説明

車両用シート

【課題】乗員の着座状態に応じて効率良く送風することにある。
【解決手段】シート構成部材(6)が、着座状態の乗員胴体部又は脚部に当接可能な中央部位16aと、着座状態の乗員胴体部又は脚部に非当接の側部位16bを有するとともに、流路部80が、中央部位16aに形成された中央通気孔88a〜88cと、側部位16bに形成された側部通気孔88dと、中央通気孔88a〜88cと側部通気孔88dをシート内で連通する連通部84f,84sとを有し、送風装置40から吹出される気体を、中央通気孔88a〜88cと側部通気孔88dの少なくとも一方から乗員に送風可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置を内蔵の車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、特許文献1に開示の車両用シートが公知である。この車両用シートは、シートクッションと、シートバックと、送風装置を有する。
送風装置は、遠心式の送風機構(装置軸方向から外気を吸気しつつ遠心方向に送風する機構)を有する。
またシートバックは、シート外形をなすクッション材と、クッション材の流路部と、布帛製の表皮材を有する。
【0003】
そして流路部は、溝部と、通気孔と、蓋部材を有する。溝部は、クッション材(着座側)の凹部であり、クッション材に枝分かれ状に形成される。また導入通路は、クッション材内の通路であり、送風装置と溝部を連通する。そして蓋部材は、スポンジ製の平板部材であり、適度な通気性を有する。
公知技術では、シートバック内に送風装置を配設しつつ、クッション材の着座側を蓋部材で被覆する。そしてクッション材と送風装置を表皮材で覆ったのち、送風装置から吹出される気体を、クッション材の流路部(導入通路,溝部,蓋部材)を介して乗員に送風する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−70071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種の車両用シートでは、乗員の着座状態に応じて、シートの中央と側部で送風量を調整したい(メリハリ良く送風したい)との要請がある。
例えば通常着座時においては、専らシートバック中央から送風を行うことが好ましい。また乗員がもたれかかった場合(シート中央に乗員胴体部が当接した場合)には、シート側部(例えば乗員腰部の側方)から送風を行うことが好ましい。
しかし公知技術では、溝部を通る気体が、蓋部材(スポンジ製)から均等に吹出される構成である。このため公知技術の構成は、シートの中央と側部で送風量にメリハリをつけるには不向きな構成であった(送風効率にやや欠ける構成であった)。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗員の着座状態に応じて効率良く送風することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、シートクッションやシートバックなどのシート構成部材を有する。そしてシート構成部材が、シート外形をなすクッション材と、シート構成部材に配設の送風装置を有する。
本発明では、送風装置から吹出される気体を、クッション材の流路部を介して乗員に送風可能である。この種のシート構成では、乗員の着座状態に応じて効率良く送風できることが望ましい。
【0007】
そこで本発明では、上述のシート構成部材が、着座状態の乗員胴体部(肩部や背部や腰部や臀部)又は脚部に当接可能な中央部位と、着座状態の乗員胴体部又は脚部に非当接の側部位を有する。
また流路部は、中央部位に形成された中央通気孔と、側部位に形成された側部通気孔と、中央通気孔と側部通気孔をシート内で連通する連通部とを有する。
そして送風装置から吹出される気体を、連通部を通じて、中央通気孔と側部通気孔の少なくとも一方から乗員に送風可能とした。
本発明では、乗員の非当接時には、中央通気孔と側部通気孔の双方から乗員に送風可能である。そして乗員の当接により中央通気孔が閉塞した場合には、側部通気孔から乗員に送風(メリハリ良く送風)できる。
【0008】
第2発明の車両用シートは、第1発明の車両用シートであって、乗員の非当接時において、中央通気孔が、側部通気孔よりも多量に送風可能であるため、より効率良く乗員に送風することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、乗員の着座状態に応じて効率良く送風することができる。また第2発明によれば、より効率良く乗員に送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用シートの斜視図である。
【図2】シートバック一部の分解斜視図である。
【図3】シートバックの縦断面図である。
【図4】クッション材と蓋部材の分解斜視図である。
【図5】クッション材の透視正面図である。
【図6】表皮材と下帯部材の斜視図である。
【図7】シートクッション一部の裏面図である。
【図8】変形例に係るクッション材の透視正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図8を参照して説明する。なお各図には、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを適宜付す。
図1の車両用シート2は、シート構成部材(シートクッション4、シートバック6、ヘッドレスト8)と、レール部材9を有する。これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすフレーム部材(4F,6F,8F)と、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材に被覆の表皮材(4S,6S,8S)を有する。
【0012】
レール部材9は、アッパレール9aと、アッパレール9aに摺動可能に組付けられるロアレール9bを有する。そしてシートクッション4をアッパレール9aに取付けることで、車両用シート2が、ロアレール9b上をスライド移動可能となる。
またヘッドレスト8は、シートバック6上部に配設される部材であり、ステー部材(図示省略)を有する。そして一対のステー部材を、シートバック6の筒状部材(図示省略)に挿設することで、シートバック6上部にヘッドレスト8が取付けられる。
【0013】
<実施例1>
シートクッション4は、Sバネ14(略S字状に屈曲した線状部材)を有する(図1及び図7を参照)。本実施例では、複数のSバネ14を、シートクッション4裏面側に配設しつつ、フレーム部材4Fに取付ける。
そしてシートバック6(詳細後述)は、シートクッション4に起倒可能に連結する部材であり、中央部位16aと、側部位16bと、送風装置40を有する(図1〜図6を参照)。
図4を参照して、中央部位16aは、着座状態の乗員胴体部(肩部,背部,腰部)に当接可能な部位であり、シートバック6中央に形成される(図4の二点破線CRで囲まれる部分を参照)。
また側部位16bは、着座状態の乗員胴体部に非当接の部位であり、中央部位16aの側方に形成される。本実施例の側部位16bは、中央部位16aの側方下部(乗員腰部の側方)に形成できる。
【0014】
そして本実施例では、シートバック6内の送風装置40に外気を供給しつつ、送風装置40から吹出される気体を乗員に送風する(図3を参照)。この種のシート構成では、乗員の着座状態に応じて効率良く送風できることが望ましい。
例えば通常着座時においては、専ら中央部位16aから送風を行うことが望ましい(図4を参照)。そしてシートバック6に乗員がもたれかかった場合(中央部位16aに乗員胴体部が当接した場合)には、専ら側部位16bから送風を行うことが望ましい。
そこで本実施例では、後述の構成により、乗員の着座状態に応じて効率良く送風することとした。以下各構成について詳述する。
【0015】
本実施例のシートバック6は、基本構成(6F,6S,6P)と、送風装置40と、ダクト部材50と、下帯部材60と、供給部70と、流路部80を有する(各部材の詳細は後述、図2〜図6を参照)。
そしてフレーム部材6Fに送風装置40を配設したのち、フレーム部材6F上にクッション材6Pを配置しつつ表皮材6Sで被覆する(図2及び図3を参照)。つぎに下帯部材60(供給部70)から、ダクト部材50を通じて送風装置40に外気を供給しつつ、送風装置40から吹出される気体を、流路部80を通じて乗員に送風する。
【0016】
(フレーム部材)
フレーム部材6F(アーチ状の枠部材)は、上部フレーム6aと、一対の側部フレーム6bと、下部フレーム6cと、リクライニング軸Rと、支持ブラケット30を有する(図2を参照)。
上部フレーム6aは、シート上部をなす部材(正面視で略逆U字状)である。また下部フレーム6cは、シート下部において一対の側部フレーム6b間に橋渡しされた平板部材である。
そして一対の側部フレーム6bは、それぞれシート側部をなす平板部材であり、上部フレーム6aの下端に取付けられる。一対の側部フレーム6bの下端付近には、リクライニング軸Rが橋渡し状に取付けられる。リクライニング軸Rは、シートクッション4に対してシートバック6が起倒する際の回転中心である(図1を参照)。
【0017】
(支持ブラケット)
支持ブラケット30は、平板部材(略長方形状)であり、一対の連通孔32と、被取付け部34と、一対の第一ワイヤ36fと、一対の第二ワイヤ36sを有する(図2を参照)。
一対の連通孔32は、それぞれ送風装置40(後述)に連通可能な貫通孔であり、支持ブラケット30中央に設けることができる。また被取付け部34は、ネジ部材N1を挿設可能な孔部(貫通孔又は非貫通孔)であり、連通孔32の上方に設けることができる。
【0018】
そして一対の第一ワイヤ36fは、それぞれ略L字状の線状部材であり、支持ブラケット30の上部両端に取付けられてシート上方に延びる。また一対の第二ワイヤ36sは、下部フレーム6cを挟持可能に屈曲する線状部材(側面視で略逆Y字状)であり、支持ブラケット30の下部両端に取付けられてシート下方に延びる。
本実施例では、フレーム部材6F内に支持ブラケット30を配置しつつ、一対の第一ワイヤ36fを上部フレーム6aに取付けるとともに、一対の第二ワイヤ36sを下部フレーム6cに取付ける。そして支持ブラケット30の上部(連通孔32の上方)に、後述の送風装置40を取付ける。
【0019】
(送風装置)
送風装置40は、中空の箱体(短尺な円筒状)であり、送風機構42と、第一開口部44fと、第二開口部44sと、管部材46と、基本取付け部47と、第一取付け部48を有する(図2及び図3を参照)。管部材46(典型的に蛇腹状)は、送風装置40と流路部80(後述)を連通する管材である。
送風機構42は、小径の円筒状部材であり、送風装置40内に収納できる。送風機構42として、例えば遠心式の機構(装置軸方向から吸気しつつ遠心方向に送風する機構)を使用できる。この種の送風機構42として、多翼ファン(シロッコファン)、プレートファン、ターボファン、翼形ファン、リミットロードファンを例示できる。
【0020】
また第一開口部44fは、送風装置40の後面側(装置の軸方向)に形成された貫通孔であり、送風機構42に気体(外気)を供給できる。また第二開口部44sは、送風装置40の周面側(装置の遠心方向)に形成された貫通孔であり、送風機構42から吹出される気体を装置外部に排出(送風)できる。
そして基本取付け部47は、送風装置40の径方向外方に突出する平板部位であり、ネジ部材N1を挿設可能なネジ孔(符号省略)を有する。基本取付け部47は、送風装置40の側部上端及び側部下端(被取付け部に対面可能な位置)に設けることができる。
また第一取付け部48は、送風装置40(側部中間)の径方向外方に突出する平板部位(正面視で略V字状)である。第一取付け部48は、シート前後に開口するネジ孔(符号省略)を有して、ネジ部材N2を挿設可能である。
【0021】
(ダクト部材)
ダクト部材50は、送風装置40と供給部70(後述)を連通可能な管材であり、蛇腹部52と、第一導通部54fと、第二導通部54sと、第二取付け部58を有する(図2及び図3を参照)。
蛇腹部52は、ダクト部材50の途中に設けられた部位(アコーディオン状)であり、曲がり変形可能である。
また第一導通部54fは、送風装置40(第一開口部44f)を臨む位置に開口する部位であり、第二導通部54sは、供給部70を臨む位置に開口する部位である。
そして第二取付け部58は、ダクト部材50の外方に(第一取付け部48に対面可能な位置に)突出する平板部位である。第二取付け部58は、シート前後に開口するネジ孔(符号省略)を有して、ネジ部材N2を挿設可能である。
【0022】
[送風装置の取付け作業]
本実施例では、送風装置40を、支持ブラケット30の上部中央(連通孔32の上方)に配置して取付ける(図2を参照)。
このとき基本取付け部47と被取付け部34をネジ部材N1にてネジ止めすることで、支持ブラケット30に送風装置40を取付ける。
つぎに第一取付け部48と第二取付け部58を対面しつつ、ネジ部材N2にてネジ止めすることで、送風装置40にダクト部材50を取付ける。このとき第一導通部54fを第一開口部44fに連通することで、後述するようにダクト部材50から送風装置40に外気を供給可能とする。
【0023】
(クッション材)
クッション材6Pは、シート外形をなす略長方形状の部材であり、後述の流路部80を有する(図3〜図5を参照)。クッション材6Pの裏面には、バッキング層B(樹脂製の保護層)を形成することができる。
クッション材6P(材質)は特に限定しないが、ポリウレタンフォームなどの弾性力を有する樹脂を例示できる。
本実施例では、クッション材6P(着座側)が、溝部C(正面視で略H字状)によって四分割されており、複数の部位(第一天板面6Paと、第二天板面6Pdと、一対の側部面6Pb,6Pc)に区画される。
一対の側部面6Pb,6Pcは、それぞれシート側部をなす部位である。
また第一天板面6Paは、着座部となる部分の上部側の部位であり、第二天板面6Pdは着座部となる部分の下部側の部位である。本実施例では、起立状態のシートバック6において、第一天板面6Paが上から略1/3を占め、第二天板面6Pdがその他の略2/3を占める。そして中央部位16aが、第二天板面6Pdの中央に形成され、側部位16bが、第二天板面6Pdの下部側方に形成される。
【0024】
(流路部)
流路部80は、送風装置40の送風を着座側に導く流路であり、一対の孔部82と、連通部(84f,84s)と、蓋部材86を有する(図3及び図4を参照)。
一対の孔部82は、クッション材6Pを厚み方向に貫通する貫通孔であり、クッション材6Pの中央(連通孔32に対面可能な位置)に設けることができる。
また連通部は、クッション材6P着座側の凹部位(溝状)であり、第一部位84fと、第二部位84sを有する。第一部位84fは、孔部82から三又に分かれる部分であり、それぞれ孔部82からシート幅方向に伸びて第二部位84sに連通する。また第二部位84sは、シート上下に延びる部分であり、シート側部に形成できる。
【0025】
そして本実施例では、第二天板面6Pdに、一対の孔部82と連通部(84f,84s)を設けることができる。例えばシートバック6の中央(第二天板面6Pdの上部中央)に一対の孔部82を設けるとともに、一対の連通部(84f,84s)を、シートバック6の中心線を挟んで線対称(左右対称)に設ける(図4及び図5を参照)。
このとき本実施例では、各第一部位84fを、乗員背部に対面する部位(中央部位16aの一部)に形成して、第二天板面6Pdの上部に配置する(図4の二点破線CRで囲まれる部分を参照)。また各第二部位84sを、乗員肩部に対面する部位(中央部位16aの他部)と、乗員腰部の側方(側部位16b)に渡って形成して、第二天板面6Pdの側部に配置する。
【0026】
蓋部材86は、略矩形(正面視)の平板部材であり、複数の通気孔88(88a〜88d)を有する。蓋部材86(材質)は特に限定しないが、典型的にクッション材6Pと同一材質である。
複数の通気孔88(88a〜88d)は、それぞれ蓋部材86を厚み方向に貫通する貫通孔であり、上述の連通部(84f,84s)に沿って形成できる(詳細後述)。
そして本実施例では、後述するように、シートバック6の位置に応じて通気孔88の構成(形成数や孔径)を適宜調整する。こうすることで中央部位16a(第二天板面6Pdの上部)の方が、側部位16b(第二天板面6Pdの下部側方)よりも気体の供給量が多くなるように(多量に送風可能に)設定できる。
【0027】
(中央通気孔・側部通気孔)
本実施例では、通気孔88として、中央通気孔(88a,88b,88c)と、側部通気孔88dを形成する(図4及び図5では、便宜上、一部の通気孔にのみ符号を付す)。
中央通気孔(第一通気孔88a,第二通気孔88b,第三通気孔88c)は中央部位16aに形成でき、側部通気孔88dは側部位16bに形成できる。
すなわち第一通気孔88a(略楕円形)は、中央部位16aの一部(乗員背部に対面する部位)の貫通孔であり、第一部位84fに沿って形成できる。また第二通気孔88b(略楕円形)は、中央部位16aの他部(乗員肩部に対面する部位)の通気孔であり、第二部位84s(上部側)に沿って形成できる。また第三通気孔88c(略円形)は、乗員背部と乗員肩部の間の通気孔であり、第一部位84fに沿って形成できる。
そして側部通気孔88d(略円形)は、側部位16b(乗員腰部の側方)の貫通孔であり、第二部位84s(下部側)に沿って形成できる。
【0028】
本実施例では、中央通気孔(88a〜88c)の形成数を、側部通気孔88dよりも多くする。さらに中央通気孔(88a〜88c)の開口寸法を、側部通気孔88dよりも大きくする。こうすることで中央部位16a(中央通気孔88a,88b,88c)から、側部位16b(側部通気孔88d)よりも多量に送風可能に設定できる。
なお本実施例では、第一通気孔88a(乗員背部)と第二通気孔88b(乗員肩部)の順に開口寸法を小さくすることが望ましい。こうすることで乗員の非当接時においては、乗員の胴体部の中心に近づくほど多量に送風可能となる。
【0029】
[流路部の連通]
本実施例では、クッション材6Pの着座側に蓋部材86を配置して、連通部(84f,84s)と孔部82を密閉状態とする(図3〜図5を参照)。このとき本実施例では、複数の通気孔88(88a〜88d)を、それぞれ対応する連通部(84f,84s)に沿って配置する。
つぎにクッション材6Pを、フレーム部材6Fの着座側に配置する。このとき一対の孔部82を、それぞれ連通孔32に対面配置しつつ、クッション材6Pを支持ブラケット30上に配置する。
そして管部材46の一端を第二開口部44sに連通して、管部材46の他端を連通孔32に接続する。こうすることで送風装置40から吹出される気体が、孔部82と連通部84f,84sを通過して、複数の通気孔88(88a〜88d)に供給可能となる。
【0030】
(表皮材)
表皮材6Sは、クッション材6Pを被覆可能な袋状部材であり、後述の下帯部材60と、供給部70を有する(図3及び図6を参照)。なお表皮材6Sの上部には、ステー部材を挿設するための一対の孔部Hが形成される。
表皮材6S(素材)は特に限定しないが、通気性を有する布帛(織物,編物,不織布)を例示できる。
【0031】
(下帯部材)
下帯部材60は、シートクッション4とシートバック6の連結部分を被う面状部材であり、係止部62と、取付け孔部64を有する(図3及び図6を参照)。
係止部62は、ベルト状の部材であり、典型的に伸縮性を有する。また取付け孔部64は、後述の供給部70を取付け可能な貫通孔(略長方形状)であり、下帯部材60の中央に設けることができる。
本実施例では、下帯部材60の一端に係止部62を取付けたのち、下帯部材60の他端を表皮材6Sの下部に縫合して取付ける。
ここで下帯部材60(素材)は特に限定しないが、表皮材6Sよりも剛性の高い素材であることが望ましい。この種の下帯部材60(剛性の高い素材)として、樹脂を浸含させた布帛、フェルト、皮革を例示できる。下帯部材60(剛性の高い部材)によれば、乗員の接触による型崩れを防止できるとともに、供給部70(後述)を安定性よく取付けることができる。
【0032】
(供給部)
供給部70は、送風装置40に外気を供給する部位であり、第一部材72fと、第二部材72sを有する(図3を参照)。
ここで供給部70(第一部材72f,第二部材72s)の材質は特に限定しないが、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン,塩化ビニル樹脂,ポリエチレン)、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ユリア樹脂)を例示できる。なお供給部70を、可撓性を有する樹脂で構成することにより、シート外形に沿った湾曲状に変形させることができる(見栄えのよいシート構成となる)。例えば供給部70を、ゴム(天然ゴム,合成ゴム)やエラストマ等で形成することにより適度な可撓性を付与できる。
【0033】
第一部材72fは、略長方形状(取付け孔部64に倣った形状)の平板部材であり、第一供給口71と、係止爪74と、組付け爪76を有する(図3及び図6を参照)。
第一供給口71は、第一部材72fの長手方向に延びる複数の貫通孔Hと、各貫通孔Hに対して直角に交わる複数の格子部Gを有する。また係止爪74は、第一部材72f(裏面)の縁部を屈曲させた凸部位である。
組付け爪76は、第一部材72fの裏面に立設する平板部分であり、組付け爪76の先端には、複数の返し部が設けられる。返し部は、第一供給口71の外方に向かって突出する。本実施例では、第一部材72fの中央に第一供給口71を形成するとともに、複数の組付け爪76を第一供給口71周りに形成する。
【0034】
また第二部材72sは、第一部材72fに倣った形状(略長方形状)の平板部材であり、第二供給口72と、立設部73を有する。
第二供給口72(縦長の貫通孔)は、第一供給口71(複数の貫通孔)に対面配置して、複数の組付け爪76(全て)を挿入可能な開口寸法を有する。また立設部73は、第二供給口72の周囲に立設する平板部位であり、パッド材56(輪状の弾性部材)を嵌装できる。
【0035】
[供給部の配設]
本実施例では、取付け孔部64に供給部70を挿設する(図3及び図6を参照)。このとき下帯部材60の表面側に第一部材72fを配置して、下帯部材60の裏面側に第二部材72sを配置する。
つぎに下帯部材60に係止爪74を押し当てつつ(食い込ませつつ)、複数の組付け爪76を、第二供給口72の周縁に係止することで、供給部70を、下帯部材60に組付ける。本実施例では、下帯部材60が、表皮材6Sよりも剛性の高い面状部材であるため、供給部70(樹脂製)を安定性良く取付けることができる。
【0036】
さらにダクト部材50(第二導通部54s)と供給部70を連通することで、下帯部材60の供給部70から外気を取り入れつつ、ダクト部材50を通じて送風装置40に供給できる。
このとき立設部73周りにパッド材56を嵌装して、ダクト部材50と供給部70の間に介装することにより、両部間のエア漏れを防止又は低減できる(シート性能に優れる構成となる)。なおパッド材56の代替として、蛇腹状の管部材(図示省略)を、ダクト部材50と供給部70の間に介装することもできる。
【0037】
そしてクッション材6Pと送風装置40を表皮材6Sで被覆する。つぎに下帯部材60の一端側をシートクッション4下方に引入れつつ、係止部62を、フレーム部材4F(Sバネ14)に係止する(図3及び図7を参照)。
このように下帯部材60により、シートバック6とシートクッション4の連結部分を被うことで、シートの見栄えを向上させることができる。また下帯部材60がシート下方に配置することで、供給部70が、比較的目立たない位置に配置される。
【0038】
[送風装置の駆動]
図3〜図5を参照して、送風装置40に外気を供給しつつ、送風装置40から吹出される気体を、流路部80を介して乗員に送風する。
このとき本実施例では、乗員の非当接時にて、中央部位16a(中央通気孔88a,88b,88c)から、側部位16b(側部通気孔88d)よりも多量に送風できる。
またシートバック6に乗員がもたれかかるなどして、中央部位16a(中央通気孔88a,88b,88c)が乗員の当接にて閉塞したときは、側部位16b(側部通気孔88d)から送風(メリハリ良く送風)できる。
さらに乗員背部のみが当接して第一通気孔88aが閉塞した場合には、第二通気孔88bと、第三通気孔88cと、側部通気孔88dから送風できる。
このように本実施例によれば、乗員の着座状態に応じて、中央通気孔88a,88b,88cと側部通気孔88dの少なくとも一方から送風可能である。このため本実施例によれば、複数の通気孔88(88a〜88d)によって、乗員の着座状態に応じて効率良く送風できる。
【0039】
[変形例]
本変形例では、複数の側部位(乗員腰部の側方下部,乗員肩部の側方上部,乗員首部の対面位置)の少なくとも一部位をシートバック6に形成する(図8を参照)。そして各側部位に、それぞれ第二部位(84s,84sa,84sb)を形成できる。
すなわち乗員腰部の側方下部(第二天板面6Pdの下部両側)に、直線状の第二部位84sを形成して、第一部位84fに連通する。また乗員肩部の側方上部(第一天板面6Paの上部両側)に、直線状の第二部位84saを形成して、第一部位84fに連通する。そして乗員首部の対面位置(第一天板面6Paの中央)に、略逆V字状の第二部位84sbを形成して、第二部位84sbの両端部を、それぞれ第一部位84fに連通する。
そして複数の側部位(84s,84sa,84sb)の少なくとも一部位に側部通気孔88d(複数又は単数)を設けることで、乗員の着座状態に応じて効率良く送風できる。
【0040】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、シートバック6を一例に説明したが、本実施例の構成は、シートクッション4などのシート構成部材に適用可能である。例えばシートクッションの場合、乗員臀部及び乗員脚部に当接可能な位置が中央部位となり、乗員臀部の側方又は乗員脚部の側方等が側部位となる。そしてシートクッションのクッション材も、溝部によって、着座部を構成する部位が複数に分割(2分割,3分割等)されることがある。このときシート後側の天板面に流路部を形成することができる。
(2)また本実施形態では、複数の通気孔88として、中央通気孔(88a,88b,88c)と側部通気孔88dを例示したが、各連通孔の構成(形成数,開口寸法、形状等)を限定する趣旨ではない。例えばクッション材に、中央通気孔として、第一通気孔と第二通気孔と第三通気孔の少なくとも一つを形成することができる。
各通気孔は、円形、楕円形、三角形等の各種形状を採用できる。また各通気孔は、単数又は複数設けることができる。
【0041】
(3)また本実施形態では、ダクト部材50によって、送風装置40と供給部70を連通する例を説明したが、ダクト部材50を省略することもできる。
(4)また本実施形態では、下帯部材60の構成を例示したが、下帯部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば下帯部材の他端に係止部を取付けたのち、下帯部材の一端を、シートクッションの表皮材後部に縫合して取付けることができる。この場合には係止部を、シートバックのフレーム部材に係止することができる。また係止部として、Jフックを使用することもできる。
【0042】
(5)また本実施例では、供給部70の構成を例示したが、供給部の構成を限定する趣旨ではない。供給部の形状(正面視)は、円形、楕円形、三角形等の各種形状を採用できる。また供給部は、単数又は複数設けることができる。
(6)また本実施形態では、シートバック6の下部に供給部70を設ける例を説明したが、供給部の配設位置を限定する趣旨ではない。供給部は、シートクッションの後部、シートクッションとシートバックの間などに配置できる。
【符号の説明】
【0043】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
9 レール部材
6F フレーム部材
6P クッション材
6S 表皮材
16a 中央部位
16b 側部位
30 支持ブラケット
40 送風装置
50 ダクト部材
60 下帯部材
70 供給部
80 流路部
88 通気孔
88a 第一通気孔(中央通気孔)
88b 第二通気孔(中央通気孔)
88c 第三通気孔(中央通気孔)
88d 側部連通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションやシートバックなどのシート構成部材を有するとともに、前記シート構成部材が、シート外形をなすクッション材と、前記シート構成部材に配設の送風装置とを有して、前記送風装置から吹出される気体を、前記クッション材の流路部を介して乗員に送風可能である車両用シートにおいて、
前記シート構成部材が、着座状態の乗員胴体部又は脚部に当接可能な中央部位と、着座状態の乗員胴体部又は脚部に非当接の側部位を有するとともに、
前記流路部が、前記中央部位に形成された中央通気孔と、前記側部位に形成された側部通気孔と、前記中央通気孔と前記側部通気孔をシート内で連通する連通部とを有し、前記送風装置から吹出される気体を、前記連通部を通じて、前記中央通気孔と前記側部通気孔の少なくとも一方から前記乗員に送風可能とした車両用シート。
【請求項2】
前記乗員の非当接時において、前記中央通気孔が、前記側部通気孔よりも多量に送風可能である請求項1に記載の車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224228(P2012−224228A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94013(P2011−94013)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】