説明

車両用シート

【課題】シートバックの高さ寸法が、後席(後側のシート)までの距離寸法よりも大きい場合においても、シートバックをフルフラットの状態まで後傾することができる車両用シートを提供する。
【解決手段】シートクッション20と、リクライニング装置40によって角度調整可能に配設されたシートバック30とを備える。リクライニング装置40は、シートバック30の下部を水平方向の支軸56を中心として回動可能に連結した状態で前後方向へ移動させるスライド機構50と、シートバック30下部の前後方向への移動に連動してシートバック30を支軸56を中心として回動させて起立位置とフルフラット位置との範囲において傾動案内する案内機構60とを備える。スライド機構50によってシートバック30の下部が前方へ移動されたときには、これに連動して案内機構60によってシートバック30が支軸56を中心として回動されてフルフラット位置に向けて後傾される構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートクッションと、リクライニング装置によって角度調整可能に配設されたシートバックとを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のリクライニング式車両用シートにおいては、例えば、特許文献1に開示されている。
これにおいては、図3に示すように、シートバック201のサイドブラケット210をシートクッション202のサイドブラケット211に、枢軸212で軸承枢着すると共に、リクライニング機構213を両サイドブラケット210,211の相対間に組み付けることで、シートバック201を前後方向へ角度調整に保持するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−255164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているような車両用シートにおいては、シートバック201は、枢軸212をリクライニング中心として前後方向へ傾動される構造上、シートバック201の高さ寸法が、後席270(後側のシート)までの距離寸法よりも大きい場合、シートバック201を後傾すると、そのシートバック201が後席に当たり、フルフラットの状態にできなくなる。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、シートバックの高さ寸法が、後席(後側のシート)までの距離寸法よりも大きい場合においても、シートバックをフルフラットの状態まで後傾することができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る車両用シートは、シートクッションと、リクライニング装置によって角度調整可能に配設されたシートバックとを備えた車両用シートであって、
前記リクライニング装置は、前記シートバックの下部を水平方向の支軸を中心として回動可能に連結した状態で前後方向へ移動させるスライド機構と、
前記シートバック下部の前後方向への移動に連動して前記シートバックを前記支軸を中心として回動させて起立位置とフルフラット位置との範囲において傾動案内する案内機構とを備え、
前記スライド機構によって前記シートバックの下部が前方へ移動されたときには、これに連動して前記案内機構によって前記シートバックが前記支軸を中心として回動されてフルフラット位置に向けて後傾される構成にしてあることを特徴する。
【0007】
前記構成によると、起立位置に配置されたシートバックをフルフラット位置に向けて後傾する場合、スライド機構によってシートバックの下部が前方へ移動される。すると、シートバック下部の前方への移動に連動し、案内機構によってシートバックが支軸を中心として回動されてフルフラット位置に向けて後傾される。
このため、シートバックの下部が前方へ移動された分だけ、シートバックの高さ寸法が、後席(後側のシート)までの距離寸法よりも大きい場合においても、シートバックをフルフラットの状態まで後傾することができる。
【0008】
請求項2に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートであって、
スライド機構は、シートクッション側に回転可能に配設された前後方向の送りネジと、
前記送りネジに螺合して前後方向へ進退動するナットと、
前記ナットと一体に設けられてシートバック下部を水平方向の支軸を中心として回動可能に連結する連結部材とを備えていることを特徴する。
前記構成によると、スライド機構を、送りネジ、ナット、及び連結部材による簡単な構造によって容易に構成することができる。
【0009】
請求項3に係る車両用シートは、請求項1又は2に記載の車両用シートであって、
案内機構は、シートクッションのクッションフレームと、シートバックのバックフレームとのうち、一方のフレームに設けられた案内孔と、他方のフレームに設けられ前記案内孔に沿って相対的に移動するピンとを備えていることを特徴する。
前記構成によると、案内機構を、案内孔とピンによる簡単な構造によって容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施例1に係る車両用シートを示す側面図である。
【図2】同じくシートバックをフルフラット位置まで後傾した状態を示す側面図である。
【図3】従来の車両用シートを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1を図1と図2にしたがって説明する。
図1に示すように、車両用シートは、シートクッション20と、このシートクッション20に対しリクライニング装置40によって角度(前後方向への傾き角度)調整可能に配設されたシートバック30とを備えている。
【0013】
この実施例1において、シートクッション20は、スライドレール機構10によって前後方向へスライド調整可能に配設される。
スライドレール機構10は、周知のように、車室のフロアパネルに固定されて前後方向へ延びるロアレール11と、このロアレール11に沿って前後方向へスライド可能に嵌挿されるアッパレール12とを備えている。そして、アッパレール12は、シートクッション20の骨格部をなすクッションフレーム21の下部に固定されている。
【0014】
リクライニング装置40は、スライド機構50と、案内機構60とを備えている。
スライド機構50は、シートバック30の骨格部をなすバックフレーム31のサイドフレーム部32の下部を、水平方向の支軸56を中心として回動可能に連結した状態で前後方向へ移動させる。
【0015】
この実施例1において、スライド機構50は、送りネジ53と、ナット54と、連結部材55とを備えている。送りネジ53は、前後方向に長尺なネジ棒によって形成され、その前後両端部がシートクッション20のクッションフレーム21に固定された、前ブラケット51と、後ブラケット52との間に回転可能に支持されている。
ナット54は、送りネジ53に螺合して前後方向へ進退動され、このナット54には、連結部材55が一体に形成されている。そして、連結部材55の上部には、バックフレーム31のサイドフレーム部32の下部が水平方向に支軸56を中心として回動可能に連結されている。
また、送りネジ53は、電動モータ(図示しない)の出力軸に歯車列機構を介してトルク伝達可能に接続して正逆方向へ回転駆動されるように構成することができる。
【0016】
案内機構60は、バックフレーム31のサイドフレーム部32下部の前後方向への移動に連動してバックフレーム31のサイドフレーム部32を支軸56を中心として回動させて図1に示す起立位置と、図2に示すフルフラット位置との範囲において傾動案内する。
さらに、スライド機構50によってバックフレーム31のサイドフレーム部32下部が前方へ移動されたときには、これに連動して案内機構60によってバックフレーム31のサイドフレーム部32が支軸56を中心として回動されることで、シートバック30がフルフラット位置に向けて後傾される構成にしてある。
【0017】
この実施例1において、案内機構60は、クッションフレーム21のサイドフレーム部22と、バックフレーム31のサイドフレーム部32とのうち、一方のフレーム、この実施例1ではバックフレーム31のサイドフレーム部32に設けられたくの字状の案内孔61と、他方のフレーム、この実施例1ではクッションフレーム21のサイドフレーム部22に設けられ案内孔61に沿って相対的に移動するピン62とを備えている。
【0018】
この実施例1に係る車両用シートは上述したように構成される。
したがって、図1に示すように、起立位置に配置されたシートバック30を、図2に示すフルフラット位置に向けて後傾する場合、電動モータ(図示しない)を作動してその出力軸を正方向へ回転させて送りネジ53を正方向へ回転駆動すると、ナット54が前方へ移動される。
そして、ナット54と一体状をなして連結部材55及び支軸56が前方へ移動され、これに伴ってバックフレーム31のサイドフレーム部32下部が前方へ移動される。
すると、バックフレーム31のサイドフレーム部32下部の前方への移動に連動し、案内機構60の案内孔61とピン62との案内作用(カム作用)によってバックフレーム31のサイドフレーム部32が支軸56を中心として、図2に向かって時計回り方向へ回動されることで、シートバック30がフルフラット位置に向けて後傾される。
引き続いて、ナット54が前進端位置まで移動され、ナット54と一体状をなして連結部材55及び支軸56が前進端位置まで移動されることで、これに伴ってバックフレーム31のサイドフレーム部32下部が前進端位置まで移動される。
これによって、シートバック30が水平状をなすフルフラット位置まで後傾される。
【0019】
前記したように、起立位置に配置されたシートバック30を、図2に示すフルフラット位置に向けて後傾する場合、シートバック30の下部(バックフレーム31のサイドフレーム部32下部)が前方へ移動されながら、シートバック30がフルフラット位置に向けて後傾される。
このため、シートバック30の下部が前方へ移動された分だけ、シートバック30の高さ寸法H(支軸56からシートバック30のヘッドレストまでの高さ寸法)が、起立位置に配置されたシートクッション10(支軸56)から後席70(後側のシート)までの距離寸法Lよりも大きい場合においても、シートバック30をフルフラット位置まで後傾することができる。
【0020】
また、スライド機構50は、送りネジ53、ナット54、及び連結部材55による簡単な構造によって容易に構成することができる。
また、案内機構60は、案内孔61とピン62による簡単な構造によって容易に構成することができる。
【0021】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、スライド機構50を構成する送りネジ53が、電動モータ(図示しない)を駆動源として正逆方向へ回転駆動されるように構成したが、例えば、送りネジ53を、手動によって正逆方向へ回転操作される操作ノブ(図示しない)にトルク伝達可能に接続してもこの発明を実施することができる。
前記実施例1においては、スライド機構50を送りネジ53とナット54を主体として構成される場合を例示したが、シートバック30の下部を前後方向へ移動させる構造であればどのように構成してもよい。
また、案内機構60は、案内孔61及びピン62以外で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
20 シートクッション
22 サイドフレーム部
30 シートバック
32 サイドフレーム部
40 リクライニング装置
50 スライド機構
53 送りネジ
54 ナット
55 連結部材
56 支軸
60 案内機構
61 案内孔
62 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、リクライニング装置によって角度調整可能に配設されたシートバックとを備えた車両用シートであって、
前記リクライニング装置は、前記シートバックの下部を水平方向の支軸を中心として回動可能に連結した状態で前後方向へ移動させるスライド機構と、
前記シートバック下部の前後方向への移動に連動して前記シートバックを前記支軸を中心として回動させて起立位置とフルフラット位置との範囲において傾動案内する案内機構とを備え、
前記スライド機構によって前記シートバックの下部が前方へ移動されたときには、これに連動して前記案内機構によって前記シートバックが前記支軸を中心として回動されてフルフラット位置に向けて後傾される構成にしてあることを特徴する車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
スライド機構は、シートクッション側に回転可能に配設された前後方向の送りネジと、
前記送りネジに螺合して前後方向へ進退動するナットと、
前記ナットと一体に設けられてシートバック下部を水平方向の支軸を中心として回動可能に連結する連結部材とを備えていることを特徴する車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用シートであって、
案内機構は、シートクッションのクッションフレームと、シートバックのバックフレームとのうち、一方のフレームに設けられた案内孔と、他方のフレームに設けられ前記案内孔に沿って相対的に移動するピンとを備えていることを特徴する車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95166(P2013−95166A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236585(P2011−236585)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】