説明

車両用ディスクローターユニット

【課題】車両の制動時にディスク部に発生する熱クラックの発生を防止した車両用ディスクローターユニットを提供する。
【解決手段】一端がホイールハブに嵌合され、他端に近接した外周面上に複数のカム突起111が形成されたアダプター部110と、アダプター部110に貫通される貫通孔121を中心部に有し、複数のカム突起111に対応して貫通孔の内周面に複数の支持突起127が形成され、複数のカム突起111の間に複数の支持突起127が嵌合され、アダプター部110に貫通されて組み立てられるディスク部123,125と、アダプター部110の他端の外周面に設けられたねじ溝Nに螺合されて、ディスク部123,125を前記アダプター部110に固定する組立てナット140と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクローターユニットに係り、より詳細には、車両の制動時にディスク部に発生する熱によってディスク部にクラックが発生するのを防止した車両用ディスクローターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、走行中に減速するためのブレーキ装置が備えられており、このブレーキ装置は、回転体の形状によってドラム式ブレーキ装置とディスク式ブレーキ装置に区分される。ディスク式ブレーキ装置はディスクローターとも云う。
通常、車両用ディスクローターユニットは、ブレーキディスクと、ホイールハブに装着されるアダプターと、が一体に形成され、ホイールと一体に回転するディスクの両側面を、油圧を利用してブレーキパッドで加圧して制動するように構成される。
【0003】
図5は、従来の一般的な車両用ディスクローターユニットの斜視図である。図5に示すように、従来の技術による車両用ディスクローターユニット1は、ホイールハブ(図示せず)に装着されてホイールハブと一体に回転するアダプター3と、アダプター3と一体に形成されるディスク5と、を含んで構成される。
ディスク5の外周の一側には、ディスク5の外周を跨ぐようにキャリパー7が装着され、キャリパー7の内部には、運転者のブレーキペダルの操作に対応してディスク5の両側を加圧して制動力を発生させるブレーキパッド(図示せず)が装着される。
【0004】
ディスク5は、車両の走行中に高速で回転して遠心力を受けると共に、制動時にブレーキパッドとの摩擦によって発生する摩擦熱によって高温になる。ディスク5は、高温になることによってに熱応力が発生する。
しかし、従来の車両用ディスクローターユニット1は、ディスク5がアダプター3と一体に形成されているため、ディスク5の外周方向への膨張が制限され、ホイールハブの軸方向に変形させるような歪が発生し、この歪ためにディスク5の表面に熱クラックが発生することがある。
【0005】
ディスク5の表面に発生した熱クラックは、ディスク5全体の破損の原因となるため、熱クラックの発生時にはディスクローターユニット1全体を交換しなければならない。従って、熱クラックの発生は、ディスクローターユニット1の耐久性の低下、ディスクローターユニット1の商品性の低下、及びディスクローターユニット1の交換のために追加費用の発生という問題を伴う。
【0006】
内側ディスクと外側ディスクとを組み立てたディスクの、各ディスクそれぞれの裏面に金属製の裏金を設けて熱膨張によるブレーキパッドの変形を押さえることによってクラックを発生し難くしたディスクブレーキ装置が開示されている(例えば特許文献1を参照)。しかし、このディスクブレーキ装置は、外周方向への熱膨張が制限されて生じる軸方向への歪は防げないので、熱クラックの発生を効果的に抑えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平−6−81864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両の制動時にディスク部に発生する熱クラックの発生を防止し、それによって耐久性及び寿命を向上させた車両用ディスクローターユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の車両用ディスクローターユニットは、一端がホイールハブに嵌合され、他端に近接した外周面上に複数のカム突起が形成されたアダプター部と、アダプター部が貫通する貫通孔を中心部に有し、複数のカム突起に対応して貫通孔の内周面に複数の支持突起が形成され、複数のカム突起の間に複数の支持突起が嵌合され、アダプター部に貫通されて組み立てられるディスク部と、アダプター部の他端の外周面に設けられたねじ溝に螺合されて、ディスク部をアダプター部に固定する組立てナットと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明は、複数のカム突起が、アダプター部の他端に近接した外周面に一定の間隔で離隔して形成される。
また本発明は、カム突起が、一側上部に突出形成された係止部を有する。
【0011】
また本発明は、複数の支持突起が、ディスク部に設けられた貫通孔の内周面に、複数のカム突起に対応し一定の間隔で離隔して形成される。
また本発明は、ディスク部が、内側ディスクと外側ディスクとを組み立てて形成され、内側ディスク及び外側ディスクそれぞれに、複数カム突起それぞれに対応した支持突起が一対として形成される。
【0012】
また本発明は、ディスクローターユニットが、組立てナットとディスク部との間に挿入されるワッシャーと、支持突起の間に内側ディスクと外側ディスクとに対応して一対に形成され、カム突起に当設し、係止部及びワッシャーに係止されるストッパーと、を更に有する。
また本発明は、アダプター部に、組立てナットを螺結するるように、アダプター部の他端の外周面上に形成されたねじ山を更に含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用ディスクローターユニットは、ホイールハブに嵌合されるアダプター部と、ブレーキパッドと接触するディスク部と、が別個の部品として形成されて組み立てられることによって、車両の制動時に発生する熱によるディスク部の熱膨張による変形を、ディスクの円周方向に誘導し、熱クラックの発生を防止することができる。
【0014】
熱クラックの発生を防止するによって、ディスク部の耐久性及び寿命を向上させることができる。また、ディスク部の耐久性及び寿命を向上させることによって、消費者の不満を解消して、全体的な商品性及び品質競争力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例による車両用ディスクローターユニットの斜視図である。
【図2】本発明の実施例による車両用ディスクローターユニットの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例による車両用ディスクローターユニットの、アダプター部及びディスク部の結合状態を示した図面である。
【図4】図1のA−A線による断面図である。
【図5】従来の一般的な車両用ディスクローターユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例による車両用ディスクローターユニットの斜視図である。
図1に示すように、本発明の車両用ディスクローターユニット100は、アダプター部110、ディスク部120、及び組立てナット140を有する。以下に、各構成要素を詳細に説明する。
【0017】
ディスク部120はホイールハブ150側(車両の中心側)に設けられた内側ディスク123と、反対側に設けられた外側ディスク125と、の2枚の円型ディスクが重ねて組み立てられた円盤状の部材であって、円盤の中央にアダプター部110が貫通する貫通ホール121が形成される。
【0018】
アダプター部110は、一端がホイールハブ150と嵌合し、他端がディスク部120に設けられた貫通ホール121を貫通し、ワッシャー130及び組立てナット140でディスク部120を固定する。
【0019】
図2は、本発明の実施例による車両用ディスクローターユニットの分解斜視図である。
アダプター部110は、他端に近接した外側面(他端部)に、複数のカム突起111が一定の間隔で相互に離隔して形成される。各カム突起111は、ホイールハブ150側(車両の中心側)に、内側ディスク123と対応するように突出形成された係止部113を有する。
【0020】
ディスク部120の貫通ホール121の内周面に、一定の間隔で相互に離隔して支持突起127が設けられる。1個のカム突起111に対応して、内側ディスク123及び外側ディスク125それぞれに支持突起127が形成される。各支持突起127の間には、各カム突起111に当接する一対のストッパー129が形成される。
【0021】
図3は、本発明の実施例による車両用ディスクローターユニットの、アダプター部及びディスク部の結合状態を示す図面である。
ディスク部120の複数の支持突起127それぞれの間に、アダプター110のカム突起111が嵌合され、アダプター部110がディスク部120の貫通ホール121に貫通される。
【0022】
図4は、図1のA−A線による断面図である。
図4に示すように、内側ディスク123及び外側ディスク125に一対のストッパー129が形成される。ストッパー129は、カム突起111に当設し、係止部113とワッシャー130とによって係止されて固定されれる。
ストッパー129は、ディスク部120がアダプター部110に固定された時に、ディスク部120がアダプター部110から離脱するのを防止する。
【0023】
一端がホイールハブ150と結合されたアダプター部110の、ディスク部120を貫通した他端の外側の側面にねじ山(N)が形成され、ワッシャー130が挿入され、ねじ山(N)に組立てナット140が締結され螺止される。これによってディスク部120がアダプター部110固定される。
【0024】
本実施例では、カム突起111及び一対の支持突起127が、アダプター部110及びディスク部120の中心を基準に円周方向に沿って36°の角度で10個が各々均等に隔離されて形成される例を図示したが、本発明はこれに限定されず、各カム突起及び支持突起の位置及び個数を変更することができる。
【0025】
以上のように、本発明は限定された実施例及び図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想及び特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0026】
100 ディスクローターユニット
110 アダプター部
111 カム突起
113 係止部
120 ディスク部
121 貫通ホール
123、125 内、外側ディスク
127 支持突起
129 ストッパー
130 ワッシャー
140 組立てナット
150 ホイールハブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がホイールハブに嵌合され、他端に近接した外周面上に複数のカム突起が形成されたアダプター部と、
前記アダプター部が貫通する貫通孔を中心部に有し、複数の前記カム突起に対応して前記貫通孔の内周面に複数の支持突起が形成され、複数の前記カム突起の間に複数の前記支持突起が嵌合され、前記アダプター部に貫通されて組み立てられるディスク部と、
前記アダプター部の他端の外周面に設けられたねじ溝に螺合されて、前記ディスク部を前記アダプター部に固定する組立てナットと、
を有することを特徴とする車両用ディスクローターユニット。
【請求項2】
複数の前記カム突起は、前記アダプター部の他端に近接した外周面に一定の間隔で離隔して形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクローターユニット。
【請求項3】
前記カム突起は、一側上部に突出形成された係止部を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用ディスクローターユニット。
【請求項4】
複数の前記支持突起は、前記ディスク部に設けられた前記貫通孔の内周面に、前記複数のカム突起に対応し、一定の間隔で離隔して形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両用ディスクローターユニット。
【請求項5】
前記ディスク部は、内側ディスクと外側ディスクとを組み立てて形成され、
前記内側ディスク及び前記外側ディスクそれぞれに、複数の前記カム突起それぞれに対応した、前記支持突起が一対として形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両用ディスクローターユニット。
【請求項6】
前記ディスクローターユニットは、
前記組立てナットと前記ディスク部との間に挿入されるワッシャーと、
前記支持突起の間に前記内側ディスクと前記外側ディスクとに対応して一対に形成され、前記カム突起に当設し、前記係止部及び前記ワッシャーに係止されるストッパーと、
を更に有することを特徴とする請求項5に記載の車両用ディスクローターユニット。
【請求項7】
前記アダプター部は、前記組立てナットを螺結するように、前記アダプター部の他端の外周面上に設けられたねじ溝を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクローターユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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