説明

車両用シート

【課題】車両用シートに内装された空調装置の配設構成と支持基台の使われていない空間を利用して他の機能を備えることによって、乗員に対して複数の利便性を提供すること。
【解決手段】シートクッション20と、このシートクッション20を支持する支持面が車体フロアFから離間した高さ位置で支持する支持基台40を有する車両用シートであって、支持基台40は空気を吹出すことのできる送風機50が内装されており、送風機50の吹出し空気Kは支持基台40に構成された配風経路を通じてシートクッション20の内方側から座面部21に向かって吹出し可能に構成されており、更に支持基台40には収容空間部が形成されており収容空間部には送風機50の吹出し空気Kが導入されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、車両に設置される車両用シートのシート内部に空調装置が内装されており、シート内部から座面部に向かって暖かい又は涼しい空気を送り出すことによって着座者に快適な温度環境を提供する車両用シートが知られている。また、着座者の座面となるシートクッションを支持する支持面が車体フロアから離間した高さ位置で支持する支持基台を有する車両用シートが知られており、この支持基台に空調装置が内装されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−69376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した車両用シートは、着座者に快適な温度環境を提供するのみであり、他の用途としては活用されていない。また、支持基台のシートクッションを支持する支持面と車体フロア間には空調装置が設けられているのみであり、この支持基台の空間が有効に活用されていないという更なる改善点を有していた。
そこで、本発明者は鋭意検討の結果、従来の空調装置の配設構成と支持基台の使われていない空間を利用することができれば、他の機能を備えることができ乗員に対して複数の利便性を提供できる。また、車室内空間の有効利用を図ることができる。また、乗員が着座していないシートの空調装置を有効利用することができることに着目した。
【0005】
而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートに内装された空調装置の配設構成と支持基台の使われていない空間を利用して他の機能を備えることによって、乗員に対して複数の利便性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、着座者の座面となるシートクッションを有しており、該シートクッションを支持する支持面が車体フロアから離間した高さ位置で支持する支持基台を有する車両用シートであって、前記支持基台は空気を吹出すことのできる送風機が内装されており、前記送風機の吹出し空気は前記支持基台に構成された配風経路を通じてシートクッションの内方側から座面部に向かって吹出し可能に構成されており、更に、前記支持基台には収容空間部が形成されており、前記収容空間部には、前記送風機の吹出し空気が導入されるようになっていることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によれば、収容空間部には、送風機の吹出し空気が導入される構成となっている。そのため、収容空間部は吹出し空気の温度によって温度調整可能な空間とすることができる。また、着座者に快適な温度環境を提供するという機能を損なうことなく、収容空間部に温度調整機能を備えることができ乗員に対して複数の利便性を提供できる。また、車室内空間の有効利用を図ることができる。また、乗員が着座していないシートの空調装置を有効利用することができる。
【0008】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、前記支持基台に形成される収容空間部は箱体で形成されており、該箱体は前記支持基台から取り外し可能に設置されていることを特徴とする。
【0009】
この第2の発明によれば、収容空間部は箱体で形成されており、この箱体は支持基台から取り外し可能な構成である。これにより、例えば、この箱体の収容空間部をシートに内装できない大きさに形成して接続することができ、収容能力を向上させることができる。また、収容空間部は支持基台の配風経路に取り外し可能であると共に、接続状態を延長することができる構成である場合には、車両用シート外にも設置することができ更に利便性を向上することができる。
【0010】
次に、第3の発明は、上述した第1の発明又は第2の発明のいずれかにおいて、前記配風経路には、前記吹出し空気を加熱又は冷却する熱交換器を有していることを特徴とする。
【0011】
この第3の発明によれば、配風経路には、吹出し空気を加熱又は冷却する熱交換器を有している。そのため、この熱交換器で吹出し空気を加熱又は冷却することによって着座者に、より一層快適な温度環境を提供することができる。例えば、車両用シートの支持基台に内装される場合には、温冷庫、温冷カップフォルダー、などの機能に適用できるものである。また、車両用シート外に設置する場合には、クーラーボックスとして適用できるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記各発明の手段をとることにより次の効果を得ることができる。
先ず、上記第1の発明の車両用シートによれば、収容空間部には、送風機の吹出し空気が導入される構成となっている。そのため、収容空間部は吹出し空気の温度によって温度調整可能な空間とすることができる。また、着座者に快適な温度環境を提供するという機能を損なうことなく、収容空間部に温度調整機能を備えることができ乗員に対して複数の利便性を提供できる。また、車室内空間の有効利用を図ることができる。また、乗員が着座していないシートの空調装置を有効利用することができる。
【0013】
次に、上記第2の発明の車両用シートによれば、収容空間部は箱体で形成されており、この箱体は支持基台から取り外し可能な構成である。これにより、例えば、この箱体の収容空間部をシートに内装できない大きさに形成して接続することができ、収容能力を向上させることができる。
【0014】
次に、上記第3の発明の車両用シートによれば、配風経路には、吹出し空気を加熱又は冷却する熱交換器を有している。そのため、この熱交換器で吹出し空気を加熱又は冷却することによって着座者に、より一層快適な温度環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係る車両用シートの全体構成を示した斜視図である。(A)図は、着座者が着座する着座姿勢状態位置の状態を示した斜視図である。(B)図は、シートクッションが支持基台に対して車両前方に向けて起立した起立姿勢状態位置の状態を示した斜視図である。
【図2】図1の矢視II-II線の断面図である。
【図3】実施例2に係る車両用シートの全体構成を示した斜視図である。
【図4】図3の矢視IV-IV線の断面図である。
【図5】実施例2に係る車両用シートにおける変形例の概略構成を示した断面図である。
【図6】実施例3に係る車両用シートの概略構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
始めに、実施例1の車両用シート10の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、実施例1に係る車両用シート10の全体構成を示した斜視図である。なお、(A)図は、着座者が着座する着座姿勢状態位置20aの状態を示した斜視図である。(B)図は、シートクッション20が支持基台40に対して車両前方に向けて起立した起立姿勢状態位置20bの状態を示した斜視図である。また、図2は、図1の矢視II-II線の断面図である。
この本実施例1の車両用シート10は、シートクッション20の下部に構成される支持基台40に内装された送風機50から吹出される吹出し空気Kによって着座者に快適な温度環境を提供する機能と共に、この支持基台40に構成される収容空間部に温度調整機能を備えることで乗員に対して複数の利便性を提供できるものである。
そのため、支持基台40に内装された送風機50の配設構成及びこの支持基台40に構成される収容空間部の構成に特徴点を有している。これに伴い、この実施例1の車両用シート10の構成を説明する図1及び図2においては、ヘッドレスト70、シートクッション20、シートバック30の骨格や細部の詳細構成等については、構成要素を簡素化して示し、且つ一部の構成を省略して図示している。なお、各図において、矢印で示すFWD、UPRは車両用シート10の前方、上方を示している。
【0018】
本実施例の車両用シート10は、車両の1列目の運転席、助手席、2列目、3列目等の後部座席のいずれの車両用シートにも採用できるものである。なお、本実施例1の車両用シート10は、車両の2列目の後部座席の構成を示したものである。先ず、この車両用シート10の全体構成の概略を説明し、その上で各構成の詳細について説明をする。
図1の(A)図に図示されるように、車両用シート10は2列目としての後部座席が構成されている。この2列目の車両用シート10は、主に着座者の着座部となるシートクッション20と、着座者の背凭れとなるシートバック30と、着座者の頭もたれとなるヘッドレスト70と、シートクッション20を支持する支持面が車体フロアFから離間した高さ位置で支持する支持基台40から構成されている。
【0019】
図2に図示されるように、車両用シート10の支持基台40には、空気を吹出すことのできる送風機50が内装されている。この送風機50の吹出し空気Kは、支持基台40に構成された配風経路51を通じてシートクッション20へ配風される。支持基台40からシートクッション20へ配風された吹出し空気Kは、シートクッション20のパッド部材26に形成された配風凹部27aに配風され、シートクッション20の背面側を面内方向に配風されて座面部21に形成された吹出孔27bから吹出されることにより、シートクッション20の内方側から座面部21に向かって吹出し可能な構成とされている。
【0020】
また、前記支持基台40に構成された配風経路51中には物を収容する収容空間部としての温冷庫44が形成されている。この温冷庫44には、上記した送風機50の吹出し空気Kが導入されることにより温度調整機能を備えている。また、配風経路51には、吹出し空気Kを加熱又は冷却するための熱交換器60を有している。これにより、加熱又は冷却された吹出し空気Kによって着座した着座者に対し快適な温度環境を与えることができる構成となっている。これに加え上記収容空間部は、加熱又は冷却された吹出し空気Kが導入されるため温度調整機能を更に向上させている。
なお、本実施例1においては、この収容空間部が温冷庫44として構成されたものである。この本実施例1に係る車両用シート10の各構成について説明する。
【0021】
シートクッション20について説明する。
図1及び図2に図示されるように、シートクッション20は、着座者の座面として構成されているものである。このシートクッション20は、概略、クッションフレーム、リンク部材24、パッド部材26、表皮カバー29から構成されている。
図示は省略されているが、クッションフレーム(図示省略)は、シートクッション20の骨格として構成されるものであり、金属製の板状部材が適宜に折曲加工されて四角枠状に形成されている。また、シートクッション20の下面部を支持するため下面支持フレーム(図示省略)が金属製の板状部材、又は金属パイプのワイヤフレーム等、選択されシートクッション20の下面部の形状に合わせて適宜折り曲げ形成されて構成されている。
【0022】
リンク部材24について説明する。
図2に図示されるように、リンク部材24は、シートクッション20について、着座する着座姿勢状態位置20aと、支持基台40に対して車両前方に向けて起立した起立姿勢状態位置20bに開閉可能な構成とするためのものである。そして、起立姿勢状態位置に位置するときに、後述する支持基台40の収容空間部として構成される温冷庫44へ物を収容可能な構成とするためのものである。
このリンク部材24は、金属製の棒状部材が適宜に折曲形成されて形成されており、一端側がクッションフレームの側部であって車両前方側には車両幅方向に一対に回動可能に軸支されており、他端側が後述する支持基台40に回転可能に軸支されている。また、このリンク部材24は、2本構成でシートクッション20の幅方向に所定の間隔で平行に軸支されている。
【0023】
次に、パッド部材26について説明する。
図2に図示されるように、このパッド部材26は、ポリウレタン樹脂を発泡成形させて形成されており、シートクッション20に着座した着座者の着座荷重を、それ自体の弾性変形によって軟らかく受け止められるようになっている。そして、このパッド部材26の裏面部、すなわち、着座者の着座荷重を受け止める表面部である座面部21とは反対側の背裏面部には、送風機50から送り込まれた下方側からの吹出し空気Kを面内方向に配風するための通路となる配風凹部27aが凹み形成されている。
【0024】
この配風凹部27aは、後述する支持基台40に設けられた収容空間部としての温冷庫44からの吹出し空気Kが導入される空間である。この配風凹部27aは、温冷庫44の開口部を囲むように形成されており、温冷庫44からの吹出し空気Kがパッド部材26の背面部から外へ漏れ出ないように密閉構造となっている。温冷庫44からの吹出し空気Kが裏面部の面内方向の方々に向かって配風される。そして、上記した配風凹部27aの方々へ延出した位置には、それぞれ、パッド部材26の座面部21側へと貫通する吹出孔27bが形成されている。
これにより、上記した配風凹部27aへ導入された吹出し空気Kは、パッド部材26の裏面部の面内方向の方々へと配風されて、各吹出孔27bからパッド部材26の座面部21側へと送られて、着座者の臀部、大腿部等の広い範囲に分散されて吹き当てられるようになっている。なお、上記したパッド部材26には、その外周面全体に布製の表皮カバー29が被せ付けられるようになっている。この表皮カバー29は、通気性のある布素材によって形成されており、吹出孔27bから吹出された吹出し空気Kを通気可能となっている。
【0025】
支持基台40について説明する。
図1及び図2に図示されるように、この支持基台40は、車体フロアF上に配設されて着座者の座面となるシートクッション20を支持すると共に、背凭れとなるシートバック30をリクライニング機構を介して連結支持するものである。
この支持基台40は、合成樹脂を射出成形することによって箱型形状に形成されている。この支持基台40は、シートクッション20、シートバック30、ヘッドレスト70等の車両用シート10の各構成品の荷重を支持すると共に、着座者の着座荷重を支持するための剛性を有する必要がある。そのため図示を省略しているが箱型形状の内方側には金属製の板状部材が折り曲げ形成された脚部を有しており支持基台40と剛結合されるとともに、車体フロアF側に剛結合されている。
【0026】
この支持基台40の支持基台上面部42は、シートクッション20を支持する支持面として構成されている。これにより、着座者の座面となるシートクッション20を支持する支持面が車体フロアFから離間した高さ位置で支持する構成となって、着座者の着座荷重を支持する構成となっている。
また、支持基台40の支持基台上面部42の略中央には、直方体状の凹部が形成されている。この直方体状の凹部が収容空間部としての温冷庫44として配風経路51中に構成されるものである。そして、収容空間部としての温冷庫44には吹出し空気Kが取り込まれて充満される構成となっている。また、この温冷庫44の上部には、スライドによって開閉可能とする蓋45が構成されている。なおこの蓋45は閉じられたときには、吹出し空気Kが外部に漏れない気密構造となっている。また、温冷庫44及び蓋45は、断熱を図るために、外方又は内方側に断熱素材が重ね合わせる構成であってもよい。
支持基台40の支持基台上面部42の車両前端部側には、リンク部材24を介してシートクッション20を連結するために、リンク部材連結部42aが車両幅方向に一対に構成されている。また、支持基台40の支持基台上面部42の車両後端部側は、シートバック30がリクライニング機構(図示省略)を連結支持するために、シートバック連結部42bが車両幅方向に一対に構成されている。
【0027】
次に送風機50について説明する。
この送風機50は、空気を吹出すことができる送風発生手段として構成されており、その吹出し空気Kを支持基台40に構成された配風経路51を通じてシートクッション20へ配風するために構成されたものである。図2に図示されるように、この送風機50は、大略、吸気する送風機としての遠心式送風機として遠心式ブロアが選択されている。この送風機50は、支持基台40の内方側、且つ収容空間部としての温冷庫44の下部側に適宜ブラケット等を介して固定保持されている。
【0028】
配風経路51について説明する。
この配風経路51は、送風機50の吹出し口から吹出された吹出し空気Kをシートクッション20内に配風するための経路である。本実施例1においては、ダクト52及び温冷庫44によって配風経路51が構成されている。ダクト52は、合成ゴム、合成樹脂等によって管状に形成されている。
また、この配風経路51の一構成であるダクト52内であって且つ収容空間部としての温冷庫44の上流側には、熱交換器60が設けられている。
【0029】
熱交換器60について説明する。
図2に図示されるように、この熱交換器60は、送風機50から吹出される吹出し空気Kを加熱又は冷却するものである。ここで、本実施例1の車両用シート10における熱交換器60には、熱電素子の一種であるペルチェ素子68が選択されている。ペルチェ素子68は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した板状の半導体素子である。このペルチェ素子68に直流電流を流すと、一方の面が吸熱し反対面に発熱が起こる。また、電流の極性を逆転させると吸熱、発熱の関係が反転する。本実施例1の熱交換器60は、この素子にヒートシンク66を取付けて吹出し空気Kを通気させることにより加熱又は冷却を行う構成のものである。
【0030】
図2に図示されるように、この熱交換器60は、送風機50の吹出し口と収容空間部としての温冷庫44の下面部に構成される吹出し空気導出口46の間に配設されたダクト52内に配設されている。その構成は、概略、仕切り壁62、第一熱交換流路64a、第二熱交換流路64b、ヒートシンク66、ペルチェ素子68、吹出し空気導入口63a、供給口63b、排出口63c、から構成されている。詳しくは、ダクト52内部が、仕切り壁62によって第一熱交換流路64aと第二熱交換流路64bの二つの流路に仕切られている。この仕切り壁62の中央部には、ヒートシンク66が吹出し空気Kが通気可能に配置されると共に、その両ヒートシンク66間にペルチェ素子68が配置されている。
吹出し空気導入口63aは、熱交換器60の上流側の入り口である。すなわち、送風機50の吹出し空気Kが導入される入り口として構成されている。供給口63b、排出口63cは、熱交換器60の下流側として構成されている。このうち、供給口63bは、吹出し空気Kが熱交換器60によって熱交換された後に吹出し空気導出口46を通じて、温冷庫44、配風凹部27aへ送風される側の出口として構成されている。これに対し、排出口63cは、吹出し空気Kが熱交換器60によって熱交換された後に排出される出口として構成されている。ペルチェ素子68は、その相反する熱交換面が両ヒートシンク66に接触接続され、両ヒートシンク66間、つまり、第一熱交換流路64aと第二熱交換流路64bの間において、ペルチェ素子68の通電方向に応じた熱交換を行うようになっている。なお、図示は省略されているが、送風機50とペルチェ素子68の通電電流は車両用シート10の外部に構成された外部コントローラによって制御される。
【0031】
上記構成からなる本実施例1における車両用シート10の作動は次の通りである。
図2に図示されるように、シートクッション20は、着座姿勢状態位置20aに位置しており、蓋45は、開放位置45bで吹出し空気Kがシートクッション20側へ配風可能な状態である。この状態において、先ず外部コントローラ(図示省略)によって、送風機50とペルチェ素子68を通電させる。
送風機50が作動して、送風機50から吹出される吹出し空気Kがダクト52を通じて、ダクト52内に備えられた熱交換器60に送風される。そして、熱交換器60に送風された吹出し空気Kは、熱交換器60の吹出し空気導入口63aから導入されて、第一熱交換流路64a及び第二熱交換流路64bへ共に導入される。そして、第一熱交換流路64aと第二熱交換流路64bの間において、ペルチェ素子68の通電方向に応じた熱交換が行われる。
そして、第一熱交換流路64aにおいてペルチェ素子68による熱交換が行われて加熱又は冷却された吹出し空気Kは、供給口63bからダクト52を通じて吹出し空気導出口46に導かれる。そして、吹出し空気Kは、収容空間部としての温冷庫44に取り込まれ充満されて加熱又は冷却する。また、吹出し空気Kは温冷庫44を通過して配風凹部27aを通って各吹出孔27bに送風される。これにより、ペルチェ素子68による熱交換が行われて加熱又は冷却された吹出し空気Kは、パッド部材26の座面部21側へと送られて、着座者の臀部、大腿部の広い範囲に分散されて吹き当てられる。一方、第二熱交換流路64bにおいてペルチェ素子68による熱交換を行った吹出し空気Kは排出口63cから熱交換器60の外部に排出し、シートクッション20の外部に排出される。
図1の(B)図に図示されるように、温冷庫44の収容物を取る場合には、シートクッション20を起立姿勢状態位置20bに移動させて取ることができる。このとき、温冷庫の蓋45を閉鎖位置45aにすることで温冷庫44内の熱効率を高めることができる。
以上より、車両用シート10に着座した着座者は、上気したペルチェ素子68による熱交換が行われて加熱又は冷却された吹出された吹出し空気Kによって快適な温度環境を得る。また、これと共に支持基台40に構成される収容空間部としての温冷庫44を備えることができるため乗員に対して複数の利便性を提供できる。
【0032】
このように、本実施例1の車両用シート10によれば、収容空間部としての温冷庫44には、送風機50の吹出し空気Kが導入される構成となっている。そして、収容空間部としての温冷庫44には吹出し空気Kが取り込まれて充満される。そのため、収容空間部は吹出し空気Kの温度によって温度調整可能な空間とすることができる。また、着座者に快適な温度環境を提供するという機能を損なうことなく、収容空間部としての温冷庫44に温度調整機能を備えることができ乗員に対して複数の利便性を提供できる。また、車室内空間の有効利用を図ることができる。また、乗員が着座していないシートの空調装置を有効利用することができる。
また、配風経路51の一構成であるダクト52には、吹出し空気Kを加熱又は冷却する熱交換器60を有している。そのため、この熱交換器60で吹出し空気Kを加熱又は冷却することによって着座者に、より一層快適な温度環境を提供することができるとともに収容空間部として温冷庫44を備えることができる。
【実施例2】
【0033】
次に、実施例2の車両用シート100の構成について、図3から図5を用いて説明する。
図3は、本実施例2に係る車両用シート100の概略構成を示した斜視図である。図4は、図3の矢視IV-IV線の断面図である。なお、実施例2では、実施例1の車両用シート10と実質的に同様の構成及び作用を奏する箇所については同一の符号を付して説明を省略し、相違する箇所について詳しく説明をする。
図3に図示されるように、実施例2は、実施例1で示した車両用シート10の各構成は同一であるが、収容空間部としての温冷庫44の構成に変えて温冷カップフォルダー144の構成を有している点について異なるものである。
【0034】
図4に図示されるように、実施例2は、配風経路51の構成のうち、実施例1に構成されるダクト52と配風凹部27aの間に形成された温冷庫44は形成されていない。本実施例2においては、ダクト52が分岐された構成となっており、配風凹部27aに接続される経路と、温冷カップフォルダー144に接続される経路が構成されている。
温冷カップフォルダー144は、合成樹脂で筒状に形成されており上方から飲料容器を挿入可能な開口部を有している。また、ダクト52の端部が接続される開口部を有しており、飲料容器に吹出し空気Kを吹きつけることによって、飲料容器を温めたり、冷やしたりすることができる構成となっている。
また、熱交換器60の構成される位置は、配風凹部27aに接続される経路、及び温冷カップフォルダー144に接続される経路の両経路の上流側に構成されている。
また、図5に図示されるように、温冷カップフォルダー144へ吹出し空気Kを配風する構成に加えて、シートクッション20へのみに空気を送風する送風機50、熱交換器60、ダクト52の構成を追加してもよい。
【0035】
上記構成からなる実施例2における車両用シート100の作動は、実施例1で示した作動と同様である。
このように、本実施例2の車両用シート10によれば、収容空間部としての温冷カップフォルダー144に送風機50の吹出し空気Kが導入される構成となっている。そのため、温冷カップフォルダー144は吹出し空気Kの温度によって温度調整可能な空間とすることができる。また、着座者に快適な温度環境を提供するという機能を損なうことなく、収容空間部としての温冷カップフォルダー144に温度調整機能を備えることができ乗員に対して複数の利便性を提供できる。また、車室内空間の有効利用を図ることができる。また、乗員が着座していないシートの空調装置を有効利用することができる。
また、配風経路51の一構成であるダクト52には、吹出し空気Kを加熱又は冷却する熱交換器60を有している。そのため、この熱交換器60で吹出し空気Kを加熱又は冷却することによって着座者に、より一層快適な温度環境を提供することができるとともに収容空間部として温冷カップフォルダー144を備えることができる。
【実施例3】
【0036】
次に、実施例3の車両用シート200の構成について、図6を用いて説明する。
図6は、本実施例3に係る車両用シート200の概略構成を示した断面図である。なお、実施例3では、実施例1の車両用シート10と実質的に同様の構成及び作用を奏する箇所については同一の符号を付して説明を省略し、相違する箇所について詳しく説明をする。図6に図示されるように、実施例3は、実施例1で示した車両用シート10の各構成は同一であるが収容空間部として温冷庫44が常時支持基台40に備えられた構成に更に、外付け温冷庫244の構成を追加する点について異なるものである。
なお、温冷庫44が常時支持基台40に備えられた構成に変えて、支持基台40から取り外し可能な外付け温冷庫244の構成を有しているものでもよい。
【0037】
すなわち、実施例3は、配風経路51の構成のうち、実施例1に構成されるダクト52と配風凹部27aの間に形成された温冷庫44の吹出し空気導出口46に温冷庫44よりも容量の大きい収容空間として形成された外付け温冷庫244が取り外し可能に構成されたものである。この外付け温冷庫244は、合成樹脂、金属等が適宜選択されて、開閉可能な蓋を備えた箱体に形成されている。なお、外気との断熱を図るために、外方又は内方側に断熱素材が重ね合わせる構成であってもよい。
この外付け温冷庫244は、シートクッション20を支持基台40に対して車両前方に向けて起立した起立姿勢状態位置20bに移動して、外付け温冷庫244の一面に形成されたダクト接続口246に配風経路51として構成されるダクト52を接続することで吹出し空気Kを導入する構成となっている。
なお、外付け温冷庫244は、支持基台40上に載置する構成のほかに、配風経路51との接続状態を延長することで車両用シート200の外において載置することもできる。
【0038】
なお、上記構成からなる実施例3における車両用シート200の作動は、実施例1で示した作動と同様である。
このように、本実施例3の車両用シート200によれば、収容空間部としての外付け温冷庫244に送風機50の吹出し空気Kが導入される構成となっている。そのため、外付け温冷庫244は吹出し空気Kの温度によって温度調整可能な空間とすることができる。
【0039】
また、外付け温冷庫244は、支持基台40から取り外し可能な構成である。これにより、車両用シート200に内装できない大きさの収容空間部を接続することができ、収容能力を向上させることができる。また、外付け温冷庫244は支持基台40の配風経路51に取り外し可能であると共に、接続状態を延長することができる構成である場合には、車両用シート200の外にも設置することができ更に利便性を向上することができる。また、乗員が着座していないシートの空調装置を有効利用することができる。
【0040】
また、配風経路51の一構成であるダクト52には、吹出し空気Kを加熱又は冷却する熱交換器60を有している。そのため、乗員が着座者が着座する場合には、熱交換器60で吹出し空気Kを加熱又は冷却することによって着座者に、より一層快適な温度環境を提供することができる。また、乗員が着座していない場合には収容空間部として外付け温冷庫244を備えることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を3つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、本実施例においては、車両用シート10、100、200のシートクッション20は開閉可能なする構成について示した。しかしながら、これに限定されるものでなく、シートクッション20を脱着する構成であってもよい。
【0042】
また、本実施例においては、熱交換器60を有する構成について示した。しかしながら、これに限定されるものでなく、熱交換器を有さない構成であってもよい。
また、本実施例においては、熱交換器60にはペルチェ素子68が構成されるものについて示した。しかしながら、これに限定されることなく、熱交換器は、ペルチェ素子以外の種々の熱交換器を選択し適用できるものである。
【0043】
また、本実施例においては、送風機50は、吸気する送風機としての遠心式送風機として遠心式ブロアが選択された構成について示した。しかしながら、これに限定されるものでなく、適宜の多翼が設けられた遠心式ファンあるいはシロッコファン、さらには遠心式のものに限定されることなく、軸流ファンあるいは軸流ブロワが選択される構成であってもよい。
【0044】
また、本実施例においては、熱交換器60の第二熱交換流路64bにおいてペルチェ素子68による熱交換を行った吹出し空気Kは排出口63cから熱交換器60の外部に排出し、シートクッション20の外部に排出される構成について示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、熱交換後を行って排出される吹出し空気Kを有効利用する物であってもよい。
例えば、この熱交換後の吹出し空気を車室内の空調として利用することもできる。また、支持基台40内に更に別の温冷庫を設けて排出口63cから吹出される吹出し空気をダクトを介して導入する構成のものでもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用シート
20 シートクッション
20a 着座姿勢状態位置
20b 起立姿勢状態位置
21 座面部
24 リンク部材
26 パッド部材
27a 配風凹部
27b 吹出孔
29 表皮カバー
30 シートバック
40 支持基台
42 支持基台上面部
42a リンク部材連結部
42b シートバック連結部
44 温冷庫
45 蓋
45a 閉鎖位置
45b 開放位置
46 吹出し空気導出口
50 送風機
51 配風経路
52 ダクト
60 熱交換器
62 仕切り壁
63a 吹出し空気導入口
63b 供給口
63c 排出口
64a 第一熱交換流路
64b 第二熱交換流路
66 ヒートシンク
68 ペルチェ素子
70 ヘッドレスト
100 車両用シート
144 温冷カップフォルダー
200 車両用シート
244 外付け温冷庫
246 ダクト接続口
F 車体フロア
K 吹出し空気
FWD 車両前方
UPR 車両上方


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の座面となるシートクッションを有しており、該シートクッションを支持する支持面が車体フロアから離間した高さ位置で支持する支持基台を有する車両用シートであって、
前記支持基台は空気を吹出すことのできる送風機が内装されており、前記送風機の吹出し空気は前記支持基台に構成された配風経路を通じてシートクッションの内方側から座面部に向かって吹出し可能に構成されており、更に、前記支持基台には収容空間部が形成されており、
前記収容空間部には、前記送風機の吹出し空気が導入されるようになっていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記支持基台に形成される収容空間部は箱体で形成されており、該箱体は前記支持基台から取り外し可能に設置されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記配風経路には、前記吹出し空気を加熱又は冷却する熱交換器を有していることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−240045(P2010−240045A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89863(P2009−89863)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】