説明

車両用ドアクローザ装置

【課題】回動部材がスムーズに回動するドアクローザ装置を提供すること。
【解決手段】ボデーに設けられるストライカ4と、ストライカ4を受け入れる溝部212を備え、ドアに設けられるベース21と、ベース21に回動自在に支持され、ストライカ4と係合可能なラッチ22と、ラッチ22に駆動力を与えるモータ31と、ラッチ22とモータ31との間に設けられ、駆動力をラッチ22に伝達するドリブンギヤ42と、ラッチ22を覆うべくベース21に連結し、ドリブンギヤ42の段付ピン50の一端を支持するサポート部材45と、を備え、ストライカ4と係合したラッチ22を駆動力により回動させることで、ドア2をボデー3に対して閉状態にするドアクローザ装置10において、ドリブンギヤ42の段付ピン50の他端を支持するフロントブラケット41を備え、ドリブンギヤ42がサポート部材45とフロントブラケット41との間に挟まれる構成としたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストライカと係合したラッチを駆動力により回動させることで、ドアを車体に対して閉状態にする車両用ドアクローザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のドアクローザ装置が、後述の特許文献1に記載されている。この装置は、車体に設けられるストライカと、ストライカを受け入れる溝部を備え、ドアに設けられるケースと、ケースに回動自在に支持され、ストライカと係合可能なラッチと、駆動力を発生するモータと、モータにて発生した駆動力を受けて回動し、駆動力をラッチに伝達するセクタギヤと、ケースに固定され、セクタギヤの回動軸の一端を支持するブラケットとを備えている。
【特許文献1】特開2002−81249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の装置においては、セクタギヤ(回動部材)の回動軸のうち一端のみがブラケットに支持されている。この構造においては、回動軸の軸方向に関してセクタギヤの位置を規制する部材がブラケットのみなので、回動軸の軸方向に関して、セクタギヤの位置が完全には規制されない。したがって、ラッチからの反力等が原因で、回動軸の軸方向に関してセクタギヤに大きな荷重が作用した場合に、セクタギヤの回動軸がブラケットに対して傾き、セクタギヤのスムーズな回動が妨げられるおそれがあった。
【0004】
よって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、回動部材がスムーズに回動するドアクローザ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明にて講じた技術的手段は、請求項1に記載の様に、車体若しくはドアの何れか一方に設けられるストライカと、該ストライカを受け入れる溝部を備え、前記車体若しくは前記ドアの何れか他方に設けられるベース部材と、該ベース部材に回動自在に支持され、前記ストライカと係合可能なラッチと、該ラッチに駆動力を与えるモータと、前記ラッチと前記モータとの間に設けられ、前記駆動力を前記ラッチに伝達する回動部材と、前記ラッチを覆うべく前記ベース部材に連結し、前記回動部材の回動軸の一端を支持する第1支持部材と、を備え、前記ストライカと係合した前記ラッチを前記駆動力により回動させることで、前記ドアを前記車体に対して閉状態にする車両用ドアクローザ装置において、前記回動部材の回動軸の他端を支持する第2支持部材を備え、前記回動部材が前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に挟まれる構成としたことである。
【0006】
好ましくは、請求項2に記載の様に、前記第2支持部材は、前記第1支持部材に連結されると良い。
【0007】
好ましくは、請求項3に記載の様に、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の少なくとも何れかに設けられ、前記回動軸の軸方向に関して前記回動部材に当接する突出部を備えると良い。
【0008】
好ましくは、請求項4に記載の様に、前記突出部は、前記回動部材の回動方向に沿って延在すると良い。
【0009】
好ましくは、請求項5に記載の様に、前記第1支持部材に形成され、前記回動部材の回動軌跡上に位置する切欠き部を備えると良い。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、回動部材の回動軸の両端が第1支持部材と第2支持部材によってそれぞれ支持され、回動部材がこれらの部材間にて回動する。この構造においては、回動軸の支持強度が高まると共に、回動軸の軸方向に関して、回動部材の位置が第1支持部材と第2支持部材との間に規制される。これにより、回動部材の回動軌跡が乱れず、回動部材がスムーズに回動する。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、第1支持部材の第2支持部材に対する移動が規制されるので、第1支持部材と第2支持部材に支持される回動軸の位置が定まる。これにより、回動軸の支持強度がさらに高まり、回動部材がよりスムーズに回動する。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、回動軸の軸方向に関して、回動部材の位置が突出部によって規制される。これにより、回動部材の回動がガイドされ、回動部材がよりスムーズに回動する。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、回動部材のより多くの部分に突出部が当接するので、回動部材の回動がより確実にガイドされ、回動部材がさらにスムーズに回動する。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、回動部材の回動軌跡が第1支持部材と部分的に重なり合う。これにより、回動部材をラッチに対してより近くに配置でき、ドアクローザ装置においては、部材のレイアウトに係る自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を基に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るドアクローザ装置10を配設した車両1の後部を示す斜視図、図2は、ドアクローザ装置10及びその周辺構造を概略的に示す図(図1におけるA−A線に沿う断面図)である。
【0017】
車両1の後部には、ドア2が配設されている。ドア2は、公知な構成のバックドアである。ドア2は、車両1のボデー3に形成された開口部3aを開閉する。ドア2の下部には、ドアクローザ装置10が配設されている。
【0018】
ドアクローザ装置10は、ロック機構20と、駆動ユニット30と、クローズ&リリース機構40とを備えている。クローズ&リリース機構40は、ロック機構20と駆動ユニット30との間に設けられている。クローズ&リリース機構40は、駆動ユニット30にて発生した駆動力を受けてクローズ動作又はリリース動作を行う。クローズ&リリース機構40は、ロック機構20と連係され、クローズ動作又はリリース動作を行うことでロック機構20を作動させる。クローズ&リリース機構40におけるクローズ動作、リリース動作については後述する。
【0019】
ドアクローザ装置10は、ドア2の内部空間に設けられ、スクリュ等(図示なし)の固定手段を用いてドア2に固定されている。ドアクローザ装置10のうち、ロック機構20は、ドア2のインサイドパネル2bに形成された開口(図示なし)を介して、ドア2の外部に面している。ロック機構20は、ボデー3の開口部3aの縁に固定されたストライカ4と係脱する。図2においては、ロック機構20がストライカ4と係合し、ドア2がボデー3に対して閉じられている(ドアの閉状態)。
【0020】
図3は、ドアクローザ装置10の正面図(図2におけるB方向矢視図)、図4は、ドアクローザ装置10における主要部品の分解斜視図である。
【0021】
ロック機構20は、ベース21と、ラッチ22と、ラッチレバー24と、ポール25と、サブベース26と、リフトレバー27とを備えている。
【0022】
ベース21は、金属材から形成され、大まかには箱型を成している。ベース21には、収容部211と、溝部212とが設けられている。収容部211は、上下方向に関して凹状に形成されている。溝部212は、ストライカ4が収容部211に受け入れられる(挿入される)ように、前後方向に延在している。
【0023】
ラッチ22は、心材を形成する金属材と、心材を被覆する樹脂材から形成されている。ラッチ22は、ベース21の収容部211に収容される。ラッチ22は、支持軸23に回動自在に支持される。支持軸23は、ラッチ22に挿通され、その一端にてベース21に支持(連結)されている。支持軸23の一端は、かしめによりベース21に係止される。つまり、ラッチ22は、支持軸23を介して、ベース21により回動自在に支持されている。ラッチ22は、図示しないスプリングにより、支持軸23を中心に一方向(図4示C方向)に回動するように付勢されている。ラッチ22には、切欠き部221が設けられている。切欠き部221は、2つの爪221a、221bを備え、大まかにはU字形状を成している。ラッチ22は、切欠部221にてストライカ4(図2参照)に係合する。
【0024】
ラッチレバー24は、金属材から形成されている。ラッチレバー24の一端は、ラッチ22に固定されている。ラッチレバー24の他端は、ピン241を保持している。ピン241は、円柱状を成している。ラッチレバー24において一端と他端との間には、貫通穴242が設けられている。貫通穴242には、支持軸23が挿通される。ラッチレバー24は、支持軸23により回動自在に支持されている。つまり、ラッチレバー24は、支持軸23を中心に、ラッチ22と共に回動する。ラッチレバー24は、センサ(図示なし)に連結されている。このセンサにより、ラッチ22の回動角度(ある基準点に対する位置)が検出される。
【0025】
ポール25は、心材を形成する金属材と、心材を被覆する樹脂材から形成されている。ポール25には、シャフト部251と、係合部252とが設けられる。シャフト部251の一端は、ベース21に挿通されている。シャフト部251は、ベース21により回動自在に支持されている。係合部252は、シャフト部251と一体に設けられ、シャフト部251と共にベース21に対して回動する。ポール25の係合部252は、ラッチ22の切欠き部221の爪221a,221bにそれぞれ係合する。つまり、ポール25は、係合部252にて、ラッチ22と段階的に係合自在である。ポール25は、図示しないスプリングにより、シャフト部251を中心に一方向(図4示D方向)に回転するように付勢される。
【0026】
サブベース26は、金属材から形成されている。サブベース26は、連結ピン(図示なし)を介してベース21と連結する。サブベース26には、カバー部261と、支持部262とが設けられる。カバー部261は、板状を成し、ベース21に設けられた収容部211を覆っている。カバー部261は、支持軸23の他端と、ポール25のシャフト部251の他端とを支持する。支持軸23の他端は、かしめにより、カバー部261に係止される。つまり、支持軸23は、ベース21とサブベース26とを連結する。連結されたベース21及びサブベース26は、固定部213、263にて、スクリュ等の締結部材(図示なし)を用いてドア2(図2参照)に固定される。ポール25のシャフト部251の他端は、カバー部261に挿通され、カバー部261により回動自在に支持されている。カバー部261には、切欠き部261aが設けられている。連結されたベース21とサブベース26において、切欠き部261aは、ベース21に設けられた収容部211を上方に開口する。支持部262は、カバー部261と一体に形成されている。支持部262は、カバー部261に対して上方に折り曲げられ、板状を成している。支持部262には、2つの連結孔262a、262bが設けられている。支持部262は、後述するクローズ&リリース機構40の一部を形成する。
【0027】
リフトレバー27は、金属材から形成されている。リフトレバー27には、軸孔271と、曲面部272とが設けられている。軸孔271には、ポール25のシャフト部251の他端が挿通される。挿通されたシャフト部251の他端は、かしめにより、リフトレバー27に係止される。これにより、リフトレバー27は、ベース21及びサブベース26に対し、ポール25と共に回動する。曲面部272は、曲げ加工等によって形成される。曲面部272は、後述するクローズ&リリース機構40に連係する。
【0028】
駆動ユニット30は、モータ31と、減速機構32とを備えている。モータ31は、車両1(図1参照)に搭載される制御ユニット(図示なし)に電気的に接続される。モータ31は、制御ユニットによって給電され、駆動力を発生する。減速機構32は、モータ31にて発生した駆動力を所定の減速比のもとで増大する。減速機構32として、例えば、ウォームとウォームホイールとを備えた公知の機構を適用可能である。駆動ユニット30は、モータ31にて発生した駆動力を減速機構32にて増大し、この増大された駆動力を、最終的にピニオンギヤ33の回転として出力する。
【0029】
クローズ&リリース機構40は、フロントブラケット41と、ドリブンギヤ42と、リリースレバー43と、リヤブラケット44とを備えている。
【0030】
フロントブラケット41は、金属材から形成されている。フロントブラケット41には、ギヤ支持孔411と、ガイド部412とが設けられている。ギヤ支持孔411は、フロントブラケット41を前後方向に貫通している。ギヤ支持孔411は、金属材から形成された段付ピン50を保持する。段付ピン50には、いずれも円形の前端部51と、大径部52と、小径部53と、後端部54とが同軸に設けられている。段付ピン50においては、前端部51、大径部52、小径部53、後端部54が、前後方向に関して(前方から)この順に連続して設けられている。大径部52の径(外径)は、小径部53の径よりも大きく、小径部53の径は、後端部54の径よりも大きい。前端部51の径は、後端部54の径よりも小さい。フロントブラケット41のギヤ支持孔411には、段付ピン50の前端部51が挿通され、挿通された段付ピン50の前端部51は、かしめによりフロントブラケット41に係止される。これにより、段付ピン50がフロントブラケット41に支持される。ガイド部412は、フロントブラケット41における板状の基部413に形成されている。ガイド部412は、ギヤ支持孔411を中心に円周方向に延在している。ガイド部412は、プレス加工等の手段を用いて、基部413から後方に突出するように設けられている。さらに、フロントブラケット41には、連結孔414、415が設けられている。これらの連結孔414、415には、スクリュ61、連結ピン71がそれぞれ挿通される。
【0031】
ドリブンギヤ42は、金属材から形成されている。以下、ドリブンギヤ42の構造について、図5を参照して説明する。図5(a)は、ドリブンギヤ42の正面図、図5(b)は、ドリブンギヤ42の上面図(図5(a)におけるE方向矢視図)である。
【0032】
ドリブンギヤ42には、基部421と、レバー部422とが一体に設けられている。基部421は、大まかにはおうぎ形状を有する。基部421は、軸孔421aと、ギヤ部421bとを備えている。軸孔421aは、基部421を前後方向(図5にて紙面に直交する方向)に貫通している。軸孔421aには、段付ピン50(図4参照)の後端部54が挿通されると共に、段付ピン50の小径部53が嵌合される。ドリブンギヤ42は、軸孔421aを中心に、段付ピン50の小径部53に回動自在に支持されている。つまり、段付ピン50は、ドリブンギヤ42の回動軸として機能する。ギヤ部421bは、基部421における弧の部分に、軸孔421aを中心に円周方向に形成されている。ギヤ部421bは、上述した駆動ユニット30のピニオンギヤ33に噛み合う。ギヤ部421bを備えた基部421は、いわゆるセクタギヤを形成している。
【0033】
レバー部422は、プレス加工等の手段により、基部421と一体に形成されている。レバー部422は、係合部423を備えている。係合部423は、レバー部の先端が折り曲げられて成る。係合部423には、クローズ部423aと、リリース部423bと、中間部423cとが設けられている。クローズ部423aは、係合部423の一端に形成され、ロック機構20におけるラッチレバー24のピン241に係合する。リリース部423bは、係合部423の他端に形成され、リリースレバー43に係合する。中間部423cは、係合部423の一端と他端との間に形成されている。中間部423cは、クローズ部423a及びリリース部423bに連続して形成されている。
【0034】
リリースレバー43は、金属材から形成されている。リリースレバー43には、軸孔431が設けられている。軸孔431には、支持ピン72が挿通される。軸孔431に挿通された支持ピン72は、フロントブラケット41に形成されたレバー支持孔416に挿通され、フロントブラケット41にかしめにより係止される。リリースレバー43は、支持ピン72を介して、フロントブラケット41に回動自在に支持されている。リリースレバー43は、スプリング432(図3参照)により、軸孔431を中心に一方向(図4示F方向)に回動するように付勢されている。リリースレバー43の一端は、ドリブンギヤ42におけるレバー部422のリリース部423bと係合する。リリースレバー43の他端は、ロック機構20におけるリフトレバー27の曲面部272と係合する。
【0035】
リヤブラケット44は、金属材から形成されている。リヤブラケット44には、ギヤ支持孔441と、連結孔442と、ガイド部443とが設けられている。ギヤ支持孔441は、リヤブラケット44を前後方向に貫通している。ギヤ支持孔441は、段付ピン50の後端部54を保持する。段付ピン50の後端部54は、ドリブンギヤ42の軸孔431aに挿通され、続いて、リヤブラケット44のギヤ支持孔441に挿通される。ギヤ支持孔441に挿通された段付ピン50の後端部54は、サブベース26の支持部262に設けられた連結孔262aに挿通され、かしめによってサブベース26(支持部262)に係止される。つまり、サブベース26とリヤブラケット44から形成されるサポート部材45が、段付ピン50の後端部54を支持する。これにより、ドリブンギヤ42は、サポート部材45により、段付ピン50を介して回動自在に支持される。なお、ドリブンギヤ42の回動軌跡上には、サブベース26のカバー部261に形成された切欠き部261aが位置している。つまり、ドリブンギヤ42が回動する場合、ドリブンギヤ42は、ベース21の収容部211の少なくとも一部を通過する。この構造によれば、ベース21の収容部211に収容されたラッチ22に対してドリブンギヤ42を上下方向に関してより近くに配置でき、ドアクローザ装置10のサイズを上下方向に関して小さくできる。連結孔442は、ギヤ支持孔441と同じく、リヤブラケット44を前後方向に貫通している。連結孔442には、フロントブラケット41の連結孔415に挿通された連結ピン71が挿通される。リヤブラケット44の連結孔442に挿通された連結ピン71は、サブベース26の支持部262の連結孔26bに挿通され、かしめによってサブベース26(支持部262)に係止される。
【0036】
ガイド部443は、リヤブラケット44における板状の基部444に形成されている。ガイド部443は、ギヤ支持孔441を中心に円周方向に延在している。ガイド部443は、プレス加工等の手段により、基部444から前方に突出するように設けられている。
【0037】
リヤブラケット44には、さらに、連結孔445〜447が設けられている。連結孔445には、フロントブラケット41の連結孔414に挿通されたスクリュ61が挿通される。残りの連結孔446、447には、スクリュ62、63がそれぞれ挿通される。リヤブラケット44の連結孔445〜447に挿通されたスクリュ61〜63は、駆動ユニット30に形成されたネジ孔34〜36にそれぞれねじこまれる。これにより、駆動ユニット30がリヤブラケット44に保持され、駆動ユニット30のピニオンギヤ33がドリブンギヤ43のギヤ部431bと噛み合う。
【0038】
図6は、図3におけるG−G線に沿う断面図である。サブベース26とリヤブラケット44から形成されるサポート部材45は、段付ピン50の後端部54を支持している。フロントブラケット41は、段付ピン50の前端部51を支持している。ドリブンギヤ42は、段付ピン50の小径部53により回動自在に支持されている。つまり、ドリブンギヤ42の回動軸として機能する段付ピン50が両端にて支持されると共に、ドリブンギヤ42がサポート部材45とフロントブラケット41との間にて回動する。この構造においては、段付ピン50の支持強度が高まると共に、ドリブンギヤ42の位置が段付ピン50の軸方向(図6示上下方向)に関して規制される。なお、サポート部材45とフロントブラケット41とが連結ピン71を介して連結されるので、サポート部材45とフロントブラケット41に支持される段付ピン50の位置が定まり、段付ピン50の支持強度がさらに高まっている。以上の構造により、段付ピン50の軸方向に関してドリブンギヤ42に大きな荷重が作用した場合であっても、ドリブンギヤ42の回動軸(段付ピン50)が傾くことがなく、ドリブンギヤ42がスムーズに回動する。なお、本実施形態においては、段付ピン50の大径部52がフロントブラケット41とドリブンギヤ42との間に挟みこまれているので、ドリブンギヤ42の回動軸の支持強度がさらに高まっている。さらに、ドリブンギヤ42の回動は、サポート部材45のリヤブラケット44に形成されたガイド部443と、フロントブラケット41に形成されたガイド部412によってガイドされる。ガイド部412、443は、段付ピン50の軸方向に関してドリブンギヤ42に当接可能である。つまり、ガイド部412、443は、ドリブンギヤ42に当接することで、ドリブンギヤ42の位置を段付ピン50の軸方向に関して規制する。ガイド部412、443の先端(ドリブンギヤ42に当接する部分)は、曲面となるように形成されている。このガイド部412、443によって、ドリブンギヤ42がよりスムーズに回動する。
【0039】
以下、クローズ&リリース機構40におけるクローズ動作とリリース動作について、図7乃至図10を参照して説明する。図7(a)〜(c)は、クローズ動作の態様を模式的に示す図、図8(a)〜(c)は、ボデー3に対するドア2の状態を模式的に示す図である。クローズ動作は、ボデー3に対して開けられたドア2(ドアの開状態、図8(a)示)を閉める場合に行われる。ドア2が開状態にある場合、クローズ&リリース機構40ならびにロック機構20における各部材は、図7(a)に示す初期位置に位置している。
【0040】
開状態にあるドア2を閉方向に動かすと、ドア2に固定されたロック機構20がボデー3に固定されたストライカ4に近づいていき、ロック機構20におけるラッチ22の切欠部221がストライカ4に係合する。そして、ドア2をさらに動かすと、図7(b)に示す様に、ポール25の係合部252がラッチ22の切欠部221における一方の爪221aと係合する(ハーフラッチ位置)。駆動ユニット30は、ラッチ22がハーフラッチ位置に達する少し前に作動を始める。駆動ユニット30のピニオンギヤ33がH方向に回転すると、ピニオンギヤ33に噛み合うドリブンギヤ42がJ方向に回動し、ドリブンギヤ42のレバー部422(クローズ部423a)が、図7(b)に示す様に、ラッチレバー24のピン241と矢示K方向に当接する。この段階では、図8(b)に示す様に、ドア2がボデー3に対して完全には閉じられていない。
【0041】
ドリブンギヤ42は、ピニオンギヤ33から駆動力を受けてさらに回動し、クローズ部423aを介してラッチレバー24のピン241を矢示K方向(一方向)に押動する。この間、ドリブンギヤ42のクローズ部423aは、ラッチレバー24のピン241と摺接する。ラッチレバー24のピン241は円柱状を成すので、ドリブンギヤ42のクローズ部423a(レバー部422)とラッチレバー24のピン241とが線で接触する(線接触)。これにより、ドリブンギヤ42のレバー部422とラッチレバー24のピン241との間にて作用する摩擦は、面で接触する場合に比べて軽減される。
【0042】
ドリブンギヤ42のレバー部422がラッチレバー24のピン241を押動すると、ラッチレバー24が矢示L方向(閉方向)に回動し、ストライカ4と係合したラッチ22も同方向(閉方向)に回動する。そして、図7(c)に示す様に、ポール25の係合部252がラッチ22の切欠部221における他方の爪221bと係合する(フルラッチ位置)。この段階で、図8(c)に示す様に、ドア2がボデー3に対して完全に閉められる(ドアの閉状態)。
【0043】
クローズ動作においては、駆動ユニット30が作動を始める時期とラッチ22がハーフラッチ位置に達する時期との間にズレがある。仮に、このズレの間に、ドア2を開状態とすべくそれまでとは反対の開方向に動かす(イレギュラー操作)と、ラッチ22及びラッチレバー24は、図9にて2点鎖線で示す位置へと動かされる。一方で、ドリブンギヤ42は、ラッチレバー24と係合することなく図9に示すフルラッチ位置に達する。イレギュラー操作が行われた後、ドア2を閉方向に再び動かすと、ラッチ22の切欠き部221とストライカ4が係合し、ラッチ22とラッチレバー24は、図9にて実線で示す位置へと動かされる。この場合、ラッチレバー24は、ドリブンギヤ42のレバー部422に設けられた中間部423cに当接するので、ラッチレバー24のさらなる回動が規制され、ラッチ22とラッチレバー24は、図7(b)に示すハーフラッチ位置には到達しない。このため、ドリブンギヤ42のレバー部422のクローズ部423aは、構造上、ラッチレバー24(ピン241)を矢示M方向(他方向)に押動できない。つまり、ドリブンギヤ42のクローズ部423aは、矢示N方向(図7(b)での矢示K方向に相当)にのみ、ラッチレバー24を押動する。これにより、ハーフラッチ位置に到達することによって動きの規制されたラッチレバー24をドリブンギヤ42のレバー部422が矢示M方向に押動することがなく、ドアクローザ装置10における確実な作動が確保される。
【0044】
図10(a)〜(c)は、リリース動作の態様を模式的に示す図である。リリース動作は、ボデー3に対して開められたドア2(ドアの閉状態、図8(c)示)を開ける場合に行われる。ドア2が閉状態にある場合、クローズ&リリース機構40ならびにロック機構20における各部材は、図10(a)に示す初期位置に位置している。
【0045】
ドア2の操作ハンドル2aに設けられるスイッチ(図示なし)の操作等によって駆動ユニット30が作動を始めると、駆動ユニット30のピニオンギヤ33が矢示P方向に回転し、ドリブンギヤ42が矢示Q方向に回動する。ドリブンギヤ42が回動すると、ドリブンギヤ42のレバー部422(リリース部423b)に係合したリリースレバー43が回動し、図10(b)に示す様に、リリースレバー43がリフトレバー27の曲面部272に係合(当接)する。
【0046】
ドリブンギヤ42は、ピニオンギヤ33から駆動力を受けてさらに回動し、レバー部422のリリース部423bを介してリフトレバー27を押動する。これにともない、リフトレバー27に係止されたポール25がR方向に回動し、図10(c)に示す様に、ポール25の係合部252がラッチ22から離脱する。この段階で、図8(a)に示す様に、ドア2がボデー3に対して開けられる(ドアの開状態)。
【0047】
なお、以上の説明においては、ドアクローザ装置10がドア2に設けられ、ストライカ4がボデー3に設けられる例を示したが、ドアクローザ装置10がボデー3に設けられ、ストライカ4がドア2に設けられる構造でも良い。
【0048】
また、ドリブンギヤ42において、ギヤ部421bを備えた基部421とレバー部422とが一体に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、ギヤ部421bを備えた基部421とレバー部422とを別々に形成し、この別々に形成した部材を溶接等の手段によって互いに固定した構造でも良い。
【0049】
また、ドリブンギヤ42のレバー部422(クローズ部423a)と摺接するラッチレバー24のピン241が円柱状に形成される例を示したが、レバー部422(クローズ部423a)を曲面となるように形成しても良い。
【0050】
また、ラッチ22とラッチレバー24とが別々に設けられる例を示したが、これらを一体に設けても良い。
【0051】
また、ドリブンギヤ42の回動軸の一端を支持するサポート部材45がサブベース26とリヤブラケット44という2つの部材によって形成される例を示したが、これに限定されない。例えば、プレス加工等の手段によってサブベース26とリヤブラケット44とを一体に形成した1つの部材をサポート部材45として適用しても良い。
【0052】
また、サポート部材45のリヤブラケット44にガイド部443が形成され、フロントブラケット41にガイド部412が形成される例を示したが、ガイド部443(412)に相当する構造をサポート部材45のリヤブラケット44及びフロントブラケット41の少なくとも何れかに設ける構造であっても良い。
【0053】
以上説明した様に、本発明のドアクローザ装置10によれば、ドリブンギヤ42の回動軸である段付ピン50の両端がサポート部材45とフロントブラケット41によってそれぞれ支持され、ドリブンギヤ42がこれらの部材間にて回動する。この構造においては、段付ピン50の支持強度が高まると共に、段付ピン50の軸方向に関して、ドリブンギヤ42の位置がサポート部材45とフロントブラケット41との間に規制される。これにより、ドリブンギヤ42の回動軌跡が乱れず、ドリブンギヤ42がスムーズに回動する。
【0054】
また、本発明によれば、サポート部材45のフロントブラケット41に対する移動が規制されるので、これら部材に支持される段付ピン50の位置が定まる。これにより、段付ピン50の支持強度がさらに高まり、ドリブンギヤ42がよりスムーズに回動する。
【0055】
また、本発明によれば、段付ピン50の軸方向に関して、ドリブンギヤ42の位置がガイド部412、443によって規制される。これにより、ドリブンギヤ42の回動がガイドされ、ドリブンギヤ42がよりスムーズに回動する。
【0056】
また、本発明によれば、ドリブンギヤ42のより多くの部分にガイド部412、443が当接するので、ドリブンギヤ42の回動がより確実にガイドされ、ドリブンギヤ42がさらにスムーズに回動する。
【0057】
また、本発明によれば、ドリブンギヤ42の回動軌跡がサポート部材45のサブベース26と部分的に重なり合う(オーバーラップする)。これにより、ドリブンギヤ42をラッチ22に対してより近くに配置でき、ドアクローザ装置10においては、部材のレイアウトに係る自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のドアクローザ装置10を配設した車両1の後部を示す斜視図。
【図2】ドアクローザ装置10及びその周辺構造を概略的に示す図(図1におけるA−A線に沿う断面図)。
【図3】ドアクローザ装置10の正面図(図2におけるB方向矢視図)。
【図4】ドアクローザ装置10における主要部品の分解斜視図。
【図5】ドリブンギヤ42の構造を示す図で、図5(a)は、ドリブンギヤ42の正面図、図5(b)は、ドリブンギヤ42の上面図(図5(a)におけるE方向矢視図)。
【図6】図3におけるG−G線に沿う断面図。
【図7】クローズ動作の態様を模式的に示す図。
【図8】ボデー3に対するドア2の状態を模式的に示す図。
【図9】クローズ動作中のイレギュラー操作を示す図。
【図10】リリース動作の態様を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
2 ドア
3 ボデー(車体)
4 ストライカ
10 ドアクローザ装置
21 ベース(ベース部材)
22 ラッチ
24 ラッチレバー(レバー部材)
26 サブベース(第1支持部材)
31 モータ
41 フロントブラケット(第2支持部材)
42 ドリブンギヤ(回動部材)
44 リヤブラケット(第1支持部材)
45 サポート部材(第1支持部材)
50 段付ピン(回動軸)
212 溝部
241 ピン(曲面部)
261a 切欠き部
412 ガイド部
422 レバー部(クローズ部材)
423c 中間部(阻止部)
443 ガイド部(突出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体若しくはドアの何れか一方に設けられるストライカと、
該ストライカを受け入れる溝部を備え、前記車体若しくは前記ドアの何れか他方に設けられるベース部材と、
該ベース部材に回動自在に支持され、前記ストライカと係合可能なラッチと、
該ラッチに駆動力を与えるモータと、
前記ラッチと前記モータとの間に設けられ、前記駆動力を前記ラッチに伝達する回動部材と、
前記ラッチを覆うべく前記ベース部材に連結し、前記回動部材の回動軸の一端を支持する第1支持部材と、
を備え、
前記ストライカと係合した前記ラッチを前記駆動力により回動させることで、前記ドアを前記車体に対して閉状態にする車両用ドアクローザ装置において、
前記回動部材の回動軸の他端を支持する第2支持部材を備え、前記回動部材が前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に挟まれることを特徴とする車両用ドアクローザ装置。
【請求項2】
前記第2支持部材は、前記第1支持部材に連結されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアクローザ装置。
【請求項3】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材の少なくとも何れかに設けられ、前記回動軸の軸方向に関して前記回動部材に当接する突出部を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアクローザ装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記回動部材の回動方向に沿って延在することを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアクローザ装置。
【請求項5】
前記第1支持部材に形成され、前記回動部材の回動軌跡上に位置する切欠き部を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用ドアクローザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−2589(P2007−2589A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186190(P2005−186190)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】