説明

車両用シート

【課題】複数位置でディスプレイの画面を露出させた状態とすることができる簡易な構成の車両用シートを提供する。
【解決手段】シートバック10と、このシートバック10に設けられた、基準位置と露出位置との間を移動可能であるディスプレイ20と、前記シートバック10に設けられた、前記基準位置に位置するディスプレイ20の画面を覆いかつ前記露出位置に位置するディスプレイ20の画面に重ならない位置である被覆位置と、前記基準位置に位置するディスプレイ20の画面に重ならない位置である退避位置との間を移動可能であるディスプレイカバー30と、前記ディスプレイ20を前記基準位置と前記露出位置との間を移動させるか、または、前記ディスプレイカバー30を前記被覆位置と前記退避位置との間を移動させる駆動手段40と、を備える車両用シート1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックにディスプレイが設けられた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートバックの背面側に傾斜角度が調整可能なディスプレイ(テレビジョン装置)が設けられた車両用シートが記載されている。しかし、この特許文献1の構成は、ディスプレイの高さ位置を変化させることができるものの、下方位置ではディスプレイが蓋体に覆われてしまい映像を見ることができない。このように、ディスプレイの視認可能な高さ位置が限られている(複数の高さ位置で映像を見ることができない)と、小さな子供が見上げるように映像を見なければならなくなるなどの問題が生ずる。
【0003】
一方、特許文献2には、相対的に高い位置および相対的に低い位置でディスプレイが視認可能である車両用シートが記載されている。この車両用シートは、ディスプレイを上方に位置させた場合には、ディスプレイがシートバックから出現するため映像を見ることが可能となる。一方、ディスプレイを下方に位置させた場合には、半透明のバックボードを介して映像を見ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−151986号公報
【特許文献2】特開2009−160256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載の車両用シートでは、相対的に低い位置にディスプレイが位置する場合、ディスプレイの画面は半透明のバックボードに覆われているため、この半透明のバックボードを介してディスプレイの映像を見なければならない。つまり、相対的に低い位置にディスプレイが位置する場合、(ディスプレイの画面が完全に露出した相対的に高い位置にディスプレイが位置する場合よりも)映像が不鮮明となる問題がある。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ディスプレイを備えた車両用シートであって、複数位置でディスプレイの画面を露出させた状態とすることができる簡易な構成の車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にかかる車両用シートは、シートバックと、このシートバックに設けられた、基準位置と露出位置との間を移動可能であるディスプレイと、前記シートバックに設けられた、前記基準位置に位置するディスプレイの画面を覆いかつ前記露出位置に位置するディスプレイの画面に重ならない位置である被覆位置と、前記基準位置に位置するディスプレイの画面に重ならない位置である退避位置との間を移動可能であるディスプレイカバーと、前記ディスプレイを前記基準位置と前記露出位置との間を移動させるか、または、前記ディスプレイカバーを前記被覆位置と前記退避位置との間を移動させる駆動手段と、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記本発明にかかる車両用シートでは、駆動手段によりディスプレイを露出位置に位置させることにより、ディスプレイの画面が露出する。また、ディスプレイが基準位置に位置する場合においても、駆動手段によりディスプレイカバーを退避位置に位置させることにより、ディスプレイの画面が露出する。このように、ディスプレイの映像を見ようとする場合、ディスプレイを移動させてディスプレイの画面を露出させるか、ディスプレイカバーを移動させてディスプレイの画面を露出させるかを任意に選択することができる。つまり、露出位置および基準位置のいずれにおいてもディスプレイの画面を露出させた状態とすることができるから、複数位置でディスプレイによる鮮明な映像を見ることが可能となる。
【0009】
また、上記構成は、(ディスプレイとディスプレイカバーの両方を一度に移動させる必要がないから)ディスプレイおよびディスプレイカバーを共通の駆動手段によって移動させることができる。したがって、装置構成が簡易なものとなる。
【0010】
またこの場合、前記駆動手段は、駆動源であるモータと、このモータに接続されたモータの回転軸から偏心した偏心部を有するクランク部材と、を有し、前記ディスプレイまたはそれと一体的に移動する部材には、原位置に位置する前記クランク部材が一方向に回転したときに前記偏心部が係合するディスプレイ用係合溝が形成されるとともに、前記ディスプレイカバーまたはそれと一体的に移動する部材には、原位置に位置する前記クランク部材が他方向に回転したときに前記偏心部が係合するカバー用係合溝が形成されていればよい。
【0011】
上記構成(ディスプレイおよびディスプレイカバーの共通の駆動手段)は、モータを一方側に回転させればディスプレイが移動し、モータを他方側に回転させればディスプレイカバーが移動するというものであるため、制御が容易かつ確実である。
【0012】
さらにこの場合、前記被覆位置は、前記退避位置よりも上方に位置し、前記ディスプレイカバーまたはそれと一体的に移動する部材には、前記クランク部材側に突出した被支持部が形成され、前記クランク部材には、前記偏心部が原位置に位置するかまたは前記ディスプレイ用係合溝に係合しているときに、前記被覆位置に位置する前記ディスプレイカバーの被支持部を下方から支える支持部が形成されていればよい。
【0013】
被覆位置が退避位置よりも上方である場合、ディスプレイカバーが被覆位置に位置する際、重力によって退避位置まで移動(落下)してしまわないようにディスプレイカバーを支持する必要がある。上記構成によれば、駆動手段を構成するクランク部材の支持部によって被覆位置に位置するディスプレイカバーが落下しないように支持されるため、被覆位置に位置するディスプレイカバーを支持する部材を新たに設ける必要がない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数位置でディスプレイの画面を露出させた状態とすることができる。すなわち、ディスプレイによる鮮明な映像を複数位置で見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用シートの分解者視図である。
【図2】第一の状態にある車両用シートの要部を模式的に示した図であり、図2(a)は車両用シートを前方から見た図、図2(b)は図2(a)におけるA2−A2線断面図である。
【図3】第二の状態にある車両用シートの要部を模式的に示した図であり、図3(a)は車両用シートを前方から見た図、図3(b)は図3(a)におけるA3−A3線断面図である。
【図4】第三の状態にある車両用シートの要部を模式的に示した図であり、図4(a)は車両用シートを前方から見た図、図4(b)は図4(a)におけるA4−A4線断面図である。
【図5】図5(a)は図2(a)におけるB−B線切断部端面図であり、図5(b)は図2(a)におけるC−C線切断部端面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる車両用シートの使用態様(図6(a)第一の状態、図6(b)第二の状態、図6(c)第三の状態)の概略を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかる車両用シート1について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に上下(高低)方向とは、車両用シート1の上下方向(図1におけるZ方向)をいい、前後方向とは、車両用シート1の前後方向(図1におけるY方向)をいい、幅方向とは、車両用シート1の幅方向(図1におけるX方向)をいう。また、原位置とは、ディスプレイ20が基準位置に位置し、ディスプレイカバー30が被覆位置に位置するとき(後述する第一の状態)における、クランク部材42(偏心部421)の位置をいう。
【0017】
本実施形態にかかる車両用シート1は、乗員の背もたれとなるシートバック10と、このシートバック10に設けられたディスプレイ20と、このディスプレイ20よりも後側に設けられたディスプレイカバー30と、ディスプレイ20およびディスプレイカバー30を移動させる駆動手段40と、を備える。以下、各構成について詳細に説明する。
【0018】
シートバック10は、公知のリクライニング機構などを介して図示されない乗員の着座部分であるシートクッションに接続されている。このシートバック10は、シートフレーム11およびシートボディ12を有する。シートフレーム11は、シートバック10の骨格となる金属製の枠体である。このシートフレーム11に後述のブラケット111などが固定される。シートフレーム11の前方には、乗員を支持する図示されないクッションパッドが設けられる。
【0019】
シートボディ12は、シートバック10の後側を覆うように設けられる箱状の部材である。シートボディ12の後面には、略矩形状の開口である画面窓121が形成されている。この画面窓121は、少なくともディスプレイ20の画面よりも大きい。また、シートボディ12には、幅方向外側に向かって窪む溝である二つのカバーレール122が形成されている。一方側に位置するカバーレール122と他方側に位置するカバーレール122は、シートバック10を幅方向に二分する面に関し面対称となるように対向する。図1等に示されるように、カバーレール122は、シートボディ12の上端から画面窓121の幅方向側縁に沿って下方に延びる。画面窓121より下方位置では、前方に向かって突出した突状部の幅方向内側の面に形成されている。このカバーレール122の下端から画面窓121の下側縁までの長さは、少なくともディスプレイカバー30の高さ方向長さよりも大きい。さらに、シートボディ12の上端後方には、幅方向に細長い開口であるディスプレイ出入口123が形成されている。このディスプレイ出入口123の大きさは、ディスプレイ20を水平な平面で切断した断面の大きさよりも大きい。このディスプレイ出入口123の周縁には、開閉扉123aが取り付けられている。開閉扉123aは、ディスプレイ出入口123を覆った状態からディスプレイ出入口123を開放した状態まで回動自在に取り付けられている。なお、シートボディ12におけるディスプレイ出入口123より前方には、図示されないヘッドレストを支持するヘッドレストステーが挿通される貫通孔124が二つ形成されている。
【0020】
このシートバック10には、ディスプレイ20が設けられている。ディスプレイ20は、次のようにシートバック10に取り付けられている。シートバック10のシートフレーム11には、略矩形状の枠体であるブラケット111が固定されている。このブラケット111には、ディスプレイレール112が上下方向に延びるように固定されている。一方、ディスプレイ20には、アタッチメント21を介してスライドガイド22が固定されている。スライドガイド22は、ディスプレイ20の下側縁に沿うように固定されている。このスライドガイド22がディスプレイレール112に係合されている。つまり、ディスプレイ20は、直線状に形成されたディスプレイレール112に案内されて動作する。すなわち、ディスプレイ20(およびそれに固定されたアタッチメント21ならびにスライドガイド22)は、ディスプレイレール112が延びる上下方向にスライド自在である。
【0021】
このディスプレイ20に固定されたスライドガイド22およびアタッチメント21には、後述するクランク部材42(偏心部421)が係合するディスプレイ用係合溝201が形成されている。ディスプレイ用係合溝201は、平面視略L字状の溝である。具体的には、ディスプレイ用係合溝201は、上下方向に延びる短い部分と、幅方向に延びる長い部分とを有する。なお、このディスプレイ用係合溝201は、ディスプレイ20またはディスプレイ20と一体的に動く部材に形成されていればよい(ディスプレイ用係合溝201がスライドガイド22およびアタッチメント21に形成された構成は一例である)。
【0022】
一方、シートバック10には、ディスプレイカバー30が設けられている。ディスプレイカバー30は、シートボディ12に形成された画面窓121と略同じ幅、かつ、画面窓121よりも若干上下方向に長く形成された板状の部材である。ディスプレイカバー30の四隅近傍には、スライダ突起31が形成されている。各スライダ突起31は、ディスプレイカバー30の前面から突出し、幅方向外側に向かって屈曲した略「L」字状に形成されている。このスライダ突起31がシートボディ12に形成されたカバーレール122に係合されている。つまり、ディスプレイカバー30はカバーレール122に案内されて動作する。すなわち、ディスプレイカバー30はカバーレール122が延びる上下方向にスライド自在である。
【0023】
このディスプレイカバー30には、前方に突出した二枚の板部材321,322が設けられている。幅方向に延びるこの二枚の板部材321,322の間の隙間が、後述するクランク部材42(偏心部421)が係合するカバー用係合溝301となる。図2(a)等に示されるように、上側に位置する板部材321は、下側に位置する板部材322よりも短い。この上側に位置する板部材321の一方側端部と、下側に位置する板部材322の一方側端部の幅方向位置は略一致している。そのため、上側に位置する板部材321の他方側端部は、下側に位置する板部材322の他方側端部よりも内側に位置する。この上側に位置する板部材321と下側に位置する板部材322のギャップにより、カバー用係合溝301は上方に向かって開口した部分(以下、開口部301aと称する)が形成された長手方向に延びる溝となる。なお、このカバー用係合溝301は、ディスプレイカバー30またはディスプレイカバー30と一体的に動く部材に形成されていればよい(ディスプレイカバー30に設けられた板部材321,322によってカバー用係合溝301が構築された構成は一例である)。
【0024】
このように、カバー用係合溝301は、二枚の板部材321,322の間に形成された隙間である。つまり、カバー用係合溝301は前後方向に長い(深い)溝であり、ディスプレイ用係合溝201よりも下方に位置する。このカバー用係合溝301の深さにより、ディスプレイ20およびディスプレイカバー30が所定位置に取り付けられると、ディスプレイ用係合溝201とカバー用係合溝301は上下方向で重なる。また、ディスプレイ用係合溝201の上下方向に延びる部分は、カバー用係合溝301の開口部301aとが連なる。つまり、ディスプレイ用係合溝201とカバー用係合溝301は、図2(a)における右側で連なり、両者を併せて見た形状が略「U」字状である溝を構築する。
【0025】
また、ディスプレイカバー30には、クランク部材42側(前方)に向かって突出した棒状の部材である被支持部33が設けられている。この被支持部33は、カバー用係合溝301の一方の幅方向外側に、カバー用係合溝301とほぼ同じ高さ位置に設けられている。
【0026】
このような構成のディスプレイ20およびディスプレイカバー30を動作させる駆動手段40は、駆動源であるモータ41およびクランク部材42を備える。モータ41は、ブラケット111における下方の一方側寄り位置に固定されている。一方、クランク部材42は、モータ41の回転動力が伝達される部材である。本実施形態では、歯車423を介してモータ41の回転動力が伝達される。モータ41の回転軸が回転すると、相対的に幅広の部分の中心(図2(a)における左側の略円形の部分の中心)を回転中心としてクランク部材42が回転する(以下、この固定された部分を単にクランク部材42の「回転中心P」と称する)。また、クランク部材42には偏心部421が形成されている。偏心部421は、後方に突出した突起であり、クランク部材42の回転中心Pから離れた位置(本実施形態では相対的に幅狭の部分)に形成されている。すなわち、偏心部421はクランク部材42の回転中心Pから偏心した位置に形成されており、クランク部材42が回転すると、その回転中心Pを中心とした円弧を描くように移動する。
【0027】
このクランク部材42の偏心部421は、ディスプレイ用係合溝201またはカバー用係合溝301に係合される。本実施形態では、原位置に位置する偏心部421は、ディスプレイ用係合溝201とカバー用係合溝301の境界近傍に位置する。したがって、クランク部材42が回転中心Pを中心として一方向(前方から見て反時計回り)に回転すると、クランク部材42の偏心部421は上側に位置するディスプレイ用係合溝201に係合する。クランク部材42が回転中心Pを中心として他方向(前方から見て時計回り)に回転すると、クランク部材42の偏心部421は下側に位置するカバー用係合溝301に係合する。
【0028】
また、図2および図5等に示すように、クランク部材42の相対的に幅広の部分には、後方に向かって突出した支持部422が形成されている。支持部422は、クランク部材42の回転中心Pを中心とする円弧状に突出した壁である。ディスプレイカバー30に形成された被支持部33は、クランク部材42が原位置に位置しているとき、または、上記一方向に回転したとき(偏心部421がディスプレイ用係合溝201に係合しているとき)にクランク部材42の支持部422に下方から支えられた状態となる。このように被支持部33が支持部422に支えられた状態であれば、ディスプレイカバー30が重力で下方にスライドしてしまう(落下してしまう)ことはない。
【0029】
以下、上記構成を備える車両用シート1におけるディスプレイ20およびディスプレイカバー30の操作(駆動手段40の制御)について説明する。本実施形態にかかる車両用シート1では、図6に示すような三つの状態が切り替え可能である。図6(a)に示す第一の状態は、ディスプレイ20を使用しない(ディスプレイ20の画面が露出していない)状態であり、ディスプレイ20は基準位置、ディスプレイカバー30は被覆位置に位置する。図6(b)に示す第二の状態は、ディスプレイ20を相対的に(第三の状態よりも)高い位置で使用する(相対的に高い位置でディスプレイ20の画面を露出させた)ときの状態であり、ディスプレイ20は露出位置、ディスプレイカバー30は被覆位置に位置する。図6(c)に示す第三の状態は、ディスプレイ20を相対的に(第二の状態よりも)低い位置で使用する(相対的に低い位置でディスプレイ20の画面を露出させた)ときの状態であり、ディスプレイ20は基準位置、ディスプレイカバー30は退避位置に位置する。
【0030】
図2に模式的に示す第一の状態は、基準位置に位置するディスプレイ20の画面を、被覆位置に位置するディスプレイカバー30が覆った状態である。したがって、ディスプレイ20の画面は露出していない。
【0031】
この第一の状態から第二の状態とする場合には、図3に模式的に示すように、モータ41を駆動し、原位置に位置するクランク部材42を一方向(上方)に回転させる。すると、原位置に位置していたクランク部材42の偏心部421はディスプレイ用係合溝201に係合する。具体的には、偏心部421は、ディスプレイ用係合溝201の上下方向に延びる部分から、ディスプレイ用係合溝201の幅方向に延びる部分に入り込む。このディスプレイ用係合溝201の幅方向に延びる部分に入り込んだ偏心部421が、クランク部材42の回転中心Pを中心として回転することにより、ディスプレイ20はアタッチメント21およびスライドガイド22とともにディスプレイレール112にガイドされて押し上げられる(上方にスライドする)。具体的には、偏心部421がディスプレイ用係合溝201の幅方向に延びる部分の上壁に接触してディスプレイ20を押し上げる。押し上げられたディスプレイ20は、開閉扉123aを回転させつつディスプレイ出入口123からシートバック10の上方に突出した露出位置まで移動する。このようにクランク部材42が一方向に回転したとき(偏心部421がディスプレイ用係合溝201に係合しているとき)には、ディスプレイカバー30の被支持部33が、クランク部材42の回転中心Pを中心とする円弧状に形成された支持部422に下方から支えられた状態が維持されるから(図3(a)参照)、ディスプレイカバー30は被覆位置にそのまま留まる。露出位置に位置するディスプレイ20の画面は、被覆位置に位置するディスプレイカバー30に覆われない(露出位置に位置するディスプレイ20の画面と被覆位置に位置するディスプレイカバー30とは前後方向に重ならない)。つまり、第一の状態において、ディスプレイカバー30に覆われていたディスプレイ20の画面が、シートバック10の上方で露出した状態となる。すなわち、相対的に高い位置(第三の状態よりも高い位置)にディスプレイ20を位置させた状態で映像を見ることが可能な第二の状態となる。このように、クランク部材42を一方向に回転させれば、ディスプレイカバー30を被覆位置に留めた状態で、ディスプレイ20のみを基準位置から露出位置まで移動させることができる。
【0032】
そして、第二の状態から第一の状態とする場合には、モータ41を駆動し、原位置に位置するクランク部材42を他方向に回転させる。すると、ディスプレイ用係合溝201の幅方向に延びる部分に入り込んだ偏心部421が、クランク部材42の回転中心Pを中心として回転することにより、ディスプレイ20はアタッチメント21およびスライドガイド22とともにディスプレイレール112にガイドされて押し下げられる。具体的には、ディスプレイ用係合溝201に係合する偏心部421がディスプレイ20を押し下げる。なお、このとき、ディスプレイカバー30はそのまま被覆位置に留まる。そのままクランク部材42を原位置まで回転させると、ディスプレイ20が基準位置に位置した状態となる。すなわち、基準位置に位置するディスプレイ20の画面が、被覆位置に位置するディスプレイカバー30に覆われた第一の状態(図2参照)となる。
【0033】
一方、第一の状態から第三の状態とする場合には、図4に模式的に示すように、モータ41を駆動し、クランク部材42を他方向に回転させる。すると、偏心部421は開口部301aからカバー用係合溝301(幅方向に延びる溝)に入り込む。偏心部421がカバー用係合溝301に係合すると、ディスプレイカバー30の被支持部33が、クランク部材42の支持部422に下方から支えられた状態が解消され、ディスプレイカバー30が下方に移動することが可能となる。したがって、このカバー用係合溝301に入り込んだ偏心部421が、クランク部材42の回転中心Pを中心として回転することにより、ディスプレイカバー30はカバーレール122にガイドされて押し下げられる(下方にスライドする)。具体的には、カバー用係合溝301に係合する偏心部421がディスプレイカバー30を押し下げる。押し下げられたディスプレイカバー30は、退避位置まで移動する。一方、ディスプレイ20は、そのまま基準位置に留まる。基準位置に位置するディスプレイ20の画面は、退避位置に位置するディスプレイカバー30に覆われない(基準位置に位置するディスプレイ20の画面と退避位置に位置するディスプレイカバー30とは前後方向に重ならない)。つまり、第一の状態において、ディスプレイカバー30に覆われていたディスプレイ20の画面が、基準位置で露出した状態となる。すなわち、相対的に低い位置(第二の状態よりも低い位置)にディスプレイ20を位置させた状態で映像を見ることが可能な第三の状態となる。このように、クランク部材42を他方向に回転させれば、ディスプレイ20を基準位置に留めた状態で、ディスプレイカバー30のみを被覆位置から退避位置まで移動させることができる。
【0034】
そして、第三の状態から第一の状態とする場合には、モータ41を駆動し、クランク部材42を一方向に回転させる。すると、カバー用係合溝301に入り込んだ偏心部421が、クランク部材42の回転中心Pを中心として回転することにより、ディスプレイカバー30はカバーレール122にガイドされて押し上げられる。具体的には、偏心部421がカバー用係合溝301を構成する上側の板部材321に接触してディスプレイカバー30を押し上げる。なお、このとき、ディスプレイ20はそのまま基準位置に留まる。そのままクランク部材42を原位置まで回転させると、ディスプレイカバー30が被覆位置に位置する。この際、偏心部421がカバー用係合溝301を構成する上側の板部材321に接触した状態が解消した瞬間、ディスプレイカバー30の被支持部33がクランク部材42の支持部422に下方から支えられた状態となる。このようにして、基準位置に位置するディスプレイ20の画面が、被覆位置に位置するディスプレイカバー30に覆われた第一の状態(図2参照)となる。
【0035】
このように、本実施形態にかかる車両用シート1は、映像を見ようとする際に、図6(b)に示すようにディスプレイ20を高い位置に移動させてディスプレイ20の画面を露出させるか、または、図6(c)に示すようにディスプレイ20を覆っているディスプレイカバー30を低い位置に移動させてディスプレイ20の画面を露出させることができる構成である。そして、このディスプレイ20およびディスプレイカバー30の移動を一の駆動源(モータ41)で行うことができるものである。
【0036】
以上説明した本実施形態にかかる車両用シート1によれば、次のような作用効果が奏される。
【0037】
本実施形態にかかる車両用シート1では、駆動手段40によりディスプレイ20を露出位置に位置させることにより、ディスプレイ20の画面が露出する。また、ディスプレイ20が基準位置に位置する場合においても、駆動手段40によりディスプレイカバー30を退避位置に位置させることにより、ディスプレイ20の画面が露出する。このように、ディスプレイ20の映像を見ようとする場合、ディスプレイ20を移動させてディスプレイ20の画面を露出させるか、ディスプレイカバー30を移動させてディスプレイ20の画面を露出させるかを任意に選択することができる。つまり、露出位置および基準位置のいずれにおいてもディスプレイ20の画面を露出させた状態とすることができ、複数位置でディスプレイ20による鮮明な映像を見ることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態にかかる車両用シート1は、ディスプレイ20とディスプレイカバー30の両方を一度に移動させる必要はないことを巧く利用して、ディスプレイ20およびディスプレイカバー30を共通の駆動手段40(モータ41)によって移動させることのできる構成としたものである。そして、本実施形態にかかる車両用シート1における共通の駆動手段40は、モータ41を一方側に回転させればディスプレイ20が移動し、モータ41を他方側に回転させればディスプレイカバー30が移動するというものであるため、制御が容易かつ確実である。
【0039】
また、ディスプレイカバー30が被覆位置に位置する際、重力によって退避位置まで移動(落下)してしまわないようにディスプレイカバー30を支持する必要がある。本実施形態では、かかるディスプレイカバー30の移動(落下)を、ディスプレイカバー30に形成された被支持部33が、原位置に位置するかまたは一方向に回転したクランク部材42に形成された支持部422に下方から支えられる構造とすることで防止している。このように、本実施形態によれば、被覆位置に位置するディスプレイカバー30を支持する部材を新たに設ける必要がない。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、相対的に高い位置で映像を見ようとする際、ディスプレイ20(アタッチメント21およびスライドガイド22)を上方にスライドさせることを説明したが、画面が被覆位置に位置するディスプレイカバー30に重ならない位置までディスプレイ20を移動させることができる構成であれば、そのスライドさせる方向は限定されない。また、相対的に低い位置で映像を見ようとする際、ディスプレイカバー30を下方にスライドさせることを説明したが、基準位置に位置するディスプレイ20の画面に重ならない位置まで移動させることができる構成であれば、そのスライドさせる方向は限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1 車両用シート
10 シートバック
20 ディスプレイ
201 ディスプレイ用係合溝
30 ディスプレイカバー
301 カバー用係合溝
33 被支持部
40 駆動手段
41 モータ
42 クランク部材
421 偏心部
422 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、
このシートバックに設けられた、基準位置と露出位置との間を移動可能であるディスプレイと、
前記シートバックに設けられた、前記基準位置に位置するディスプレイの画面を覆いかつ前記露出位置に位置するディスプレイの画面に重ならない位置である被覆位置と、前記基準位置に位置するディスプレイの画面に重ならない位置である退避位置との間を移動可能であるディスプレイカバーと、
前記ディスプレイを前記基準位置と前記露出位置との間を移動させるか、または、前記ディスプレイカバーを前記被覆位置と前記退避位置との間を移動させる駆動手段と、を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記駆動手段は、駆動源であるモータと、このモータに接続されたモータの回転軸から偏心した偏心部を有するクランク部材と、を有し、
前記ディスプレイまたはそれと一体的に移動する部材には、原位置に位置する前記クランク部材が一方向に回転したときに前記偏心部が係合するディスプレイ用係合溝が形成されるとともに、前記ディスプレイカバーまたはそれと一体的に移動する部材には、原位置に位置する前記クランク部材が他方向に回転したときに前記偏心部が係合するカバー用係合溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記被覆位置は、前記退避位置よりも上方に位置し、
前記ディスプレイカバーまたはそれと一体的に移動する部材には、前記クランク部材側に突出した被支持部が形成され、
前記クランク部材には、前記偏心部が原位置に位置するかまたは前記ディスプレイ用係合溝に係合しているときに、前記被覆位置に位置する前記ディスプレイカバーの被支持部を下方から支える支持部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−231832(P2012−231832A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100834(P2011−100834)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】