説明

車両用シート

【課題】シートをスライドさせるレール装置およびシートの着座部の高さを調整するリフタ装置を備えた車両用シートにおいて、車両高さ方向における部品を配置するためのスペースを小さくすること。
【解決手段】車両のフロア側に固定されるロアレール21(41)、および、このロアレール21(41)に沿ってスライド自在であるシートの着座部が接続されるアッパレール22(42)を有し、このアッパレール22(42)におけるスライド対象部材との接続部が、断面略逆U字型の帽子形状であるレール装置20(40)と、シートの着座部11が上下動する際にフロア側の端部311を支点として回動するリンク部材30を有するリフタ装置30と、を備え、前記アッパレール22(42)の接続部221(421)の側面に、前記リンク部材31のフロア側の端部が直接回動自在に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートをスライドさせるレール装置およびシートの着座部の高さを調整するリフタ装置を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、このようなレール装置およびリフタ装置を備えた車両用シートが記載されている。レール装置は、車両のフロア側に固定されるロアレールおよびロアレールにスライド可能に取り付けられるアッパレールを備える。アッパレールには、シートの着座部を上下動させる際にフロア側の端部を支点として回動するリンク部材が接続される。
【0003】
この種の車両用シートのレール装置としては、図4に示すようなロアレール91上をスライドするアッパレール92におけるスライド対象部材との接続部921が、断面略逆U字型の帽子形状であるいわゆる「ハット型」のレール装置90が多く用いられる。このような「ハット型」レールが使用される車両用シートにおいて、アッパレール92とリンク部材93は、ブラケット94などと称される部材を介して接続される。例えば、アッパレール92の上面に、断面略L字型のブラケット94が接続され、このブラケット94の側面にリンク部材93のフロア側の端部が回動自在に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなブラケットを用いると、部品を配置するための高さ方向のスペースが大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
上記実情に鑑みて、本発明は、シートをスライドさせるレール装置およびシートの着座部の高さを調整するリフタ装置を備えた車両用シートにおいて、車両高さ方向における部品を配置するためのスペースを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にかかる車両用シートは、車両のフロア側に固定されるロアレール、および、このロアレールに沿ってスライド自在であるシートの着座部が接続されるアッパレールを有し、このアッパレールにおけるスライド対象部材との接続部が、断面略逆U字型の帽子形状であるレール装置と、シートの着座部が上下動する際にフロア側の端部を支点として回動するリンク部材を有するリフタ装置と、を備え、前記アッパレールの接続部の側面に、前記リンク部材のフロア側の端部が直接回動自在に接続されていることを要旨とする。
【0008】
このように、断面略逆U字型の帽子形状であるアッパレールの接続部の側面にリンク部材が直接回動自在に接続されていれば、アッパレールとリンク部材とを繋ぐ接続部材(上記ブラケットのような部材)を別途用いる必要がなくなるから、その分車両高さ方向における部品を配置するためのスペースを小さくすることができる。また、このような接続部材を用いない分、製造コスト削減につながる。
【0009】
また、前記レール装置において、前記アッパレールは、その幅方向両側下方で前記ロアレールにスライド自在に係合されており、前記アッパレールの接続部は、前記ロアレールよりも上方に突出した前記ロアレールに覆われていない部分であればよい。
【0010】
このように、アッパレールの接続部をロアレールよりも上方に突出させた形状とすれば、レール装置の構成を複雑にすることなく、アッパレールの側面にリンク部材を直接回動自在に接続することができる。
【0011】
また、前記レール装置において、前記アッパレールにおける前記リンク部材が直接接続される側面側以外の側で、前記アッパレールが前記ロアレールにスライド自在に係合されていればよい。
【0012】
上記構成によれば、レール装置のアッパレールに直接リンク部材が接続可能であることに加え、レール装置全体を低くすることできるため、車両高さ方向における部品を配置するためのスペースがさらに小さくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両用シートによれば、アッパレールとリンク部材とを繋ぐ接続部材を用いない分、車両高さ方向における部品を配置するためのスペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シート(この車両用シートが備えるレール装置)の外観斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シート(この車両用シートが備えるレール装置)を前後方向から見た図である。
【図3】本発明の第二の実施形態にかかる車両用シート(この車両用シートが備えるレール装置)を前後方向から見た図である。
【図4】従来のレール装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明における上下方向(高さ方向)とは車両用シート1a,1bの高さ方向(図示したZ軸方向)をいい、前後方向とは車両用シート1a,1bの前後方向(図示したY軸方向)をいい、幅方向とは車両用シート1a,1bの幅方向(図示したX軸方向)をいう。
【0016】
第一の実施形態にかかる車両用シート1aについて説明する。本実施形態にかかる車両用シート1aは、シート本体と、レール装置20と、リフタ装置30と、を備える。シート本体は、乗員が着座する着座部10(シートクッション)や背もたれ部(シートバック)を有する周知一般のものが適用できるから詳細な説明は省略する。
【0017】
レール装置20は、シート全体を前後方向にスライドさせる装置であり、ロアレール21およびアッパレール22を有する。ロアレール21は、車両のフロア面に固定される固定レールである。アッパレール22は、ロアレール21に沿ってスライド自在である可動レールである。ロアレール21は、前後方向に沿って設けられているから、アッパレール22は前後方向にスライドする。
【0018】
アッパレール22は、スライド対象(本実施形態ではシート全体)が接続される接続部221と、ロアレール21に対してスライド自在に係合する係合部222を有する。本実施形態のレール装置20は、アッパレール22の接続部221が図2に示されるような断面略逆U字型の帽子形状であるいわゆる「ハット型」レールである。アッパレール22の係合部222は、幅方向から挟み込まれるようにしてロアレール21に係合している。すなわち、アッパレール22は、その幅方向両側下方でロアレール21にスライド自在に係合している。なお、アッパレール22とロアレール21の間には、アッパレール22のスライドを容易にするため、図示されるようなボールが介在されているとよい。アッパレール22の接続部221は、ロアレール21よりも上方に突出したロアレール21に覆われていない部分である。したがって、アッパレール22の接続部221は、その幅方向両側面および上面が露出している。
【0019】
リフタ装置30は、着座部10を所定の範囲内で任意の高さに設定できるリンク部材31を有する装置である。着座部10の高さを変更する機構としては周知一般のものが適用できる。例えば、人力(レバー操作)や駆動源(モータ等)によってセクタギアを回動させることにより、着座部10を上下動させるものが適用できる(上記特許文献1等参照)。リンク部材31は、車両前後にそれぞれ一対、計四つ設けられている。リンク部材31のフロア側の端部311は後述するようにアッパレール22に接続されており、他方側の端部312は着座部10(具体的には着座部10を構成する図示されないシートフレーム)に接続されている。この着座部10が上下動すると、リンク部材31はフロア側の端部311を支点として回動し、着座部10側の端部312が上下に移動する。
【0020】
このフロア側の端部311を支点として回動する各リンク部材31は、アッパレール22の一方側の側面(シートの幅方向外側の側面。シートの左側に配置されるリンク部材31は左側面、シートの右側に配置されるリンク部材31は右側の側面)に「直接」回動自在に接続されており、従来のようにブラケットなどと称される接続部材を用いていない。詳しくは、アッパレール22の両側面からフランジ部分が突出するように取り付けられる支持軸S1が、リンク部材31のフロア側の端部311に形成された貫通孔に遊挿されている。リンク部材31は、リフタ装置30によって着座部10が上下動することに伴って回動する範囲内において、ロアレール21と接触することがないようにロアレール21と所定の間隔を空けて取り付けられている。
【0021】
このように、本実施形態にかかる車両用シート1aによれば、リンク部材31は、ロアレール21に覆われずに露出したアッパレール22の側面に直接接続されているから、従来のようにリンク部材31とアッパレール22との間に介在される接続部材を用いた構成と比較して、車両高さ方向における部品を配置するためのスペースを小さくすることができる。また、部品点数の削減、およびこれに伴うコスト削減に繋がる。
【0022】
次に、本発明の第二の実施形態にかかる車両用シート1bについて説明する。この第二の実施形態にかかる車両用シート1bは、レール装置40の構成が上記第一の実施形態にかかる車両用シート1aと異なるため、かかるレール装置40の構成について説明する。
【0023】
レール装置40は、第一の実施形態と同様に、車両のフロア面に固定されるロアレール41、および、このロアレール41に沿ってスライド自在であるアッパレール42を有する。図示されるように、レール装置40全体で見ると断面略四角形状をなす。この略四角形状をなすレール装置40の一方側の側面は、アッパレール42のみで構成されるように設計されており、この一方側の側面にリンク部材31のフロア側の端部311が「直接」回動自在に接続されている。
【0024】
より具体的な構成は次の通りである。ロアレール41は、全体で大まかに見ると断面略L字状の部材である。レール装置40の上側に位置するロアレール41の一方側の端部は、断面略L字状に屈曲している(以下、当該部分を第一被係合部411と称する)。レール装置40の下側に位置するロアレール41の他方側の端部は、断面略逆U字状に屈曲している(以下、当該部分を第二被係合部412と称する)。
【0025】
一方、アッパレール42は、断面略逆U字型の帽子形状である接続部421および係合部を有する。接続部421は、レース装置の一方側の側面を構成する部分の方が、他方側よりも相対的に長く形成されている。レール装置40の上側に位置するアッパレール42の一方側の係合部は、全体で見ると断面略U字状に屈曲しており、当該屈曲した部分の右側が逆「く」の字状に形成されている(以下、当該係合部を第一係合部422aと称する)。このアッパレール42の第一係合部422aに上記ロアレール41の第一被係合部411が挟み込まれるようにして両者は係合している。また、レール装置40の下側に位置するアッパレール42の他方側の係合部は、その端部が略L字状に屈曲している(以下、当該部分を第二係合部422bと称する)。このアッパレール42の第二係合部422bを上記ロアレール41の第二被係合部412が挟み込むようにして両者は係合している。
【0026】
このように、レール装置40全体で見ると、レール装置40の上側(上面)および下側(下面)において、アッパレール42がロアレール41にスライド自在に係合されている。そして、アッパレール42の接続部421の一方側の側面(長い方の側面)全体が、そのままレール装置40の一方側の側面を構成する。つまり、リンク部材31が直接接続される側面側以外の側において両レールを係合させることによって、リンク部材31のフロア側の端部311をアッパレール42の側面に直接回動自在に接続することが可能である。なお、リンク部材31のフロア側の端部311は、図示されるような支持軸S2を用いてアッパレール42に対して回動自在に接続されている。
【0027】
ただし、図2に示した構成は、レール装置40の左側側面がアッパレール42の接続部421の一方側の側面(長い方の側面)で構成されるものであるため、シート左側に設けられるレール装置40として適用される。シート右側に設けられるレール装置40は、図2に示した構成の左右対称形状のものである。すなわち、レール装置40の右側側面がアッパレール42の接続部421の一方側の側面(長い方の側面)で構成されるものが、シート右側に設けられるレール装置40として適用される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用シート1bのレール装置40は、レール装置40の一方側側面がアッパレール42の接続部421のみで構成され、その一方側側面に直接リンク部材31が回動自在に接続される。そして、このアッパレール42におけるリンク部材31が直接接続される側面側以外の側(本実施形態では上側および下側)で、アッパレール42がロアレール41にスライド自在に係合されている。このように、本実施形態にかかる車両用シート1bによれば、アッパレール42とロアレール41の係合部分を、リンク部材31が接続される側以外の側に設定しているため、レール装置40自在の高さを低くすることができ、車両高さ方向における部品を配置するためのスペースをさらに小さくすることができる。なお、ロアレール41とアッパレール42の係合部分は、リンク部材31が直接接続される側面側以外の側(すなわち、上面、下面、および当該側面に対向する側面のいずれか)であれば適宜変更可能である。
【0029】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1a,1b 車両用シート
10 着座部
20,40 レール装置
21,41 ロアレール
22,42 アッパレール
221,421 接続部
222,422a,422b 係合部
30 リフタ装置
31 リンク部材
311 フロア側の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア側に固定されるロアレール、および、このロアレールに沿ってスライド自在であるシートの着座部が接続されるアッパレールを有し、このアッパレールにおけるスライド対象部材との接続部が、断面略逆U字型の帽子形状であるレール装置と、
シートの着座部が上下動する際にフロア側の端部を支点として回動するリンク部材を有するリフタ装置と、
を備え、
前記アッパレールの接続部の側面に、前記リンク部材のフロア側の端部が直接回動自在に接続されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記レール装置において、
前記アッパレールは、その幅方向両側下方で前記ロアレールにスライド自在に係合されており、
前記アッパレールの接続部は、前記ロアレールよりも上方に突出した前記ロアレールに覆われていない部分であることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記レール装置において、
前記アッパレールにおける前記リンク部材が直接接続される側面側以外の側で、前記アッパレールが前記ロアレールにスライド自在に係合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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