説明

車両用スイッチ

【課題】主に自動車のストップランプの消点灯制御等に用いられる車両用スイッチに関し、スイッチング精度を高め、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】検出手段6が形成された配線基板22を保持するホルダー23の上下面を、カバー24下面とケース21内底面に当接させると共に、ホルダー23下面に塑性変形可能な突起部23Aを設けることによって、塑性変形可能な突起部23Aにより検出手段6が一定の位置に保持され、検出手段6と磁石4の間の位置ずれを防ぐことができるため、スイッチング精度を高め、確実な操作が可能な車両用スイッチ25を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のブレーキペダル操作時の、ストップランプの消点灯制御等に用いられる車両用スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキペダルを踏み込んだ際にはストップランプを点灯させ、離した際には消灯させる、ブレーキペダルの操作に伴うストップランプの制御用スイッチとして、主に押圧操作型の車両用スイッチが多く用いられている。
【0003】
このような従来の車両用スイッチについて、図4〜図6を用いて説明する。
【0004】
図5は従来の車両用スイッチの断面図、図6は同分解斜視図であり、同図において、1は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2はこのケース1内に上下動可能に収納された作動体、3は同じく操作軸で、作動体2の左側面には磁石4が装着されている。
【0005】
また、5は左右面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、この左右面にはホール素子等の検出手段6や、トランジスタ等のスイッチング手段7、FETや複数の固定抵抗器等によって制御手段8が各々形成されると共に、この制御手段8に検出手段6やスイッチング手段7が配線パターンを介して電気的に接続されている。
【0006】
そして、9は絶縁樹脂製のホルダー、10は略L字状に折曲された導電金属製の端子で、複数の端子10の中間部がホルダー9にインサート成形されると共に、配線基板5がねじ11によってホルダー9に固着され、複数の端子10の上端が配線基板5の配線パターンに半田付け等によって接続されている。
【0007】
さらに、配線基板5下面がケース1内底面に当接し溝部1Aに保持されて、検出手段6と磁石4が所定間隙を空けて対向すると共に、配線パターンを介して制御手段8やスイッチング手段7に電気的に接続された端子10下端が、ケース1底面から下方へ突出している。
【0008】
また、12はコイル状の戻りばねで、この戻りばね12が作動体2下面とケース1の内底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体2や操作軸3を上方に付勢している。
【0009】
さらに、13はケース1上面の開口部を覆う絶縁樹脂製のカバーで、下面の溝部13Aに配線基板5上面が保持されると共に、操作軸3上端がカバー13上面中央の中空筒部から上方へ突出して、車両用スイッチ15が構成されている。
【0010】
そして、このように構成された車両用スイッチ15が、図4の要部側面図に示すように、一般に自動車のブレーキペダル31の手前に、アーム31Aによって操作軸3先端が押圧された状態で装着されると共に、ケース1底面から突出した複数の端子10が、コネクタ32やリード線等によってストップランプやイグニションスイッチ、バッテリー、車両の電子回路(図示せず)等に接続される。
【0011】
つまり、ブレーキペダル31が踏み込まれていない状態では、操作軸3や作動体2が戻りばね12を撓めながら下方へ押圧操作され、作動体2左側面に装着された磁石4も下方へ移動し、磁石4の中心と対向配置された検出手段6の中心が大きく離れて、検出手段6が検出する磁石4の磁気は微弱な状態となっている。
【0012】
また、この検出手段6に接続された制御手段8は、検出手段6が検出した磁気の強弱によって、その磁気が所定値以上の場合には、スイッチング手段7を閉状態とし、磁気が所定値以下の場合には、スイッチング手段7を開状態とするようになっているため、この操作軸3や作動体2が押圧された状態では、スイッチング手段7は開状態となり、ストップランプは消灯した状態となっている。
【0013】
そして、ブレーキペダル31が踏み込まれると、アーム31Aが操作軸3先端から離れ押圧力が除かれるため、図5に示したように、戻りばね12の弾性復帰力によって作動体2や操作軸3が上方へ移動すると共に、作動体2に装着された磁石4も上方へ移動して、磁石4と検出手段6が対向した状態となり、検出手段6が検出する磁石4の磁気が強くなるため、制御手段8がスイッチング手段7を閉状態に切換え、ストップランプが点灯する。
【0014】
つまり、ブレーキペダル31の操作によって作動体2を上下動させ、この作動体2に装着された磁石4の磁束密度の値に応じて、制御手段8がスイッチング手段7の開閉状態を切換えることによって、ストップランプの消点灯を行うように構成されているものであった。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報として特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−123642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来の車両用スイッチにおいては、配線基板5上面はカバー13下面の溝部13Aに、下面はケース1内底面の溝部1Aに各々保持され、左右方向には各部品の位置ずれが生じないように形成されているが、配線基板5上面とカバー13下面の間には僅かではあるが隙間があり、これらの構成部品の形状寸法のばらつきや、各部品の位置ずれによって、磁石4とこれに対向する検出手段6の間に位置ずれが生じ、作動体2の上下動に伴うスイッチング精度にばらつきや誤差が生じてしまう場合があるという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、スイッチング精度を高め、確実な操作が可能な車両用スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、検出手段が形成された配線基板を保持するホルダーの上下面を、カバー下面とケース内底面に当接させると共に、ホルダー下面に塑性変形可能な突起部を設けて車両用スイッチを構成したものであり、塑性変形可能な突起部によって、検出手段が形成された配線基板が一定の位置に保持され、検出手段と磁石の間の位置ずれを防ぐことができるため、スイッチング精度を高め、確実な操作が可能な車両用スイッチを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、検出手段と磁石の位置ずれを防ぎ、確実な操作が可能な車両用スイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態による車両用スイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分断面図
【図4】ブレーキペダルの要部側面図
【図5】従来の車両用スイッチの断面図
【図6】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0023】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による車両用スイッチの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、21は上面開口で略箱型のポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製のケース、2はポリオキシメチレン等の絶縁樹脂製の作動体、3は同じく略円柱状の操作軸で、ケース21内に作動体2が上下動可能に収納されると共に、作動体2の左側面には磁石4が装着されている。
【0025】
また、22は左右面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、この左右面にはホール素子やSMR素子等の検出手段6や、トランジスタ等のスイッチング手段7、FETや複数の固定抵抗器等によって制御手段8が各々形成されると共に、この制御手段8に検出手段6やスイッチング手段7が配線パターンを介して電気的に接続されている。
【0026】
そして、23はポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製のホルダー、10は略L字状に折曲された銅合金等の導電金属製の端子で、複数の端子10の中間部がホルダー23にインサート成形されると共に、配線基板22がねじ11によってホルダー23に固着され、複数の端子10の上端が配線基板22の配線パターンに半田付け等によって接続されている。
【0027】
さらに、ホルダー23下面には高さ0.1〜0.5mm前後で幅0.1〜0.5mm前後、奥行き0.5〜5mm前後の突起部23Aが形成され、この突起部23Aがケース21内底面に当接すると共に、配線パターンを介して制御手段8やスイッチング手段7に電気的に接続された端子10下端が、ケース21底面から下方へ突出している。
【0028】
また、12はコイル状で鋼線等の戻りばね、24はケース21上面の開口部を覆うポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製のカバーで、戻りばね12が作動体2下面とケース21の内底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体2や操作軸3を上方に付勢すると共に、操作軸3上端がカバー24上面中央の中空筒部から上方へ突出している。
【0029】
さらに、ホルダー23上面がカバー24下面に当接し、ホルダー23下面のケース21内底面に当接した突起部23Aがやや塑性変形した状態で、検出手段6と磁石4が所定間隙を空けて対向して、車両用スイッチ25が構成されている。
【0030】
また、このような車両用スイッチ25を製作するには、図3(a)の部分断面図に示すように、先ず、ケース21内に作動体2や戻りばね12、ホルダー23等を組み込んだ後、このケース21上面の開口部を覆うように上方からカバー24を被せる。
【0031】
なお、この時、ケース21内底面に当接した突起部23Aによって、ホルダー23上面はケース21上面から、0.1〜0.5mm前後の寸法Lだけ突出し、配線基板22の検出手段6と作動体2に装着された磁石4の間は、やや中心ずれが生じた状態となっている。
【0032】
そして、この後、図3(b)に示すように、ケース21上面に下面が当接するまでカバー24を押圧すると、この力によって突起部23Aが塑性変形して潰れ、この塑性変形した突起部23Aがケース21内底面に、ホルダー23上面がカバー24下面に各々当接して、検出手段6と磁石4の中心が一致した状態となって、車両用スイッチ25が完成する。
【0033】
つまり、このスイッチとして完成した状態では、検出手段6の上下方向の位置はカバー24下面を基準として、これに上面が当接したホルダー23と配線基板22の寸法によって、磁石4の位置は同じくカバー24下面を基準として、これに下端が当接した操作軸3と作動体2の寸法によって、各々カバー24下面を基準として位置決めされている。
【0034】
すなわち、カバー24でケース21上面を覆う際に、カバー24下面がケース21上面からやや突出したホルダー23上面を押圧し、ケース21内底面に当接した突起部23Aが塑性変形することによって、検出手段6と磁石4がいずれもカバー24下面を基準として位置決めされ、殆んど中心ずれのない状態で車両用スイッチ25の製作が行われるようになっている。
【0035】
そして、このように構成された車両用スイッチ25が、図4の要部側面図に示すように、一般に自動車のブレーキペダル31の手前に、アーム31Aによって操作軸3先端が押圧された状態で装着されると共に、ケース21底面から突出した複数の端子10が、コネクタ32やリード線等によってストップランプやイグニションスイッチ、バッテリー、車両の電子回路(図示せず)等に接続される。
【0036】
つまり、ブレーキペダル31が踏み込まれていない状態では、操作軸3や作動体2が戻りばね12を撓めながら下方へ押圧操作され、作動体2左側面に装着された磁石4も下方へ移動し、磁石4の中心と対向配置された検出手段6の中心が大きく離れて、検出手段6が検出する磁石4の磁気は微弱な状態となっている。
【0037】
また、この検出手段6に接続された制御手段8は、検出手段6が検出した磁気の強弱によって、その磁気が所定値以上の場合には、スイッチング手段7を閉状態とし、磁気が所定値以下の場合には、スイッチング手段7を開状態とするようになっているため、この作動体2が押圧された状態では、スイッチング手段7は開状態となり、ストップランプは消灯した状態となっている。
【0038】
そして、ブレーキペダル31が踏み込まれると、アーム31Aが操作軸3先端から離れ押圧力が除かれるため、図1に示したように、戻りばね12の弾性復帰力によって作動体2や操作軸3が上方へ移動すると共に、作動体2に装着された磁石4も上方へ移動して、磁石4と検出手段6が対向した状態となり、検出手段6が検出する磁石4の磁気が強くなるため、制御手段8がスイッチング手段7を閉状態に切換え、ストップランプが点灯する。
【0039】
つまり、ブレーキペダル31の操作によって作動体2を上下動させ、この作動体2に装着された磁石4の磁束密度の値に応じて、制御手段8がスイッチング手段7の開閉状態を切換えることによって、ストップランプの消点灯を行うように構成されている。
【0040】
そして、この時、上述したように、カバー24でケース21上面を覆う際に、ホルダー23下面の突起部23Aが塑性変形し、ホルダー23の上下面がカバー24下面とケース21内底面に当接して、検出手段6と磁石4の中心ずれがないように形成されているため、作動体2の移動に伴うスイッチング精度にばらつきや誤差がなく、確実な操作が行えるようになっている。
【0041】
すなわち、塑性変形した突起部23Aをケース21内底面に当接させると共に、ホルダー23上面をカバー24下面に当接させ、検出手段6とこれに対向した磁石4の双方を、カバー24下面を基準として位置決めすることによって、各構成部品に多少の寸法のばらつき等があった場合でも、検出手段6と磁石4の間の位置ずれを防ぎ、高精度で確実な操作が可能なように構成されている。
【0042】
なお、以上の説明では、作動体2と操作軸3を別体に設け、ブレーキペダル31のアーム31Aで操作軸3上端を押圧し、この操作軸3下端で作動体2を押圧する構成について説明したが、作動体2と操作軸3を一体に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0043】
ただし、上記のように作動体2と操作軸3を別体に設けることによって、押圧操作時に、カバー24の中空筒部内で操作軸3が多少傾いた場合でも、磁石4を装着した作動体2にはこの影響が生じないため、さらに磁石4と検出手段6の間の位置ずれを抑え、作動体2の安定した上下動操作を行うことが可能となる。
【0044】
このように本実施の形態によれば、検出手段6が形成された配線基板22を保持するホルダー23の上下面を、カバー24下面とケース21内底面に当接させると共に、ホルダー23下面に塑性変形可能な突起部23Aを設けることによって、塑性変形可能な突起部23Aにより検出手段6が一定の位置に保持され、検出手段6と磁石4の間の位置ずれを防ぐことができるため、スイッチング精度を高め、確実な操作が可能な車両用スイッチ25を得ることができるものである。
【0045】
なお、以上の説明では、制御手段8やスイッチング手段7を車両用スイッチ25に一体に形成した構成について説明したが、これらを車両の電子回路に設け、スイッチの配線基板22には、検出手段6とその他必要な部品のみを設けた構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による車両用スイッチは、検出手段と磁石の位置ずれを防ぎ、確実な操作が可能なものを得ることができ、主に自動車のストップランプの消点灯制御用等として有用である。
【符号の説明】
【0047】
2 作動体
3 操作軸
4 磁石
6 検出手段
7 スイッチング手段
8 制御手段
10 端子
11 ねじ
12 戻りばね
21 ケース
22 配線基板
23 ホルダー
23A 突起部
24 カバー
25 車両用スイッチ
31 ブレーキペダル
31A アーム
32 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口で略箱型のケースと、このケース内に上下動可能に収納された作動体と、この作動体に装着された磁石と、この磁石の磁気を検出する検出手段と、この検出手段が形成された配線基板を保持するホルダーと、上記ケース上面を覆うカバーからなり、上記ホルダーの上下面を上記カバー下面及び上記ケース内底面に当接させると共に、上記ホルダー下面に塑性変形可能な突起部を設けた車両用スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−96487(P2011−96487A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248721(P2009−248721)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】