説明

車両用ドアトリム

【課題】常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保された上で、側突時に乗員に与える衝撃を低減することが可能な車両用ドアトリムを提供する。
【解決手段】ドアインナパネル20に取り付けられた金属製のブラケット21の取付孔23およびメインボード10Aに突設形成された取付座16の係合孔17に、プルハンドルボックス30の係合爪32が挿入されて係合する。このとき、金属製のブラケット21により、プルハンドルボックス30に常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保される。また、プルハンドルボックス30と一体に形成された係合爪32は合成樹脂製であり、金属製のブラケット21に比べて柔らかく、側突時には係合爪32がブラケット21の取付孔23によって容易に損壊されるから、側突時に乗員に与える衝撃を低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内側に張り出すように形成されたアームレスト部に上方が開口した容器形状のプルハンドルボックスが取り付けられている車両用ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車等のドアパネルの内側(車室内側)には、内装材としてドアトリムが装着されている。ドアトリムには、乗員の肘掛けとして利用されるアームレスト部が張出し形成されており、アームレスト部には、乗員がドアを閉める際に指先を入れることができるよう、上方に開口した容器形状をなすプルハンドルボックスが収容されている。
このプルハンドルボックスは、アームレスト部に乗員が肘を載置した際に下方に沈み込んだりすることがないよう、例えば特許文献1に記載のように、ドアパネルに連結された金属製のブラケットにビスを用いて締め付け固定されることで十分な支持力が確保されている。
【特許文献1】特開2005−67348公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような構造では、プルハンドルボックスとブラケットとが金属製のビスによって固定されているため、その固定部分が硬くて壊れ難くなっている。ドアに対して側方からの衝突(側突)が生じたときには、アームレスト部が壊れて変形することにより乗員に与える衝撃を吸収するようになっているので、その衝撃をより低減するための工夫が望まれていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保された上で、側突時に乗員に与える衝撃を低減することが可能な車両用ドアトリムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、車室内側に張り出すように形成されたアームレスト部に上方が開口した容器形状のプルハンドルボックスが取り付けられている車両用ドアトリムであって、前記プルハンドルボックスは、ドアインナパネルの車室内側の面に設けられた金属製のブラケットに固定されており、前記プルハンドルボックスの下面には、前記ブラケットに設けられた取付孔に挿入されて係合する係合爪が設けられ、前記プルハンドルボックスと前記係合爪とが合成樹脂により一体に形成されているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記プルハンドルボックスを取り付けることのできる取付座がドアトリムを構成するメインボードの車外側の壁面に対して一体的に設けられているところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記係合爪に形成されている爪部は、車室内側へ向けて突出する形状であるところに特徴を有する。
【0006】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のものにおいて、前記係合爪には、前記係合爪が前記取付孔に挿入されたときにその少なくとも一部が潰れることで前記取付孔に対する前記係合爪のガタツキを防止することのできるガタツキ防止リブが設けられているところに特徴を有する。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のものにおいて、前記ブラケットの車室内側の端部が上方もしくは下方に屈曲しているところに特徴を有する。
【0007】
請求項6の発明は、請求項2から請求項5のうちいずれか1項に記載のものにおいて、前記取付座には、前記係合爪が挿入されて係合する係合孔が設けられており、前記係合孔の車室内側の孔縁部には、下方に向けて屈曲するフランジ部が設けられているところに特徴を有する。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のものにおいて、ドアトリムを構成するメインボードの車外側の壁面には、前記プルハンドルボックスの側面に接触可能な支持リブが突設されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
ドアインナパネルに取り付けられた金属製のブラケットの取付孔に、プルハンドルボックスの係合爪が挿入されて係合する。このブラケットにより、プルハンドルボックスに常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保される。また、係合爪は合成樹脂製であり、金属製のブラケットに比べて柔らかいので、側突時には、ブラケットによって容易に損壊される。したがって、常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保された上で、側突時に乗員に与える衝撃を低減することが可能となる。
また、係合爪を取付孔に挿入するだけでプルハンドルボックスを取り付けることができるから、ネジ締め等の手間を要しない分だけ取り付け作業が容易である。
加えて、係合爪はプルハンドルボックスの下面に一体に形成されているから、ネジ等の頭がプルハンドルボックスの上方から見えてしまうことがなく、見栄えがよい。
【0009】
<請求項2の発明>
プルハンドルボックスを取り付けることのできる取付座が、ドアトリムを構成するメインボードの車外側の壁面に対して一体的に設けられている。これにより、プルハンドルボックスは、ブラケットに加えて取付座にも取り付けられた状態になるから、ブラケットのみに取り付けられている場合に比べてそのガタツキが抑えられる。また、ドアトリムに一体的に設けられた取付座にプルハンドルボックスの係合爪が係合することでプルハンドルボックスがブラケットを介して取付座に固定されるため係合爪により大きな剪断力を作用させることができ、側突時に乗員に与える衝撃の低減を実現したまま、上記の効果を得ることができる。
【0010】
<請求項3の発明>
係合爪に形成された爪部は、車室内側(プルハンドルボックスに指先を差し入れてドアを閉める際にプルハンドルボックスに作用する力の方向と一致する側)へ向けて突出する形状である。すなわち、プルハンドルボックスに頻繁に作用する力の方向と、爪部の係合代が増える方向とが一致しているから、爪部の係合状態が確実に保持される。
【0011】
<請求項4の発明>
係合爪には、係合爪が取付孔に挿入されたときにその少なくとも一部が潰れることで取付孔に対する係合爪のガタツキを防止することのできるガタツキ防止リブが設けられている。これにより、プルハンドルボックスは、アームレスト部に対してガタツキなく取り付けられる。
【0012】
<請求項5の発明>
ブラケットの車室内側の端部が上方もしくは下方に屈曲しているから、側突時にブラケットの端部が車室内へ向かって突出した状態になり難い。
【0013】
<請求項6の発明>
取付座には、係合爪が挿入されて係合する係合孔が設けられており、係合孔の車室内側の孔縁部には、下方に向けて屈曲するフランジ部が設けられている。これにより、フランジ部の分だけ係合孔の孔縁部と係合爪の側面との接触面積が増えるから、ドア閉動作により両者が面当たりして生じる応力は分散され、もって係合爪もしくは係合孔の損傷等が防止される。
【0014】
<請求項7の発明>
ドアトリムを構成するメインボードの車外側の壁面には、プルハンドルボックスの側面に接触可能な支持リブが突設されている。これにより、ドア閉動作においてプルハンドルボックスが車室内側への力を受けて変位しようとしたときに、その側面が支持リブによって支持されるから、プルハンドルボックスは確実に正しい姿勢に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4によって説明する。本実施形態における車両用ドアトリム10は、車両用ドアのインナパネル20の車室内側に取り付けられ、内装材として使用されるものである。このドアトリム10には、車室内側に張り出すようにアームレスト部11が形成され、このアームレスト部11には上方が開口した容器形状のプルハンドルボックス30が取り付けられている。
以下、図1における左上側を車両前方側、右下側を車両後方側とし、左下側を車室内側、右上側を車外側として説明する。
【0016】
ドアトリム10は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料により所望の曲面形状に形成されている。そして、ドアトリム10の本体を構成するメインボード10Aには、乗員の肘掛けとして使用されるアームレスト部11が車室内側に張り出すように形成されている。また、メインボード10Aには、プルハンドルボックス30の他に、ポケット12、パワーウインドを操作するためのスイッチ13、インサイドハンドル14等、各種のアクセサリや計器類が装着もしくは形成されている。なお、ドアトリム10の表面(車室内側の面)には、織布、不織布、合成樹脂シート等の表皮材を適宜選択して貼着するようにしてもよい。
【0017】
プルハンドルボックス30は、乗員が指先を入れることによって車両のドアを開閉するために使用されるものであり、図2に示すように、合成樹脂により上面が開口したケース状に形成されている。このプルハンドルボックス30の開口縁には鍔部31が周設されており、この鍔部31がアームレスト部11の上面に形成された開口15の口縁部15A上に載置されている。
【0018】
プルハンドルボックス30の下面には、係合爪32が形成されている。この係合爪32は、プルハンドルボックス30の成形と同時に一体に形成されている。係合爪32は、後述する取付孔23および係合孔17に挿入可能な外形形状をなし、プルハンドルボックス30の下面から所定寸法を備えて垂下している。
【0019】
係合爪32の下端部には、爪部33が形成されている。この爪部33は、車室内側へ向けて突出している。爪部33の上面は、傾斜をなす係合面33Aとされている。
【0020】
係合爪32の車室外側の面には、車室外側へ向かって突出するガタツキ防止リブ34が設けられている。ガタツキ防止リブ34は、係合爪32の前後方向ほぼ中央位置に設けられ、プルハンドルボックス30の下面から係合爪32の下端にわたって上下方向に延設されている(図3参照)。ガタツキ防止リブ34の突出寸法は、係合爪32が取付孔23および係合孔17に挿入されたときにその突出端の少なくとも一部分が孔縁に当たって潰れる寸法とされている。なお、ガタツキ防止リブ34が潰れることで、係合爪32は、爪部33の係合代を増やす方向の反力を受ける。これにより、爪部33の係合状態がより確実に保持される。そして、ガタツキ防止リブ34が係合爪32の前後方向中央位置にあることにより、爪部33の係合代を増やす方向の力が前後方向にバランスよく作用するようになっている。また、ガタツキ防止リブ34は、側突時に係合爪32の衝撃吸収性能(変形等)に支障をきたさない程度の強度で形成されている。
【0021】
プルハンドルボックス30は、金属製のブラケット21に固定されている。金属製のブラケット21は、ドアインナパネル20の車室内側の面に、ビス22により固定されている。このブラケット21には、プルハンドルボックス30が取り付けられる取付部21Aが備えられている。取付部21Aは、プルハンドルボックス30の下側に配され、プルハンドルボックス30の下面に沿う薄板状をなしている。尚、本実施形態では、ブラケット21がドアインナパネル20に対してビス22によって固定されているが、ビス22の代わりにリベットあるいは溶接により固定されていてもよい。
【0022】
この取付部21Aには、係合爪32が挿入可能な形状をなして上下方向に貫通する取付孔23が形成されている。この取付孔23の車室内側は下方向に折り曲げられたフランジ23aが形成されている。また、ブラケット21の車室内側の端部21Bは、上方に屈曲された形状をなしている。
【0023】
このブラケット21は、例えば、乗員が身体を支える時またはドアを開閉する時にプルハンドルボックス30に作用する荷重に対して十分耐え得る剛性を備えている。なお、ブラケット21の厚さ寸法および前後方向の長さ寸法を任意に設定することで、このブラケット21に適切な衝撃吸収性能を備えさせることができる。
【0024】
メインボード10Aの車外側の壁面には、プルハンドルボックス30を取り付けることのできる取付座16が一体的に設けられている。この取付座16は、メインボード10Aからドアインナパネル20側に向けて突出しており、板状をなす着座部16Aと、着座部16Aに比べて上下方向に大きな厚さ寸法を備えた基部16Bとを備えている。着座部16Aは、ブラケット21の取付部21Aの下面に沿って配されるようになっており、取付部21Aの上下方向の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を備えている。この取付座16によって、プルハンドルボックス30の支持力が高められている。
【0025】
着座部16Aには、係合爪32が挿入されて係合する係合孔17が形成されている。係合孔17は、係合爪32が挿入可能な形状(言い換えると、取付孔23とほぼ等しい形状)をなして上下方向に貫通している。この係合孔17は、取付孔23と上下方向に重なる位置に形成され、取付孔23と同軸上に連通している。
【0026】
係合孔17の車室内側の孔縁部には、下方に向けて屈曲するフランジ部18が設けられている。フランジ部18は、ブラケット21の取付孔23の縁部に設けられたフランジ23aとともに、係合孔17の孔縁部における車室内側(プルハンドルボックス30に指を差し入れてドアを閉める際にプルハンドルボックス30に作用する力によってプルハンドルボックス30が変位しようとする側)に配されている。フランジ部18は、プルハンドルボックス30の下面から係合爪32の側面に沿って係合面33Aの位置まで垂下している。
【0027】
また、メインボード10Aの車外側の壁面には、プルハンドルボックス30の側面に接触可能な支持リブ19が一体的に突設されている。支持リブ19は、プルハンドルボックス30を車室内側から支持するために設けられたものである。この支持リブ19によって、プルハンドルボックス30は所定の位置で支持されている。
【0028】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果について説明する。
プルハンドルボックス30は、その係合爪32が、取付孔23および係合孔17に挿入され、爪部33の係合面33Aが係合孔17の孔縁部(詳しくはフランジ部18の下面)に下方から係合することにより、ドアトリムに取り付けられた状態になっている。
【0029】
プルハンドルボックス30は、金属製のブラケット21に支持されることにより、常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保されている。そして、車両の側突時には、取付孔23が係合爪32に側方から当たると、図4に示すように、金属製のブラケット21に比べて柔らかい合成樹脂製の係合爪32が破断する。したがって、例えば係合爪32の替わりに金属製のネジ等でプルハンドルボックス30を固定している場合に比べて側突時にアームレスト部11が変形しやすく、もって乗員に対する衝撃の低減が図られる。すなわち、このような構成によれば、ブラケット21の剛性により、アームレスト部11の上下方向の支持力を確保することができ、しかも、プルハンドルボックス30とブラケット21との固定部分(係合爪32)は側突時には容易に損壊するので、衝突エネルギーが吸収され、乗員に与える衝撃が低減される。
【0030】
また、係合爪32を取付孔23および係合孔17に挿入するだけでプルハンドルボックス30をアームレスト部11に取り付けることができるから、ネジ締め等の手間を要しない分だけ取り付け作業が容易である。
【0031】
加えて、係合爪32はプルハンドルボックス30の下面に一体に形成されているから、ネジ等の頭がプルハンドルボックス30の上方から見えてしまうことがなく、見栄えがよい。また、係合爪32は、プルハンドルボックス30に対して一体的に設けられているため、これらを同時に一体成形することが可能であり、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0032】
また、プルハンドルボックス30の係合爪32は、ブラケット21の取付孔23だけでなく取付座16の係合孔17にも挿入されて取り付けられた状態になるから、ブラケット21のみに取り付けられている場合に比べて、プルハンドルボックス30のガタツキが抑えられる。
【0033】
そして、取付座16はドアトリム10のメインボード10Aと同じ材質であるとともに、上下方向の厚さ寸法が大きい基部16Bから板状の着座部16Aが突出する構成となっているため、側突時には、着座部16Aと基部16Bとの連設部分に外力が集中して破断しやすい。これにより、アームレスト部11は、外力に対して容易に変形するから、側突時に乗員に与える衝撃の低減を実現したまま、上記の効果を得ることができる。
【0034】
また、係合爪32に形成された爪部33は、車室内側(プルハンドルボックス30に指先を差し入れてドアを閉める際にプルハンドルボックス30に作用する力の方向と一致する側)へ向けて突出する形状である。すなわち、プルハンドルボックス30に頻繁に作用する力の方向と、爪部33の係合代が増える方向とが一致しているから、爪部33の係合状態が確実に保持される。
【0035】
さらに、係合爪32には、係合爪32が取付孔23および係合孔17に挿入されたときにその少なくとも一部が潰れることで取付孔23および係合孔17に対する係合爪32のガタツキを防止することのできるガタツキ防止リブ34が設けられている。これにより、プルハンドルボックス30は、アームレスト部11に対してガタツキなく取り付けられる。
【0036】
また、ブラケット21の車室内側の端部21Bが上方に屈曲しているから、側突時にブラケット21の端部が車室内へ向かって突出した状態になり難い。
【0037】
また、係合孔17の車室内側の孔縁部には、下方に向けて屈曲するフランジ部18が設けられている。これにより、フランジ部18の分だけ取付座16と係合爪32との接触面積が増えるから、両者が面当たりして生じる応力は分散され、もって係合爪32もしくは取付座16の損傷等が防止される。
【0038】
さらに、フランジ部18およびフランジ23aは、係合孔17の孔縁部における車室内側(プルハンドルボックス30に指を差し入れてドアを閉める際にプルハンドルボックス30に作用する力によってプルハンドルボックス30が変位しようとする側)に配されている。すなわち、ドアを閉めるたびに係合爪32と当接する可能性のある部分において応力が分散されるようになっているから通常における耐久性が高い。
【0039】
また、ドアトリム10を構成するメインボード10Aの車外側の壁面には、プルハンドルボックス30の側面に接触可能な支持リブ19が突設されている。これにより、プルハンドルボックス30が車室内側への力を受けて変位しようとしたときに、その側面が支持リブ19によって支持されるから、プルハンドルボックス30は確実に正しい姿勢に保持される。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、ドアインナパネル20の車室内側の面に取り付けられた金属製のブラケット21の取付孔23およびメインボード10Aの車外側の壁面に突設形成された取付座16の係合孔17に、プルハンドルボックス30の係合爪32が挿入されて係合する。
【0041】
このとき、金属製のブラケット21により、プルハンドルボックス30に常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保される。また、プルハンドルボックス30と同時成形により一体に形成された係合爪32は合成樹脂製であり、金属製のブラケット21に比べて柔らかいので、側突時には、係合爪32がブラケット21の取付孔23によって容易に損壊される。したがって、常時に作用する荷重に対して十分な支持力が確保された上で、側突時に乗員に与える衝撃を低減することが可能となる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
(1)上記実施形態では、プルハンドルボックス30は、金属製のブラケット21だけでなくメインボード10Aの取付座16にも取り付けられるようになっているが、これに限らず、ブラケットのみに取り付けるようにしてもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、爪部33は車室内側へ向けて突出しているが、これに限らず、爪部33はいずれの方向へ突出していてもよく、例えば、車外側、車両前側、または後側へ向けて突出していてもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、係合爪32には、ガタツキ防止リブ34が設けられてプルハンドルボックス30がアームレスト部11に対してガタツキなく取り付けられているが、これに限らず、多少ガタツキを許容する場合や他にガタツキ防止手段を設ける場合等にはガタツキ防止リブを設けなくてもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、ガタツキ防止リブ34は、係合爪32の背面に設けられているが、これに限らず、係合爪の側面のうちいずれの面に設けてもプルハンドルボックスのガタツキを抑えることは可能である。
【0047】
(5)上記実施形態では、ブラケット21の車室内側の端部21Bが上方に屈曲され、側突時の衝撃エネルギーを吸収しているが、これに限らず、例えば取付座16が設けられてない場合には、下方に屈曲するようにしてもよい。
【0048】
(6)上記実施形態では、メインボード10Aの車外側の壁面に支持リブ19が一体的に突設され、プルハンドルボックス30は確実に正しい姿勢に保持されるが、必ずしも支持リブは設けられていなくてもよい。
【0049】
(7)上記実施形態では、係合爪32は、その下端部に車室内側へ向けて突出する爪部33が形成された形状とされているが、これに限らず、係合爪は取付孔に係合可能な形状であればどのような形状であってもよく、例えば、図5に示す係合爪40のように、爪部41が一対もしくは全周にわたって形成された形状のものでもよく(変形例1)、また、図6に示す係合爪50のように、下端部に爪部51が形成された一対の弾性脚片52からなるものでもあってもよい(変形例2)。
(8)上記実施形態では、取付座16の係合孔17にフランジ部18が設けられ、かつブラケット21の取付孔23にフランジ23aが形成されているが、これに限らず、例えば、図7に示すように、取付座60の係合孔61のみにフランジ部62が設けられていてもよく(変形例3)、また、図8に示すように、ブラケット70の取付孔71のみにフランジ72が形成されていてもよい(変形例4)。
(9)上記実施形態では、フランジ部18は下方に向けて屈曲した形状をされているが、これに限らず、例えば、図9に示すように、フランジ部80は、下方に向けて屈曲した後、さらに係合爪側に屈曲した形状とされていてもよい(変形例5)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態における車両用ドアトリムの斜視図
【図2】車両用ドアトリムの断面図
【図3】係合爪を下方から見た斜視図
【図4】係合爪が破断した様子を示す概念図
【図5】変形例1に係る係合爪の形状を表す断面図
【図6】変形例2に係る係合爪の形状を表す断面図
【図7】変形例3に係るフランジ部の形状を表す断面図
【図8】変形例4に係るフランジの形状を表す断面図
【図9】変形例5に係るフランジ部の形状を表す断面図
【符号の説明】
【0051】
10…車両用ドアトリム
10A…メインボード
11…アームレスト部
16…取付座
17…係合孔
18…フランジ部
19…支持リブ
20…ドアインナパネル
21…ブラケット
21B…ブラケットの車室内側の端部
23…取付孔
30…プルハンドルボックス
32…係合爪
33…爪部
34…ガタツキ防止リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側に張り出すように形成されたアームレスト部に上方が開口した容器形状のプルハンドルボックスが取り付けられている車両用ドアトリムであって、
前記プルハンドルボックスは、ドアインナパネルの車室内側の面に設けられた金属製のブラケットに固定されており、
前記プルハンドルボックスの下面には、前記ブラケットに設けられた取付孔に挿入されて係合する係合爪が設けられ、
前記プルハンドルボックスと前記係合爪とが合成樹脂により一体に形成されていることを特徴とする、車両用ドアトリム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアトリムであって、
前記プルハンドルボックスを取り付けることのできる取付座がドアトリムを構成するメインボードの車外側の壁面に対して一体的に設けられていることを特徴とする、車両用ドアトリム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用ドアトリムであって、
前記係合爪に形成されている爪部は、車室内側へ向けて突出する形状であることを特徴とする、車両用ドアトリム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の車両用ドアトリムであって、
前記係合爪には、前記係合爪が前記取付孔に挿入されたときにその少なくとも一部が潰れることで前記取付孔に対する前記係合爪のガタツキを防止することのできるガタツキ防止リブが設けられていることを特徴とする、車両用ドアトリム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用ドアトリムであって、
前記ブラケットの車室内側の端部が上方もしくは下方に屈曲していることを特徴とする、車両用ドアトリム。
【請求項6】
請求項2から請求項5のうちいずれか1項に記載の車両用ドアトリムであって、
前記取付座には、前記係合爪が挿入されて係合する係合孔が設けられており、
前記係合孔の車室内側の孔縁部には、下方に向けて屈曲するフランジ部が設けられていることを特徴とする、車両用ドアトリム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の車両用ドアトリムであって、
ドアトリムを構成するメインボードの車外側の壁面には、前記プルハンドルボックスの側面に接触可能な支持リブが突設されていることを特徴とする、車両用ドアトリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−195340(P2008−195340A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35197(P2007−35197)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】