車両用ドアハンドルのストッパ構造
【課題】車両が左右両側方の何れの方向から衝撃を受けてもドアの開きを確実に阻止することができる車両用ドアハンドルのストッパ構造を提供すること。
【解決手段】アウタパネル7に取り付けられたケース部11の挿通孔11aにグリップ部の他端に突設されたアーム部10を出没可能に挿通させ、アーム部10がケース部11から引き出される動作に連動してドアラッチ4による施錠を解除するクランク14をケース部11に回動可能に設けて成る車両用ドアハンドル3のストッパ構造を、アーム部10にストッパ部材12を支軸13によって揺動可能に支持し、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときにはストッパ部材12の一端がケース部11に係合してアーム部10の動きを規制し、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときにはクランク14がストッパ部材12の支軸13に係合して該クランク14の回動を規制するよう構成する。
【解決手段】アウタパネル7に取り付けられたケース部11の挿通孔11aにグリップ部の他端に突設されたアーム部10を出没可能に挿通させ、アーム部10がケース部11から引き出される動作に連動してドアラッチ4による施錠を解除するクランク14をケース部11に回動可能に設けて成る車両用ドアハンドル3のストッパ構造を、アーム部10にストッパ部材12を支軸13によって揺動可能に支持し、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときにはストッパ部材12の一端がケース部11に係合してアーム部10の動きを規制し、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときにはクランク14がストッパ部材12の支軸13に係合して該クランク14の回動を規制するよう構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が側方から衝撃荷重を受けた場合にドアハンドルの開方向への動きを阻止するようにした車両用ドアハンドルのストッパ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアを開閉するためのドアハンドルは、これを把持して操作することによってリンク機構を介してドアラッチを解除する機能を果たすが、その一例を図11及び図12に示す。
【0003】
即ち、図11及び図12はドアハンドル103を備える車両の右側ドア102の部分正断面図であり、ドア102は板金のプレス成形品であるインナパネル106とアウタパネル107とで中空構造として構成されており、アウタパネル107の外面上部にはドアハンドル103が一端を中心として回動可能に支持されている。このドアハンドル103の他端にはアーム部110が車両内側に向かって突設されており、このアーム部110はアウタパネル107の外面に取り付けられたケース部111及びアウタパネル107を貫通してドア102の内部に入り込んでいる。
【0004】
又、ドア102の内部のドアハンドル103のアーム部110近傍にはL字状のクランク114が軸115によって回動可能に軸支されており、該クランク114の一端はドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに係合している。
【0005】
他方、ドア102の内部のクランク114の下方には、不図示のドアストライカと係合することによってドア102の閉じ状態を維持してドア102の開閉をロック(本明細書では、ドアが閉じた状態でドアラッチとドアストライカとが係合していることを示す)するためのドアラッチ104が収容されており、前記クランク114の他端は上下方向に配された連結ロッド105によってドアラッチ104のオープンレバー104aに連結されている。つまり、ドアハンドル103の動きをL字状のクランク114によって連結ロッド105の上下方向の動きに変換し、この連結ロッド105の上下方向の動きでオープンレバー104aがドアラッチ104とドアストライカとの係合を解除する位置(下位置)とロックする位置(上位置)を移動する構成となっている。尚、図示しないが、クランク114は軸115に巻装されたコイルスプリングによって図11及び図12の反時計方向に付勢されており、この付勢によってクランク114の一端はドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに係合してアーム部110をドア102の内部に引き込む方向に作用し、クランク114の他端に連結された連結ロッド105は上方(ドアラッチ104をロックさせる方向)に付勢されている。
【0006】
而して、図11に示すようにドア102が閉じている状態では、クランク114の一端がドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに係合して該アーム部110をドア102の内部に引き込むとともに、クランク114の他端に連結された連結ロッド105が上方に付勢されているためにドアラッチ104がドア102のロック状態を維持しているため、閉じられたドア102はドアラッチとドアストライカとが係合している状態にあって開くことがない。
【0007】
上記状態から操作者がドアハンドル103を操作して図12に示すように該ドアハンドル103を図示矢印方向に引くと、該ドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに一端が係合するクランク114が不図示のコイルスプリングの付勢力に抗して軸115を中心として図示矢印方向(時計方向)に回動するため、該クランク114の他端に連結された連結ロッド105が下方(図示矢印方向)に押し込まれてドアラッチ104のオープンレバー104aを矢印方向(反時計方向)に回動させるため、ドアラッチ104によるドア102のロックが解除され、ドア102を開くことができる。
【0008】
ところで、図11に示すようにドア102がロック状態にあるときに車両が左側方(図11では車室内方向)から衝撃荷重F1を受けて車両が急激に横に移動した場合、クランク114にはその重心に矢印方向(車室内方向)の慣性力f1が作用するため、該クランク114が軸115を中心として図11の時計方向に回動して連結ロッド105を押し下げるため、ドアラッチ104によるドア102のロックが解除されてドア102が意に反して開いてしまうという問題が発生する。
【0009】
又、車両が右側方(車室外方向)から衝撃荷重F2を受けて車両が急激に横に移動した場合、ドアハンドル103には図12に示すようにこれを引く方向(図示矢印方向)の慣性力f2が作用するため、ドアハンドル103を操作してドア102を開くときと同様の動きとなってドア102が意に反して開いてしまうという問題が発生する。
【0010】
上記問題を解決するための手段が今までに種々提案されており、例えば特許文献1には、ドアハンドルが横Gを受けると揺動するハンドルレバーを設け、所定値以上の横Gが作用したときにハンドルレバーが揺動してドアハンドルに係合し、該ドアハンドルのドア開き方向の動きを阻止するようにした構成が提案されている。
【0011】
又、特許文献2には、ドアハンドルの所定位置に回転部材を揺動可能に配置し、車両が側方から衝撃荷重を受けると前記回転部材が回動して係合部に係合することによって、ドアハンドルのドア開き方向の動きを阻止するようにした自動ロッキング装置が提案されている。
【0012】
更に、特許文献3には、カウンタウェイトが設けられたクランクにストッパを設け、車両が側方から衝撃荷重を受けるとクランクが慣性力によって回転してドアハンドルのアーム部に当接し、ドアハンドルのドア開き方向の動きを阻止するようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−144394号公報
【特許文献2】特開平10−018664号公報
【特許文献3】特開2003−013630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、特許文献1,2において提案された構成は、車両が特定の方向(左右両側方の何れか一方)から衝撃を受けた場合にしか有効ではなく、他方向から衝撃荷重を受けた場合にはドアの開きを阻止することができないという問題がある。
【0015】
これに対して特許文献3において提案された構成では、車両が左右何れの方向から衝撃を受けた場合であってもドアの開きを阻止することができるが、クランクに或る程度の大きさのカウンタウェイトを設ける必要があり、このカウントウェイトが回動するための余分なスペースを要するためにコンパクト化が困難であるという問題がある。
【0016】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車両が左右両側方の何れの方向から衝撃を受けても、簡単な構成でドアの開きを確実に阻止することができる車両用ドアハンドルのストッパ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、操作者が把持するグリップ部の一端をベース部を介してドアパネルに回動可能に支持し、前記ドアパネルに取り付けられたケース部の挿通孔に前記グリップ部の他端に突設されたアーム部を出没可能に挿通させ、前記アーム部が前記ケース部から引き出される動作に連動してドアラッチによる施錠を解除するクランクを前記ケース部に回動可能に設けて成る車両用ドアハンドルのストッパ構造を、前記アーム部にストッパ部材を支軸によって揺動可能に支持し、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときには前記ストッパ部材の一端が前記ケース部に係合して前記アーム部の動きを規制し、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときには前記クランクが前記ストッパ部材の支軸に係合して該クランクの回動を規制するよう構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アーム部に前記クランクが挿入されてその一端が係合する係合孔を形成し、該係合孔内に前記ストッパ部材を配置したことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ストッパ部材の下端に錘を取り付け、該ストッパ部材を前記ケース部から離れる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ストッパ部材の一端が係合するストッパ受け部を前記ケース部の前記アーム部の挿通孔の下方に設け、前記ストッパ受け部を前記挿通孔に近づくほど車両外側方に向かう斜面で構成し、該斜面に前記ストッパ部材が係合したときに前記ストッパ部材と斜面の成す角度が鋭角となるよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときにはストッパ部材がこれに作用する慣性力によって揺動し、その一端がケース部に係合してアーム部の動きが規制され、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときにはクランクがストッパ部材の支軸に係合して該クランクの回動が規制されるため、ストッパ部材をドアハンドルのアーム部に設けるだけの簡単な構成によって、車両が左右両側方の何れの方向から衝撃を受けてもドアの開きを確実に阻止することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、ドアハンドルのアーム部に形成された係合孔内の空間を利用してストッパ部材の一部を収容することができるとともに、挿通孔(アーム部が挿通する孔)が形成されたケース部を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。尚、ストッパ部材をアーム部の係合孔の両側で揺動可能に両持ち状態で支持すれば、該ストッパ部材が力を受ける上で有利な構成とすることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、ストッパ部材の下端に錘を取り付け、該ストッパ部材を付勢手段によってケース部から離れる方向に付勢したため、車両が側方から衝撃荷重を受けた際にストッパ部材に作用する慣性力が大きくなり、該ストッパ部材が確実に揺動してケース部に係合し、これによってドアハンドル(アーム部)の動きが規制されてドアラッチによる施錠解除を阻止してドアの開きを一層確実に阻止することができる。又、必要作動時以外のストッパ部材の位置が安定し、車両が側方から衝撃荷重を受けない通常時にストッパ部材が不用意に動作してドアの開きを阻止するという不具合の発生が防がれる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、車両が側方から衝撃荷重を受けてストッパ部材が揺動する際、該ストッパ部材とストッパ受け部の斜面の成す角度が鋭角となるため、該ストッパ部材はケース部に形成されたストッパ受け部の斜面に沿って移動してその当接部をケース部の挿通孔に近づけることができ、ドアハンドル(アーム部)の引き出し方向の力をストッパ受けによって効率良く受け止めることができ、ドアハンドル(アーム部)の動きを規制してドアの開きを確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両の右側面図である。
【図2】車両の右側前部のドアの側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB部拡大詳細図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】図5のD部拡大詳細図である。
【図7】車両が右側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図である。
【図8】図7のE部拡大詳細図である。
【図9】車両が左側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図である。
【図10】図9のF部拡大詳細図である。
【図11】従来のドアハンドルを備える車両の右側ドアの部分正断面図(ドア閉状態)である。
【図12】従来のドアハンドルを備える車両の右側ドアの部分正断面図(ドア開動作状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は車両(乗用車)の右側面図、図2は同車両の右側前部のドアの側面図であり、図1に示す車両1の左右両側部の前後には開閉可能な計4枚のドア2が設けられており(図1には右側のもののみ図示)、これらのドア2はその外面に設けられたドアハンドル3を操作することによって開かれる。以下、右側のドアでの本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
ここで、右側前部のドア2を図2に示すが、該ドア2に設けられたドアハンドル3は、ドア2の内部に収容されたドアラッチ(車体のドア用の開口周縁に設けられたドアストライカと係合することでドアの閉じ状態を維持するドアロック装置)4に連結ロッド5を介して連結されており、このドアハンドル3を車外側に引き出す動作に連動して連結ロッド5が下方に押し込まれ、ドアラッチ4によるドア2の閉じ状態(ドアロック)が解除されるためにドア2を開くことができる。尚、他のドア2についても同様にドアハンドル3を操作することによって開くことができる。
【0029】
次に、ドアハンドル3の構成の詳細を図3〜図6に基づいて以下に説明する。
【0030】
図3は図2のA−A線断面図、図4は図3のB部拡大詳細図、図5は図2のC−C線断面図、図6は図5のD部拡大詳細図である。
【0031】
図3に示すように、ドア2は板金のプレス成形品であるインナパネル6とアウタパネル7の周縁を接合することによって中空構造として構成されており、アウタパネル7の外面上部にはドアハンドル3が一端(前端)を中心として回動可能に支持されている。具体的には、図5に示すように、ドアハンドル3は、操作者が把持するグリップ部3aの一端(前端)がアウタパネル7に取り付けられたベース部8に軸9によってアウタパネル7に回動可能に支持されており、グリップ部3aの他端(後端)にはアーム部10が車幅方向内側(左側)に向かって直角に突設されている。
【0032】
一方、ベース部8の取付箇所の後方となるアウタパネル7の位置にはケース部11が取り付けられるケース取付孔が形成され、当該部位にケース部11の一部がドア2の内部に露出するようにケース部11が取り付けられており、図4及び図6に詳細に示すように、該ケース部11にはドアハンドル3の前記アーム部10が挿通するための挿通孔11aが貫設されている。挿通孔11aはアウタパネル7の前記ケース取付孔の位置に配置され、ドアハンドル3の前記アーム部10は前記挿通孔11a及び前記ケース取付孔を貫通してドア2の内部に突出配置されている。ここで、前記挿通孔11aを貫通してドア2の内部に突出するドアハンドル3のアーム部10には、図4及び図5に示すように矩形の係合孔10aが上下方向に貫設されており、この係合孔10a内にはストッパ部材12がその上端を支軸13によって係合孔10aの内面に支持されることによって揺動可能に設けられている。具体的には、図6に詳細に示すように、アーム部10の係合孔10aの相対向する両側には係合孔10aの上方の開口縁から下方に延びる取付溝10bがそれぞれ形成されており、これらの取付溝10bにはストッパ部材12の上端に左右に延びるように形成された支軸13の両端が入り込み、取付溝10bによってストッパ部材12の上端(支軸13)が回動可能に支持されている。尚、ストッパ部材12の係合孔10a内への取り付けはこれに限定されず、例えば軸とそれが挿入される軸孔で回動可能に支持しても良い。又、ストッパ部材12の下端には図3及び図4に示すように錘12aが設けられている。更に、ストッパ部材12の下端は、支軸13に巻装された不図示のコイルスプリング(付勢手段)によってケース部11から離れる方向に付勢されており、図3に示すようにドア2が閉じているときには垂直に垂れ下がる状態を維持している。これによって、不要なときにストッパ部材12が作動することがなくなり、不具合の発生を防止することができる。尚、図5に示すように、アウタパネル7には、ドアハンドル3との間に操作者が手を差し込むための空間を確保するための凹部7aが形成されている。
【0033】
又、図3及び図4に示すように、ドア2の内部にはL字状に屈曲するクランク14がアーム部10の上方に配置され軸15によってケース部11に回動可能に支持されて収容されており、このクランク14は、軸15に巻装された不図示のコイルスプリングによって軸15を中心として図3の反時計方向に付勢されている。このようにクランク14がコイルスプリングによって付勢されているため、ドアハンドル3のアーム部10に形成された係合孔10a内に収容されて係合孔10aのアーム部10の先端側内面に係合しているクランク14の一端によって、ドアハンドル3はアーム部10がドア2の内部に引き込まれる方向に付勢されている。
【0034】
而して、ドア2が閉じられている図3に示す状態では、ドアハンドル3はそのアーム部10がドア2の内部に引き込まれた状態を維持しており、ストッパ部材12は前述のように垂直に垂れ下がった状態を維持している。
【0035】
又、図3及び図4に示すように、ケース部11にはストッパ部材12の下端が係合するストッパ受け部11bが挿通孔11aの下方でアウタパネル7のケース取付孔からドア2の内部に露出する位置に形成されており、このストッパ受け部11bは、挿通孔11aに近づくほど車両1の外側方に向かう斜面で構成されている。
【0036】
他方、ドア2の内部のクランク14の下方にはドア2の開閉をロックするための前記ドアラッチ(ドアロック機構)4が収容されており、クランク14の他端は上下方向に配された前記連結ロッド5を介してドアラッチ4のオープンレバー4aに連結されている。ここで、前述のようにクランク14は不図示のコイルスプリングによって図3の反時計方向に付勢されているため、図3に示すようにドア2が閉じられている状態では連結ロッド5はクランク14によって上方へと引き上げられており、ドアラッチ4は不図示のドアストライカと係合しているロック状態にあり、ドア2の閉じ状態が維持されている。
【0037】
而して、上記状態からドア2を開けるには、操作者がドアハンドル3とアウタパネル7の凹部7aとの空間(図5参照)に手を差し込んでドアハンドル3のグリップ部3aを把持し、ドアハンドル3を車外側に引けば、該ドアハンドル3が前端の軸9を中心として回動し、そのアーム部10が図3に破線にて示すように外側方へと引き出される。すると、ドアハンドル3のアーム部10に形成された係合孔10aに一端が係合するクランク14が図3に破線にて示すように軸15を中心として時計方向に回動するため、軸15に対して車両中央側に位置するクランク14の他端に連結された連結ロッド5が押し下げられ、ドアラッチ4のオープンレバー4aが図3に破線にて示すようにドアラッチ4とドアストライカとが係合するロック位置(上位置)から係合を解除する位置(下位置)へと移動するように反時計方向に回動し、ドアラッチ4によるドア2の閉じ状態(ドアロック)が解除されてドア2が開かれる。このとき、ストッパ部材12には何ら外力が作用しないため、該ストッパ部材12は錘12aの作用によって垂れ下がった垂直状態を保ってドアハンドル3の開き動作を阻害することがない。特に本実施の形態では、ストッパ部材12が不図示のコイルスプリングによってケース部11から遠ざかる方向に付勢されて図3に示す状態を維持するため、ドアハンドル3の開き動作がストッパ部材12によって阻害されることがない。尚、ストッパ部材12の不作動時の位置を安定させるため、係合孔10aの内面にストッパ部材12が当接する位置決め部材を突出形成することもできる。
【0038】
次に、車両1が側方から衝撃荷重を受けたときのドアハンドル3の作用を図7〜図10に基づいて以下に説明する。
【0039】
図7は車両が右側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図、図8は図7のE部拡大詳細図、図9は車両が左側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図、図10は図9のF部拡大詳細図である。
【0040】
車両1が図7に示すように右側方から衝撃荷重F1を受けて車両が急激に横に移動した場合、ストッパ部材12には衝撃加速度に伴う右向きの慣性力f1が作用するため、該ストッパ部材12が支軸13を中心として図7及び図8に示すように時計方向に回動し、その一端(下端)がケース部11側(車両右側方側)に移動してストッパ受け部11bに接近し、この状態でストッパ部材12と同様に衝撃加速度に伴う右向きの慣性力が作用するドアハンドル3(アーム部10)の引き出される方向の動きによって、ストッパ部材12の一端(下端)がケース部11に形成されたストッパ受け部11bに係合する。このため、ドアハンドル3(アーム部10)の引き出し方向の動きとクランク14の回動が阻止され、連結ロッド5の動き(下方への押し下げ)も阻止されるため、ドアラッチ4による閉じ状態(ドアロック)が解除されることがなく、ドア2が意に反して開くという不具合の発生が防がれる。
【0041】
特に、本実施の形態では、ストッパ部材12の下端に錘12aを取り付けたため、該ストッパ部材12に作用する慣性力f1が大きくなり、該ストッパ部材12が確実に揺動してケース部11のストッパ受け部11bに係合し、これによってドアハンドル3(アーム部10)の動きが規制されてドアラッチ4による閉じ状態解除が阻止されてドア2の開きが一層確実に防がれる。
【0042】
又、本実施の形態では、ケース部11に形成されたストッパ受け部11bを挿通孔11aに近づくほど車両外側方に向かう斜面で構成したため、ストッパ部材12はストッパ受け部11bの斜面に沿ってケース部11の挿通孔11aに近づくようにガイドさせることができる。つまり、図8に示すように、該ストッパ部材12とストッパ受け部11bの斜面の成す角度αが鋭角となるため、ストッパ部材12の当接部が挿通孔11aに近づくようにガイドされ、挿通孔11a付近のストッパ受け部11bと当接してドアハンドル3(アーム部10)の引き出しを阻止するため、ストッパ部材12を引き出し方向に略沿った姿勢で作用させることが可能となって、ドアハンドル3(アーム部10)の引き出し方向の力をストッパ受け11bによって効率良く受け止めることができ、ドアハンドル3(アーム部10)の動きを規制してドア2の開きを確実に阻止することができる。
【0043】
他方、車両1が図9に示すように左側方から衝撃荷重F2を受けて車両が急激に横に移動した場合、クランク14の重心には衝撃加速度に伴う左向きの慣性力f2が作用するため、該クランク14は軸15を中心として時計方向(連結ロッド5を押し下げてドアラッチ4のドアストライカとの係合によるドア2の閉じ状態を解除する方向)に回動しようとする。然るに、このときドアハンドル3はクランク14と同様に衝撃加速度に伴う左向きの慣性力が作用するがドアハンドル3のアーム部10をドア2内に押し込む方向の動きとなるために不動であって、該ドアハンドル3のアーム部10に取り付けられたストッパ部材12の支軸13位置も不動であるため、図9及び図10に示すように、慣性力f2によって回動しようとするクランク14はその一部(係合孔10aに挿入されているクランク14の一端)がストッパ部材12の支軸13に当接又は係合して回動が阻止される。このため、連結ロッド5の動き(下方への押し下げ)も阻止されるため、ドアラッチ4のドアストライカとの係合による閉じ状態(ドアロック)が解除されることがなく、ドア2が意に反して開くという不具合の発生が防がれる。尚、クランク14のストッパ部材12との当接部に突起等係合構造を設けて、クランク14とストッパ部材12との当接又は係合を安定させて、クランク14の回動を確実に阻止させることもできる。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、ストッパ部材12をドアハンドル3のアーム部10に設けるだけの簡単な構成によって、車両1が左右両側方の何れの方向から衝撃荷重を受けてもドア2の開きを確実に阻止することができるが、本実施の形態では、ドアハンドル3のアーム部10に形成された係合孔10a内の空間を利用してストッパ部材12の一部を収容するようにしたため、挿通孔(アーム部10が挿通する孔)11aが形成されたケース部11を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0045】
又、本実施の形態では、ストッパ部材12を支軸13によってアーム部10の係合孔10aの両側で揺動可能に両持ち状態で支持したため、該ストッパ部材12が力を受ける上で有利な構成とすることができるという効果も得られる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2 ドア
3 ドアハンドル
3a ドアハンドルのグリップ部
4 ドアラッチ
5 連結ロッド
8 ベース部
10 アーム部
10a アーム部の係合孔
10b アーム部の取付溝
11 ケース部
11a ケース部の挿通孔
11b ケース部のストッパ受け
12 ストッパ部材
13 支軸
14 クランク
F1,F2 衝撃荷重
f1,f2 慣性力
α ストッパ部材とストッパ受け部の斜面の成す角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が側方から衝撃荷重を受けた場合にドアハンドルの開方向への動きを阻止するようにした車両用ドアハンドルのストッパ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアを開閉するためのドアハンドルは、これを把持して操作することによってリンク機構を介してドアラッチを解除する機能を果たすが、その一例を図11及び図12に示す。
【0003】
即ち、図11及び図12はドアハンドル103を備える車両の右側ドア102の部分正断面図であり、ドア102は板金のプレス成形品であるインナパネル106とアウタパネル107とで中空構造として構成されており、アウタパネル107の外面上部にはドアハンドル103が一端を中心として回動可能に支持されている。このドアハンドル103の他端にはアーム部110が車両内側に向かって突設されており、このアーム部110はアウタパネル107の外面に取り付けられたケース部111及びアウタパネル107を貫通してドア102の内部に入り込んでいる。
【0004】
又、ドア102の内部のドアハンドル103のアーム部110近傍にはL字状のクランク114が軸115によって回動可能に軸支されており、該クランク114の一端はドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに係合している。
【0005】
他方、ドア102の内部のクランク114の下方には、不図示のドアストライカと係合することによってドア102の閉じ状態を維持してドア102の開閉をロック(本明細書では、ドアが閉じた状態でドアラッチとドアストライカとが係合していることを示す)するためのドアラッチ104が収容されており、前記クランク114の他端は上下方向に配された連結ロッド105によってドアラッチ104のオープンレバー104aに連結されている。つまり、ドアハンドル103の動きをL字状のクランク114によって連結ロッド105の上下方向の動きに変換し、この連結ロッド105の上下方向の動きでオープンレバー104aがドアラッチ104とドアストライカとの係合を解除する位置(下位置)とロックする位置(上位置)を移動する構成となっている。尚、図示しないが、クランク114は軸115に巻装されたコイルスプリングによって図11及び図12の反時計方向に付勢されており、この付勢によってクランク114の一端はドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに係合してアーム部110をドア102の内部に引き込む方向に作用し、クランク114の他端に連結された連結ロッド105は上方(ドアラッチ104をロックさせる方向)に付勢されている。
【0006】
而して、図11に示すようにドア102が閉じている状態では、クランク114の一端がドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに係合して該アーム部110をドア102の内部に引き込むとともに、クランク114の他端に連結された連結ロッド105が上方に付勢されているためにドアラッチ104がドア102のロック状態を維持しているため、閉じられたドア102はドアラッチとドアストライカとが係合している状態にあって開くことがない。
【0007】
上記状態から操作者がドアハンドル103を操作して図12に示すように該ドアハンドル103を図示矢印方向に引くと、該ドアハンドル103のアーム部110に形成された係合孔110aに一端が係合するクランク114が不図示のコイルスプリングの付勢力に抗して軸115を中心として図示矢印方向(時計方向)に回動するため、該クランク114の他端に連結された連結ロッド105が下方(図示矢印方向)に押し込まれてドアラッチ104のオープンレバー104aを矢印方向(反時計方向)に回動させるため、ドアラッチ104によるドア102のロックが解除され、ドア102を開くことができる。
【0008】
ところで、図11に示すようにドア102がロック状態にあるときに車両が左側方(図11では車室内方向)から衝撃荷重F1を受けて車両が急激に横に移動した場合、クランク114にはその重心に矢印方向(車室内方向)の慣性力f1が作用するため、該クランク114が軸115を中心として図11の時計方向に回動して連結ロッド105を押し下げるため、ドアラッチ104によるドア102のロックが解除されてドア102が意に反して開いてしまうという問題が発生する。
【0009】
又、車両が右側方(車室外方向)から衝撃荷重F2を受けて車両が急激に横に移動した場合、ドアハンドル103には図12に示すようにこれを引く方向(図示矢印方向)の慣性力f2が作用するため、ドアハンドル103を操作してドア102を開くときと同様の動きとなってドア102が意に反して開いてしまうという問題が発生する。
【0010】
上記問題を解決するための手段が今までに種々提案されており、例えば特許文献1には、ドアハンドルが横Gを受けると揺動するハンドルレバーを設け、所定値以上の横Gが作用したときにハンドルレバーが揺動してドアハンドルに係合し、該ドアハンドルのドア開き方向の動きを阻止するようにした構成が提案されている。
【0011】
又、特許文献2には、ドアハンドルの所定位置に回転部材を揺動可能に配置し、車両が側方から衝撃荷重を受けると前記回転部材が回動して係合部に係合することによって、ドアハンドルのドア開き方向の動きを阻止するようにした自動ロッキング装置が提案されている。
【0012】
更に、特許文献3には、カウンタウェイトが設けられたクランクにストッパを設け、車両が側方から衝撃荷重を受けるとクランクが慣性力によって回転してドアハンドルのアーム部に当接し、ドアハンドルのドア開き方向の動きを阻止するようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−144394号公報
【特許文献2】特開平10−018664号公報
【特許文献3】特開2003−013630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、特許文献1,2において提案された構成は、車両が特定の方向(左右両側方の何れか一方)から衝撃を受けた場合にしか有効ではなく、他方向から衝撃荷重を受けた場合にはドアの開きを阻止することができないという問題がある。
【0015】
これに対して特許文献3において提案された構成では、車両が左右何れの方向から衝撃を受けた場合であってもドアの開きを阻止することができるが、クランクに或る程度の大きさのカウンタウェイトを設ける必要があり、このカウントウェイトが回動するための余分なスペースを要するためにコンパクト化が困難であるという問題がある。
【0016】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車両が左右両側方の何れの方向から衝撃を受けても、簡単な構成でドアの開きを確実に阻止することができる車両用ドアハンドルのストッパ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、操作者が把持するグリップ部の一端をベース部を介してドアパネルに回動可能に支持し、前記ドアパネルに取り付けられたケース部の挿通孔に前記グリップ部の他端に突設されたアーム部を出没可能に挿通させ、前記アーム部が前記ケース部から引き出される動作に連動してドアラッチによる施錠を解除するクランクを前記ケース部に回動可能に設けて成る車両用ドアハンドルのストッパ構造を、前記アーム部にストッパ部材を支軸によって揺動可能に支持し、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときには前記ストッパ部材の一端が前記ケース部に係合して前記アーム部の動きを規制し、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときには前記クランクが前記ストッパ部材の支軸に係合して該クランクの回動を規制するよう構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アーム部に前記クランクが挿入されてその一端が係合する係合孔を形成し、該係合孔内に前記ストッパ部材を配置したことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ストッパ部材の下端に錘を取り付け、該ストッパ部材を前記ケース部から離れる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ストッパ部材の一端が係合するストッパ受け部を前記ケース部の前記アーム部の挿通孔の下方に設け、前記ストッパ受け部を前記挿通孔に近づくほど車両外側方に向かう斜面で構成し、該斜面に前記ストッパ部材が係合したときに前記ストッパ部材と斜面の成す角度が鋭角となるよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときにはストッパ部材がこれに作用する慣性力によって揺動し、その一端がケース部に係合してアーム部の動きが規制され、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときにはクランクがストッパ部材の支軸に係合して該クランクの回動が規制されるため、ストッパ部材をドアハンドルのアーム部に設けるだけの簡単な構成によって、車両が左右両側方の何れの方向から衝撃を受けてもドアの開きを確実に阻止することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、ドアハンドルのアーム部に形成された係合孔内の空間を利用してストッパ部材の一部を収容することができるとともに、挿通孔(アーム部が挿通する孔)が形成されたケース部を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。尚、ストッパ部材をアーム部の係合孔の両側で揺動可能に両持ち状態で支持すれば、該ストッパ部材が力を受ける上で有利な構成とすることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、ストッパ部材の下端に錘を取り付け、該ストッパ部材を付勢手段によってケース部から離れる方向に付勢したため、車両が側方から衝撃荷重を受けた際にストッパ部材に作用する慣性力が大きくなり、該ストッパ部材が確実に揺動してケース部に係合し、これによってドアハンドル(アーム部)の動きが規制されてドアラッチによる施錠解除を阻止してドアの開きを一層確実に阻止することができる。又、必要作動時以外のストッパ部材の位置が安定し、車両が側方から衝撃荷重を受けない通常時にストッパ部材が不用意に動作してドアの開きを阻止するという不具合の発生が防がれる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、車両が側方から衝撃荷重を受けてストッパ部材が揺動する際、該ストッパ部材とストッパ受け部の斜面の成す角度が鋭角となるため、該ストッパ部材はケース部に形成されたストッパ受け部の斜面に沿って移動してその当接部をケース部の挿通孔に近づけることができ、ドアハンドル(アーム部)の引き出し方向の力をストッパ受けによって効率良く受け止めることができ、ドアハンドル(アーム部)の動きを規制してドアの開きを確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両の右側面図である。
【図2】車両の右側前部のドアの側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB部拡大詳細図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】図5のD部拡大詳細図である。
【図7】車両が右側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図である。
【図8】図7のE部拡大詳細図である。
【図9】車両が左側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図である。
【図10】図9のF部拡大詳細図である。
【図11】従来のドアハンドルを備える車両の右側ドアの部分正断面図(ドア閉状態)である。
【図12】従来のドアハンドルを備える車両の右側ドアの部分正断面図(ドア開動作状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は車両(乗用車)の右側面図、図2は同車両の右側前部のドアの側面図であり、図1に示す車両1の左右両側部の前後には開閉可能な計4枚のドア2が設けられており(図1には右側のもののみ図示)、これらのドア2はその外面に設けられたドアハンドル3を操作することによって開かれる。以下、右側のドアでの本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
ここで、右側前部のドア2を図2に示すが、該ドア2に設けられたドアハンドル3は、ドア2の内部に収容されたドアラッチ(車体のドア用の開口周縁に設けられたドアストライカと係合することでドアの閉じ状態を維持するドアロック装置)4に連結ロッド5を介して連結されており、このドアハンドル3を車外側に引き出す動作に連動して連結ロッド5が下方に押し込まれ、ドアラッチ4によるドア2の閉じ状態(ドアロック)が解除されるためにドア2を開くことができる。尚、他のドア2についても同様にドアハンドル3を操作することによって開くことができる。
【0029】
次に、ドアハンドル3の構成の詳細を図3〜図6に基づいて以下に説明する。
【0030】
図3は図2のA−A線断面図、図4は図3のB部拡大詳細図、図5は図2のC−C線断面図、図6は図5のD部拡大詳細図である。
【0031】
図3に示すように、ドア2は板金のプレス成形品であるインナパネル6とアウタパネル7の周縁を接合することによって中空構造として構成されており、アウタパネル7の外面上部にはドアハンドル3が一端(前端)を中心として回動可能に支持されている。具体的には、図5に示すように、ドアハンドル3は、操作者が把持するグリップ部3aの一端(前端)がアウタパネル7に取り付けられたベース部8に軸9によってアウタパネル7に回動可能に支持されており、グリップ部3aの他端(後端)にはアーム部10が車幅方向内側(左側)に向かって直角に突設されている。
【0032】
一方、ベース部8の取付箇所の後方となるアウタパネル7の位置にはケース部11が取り付けられるケース取付孔が形成され、当該部位にケース部11の一部がドア2の内部に露出するようにケース部11が取り付けられており、図4及び図6に詳細に示すように、該ケース部11にはドアハンドル3の前記アーム部10が挿通するための挿通孔11aが貫設されている。挿通孔11aはアウタパネル7の前記ケース取付孔の位置に配置され、ドアハンドル3の前記アーム部10は前記挿通孔11a及び前記ケース取付孔を貫通してドア2の内部に突出配置されている。ここで、前記挿通孔11aを貫通してドア2の内部に突出するドアハンドル3のアーム部10には、図4及び図5に示すように矩形の係合孔10aが上下方向に貫設されており、この係合孔10a内にはストッパ部材12がその上端を支軸13によって係合孔10aの内面に支持されることによって揺動可能に設けられている。具体的には、図6に詳細に示すように、アーム部10の係合孔10aの相対向する両側には係合孔10aの上方の開口縁から下方に延びる取付溝10bがそれぞれ形成されており、これらの取付溝10bにはストッパ部材12の上端に左右に延びるように形成された支軸13の両端が入り込み、取付溝10bによってストッパ部材12の上端(支軸13)が回動可能に支持されている。尚、ストッパ部材12の係合孔10a内への取り付けはこれに限定されず、例えば軸とそれが挿入される軸孔で回動可能に支持しても良い。又、ストッパ部材12の下端には図3及び図4に示すように錘12aが設けられている。更に、ストッパ部材12の下端は、支軸13に巻装された不図示のコイルスプリング(付勢手段)によってケース部11から離れる方向に付勢されており、図3に示すようにドア2が閉じているときには垂直に垂れ下がる状態を維持している。これによって、不要なときにストッパ部材12が作動することがなくなり、不具合の発生を防止することができる。尚、図5に示すように、アウタパネル7には、ドアハンドル3との間に操作者が手を差し込むための空間を確保するための凹部7aが形成されている。
【0033】
又、図3及び図4に示すように、ドア2の内部にはL字状に屈曲するクランク14がアーム部10の上方に配置され軸15によってケース部11に回動可能に支持されて収容されており、このクランク14は、軸15に巻装された不図示のコイルスプリングによって軸15を中心として図3の反時計方向に付勢されている。このようにクランク14がコイルスプリングによって付勢されているため、ドアハンドル3のアーム部10に形成された係合孔10a内に収容されて係合孔10aのアーム部10の先端側内面に係合しているクランク14の一端によって、ドアハンドル3はアーム部10がドア2の内部に引き込まれる方向に付勢されている。
【0034】
而して、ドア2が閉じられている図3に示す状態では、ドアハンドル3はそのアーム部10がドア2の内部に引き込まれた状態を維持しており、ストッパ部材12は前述のように垂直に垂れ下がった状態を維持している。
【0035】
又、図3及び図4に示すように、ケース部11にはストッパ部材12の下端が係合するストッパ受け部11bが挿通孔11aの下方でアウタパネル7のケース取付孔からドア2の内部に露出する位置に形成されており、このストッパ受け部11bは、挿通孔11aに近づくほど車両1の外側方に向かう斜面で構成されている。
【0036】
他方、ドア2の内部のクランク14の下方にはドア2の開閉をロックするための前記ドアラッチ(ドアロック機構)4が収容されており、クランク14の他端は上下方向に配された前記連結ロッド5を介してドアラッチ4のオープンレバー4aに連結されている。ここで、前述のようにクランク14は不図示のコイルスプリングによって図3の反時計方向に付勢されているため、図3に示すようにドア2が閉じられている状態では連結ロッド5はクランク14によって上方へと引き上げられており、ドアラッチ4は不図示のドアストライカと係合しているロック状態にあり、ドア2の閉じ状態が維持されている。
【0037】
而して、上記状態からドア2を開けるには、操作者がドアハンドル3とアウタパネル7の凹部7aとの空間(図5参照)に手を差し込んでドアハンドル3のグリップ部3aを把持し、ドアハンドル3を車外側に引けば、該ドアハンドル3が前端の軸9を中心として回動し、そのアーム部10が図3に破線にて示すように外側方へと引き出される。すると、ドアハンドル3のアーム部10に形成された係合孔10aに一端が係合するクランク14が図3に破線にて示すように軸15を中心として時計方向に回動するため、軸15に対して車両中央側に位置するクランク14の他端に連結された連結ロッド5が押し下げられ、ドアラッチ4のオープンレバー4aが図3に破線にて示すようにドアラッチ4とドアストライカとが係合するロック位置(上位置)から係合を解除する位置(下位置)へと移動するように反時計方向に回動し、ドアラッチ4によるドア2の閉じ状態(ドアロック)が解除されてドア2が開かれる。このとき、ストッパ部材12には何ら外力が作用しないため、該ストッパ部材12は錘12aの作用によって垂れ下がった垂直状態を保ってドアハンドル3の開き動作を阻害することがない。特に本実施の形態では、ストッパ部材12が不図示のコイルスプリングによってケース部11から遠ざかる方向に付勢されて図3に示す状態を維持するため、ドアハンドル3の開き動作がストッパ部材12によって阻害されることがない。尚、ストッパ部材12の不作動時の位置を安定させるため、係合孔10aの内面にストッパ部材12が当接する位置決め部材を突出形成することもできる。
【0038】
次に、車両1が側方から衝撃荷重を受けたときのドアハンドル3の作用を図7〜図10に基づいて以下に説明する。
【0039】
図7は車両が右側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図、図8は図7のE部拡大詳細図、図9は車両が左側方から衝撃荷重を受けた場合のドアハンドルの作用を示す図3と同様の図、図10は図9のF部拡大詳細図である。
【0040】
車両1が図7に示すように右側方から衝撃荷重F1を受けて車両が急激に横に移動した場合、ストッパ部材12には衝撃加速度に伴う右向きの慣性力f1が作用するため、該ストッパ部材12が支軸13を中心として図7及び図8に示すように時計方向に回動し、その一端(下端)がケース部11側(車両右側方側)に移動してストッパ受け部11bに接近し、この状態でストッパ部材12と同様に衝撃加速度に伴う右向きの慣性力が作用するドアハンドル3(アーム部10)の引き出される方向の動きによって、ストッパ部材12の一端(下端)がケース部11に形成されたストッパ受け部11bに係合する。このため、ドアハンドル3(アーム部10)の引き出し方向の動きとクランク14の回動が阻止され、連結ロッド5の動き(下方への押し下げ)も阻止されるため、ドアラッチ4による閉じ状態(ドアロック)が解除されることがなく、ドア2が意に反して開くという不具合の発生が防がれる。
【0041】
特に、本実施の形態では、ストッパ部材12の下端に錘12aを取り付けたため、該ストッパ部材12に作用する慣性力f1が大きくなり、該ストッパ部材12が確実に揺動してケース部11のストッパ受け部11bに係合し、これによってドアハンドル3(アーム部10)の動きが規制されてドアラッチ4による閉じ状態解除が阻止されてドア2の開きが一層確実に防がれる。
【0042】
又、本実施の形態では、ケース部11に形成されたストッパ受け部11bを挿通孔11aに近づくほど車両外側方に向かう斜面で構成したため、ストッパ部材12はストッパ受け部11bの斜面に沿ってケース部11の挿通孔11aに近づくようにガイドさせることができる。つまり、図8に示すように、該ストッパ部材12とストッパ受け部11bの斜面の成す角度αが鋭角となるため、ストッパ部材12の当接部が挿通孔11aに近づくようにガイドされ、挿通孔11a付近のストッパ受け部11bと当接してドアハンドル3(アーム部10)の引き出しを阻止するため、ストッパ部材12を引き出し方向に略沿った姿勢で作用させることが可能となって、ドアハンドル3(アーム部10)の引き出し方向の力をストッパ受け11bによって効率良く受け止めることができ、ドアハンドル3(アーム部10)の動きを規制してドア2の開きを確実に阻止することができる。
【0043】
他方、車両1が図9に示すように左側方から衝撃荷重F2を受けて車両が急激に横に移動した場合、クランク14の重心には衝撃加速度に伴う左向きの慣性力f2が作用するため、該クランク14は軸15を中心として時計方向(連結ロッド5を押し下げてドアラッチ4のドアストライカとの係合によるドア2の閉じ状態を解除する方向)に回動しようとする。然るに、このときドアハンドル3はクランク14と同様に衝撃加速度に伴う左向きの慣性力が作用するがドアハンドル3のアーム部10をドア2内に押し込む方向の動きとなるために不動であって、該ドアハンドル3のアーム部10に取り付けられたストッパ部材12の支軸13位置も不動であるため、図9及び図10に示すように、慣性力f2によって回動しようとするクランク14はその一部(係合孔10aに挿入されているクランク14の一端)がストッパ部材12の支軸13に当接又は係合して回動が阻止される。このため、連結ロッド5の動き(下方への押し下げ)も阻止されるため、ドアラッチ4のドアストライカとの係合による閉じ状態(ドアロック)が解除されることがなく、ドア2が意に反して開くという不具合の発生が防がれる。尚、クランク14のストッパ部材12との当接部に突起等係合構造を設けて、クランク14とストッパ部材12との当接又は係合を安定させて、クランク14の回動を確実に阻止させることもできる。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、ストッパ部材12をドアハンドル3のアーム部10に設けるだけの簡単な構成によって、車両1が左右両側方の何れの方向から衝撃荷重を受けてもドア2の開きを確実に阻止することができるが、本実施の形態では、ドアハンドル3のアーム部10に形成された係合孔10a内の空間を利用してストッパ部材12の一部を収容するようにしたため、挿通孔(アーム部10が挿通する孔)11aが形成されたケース部11を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0045】
又、本実施の形態では、ストッパ部材12を支軸13によってアーム部10の係合孔10aの両側で揺動可能に両持ち状態で支持したため、該ストッパ部材12が力を受ける上で有利な構成とすることができるという効果も得られる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2 ドア
3 ドアハンドル
3a ドアハンドルのグリップ部
4 ドアラッチ
5 連結ロッド
8 ベース部
10 アーム部
10a アーム部の係合孔
10b アーム部の取付溝
11 ケース部
11a ケース部の挿通孔
11b ケース部のストッパ受け
12 ストッパ部材
13 支軸
14 クランク
F1,F2 衝撃荷重
f1,f2 慣性力
α ストッパ部材とストッパ受け部の斜面の成す角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が把持するグリップ部の一端をベース部を介してドアパネルに回動可能に支持し、前記ドアパネルに取り付けられたケース部の挿通孔に前記グリップ部の他端に突設されたアーム部を出没可能に挿通させ、前記アーム部が前記ケース部から引き出される動作に連動してドアラッチによる施錠を解除するクランクを前記ケース部に回動可能に設けて成る車両用ドアハンドルのストッパ構造であって、
前記アーム部にストッパ部材を支軸によって揺動可能に支持し、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときには前記ストッパ部材の一端が前記ケース部に係合して前記アーム部の動きを規制し、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときには前記クランクが前記ストッパ部材の支軸に係合して該クランクの回動を規制するよう構成したことを特徴とする車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項2】
前記アーム部に前記クランクが挿入されてその一端が係合する係合孔を形成し、該係合孔内に前記ストッパ部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項3】
前記ストッパ部材の下端に錘を取り付け、該ストッパ部材を前記ケース部から離れる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項4】
前記ストッパ部材の一端が係合するストッパ受け部を前記ケース部の前記アーム部の挿通孔の下方に設け、前記ストッパ受け部を前記挿通孔に近づくほど車両外側方に向かう斜面で構成し、該斜面に前記ストッパ部材が係合したときに前記ストッパ部材と斜面の成す角度が鋭角となるよう構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項1】
操作者が把持するグリップ部の一端をベース部を介してドアパネルに回動可能に支持し、前記ドアパネルに取り付けられたケース部の挿通孔に前記グリップ部の他端に突設されたアーム部を出没可能に挿通させ、前記アーム部が前記ケース部から引き出される動作に連動してドアラッチによる施錠を解除するクランクを前記ケース部に回動可能に設けて成る車両用ドアハンドルのストッパ構造であって、
前記アーム部にストッパ部材を支軸によって揺動可能に支持し、車両が一側方から衝撃荷重を受けたときには前記ストッパ部材の一端が前記ケース部に係合して前記アーム部の動きを規制し、車両が他側方から衝撃荷重を受けたときには前記クランクが前記ストッパ部材の支軸に係合して該クランクの回動を規制するよう構成したことを特徴とする車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項2】
前記アーム部に前記クランクが挿入されてその一端が係合する係合孔を形成し、該係合孔内に前記ストッパ部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項3】
前記ストッパ部材の下端に錘を取り付け、該ストッパ部材を前記ケース部から離れる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【請求項4】
前記ストッパ部材の一端が係合するストッパ受け部を前記ケース部の前記アーム部の挿通孔の下方に設け、前記ストッパ受け部を前記挿通孔に近づくほど車両外側方に向かう斜面で構成し、該斜面に前記ストッパ部材が係合したときに前記ストッパ部材と斜面の成す角度が鋭角となるよう構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアハンドルのストッパ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−21326(P2012−21326A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160183(P2010−160183)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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