である。連結具の形状は、特に限定されず、種々の構成とすることができる。本実施形態では、連結具60は、収容体側直管部61と、収容体側直管部61の端部からほぼ垂直に延びる起立管部63と、起立管部63の端部から起立管部63に対して垂直に延びるホース側直管部65とを備える。収容体側直管部61は、図4に示すように収容体50の開口部52に連結されて収容体50より水平方向外側まで延びる長さに形成されている。また、図示しないが、収容体側直管部61の内部には、収容体50の開口部52に気密状態で取り付けできるように凹凸形状が付与されている。ホース側直管部65は、図3,4に示すようにホース41の開口に気密状態で取り付けられる凹凸形状をその外周面に備えている。また、ホース側直管部65は、起立管部63に対して起立管部63の軸線を中心に回転自在に設けられている。この連結具60は、収容体側直管部61が収容体50の開口部52に取り付けられた状態で起立管部63が収容体50の蓋部50b側に向かって延びるように取り付けられることが好ましい。このとき、図2に示すようにホース41をベースプレート43の着座面側に配して連結具60のホース側直管部65に連結することができる。また、ホース側直管部65が回転自在に設けられることで、ホース41の取り回しの自由度が向上されている。
【0021】
マッサージ部材12は、開口部52に連結具60が取り付けられ、連結具60にホース41が取り付けられ、さらに、図2に示すコネクタ45を介して、ホース41が図1に示すチューブ16に連結されて、駆動手段14に接続される。駆動手段14は、マッサージ部材12にガス、典型的にはエアを供給可能なポンプを有する。また、駆動手段14には、ポンプからマッサージ部材12へガスを導入可能、且つマッサージ部材12のガスを排出可能な弁、例えば三方弁と、ポンプおよび三方弁を制御する制御手段とを備える。各マッサージ部材12におけるガスの吸入、排出状態は、任意の方法で制御されれば良い。例えば、各マッサージ部材12ごとに独立して制御されても良いし、左右一組ずつを一括して制御し、上下方向については個別に制御可能とされても良い。
【0022】
ここで、マッサージ部材12の着座面側の端部、すなわち、本実施形態では収容体50の蓋部50bは、パッド26の穴37の着座面における内径に沿う形状に形成されていることが好ましい。この場合、マッサージ部材12とパッド26との間の隙間を小さくでき、着座者の隙間による違和感を抑制できる。また、マッサージ部材12の着座面側の端部をより大きく形成することができ、マッサージ部材12が尖った感触を乗員に与えることを良好に抑制できる。なお、マッサージ部材12およびパッド26の穴37の形状は特に限定されず、穴37の断面形状とマッサージ部材12の着座面側の端部の形状は、必ずしも一致しない。例えば、穴37を円形にした場合、マッサージ部材12は、5角形、六角形などの多角形に形成したり、星型や、波線部分を備える形状に形成したりすることができる。また、逆、すなわち、多角形や波線部分を含む他の穴37の内部に、この穴37の形状の内接円に相当する大きさのマッサージ部材12を設けても良い。本実施形態のマッサージ部材12の着座面側の端部、すなわち蓋部50bは、図3〜5に示すように穴37の着座面側の形状にほぼ等しい外径を有する。
【0023】
すなわち、マッサージ部材12の着座面側の端部は、パッド26の穴37の着座面における断面積にほぼ等しい表面積を有することが好ましい。一例として、具体的には、穴37の断面積に対して90%以上100%以下の表面積を有する。すなわち、マッサージ部材12の着座面側の端部は、伸縮方向の投影図においてほぼ穴37の内径に沿う形状を有し、伸縮方向における凹凸が比較的小さい形状であることが好ましい。
【0024】
また、マッサージ部材12の着座面側の端部の大きさは、特に限定されないが、いわゆる手のひらマッサージにおける接触面に相当する大きさが好ましい。この大きさであると、着座時における違和感、特に先鋭感を解消できるとともに、有効なマッサージが可能である。具体的には、マッサージ部材12の着座面側の端部は、直径30mm以上の大きさであることが好ましく、直径40mm以上70mm以下の大きさがより好ましい。
【0025】
車両用シート1のシートバック4の自然状態におけるようすを図5に示す。シートバック4の着座面は、カバー28が張設されることで、滑らかな曲面を備える形状に形成されている。このとき、パッド26は、カバー28の張設によって収縮した他は、自然状態を維持している。また、マッサージ手段10のマッサージ部材12は、概ね自然状態でカバー28に接触するか、カバー28より後退して位置する。
【0026】
また、この車両用シート1に人間が着座した状態におけるシートバック4のようすを図6に示す。このとき、パッド26および各マッサージ部材12は、着座者の背中によって受ける圧力に合わせて変形する。パッド26の着座面とマッサージ部材12の蓋部の最突出面とは、着座者の背面に沿う同一面上に存在している。パッド26と同様にマッサージ部材12が弾性変形することにより、マッサージ部材12の着座者の背部への当たりを和らげることができ、違和感が生じにくい。特に、マッサージ部材12の弾性変形能がパッド26に近似していると、違和感を少なく、あるいは解消できる。なお、図6では、上部フレーム20aに取り付けられたマッサージ部材12及びその周辺に、着座者の身体が接していないため、マッサージ部材12は、自然状態を維持している。
【0027】
この状態で、マッサージ手段10を作動させることにより、着座者の背部をマッサージすることができる。駆動手段14および制御手段によってマッサージ部材12にガスを供給することで、例えば、図6に想像線で示すようにマッサージ部材12を伸長させることができる。この伸長圧力によって、着座者の背部を押圧することができる。また、制御手段によってマッサージ部材12中のガスを排出させることにより、マッサージ部材12を収縮させて、伸長時より低い押圧にしたり、着座者の背部から離間させたりすることができる。ガスの吸排出をくり返すことで、押圧状態と非押圧状態とをくり返すことができ、マッサージすることができる。また、振動手段47を作動させることにより、下部ベースプレート24bを介して3組のマッサージ部材12c〜12hを振動させることができる。振動手段47が作動しているときは、マッサージ部材12c〜12hを着座者の背部に押し当てることで、押圧に加えて振動をも付与したマッサージができる。
【0028】
この車両用シート1では、マッサージ手段10の着座者を押圧する部分が着座者の体重による加圧によって弾性変形し、マッサージ時には、パッド26を介さず着座者の背部に作用する。したがって、着座状態における違和感が軽減されるにもかかわらず、マッサージ時の効果はより高く保たれている。また、マッサージ部材12の着座面側の端部、すなわち蓋部50bがパッド26の穴37の着座面側の内径にほぼ等しい形状を有し、蓋部50bが直径30mm以上の大きさに形成されることにより、マッサージ部材12の尖った感触が軽減されており、違和感がより良好に軽減されている。一方、蓋部50bの大きさが人間が手のひらマッサージするときの押圧面に近い大きさ、形状を有するため、マッサージ時には、マッサージとして機能的な押圧を提供できる。
【0029】
特に、本実施形態のマッサージ部材12は、図4に示すように、着座面側の端部、すなわち蓋部50bは、ほぼ円板に形成されており、自然状態(図4の中央の状態)ではその周縁がテーパになって少し後退している。そして、弾性変形、あるいはガスの排出によって収縮した状態(図4の右側の状態)では、テーパ部分の頂面に対する傾斜がより小さくなってほぼ平面になる。したがって、マッサージ部材12が加圧、すなわち着座者に押し当てられた状態では、マッサージ部材12の端部の面積はより大きくなり、違和感が軽減されている。一方、ガスの吸入によって伸長した状態(図4の左側の状態)では、テーパ部分の頂面に対する傾斜角が大きくなり、マッサージ部材12はより滑らかな弧を描いて着座面より突出する。したがって、マッサージ機能を利用した際にマッサージ部材12の端縁が尖り出ることが抑制されており、マッサージ部材12が着座者に食い込むことが回避されるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態の車両用シート1は、適宜、図7に示すようにシートバック4を後方にリクライニングさせたり、図8に示すようにリクライニングの上、中折れさせたりした状態にすることができる。これらの状態においても、マッサージ部材12によって着座者のマッサージをすることが可能である。シートバック4のリクライニングや中折れにより、図6に示す状態のときとは、異なる部分にマッサージ部材12を押し当てることができ、所望のマッサージを得ることができる。特に、図8に示す中折れ状態では、上部のマッサージ部材12を着座者の肩に被さるように位置させることができ、肩部のマッサージを効率よく行える。
【0031】
本発明に係る車両用シートは、上記実施形態に限定されない。車両用シートは、助手席用シートや、中間席用シートの他、後部座席用のシート、あるいは、運転席用シートであっても良い。また、中折れしないタイプのシートであっても良いことはもちろんである。
【0032】
マッサージ手段におけるマッサージ部材は、着座面の所望の位置に所望の数だけ設けることができる。好ましくは、本実施形態のように。シートバックの縦中心線に対して左右対称となるように設ける。また、マッサージ部材は、上記実施形態では、各押圧部分につき1つずつ設けられていたが、マッサージ部材を2ヶ所以上の部分で着座面とその反対方向に向かって伸縮可能な部分を設けることにより、1つのマッサージ部材で複数の押圧部分を形成してもよい。この場合、各押圧部分の着座面側の端部が、上述の条件を満たすことが好ましい。
【0033】
マッサージ部材の構成は、上記実施形態に限定されず、種々の構成とすることができる。例えば、マッサージ部材をシリンダとシリンダ内を移動するピストンと、シリンダとピストンとの間に設けられる弾性部材、例えば、コイルばねやゴムボールとで構成することができる。この構成では、弾性部材によってシリンダに対してピストンが弾性移動可能に設けられる。また、シリンダとピストンとの間、あるいは、ゴムボールの内部にガスを吸入、排出可能に形成して、ガス圧でピストンを移動させることで伸縮可能な構成とすることができる。あるいは、マッサージ部材を着座面側に位置するガス袋とガス袋を着座面と反対側から指示するコイルばね、いたばね、ゴムなどの弾性部材とで構成することもできる。この場合、弾性部材によって弾性変形可能に形成されるとともに、ガス袋がガスを吸引、排出することで、着座面に向かって伸縮可能とされる。いずれの構成においても、本発明における好ましいマッサージ部材の構成は、弾性変形部分と、ガスの吸引排出によって伸縮する部分とが同じである構成である。この構成では、ガスの排出、すなわちマッサージ部材中に負圧を作ることによって、マッサージ部材を弾性変形における圧縮状態よりもさらに収縮させることが可能である。したがって、マッサージ時に、着座者の背部を押圧する状態と押圧しない状態とを形成することができ、より効果的なマッサージが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車両用シートの一実施の形態の概略図である。
【図2】図1の車両用シートのシートバックの分解斜視図である。
【図3】図1の車両用シートのマッサージ部材の斜視図である。
【図4】図3のマッサージ部材の通常の状態、伸長状態および収縮状態を示す平面図である。
【図5】図1の車両用シートのシートバック部分の側断面図である。
【図6】図1の車両用シートに乗員が着座した時のシートバックの縦断面図である。
【図7】図1の車両用シートのシートバックをリクライニングさせたときのシートバックの縦断面図である。
【図8】図1の車両用シートのシートバックをリクライニングさせ、さらに中折れさせたときのシートバックの縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用シート
2 シートクッション
4 シートバック
6 ヘッドレスト
7 ステー
10 マッサージ手段
12,12a,12b,12c,12d,12e,12f マッサージ部材
14 駆動手段
16 チューブ
20 フレーム
20a 上部フレーム
22 ステー受け
20b 下部フレーム
24a,24b 支持ばね
25 ヒンジ
26 パッド
28 カバー
30 本体部
31 上部
32,33 側部
35 孔
37 穴
41 ホース
43a,43b ベースプレート
45 コネクタ
47 振動手段
48 振動手段用ベースプレート
50 収容体
50a 底部
50b 蓋部
52 開口部
54 係止部
60 連結具
61 収容体側直管部
63 起立管部
65 ホース側直管部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、着座面全体を構成するパッドと、マッサージ手段とを備えるシートバックを有する車両用シートであって、
前記パッドには、着座面からその反対側の面まで貫通する少なくとも1つの穴が形成され、
前記マッサージ手段は、ガスの吸入及び排出によって伸縮可能に形成されるとともに当該伸縮方向において弾性変形可能なマッサージ部材を備え、
前記マッサージ部材は、前記穴内を穴の貫通方向に沿って伸縮および弾性変形するように配置されることを特徴とする、車両用シート。
【請求項2】
前記マッサージ部材は、前記伸縮方向に連続する蛇腹構造を有し、この蛇腹構造によって弾性変形可能に形成されている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記マッサージ部材の着座面側の端部は、前記パッドの穴の着座面における内径に沿う形状に形成されている、請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記マッサージ部材の着座面側の最突出部は、直径30mmの円以上の大きさを有する平面に形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−198070(P2006−198070A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11443(P2005−11443)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】