説明

車両用シート

【課題】運転者の身長が高い場合にはシートクッション着座位置を上げるとともにシートバック支持位置を後退させることができ、運転者の身長が低い場合にはシートクッション着座位置を下げるとともにシートバック支持位置を前進させることができて、運転者の体格に応じて安価に着座位置を変更可能な車両用シートを構成する。
【解決手段】ベースシート25に回転可能に連結された回動式クッション体50は、内部が中空となる直方体の構造体にて形成されており、運転者に当たる面部分を弾性ネット部材28により形成している。運転者の身長が高い場合には、回動式クッション体50をシートクッション31に重畳するように配置させることができる。運転者の身長が低い場合には、回動式クッション体50をシートバック35に重畳するように配置させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設置される車両用シートに関する。詳しくは、本発明は、体格の大きさに応じて着座した際の例えば運転のし易さを確保できるように構成される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には乗員が着座する車両用シートが設置されている。このような車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、着座した際の背凭れとなるシートバックとを備える。このような車両用シートには、体格が小さい子供が着座する場合もある。このため、体格が小さい子供であっても車両用シートに着座し易く設計される車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用シートによれば、体格が大きい大人や体格が小さい子供であっても、着座し易いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−191335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転席として設置される車両用シートは、運転者にとってアクセル操作およびブレーキ操作のし易いように設計されている。すなわち、運転席として設置される車両用シートには、シートクッション着座位置を電動にて上下させる電動リフタ機構や、シートバック支持位置を手動にて前後させるスライドレール機構等の、適宜のシート位置変更機構が設けられている。このシート位置変更機構により、シートクッション着座位置およびシートバック支持位置は、着座者の任意で変更することができる。つまり、身長が2m近くある体格の人が運転者となる場合には、運転者の足の長さに応じてシートクッション着座位置を上げるとともにシートバック支持位置を後退させておくことができる。また逆に、身長が1m50cmも満たない体格の人が運転者となる場合には、運転者の足の長さに応じてシートクッション着座位置を下げるとともにシートバック支持位置を前進させておくことができる。
【0005】
しかしながら、昨今の自動車では、商品コンセプトを低価格とするものが増えつつある。このため、上記した車両用シートにあっては、製造コストを安価とするために、構成の簡素化を図りたいとの要請がある。より詳しく言えば、上記した電動リフタ機構やスライドレール機構等の設置を省略することによって車両用シートの簡素を図って、製造コストを安価としたいとの要請がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートクッション着座位置およびシートバック支持位置を変更するためのシート位置変更機構を設けることなく、運転者の身長が高い場合にはシートクッション着座位置を上げるとともにシートバック支持位置を後退させることができ、運転者の身長が低い場合にはシートクッション着座位置を下げるとともにシートバック支持位置を前進させることができて、運転者の体格に応じて着座位置を変更可能な車両用シートを安価に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって本発明に係る車両用シートは次の手段をとる。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両用シートは、自動車等の車両に設置される乗員が着座する車両用シートであって、シートクッションとシートバックとを具備するベースシートと、該ベースシートに対して相対移動可能に構成されて該シートクッションおよび該シートバックのいずれかに重畳するように配置可能に構成される選択配置重畳体と、を備え、前記選択配置重畳体は、内部が中空となる構造体にて形成され且つ少なくとも着座者に当たる面部分を弾性ネット部材で形成され、乗員が着座可能に前記シートクッションおよび前記シートバックのいずれか一方を露出させるように該シートクッションおよび該シートバックのいずれか他方に重畳するように配置された場合に着座した乗員の着座姿勢を支持するように機能することを特徴とする。
【0008】
この第1の発明に係る車両用シートによれば、選択配置重畳体を乗員が着座可能にシートクッションおよびシートバックのいずれか一方を露出させるようにシートクッションおよびシートバックのいずれか他方に重畳するように配置させることができる。ここで、選択配置重畳体は、着座した乗員の着座姿勢を支持するように機能することができる。また、選択配置重畳体は、内部が中空となる構造体にて形成されており、少なくとも着座者に当たる面部分を弾性ネット部材により形成しているので、クッションパッド無しでクッション効果を得ることができて簡素な構成となる。これによって、着座者の身長が高い場合には、シートクッション着座位置を上げるとともにシートバック支持位置を後退させように、選択配置重畳体をシートクッションに重畳するように配置させることができる。また、着座者の身長が低い場合には、シートクッション着座位置を下げるとともにシートバック支持位置を前進させように、選択配置重畳体をシートバックに重畳するように配置させることができる。したがって、この第1の発明に係る車両用シートによれば、シートクッション着座位置およびシートバック支持位置を変更するためのシート位置変更機構を設けることなく、運転者の体格に応じて着座位置を変更可能な車両用シートを安価に構成することができる。
【0009】
第2の発明に係る車両用シートは、前記第1の発明に係る車両用シートにおいて、前記選択配置重畳体が前記シートバックに重畳するように配置された場合の着座者の座となる前記シートクッションの座面部分の押圧時の硬さは、該選択配置重畳体が前記シートクッションに重畳するように配置された場合の着座者の座となる該選択配置重畳体の座面部分の押圧時の硬さに比して、柔らかい硬さにて設定されていることを特徴とする。
この第2の発明に係る車両用シートによれば、シートクッションの座面部分の押圧時の硬さは、選択配置重畳体の座面部分の押圧時の硬さに比して柔らかい硬さにて設定されているので、体重の軽い人がシートクッションの座面部分に着座した場合には、その軽い体重に合わせて支持することができる。また、これとは逆に、体重の重い人が選択配置重畳体の座面部分に着座した場合には、その重い体重に合わせて支持することができる。これによって、体重に応じて着座した際の座面部分の支持力を変えることができて、座り心地を向上させることができる。
【0010】
第3の発明に係る車両用シートは、前記第1または前記第2の発明に係る車両用シートにおいて、前記選択配置重畳体は、前記シートクッションに重畳する配置位置と、前記シートバックに重畳する配置位置との間を、前記ベースシートに取り付けられた状態で変位可能となるようにヒンジを介して該ベースシートに結合されていることを特徴とする。
この第3の発明に係る車両用シートによれば、選択配置重畳体は、ベースシートに取り付けられた状態で変位可能となるようにヒンジを介してベースシートに結合されているので、選択配置重畳体をベースシートから取り外すことなく、シートクッションに重畳する配置位置とシートバックに重畳する配置位置との間で変位させることができる。これによって、選択配置重畳体をベースシートから外すこと無く、シートクッションに重畳する配置位置とシートバックに重畳する配置位置との間で変位させることができて、車両用シートとしての利便性を高めることができる。
【0011】
第4の発明に係る車両用シートは、前記第1から前記第3のいずれかの発明に係る車両用シートにおいて、前記シートクッションおよび前記シートバックは、少なくとも着座者に当たる面部分が弾性ネット部材で形成されていることを特徴とする。
この第4の発明に係る車両用シートによれば、シートクッションおよびシートバックは、少なくとも着座者に当たる面部分が弾性ネット部材で形成されているので、選択配置重畳体と同じような感触とすることができつつ、クッションパッド無しでクッション効果を得ることができて簡素な構成となる。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る車両用シートによれば、シートクッション着座位置およびシートバック支持位置を変更するためのシート位置変更機構を設けることなく、運転者の体格に応じて着座位置を変更可能な車両用シートを安価に構成することができる。
第2の発明に係る車両用シートによれば、体重に応じて着座した際の座面部分の支持力を変えることができて、座り心地を向上させることができる。
第3の発明に係る車両用シートによれば、ベースシートから選択配置重畳体を外すこと無く、シートクッションに重畳する配置位置とシートバックに重畳する配置位置との間を変位させることができる。
第4の発明に係る車両用シートによれば、選択配置重畳体と同じような感触とすることができつつ、クッションパッド無しでクッション効果を得ることができて簡素な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】選択配置重畳体がシートクッションに重畳するように配置された場合の第1形式の車両用シートを斜視にて示す模式的斜視図である。
【図2】選択配置重畳体がシートバックに重畳するように配置された場合の第2形式の車両用シートを斜視にて示す模式的斜視図である。
【図3】図1の第1形式の車両用シートを側面視にて示す模式的側面視図である。
【図4】図2の第2形式の車両用シートを側面視にて示す模式的側面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用シートを実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する本発明に係る車両用シートは、自動車の運転席に設置されるものである。この車両用シートは、運転者の体格の大きさにかかわらず、着座した運転者にとって運転し易さが確保されたものとなっている。図1および図2には、自動車の車室内の車両フロア11に設置された車両用シート20が図示されている。
図1は、回動式クッション体50がシートクッション31に重畳するように配置された場合の第1形式の車両用シート20を斜視にて示す模式的斜視図である。図2は、回動式クッション体50がシートバック35に重畳するように配置された場合の第2形式の車両用シート20を斜視にて示す模式的斜視図である。図3は、図1の第1形式の車両用シート20を側面視にて示す模式的側面視図である。図4は、図2の第2形式の車両用シート20を側面視にて示す模式的側面視図である。図1および図2に示すように、車両用シート20は、概略、ベースシート25と、回動式クッション体50とを備える。ベースシート25は、シートクッション31とシートバック35とを具備して構成される。このベースシート25は、シート脚部として機能する固定型脚部26により自動車の車両フロア11に固定された状態で設置されている。なお、回動式クッション体50は、本発明に係る選択配置重畳体に相当する。また、車両用シート20は、図示記載のように前後左右が規定されている。この車両用シート20の左右方向が、車両用シート20の幅方向となっている。
【0015】
また、図3および図4に示すように、自動車の車室内には、自動車を操舵するためのアクセルペダル12およびハンドル13が設置されている。ここで、アクセルペダル12に関しては、車両フロア11に対して固定された状態で設置されており、ハンドル13に関しては、運転者の任意で車室内の配置位置を変更できるように設置されている。車両フロア11に固定された状態で設置される車両用シート20と、車両フロア11に固定された状態で設置されるアクセルペダル12との相対位置は変更できずに互いの相対位置が固定されたものとなっている。これに対して、車両フロア11に固定された状態で設置される車両用シート20と、運転者の任意で車室内の配置位置を変更できるハンドル13との相対位置は簡単に変更することができるものとなっている。なお、図3に示す符号P1は、体格が大きい運転者を示している。図3に示す体格が大きい運転者P1は、「AM95」と称され、米国成人男性の体重の正規分布において最軽量側から95%の人が含まれる体重を有する体格で設定されるものである。また、図4に示す符号P2は、体格が小さい運転者を示している。図4に示す体格が小さい運転者P2は、「JF05」と称され、日本国成人女性の体重の正規分布において最軽量側から5%の人が含まれる体重を有する体格で設定されるものである。
【0016】
ベースシート25について説明する。ベースシート25は、概略、ベースフレーム27と、弾性ネット部材28と、ヒンジ構成部41とを備える。
ベースフレーム27は、シートクッション31の骨格をなすクッションフレーム部32と、シートバック35の骨格をなすバックフレーム部36との互いを一体化することにより形成されている。つまり、ベースフレーム27のクッションフレーム部32は、シートクッション31の外縁をなすように形成されている。また、ベースフレーム27のバックフレーム部36は、シートバック35の外縁をなすように形成されている。このように外縁をなすベースフレーム27の周内には、弾性ネット部材28が張られている。この弾性ネット部材28は、適宜に引っ張られた状態でベースフレーム27に懸架されるようにして配設される。これにより、ベースフレーム27となるクッションフレーム部32には、懸架されるように配設された弾性ネット部材28により、シートクッション31の座面をなす座面部33が形成される。また、ベースフレーム27となるバックフレーム部36には、懸架されるように配設された弾性ネット部材28により、シートバック35の背中支持面をなす背中支持面部37が形成される。これら座面部33および背中支持面部37は、着座者に当たって着座者を支持する面部分を構成している。
なお、座面部33は、回動式クッション体50がシートバック35に重畳するように配置された場合の着座者の座となるシートクッション31の座面部分を形成する。また、背中支持面部37は、回動式クッション体50がシートクッション31に重畳するように配置された場合の着座者の背凭れとなるシートバック35の背中支持部分を形成する。
【0017】
上記した座面部33および背中支持面部37を形成する弾性ネット部材28は、次のような部材にて形成される。弾性ネット部材28は、いわゆるネットシートとも称され、網目状に織り込まれたシート状に形成されている。弾性ネット部材28は、通気性に優れるとともに弾性を有している。具体的には、弾性ネット部材28は、この網目の隙間から表裏に通気できるようになっている。また、弾性ネット部材28は、網目状に織り込まれた繊維自体が弾性を有している。このため、弾性ネット部材28に押圧負荷がかけられると弾性ネット部材28は撓んで変形する。逆に、この押圧負荷が無くなると、弾性ネット部材28は元に戻るように平面形状にて延びた状態となる。なお、弾性ネット部材28に押圧負荷がかかると、弾性ネット部材28は、懸架されるように配設された平面形状から適宜に伸ばされた凹凸形状に変形する。このように弾性ネット部材28は、平面形状に戻ろうとする弾性復元力により、クッションパッドのようなクッション性機能を発揮するものとなっている。
ここで、上記した座面部33を形成する弾性ネット部材28と、上記した背中支持面部37を形成する弾性ネット部材28とは、押圧時の硬さが相違するように形成されている。すなわち、座面部33を形成するにあたってクッションフレーム部32に懸架される弾性ネット部材281(28)の張力は、背中支持面部37を形成するにあたってバックフレーム部36に懸架される弾性ネット部材282(28)の張力よりも、緩い張力となるように設定されている。
【0018】
また、上記したクッションフレーム部32とバックフレーム部36との境界近くのベースフレーム27の幅方向両側には、次に説明する回動式クッション体50を連結するヒンジ構成部41が設けられている。このように後端部分がベースフレーム27に結合されるヒンジ構成部41は、このベースフレーム27の幅方向両側から前側に突き出すようにして配設されている。このヒンジ構成部41の前端部分には、ベースフレーム27の幅方向で貫通された連結孔42が設けられている。この連結孔42には、回動式クッション体50の幅方向量側から突き出した支持軸45が、遊びを有した状態で挿し込まれている。このため、支持軸45は、連結孔42内で回転できる。この連結孔42内の支持軸45の回転によって回動式クッション体50を回転させることができる。なお、本発明に係るヒンジは、ベースシート25に設けられるヒンジ構成部41と、次に説明する回動式クッション体50の支持軸45とによって構成されるヒンジ構造40にて成立している。
【0019】
回動式クッション体50について説明する。
回動式クッション体50は、シートクッション31に重畳する配置位置と、シートバック35に重畳する配置位置との間を、ベースシート25に取り付けられた状態で変位可能となるようにヒンジ構造40を介してベースシート25に結合されている。つまり、回動式クッション体50は、上記したベースシート25に対してヒンジ構造40を介して相対回転(移動)可能となっており、シートクッション31およびシートバック35のいずれかに対して重畳するように配置することができる。
回動式クッション体50は、図示するように、少なくとも幅方向両側に配置される周回側壁51と、この周回側壁51の上面として配設される表側当接面53(図1参照)と、この周回側壁51の下面として配設される裏側当接面55(図2参照)とを備える。
周回側壁51は、図1に示す上下方向で開口した形状となるように、または図2に示す前後方向で開口した形状となるように形成されている。具体的には、周回側壁51は、適宜の樹脂にて周回された側壁にて形成されている。この周回側壁51は、帯状の樹脂板を折曲することにより成形される。つまり、折曲成形された周回側壁51は、前側壁511、後側壁512、左側壁513、右側壁514を形成する。このように成形された周回側壁51のシートバック35側の開口部分には、上記した弾性ネット部材28と同様の弾性ネット部材28が配設される。
【0020】
すなわち、図1に示すように、周回側壁51の表側端縁51aの周内には、弾性ネット部材28が張られている。この弾性ネット部材28は、適宜に引っ張られた状態で周回側壁51の表側端縁51aに懸架されるようにして配設される。これにより、周回側壁51の表側端縁51aの周内には、懸架されるように配設された弾性ネット部材28により、表側当接面53が形成される。この表側当接面53は、回動式クッション体50がシートクッション31に重畳するように配置された場合の着座者の座となる回動式クッション体50の座面部分を形成する。
また、図2に示すように、周回側壁51の裏側端縁51bの周内にも、弾性ネット部材28が張られている。この弾性ネット部材28は、適宜に引っ張られた状態で周回側壁51の裏側端縁51bに懸架されるようにして配設される。これにより、周回側壁51の裏側端縁51bの周内には、懸架されるように配設された弾性ネット部材28により、裏側当接面55が形成される。この裏側当接面55は、回動式クッション体50がシートバック35に重畳するように配置された場合の着座者の背凭れとなる回動式クッション体50の背中支持面部分を形成する。
【0021】
ここで、上記した表側当接面53を形成する弾性ネット部材28と、上記した裏側当接面55を形成する弾性ネット部材28とは、押圧時の硬さが相違するように形成されている。すなわち、表側当接面53を形成するにあたって周回側壁51の表側端縁51aに懸架される弾性ネット部材28は、上記した背中支持面部37を形成するにあたってバックフレーム部36に懸架される弾性ネット部材282(28)の張力と同一の張力に設定されている。これに対し、裏側当接面55を形成するにあたって周回側壁51の裏側端縁51bに懸架される弾性ネット部材28は、上記した座面部33を形成するにあたってクッションフレーム部32に懸架される弾性ネット部材281(28)の張力と同一の張力に設定されている。このため、裏側当接面55を形成する弾性ネット部材282(28)の張力は、表側当接面53を形成する弾性ネット部材281(28)の張力よりも、緩い張力となるように設定されている。このため、シートクッション31の座面部33の押圧時の硬さは弾性ネット部材282(28)の硬さとなり、回動式クッション体50の表側当接面53の押圧時の硬さは、この弾性ネット部材282(28)の硬さより柔らかい弾性ネット部材281(28)の硬さとなる。つまり、弾性ネット部材28は、運転者の座り心地を考慮し、互いの弾性ネット部材28(281同士、282同士)についての互いの押圧時の硬さに関して、互いが関連付けられることにより形成されている。
【0022】
上記した車両用シート20によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した車両用シート20によれば、運転者P1(AM95)のように体格が大きい乗員が着座する場合には、図3に示すように、回動式クッション体50をシートクッション31に重畳させるように配置して、シートバック35を露出させることができる。また逆に、運転者P2(JF05)のように体格が小さい乗員が着座する場合には、図4に示すように、回動式クッション体50をシートバック35に重畳させるように配置して、シートクッション31を露出させることができる。
ここで、回動式クッション体50は、着座した運転者P1,P2の着座姿勢を支持するように機能することができる。すなわち、回動式クッション体50は、内部が中空となる直方体の構造体にて形成されており、運転者P1,P2に当たる面部分を弾性ネット部材28により形成しているので、クッションパッド無しでクッション効果を得ることができて簡素な構成となる。
また、運転者P1のように着座者の身長が高い場合には、シートクッション31着座位置を上げるとともにシートバック35支持位置を後退させように、回動式クッション体50をシートクッション31に重畳するように配置させることができる。これによって、運転者P1のように着座者の身長が高い場合でも、この身長の高さに合わせて車両用シート20における着座位置を変更することができる。また、運転者P2のように着座者の身長が低い場合には、シートクッション31着座位置を下げるとともにシートバック35着座位置を前進させように、回動式クッション体50をシートバック35に重畳するように配置させることができる。これによって、運転者P2のように着座者の身長が低い場合でも、この身長の高さに合わせて車両用シート20における着座位置を変更することができる。すなわち、低い身長の運転者P2であっても、アクセルペダル12を簡単に操作することができる。したがって、上記した車両用シート20によれば、シートクッション31着座位置およびシートバック35着座位置を変更するためのシート位置変更機構を設けることなく、運転者の体格に応じて安価に着座位置を変更可能な車両用シート20を構成することができる。
【0023】
また、上記した車両用シート20によれば、シートクッション31の座面部33(座面部分)の押圧時の硬さ(弾性ネット部材281)は、回動式クッション体50の表側当接面53(座面部分)の押圧時の硬さ(弾性ネット部材282)に比して柔らかい硬さにて設定されているので、体重の軽い人がシートクッション31の座面部33に着座した場合には、その軽い体重に応じた支持力により着座者を支持することができる。また、これとは逆に、体重の重い人が回動式クッション体50の表側当接面53に着座した場合には、その重い体重に応じた支持力により着座者を支持することができる。これによって、体重に応じて着座した際の座面部分の支持力を変えることができて、座り心地を向上させることができる。
また、上記した車両用シート20によれば、回動式クッション体50は、ベースシート25に取り付けられた状態で変位可能となるようにヒンジ構造40を介してベースシート25に結合されているので、回動式クッション体50をベースシート25から取り外すことなく、シートクッション31に重畳する配置位置とシートバック35に重畳する配置位置との間で変位させることができる。これによって、回動式クッション体50をベースシート25から外すこと無く、シートクッション31に重畳する配置位置とシートバック35に重畳する配置位置との間で変位させることができ、車両用シート20としての利便性を高めることができる。
また、上記した車両用シート20によれば、シートクッション31およびシートバック35は、着座者に当たる面部分が弾性ネット部材28で形成されているので、回動式クッション体50と同じような感触とすることができつつ、クッションパッド無しでクッション効果を得ることができて簡素な構成となる。
【0024】
なお、本発明に係る車両用シートにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、適宜個所を変更して構成されるものであってよい。
例えば、上記した実施の形態の車両用シート20では、選択配置重畳体として1つの回動式クッション体50を例示して説明した。しかしながら、本発明に係る選択配置重畳体としては、上記した実施の形態のような1つの回動式クッション体50の構成に限定されることなく、個数、連結方式等、適宜に変更して構成することができる。つまり、本発明に係る選択配置重畳体としては、上記した実施の形態に限定されることなく、上記した回動式クッション体50を2重や3重で重畳した重ね構造により構成されるものであってよい。なお、上記した回動式クッション体50を2重や3重で重畳した重ね構造にて形成さいた場合には、各種の体格の大きさに応じて回動式クッション体50の重畳数を変えることができて、シートクッション着座位置およびシートバック支持位置を設定して、車両用シートとしてのフィット感を向上させることができる。なお、上記した回動式クッション体50を1つとした場合には、安価に着座位置を変更可能な車両用シート20を構成することができる。
【符号の説明】
【0025】
11 車両フロア
12 アクセルペダル
13 ハンドル
20 車両用シート
25 ベースシート
26 固定型脚部
27 ベースフレーム
28 弾性ネット部材
281 軟質に設定される弾性ネット部材
282 硬質に設定される弾性ネット部材
31 シートクッション
32 クッションフレーム部
33 座面部
35 シートバック
36 バックフレーム部
37 背中支持面部
40 ヒンジ構造
41 ヒンジ構成部
42 連結孔
45 支持軸
50 回動式クッション体(選択配置重畳体)
51 周回側壁
51a 表側端縁
51b 裏側端縁
511 前側壁
512 後側壁
513 左側壁
514 右側壁
53 表側当接面
55 裏側当接面
P1 高い身長の運転者
P2 低い身長の運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等の車両に設置される乗員が着座する車両用シートであって、
シートクッションとシートバックとを具備するベースシートと、該ベースシートに対して相対移動可能に構成されて該シートクッションおよび該シートバックのいずれかに重畳するように配置可能に構成される選択配置重畳体と、を備え、
前記選択配置重畳体は、
内部が中空となる構造体にて形成され且つ少なくとも着座者に当たる面部分を弾性ネット部材で形成され、
乗員が着座可能に前記シートクッションおよび前記シートバックのいずれか一方を露出させるように該シートクッションおよび該シートバックのいずれか他方に重畳するように配置された場合に着座した乗員の着座姿勢を支持するように機能することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記選択配置重畳体が前記シートバックに重畳するように配置された場合の着座者の座となる前記シートクッションの座面部分の押圧時の硬さは、該選択配置重畳体が前記シートクッションに重畳するように配置された場合の着座者の座となる該選択配置重畳体の座面部分の押圧時の硬さに比して、柔らかい硬さにて設定されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記選択配置重畳体は、前記シートクッションに重畳する配置位置と、前記シートバックに重畳する配置位置との間を、前記ベースシートに取り付けられた状態で変位可能となるようにヒンジを介して該ベースシートに結合されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートにおいて、
前記シートクッションおよび前記シートバックは、少なくとも着座者に当たる面部分が弾性ネット部材で形成されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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