説明

車両用スプラッシュ防止装置

【課題】 ホイールハウスからエンジンルームへのスプラッシュの浸入を完全に阻止することが可能であり、かつ清掃が容易なスプラッシュ防止装置を提供する。
【解決手段】 エンジンルーム11内に配置したエンジンの駆動力をホイールハウス12内に配置した車輪Wに伝達するドライブシャフト27を、エンジンルーム11およびホイールハウス12を仕切るスプラッシュガード16に形成した開口部16aを貫通させたので、ドライブシャフト27で車輪Wを駆動することができる。このとき、ドライブシャフト27がベアリング31を介して回転自在に貫通するブーツ30を、開口部16aを覆うようにスプラッシュガード16に連結したので、ホイールハウス12内で車輪Wが撥ね上げたスプラッシュをブーツ30で遮ってスプラッシュガード16の開口部16aからエンジンルーム11に浸入するのを確実に阻止することができ、しかもブーツ30に付着したスプラッシュは簡単に除去することが可能なので清掃が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームとホイールハウスとを仕切るスプラッシュガードに形成されてドライブシャフトやタイロッドが貫通する開口部を通して、ホイールハウス側からエンジンルーム側にスプラッシュ(前輪により撥ね上げられた泥水等)が浸入するのを防止するための車両用スプラッシュ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントエンジン・フロントドライブ型自動車のフロントタイヤハウスの内側パネルに形成されたステアリング機構のタイロッド貫通用孔を、その上部から垂下する暖簾状の軟質部材よりなる泥除け板で覆ってエンジンルームへのスプラッシュの浸入を防止するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また車輪を転舵するタイロッドがフロントホイールハウス部の開口部を貫通する部分に、樹脂等の弾性材からなる刷毛を所定の範囲に亙って放射状に植設することで、エンジンルームへのスプラッシュの浸入を防止するものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−41261号公報
【特許文献2】実開昭58−44273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来のものは、暖簾状の軟質部材よりなる泥除け板、あるいは樹脂等の弾性材からなる刷毛でエンジンルームへのスプラッシュの浸入の阻止を図っているが、前記泥除け板や刷毛は多くの隙間を有する部材であるためにスプラッシュの浸入を完全に阻止することは困難であり、しかも泥等がこびり付き易いので清掃作業が面倒であるという問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ホイールハウスからエンジンルームへのスプラッシュの浸入を完全に阻止することが可能であり、かつ清掃が容易なスプラッシュ防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンルーム内に配置したエンジンの駆動力をホイールハウス内に配置した車輪に伝達するドライブシャフトを、前記エンジンルームおよび前記ホイールハウスを仕切るスプラッシュガードに形成した開口部を貫通させた車両用スプラッシュ防止装置において、前記ドライブシャフトがベアリングを介して回転自在に貫通するブーツを前記開口部を覆うようにスプラッシュガードに連結したことを特徴とする車両用スプラッシュ防止装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、エンジンルーム内に配置した操舵装置の操舵力をホイールハウス内に配置した車輪に伝達するタイロッドを、前記エンジンルームおよび前記ホイールハウスを仕切るスプラッシュガードに形成した開口部を貫通させた車両用スプラッシュ防止装置において、前記タイロッドが貫通するブーツを前記開口部を覆うようにスプラッシュガードに連結したことを特徴とする車両用スプラッシュ防止装置が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、エンジンルーム内に配置したエンジンの駆動力をホイールハウス内に配置した車輪に伝達するドライブシャフトを、エンジンルームおよびホイールハウスを仕切るスプラッシュガードに形成した開口部を貫通させたので、ドライブシャフトで車輪を駆動することができる。このとき、ドライブシャフトがベアリングを介して回転自在に貫通するブーツを開口部を覆うようにスプラッシュガードに連結したので、ホイールハウス内で車輪が撥ね上げたスプラッシュをブーツで遮ってスプラッシュガードの開口部からエンジンルームに浸入するのを確実に阻止することができ、しかもブーツに付着したスプラッシュは簡単に除去することが可能なので清掃が容易である。
【0010】
また請求項2の構成によれば、エンジンルーム内に配置した操舵装置の操舵力をホイールハウス内に配置した車輪に伝達するタイロッドを、エンジンルームおよびホイールハウスを仕切るスプラッシュガードに形成した開口部を貫通させたので、操舵装置でタイロッドを押し引きすることで車輪を転舵することができる。このとき、タイロッドが貫通するブーツを開口部を覆うようにスプラッシュガードに連結したので、ホイールハウス内で車輪が撥ね上げたスプラッシュをブーツで遮ってスプラッシュガードの開口部からエンジンルームに浸入するのを確実に阻止することができ、しかもブーツに付着したスプラッシュは簡単に除去することが可能なので清掃が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動車の前輪の正面図(第1の実施の形態)。
【図2】図1の2−2線矢視図(第1の実施の形態)。
【図3】自動車の前輪の正面図(第2の実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1および図2に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、図示せぬエンジン、トランスミッションおよびディファレンシャルギヤが収納されたエンジンルーム11と、車輪Wが収納されたホイールハウス12とは、フロントサイドフレーム13の車幅方向外面に結合されたホイールハウス内壁14で仕切られる。フロントサイドフレーム13の下方にはフロントサブフレーム15が配置されており、フロントサイドフレーム13とフロントサブフレーム15とを結合するスプラッシュガード16でエンジンルーム11の側方が覆われ、フロントサブフレーム15の下面に結合されたアンダーカバー17でエンジンルーム11の下方が覆われる。
【0014】
ストラット式のサスペンション18は、フロントサブフレーム15の車幅方向外端に設けたブラケット19にゴムブッシュジョイント20を介して内端を上下揺動自在に枢支されたロアアーム21を備えており、ロアアーム21の外端にボールジョイント22を介してナックル23の下部が枢支される。ナックル23の上部に下端を固定されたダンパー24の上端は、ホイールハウス内壁14の上端に連なるホイールハウス天井壁25に固定される。ダンパー24の上部外周を囲むようにコイルスプリングよりなる懸架ばね26が配置される。
【0015】
エンジンルーム11内に配置されたディファレンシャルギヤから左右方向に延びるドライブシャフト27は、スプラッシュガード16に形成した開口部16aを貫通してホイールハウス12内に延び、ナックル23の内部に回転自在に支持された図示せぬ車軸にボールジョイント28を介して接続される。前記ボールジョイント28はゴム製のブーツ29で覆われる。
【0016】
サスペンション18の上下動に伴ってナックル23、ボールジョイント28およびドライブシャフト27も上下動するため、ドライブシャフト27が貫通するスプラッシュガード16に形成した開口部16aは所定の大きさに形成される。スプラッシュガード16の開口部16aに内端外周部を結合されたゴム製のブーツ30の外端中心部にベアリング31が設けられており、このベアリング31をドライブシャフト27が相対回転可能に貫通する。
【0017】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用について説明する。
【0018】
エンジンルーム11に配置されたエンジンにより駆動されるドライブシャフト27は、スプラッシュガード16の開口部16aおよびブーツ30のベアリング31を貫通してホイールハウス12内に延び、ナックル23に回転自在に支持された車輪Wをボールジョイント28を介して駆動する。路面の凹凸等によりダンパー24および懸架ばね26を伸縮させながら車輪Wがナックル23と共にバンプおよびリバウンドすると、それに伴ってドライブシャフト27も上下動するが、スプラッシュガード16の開口部16aは所定の大きさを有しているために、ドライブシャフト27が前記開口部16aと干渉することはない。
【0019】
車両の走行に伴って車輪Wが泥水等のスプラッシュをホイールハウス12内に撥ね上げても、スプラッシュガード16の開口部16aはブーツ30で覆われているため、スプラッシュが前記開口部16aを通してエンジンルーム11内に浸入するのを阻止し、エンジンルーム11内の搭載物の汚れを防止することができる。スプラッシュガード16の開口部16aに対してドライブシャフト27が相対移動しても、ブーツ30が弾性変形することでドライブシャフト27の移動が許容される。
【0020】
またフロントグリル等からエンジンルーム11内に導入された冷却風がスプラッシュガード16の開口部16aを通過してホイールハウス12内に流出すると、車体の空気抵抗が増加する問題があるが、本実施の形態によればブーツ30が前記開口部16aを覆って冷却風の流出を阻止するため、車体の空気抵抗の増加を防止することができる。
【0021】
またホイールハウス12内のブーツ30は車輪Wが撥ね上げたスプラッシュが付着して汚れるが、そのブーツ30はゴム製であって表面が滑らかであるため、前記特許文献1、2に記載された暖簾状あるいは刷毛状のスプラッシュガードに比べてスプラッシュがこびり付き難く、その清掃も容易である。
【0022】
次に、図3に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0023】
第2の実施の形態は、エンジンルーム11内に設けたステアリングギヤボックスのような操舵装置から延びるタイロッド41が、スプラッシュガード16の開口部16bを貫通してナックル23と一体に形成したアーム23aの先端のボールジョイント42に連結される。従って、操舵装置でタイロッド41を押し引きするとナックル23と共に車輪Wが左右に転舵される。
【0024】
サスペンション18の上下動に伴ってナックル23およびタイロッド41も上下動するため、タイロッド41が貫通するスプラッシュガード16の開口部16bは所定の大きさに形成される。スプラッシュガード16の開口部16bに内端外周部を結合したゴム製のブーツ43の外端中心部をタイロッド41が貫通しており、その貫通部においてタイロッド41がクリップ44,45でブーツ43に固定される。
【0025】
次に、上記構成を備えた本発明の第2の実施の形態の作用について説明する。
【0026】
路面の凹凸等によりダンパー24および懸架ばね26を伸縮させながら車輪Wがナックル23と共にバンプおよびリバウンドすると、それに伴ってタイロッド41も上下動するが、スプラッシュガード16の開口部16bは所定の大きさを有しているために、タイロッド41が前記開口部16bと干渉することはない。
【0027】
車両の走行に伴って車輪Wが泥水等のスプラッシュをホイールハウス12内に撥ね上げても、スプラッシュガード16の開口部16bはブーツ43で覆われているため、スプラッシュが前記開口部16bを通してエンジンルーム11内に浸入するのを阻止し、エンジンルーム11内の搭載物の汚れを防止することができる。スプラッシュガード16の開口部16bに対してタイロッド41が相対移動しても、ブーツ43が弾性変形することでタイロッド41の移動が許容される。
【0028】
またフロントグリル等からエンジンルーム11内に導入された冷却風がスプラッシュガード16の開口部16bを通過してホイールハウス12内に流出すると、車体の空気抵抗が増加する問題があるが、本実施の形態によればブーツ43が前記開口部16bを覆って冷却風の流出を阻止するため、車体の空気抵抗の増加を防止することができる。
【0029】
またホイールハウス12内のブーツ43は車輪Wが撥ね上げたスプラッシュが付着して汚れるが、そのブーツ43はゴム製であって表面が滑らかであるため、前記特許文献1、2に記載された暖簾状あるいは刷毛状のスプラッシュガードに比べてスプラッシュがこびり付き難く、その清掃も容易である。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
例えば、第1、第2の実施の形態を併せて、スプラッシュガード16を貫通するドライブシャフト27およびタイロッド41にそれぞれブーツ30,43を設けても良いし、ドライブシャフト27およびタイロッド41に共通のブーツを設けても良い。
【0032】
また第2の実施の形態でブーツ43の中央部にタイロッド41が固定されているが、ブーツ43に対してタイロッド41を摺動自在に貫通させても良い。
【0033】
またサスペンション18の構造は実施の形態のストラット式に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
11 エンジンルーム
12 ホイールハウス
16 スプラッシュガード
16a 開口部
16b 開口部
27 ドライブシャフト
30 ブーツ
31 ベアリング
41 タイロッド
43 ブーツ
W 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム(11)内に配置したエンジンの駆動力をホイールハウス(12)内に配置した車輪(W)に伝達するドライブシャフト(27)を、前記エンジンルーム(11)および前記ホイールハウス(12)を仕切るスプラッシュガード(16)に形成した開口部(16a)を貫通させた車両用スプラッシュ防止装置において、
前記ドライブシャフト(27)がベアリング(31)を介して回転自在に貫通するブーツ(30)を前記開口部(16a)を覆うようにスプラッシュガード(16)に連結したことを特徴とする車両用スプラッシュ防止装置。
【請求項2】
エンジンルーム(11)内に配置した操舵装置の操舵力をホイールハウス(12)内に配置した車輪(W)に伝達するタイロッド(41)を、前記エンジンルーム(11)および前記ホイールハウス(12)を仕切るガードスプラッシュガード(16)に形成した開口部(16b)を貫通させた車両用スプラッシュ防止装置において、
前記タイロッド(41)が貫通するブーツ(43)を前記開口部(16b)を覆うようにスプラッシュガード(16)に連結したことを特徴とする車両用スプラッシュ防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247678(P2010−247678A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99582(P2009−99582)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】