説明

車両用ドアトリムの灰皿取付構造

【課題】ドアトリムと灰皿挿入部を一部品化しつつ、灰皿の安定保持及びドアトリムの外観性に優れた車両用ドアトリムの灰皿取付構造を提供する。
【解決手段】灰皿挿入部1aが一体形成されたドアトリム1と、灰皿挿入部1aに挿入される灰皿2とを有する車両用ドアトリムの灰皿取付構造であって、灰皿2の車両前後方向における前面壁部2a及び後面壁部2bには、灰皿挿入部1aと係合する係合部2a1,2b1が形成され、灰皿挿入部1aには、係合部2a1,2b1と係合する帯状凸部1a1が形成され、灰皿2は、係合部2a1,2b1を帯状凸部1a1に摺動させながら、灰皿挿入部1aに挿入され、灰皿挿入部1aに装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアトリムの灰皿取付構造に関し、特に、ドアトリムと灰皿挿入部との一体化を図りつつ、車両走行時に大きな振動が発生しても灰皿を確実に保持することができる車両用ドアトリムの灰皿取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の車室の内装部品であるドアトリムには、煙草の灰や吸い殻を入れる灰皿が装着されている。この灰皿を装着するためにドアトリムには灰皿挿入部が形成されている。そして、この灰皿挿入部からの灰皿の飛び出しを防止するために各種取付構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の灰皿の保持構造では、ドアトリムにポケット状の灰皿挿入部が別体部品として取り付けられている。この構造では、ドアトリムと灰皿挿入部を固定するために溶着を行う場合があるが、溶着設備が必要となり、部品点数、組付工数、及びコストの削減には繋がらない。特に、溶着工程が加わると組付作業に手間がかかり、製造コストが増大する。
【0003】
図5は、ドアトリムに灰皿挿入部を別部品として取り付ける灰皿取付構造を示している。図に示すように、ドアトリム100には下方から灰皿挿入部101が取り付けられる。両部材100,101は樹脂製であり、灰皿挿入部101は溶着によりドアトリム100に固定される。灰皿挿入部101の前後面には板バネ状の保持金具102が取り付けられ、この保持金具102による付勢力により灰皿は灰皿挿入部101に保持される。
【0004】
他の灰皿の保持構造として、図6に示すように、ドアトリム100に灰皿挿入部として直方体状の凹部100aを形成し、この凹部100aに、図7に示すように箱状の灰皿103を係止して装着するものが知られている。この構造では、ドアトリム100に灰皿挿入用の凹部100a(図6記載)が形成されるため、一部品化を図ることはできるが、ドアトリム100の外形線と灰皿103の外形線との間に間隙が形成され、ドアトリム100の上面から側面にかけて大きく跨るいわゆるオープニングラインLが視認されるため、意匠的観点からは好ましくない。また、外観上、灰皿103の外装をドアトリム100の外装と同一の素材にするため、製造コストが増大する。
【0005】
さらに、他の一部品化の例として、図8及び図9に示すように、ドアトリム100の上面側に灰皿挿入部である凹部100aを形成し、この凹部100aに灰皿103を挿入する構造が知られているが、灰皿固定用の構造は存在せず、単に、灰皿に形成された板バネ状の保持金具102を縁部100a1に引っ掛けて灰皿103を固定する構造にされていた(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この構造では、灰皿挿入部の一部品化を図ることができるが、灰皿103の下部の固定を行えず、上部のみの固定となるため、灰皿103の確実な固定が難しく、凸凹した路面上を走行しているときに灰皿103のグラツキが発生したり、灰皿103とドアトリム100や、ドア内部の金属パネル等との接触による振動音が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3703266号公報
【特許文献2】特開2008−126967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ドアトリムと灰皿挿入部を一部品化しつつ、灰皿の安定保持及びドアトリムの外観性に優れた車両用ドアトリムの灰皿取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、このような課題に対して鋭意研究を重ねた結果、ドアトリムと一体成形された灰皿挿入部に灰皿を係合させながら灰皿を灰皿挿入部にスライドさせて挿入し装着することにより、ドアトリムと灰皿挿入部を一部品化しつつ、灰皿の安定保持及びドアトリムの外観性に優れた構造を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の車両用ドアトリムの灰皿取付構造は、灰皿挿入部が一体形成されたドアトリムと、前記灰皿挿入部に挿入される灰皿とを有する車両用ドアトリムの灰皿取付構造であって、前記灰皿の車両前後方向における前面壁部及び後面壁部には、前記灰皿挿入部と係合する係合部が形成され、前記灰皿挿入部には、前記係合部と係合する被係合部が形成され、前記灰皿は、前記係合部を前記被係合部に摺動させながら、前記灰皿挿入部に挿入され、前記灰皿挿入部に装着されることを特徴とする。
【0010】
かかる発明では、灰皿の係合部を灰皿挿入部の被係合部に摺動させながら、灰皿が灰皿挿入部に挿入され、灰皿は灰皿挿入部に装着されるので、灰皿の挿入性が良好である。
【0011】
また、灰皿の係合部は前面壁部及び後面壁部に形成されているので、前後方向への灰皿の移動が拘束される。また、係合部が凹凸形状などであれば車両左右方向の移動も拘束される。さらに、灰皿を灰皿挿入部に圧入すれば上下方向の移動も拘束可能である。そして、前後方向、左右方向及び上下方向の移動を拘束すれば、灰皿は安定保持され、凹凸の路面上を走行しても灰皿がグラ付くことはない。ひいては、ドアトリムとグラ付いた灰皿との接触による振動音が発生することはない。また、灰皿の灰皿挿入部からの飛び出しも防止することができる。すなわち、本発明により、灰皿の安定保持及び外観性に優れ、かつドアトリムと灰皿挿入部を一部品化した車両用ドアトリムの灰皿取付構造が提供される。
【0012】
また、本発明の車両用ドアトリムの灰皿取付構造は、前記灰皿挿入部の前記被係合部は、上下方向に沿って形成された帯状凸部であり、該帯状凸部は、下方へ向かうに連れて高さが高くなるテーパ状にされ、前記灰皿を前記灰皿挿入部に装着したときに、前記灰皿挿入部の上下方向への移動が拘束されることを特徴とする。
【0013】
かかる発明では、灰皿挿入部の被係合部が下方へ向かうに連れて高さが高くなるテーパ状になっているため、灰皿を摺動させ挿入するに従って圧入力が大きくなり、灰皿は灰皿挿入部にスムーズかつ良好な挿入感で装着される。特に、被係合部が帯状凸部にされているため、帯の幅を適宜に設計することで、挿入性及び安定保持性に優れた車両用ドアトリムの灰皿取付構造が提供される。
【0014】
また、本発明の車両用ドアトリムの灰皿取付構造は、前記灰皿の前記係合部と前記灰皿挿入部の前記被係合部とは、前記灰皿の車両左右方向への移動を拘束するように係合されていることを特徴とする。
【0015】
車両左右方向への灰皿の移動を拘束する方法としては、例えば、灰皿の側面に2本のレール状の突起を形成し、灰皿挿入部に形成された帯状凸部を該レール状の突起間に嵌合させる方法が挙げられる。勿論、灰皿の係合部と灰皿挿入部の被係合部とは灰皿の前後面にそれぞれ形成することが好ましい。水平面に沿った回転方向の力が働くと、1箇所保持のみでは安定して灰皿を保持できない場合も想定されるからである。なお、灰皿に帯状凸部を形成し、灰皿挿入部にレール状の突起を形成してもよい。また、単純に一方を凸部、他方を凹部として嵌合させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用ドアトリムの灰皿取付構造では、ドアトリムと灰皿挿入部を一部品化しつつ、灰皿の安定保持及び外観性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の車両用ドアトリムの灰皿取付構造の一実施形態を示す説明図である。
【図2】図2は、図1の灰皿挿入部の拡大図である。
【図3】図3は、図2の灰皿挿入部とは反対側の面を示す拡大図である。
【図4】図4は、図1の灰皿挿入部を反対方向から見た斜視図である。
【図5】図5は、従来の車両用ドアトリムの灰皿取付構造の一例を示す説明図である。
【図6】図6は、従来の車両用ドアトリムの灰皿取付構造の他の例を示す説明図である。
【図7】図7は、図6の灰皿挿入部に灰皿を取り付けた形態を示す説明図である。
【図8】図8は、従来の車両用ドアトリムの灰皿取付構造のさらに他の例を示す説明図である。
【図9】図9は、図8の灰皿挿入部に取り付けられる灰皿を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の車両用ドアトリムの灰皿取付構造の一実施形態を示す説明図である。図に示すように、本実施形態の車両用ドアトリムの灰皿取付構造では、灰皿挿入部1aが一体形成されたドアトリム1と、灰皿挿入部1aに挿入される灰皿2とを有している。
【0019】
灰皿2の車両前後方向における前面壁部2a及び後面壁部2bには、灰皿挿入部1aと係合する係合部2a1,2b1が形成されている。係合部2a1,2b1は2本の薄いレール状の突起から構成され、下端側は丸みを帯びた先細り形状にされ、先端に行くに従って突起の高さが低くされ、先端は壁面に連続している。このような形状にするのは、灰皿2を灰皿挿入部1aに挿入し易いからである。一方、灰皿挿入部1aには、被係合部である帯状凸部1a1が係合部2a1,2b1に対応して車両前後方向に一対形成されている。この対向して形成された一対の帯状凸部1a1は、係合部2a1,2b1のレール状の突起間に嵌合される。すなわち、灰皿2の係合部2a1,2b1と灰皿挿入部1aの帯状凸部1a1とは、灰皿2の車両前後左右方向への移動が拘束されるように係合される。
【0020】
帯状凸部1a1は、図2及び図3に拡大して示すように、上下方向に沿って形成され、該帯状凸部は下方へ向かうに連れて高さが高くなるテーパ状にされている。そして、図1に示す灰皿2は、その係合部2a1,2b1が帯状凸部1a1に摺動しながら、灰皿挿入部1aに挿入され、灰皿2は灰皿挿入部1aに装着される。灰皿2を灰皿挿入部1aに装着したときに、前面壁部2aと後面壁部2bが帯状凸部1a1に挟み込まれるので、その挟持力により灰皿2は灰皿挿入部1aの上下方向への移動が拘束される。
【0021】
より具体的には、灰皿挿入部1aの帯状凸部1a1が下方へ向かうに連れてテーパ状になっているため、灰皿2を摺動させ挿入するに従って挟持力が大きくなり、灰皿2は灰皿挿入部1aにスムーズかつ良好な挿入感で装着される。特に、被係合部が帯状凸部1a1であるため、帯の幅を適宜に設計することで、挿入性及び安定保持性に優れた車両用ドアトリムの灰皿取付構造が提供される。
【0022】
灰皿挿入部1aは、図1に示すように、前後左の3壁面で構成されているため、壁面のない面が車室側に位置されドアトリムで覆われるため、外観上視認されることはない。また、灰皿2は灰皿挿入部1aと完全に別体であるため、両部材1a,2の外装を同一の素材にしたり、面一にしたりする必要がない。
灰皿2を使用しない場合には、灰皿2の代わりに、ドアトリム1と同一素材の蓋部材3を被せることができる。この蓋部材3をドアトリム1に取り付けると、ドアトリム1の上面と蓋部材3の上面とは面一になり、外観がよくなる。灰皿2又は蓋部材3を設けるとドアトリムの上面付近にいわゆるオープニングラインが形成されるが、外観性は低下しない。
【0023】
灰皿挿入部1aが前後左の3壁面で構成されているのは、製作上の問題である。すなわち、灰皿挿入部1aを成形するにあたり金型を用いた樹脂の射出成形が行われるが、射出成形後の金型の抜き取り性を向上させるために、灰皿挿入部1aは3壁面で構成されている。図4に示すように、金型は入れ子構造にされ、金型の主部分となる一対の分割金型は左右方向に移動し、複数の入れ子5が前後方向又は上下方向に移動する構造が採用されている。なお、灰皿挿入部1aは入れ子5を抜き易くするために前面壁部及び後面壁部をハの字状に対向させてもよい。
本実施形態の灰皿挿入部1aを成形する金型は入れ子5の存在により複雑化するが、ドアトリム1と灰皿挿入部1aとを別体とする場合には各々金型が必要となるので、結果として金型費用の削減が図られ製造コストが低減する。
【0024】
図1に示すように、ドアトリム1の灰皿挿入部1aの前面壁部及び後面壁部には、板バネ状の金具4が取り付けられる。この金具4の先端部には係合凸部4aが形成され、挿入される灰皿2の前面壁部2a及び後面壁部2bに凹設された係合凹部2a2、2b2に係合するとともに、板バネのバネ力によって付勢することで、係合凸部4aが係合凹部2a2、2b2内に保持されて、凹凸の激しい路面上を走行しても灰皿2がグラ付くことはない。ひいては、ドアトリム1とグラ付いた灰皿2との接触による振動音が発生することはない。
また、灰皿2の飛び出しを確実に防止することができる。このように、灰皿2の上部では帯状凸部1a1で灰皿2を十分な力で挟持し、灰皿2の下部では前記板バネ状の金具4によって係合凹部2a2、2b2への係合が確実になされて、灰皿2を上部と下部とで保持することで灰皿の支持を確実にしている。
【0025】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0026】
上述した実施形態では、灰皿挿入部1aの被係合部として帯状凸部1a1を形成し、灰皿2に係合部2a1,2b1を形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、灰皿挿入部1aの被係合部を溝状にし、灰皿2に凸状の係合部を形成してもよい。要するに、灰皿2を灰皿挿入部1aにスライドさせることができ、かつ安定して保持できる構成であればよい。
また、灰皿挿入部1aの帯状凸部1a1をテーパ状に形成した例について説明したが、帯状凸部1a1をテーパ状にするのではなく、壁面自体を上下方向に対して傾斜させて帯状凸部1a1の挟持面を上下方向に対して傾斜させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、車両用ドアトリム全般に適用することができる。すなわち、トラックのみならず、同様の構造を採用する自動車その他の車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ドアトリム
1a 灰皿挿入部
1a1 帯状凸部
2 灰皿
2a 前面壁部
2a1 係合部
2a2 係合凹部
2b 後面壁部
2b1 係合部
2b2 係合凹部
3 蓋部材
4 金具
4a 係合凸部
5 入れ子
100 ドアトリム
100a 凹部
100a1 縁部
101 灰皿挿入部
102 保持金具
103 灰皿
L オープニングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灰皿挿入部が一体形成されたドアトリムと、前記灰皿挿入部に挿入される灰皿とを有する車両用ドアトリムの灰皿取付構造であって、
前記灰皿の車両前後方向における前面壁部及び後面壁部には、前記灰皿挿入部と係合する係合部が形成され、
前記灰皿挿入部には、前記係合部と係合する被係合部が形成され、
前記灰皿は、前記係合部を前記被係合部に摺動させながら、前記灰皿挿入部に挿入され、前記灰皿挿入部に装着されることを特徴とする車両用ドアトリムの灰皿取付構造。
【請求項2】
前記灰皿挿入部の前記被係合部は、上下方向に沿って形成された帯状凸部であり、該帯状凸部は、下方へ向かうに連れて高さが高くなるテーパ状にされ、
前記灰皿を前記灰皿挿入部に装着したときに、前記灰皿挿入部の上下方向への移動が拘束されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアトリムの灰皿取付構造。
【請求項3】
前記灰皿の前記係合部と前記灰皿挿入部の前記被係合部とは、前記灰皿の車両左右方向への移動を拘束するように係合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアトリムの灰皿取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131748(P2011−131748A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293544(P2009−293544)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】