説明

車両用ドアクローザ装置

【課題】車両用ドアクローザ装置において、ラッチがフルラッチに接近した位置にあっても、移動部材に対して大きな弾性エネルギーの付与を可能にする。
【解決手段】補助付勢手段5は、セクタギヤ44がモータ42の正転駆動により待機位置からクローズ方向へ移動する場合には、スプリング53の弾性エネルギーを蓄積した状態に保持され、中間位置に移動した時点でスプリング53の弾性エネルギーをセクタギヤ44に付与し、セクタギヤ44が作動位置から中間位置へ移動する過程において弾性エネルギーを蓄積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアをハーフラッチ状態からフルラッチ状態に閉成するための車両用ドアクローザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアクローザ装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載された車両用ドアクローザ装置は、ドアの閉作動に基づいて、ドア側のラッチが車体側のストライカと係合してオープン位置からハーフラッチ位置に移動すると、モータが正転駆動してセクタギヤを回動させ、当該回動によってラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動させる。また、セクタギヤの駆動系中には、ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ移動させる際のクローズ動作においてモータに掛かる負荷を軽減するため、セクタギヤのクローズ方向(ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ移動させる方向)の移動を補助するスプリングが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3556050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された車両用ドアクローザ装置においては、セクタギヤをクローズ方向へ補助するスプリングの弾性エネルギーは、セクタギヤが待機位置にある状態にあっても既にセクタギヤに対して作用しているため、図10に点線(従来技術におけるスプリングの弾性エネルギー)で示すように、ラッチがフルラッチ位置へ移動する前に早期にスプリングの弾性エネルギーは小さくなってしまう。この結果、ドアにシール反力が作用する等して大きな閉じ力を必要とするラッチのフルラッチ位置付近ではセクタギヤに付与される弾性エネルギーが小さくなってしまい、スプリングの弾性エネルギーを効果的に使用することはできない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、モータによりラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ移動させる際、ラッチがフルラッチ位置に接近した位置にあっても、移動部材に対して大きな弾性エネルギーの付与を可能にして、モータに掛かる負荷を軽減した車両用ドアクローザ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第1の発明は、ストライカと係合しないオープン位置から前記ストライカが完全に係合するフルラッチ位置へ移動可能なラッチと、前記ラッチが前記ストライカと僅かに係合するハーフラッチ位置に移動したことを契機に正転駆動し、前記ラッチが前記フルラッチ位置へ移動したことを契機に逆転駆動可能なモータと、前記モータの正転駆動により待機位置からクローズ方向へ移動して前記ラッチを前記ハーフラッチ位置から前記フルラッチ位置へ移動させ、前記モータの逆転駆動により前記クローズ方向へ移動した作動位置から前記待機位置に移動可能な移動部材と、前記移動部材に対して前記クローズ方向への弾性エネルギーを付与可能な補助付勢手段とを備え、前記補助付勢手段は、前記移動部材が前記モータの正転駆動により前記待機位置から前記クローズ方向へ移動する場合には、前記待機位置から予め定めた中間位置へ至るまでは前記弾性エネルギーを蓄積した状態に保持され、前記中間位置に移動した時点で前記弾性エネルギーを前記移動部材に付与し、前記移動部材が前記作動位置から前記待機位置へ向けて移動する場合には、前記移動部材が前記作動位置から前記中間位置へ移動する過程において前記弾性エネルギーを蓄積することを特徴とする。
【0007】
上記構成を採用することにより、補助付勢手段に蓄積された弾性エネルギーが移動部材に作用する開始時期を、移動部材がモータの駆動により待機位置からクローズ方向へ所定量移動した中間位置とすることができる。この結果、大きな力を必要とするラッチのフルラッチ位置付近においても移動部材に対して大きな弾性エネルギーを付与することができるため、モータに掛かる負荷を軽減してクローザユニットの小型化を図ることができる。
【0008】
好ましくは、第1の発明において、前記補助付勢手段は、前記弾性エネルギーを蓄積可能なスプリングと、前記スプリングの弾性エネルギーにより一方向へ付勢されるとともに、前記移動部材に当接可能な補助レバーとを含み、前記補助レバーは、前記移動部材が前記待機位置と前記中間位置間の範囲にある場合には、前記移動部材の移動方向に沿う阻止部に当接することによって前記一方向への回動が阻止されて前記スプリングの弾性エネルギーを蓄積する蓄積位置に保持され、前記移動部材が前記中間位置に移動したときには、前記阻止部から外れて前記一方向への回動が自由になることによって、前記スプリングの弾性エネルギーを前記移動部材に付与開始する。
【0009】
また、好ましくは、第1の発明において、前記補助付勢手段は、前記弾性エネルギーを蓄積可能なスプリングと、前記スプリングの弾性エネルギーにより一方向へ付勢される補助レバーと、前記補助レバーの前記一方向への移動を阻止して前記補助レバーを前記スプリングの弾性エネルギーを蓄積する蓄積位置に保持可能な保持部材と、前記移動部材と一体的に移動可能であって、前記移動部材が前記中間位置に移動したとき前記保持部材に当接して前記補助レバーの前記一方向への回動を自由にする解除部とを含み、前記移動部材が前記待機位置と前記中間位置間の範囲にある場合には、前記移動部材は前記保持部材により前記蓄積位置に保持され、前記移動部材が前記中間位置に移動したとき、前記解除部が前記保持部材に当接して前記補助レバーの前記一方向への回動を自由にすることによって、前記補助レバーは前記スプリングの弾性エネルギーを前記移動部材に付与開始する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、移動部材が中間位置に移動したときに移動部材に対して補助付勢手段の弾性エネルギーを付与開始するため、モータの正転駆動によってラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動させる際、ラッチがフルラッチ位置に接近移動しても、移動部材に対して大きな弾性エネルギーを付与することができる。この結果、ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ移動させる際のモータに掛かる負荷を軽減して、モータを低出力のものの採用が可能となり、クローザユニットの小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における待機状態にあるときの車両用ドアクローザ装置の正面図である。
【図2】同じく作動途中状態のときの車両用ドアクローザ装置の正面図である。
【図3】同じく作動完了状態のときの車両用ドアクローザ装置の正面図である。
【図4】同じくオープン状態のときのラッチユニットの要部の平面図である。
【図5】同じくハーフラッチ状態のときのラッチユニットの要部の平面図である。
【図6】同じくフルラッチ状態のときのラッチユニットの要部の平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における待機状態のときの模式図であり、(a)は正面図、(b)は(a)において矢視A方向からの側面図である。
【図8】同じく作動状態のときの模式図であり、(a)は正面図、(b)は(a)において矢視B方向からの側面図である。
【図9】図7(a)における矢視C方向からの右側面図である。
【図10】ラッチの位置とスプリングの弾性エネルギーとの関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
ドアクローザ装置1は、車両のドア(図示略)に取り付けられるとともに、車体側のストライカ2と係合しドアを全閉位置に拘束可能なラッチユニット3と、ラッチユニット3の後述のラッチ33をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ移動可能なクローザユニット4とを含む。
【0013】
図4〜6に示すように、ラッチユニット3は、ドアに固定されるハウジング31内に軸32により枢着されストライカ2と係脱可能なラッチ33と、ハウジング31内に軸34により枢着されラッチ33の回動方向に係合可能なラチェット35とを有している。
【0014】
ラッチ33は、ストライカ2から離脱した図4に示すオープン位置と、ストライカ2に僅かに係合した図5に示すハーフラッチ位置(ドアの半ドアに相当)と、ストライカ2と完全に係合した図6に示すフルラッチ位置(ドアの全閉に相当)とに回動可能である。
【0015】
ラチェット35は、ラッチ33がフルラッチ位置に回動したとき、ばね(図示略)をもってラッチ33に係合することによって、ラッチ33のオープン方向(図6において反時計方向)への回動を阻止してドアを全閉位置に拘束する。
【0016】
クローザユニット4は、不動体をなすベースプレート41に固定されラッチ33がオープン位置からハーフラッチ位置に回動したことを契機、具体的にはハウジング31上に配置されたハーフラッチ検出スイッチ36がラッチ33のオープン位置からハーフラッチ位置への回動を検出したことを契機に正転駆動可能なモータ42と、ベースプレート41に軸43により枢着されモータ42の正転駆動により図1に示す待機位置からクローズ方向(図1において反時計方向)へ回動可能な移動部材をなすセクタギヤ44と、セクタギヤ44が待機位置からクローズ方向へ所定量回動した予め定めた図2に示す中間位置からセクタギヤ44に対してクローズ方向への付勢力を付与開始可能な補助付勢手段5とを備える。
【0017】
第1の実施形態における補助付勢手段5は、ベースプレート41に軸51により枢着されセクタギヤ44に対して当接可能な補助レバー52と、セクタギヤ44に対して図1〜3において時計方向への弾性エネルギーを付与可能なスプリング53とを含む。
【0018】
セクタギヤ44は、その外周縁に設けられた歯部44aがモータ42の回転を減速して回転可能な出力ギヤ42aに噛合し、モータ42の正転駆動をもって、待機位置からクローズ方向へ回動することにより図3に示す作動位置に回動し、またモータ42の逆転駆動をもって作動位置から時計方向へ回動して待機位置へ戻る。
【0019】
セクタギヤ44の下端部には、ラッチ33と一体的に回動可能な係合ピン33aに対して左側から係合可能な押部44bが設けられている。押部44bは、セクタギヤ44が待機位置からクローズ方向へ回動することにより係合ピン33aの左側に係合してラッチ33をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ回動させるものである。
【0020】
補助レバー52は、ベースプレート41に軸51により枢着されるとともに、セクタギヤ44が待機位置と中間位置手前間の範囲にあるとき、先端部の作用部52aがセクタギヤ44における軸43を中心とする円弧状の外周部44c(セクタギヤ44の移動方向に沿う阻止部)に当接して時計方向への回動が阻止されることにより、スプリング53の弾性エネルギーを蓄積する図1に示す蓄積位置に保持され、モータ42の正転駆動によりセクタギヤ44が待機位置から中間位置に移動した時点で、時計方向への回動が自由になってスプリング53の弾性エネルギーの放出を開始する。
【0021】
スプリング53は、捩りスプリングであって、一端が補助レバー52、他端がベースプレート41にそれぞれ掛止されることにより補助レバー52を時計方向へ付勢するとともに、セクタギヤ44が待機位置と中間位置間の範囲にあって、補助レバー52が蓄積位置に保持されている場合には、弾性エネルギーを蓄積し、セクタギヤ44が待機位置から中間位置に移動し補助レバー52の作用部52aがセクタギヤ44の外周部44cから外れて補助レバー52の時計方向への回動が自由になった時点(図2参照)で、弾性エネルギーを放出して補助レバー52を時計方向へ回動させる。
【0022】
補助レバー52は、スプリング53の弾性エネルギーにより時計方向へ回動して作用部52aがセクタギヤ44の端部44dに対して回動方向に向けて当接することによって、スプリング53の弾性エネルギーをセクタギヤ44のクローズ方向へ伝達可能となる。
【0023】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
ドアが開状態にある場合には、ラッチ33は図4に示すオープン位置、セクタギヤ44及び補助レバー52はそれぞれ、図1に示す待機位置及び蓄積位置にある。この状態からドアを閉じて、ラッチ33がストライカ2と係合してオープン位置から図5に示すハーフラッチ位置へ回動してハーフラッチ検出スイッチ36がラッチ33のハーフラッチ位置を検出すると、モータ42は正転駆動する。これにより、セクタギヤ44は、待機位置からクローズ方向(図1において反時計方向)へ回動する。
【0024】
セクタギヤ44のクローズ方向への回動に伴って、押部44bが係合ピン33aの左部に当接すると、ラッチ33はハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ向けて回動する。そして、ドアが半ドア位置から全閉位置に向けて若干移動してシール反力が大きく作用する位置、すなわち図2に示すようにセクタギヤ44が中間位置に移動すると、補助レバー52の作用部52aがセクタギヤ44の外周部44cから外れる。これにより、補助レバー52は、セクタギヤ44が待機位置から中間位置に至るまでの期間、スプリング53の弾性エネルギーを放出する方向(時計方向)への回動が阻止されてスプリング53の弾性エネルギーを蓄積した蓄積位置に保持され、セクタギヤ44が中間位置に移動した時点で、蓄積位置から時計方向への回動が自由になって、作用部52aがセクタギヤ44の端部44dに対してクローズ方向へ当接し、スプリング53の弾性エネルギーをモータ42の正転駆動によりセクタギヤ44をクローズ方向へ回動させる際の補助力として作用させる。
【0025】
そして、セクタギヤ44が図3に示す作動位置に回動してラッチ33が図6に示すフルラッチ位置に回動すると、セクタギヤ44の作動位置が検出スイッチ(図示略)により検出され、これを契機にモータ42は逆転駆動し、押部44bが係合ピン33aから離脱し、セクタギヤ44は作動位置から待機位置へ向けて(時計方向)回動し、補助レバー52は、セクタギヤ44の回動に伴って図3に示す位置からスプリング53の付勢力に抗して反時計方向へ回動する。そして、セクタギヤ44が中間位置に達すると、補助レバー52は、その作用部52aがセクタギヤ44の外周部44cに乗り上げて蓄積位置に保持される。そして、セクタギヤ44が待機位置に達すると、モータ42の回転が停止して、セクタギヤ44は待機位置に停止する。また、セクタギヤ44がスプリング53の付勢力に抗して作動位置から待機位置へ向けて反時計方向へ回動する際、セクタギヤ44の押部4bが係合ピン33aから離脱するため、モータ42に掛かる負荷は正転駆動に比べて極めて小さい。
【0026】
上述により、第1の実施形態においては、セクタギヤ44が待機位置から中間位置間の範囲にある場合には、補助レバー52の作用部52aがセクタギヤ44の外周部44cに当接してスプリング53の弾性エネルギーを蓄積した蓄積位置に保持される。そして、セクタギヤ44が中間位置に移動すると、補助レバー52の回動が自由になって、蓄積されたスプリング53の弾性エネルギーをセクタギヤ44に伝達開始してセクタギヤ44をクローズ方向へ回動させる補助力として作用する。したがって、図10に実線(本発明におけるスプリング53の弾性エネルギー)で示すように、従来技術に比して、スプリング53の弾性エネルギーが早期に小さくならないため、ラッチ33をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ回動させる際のモータ42に掛かる負荷を軽減して、モータ42を比較的低出力のものの採用が可能となり、クローザユニット4の小型化を図ることが可能となる。
【0027】
さらに、第1の実施形態においては、上述のクローズ動作に加え、ドアのハンドルスイッチ(図示略)の操作によりモータ42を逆転駆動し、ラチェット35をオープン方向へ回動させることで、ラッチ33とストライカ2との係合を解除するオープン動作を、単一のモータにより行う装置にも適用可能である。なお、オープン動作には、ラチェット35をオープン方向へ回動させるためのモータを備えていればよく、クローズ動作時に比べて低出力のモータの採用が可能であり、このモータをクローズ動作に用いる場合には、必要な出力を補助付勢手段5によって補うことでクローズ動作を実現できるため、クローザユニット4の小型化を図ることが可能となる。
【0028】
図7〜9は、本発明における第2の実施形態の模式図を示す。
図7〜9において、6は、ドアクローザ装置におけるクローザユニットを示し、ラッチユニットのラッチ9がオープン位置からハーフラッチ位置に移動すると正転駆動し、ラッチ9がハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動すると逆転駆動するモータ(図示略)と、不動体をなすベースプレート61に支持されモータの駆動により左右方向へ移動可能な移動部材7と、移動部材7に対してクローズ方向(左方)への弾性エネルギーを付与可能な補助付勢手段8を含む。
【0029】
移動部材7は、ラッチユニットのラッチ9に押部71が右側から当接可能に連結されるとともに、モータの正転駆動により図7(a)、(b)に示す待機位置からクローズ方向(左方)へ移動した図8(a)、(b)に示す作動位置に移動し、モータの逆転駆動により作動位置から待機位置へ移動可能である。移動部材7が待機位置から作動位置に移動すると、その移動は、押部71がラッチ9に右側から当接することでラッチ9に伝達されて、ラッチ9はハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動する。
【0030】
補助付勢手段8は、ベースプレート61に軸81により枢着される補助レバー82と、補助レバー82に対してクローズ方向(図7(a)、図8(a)において反時計方向)への弾性エネルギーを付与するスプリング83と、補助レバー82を図7(a)に示す蓄積位置に保持可能な板ばねにより形成される保持部材84とを含む。
【0031】
スプリング83は、引張スプリングであって、一端がベースプレート61、他端が補助レバー82にそれぞれ掛止されることによって、補助レバー82に対して弾性エネルギーを反時計方向へ作用する。
【0032】
補助レバー82は、移動部材7が待機位置と待機位置からクローズ方向(左方)へ所定量移動した中間位置間の範囲にある場合には、補助レバー82と一体的に移動する突状の係合部82aが保持部材84の右部に当接することにより、反時計方向への回動が阻止されて蓄積位置(スプリング83の弾性エネルギーを蓄積する位置)に保持される。
【0033】
保持部材84は、移動部材7が待機位置から中間位置に移動した時点で、移動部材7と一体的に移動可能な下向山形状の解除部72の左傾斜部に当接することによって、補助レバー82を蓄積位置に保持する保持位置(図9に実線で示す位置)から補助レバー82の反時計方向への回動を自由にする解除位置(図9に2点鎖線で示す位置)へ弾性変形し、また移動部材7が作動位置から中間位置へ移動した時点で、解除部72の右傾斜部に当接することによって、保持位置から解除位置へ弾性変形する。
【0034】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
ラッチユニットのラッチ9がオープン位置にある場合には、移動部材7及び補助レバー82はそれぞれ、図7に示す待機位置及び蓄積位置に保持されている。この状態において、ラッチ9がオープン位置からハーフラッチ位置に移動して、モータが正転駆動すると、移動部材7は、待機位置からクローズ方向(左方)へ移動する。このときには、係合部82aが保持部材84の右部に当接しているため、補助レバー82は蓄積位置から動くことなく、スプリング83の弾性エネルギーは放出されない。
【0035】
移動部材7がモータの正転駆動により中間位置に移動すると、解除部72の左傾斜部が保持部材84に当接して保持部材84が解除位置に弾性変形することにより、移動部材7の反時計方向への回動が自由になる。この結果、移動部材7が中間位置に移動した時点で、補助レバー82は、スプリング83の弾性エネルギーにより反時計方向へ回動し、補助レバー82の回動端部が移動部材7と一体的に移動する被押部73の右部に当接することにより、スプリング83の弾性エネルギーを移動部材7に対してクローズ方向へ伝達する。すなわち、モータの正転駆動によりラッチ9をフルラッチ位置に移動させる場合、スプリング83の弾性エネルギーは、移動部材7が中間位置に移動したときから伝達開始する。
【0036】
図8に示すように、移動部材7が作動位置に移動してラッチ9がフルラッチ位置に移動すると、モータが逆転駆動し、移動部材7は、作動位置から待機位置へ向けて移動する。補助レバー82は、移動部材7の移動に伴って被押部73に押されることによりスプリング83の引張力に抗して時計方向へ回動する。そして、移動部材7が中間位置に移動すると、解除部72の右傾斜部が保持部材84に当接することにより、保持部材84を保持位置から解除位置に弾性変形させつつ、補助レバー82を待機位置に移動させる。
【0037】
移動部材7が待機位置へ移動すると、保持部材84は保持位置に戻り、補助レバー82はスプリング83の弾性エネルギーを蓄積した蓄積位置に保持される。
【0038】
上述により、第2の実施形態においては、移動部材7が待機位置と中間位置間の範囲にある場合には、補助レバー82は、保持部材84に当接してスプリング83の弾性エネルギーを蓄積した蓄積位置に保持され、そして移動部材7が中間位置に移動すると、補助レバー82の回動が自由となってスプリング83の弾性エネルギーを移動部材7に伝達して移動部材7をクローズ方向へ回動させる補助力として作用してラッチ9をフルラッチ位置に移動させることができる。また、移動部材7がスプリング83の付勢力に抗して作動位置から待機位置へ向けて反時計方向へ回動する際、移動部材7の押部71がラッチ9から離れるため、モータに掛かる負荷は正転駆動に比べて極めて小さい。この結果、ラッチ9をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ回動させる際のモータに掛かる負荷を軽減して、モータを比較的低出力のものの採用を可能としてクローザユニット6の小型化を図ることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)第1の実施形態において、スプリング53を捩りスプリングに代えてコイルスプリングとする。
(ii)第2の実施形態において、スプリング83をコイルスプリングに代えて捩りスプリングとする。
【符号の説明】
【0040】
1 ドアクローザ装置
2 ストライカ
3 ラッチユニット
4 クローザユニット
5 補助付勢手段
6 クローザユニット
7 移動部材
8 補助付勢手段
9 ラッチ
31 ハウジング
32 軸
33 ラッチ
33a 係合ピン
34 軸
35 ラチェット
36 ハーフラッチ検出スイッチ
41 ベースプレート(不動体)
42 モータ
42a 出力ギヤ
43 軸
44 セクタギヤ(移動部材)
44a 歯部
44b 押部
44c 外周部(阻止部)
44d 端部
51 軸
52 補助レバー
52a 作用部
53 スプリング
61 ベースプレート(不動体)
71 押部
72 解除部
73 被押部
81 軸
82 補助レバー
82a 係合部
83 スプリング
84 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカと係合しないオープン位置から前記ストライカが完全に係合するフルラッチ位置へ移動可能なラッチと、前記ラッチが前記ストライカと僅かに係合するハーフラッチ位置に移動したことを契機に正転駆動し、前記ラッチが前記フルラッチ位置へ移動したことを契機に逆転駆動可能なモータと、前記モータの正転駆動により待機位置からクローズ方向へ移動して前記ラッチを前記ハーフラッチ位置から前記フルラッチ位置へ移動させ、前記モータの逆転駆動により前記クローズ方向へ移動した作動位置から前記待機位置に移動可能な移動部材と、前記移動部材に対して前記クローズ方向への弾性エネルギーを付与可能な補助付勢手段とを備え、
前記補助付勢手段は、前記移動部材が前記モータの正転駆動により前記待機位置から前記クローズ方向へ移動する場合には、前記待機位置から予め定めた中間位置へ至るまでは前記弾性エネルギーを蓄積した状態に保持され、前記中間位置に移動した時点で前記弾性エネルギーを前記移動部材に付与し、前記移動部材が前記作動位置から前記待機位置へ向けて移動する場合には、前記移動部材が前記作動位置から前記中間位置へ移動する過程において前記弾性エネルギーを蓄積することを特徴とする車両用ドアクローザ装置。
【請求項2】
前記補助付勢手段は、前記弾性エネルギーを蓄積可能なスプリングと、前記スプリングの弾性エネルギーにより一方向へ付勢されるとともに、前記移動部材に当接可能な補助レバーとを含み、
前記補助レバーは、前記移動部材が前記待機位置と前記中間位置間の範囲にある場合には、前記移動部材の移動方向に沿う阻止部に当接することによって前記一方向への回動が阻止されて前記スプリングの弾性エネルギーを蓄積する蓄積位置に保持され、前記移動部材が前記中間位置に移動したときには、前記阻止部から外れて前記一方向への回動が自由になることによって、前記スプリングの弾性エネルギーを前記移動部材に付与開始することを特徴とする請求項1記載の車両用ドアクローザ装置。
【請求項3】
前記補助付勢手段は、前記弾性エネルギーを蓄積可能なスプリングと、前記スプリングの弾性エネルギーにより一方向へ付勢される補助レバーと、前記補助レバーの前記一方向への移動を阻止して前記補助レバーを前記スプリングの弾性エネルギーを蓄積する蓄積位置に保持可能な保持部材と、前記移動部材と一体的に移動可能であって、前記移動部材が前記中間位置に移動したとき前記保持部材に当接して前記補助レバーの前記一方向への回動を自由にする解除部とを含み、
前記移動部材が前記待機位置と前記中間位置間の範囲にある場合には、前記移動部材は前記保持部材により前記蓄積位置に保持され、前記移動部材が前記中間位置に移動したとき、前記解除部が前記保持部材に当接して前記補助レバーの前記一方向への回動を自由にすることによって、前記補助レバーは前記スプリングの弾性エネルギーを前記移動部材に付与開始することを特徴とする請求項1記載の車両用ドアクローザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−149471(P2012−149471A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10673(P2011−10673)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】