説明

車両用シート

【課題】簡易な構成により冷暖が可能な車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シート100は、シート構造部材1と、シート構造部材の上に配置されるクッション部材2と、クッション部材の上に配置されるカバー部材3と、クッション部材2とカバー部材に設けられた通風路2a、3aと、通風路に送風する送風機4と、送風機4を稼働または停止させる制御手段と、を備える車両用シート100において、カバー部材3は、水分吸着性能と空気通過性能を有し、水分を吸着すると吸着熱を発生し、水分が蒸発すると熱を吸収し、制御手段は、車両用シート100を冷やすときは送風機4を稼働させて、車両用シート100を暖めるときは送風機を停止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成により冷暖が可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
冬季において、電気ヒータによりシートを暖めるシートヒータに関する技術が多数ある。シートヒータは、シート内部に電気ヒータを配置し、ヒータを通電することで発熱してこの熱が伝導することにより乗員は暖かさを感じる。シートヒータは、すわり心地の観点から柔らかいことが重要となる。これらを解決するために、特許文献1などの技術が公開されている。そして、シートヒータは電気を用いる必要があるため、断線・故障など、さまざまな条件を検出し解決する技術が公開されている(特許文献2、3など)。このように、電気ヒータによるシートヒータ技術は、シートヒータ部材のコストや信頼性の課題がある。
【0003】
また夏季において、シート内を送風し冷涼感を得る発明も多数ある。例えば、
1.車両用空調装置の空調風を利用し、シートから空調空気を吹き出す技術(特許文献4)
2.シート内部に熱交換器を配置し空調するシステム(特許文献5)
3.シートから車室内空気を送風するシステム(特許文献6)
が公開されている。
ここで、1、2のシステムは冷暖できるシステムであるが、熱交換器などが必要となり非常に高価になる。また、3のシステムとシートヒータを組み合わせることは電気ヒータを通気させるなど工夫が必要となり高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−238926号公報
【特許文献2】特開2009−66009号公報
【特許文献3】特開2008−67850号公報
【特許文献4】特許第3633777号明細書
【特許文献5】特許第433512号明細書
【特許文献6】特許第3804566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成により冷暖が可能な車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1形態によれば、車両用シート(100)は、
シート構造部材(1)と、該シート構造部材(1)の上に配置されるクッション部材(2)と、該クッション部材(2)の上に配置されるカバー部材(3)と、前記クッション部材(2)と前記カバー部材(3)に設けられた通風路(2a、3a)と、該通風路(2a、3a)に送風する送風機(4)と、該送風機(4)を稼働または停止させる制御手段と、を備える車両用シート(100)において、
前記カバー部材(3)は、水分吸着性能と空気通過性能を有し、水分を吸着すると吸着熱を発生し、水分が蒸発すると熱を吸収し、
前記制御手段は、車両用シート(100)を冷やすときは前記送風機(4)を稼働させて、車両用シート(100)を暖めるときは前記送風機(4)を停止することを特徴とする。
【0007】
シート(100)を冷やすときは、送風機を稼働させて、カバー部材(3)に吸収された水分を蒸発させて気化熱によりシート(100)を冷やす。シート(100)を暖めるときは、送風機(4)を停止する。カバー部材(3)は、水分吸着性能を有し、水分を吸着すると吸着熱を発生するので、送風機(4)の停止により、カバー部材(3)が水分を吸収し、これにより発生する吸着熱によりシート(100)を暖めることが可能となる。
【0008】
本発明の第2形態によれば、車両用シート(100)は、カバー部材(3)が天然繊維を含むことを特徴とする。綿や羊毛などの天然繊維は、水分を吸着すると吸着熱を発生する特性が強い。
【0009】
本発明の第3形態によれば、車両用シート(100)は、カバー部材(3)が編み物であることを特徴とする。編み物は、通気性が織り物等より良いので、シート(100)を冷やすときに有利である。
【0010】
本発明の第4形態によれば、車両用シート(100)は、車両用シート(100)の内部に感温センサを備え、該感温センサが検知した温度に基づいて、前記制御手段が車両用シート(100)の冷暖を判定することを特徴とする。この構成により、自動的に車両用シート(100)の冷暖を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車両用シートの模式的断面図である。
【図2】本発明に係る車両用シートの編み物カバー部材である。
【図3】本発明に係る車両用シートの概観図である。この概観図は、従来の車両用シートと変わらない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図3に示すように、本発明の車両用シート100に係るシート部10は、従来シートと同様に、シート構造部材であるフレーム1と、フレーム1の上に配置されるクッション部材2と、クッション部材2の上に配置されるカバー部材3と、を有する。
【0013】
そして、図1に示すように、車両用シート100は、更に送風機4と、送風機4とシート部10とを接続する送風ダクト5を備える。送風ダクト5は、入口5aと出口5bを備え、出口5bは、シート内送風路2aと接続されている。入口5aは、乗員室のどこかに開口しても良いし、空調機器または車外などと接続しても良い。シート部10には、その内部に送風機4より送風される空気の通路であるシート内送風路2aが設置されている。シート内送風路2aは、送風ダクト5と連通しており、さらにカバー部材3を貫通するカバー部材開口部3aと接続されている。
【0014】
この構造により、送風機4により発生した空気流は、矢印に示すように、送風ダクト入口5aから送風ダクト出口5bを通過してシート内送風路2aに流入しカバー部材開口部3aより乗員近傍の空間へと送出される。送風機4は、制御装置(図示せず)に接続されている。制御装置は、乗員の指示により、車両用シートを冷やすときは送風機を稼働させて、車両用シートを暖めるときは送風機を停止する。なお、自動的に送風機を稼働または停止することもできる。この場合、シート部10の内部に感温センサ(図示せず)を配置して、感温センサが検知した温度に基づいて、制御装置がシート部10の冷暖を判定する構成とする。
【0015】
カバー部材3の材料に関しては、革シートは通気性が悪いため、革シートに孔を設けたものまたは繊維質の織り物または編み物(図2参照)または不織布に孔を設けたものを用いることができる。通気性の点からは織り物および不織布より編み物が適している。いずれにしても、カバー部材3は通気性を持つものでなければならず、繊維質の布に多数の微細な孔を形成したものでも良い。
【0016】
(本発明の作用)
次に本発明の作用を説明する。
(冬季)
まず、冬季などにおいて、シートを暖めたいときについて述べる。制御装置が乗員の指示により、「シート暖め」を選択すると、送風機4は停止状態となる。(すでに送風機4が停止状態にあるときは、その状態を継続する。)カバー部材3は水分(湿気)を吸収する素材であるので、人から発散される水蒸気(汗や呼吸気)を吸収する。カバー部材3は水分(湿気)を吸収することで、熱が発生する。これは、吸着熱と呼ばれ、水分(湿気)が気体から液体に変わるとき熱を発生する現象である。ゆえに、カバー部材3は吸着熱により暖かくなる。その結果、ヒータを使用しなくても済む。
【0017】
なお、カバー部材3の繊維の水分吸着量が多い程、大きな熱を発生させることができる。一般的に、ポリエステルなどの合成繊維は水分(湿気)の吸着性が低いと言われており、綿はポリエステルに対し約20倍、羊毛はポリエステルに対し約38倍の水分(湿気)を吸収することができる。近年では、合成繊維にも吸着部を持たせた繊維(特許第2028487号)が開発されている。このように、暖め効果を効率的に発揮させるには、カバー部材3の繊維の水分吸着性能がカギとなる。
【0018】
(夏季)
次に、夏季などにおいて、シートを冷却したいときについて述べる。制御装置が乗員の指示により、「シート冷却」を選択すると、送風機4が駆動されて送風を開始する。水分吸着性を有するカバー部材3に、送風機4により送風を行うとすると、繊維内に吸着された水分(湿気)が蒸発することで、吸着時とは逆に周囲の熱を奪う作用が発生する。この作用は蒸発潜熱による冷却作用である。その結果、送風することでカバー部材3が冷える現象が発生する。この作用により、カバー部材3は水分吸着量が多い繊維である程大きな熱を奪うことができる。
【0019】
ここで、冷却効果を発揮させるためには、空気がカバー部材3を通過できることが必要となる。それゆえ、繊維を編物状に形成したカバー部材(図2参照)は通気性が高いので、織物構造より優位と言える。なお、織物構造でも、小孔を開けることで通気性を向上させることはできるので、織物を採用することも可能である。革シートなどは、繊維製シートにくらべ、通気性が悪く、実表面積も小さいので本発明には不向きである。夏は絶対湿度や気温が高いので、駐車時などに吸着した水分(湿気)や乗員の汗により効果を得やすい。
【0020】
(他の実施形態)
なお、第1実施形態では送風方法を、シート部10に対して吹き出す吹き出し形で説明したが、シート部10から吸い出す吸い出し形としても良い。
【0021】
以上のように、簡易な構成により冷暖が可能な車両用シートを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 フレーム(シート構造部材)
2 クッション部材
3 カバー部材
10 シート部
100 車両用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート構造部材(1)と、該シート構造部材(1)の上に配置されるクッション部材(2)と、該クッション部材(2)の上に配置されるカバー部材(3)と、前記クッション部材(2)と前記カバー部材(3)に設けられた通風路(2a、3a)と、該通風路(2a、3a)に送風する送風機(4)と、該送風機(4)を稼働または停止させる制御手段と、を備える車両用シート(100)において、
前記カバー部材(3)は、水分吸着性能と空気通過性能を有し、水分を吸着すると吸着熱を発生し、水分が蒸発すると熱を吸収し、
前記制御手段は、車両用シート(100)を冷やすときは前記送風機(4)を稼働させて、車両用シート(100)を暖めるときは前記送風機(4)を停止することを特徴とする車両用シート(100)。
【請求項2】
前記カバー部材(3)は、天然繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート(100)。
【請求項3】
前記カバー部材(3)は、編み物であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート(100)。
【請求項4】
更に車両用シート(100)の内部に感温センサを備え、該感温センサが検知した温度に基づいて、前記制御手段が車両用シート(100)の冷暖を判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用シート(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224163(P2012−224163A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92392(P2011−92392)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】