車両用ドアの窓開口構造
【課題】後窓開口を覆う固定パネルのウエザーストリップにモールディングの機能を併設することで、取り付け容易化を図れるようにした車両用ドアの窓開口構造を提供する。
【解決手段】 ドアパネル部3の後側上端より上方に上向き延出部Uが形成され、サッシュ部4と上向き延出部Uとにより窓開口が形成され、センターサッシュ5で区画される後窓開口が固定パネル材7で覆われ、後窓開口の下部及び後部が湾曲開口周縁部rとして形成されたもので、固定パネル材7の周縁部を挟持部231が挟持すると共に湾曲開口周縁部rに対して嵌着されるウエザーストリップ23を有し、挟持部231の車内端縁より車内側トリム22の端部を覆う車内側リップ236が延出形成され、車外端縁よりアウタパネル8の湾曲開口周縁部rの外壁面に先端が当接する車外側リップ237が形成された。
【解決手段】 ドアパネル部3の後側上端より上方に上向き延出部Uが形成され、サッシュ部4と上向き延出部Uとにより窓開口が形成され、センターサッシュ5で区画される後窓開口が固定パネル材7で覆われ、後窓開口の下部及び後部が湾曲開口周縁部rとして形成されたもので、固定パネル材7の周縁部を挟持部231が挟持すると共に湾曲開口周縁部rに対して嵌着されるウエザーストリップ23を有し、挟持部231の車内端縁より車内側トリム22の端部を覆う車内側リップ236が延出形成され、車外端縁よりアウタパネル8の湾曲開口周縁部rの外壁面に先端が当接する車外側リップ237が形成された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアのパネル本体と、そのパネル本体の上縁部に一体的に取り付けられるサッシュとにより形成される窓開口の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は乗員の車室内への乗降を行うために車体側部の乗降口を開閉するドアを装備している。この種のドア、特に、リアドア100は、図12、図13(a),(b)に示すように、アウタ及びインナパネル111,112からなるパネル本体110とそのパネル本体の上部に一体的に設けられるサッシュ120とにより窓開口を形成している。
ところで、このようなリアドア100の後窓開口は固定ガラス120で覆われ、特にその周縁部はセンターサッシュ130と上側のルーフ対向サッシュ150とパネル本体110との上端縁とに囲まれ、これらにウエザーストリップ160を介してシール性を確保する状態で嵌着される。
【0003】
この場合、固定ガラス120の下端縁のアウタ及びインナ面はウエザーストリップの要部を成す挟持部161により挟持された状態で両パネルの上端縁間に取り付けられているU字型のガラス取付枠170に嵌着される。ここで、挟持部161はその端縁から車外側にアウタリップ162が、車内側にインナリップ163が突き出すように一体形成される。ここで、アウタリップ162は直状のベルトラインアウタモールディング180に当接し、車外の外観を確保しており、車内側に延びるインナリップ163は直状のベルトラインインナモールディング190に当接して、車内の外観を確保している。この場合、ベルトラインアウタモールディング180の前端はアウタパネル111の上縁部に嵌着され、前窓開口のスライドドア200の外面と対向し、ベルトラインインナモールディング190はインナパネルの上縁部に嵌着され、スライドドア200の内面と対向している。
【0004】
なお、このようなアウタパネルとインナパネルの上端縁が直状を成し、後窓開口が固定ガラスで覆われた車両用ドアの窓開口構造の一例が特開2003−63255公報(引用文献1)に開示される。ここでのウエザーストリップはその挟持部より車外側に伸びるアウタリップがベルトラインアウタモールディングに、車内側に延びるインナリップがトリム上向き面に当接している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−63255公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図12の通常のドアと異なり、アウタパネルとインナパネルからなるパネル本体の後側上位に上向き延出部が突き出し形成され、その上向き延出部とセンターサッシュとにより後窓開口が形成され、しかも、後窓開口の下部及び後部が湾曲開口周縁部を成すように形成されるというドア構造(一例が図1に開示される)を採用した場合、次のような問題が生じる。
即ち、この場合、後窓開口の湾曲開口周縁部に対して固定ガラスのウエザーストリップが取り付けられるとともにそのウエザーストリップに併設して外部と内部のモールディングが重なるようにして装着されることとなる。
【0007】
この場合、アウタ及びインナモールディングは湾曲開口周縁部に沿うように三次元曲げ加工される必要があり、加工に手間がかかる上、ウエザーストリップに併設状態で装着する場合に、位置合わせ作業に手間取り、前窓開口側の直状モールディングに対しても連続感を保つように装着する必要がある。しかも、三次元曲げ加工されたアウタ及びインナモールディングは寸法ばらつきを吸収しずらく、この点でも取付作業に手間取り、組み込み作業コストが増加し品質確保が難しい。
【0008】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたもので、後窓開口を覆う固定パネルをドア側の開口周縁部に嵌着するためのウエザーストリップにモールディングの機能を付設することで取り付け作業の容易化を図れるようにした車両用ドアの窓開口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、車両用ドアのパネル部の後側上端より上方に延びる上向き延出部が形成され、且つ、上記ドア主要部のベルトライン上側のサッシュ部材と上記上向き延出部とにより窓開口が形成され、上記窓開口のうちセンターサッシュで区画される後窓開口が固定パネル材で覆われ、その後窓開口の下部及び後部の開口周縁部が上記上向き延出部により湾曲開口周縁部として連続形成された車両用ドアの窓開口構造において、上記固定パネル材の周縁部を挟持部が挟持すると共に上記湾曲開口周縁部に対してシール性を保つ状態で嵌着されるウエザーストリップを有し、上記ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側トリムの端部を覆う車内側リップが延出形成され、車外端縁よりアウタパネルの湾曲開口周縁部の外壁面に先端が当接する車外側リップが延出形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、上記ウエザーストリップの車外側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインアウタモールディングの後端外面と連続面となるよう形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、上記ウエザーストリップの車内側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインインナモールディングの後端外面と同一面となるよう形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造によれば、ドアパネル部に上向き延出部が形成されるドアの後窓開口にウエザーストリップを用いて固定パネルを装着するにあたり、ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側リップを延出形成し、車外端縁より車外側リップを延出形成して、車外車内の各ドア後部側モール部材の形状を採らせ、一体化した。このため、車外車内の各ドア後部側モール部材を別途用意する必要がない上に、取付作業を容易に行うことができ、品質確保を図れ、取付作業性のアップによるコスト低減をも図れる。
【0013】
請求項2記載の車両用ドアの窓開口構造によれば、ウエザーストリップの挟持部の車外端縁より車外側リップを延出形成して、車外車内の各ドア後部側モール部材の形状を採らせ、一体化した。このため、車外のドア後部側モール部材を別途用意する必要がない上に、前側の車外のベルトラインアウタモールディングとの相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保ったままでの取付作業を容易に行うことができ、品質確保を図れ、取付作業性のアップによるコスト低減をも図れる。
【0014】
請求項3記載の車両用ドアの窓開口構造によれば、ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側リップを延出形成して、車内のドア後部側モール部材の形状を採らせ、一体化した。このため、車内のドア後部側モール部材を別途用意する必要がない上に、前側の車内のベルトラインインナモールディングとの相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保ったままでの取付作業を容易に行うことができ、品質確保を図れ、取付作業性のアップによるコスト低減をも図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1にはこの発明の車両用ドアの窓開口構造が適用されたリアドアを示し、図5にはこのリアドアを装備する自動車Cを示した。この自動車Cは左右の不図示の前後乗降口を前後ドア1,2の開閉により乗員が乗降できる構成を採っている。リアドア2はその前端部(図1で左側端部)が不図示の開口周縁部の前部にヒンジ結合され、後端部が不図示のラッチ及びストライカを用い、リアエンドピラー側に開錠可能にロックされる。
【0016】
このようなリアドア2は、図1、3に示すように、ドアパネル部3と、その上部に一体結合される鉤形サッシュ4と、この鉤形サッシュ4とドアパネル部3の間に配備されるセンターサッシュ5と、後述の前窓開口を開閉するスライドガラス6と、後述の後窓開口を覆う固定パネルである固定ガラス7(ステーショナリーガラス)と、不図示のドアハンドルと、これらの取付に用いる付属部材とで形成される。
【0017】
ドアパネル部3は、図3に示すように、アウタパネル8とインナパネル9を相互に重ねることで、両パネル間にドア内部空間E0を覆うように形成され、両パネル8、9の上端長縁部801,901の間にドアパネル開口Sが形成される。しかも、ベルトラインLb(図1参照)の下側にドア下半部Dが形成され、ドア下半部Dの後端上部より上向き延出部Uが延出形成される。
【0018】
ドアパネル部3のベルトラインLb上側の鉤形サッシュ4及びセンターサッシュ5と上向き延出部Uとにより窓開口が形成される。ここで、鉤形サッシュ4は前縦サッシュ部13およびルーフ対向サッシュ部14を鉤型に一体結合して形成される。図1,3に示すように、前縦サッシュ部13はインナパネル9側の前側の周縁部902に重ね合わされ、互いに溶着される。図6,9に示すように、ルーフ対向サッシュ部14の後端は上向き延出部U内の後述するサッシュブラケット15に溶着されている。
【0019】
ここで、固定ガラス7で覆われる後窓開口はセンターサッシュ5が前部開口周縁部を、鉤形サッシュ4の上部を成すルーフ対向サッシュ部14が上部開口周縁部を形成する。しかも、後窓開口の下部及び後部の開口周縁部が上向き延出部Uにより湾曲開口周縁部rとして連続形成されている。
図3に示すように、インナパネル9は主部903と、その前後及び下部を屈曲させてアウタパネル8側に延出する前後及び下部の周縁部904と、それら前後及び下部の周縁部902より外側に向け屈曲するフランジdfとからなる。フランジdfはアウタパネル8の周縁の挟持部cdに覆われ、互にヘミング加工により一体結合される。
図3、図11に示すように、ドア下半部Dの後端上部より上方に延出する上向き延出部Uはその上端縁Utがルーフサイドレール12側と対向する。
【0020】
図9に示すように、上向き延出部Uはアウタパネル8のアウタ上向き延出部Uoとインナパネル9のインナ上向き延出部Uiを袋状空間E1を介して相互に重ね合わされ、インナ上向き延出部Uiの端部フランジufがこれと対向するアウタ上向き延出部Uoの端部挟持部c1により覆われ、互いがヘミング加工によって結合されている。袋状空間E1の上端側にはサッシュブラケット15が配備される。サッシュブラケット15は基部151と周縁フランジ152からなり、基部151がインナ上向き延出部Uiに複数箇所で溶着される。図6に示すように、サッシュブラケット15の前側フランジ153の上部には後述のルーフ対向サッシュ部14の後端が当接し、互に溶着される。このようにルーフ対向サッシュ部14の後端はインナ上向き延出部Uiとアウタ上向き延出部Uoの間に挟まれ、サッシュブラケット15を介しインナ上向き延出部Uiに一体結合される。
【0021】
なお、図7(a),(b)に示すように、ルーフ対向サッシュ部14のインナ上向き延出部Uiとの対向部はその上端突き出し部が切除され、その切除部gの上にインナ上向き延出部Uiが載置され、インナ上向き延出部Uiとアウタ上向き延出部Uoの重合部Jの高さが切除前のルーフ対向サッシュ部14と連続するように形成されている。
【0022】
上向き延出部Uの湾曲開口周縁部rには変形U字型断面の長寸部材として形成されるガラス受け部材16が装着される。図7(b)、図8に示すように、ガラス受け部材16は、その車外側の外側壁部161がアウタ上向き延出部Uoの周縁部に重なり溶着されることで外重合部w1が形成され、内側壁部162がインナ上向き延出部Uiの周縁部に重なり溶着されることで内重合部w2が形成される。なお、ここで、外重合部w1に対して内重合部w2は低位置側に段差h1を保つように形成され、これにより、内重合部w2の複数箇所の溶接作業を終わらせてから外側壁部161にアウタ上向き延出部Uoの周縁部が重ねられ、外重合部w1が溶接されるという溶接作業を容易に行えるようにしている。
【0023】
ところで、図9に示すように、アウタ上向き延出部Uoが形成するドア壁面は、アウタ上向き延出部Uoにおける前側中央p1(図1参照)に対してその上方や後方における膨出量が徐々に小さくなる三次元湾曲面として形成され、車体側のルーフサイドレール12やリアピラー10の外側面と連続するように形成されている。
【0024】
図10に示すように、ルーフ対向サッシュ部14の前後方向Xでの中間部には屈曲部141が形成され、その屈曲部141の下縁にはセンターサッシュ5の上端が当接し、図11(a)に示すように両者が屈曲ブラケット17を介して結合されている。なお、センターサッシュ5の下端はドア下半部D1側のインナパネル9内壁に不図示のサッシュブラケットを介して一体結合される。
【0025】
センターサッシュ5は断面H型を成し、前縦サッシュ部13と平行に配備され、前縦サッシュ部の開口溝m1とセンターサッシュ558の前開口溝m2との間にスライドガラス6が不図示のランチャンネルを介してそれぞれ摺動可能に取り付けられる。なお、スライドガラス6はその下縁に不図示のガラス支持部材を一体的に取り付け、そのガラス支持部材がインナパネル9に取り付けられた不図示のウインドウレギュレータにより昇降操作力を受けることで、上下摺動できる。
【0026】
図4に示すように、センターサッシュ5の前側の前窓開口の下縁部はアウタパネル8とインナパネル9の上端長縁部801,901により形成され、それぞれには断面逆U字型で直状のベルトラインアウタモールディング18とベルトラインインナモールディング19とが不図示の係止爪の働きで離脱不可に嵌着される。
【0027】
ベルトラインアウタモールディング18及びベルトラインインナモールディング19はそれぞれのスライドガラス6との対向部に水切りチャンネル21が装備され、これによりスライドガラス6との間への外部からの水や埃の浸入を規制している。ベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181はその下縁がアウタパネル8のベルトラインLb位置の段部kに当接し、これによってアウタパネル8の上端長縁部801の外観を良好に保持している。ベルトラインインナモールディング19の断面逆U字型の基部191の上端からは車内側に向け屈曲部192が形成され、屈曲部192と基部191の上端との間にドアトリム22の上端屈曲部221の先端が所定量嵌合され、これによってインナパネル9とドアトリムの上端屈曲部221の連結構造の外観を良好に保持している。
【0028】
センターサッシュ558の後開口溝m3と、ルーフ対向サッシュ部14の上開口溝m5と、上向き延出部Uに取り付けられた湾曲開口周縁部rのガラス受け部材16の湾曲開口溝m4とに対して、固定ガラス7の前縁、上縁、下部及び後部の湾曲開口周縁部rとの対向部がウエザーストリップ23(図2、8参照)を介しシール性を保持して嵌着される。
図2に示すように、ウエザーストリップ23は環状を成し、センターサッシュ5の後開口溝m3とルーフ対向サッシュ部14の上開口溝m5に嵌着される部位の断面形状は、図7(a),(b)に示すように固定ガラス7の端縁を挟持する挟持部231及び挟持部先端より延びる内外リップ部232,233とで形成されている。
【0029】
一方、図8に示すように、ウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rとの対向部の断面形状は固定ガラス7の端縁を挟持する挟持部231及び挟持部231の底部より車内方向に延び内重合部w2に当接する下フランジ部234と、湾曲開口周縁部rに位置する挟持部231の底部より突き出る取付基部235と、挟持部231の車内突端縁より延出する車内側リップ236と、挟持部231の車外突端縁より延出する車外側リップ237と、湾曲開口周縁部rの上端の上端延出部238と、湾曲開口周縁部rの上方の挟持部231より外方にひれ状に突き出る水浸入防止用リップ239とで形成される。
【0030】
挟持部231は湾曲開口周縁部rとの対向部のほぼ全域において、固定ガラス7の端縁を挟持する形状を成すように形成されるが、上端延出部238のみが挟持部231を排除されている。ここで上端延出部238は、図9、図11(b)に示すように、車外側リップ237を扁平させ、その肉厚を増加させた形状を成し、この厚手の上端延出部238はルーフ対向サッシュ部14の後端及びアウタ上向き延出部Uoの上端縁に重なり、接合され、ルーフサイドレール12に対向するように形成される。
【0031】
図9に示すように、上端延出部238の前端はルーフ対向サッシュ部14の後端にエッジ状先端e1を当接させ、アウタ上向き延出部Uoの上端縁の段部d2に向かうに従いその肉厚を増加させ、その上で、後端が段部d2に当接する状態において、上端延出部238の表面とアウタ上向き延出部Uoの上端縁の表面とがほぼ連続面を形成するように形成されている。このアウタ上向き延出部Uoの上端縁の表面はリアピラー10側の外面とも連続することより、ここでのルーフ対向サッシュ部14とアウタ上向き延出部Uoの上端縁の段部d2での気流の乱れを、上端延出部238がスムーズな流れfに修正でき、ここでの風切音の発生を防止することができる。
【0032】
挟持部231の底部より突き出る取付基部235は肉厚ブロック形状を成し、剛性が比較的大きな形状を有し、図8に示すように、湾曲開口溝m4に嵌合されることで、挟持部の内外方向のずれを抑制する。しかも、下フランジ部234が内重合部w2に当接することも加わり、挟持部231が支持する固定ガラス7を適正位置に位置規制することができるように形成される。
【0033】
ウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rとの対向部の全域において、挟持部の車外端縁より車外側リップ237が連続して延出形成される。図8に示すように、車外側リップ237はアウタパネル8の湾曲開口周縁部rでの上端長縁部801を覆うとともに屈曲してアウタパネル8の段部d1に先端が当接するように延出するという断面形状を成している。
【0034】
この車外側リップ237のセンターサッシュ5との対向部側はそのセンターサッシュ5を挟んでその前方に位置するベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181と同一の外面形状を成すように形成される。このように、ベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181とその後方のウエザーストリップ23の車外側リップ237の前端側部位の外形がほぼ同一形状を成し、連続形成されるので、ベルトラインアウタモールディング18とウエザーストリップ23の車外側リップ237とがベルトラインLb近傍において前後に連続するライン形状を違和感なく保持でき、外観を良好に維持できる。
【0035】
一方、ウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rとの対向部で挟持部231先端より車内側に延びる車内側リップ部236はセンターサッシュ5を挟んでその前方に位置するベルトラインインナモールディング19の屈曲部192と同一の外面形状を成すように形成される。しかも、ドアトリム22の上端屈曲部221にベルトラインインナモールディング19の屈曲部192とその後方に位置するのウエザーストリップ23の車内側リップ部236とが連続して載置され、外形がほぼ同一形状を成すので、屈曲部192とその後方の車内側リップ部236とが違和感なく連続面を成すこととができ、外観を良好に維持できる。
【0036】
このように図1のリアドア2は、上向き延出部Uが後窓開口の下部及び後部を湾曲開口周縁部rとして連続形成するというドア構造を採るので、本来、ベルトラインアウタモールディング18やベルトラインインナモールディング19のセンターサッシュ5より後方側に配備されるドア後部側モール部材が複雑に湾曲する形状となり、これらドア後部側モール部材の成型及び取付作業に手間取ることとなる。しかし、図1のリアドア2が用いるウエザーストリップ23はその挟持部231の車内端縁より車内側リップ部236を延出形成し、その前方に位置するベルトラインインナモールディング19の屈曲部192と同一の外面形状を成すよう形成される。このため、別部材を設けることなくウエザーストリップ23に屈曲部192に相当する部位を連続形成できる。
【0037】
同様に、挟持部の車外端縁より車外側リップ237を延出形成し、その前方に位置するベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181と同一の外面形状を成すように形成される。このため、別部材を設けることなくウエザーストリップ23に外側覆い部181に相当する部位を連続形成できる。
このようにウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rに車内側リップ部236と車外側リップ237とが屈曲部192に相当する部位及び外側覆い部181に相当する部位を一体形成することになる。このため、本来3部材を別途にそれぞれ用意する必要があり、しかも、3部材相互の位置合わせを必要とするところであったものを、1部材化して、コスト低減を図れる。特に、相互の位置合わせを不要とするので、ウエザーストリップ23の前方側にあるベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181との前後における相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保持できる取付作業を容易に行うことができる。同じく、ウエザーストリップ23前側にある車内のベルトラインインナモールディング19の屈曲部192との前後における相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保持できる取付作業を容易に行うことができる。こように取付作業性のアップを図れ、これによるコスト低減を図れ、しかも、位置ずれが抑制され、品質確保を図れる。
【0038】
上述のところにおいて、固定パネルとしての固定ガラスを説明したが、樹脂パネルを用いても良く、この場合も図1の車両用ドアの窓開口構造と同様の作用効果が得られる。上述の自動車は4ドア車として説明したが、2ドアの自動車に本発明を適用することもでき、この場合も図1の車両用ドアの窓開口構造と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態としての車両用ドアの窓開口構造が適用されたリアドアの正面図である。
【図2】図1のリアドアに装着されるウエザーストリップの拡大平面図である。
【図3】図1のリアドアの概略縦断面図である。
【図4】図3のリアドアの要部拡大切欠断面図である。
【図5】図1のリアドアを装備する自動車の概略平面図である。
【図6】図5のリアドアの上向き延出部とルーフ対向サッシュ部との結合構造説明図である。
【図7】図6の要部断面を示し、(a)が図6のA−A線断面図、(b)が図6のB−B線断面図を示す。
【図8】図1のリアドアに形成される上向き延出部の要部拡大断面図である。
【図9】図6のC−C線断面図である。
【図10】図1のリアドアの斜め上方からの切欠斜視図である。
【図11】図10の要部断面を示し、(a)が図10のD−D線断面図、(b)が図10のE−E線断面図、(c)が図10のF−F線断面図を示す。
【図12】従来のリアドアの内部正面図である。
【図13】図12の従来のリアドアの断面を示し、(a)が図12のX−X線断面図、(b)が図12のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 リアドア
3 ドアパネル部
4 サッシュ部
5 センターサッシュ
6 スライドガラス
7 固定ガラス(固定パネル材)
8 アウタパネル
9 インナパネル
14 ルーフ対向サッシュ部
18 ベルトラインアウタモールディング
19 ベルトラインインナモールディング
23 ウエザーストリップ
231 挟持部
237 車外側リップ
238 車内側リップ
d1 湾曲開口周縁部におけるアウタパネルの段部
d2 アウタ上向き延出部の上端の段部
r 湾曲開口周縁部
C 自動車
D ドア下半部
U 上向き延出部
Uo アウタ上向き延出部
Ui インナ上向き延出部
Ut 上端縁
Lb ベルトライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアのパネル本体と、そのパネル本体の上縁部に一体的に取り付けられるサッシュとにより形成される窓開口の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は乗員の車室内への乗降を行うために車体側部の乗降口を開閉するドアを装備している。この種のドア、特に、リアドア100は、図12、図13(a),(b)に示すように、アウタ及びインナパネル111,112からなるパネル本体110とそのパネル本体の上部に一体的に設けられるサッシュ120とにより窓開口を形成している。
ところで、このようなリアドア100の後窓開口は固定ガラス120で覆われ、特にその周縁部はセンターサッシュ130と上側のルーフ対向サッシュ150とパネル本体110との上端縁とに囲まれ、これらにウエザーストリップ160を介してシール性を確保する状態で嵌着される。
【0003】
この場合、固定ガラス120の下端縁のアウタ及びインナ面はウエザーストリップの要部を成す挟持部161により挟持された状態で両パネルの上端縁間に取り付けられているU字型のガラス取付枠170に嵌着される。ここで、挟持部161はその端縁から車外側にアウタリップ162が、車内側にインナリップ163が突き出すように一体形成される。ここで、アウタリップ162は直状のベルトラインアウタモールディング180に当接し、車外の外観を確保しており、車内側に延びるインナリップ163は直状のベルトラインインナモールディング190に当接して、車内の外観を確保している。この場合、ベルトラインアウタモールディング180の前端はアウタパネル111の上縁部に嵌着され、前窓開口のスライドドア200の外面と対向し、ベルトラインインナモールディング190はインナパネルの上縁部に嵌着され、スライドドア200の内面と対向している。
【0004】
なお、このようなアウタパネルとインナパネルの上端縁が直状を成し、後窓開口が固定ガラスで覆われた車両用ドアの窓開口構造の一例が特開2003−63255公報(引用文献1)に開示される。ここでのウエザーストリップはその挟持部より車外側に伸びるアウタリップがベルトラインアウタモールディングに、車内側に延びるインナリップがトリム上向き面に当接している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−63255公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図12の通常のドアと異なり、アウタパネルとインナパネルからなるパネル本体の後側上位に上向き延出部が突き出し形成され、その上向き延出部とセンターサッシュとにより後窓開口が形成され、しかも、後窓開口の下部及び後部が湾曲開口周縁部を成すように形成されるというドア構造(一例が図1に開示される)を採用した場合、次のような問題が生じる。
即ち、この場合、後窓開口の湾曲開口周縁部に対して固定ガラスのウエザーストリップが取り付けられるとともにそのウエザーストリップに併設して外部と内部のモールディングが重なるようにして装着されることとなる。
【0007】
この場合、アウタ及びインナモールディングは湾曲開口周縁部に沿うように三次元曲げ加工される必要があり、加工に手間がかかる上、ウエザーストリップに併設状態で装着する場合に、位置合わせ作業に手間取り、前窓開口側の直状モールディングに対しても連続感を保つように装着する必要がある。しかも、三次元曲げ加工されたアウタ及びインナモールディングは寸法ばらつきを吸収しずらく、この点でも取付作業に手間取り、組み込み作業コストが増加し品質確保が難しい。
【0008】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたもので、後窓開口を覆う固定パネルをドア側の開口周縁部に嵌着するためのウエザーストリップにモールディングの機能を付設することで取り付け作業の容易化を図れるようにした車両用ドアの窓開口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、車両用ドアのパネル部の後側上端より上方に延びる上向き延出部が形成され、且つ、上記ドア主要部のベルトライン上側のサッシュ部材と上記上向き延出部とにより窓開口が形成され、上記窓開口のうちセンターサッシュで区画される後窓開口が固定パネル材で覆われ、その後窓開口の下部及び後部の開口周縁部が上記上向き延出部により湾曲開口周縁部として連続形成された車両用ドアの窓開口構造において、上記固定パネル材の周縁部を挟持部が挟持すると共に上記湾曲開口周縁部に対してシール性を保つ状態で嵌着されるウエザーストリップを有し、上記ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側トリムの端部を覆う車内側リップが延出形成され、車外端縁よりアウタパネルの湾曲開口周縁部の外壁面に先端が当接する車外側リップが延出形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、上記ウエザーストリップの車外側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインアウタモールディングの後端外面と連続面となるよう形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、上記ウエザーストリップの車内側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインインナモールディングの後端外面と同一面となるよう形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造によれば、ドアパネル部に上向き延出部が形成されるドアの後窓開口にウエザーストリップを用いて固定パネルを装着するにあたり、ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側リップを延出形成し、車外端縁より車外側リップを延出形成して、車外車内の各ドア後部側モール部材の形状を採らせ、一体化した。このため、車外車内の各ドア後部側モール部材を別途用意する必要がない上に、取付作業を容易に行うことができ、品質確保を図れ、取付作業性のアップによるコスト低減をも図れる。
【0013】
請求項2記載の車両用ドアの窓開口構造によれば、ウエザーストリップの挟持部の車外端縁より車外側リップを延出形成して、車外車内の各ドア後部側モール部材の形状を採らせ、一体化した。このため、車外のドア後部側モール部材を別途用意する必要がない上に、前側の車外のベルトラインアウタモールディングとの相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保ったままでの取付作業を容易に行うことができ、品質確保を図れ、取付作業性のアップによるコスト低減をも図れる。
【0014】
請求項3記載の車両用ドアの窓開口構造によれば、ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側リップを延出形成して、車内のドア後部側モール部材の形状を採らせ、一体化した。このため、車内のドア後部側モール部材を別途用意する必要がない上に、前側の車内のベルトラインインナモールディングとの相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保ったままでの取付作業を容易に行うことができ、品質確保を図れ、取付作業性のアップによるコスト低減をも図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1にはこの発明の車両用ドアの窓開口構造が適用されたリアドアを示し、図5にはこのリアドアを装備する自動車Cを示した。この自動車Cは左右の不図示の前後乗降口を前後ドア1,2の開閉により乗員が乗降できる構成を採っている。リアドア2はその前端部(図1で左側端部)が不図示の開口周縁部の前部にヒンジ結合され、後端部が不図示のラッチ及びストライカを用い、リアエンドピラー側に開錠可能にロックされる。
【0016】
このようなリアドア2は、図1、3に示すように、ドアパネル部3と、その上部に一体結合される鉤形サッシュ4と、この鉤形サッシュ4とドアパネル部3の間に配備されるセンターサッシュ5と、後述の前窓開口を開閉するスライドガラス6と、後述の後窓開口を覆う固定パネルである固定ガラス7(ステーショナリーガラス)と、不図示のドアハンドルと、これらの取付に用いる付属部材とで形成される。
【0017】
ドアパネル部3は、図3に示すように、アウタパネル8とインナパネル9を相互に重ねることで、両パネル間にドア内部空間E0を覆うように形成され、両パネル8、9の上端長縁部801,901の間にドアパネル開口Sが形成される。しかも、ベルトラインLb(図1参照)の下側にドア下半部Dが形成され、ドア下半部Dの後端上部より上向き延出部Uが延出形成される。
【0018】
ドアパネル部3のベルトラインLb上側の鉤形サッシュ4及びセンターサッシュ5と上向き延出部Uとにより窓開口が形成される。ここで、鉤形サッシュ4は前縦サッシュ部13およびルーフ対向サッシュ部14を鉤型に一体結合して形成される。図1,3に示すように、前縦サッシュ部13はインナパネル9側の前側の周縁部902に重ね合わされ、互いに溶着される。図6,9に示すように、ルーフ対向サッシュ部14の後端は上向き延出部U内の後述するサッシュブラケット15に溶着されている。
【0019】
ここで、固定ガラス7で覆われる後窓開口はセンターサッシュ5が前部開口周縁部を、鉤形サッシュ4の上部を成すルーフ対向サッシュ部14が上部開口周縁部を形成する。しかも、後窓開口の下部及び後部の開口周縁部が上向き延出部Uにより湾曲開口周縁部rとして連続形成されている。
図3に示すように、インナパネル9は主部903と、その前後及び下部を屈曲させてアウタパネル8側に延出する前後及び下部の周縁部904と、それら前後及び下部の周縁部902より外側に向け屈曲するフランジdfとからなる。フランジdfはアウタパネル8の周縁の挟持部cdに覆われ、互にヘミング加工により一体結合される。
図3、図11に示すように、ドア下半部Dの後端上部より上方に延出する上向き延出部Uはその上端縁Utがルーフサイドレール12側と対向する。
【0020】
図9に示すように、上向き延出部Uはアウタパネル8のアウタ上向き延出部Uoとインナパネル9のインナ上向き延出部Uiを袋状空間E1を介して相互に重ね合わされ、インナ上向き延出部Uiの端部フランジufがこれと対向するアウタ上向き延出部Uoの端部挟持部c1により覆われ、互いがヘミング加工によって結合されている。袋状空間E1の上端側にはサッシュブラケット15が配備される。サッシュブラケット15は基部151と周縁フランジ152からなり、基部151がインナ上向き延出部Uiに複数箇所で溶着される。図6に示すように、サッシュブラケット15の前側フランジ153の上部には後述のルーフ対向サッシュ部14の後端が当接し、互に溶着される。このようにルーフ対向サッシュ部14の後端はインナ上向き延出部Uiとアウタ上向き延出部Uoの間に挟まれ、サッシュブラケット15を介しインナ上向き延出部Uiに一体結合される。
【0021】
なお、図7(a),(b)に示すように、ルーフ対向サッシュ部14のインナ上向き延出部Uiとの対向部はその上端突き出し部が切除され、その切除部gの上にインナ上向き延出部Uiが載置され、インナ上向き延出部Uiとアウタ上向き延出部Uoの重合部Jの高さが切除前のルーフ対向サッシュ部14と連続するように形成されている。
【0022】
上向き延出部Uの湾曲開口周縁部rには変形U字型断面の長寸部材として形成されるガラス受け部材16が装着される。図7(b)、図8に示すように、ガラス受け部材16は、その車外側の外側壁部161がアウタ上向き延出部Uoの周縁部に重なり溶着されることで外重合部w1が形成され、内側壁部162がインナ上向き延出部Uiの周縁部に重なり溶着されることで内重合部w2が形成される。なお、ここで、外重合部w1に対して内重合部w2は低位置側に段差h1を保つように形成され、これにより、内重合部w2の複数箇所の溶接作業を終わらせてから外側壁部161にアウタ上向き延出部Uoの周縁部が重ねられ、外重合部w1が溶接されるという溶接作業を容易に行えるようにしている。
【0023】
ところで、図9に示すように、アウタ上向き延出部Uoが形成するドア壁面は、アウタ上向き延出部Uoにおける前側中央p1(図1参照)に対してその上方や後方における膨出量が徐々に小さくなる三次元湾曲面として形成され、車体側のルーフサイドレール12やリアピラー10の外側面と連続するように形成されている。
【0024】
図10に示すように、ルーフ対向サッシュ部14の前後方向Xでの中間部には屈曲部141が形成され、その屈曲部141の下縁にはセンターサッシュ5の上端が当接し、図11(a)に示すように両者が屈曲ブラケット17を介して結合されている。なお、センターサッシュ5の下端はドア下半部D1側のインナパネル9内壁に不図示のサッシュブラケットを介して一体結合される。
【0025】
センターサッシュ5は断面H型を成し、前縦サッシュ部13と平行に配備され、前縦サッシュ部の開口溝m1とセンターサッシュ558の前開口溝m2との間にスライドガラス6が不図示のランチャンネルを介してそれぞれ摺動可能に取り付けられる。なお、スライドガラス6はその下縁に不図示のガラス支持部材を一体的に取り付け、そのガラス支持部材がインナパネル9に取り付けられた不図示のウインドウレギュレータにより昇降操作力を受けることで、上下摺動できる。
【0026】
図4に示すように、センターサッシュ5の前側の前窓開口の下縁部はアウタパネル8とインナパネル9の上端長縁部801,901により形成され、それぞれには断面逆U字型で直状のベルトラインアウタモールディング18とベルトラインインナモールディング19とが不図示の係止爪の働きで離脱不可に嵌着される。
【0027】
ベルトラインアウタモールディング18及びベルトラインインナモールディング19はそれぞれのスライドガラス6との対向部に水切りチャンネル21が装備され、これによりスライドガラス6との間への外部からの水や埃の浸入を規制している。ベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181はその下縁がアウタパネル8のベルトラインLb位置の段部kに当接し、これによってアウタパネル8の上端長縁部801の外観を良好に保持している。ベルトラインインナモールディング19の断面逆U字型の基部191の上端からは車内側に向け屈曲部192が形成され、屈曲部192と基部191の上端との間にドアトリム22の上端屈曲部221の先端が所定量嵌合され、これによってインナパネル9とドアトリムの上端屈曲部221の連結構造の外観を良好に保持している。
【0028】
センターサッシュ558の後開口溝m3と、ルーフ対向サッシュ部14の上開口溝m5と、上向き延出部Uに取り付けられた湾曲開口周縁部rのガラス受け部材16の湾曲開口溝m4とに対して、固定ガラス7の前縁、上縁、下部及び後部の湾曲開口周縁部rとの対向部がウエザーストリップ23(図2、8参照)を介しシール性を保持して嵌着される。
図2に示すように、ウエザーストリップ23は環状を成し、センターサッシュ5の後開口溝m3とルーフ対向サッシュ部14の上開口溝m5に嵌着される部位の断面形状は、図7(a),(b)に示すように固定ガラス7の端縁を挟持する挟持部231及び挟持部先端より延びる内外リップ部232,233とで形成されている。
【0029】
一方、図8に示すように、ウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rとの対向部の断面形状は固定ガラス7の端縁を挟持する挟持部231及び挟持部231の底部より車内方向に延び内重合部w2に当接する下フランジ部234と、湾曲開口周縁部rに位置する挟持部231の底部より突き出る取付基部235と、挟持部231の車内突端縁より延出する車内側リップ236と、挟持部231の車外突端縁より延出する車外側リップ237と、湾曲開口周縁部rの上端の上端延出部238と、湾曲開口周縁部rの上方の挟持部231より外方にひれ状に突き出る水浸入防止用リップ239とで形成される。
【0030】
挟持部231は湾曲開口周縁部rとの対向部のほぼ全域において、固定ガラス7の端縁を挟持する形状を成すように形成されるが、上端延出部238のみが挟持部231を排除されている。ここで上端延出部238は、図9、図11(b)に示すように、車外側リップ237を扁平させ、その肉厚を増加させた形状を成し、この厚手の上端延出部238はルーフ対向サッシュ部14の後端及びアウタ上向き延出部Uoの上端縁に重なり、接合され、ルーフサイドレール12に対向するように形成される。
【0031】
図9に示すように、上端延出部238の前端はルーフ対向サッシュ部14の後端にエッジ状先端e1を当接させ、アウタ上向き延出部Uoの上端縁の段部d2に向かうに従いその肉厚を増加させ、その上で、後端が段部d2に当接する状態において、上端延出部238の表面とアウタ上向き延出部Uoの上端縁の表面とがほぼ連続面を形成するように形成されている。このアウタ上向き延出部Uoの上端縁の表面はリアピラー10側の外面とも連続することより、ここでのルーフ対向サッシュ部14とアウタ上向き延出部Uoの上端縁の段部d2での気流の乱れを、上端延出部238がスムーズな流れfに修正でき、ここでの風切音の発生を防止することができる。
【0032】
挟持部231の底部より突き出る取付基部235は肉厚ブロック形状を成し、剛性が比較的大きな形状を有し、図8に示すように、湾曲開口溝m4に嵌合されることで、挟持部の内外方向のずれを抑制する。しかも、下フランジ部234が内重合部w2に当接することも加わり、挟持部231が支持する固定ガラス7を適正位置に位置規制することができるように形成される。
【0033】
ウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rとの対向部の全域において、挟持部の車外端縁より車外側リップ237が連続して延出形成される。図8に示すように、車外側リップ237はアウタパネル8の湾曲開口周縁部rでの上端長縁部801を覆うとともに屈曲してアウタパネル8の段部d1に先端が当接するように延出するという断面形状を成している。
【0034】
この車外側リップ237のセンターサッシュ5との対向部側はそのセンターサッシュ5を挟んでその前方に位置するベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181と同一の外面形状を成すように形成される。このように、ベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181とその後方のウエザーストリップ23の車外側リップ237の前端側部位の外形がほぼ同一形状を成し、連続形成されるので、ベルトラインアウタモールディング18とウエザーストリップ23の車外側リップ237とがベルトラインLb近傍において前後に連続するライン形状を違和感なく保持でき、外観を良好に維持できる。
【0035】
一方、ウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rとの対向部で挟持部231先端より車内側に延びる車内側リップ部236はセンターサッシュ5を挟んでその前方に位置するベルトラインインナモールディング19の屈曲部192と同一の外面形状を成すように形成される。しかも、ドアトリム22の上端屈曲部221にベルトラインインナモールディング19の屈曲部192とその後方に位置するのウエザーストリップ23の車内側リップ部236とが連続して載置され、外形がほぼ同一形状を成すので、屈曲部192とその後方の車内側リップ部236とが違和感なく連続面を成すこととができ、外観を良好に維持できる。
【0036】
このように図1のリアドア2は、上向き延出部Uが後窓開口の下部及び後部を湾曲開口周縁部rとして連続形成するというドア構造を採るので、本来、ベルトラインアウタモールディング18やベルトラインインナモールディング19のセンターサッシュ5より後方側に配備されるドア後部側モール部材が複雑に湾曲する形状となり、これらドア後部側モール部材の成型及び取付作業に手間取ることとなる。しかし、図1のリアドア2が用いるウエザーストリップ23はその挟持部231の車内端縁より車内側リップ部236を延出形成し、その前方に位置するベルトラインインナモールディング19の屈曲部192と同一の外面形状を成すよう形成される。このため、別部材を設けることなくウエザーストリップ23に屈曲部192に相当する部位を連続形成できる。
【0037】
同様に、挟持部の車外端縁より車外側リップ237を延出形成し、その前方に位置するベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181と同一の外面形状を成すように形成される。このため、別部材を設けることなくウエザーストリップ23に外側覆い部181に相当する部位を連続形成できる。
このようにウエザーストリップ23の湾曲開口周縁部rに車内側リップ部236と車外側リップ237とが屈曲部192に相当する部位及び外側覆い部181に相当する部位を一体形成することになる。このため、本来3部材を別途にそれぞれ用意する必要があり、しかも、3部材相互の位置合わせを必要とするところであったものを、1部材化して、コスト低減を図れる。特に、相互の位置合わせを不要とするので、ウエザーストリップ23の前方側にあるベルトラインアウタモールディング18の外側覆い部181との前後における相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保持できる取付作業を容易に行うことができる。同じく、ウエザーストリップ23前側にある車内のベルトラインインナモールディング19の屈曲部192との前後における相対的な位置ずれを生じることなく連続感を保持できる取付作業を容易に行うことができる。こように取付作業性のアップを図れ、これによるコスト低減を図れ、しかも、位置ずれが抑制され、品質確保を図れる。
【0038】
上述のところにおいて、固定パネルとしての固定ガラスを説明したが、樹脂パネルを用いても良く、この場合も図1の車両用ドアの窓開口構造と同様の作用効果が得られる。上述の自動車は4ドア車として説明したが、2ドアの自動車に本発明を適用することもでき、この場合も図1の車両用ドアの窓開口構造と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態としての車両用ドアの窓開口構造が適用されたリアドアの正面図である。
【図2】図1のリアドアに装着されるウエザーストリップの拡大平面図である。
【図3】図1のリアドアの概略縦断面図である。
【図4】図3のリアドアの要部拡大切欠断面図である。
【図5】図1のリアドアを装備する自動車の概略平面図である。
【図6】図5のリアドアの上向き延出部とルーフ対向サッシュ部との結合構造説明図である。
【図7】図6の要部断面を示し、(a)が図6のA−A線断面図、(b)が図6のB−B線断面図を示す。
【図8】図1のリアドアに形成される上向き延出部の要部拡大断面図である。
【図9】図6のC−C線断面図である。
【図10】図1のリアドアの斜め上方からの切欠斜視図である。
【図11】図10の要部断面を示し、(a)が図10のD−D線断面図、(b)が図10のE−E線断面図、(c)が図10のF−F線断面図を示す。
【図12】従来のリアドアの内部正面図である。
【図13】図12の従来のリアドアの断面を示し、(a)が図12のX−X線断面図、(b)が図12のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 リアドア
3 ドアパネル部
4 サッシュ部
5 センターサッシュ
6 スライドガラス
7 固定ガラス(固定パネル材)
8 アウタパネル
9 インナパネル
14 ルーフ対向サッシュ部
18 ベルトラインアウタモールディング
19 ベルトラインインナモールディング
23 ウエザーストリップ
231 挟持部
237 車外側リップ
238 車内側リップ
d1 湾曲開口周縁部におけるアウタパネルの段部
d2 アウタ上向き延出部の上端の段部
r 湾曲開口周縁部
C 自動車
D ドア下半部
U 上向き延出部
Uo アウタ上向き延出部
Ui インナ上向き延出部
Ut 上端縁
Lb ベルトライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのパネル部の後側上端より上方に延びる上向き延出部が形成され、且つ、上記ドア主要部のベルトライン上側のサッシュ部材と上記上向き延出部とにより窓開口が形成され、上記窓開口のうちセンターサッシュで区画される後窓開口が固定パネル材で覆われ、その後窓開口の下部及び後部の開口周縁部が上記上向き延出部により湾曲開口周縁部として連続形成された車両用ドアの窓開口構造において、
上記固定パネル材の周縁部を挟持部が挟持すると共に上記湾曲開口周縁部に対してシール性を保つ状態で嵌着されるウエザーストリップを有し、
上記ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側トリムの端部を覆う車内側リップが延出形成され、車外端縁よりアウタパネルの湾曲開口周縁部の外壁面に先端が当接する車外側リップが延出形成されたことを特徴とする車両用ドアの窓開口構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、
上記ウエザーストリップの車外側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインアウタモールディングの後端外面と連続面となるよう形成されていることを特徴とする車両用ドアの窓開口構造。
【請求項3】
請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、
上記ウエザーストリップの車内側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインインナモールディングの後端外面と同一面となるよう形成されていることを特徴とする車両用ドアの窓開口構造。
【請求項1】
車両用ドアのパネル部の後側上端より上方に延びる上向き延出部が形成され、且つ、上記ドア主要部のベルトライン上側のサッシュ部材と上記上向き延出部とにより窓開口が形成され、上記窓開口のうちセンターサッシュで区画される後窓開口が固定パネル材で覆われ、その後窓開口の下部及び後部の開口周縁部が上記上向き延出部により湾曲開口周縁部として連続形成された車両用ドアの窓開口構造において、
上記固定パネル材の周縁部を挟持部が挟持すると共に上記湾曲開口周縁部に対してシール性を保つ状態で嵌着されるウエザーストリップを有し、
上記ウエザーストリップの挟持部の車内端縁より車内側トリムの端部を覆う車内側リップが延出形成され、車外端縁よりアウタパネルの湾曲開口周縁部の外壁面に先端が当接する車外側リップが延出形成されたことを特徴とする車両用ドアの窓開口構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、
上記ウエザーストリップの車外側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインアウタモールディングの後端外面と連続面となるよう形成されていることを特徴とする車両用ドアの窓開口構造。
【請求項3】
請求項1記載の車両用ドアの窓開口構造において、
上記ウエザーストリップの車内側リップの上記センターサッシュ対向部における外面形状が上記センターサッシュの前側のベルトラインインナモールディングの後端外面と同一面となるよう形成されていることを特徴とする車両用ドアの窓開口構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−45242(P2007−45242A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229795(P2005−229795)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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