説明

車両用シート

【課題】パイプブッシュの上下方向に沿ってパイプブッシュの嵌込片の縁と嵌込凹部の縁とを容易に当接させることができる車両用シートを得る。
【解決手段】パイプブッシュ62の嵌込片64、84に嵌込片側潰し箇所102、112を設定し、これらの嵌込片64、84が嵌め込まれる嵌込凹部74、94の縁の外側で凹部側潰し箇所104、114を設定し、これらの嵌込片側潰し箇所102、112及び凹部側潰し箇所104、114にてパイプブッシュ62をその厚さ方向に潰す。これにより、嵌込片64、84と嵌込凹部74、84の縁部が上下に隙間なく互いに接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に開示された構成では、ヘッドレストサポートが挿し込まれる金属筒体は、金属平板を断面矩形の筒形状に屈曲又は湾曲させ、その周方向一端に形成された凹部に周方向他端から延出された凸部を嵌め込み、周方向他端に形成された凹部に周方向一端から延出された凸部を嵌め込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3740674号の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の金属筒体は凹部に凸部を嵌め込んだ状態で、凹部の縁と凸部の縁とを跨ぐように潰し加工等が施されて、凹部の縁と凸部の縁とを密着させている。
【0005】
しかしながら、このような凹部の縁と凸部の縁とを跨ぐ潰し加工は、潰し加工の位置の設定が難しく、潰し加工の位置がずれると凹部の縁又は凸部の縁を十分に延ばすことができず、凹部の縁と凸部の縁とを密着させることができない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、パイプブッシュの上下方向に沿ってパイプブッシュの嵌込片の縁と嵌込凹部の縁とを容易に当接させることができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両シートは、枠状又はシート下方へ向けて開口した凹形状のシートバックフレームと、前記シートバックフレームの上方に設けられたヘッドレストから下方へ延出された棒状又は筒状の挿込部が挿し込まれる筒状のヘッドレストサポートと、前記シートバックフレームの前側で前記シートバックフレームの状態に接合されると共に、周方向端部にて開口するように周方向両端の各々に形成された嵌込凹部に対して周方向に対向するように前記周方向両端部から延出された嵌込片が前記嵌込凹部に嵌め込まれることによって前記ヘッドレストサポートを軸方向上端から挿込可能な筒状に形成されて、少なくとも1つの前記嵌込片における前記軸方向端部側に設定された嵌込片側潰し箇所にて前記嵌込片が厚さ方向に潰されると共に、前記嵌込片側潰し箇所よりも前記軸方向端部側における前記嵌込凹部の外側に設定されて前記嵌込片側潰し箇所と対を成す凹部側潰し箇所で前記嵌込凹部の外側が厚さ方向に潰されたパイプブッシュと、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車両用シートでは、シートクッションの後側に設けられるシートバックのシートバックフレームが枠状又はシート下方へ向けて開口した凹形状に形成される。このシートバックフレームの上端には筒形状のパイプブッシュが接合されており、このパイプブッシュには筒状のヘッドレストサポートが挿し込まれて、更に、このヘッドレストサポートにシートバックフレームの上方に設けられたヘッドレストから下方へ向けて延出された挿込部が挿し込まれる。
【0009】
ところで、上記のパイプブッシュは、例えば、金属板材を筒状に屈曲又は湾曲させることで形成される。このパイプブッシュの周方向両端部からは嵌込片が延出されていると共に、パイプブッシュの周方向に沿って嵌込片に対向するようにパイプブッシュの周方向両端には嵌込凹部が形成され、この嵌込凹部に嵌込片が嵌め込まれる。
【0010】
嵌込凹部に嵌め込まれた嵌込片におけるパイプブッシュの軸方向端部側には嵌込片側潰し箇所が設定されており、この嵌込片側潰し箇所で嵌込片がその厚さ方向に潰される。これにより、嵌込片が更にパイプブッシュの軸方向に延びる。また、この嵌込片が嵌め込まれた嵌込凹部の外側で且つ嵌込片側潰し箇所に対してパイプブッシュの軸方向端部側には凹部側潰し箇所が設定されて、この凹部側潰し箇所でパイプブッシュがその厚さ方向に潰される。これにより、嵌合凹部の縁部が更にパイプブッシュの軸方向に延びる。
【0011】
このように、嵌込片側潰し箇所と凹部側潰し箇所とがそれぞれ潰されて塑性変形することによって、パイプブッシュの軸方向に嵌合片と嵌合凹部の縁部とが互いに接近して当接する。これによりパイプブッシュの軸方向に嵌込片と嵌込凹部との間の隙間をなくすことができる。しかも、嵌込片と嵌込凹部の外側部分とを個々に潰すので、嵌込片の外周部と嵌込凹部の縁部とを跨ぐように潰す構成に比べて各々の潰し箇所の位置精度は高くなくてもよく、潰し作業における作業効率がよい。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車両シートは、請求項1に記載の本発明において、前記嵌込片の延出方向に沿った前記嵌込片の基端側よりも先端側で、前記嵌込片における前記パイプブッシュの軸方向に沿った寸法が大きくなるように前記嵌込片の形状を設定すると共に、前記嵌込凹部の開口方向に沿った開口側よりも底部側で前記嵌込片の開口幅寸法が大きくなるように前記嵌込凹部の形状を設定している。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車両用シートによれば、嵌込片はその延出方向に沿った基端側よりも先端側で、嵌込片におけるパイプブッシュの軸方向に沿った寸法が大きくなるように設定される。一方、嵌込凹部はその開口方向に沿った開口側よりも底部側で嵌込片の開口幅寸法が大きくなるように設定される。このため、嵌込凹部に嵌め込まれた嵌込片が嵌込凹部から抜け難くなる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る車両シートは、請求項2に記載の本発明において、前記パイプブッシュの周方向端部の位置が前記シートバックフレームの幅方向へ向くように前記シートバックフレームの上端に前記パイプブッシュを接合している。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る車両用シートによれば、パイプブッシュの周方向端部の位置がシートバックフレームの幅方向へ向くようにシートバックフレームの上端にパイプブッシュが接合される。したがって、パイプブッシュとシートバックフレームとの接合部位側にパイプブッシュの周方向一端と他端との袷部分が向かず、この袷部分の補強的な追加溶接が不要になる。
【0016】
しかも、このようにパイプブッシュをシートバックフレームに接合した場合、嵌込片におけるパイプブッシュの軸方向に沿った両端及び嵌込凹部の縁部におけるパイプブッシュの軸方向に沿った両端はシートバックフレームの前後方向に対して上下方向に傾斜した向きを向く。このため、シートバックフレームの前側から後ろ側への荷重がパイプブッシュに付与され、シートバックフレームの幅方向を軸方向とする軸周りのモーメントが発生した場合、上記のように傾斜した嵌込片の端部又はこの端部に接する嵌込凹部の縁部が荷重を受け、パイプブッシュの周方向両端が開くことを抑制する。これにより、前方からの荷重に対する機械的強度も向上する。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る車両シートは、請求項3に記載の本発明において、前記パイプブッシュの軸方向中間部よりも下側に設定された前記嵌込片側潰し箇所及び前記凹部側潰し箇所よりも、前記パイプブッシュの軸方向中間部よりも上側に設定された前記嵌込片側潰し箇所及び前記凹部側潰し箇所を前記シートバックフレームの前後方向前側にずらして設定している。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シートによれば、パイプブッシュの軸方向中間部よりも下側に設定された嵌込片側潰し箇所及び凹部側潰し箇所よりも、パイプブッシュの軸方向中間部よりも上側に設定された嵌込片側潰し箇所及び凹部側潰し箇所がシートバックフレームの前後方向前側にずらされている。
【0019】
このため、パイプブッシュの上側でシートバックフレームの前側から後ろ側への荷重が付与され、シートバックフレームの幅方向を軸方向とする軸周りのモーメントが発生した場合、上記のように傾斜した嵌込片の端部又はこの端部に接する嵌込凹部の縁部がより一層効果的に荷重を受け、パイプブッシュの周方向両端が開くことを更に効果的に抑制する。これにより、前方からの荷重に対する機械的強度も向上する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートは、パイプブッシュの上下方向に沿ってパイプブッシュの嵌込片の縁と嵌込凹部の縁とを容易に当接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両シートのシートバックフレームの斜視図である。
【図2】シートバックフレーム上端部及びパイプブッシュの拡大側面図である。
【図3】パイプブッシュの展開図である。
【図4】パイプブッシュの製造工程を示す図で、(A)はパイプブッシュを形成する金属平板を曲げて筒状に形成した状態を示し、(B)は嵌込片側潰し箇所及び嵌込凹部側潰し箇所にて潰し加工を施した状態を示し、(C)はパイプブッシュをシートバックフレーム上端部に接合する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係る車両用シート10のシートバック12の要部の構成が斜視図により示されている。
【0023】
この図に示されるように本車両用シート10のシートバック12はシートバック12の骨格部材を構成するシートバックフレーム14を備えている。このシートバックフレーム14は、シートバック12と共に車両用シート10を構成する図示しないシートクッションの後側に設けられている。このシートバックフレーム14の下端側は、上記のシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームに対して車両用シート10の幅方向を軸方向とする軸周りに回動可能にシートクッションフレームに取り付けられている。
【0024】
このシートバックフレーム14は左右一対のサイドフレーム16を備えている。これらのサイドフレーム16は車両用シート10の幅方向に互いに対向するように配置されている。これらのサイドフレーム16の下端側にはロアフレーム18が設けられている。ロアフレーム18は車両用シート10の前後方向に沿って厚さ方向の板状に形成されている。ロアフレーム18の長手方向一端は一方のサイドフレーム16に固定され、ロアフレーム18の長手方向他端は他方のサイドフレーム16に固定されている。これにより、両サイドフレーム16の下端側がロアフレーム18によって一体的に連結されている。
【0025】
また、両サイドフレーム16の上端側にはアッパフレーム20が設けられている。アッパフレーム20は車両用シート10の下方側へ向けて開口するように略凹字形状(又は略U字形状)に湾曲することで形成されている。このアッパフレーム20の長手方向一端は一方のサイドフレーム16の上端に繋がっており、アッパフレーム20の長手方向他端はサイドフレーム16の上端に繋がっている。これにより、両サイドフレーム16の上端がアッパフレーム20によって一体的に連結されている。
【0026】
一方、アッパフレーム20の長手方向(すなわち、アッパフレーム20における車両用シート10の幅方向)両端側には支持ワイヤ26が設けられている。これらの支持ワイヤ26の各々には支持手段としてのフラットマット30を構成するサイドワイヤ32の一端(上端)が係止されている。サイドワイヤ32は、長手方向が車両用シート10の上下方向に沿ったワイヤである。
【0027】
また、両サイドワイヤ32の間の略中央には、長手方向が車両用シート10の上下方向に沿ったセンターワイヤ34が設けられている。このセンターワイヤ34と両サイドワイヤ32との間には複数のメインワイヤ36が設けられている。各メインワイヤ36は全体的に車両用シート10の幅方向に長手とされており、その一端はサイドワイヤ32に係止され、他端はセンターワイヤ34に係止されている。
【0028】
一方のサイドワイヤ32とセンターワイヤ34との間には複数のメインワイヤ36がサイドワイヤ32及びセンターワイヤ34の長手方向に所定間隔毎に設けられていると共に、他方のサイドワイヤ32とセンターワイヤ34との間には複数のメインワイヤ36がサイドワイヤ32及びセンターワイヤ34の長手方向に所定間隔毎に設けられ、これにより、一方のサイドワイヤ32が、一方の側のメインワイヤ36、センターワイヤ34、及び他方側のメインワイヤ36を介して他方のサイドワイヤ32に繋がっている。これらのメインワイヤ36の長手方向中間部は、概ね車両用シート10の下方へ向けて開口する凹形状に屈曲又は湾曲している。
【0029】
また、上記のサイドワイヤ32とサイドフレーム16との間には連結ワイヤ38が設けられており、サイドワイヤ32とサイドフレーム16とが連結ワイヤ38によって繋がっている。
【0030】
一方、上記のアッパフレーム20の長手方向(すなわち、アッパフレーム20における車両用シート10の幅方向)中央よりも右側及び左側にはそれぞれパイプブッシュ62が溶接によりアッパフレーム20に取り付けられている。各パイプブッシュ62は車両用シート10の上下方向に貫通した筒形状に形成されており、その軸方向に対して直交する向きに切った断面は矩形状(例えば、正方形状)とされている。更に詳細に説明すると、パイプブッシュ62は、図3に示されるような略矩形(例えば、正方形や長方形)の金属平板を、その長手方向及び幅方向の一方を軸方向とする軸周りに長手方向及び幅方向の他方に沿った三箇所にて屈曲(又は湾曲させる)ことで断面四角形の筒形状に形成される。
【0031】
このパイプブッシュ62の周方向一方の端部における上下方向(軸方向)中間部よりも上側からはパイプブッシュ62の周方向他方の端部へ向けて(アッパフレーム20へのパイプブッシュ62の接合状態では車両用シート10の前方へ向けて)嵌込片64が延出されている。この嵌込片64における延出方向中間部よりも基端側には括れ部66が設定されている。
【0032】
括れ部66は嵌込片64の縁部よりもパイプブッシュ62の上下方向(軸方向)に沿った外側を曲率の中心として上下方向外方へ開口するように湾曲している。一方、嵌込片64における延出方向中間部よりも先端側には張り出し部68が設定されている。張り出し部68は嵌込片64の縁部よりもパイプブッシュ62の上下方向(軸方向)に沿った内側を曲率の中心として上下方向外方へ張り出すように湾曲している。すなわち、嵌込片64はその延出方向基端側が先端よりも細く括れるように嵌込片64におけるパイプブッシュ62の上下方向に沿った両端が略S字形状(又は逆S字形状)に湾曲している。
【0033】
一方、嵌込片64の下側は嵌込凹部74とされている。嵌込凹部74はパイプブッシュ62の周方向他端へ向けて開口した凹形状に形成されている。嵌込凹部74におけるパイプブッシュ62の上下方向(軸方向)上側の縁部は、嵌込片64におけるパイプブッシュ62の上下方向(軸方向)下側の縁部と同じである。また、嵌込凹部74はその開口幅方向中央(すなわち、嵌込凹部74におけるパイプブッシュ62の上下方向中央)を中心に線対称形状とされている。
【0034】
このため、嵌込凹部74においてその開口方向に沿った両縁部は、開口方向中間部よりも基端側では開口幅方向内側を曲率の中心として開口幅方向内側へ開口するように湾曲しており、開口方向中間部よりも先端側では開口幅方向外側を曲率の中心として開口幅方向内側へ張り出すように湾曲している。すなわち、嵌込凹部74はその開口端側が底部側よりも細く括れるように嵌込凹部74における開口幅方向両端が略S字形状(又は逆S字形状)に湾曲している。
【0035】
このパイプブッシュ62の周方向他方の端部における上下方向(軸方向)中間部よりも下側からは、上記の嵌込凹部74と対向するようにパイプブッシュ62の周方向一方の端部へ向けて(アッパフレーム20へのパイプブッシュ62の接合状態では車両用シート10の後方へ向けて)上記の嵌込凹部74と対向するように嵌込片84が延出されている。この嵌込片84には嵌込片64における括れ部66や張り出し部68と同様に括れ部86や張り出し部88が設定されており、嵌込片84はその延出方向基端側が先端よりも細く括れるように嵌込片84におけるパイプブッシュ62の上下方向に沿った両端が略S字形状(又は逆S字形状)に湾曲している。
【0036】
一方、嵌込片84の上側は嵌込凹部94とされている。嵌込凹部94は上記の嵌込片64と対向するようにパイプブッシュ62の周方向一端へ向けて開口した凹形状に形成されており、嵌込凹部74と同様に、その開口端側が底部側よりも細く括れるように嵌込凹部94における開口幅方向両端が略S字形状(又は逆S字形状)に湾曲している。この嵌込凹部94の内側には嵌込片64が嵌め込まれており、嵌込凹部94に嵌込片64が嵌め込まれた状態で、嵌込凹部74の内側に嵌込片84が嵌め込まれている。
【0037】
また、パイプブッシュ62における嵌込片64の両張り出し部68には嵌込片側潰し箇所102が設定されている。これらの嵌込片側潰し箇所102では嵌込片64がその厚さ方向に潰されており、図4の(A)と(B)とを比較してわかるように、上側の張り出し部68は潰される前の状態よりも上方へ延び、下側の張り出し部68は潰される前の状態よりも下方へ延びている。また、上側の張り出し部68に設定された嵌込片側潰し箇所102の上方で且つ嵌込凹部94の縁部の外側には凹部側潰し箇所104が設定されており、下側の張り出し部68に設定された嵌込片側潰し箇所102の下方で且つ嵌込凹部94の縁部の外側には凹部側潰し箇所104が設定されている。
【0038】
これらの凹部側潰し箇所104では嵌込片64がその厚さ方向に潰されており、図4の(A)と(B)とを比較してわかるように、嵌込凹部94の縁部において上側の張り出し部68が嵌まり込む部分は潰される前の状態よりも下方へ延び、嵌込凹部94の縁部において下側の張り出し部68が嵌まり込む部分は潰される前の状態よりも上方へ延びている。これにより、嵌込片64と嵌込凹部74の縁部は上下に隙間なく互いに接している。
【0039】
一方、パイプブッシュ62における嵌込片84の下側の張り出し部88には嵌込片側潰し箇所112が設定されている。この嵌込片側潰し箇所112では嵌込片84がその厚さ方向に潰されており、図4の(A)と(B)とを比較してわかるように、張り出し部68は潰される前の状態よりも下方へ延びている。また、この嵌込片側潰し箇所112の下方で且つ嵌込凹部74の縁部の外側には凹部側潰し箇所114が設定されている。これらの凹部側潰し箇所114では嵌込片84がその厚さ方向に潰されており、図4の(A)と(B)とを比較してわかるように、嵌込凹部74の縁部において下側の張り出し部88が嵌まり込む部分は潰される前の状態よりも上方へ延びている。これにより、嵌込片84と嵌込凹部74の縁部は上下に隙間なく互いに接している。
【0040】
これらのパイプブッシュ62には、車両用シート10のヘッドレストから下方へ延出されたパイプ状のヘッドレストサポート122が挿し込まれ、更に、このヘッドレストサポート122にヘッドレストから下方に延出された棒状又は筒状の挿込部が挿し込まれて、ヘッドレストが取り付けられる。
【0041】
<本実施の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0042】
本車両用シート10においてパイプブッシュ62を形成するには、先ず、図3に示される略矩形(例えば、正方形や長方形)の金属平板を、その長手方向及び幅方向の一方を軸方向とする軸周りに長手方向及び幅方向の他方に沿った三箇所にて屈曲(又は湾曲)される。さらに、このように屈曲(又は湾曲)された金属平板の一端に形成された嵌込片64が他端に形成された嵌込凹部94に嵌め込まれて、金属平板の他端に形成された嵌込片84が一端に形成された嵌込凹部74に嵌め込まれる。これにより、図4の(A)に示されるように、金属平板が断面四角形の筒形状に成形される。
【0043】
次いで、図4の(B)に示されるように、嵌込片側潰し箇所102、112、凹部側潰し箇所104、114にて嵌込片64、84の張り出し部68、88や嵌込凹部74、嵌込凹部94の外側でパイプブッシュ62がその厚さ方向に潰される。これにより、上側の張り出し部68は潰される前の状態よりも上方へ延ばされて、下側の張り出し部68、88は潰される前の状態よりも下方へ延ばされると共に、嵌込凹部94の縁部において上側の張り出し部68が嵌まり込む部分は潰される前の状態よりも下方へ延び、嵌込凹部94の縁部において下側の張り出し部68が嵌まり込む部分及び嵌込凹部74の縁部において下側の張り出し部88が嵌まり込む部分は潰される前の状態よりも上方へ延ばされる。これにより、嵌込片64、84と嵌込凹部74、84の縁部が上下に隙間なく互いに接する。
【0044】
このようにして形成されたパイプブッシュ62は、図4の(C)に示されるように、パイプブッシュ62の周方向両端が車両用シート10の幅方向内方を向いた状態で後ろ面がアッパフレーム20へ溶接により接合される。
【0045】
以上のようにしてアッパフレーム20に接合されたパイプブッシュ62は、括れ部66、86及び張り出し部68、88を有する嵌込片64、84が、括れ部66、86及び張り出し部68、88に対応した湾曲した嵌込凹部74、94に嵌め込まれており、しかも、上記のように、嵌込片64、84と嵌込凹部74、84の縁部が上下に隙間なく互いに接している。このため、パイプブッシュ62の周方向両端を互いに離間させようとする荷重がパイプブッシュ62に作用すると、嵌込片64、84における括れ部66、86及び張り出し部68、88の縁部と、括れ部66、86及び張り出し部68、88に対応した湾曲した嵌込凹部74、94の縁部とが互いに干渉し、パイプブッシュ62の周方向一端に対して他端が離間することを規制する。これにより、パイプブッシュ62の周方向両端が開くようなパイプブッシュ62の変形が生じ難く、パイプブッシュ62の機械的強度が高い。
【0046】
また、嵌込片64はアッパフレーム20にパイプブッシュ62が接合された状態でパイプブッシュ62の周方向端部から前方へ延出されているのに対し、嵌込片84はアッパフレーム20にパイプブッシュ62が接合された状態でパイプブッシュ62の周方向端部から後方へ延出されている。このため、括れ部66の張り出し部68に設定された嵌込片側潰し箇所102及び嵌込片側潰し箇所102に対応する凹部側潰し箇所104は、括れ部86の張り出し部88に設定された嵌込片側潰し箇所112及び嵌込片側潰し箇所112に対応する凹部側潰し箇所114よりも車両用シート10の前側に位置する。
【0047】
このように嵌込片側潰し箇所102、112及び凹部側潰し箇所104、114が設定されていることで、例えば、図2に示されるように、ヘッドレストに対して前上方からの荷重Fが作用することで、パイプブッシュ62とアッパフレーム20との接合箇所を中心とするモーメントMが作用した場合にも、パイプブッシュ62の変形、特に、パイプブッシュ62の周方向両端が開くようなパイプブッシュ62の変形が生じ難く、パイプブッシュ62の機械的強度を向上させることができる。
【0048】
しかも、このようにパイプブッシュ62の両端が開くような変形を効果的に防止又は抑制できることで、パイプブッシュ62の両端を車両用シート10の幅方向へ向けた状態でパイプブッシュ62の後ろ面をアッパフレーム20に溶接してアッパフレーム20にパイプブッシュ62を接合できる。このため、パイプブッシュ62の周方向両端が位置する面を補強的に溶接しなくてもよく、作業工数の軽減、ひいては、コストの低減に寄与する。
【0049】
さらに、嵌込片側潰し箇所102、112は嵌込片64、84に設定されて、凹部側潰し箇所104、114は嵌込凹部74、94に設定される。このように、嵌込片側潰し箇所102、112や凹部側潰し箇所104、114が嵌込片64、84と嵌込凹部74、94とを跨ぐことがないので、嵌込片側潰し箇所102、112や凹部側潰し箇所104、114の位置精度を厳格にしなくてもよく、嵌込片側潰し箇所102、112や凹部側潰し箇所104、114における潰し工程の作業性がよい。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用シート
14 シートバックフレーム
62 パイプブッシュ
64 嵌込片
74 嵌込凹部
84 嵌込片
94 嵌込凹部
102 嵌込片側潰し箇所
104 嵌込凹部箇所
112 嵌込片側潰し箇所
114 嵌込凹部箇所
122 ヘッドレストサポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状又はシート下方へ向けて開口した凹形状のシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの上方に設けられたヘッドレストから下方へ延出された棒状又は筒状の挿込部が挿し込まれる筒状のヘッドレストサポートと、
前記シートバックフレームの前側で前記シートバックフレームの状態に接合されると共に、周方向端部にて開口するように周方向両端の各々に形成された嵌込凹部に対して周方向に対向するように前記周方向両端部から延出された嵌込片が前記嵌込凹部に嵌め込まれることによって前記ヘッドレストサポートを軸方向上端から挿込可能な筒状に形成されて、少なくとも1つの前記嵌込片における前記軸方向端部側に設定された嵌込片側潰し箇所にて前記嵌込片が厚さ方向に潰されると共に、前記嵌込片側潰し箇所よりも前記軸方向端部側における前記嵌込凹部の外側に設定されて前記嵌込片側潰し箇所と対を成す凹部側潰し箇所で前記嵌込凹部の外側が厚さ方向に潰されたパイプブッシュと、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記嵌込片の延出方向に沿った前記嵌込片の基端側よりも先端側で、前記嵌込片における前記パイプブッシュの軸方向に沿った寸法が大きくなるように前記嵌込片の形状を設定すると共に、前記嵌込凹部の開口方向に沿った開口側よりも底部側で前記嵌込片の開口幅寸法が大きくなるように前記嵌込凹部の形状を設定した請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記パイプブッシュの周方向端部の位置が前記シートバックフレームの幅方向へ向くように前記シートバックフレームの上端に前記パイプブッシュを接合した請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記パイプブッシュの軸方向中間部よりも下側に設定された前記嵌込片側潰し箇所及び前記凹部側潰し箇所よりも、前記パイプブッシュの軸方向中間部よりも上側に設定された前記嵌込片側潰し箇所及び前記凹部側潰し箇所を前記シートバックフレームの前後方向前側にずらして設定した請求項3に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206701(P2012−206701A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76097(P2011−76097)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】