説明

車両用ドライブレコーダおよび運行記録システムならびに運行記録制御方法

【課題】運転の開始/終了の都度、各運転者がドライブレコーダに対して記録媒体の装着/取り外しのような特別な操作を行わなくても、複数の運転者のそれぞれを特定可能な情報を自動的に記録可能にする。
【解決手段】各運転者を特定する識別情報が保持された記録媒体220を装着可能な運行記録装置200とドライブレコーダ100との間で通信するための通信インタフェース116と、運行記録装置から受信したカードの識別情報を撮影された画像のデータと対応付けて記録媒体120に記録するマイクロコンピュータ111とをドライブレコーダに設けた。運行記録装置200は、記録媒体220が装着されて記録開始する時と、記録を終了した時に、前記識別情報や記録開始/終了を示す情報などを自動的に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ドライブレコーダおよび運行記録システムならびに運行記録制御方法に関し、特に記録されたデータと運転者とを対応付けるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載することを想定して開発された車両用ドライブレコーダは、車載カメラを備えており、一般的に、交通事故のような異常が発生した時を含む短い時間帯の状況を画像の情報として自動的に記録し保存する。交通事故などの異常発生の有無については、加速度センサなどを用いることにより自動的に識別することが可能である。また、大容量の記憶装置を搭載したドライブレコーダの場合には、車載カメラにより撮影された画像を連続的に常時記録する場合もある。この場合、異常が発生した時に、異常の発生を表す印(フラグ)の情報が画像と共に記録される。
【0003】
このようなドライブレコーダは、自動車の運転中に危険な状況が発生した時や実際に交通事故が発生したような場合には、その時点の前後のタイミングにおける状況を画像として確実に記録することができる。従って、ドライブレコーダによって記録された情報は、事故の状況を調査する際に証拠として利用したり、安全運転の管理や分析のために利用することができる。
【0004】
ところで、例えば自家用車の場合には、その車両の運転者は予め決まった所有者であるかもしくはその家族である場合が多い。従って、その車両に搭載されたドライブレコーダによって記録された情報が表す運転の状況と対応する運転者を容易に特定することが可能である。
【0005】
一方、業務用の車両、例えばタクシー、バス、トラック、レンタカーなどの車両の場合には、各車両の所有者は会社である場合が多い。そして、共通の車両を不特定の多数の運転者が交代で使用する場合が多い。従って、各々の車両に搭載されたドライブレコーダによって記録された情報が表す運転の状況と対応する運転者を特定するのが困難である。
【0006】
そのため、車両を管理している会社等において例えば交通事故などの問題の発生が発覚した場合に、ドライブレコーダで記録された情報に基づいて事故の状況を分析することはできるが、その事故を起こした運転者を特定することができない。
【0007】
ドライブレコーダが記録する情報と特定の運転者とを対応付けるための技術は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1においては、ICカードの内容や免許証の内容を読み取ることにより、運転者を特定するための情報を自動的に取得し、これを記録媒体に記録することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−69434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車両用ドライブレコーダが記録する情報は、例えばメモリカードのように着脱自在な記録媒体に記録されるのが一般的である。従って、予め多数の記録媒体を用意しておき、多数の運転者のそれぞれに1つずつ記録媒体を配布し、それぞれの記録媒体上に特許文献1のICカードの内容のように運転者を特定可能な情報を予め登録しておくことも考えられる。すなわち、各運転者が運転を開始する毎に自身に配布された特定の記録媒体をドライブレコーダに装着するように操作すれば、それぞれの記録媒体に記録される情報と運転者とを対応付けることができる。
【0010】
しかしながら、それぞれの運転者が、運転を開始する前に記録媒体をドライブレコーダに装着し、運転を終了した時に前記記録媒体をドライブレコーダから取り外して持ち帰るような操作を毎日のように繰り返すのは非常に煩わしい。従って、各運転者が運転を開始する前に記録媒体をドライブレコーダに装着するのを忘れたり、運転を終了した時に前記記録媒体をドライブレコーダから取り外すのを忘れたりする可能性も高い。その結果、記録媒体に記録された情報と実際の運転者とが一致しない状況も発生し易いであろうと考えられる。
【0011】
ドライブレコーダが記録する情報については、交通事故などの特別な問題が発生した場合を除き使用されないのが一般的である。従って、このように使用頻度が低い情報を正しく記録するためだけに、運転の開始/終了の都度、運転者がドライブレコーダに対して記録媒体を装着したり取り外すのは非常に面倒な作業になる。また、特許文献1に開示されているように、運転の都度ドライブレコーダに免許証の情報を読み取らせるのも同様に面倒な作業である。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転の開始/終了の都度、各運転者がドライブレコーダに対して記録媒体の装着/取り外しのような特別な操作を行わなくても、複数の運転者のそれぞれを特定可能な情報を自動的に記録可能な車両用ドライブレコーダおよび運行記録システムならびに運行記録制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用ドライブレコーダは、下記(1)〜(2)を特徴としている。
(1) 車載カメラにより撮影された画像のデータを、所定のイベント発生を契機として、もしくは常時、所定の記録媒体に記録する車両用ドライブレコーダであって、
各々の運転者を特定する識別情報が保持されたカードを装着可能な所定の運行記録装置との間で通信が可能な通信部と、
前記運行記録装置に装着されたカードの前記識別情報を、前記通信部を経由して前記運行記録装置から取得し、撮影された画像のデータと対応付けて前記記録媒体に記録する識別情報記録制御部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車両用ドライブレコーダであって、
前記識別情報記録制御部は、前記運行記録装置が記録を開始する時に前記運行記録装置から取得した前記識別情報および運行開始であることを示す情報を記録し、前記運行記録装置が記録を終了する時に前記運行記録装置から取得した前記識別情報および運行終了であることを示す情報を記録する
こと。
【0014】
上記(1)の車両用ドライブレコーダによれば、前記運行記録装置側に装着されるカードに保持されている識別情報を画像のデータと対応付けて自動的に記録することができる。従って、ドライブレコーダが記録したデータを解析する際に、前記識別情報により該当する運転者を特定できる。また、車両用ドライブレコーダの記録媒体については運転者毎に交換する必要がないので煩わしい作業が不要になる。
なお、前記運行記録装置の例としては、例えばデジタルタコグラフが想定できる。この種の運行記録装置は、例えばタクシー、バス、トラックなどの業務用の車両を保有し管理している運輸業の会社が、多数の運転者(乗務員)の個別の運行状況を把握するために必要な情報を収集するために利用されている。ドライブレコーダが記録する情報は問題が発生した時にのみ利用されるが、運行記録装置が記録する情報は日常的に利用されている。また、運行記録装置を利用する場合には、各運転者はそれ自身の乗務員コード(識別情報)が予め登録されたカードを運転を開始する前に運行記録装置に装着し、運転を終了すると前記カードを取り外して持ち帰る。このような操作は、会社に所属する乗務員として業務を行っている以上、日常的に必要不可欠な操作である。従って、前記識別情報を運転者を特定する情報として利用できる。
上記(2)の車両用ドライブレコーダによれば、ドライブレコーダが記録したデータを読み出して解析しようとする場合に、それぞれの運転者が運転を開始した時点と運転を終了した時点を特定できる。従って、記録された画像等のデータを運転者毎に区別して抽出することが可能になる。
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行記録システムは、下記(3)〜(4)を特徴としている。
(3) 車載カメラにより撮影された画像のデータを、所定のイベント発生を契機として、もしくは常時、第1の記録媒体に記録するドライブレコーダと、少なくとも車両のエンジン回転数および車速のデータを時系列データとして第2の記録媒体に記録する運行記録装置とを含む運行記録システムであって、
前記ドライブレコーダと前記運行記録装置との間で通信するための通信部と、
前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時に、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時に、前記第2の記録媒体に登録されている乗務員コードを読み取って前記ドライブレコーダに通知する乗務員コード通知部と、
乗務員コード通知部により通知された前記乗務員コードを前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する乗務員コード記録制御部と
を備えること。
(4) 上記(3)に記載の運行記録システムであって、
前記乗務員コード通知部は、前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時に、前記乗務員コードおよび記録開始を表す情報を前記ドライブレコーダに通知し、前記運行記録装置が記録動作を終了する時には、前記乗務員コードおよび記録終了を表す情報を前記ドライブレコーダに通知し、
前記乗務員コード記録制御部は、乗務員コード通知部により通知された前記乗務員コードおよび記録開始又は記録終了を表す情報を前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する
こと。
【0016】
上記(3)の運行記録システムによれば、前記運行記録装置側に装着される前記第2の記録媒体に保持されている乗務員コードをドライブレコーダ側が受け取って、乗務員コードを画像のデータと対応付けて第1の記録媒体に自動的に記録することができる。従って、ドライブレコーダが第1の記録媒体に記録したデータを解析する際に、前記乗務員コードにより該当する運転者を特定できる。また、ドライブレコーダに装着される第1の記録媒体については運転者毎に交換する必要がないので煩わしい作業が不要になる。
上記(4)の運行記録システムによれば、ドライブレコーダが記録したデータを読み出して解析しようとする場合に、それぞれの運転者が運転を開始した時点と運転を終了した時点を特定できる。従って、記録された画像等のデータを運転者毎に区別して抽出することが可能になる。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行記録制御方法は、下記(5)〜(6)を特徴としている。
(5) 車載カメラにより撮影された画像のデータを、所定のイベント発生を契機として、もしくは常時、第1の記録媒体に記録するドライブレコーダと、少なくとも車両のエンジン回転数および車速のデータを時系列データとして第2の記録媒体に記録する運行記録装置とを含む運行記録システムを制御するための運行記録制御方法であって、
前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時に、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時に、前記第2の記録媒体に登録されている乗務員コードを読み取って前記運行記録装置から前記ドライブレコーダに通知し、
前記ドライブレコーダが前記乗務員コードを受け取った時には、前記乗務員コードを前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する
こと。
(6) 上記(5)に記載の運行記録制御方法であって、
前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時に、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時には、前記第2の記録媒体に登録されている乗務員コードを読み取って、前記乗務員コードと記録開始を示す情報を含む第1の情報を前記運行記録装置から前記ドライブレコーダに通知し、
前記ドライブレコーダが前記第1の情報を受け取った時には、前記乗務員コードと記録開始を示す情報を前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録し、
前記運行記録装置が記録動作を終了する時には、前記乗務員コードと記録終了を示す情報を含む第2の情報を前記運行記録装置から前記ドライブレコーダに通知し、
前記ドライブレコーダが前記第2の情報を受け取った時には、前記乗務員コードと記録終了を示す情報を前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する
こと。
【0018】
上記(5)の運行記録制御方法によれば、前記運行記録装置側に装着される前記第2の記録媒体に保持されている乗務員コードをドライブレコーダ側が受け取って、乗務員コードを画像のデータと対応付けて第1の記録媒体に自動的に記録することができる。従って、ドライブレコーダが第1の記録媒体に記録したデータを解析する際に、前記乗務員コードにより該当する運転者を特定できる。また、ドライブレコーダに装着される第1の記録媒体については運転者毎に交換する必要がないので煩わしい作業が不要になる。
上記(6)の運行記録制御方法によれば、ドライブレコーダが記録したデータを読み出して解析しようとする場合に、それぞれの運転者が運転を開始した時点と運転を終了した時点を特定できる。従って、記録された画像等のデータを運転者毎に区別して抽出することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の車両用ドライブレコーダおよび運行記録システムならびに運行記録制御方法によれば、運転の開始/終了の都度、各運転者がドライブレコーダに対して記録媒体の装着/取り外しのような特別な操作を行わなくても、複数の運転者のそれぞれを特定可能な情報を自動的に記録できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の運行記録システムの主要な動作を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態の運行記録システムの構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示した運行記録システムに関する状態遷移の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の車両用ドライブレコーダおよび運行記録システムならびに運行記録制御方法に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0023】
本実施形態の運行記録システムの構成例が図2に示されている。図2に示すように、この運行記録システムは、ドライブレコーダ100と運行記録装置200とで構成されている。ドライブレコーダ100は、交通事故等の異常が発生した時の状況を表す画像等のデータを自動的に記録する装置である。運行記録装置200は、車両の運行状況に関する情報(車速やエンジン回転数など)を自動的に収集して運転者(乗務員)毎に記録する装置であり、例えばデジタルタコグラフと呼ばれる装置に相当する。
【0024】
図2に示すように、ドライブレコーダ100はドライブレコーダ本体110と車載カメラ131、加速度(G)センサ132、車速センサ133とで構成されている。また、ドライブレコーダ本体110には、マイクロコンピュータ(CPU)111、インタフェース112、113、114、メモリ(SDRAM)115、通信インタフェース116、記録媒体120が備わっている。
【0025】
車載カメラ131は、所定の撮影方向に存在する被写体の像を連続的にもしくは周期的に撮影し、2次元画像のデータを出力することができる。車載カメラ131は、例えば、当該車両を運転する運転者の視野の範囲と同等の領域を撮影できるように位置や方向が決定され車両上に固定される。なお、複数台の車載カメラ131がドライブレコーダ本体110に接続される場合もある。その場合は、複数の車載カメラ131はそれぞれ異なる方向の像を撮影できるように配置される。
【0026】
加速度センサ132は、車両に加わった加速度の大きさを表す電気信号を出力する。この信号は、交通事故のような異常な状態が発生したか否かを識別するために利用される。なお、加速度センサ132はドライブレコーダ本体110に内蔵しても良い。
【0027】
車速センサ133は、車両の移動速度(車速)の検出に利用可能な車速パルス信号を出力する。すなわち、車輪が所定量回転して車両が所定量移動する毎に、1つのパルス信号が車速パルス信号として現れる。この車速パルス信号の発生周期に基づいて車速を算出することができる。
【0028】
マイクロコンピュータ111は、内部のメモリに予め保持されているプログラムを実行することにより、ドライブレコーダとして動作するための所定の機能を実現する。これにより、例えば図1に示すようなドライブレコーダ100の動作が実現する。
【0029】
メモリ115は、一時的に利用されるデータを書き込んだり読み出したりするために利用される。メモリ115は、車載カメラ131の撮影により得られた最新の画像データを一定時間分(例えば10秒間)だけ一時的に保存するためのバッファメモリとしても利用される。
【0030】
通信インタフェース116は、ドライブレコーダ100と運行記録装置200との間のデータ通信を可能にするためのインタフェースである。
【0031】
記録媒体120は、ドライブレコーダ100が記録するデータを保存するために備わっている。現実的な記録媒体120としては、不揮発性のメモリを内蔵したメモリカードを用いることが想定される。記録媒体120は、ドライブレコーダ100に対して着脱自在になっている。
【0032】
つまり、ドライブレコーダ100が記録したデータを解析しようとする場合に、記録媒体120をドライブレコーダ100から取り外して記録されたデータだけを取得することができる。なお、本実施形態においては、後述するように記録媒体120上に記録されるデータに各運転者を表す乗務員コードが自動的に付加されるので、運転者が交代した時に記録媒体120を交換する必要はない。
【0033】
一方、図2に示す運行記録装置200は、マイクロコンピュータ(CPU)201、インタフェース202〜208、電源部209、不揮発性メモリ211、揮発性メモリ212、記録媒体インタフェース213、音声インタフェース214、時計回路(RTC)215、読み出し専用メモリ(EEPROM)216、スイッチ入力部217、表示コントローラ218、通信インタフェース219を備えている。
【0034】
マイクロコンピュータ201は、読み出し専用メモリ216上に予め保持されているプログラムを実行することにより、運行記録装置200としての機能を実現する。この機能により、図1に示すような運行記録装置200の動作も実現する。
【0035】
インタフェース202は、車速を表す電気信号やエンジン回転数を表す電気信号などを入力して処理するために備わっている。インタフェース203は、車速の異常やエンジン回転数の異常に関する警報信号を出力するために備わっている。
【0036】
また、インタフェース204は所定の外部機器からの信号を入力するために利用され、インタフェース206は信号を所定の外部機器へ出力するために利用される。インタフェース205は、アナログの電気信号を入力するために利用される。
【0037】
インタフェース207は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して自車位置を算出する所定のGPS装置を接続するために備わっている。インタフェース208は、所定の通信端末を接続するために備わっている。
【0038】
不揮発性メモリ211は、運行記録装置200の電源供給が遮断された時でも保持する必要のあるデータ(定数など)を保存するために利用される。揮発性メモリ212は、一時的に利用されるデータを必要に応じて書き込んだり読み出したりするために利用される。
【0039】
記録媒体インタフェース213は、着脱自在な記録媒体220を物理的に保持し、この記録媒体220にデータを書き込んだり読み出したりするために利用される。記録媒体220は、例えばメモリカードのように不揮発性メモリを内蔵した着脱自在なメモリである。本実施形態では、複数の記録媒体220が予め用意してあり、それぞれの記録媒体220にはそれを使用する特定の乗務員に個別に割り当てられた乗務員コード、すなわち複数の乗務員を区別するための識別情報が事前に登録されている。
【0040】
音声インタフェース214は、音声等の音響をデータに変換して入力するために利用される。時計回路215は、現在の日時に関する情報を生成することができる。スイッチ入力部217は、運転者の所定のスイッチ操作による入力を受け付けるために備わっている。例えば「記録終了ボタン」の操作に応じて変化する信号がスイッチ入力部217に入力される。
【0041】
表示コントローラ218は、運行記録装置200の動作状態等に関する情報を所定の液晶表示装置(LCD)に表示するために備わっている。通信インタフェース219は、運行記録装置200とドライブレコーダ100との間のデータ通信を可能にするための機能を備えている。
【0042】
図2に示したドライブレコーダ100および運行記録装置200の主要な動作が図1に示されている。まず、図1に示す運行記録装置200の動作について説明する。マイクロコンピュータ201は、運行記録装置200の電源がオンになると、図1のステップS11で所定の初期化を実行してから、ステップS12に進む。
【0043】
ステップS12では、マイクロコンピュータ201は記録媒体インタフェース213の状態を監視し、記録媒体220が記録媒体インタフェース213に装着されたか否かを識別し、装着されたことを検出した後で次のステップS13に進む。
【0044】
ステップS13では、マイクロコンピュータ201は運行記録装置200の記録動作を開始する。例えば、一定時間毎に、インタフェース202から入力される車速やエンジン回転数の情報を収集し、これらの情報を時計回路215から取得した現在の日時の情報と共に運行情報として記録媒体220に記録する。この記録動作は、「記録終了ボタン」が押されるまで継続される。
【0045】
ステップS14では、マイクロコンピュータ201は現在記録媒体インタフェース213に装着されている記録媒体220からその所定箇所に保持されている乗務員コードを読み出して取得し、この乗務員コードを記録を開始したことを表す記録開始コードと共に、通信インタフェース219を介してドライブレコーダ100に送信する。
【0046】
ステップS15では、マイクロコンピュータ201はスイッチ入力部217の状態を監視して、前記「記録終了ボタン」が押されたか否かを識別する。「記録終了ボタン」が押されていなければステップS13で開始した運行情報の記録動作が継続され、「記録終了ボタン」が押された場合はステップS16に進み、運行情報の記録動作を終了する。
【0047】
ステップS17では、マイクロコンピュータ201はステップS14で取得した乗務員コードを、記録を終了したことを表す記録終了コードと共に、通信インタフェース219を介してドライブレコーダ100に送信する。
【0048】
次に、図1に示すドライブレコーダ100の動作について説明する。マイクロコンピュータ111は、ドライブレコーダ100の電源がオンになると、図1のステップS21で所定の初期化を実行してから、ステップS22に進む。
【0049】
ステップS22では、マイクロコンピュータ111は記録媒体120が接続される所定の入力ポートの状態を監視して、記録媒体120がドライブレコーダ本体110に接続されたか否かを識別し、接続された状態になると次のステップS23に進む。
【0050】
ステップS23では、マイクロコンピュータ111はドライブレコーダ100として動作するための所定の記録動作を開始する。例えば、加速度センサ132から出力される加速度の大きさを常時監視し、加速度が所定の閾値を超えた時に、それをトリガとして画像データ、加速度のデータ、車速のデータを所定時間(例えば10秒間)だけ時系列データとして記録媒体120に記録する。なお、トリガが発生した時点の前のデータも記録媒体120に記録できるように、バッファメモリに対しては所定時間(例えば10秒間)分の最新の画像データ等を常時記録している。
【0051】
ステップS24では、マイクロコンピュータ111は通信インタフェース116が運行記録装置200から前記乗務員コードのデータを受信したか否かを識別し、受信した場合はステップS25に進み、受信してなければステップS28に進む。
【0052】
ステップS25では、マイクロコンピュータ111は通信インタフェース116が運行記録装置200から乗務員コードのデータと共に受信したデータが「記録開始コード」か否かを識別し、「記録開始コード」であればステップS26に進み、「記録終了コード」であればステップS27に進む。
【0053】
ステップS26では、マイクロコンピュータ111は新たな乗務員が当該車両の運行を開始した状態であるとみなし、ステップS24で受信した乗務員コードと、運行開始であることを示す運行開始コードとを記録媒体220に記録する。ステップS26で乗務員コードおよび運行開始コードを記録する記録媒体220上の位置については、これから画像データ等を記録する予定の領域あるいはそれを表すフォルダ内とする。また、乗務員コードおよび運行開始コードと共に現在の日時の情報を記録しても良い。
【0054】
ステップS27では、マイクロコンピュータ111は現在の乗務員が当該車両の運行を終了した状態であるとみなし、ステップS24で受信した乗務員コードと、運行終了であることを示す運行終了コードとを記録媒体220に記録する。ステップS27で乗務員コードおよび運行終了コードを記録する記録媒体220上の位置については、最後の画像データ等を記録した領域あるいはそれを表すフォルダ内とする。また、乗務員コードおよび運行終了コードと共に現在の日時の情報を記録しても良い。
【0055】
ステップS28では、マイクロコンピュータ111はドライブレコーダ100に接続された「記録終了ボタン」(図示せず)の状態を監視し、この「記録終了ボタン」が押された場合はステップS30に進み、押されてなければステップS29に進む。
【0056】
ステップS29では、前記トリガが発生してから所定時間以内の記録期間中であれば、車載カメラ131の撮影により得られる画像データ等を時系列データとして記録媒体120に記録する。
【0057】
ステップS30では、マイクロコンピュータ111はステップS23で開始した記録動作を終了する。
【0058】
従って、例えば複数の乗務員が交代で運転業務を行うタクシー、バス、トラック等の業務用車両にドライブレコーダ100および運行記録装置200を搭載している場合に、ドライブレコーダ100に対して1つの記録媒体120を装着したままにしておくと、複数の乗務員の運転状況に関する画像等のデータが共通の記録媒体120上に記録されることになる。しかし、図1に示すような制御を実施するので、記録媒体120上に記録された複数のデータのそれぞれがどの乗務員と対応するのかを区別することができる。
【0059】
ドライブレコーダ100および運行記録装置200の具体的な状況の変化について、図3に示す例を参照しながら説明する。
図3に示すように、ある車両に乗務員Aが時刻t1で乗務開始する際に、この乗務員Aは自身に予め配布された記録媒体220Aを当該車両に搭載されている運行記録装置200の記録媒体インタフェース213に装填する。これは各乗務員が日常的に行うべき操作である。また、この時にもしもドライブレコーダ100に記録媒体120が装着されていない場合には、予め用意した記録媒体120を例えば乗務員Aがドライブレコーダ100に装填する。
【0060】
運行記録装置200は、時刻t1の後に記録媒体220Aが装填されたことを検出すると、図1のステップS14を実行するので、記録媒体220Aに登録されている乗務員コード(乗務員Aに割り当てた識別情報)および記録開始コードをドライブレコーダ100に送信する。
【0061】
ドライブレコーダ100は、乗務員コードおよび記録開始コードを運行記録装置200から受け取ると、図1のステップS24、S25、S26を実行するので、受信した乗務員コードおよび運行開始コード(現在日時の情報を含む場合もある)が記録媒体120上のこれから画像データを記録しようとする領域(例えば先頭位置)に記録される。
【0062】
ドライブレコーダ100は、異常に大きい加速度の検出などによりトリガが発生するとそれを契機として、撮影された画像等のデータを記録媒体120に記録する。ここで記録する画像等のデータは、前記乗務員コードおよび運行開始コードと関連付けられている。
【0063】
乗務員Aが当日の運行業務を終了しようとする時(時刻t2)には、日常的な操作として、運行記録装置200の「記録終了ボタン」を押した後、自身の運行記録に関するデータが記録されている記録媒体220Aを運行記録装置200から取り外して持ち帰る。運行記録装置200は、「記録終了ボタン」が押された時に図1のステップS17を実行するので、記録媒体220Aから取得した乗務員コードおよび記録終了コードをドライブレコーダ100に送信する。
【0064】
ドライブレコーダ100は、乗務員コードおよび記録終了コードを運行記録装置200から受け取ると、図1のステップS24、S25、S27を実行するので、受信した乗務員コードおよび運行終了コード(現在日時の情報を含む場合もある)が記録媒体120上の画像データが記録された領域(例えば画像データの最後の位置)に記録される。
【0065】
また、上記と同じ車両に対して別の時刻t3から乗務員Bが乗務開始する場合、この乗務員Bは自身に予め配布された記録媒体220Bを当該車両に搭載されている運行記録装置200の記録媒体インタフェース213に装填する。
【0066】
これにより、時刻t1の場合と同様に、運行記録装置200は、図1のステップS14を実行し、記録媒体220Bに登録されている乗務員コード(乗務員Bに割り当てた識別情報)および記録開始コードをドライブレコーダ100に送信する。
【0067】
ドライブレコーダ100は、乗務員コードおよび記録開始コードを運行記録装置200から受け取ると、図1のステップS24、S25、S26を実行するので、受信した乗務員Bの乗務員コードおよび運行開始コードが記録媒体120上のこれから画像データを記録しようとする領域(例えば先頭位置)に記録される。
【0068】
乗務員Bが当日の運行業務を終了しようとする時(時刻t4)には、日常的な操作として、運行記録装置200の「記録終了ボタン」を押した後、自身の運行記録に関するデータが記録されている記録媒体220Bを運行記録装置200から取り外して持ち帰る。運行記録装置200は、「記録終了ボタン」が押された時に図1のステップS17を実行するので、記録媒体220Bから取得した乗務員コードおよび記録終了コードをドライブレコーダ100に送信する。
【0069】
ドライブレコーダ100は、乗務員コードおよび記録終了コードを運行記録装置200から受け取ると、図1のステップS24、S25、S27を実行するので、受信した乗務員Bの乗務員コードおよび運行終了コード(現在日時の情報を含む場合もある)が記録媒体120上の画像データが記録された領域(例えば画像データの最後の位置)に記録される。
【0070】
従って、ドライブレコーダ100に装着された記録媒体120に記録される画像等のデータについては、各乗務員の運行開始、運行終了の都度、該当する乗務員を表す乗務員コードが関連付けられている。つまり、複数の乗務員が共通の車両を交代で利用し運行業務を行う場合に、ドライブレコーダ100に装着された記録媒体120を乗務員毎に交換しなくても、記録された各データと各乗務員の運行区間とを対応付けることができる。
【0071】
以上のように、本発明の車両用ドライブレコーダおよび運行記録システムならびに運行記録制御方法は、例えばタクシー、バス、トラックなどの1台の業務用車両を複数の乗務員が交代で使用し運行業務を行うような場合に利用することが想定できる。そして、乗務員が交代する時に各乗務員が車両用ドライブレコーダに装着する記録媒体を交換するような特別な操作を行わなくても、ドライブレコーダが記録するデータと各乗務員とを対応付けることができる。従って、従って乗務員の操作ミス(記録媒体の装着忘れなど)も生じにくくなり、ドライブレコーダが記録する情報を正しく管理することができる。なお、運行記録装置に対して乗務員毎に独立した記録媒体等を装着する操作については、日常的に行う業務上必要不可欠な操作であるので、操作ミスは生じにくい。
【符号の説明】
【0072】
100 ドライブレコーダ
110 ドライブレコーダ本体
111 マイクロコンピュータ
112,113,114 インタフェース
115 メモリ
116 通信インタフェース
120 記録媒体
131 車載カメラ
132 加速度センサ
133 車速センサ
200 運行記録装置
201 マイクロコンピュータ
202〜208 インタフェース
209 電源部
211 不揮発性メモリ
212 揮発性メモリ
213 記録媒体インタフェース
214 音声インタフェース
215 時計回路
216 読み出し専用メモリ
217 スイッチ入力部
218 表示コントローラ
219 通信インタフェース
220 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラにより撮影された画像のデータを、所定のイベント発生を契機として、もしくは常時、所定の記録媒体に記録する車両用ドライブレコーダであって、
各々の運転者を特定する識別情報が保持されたカードを装着可能な所定の運行記録装置との間で通信が可能な通信部と、
前記運行記録装置に装着されたカードの前記識別情報を、前記通信部を経由して前記運行記録装置から取得し、撮影された画像のデータと対応付けて前記記録媒体に記録する識別情報記録制御部と
を備えることを特徴とする車両用ドライブレコーダ。
【請求項2】
前記識別情報記録制御部は、前記運行記録装置が記録を開始する時に前記運行記録装置から取得した前記識別情報および運行開始であることを示す情報を記録し、前記運行記録装置が記録を終了する時に前記運行記録装置から取得した前記識別情報および運行終了であることを示す情報を記録する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドライブレコーダ。
【請求項3】
車載カメラにより撮影された画像のデータを、所定のイベント発生を契機として、もしくは常時、第1の記録媒体に記録するドライブレコーダと、少なくとも車両のエンジン回転数および車速のデータを時系列データとして第2の記録媒体に記録する運行記録装置とを含む運行記録システムであって、
前記ドライブレコーダと前記運行記録装置との間で通信するための通信部と、
前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時に、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時に、前記第2の記録媒体に登録されている乗務員コードを読み取って前記ドライブレコーダに通知する乗務員コード通知部と、
乗務員コード通知部により通知された前記乗務員コードを前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する乗務員コード記録制御部と
を備えることを特徴とする運行記録システム。
【請求項4】
前記乗務員コード通知部は、前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時に、前記乗務員コードおよび記録開始を表す情報を前記ドライブレコーダに通知し、前記運行記録装置が記録動作を終了する時には、前記乗務員コードおよび記録終了を表す情報を前記ドライブレコーダに通知し、
前記乗務員コード記録制御部は、乗務員コード通知部により通知された前記乗務員コードおよび記録開始又は記録終了を表す情報を前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する
ことを特徴とする請求項3に記載の運行記録システム。
【請求項5】
車載カメラにより撮影された画像のデータを、所定のイベント発生を契機として、もしくは常時、第1の記録媒体に記録するドライブレコーダと、少なくとも車両のエンジン回転数および車速のデータを時系列データとして第2の記録媒体に記録する運行記録装置とを含む運行記録システムを制御するための運行記録制御方法であって、
前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時に、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時に、前記第2の記録媒体に登録されている乗務員コードを読み取って前記運行記録装置から前記ドライブレコーダに通知し、
前記ドライブレコーダが前記乗務員コードを受け取った時には、前記乗務員コードを前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する
ことを特徴とする運行記録制御方法。
【請求項6】
前記運行記録装置に前記第2の記録媒体が装着された時に、もしくは前記運行記録装置が記録動作を開始する時には、前記第2の記録媒体に登録されている乗務員コードを読み取って、前記乗務員コードと記録開始を示す情報を含む第1の情報を前記運行記録装置から前記ドライブレコーダに通知し、
前記ドライブレコーダが前記第1の情報を受け取った時には、前記乗務員コードと記録開始を示す情報を前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録し、
前記運行記録装置が記録動作を終了する時には、前記乗務員コードと記録終了を示す情報を含む第2の情報を前記運行記録装置から前記ドライブレコーダに通知し、
前記ドライブレコーダが前記第2の情報を受け取った時には、前記乗務員コードと記録終了を示す情報を前記画像のデータと対応付けて前記第1の記録媒体に記録する
ことを特徴とする請求項5に記載の運行記録制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−257934(P2011−257934A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131207(P2010−131207)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】