説明

車両用バイフューエルエンジン

【課題】エアクリーナの容積を十分に確保しつつ、エンジンの組付性が向上されるとともに、車両に外力が作用した際に、気体燃料噴射装置を保護できる構造の車両用バイフューエルエンジンを提供すること。
【解決手段】エンジン本体14に接続された複数の吸気分岐管51と、サージタンク52と、エアクリーナ7と、液体燃料噴射装置8と、気体燃料ホース9と、気体燃料噴射装置11と、を備え、サージタンク52が、エンジン本体4の上方に、シリンダヘッドカバー14の着脱作業を可能とする空間S1を隔てて配置され、吸気分岐管51がエンジン本体4の側方に配置されて湾曲する湾曲部51Cを備え、上流端部51Aから湾曲部51Cまでの部分が上流端部51Aから湾曲部51Cへ向けて斜め下方に向けて傾斜する傾斜部51Dとし、傾斜部51Dの上方にエアクリーナ7が配置され、エアクリーナ7とサージタンク52との間に気体燃料噴射装置11を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料と気体燃料との2種類の燃料を使用する車両用バイフューエルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の内燃機関としては、ガソリンなどの液体燃料と天然ガス(CNG;compressed natural gas)などの気体燃料との2種類の燃料を使用するバイフューエルエンジンが知られている。従来のバイフューエルエンジンとしては、エンジン本体の上部に配置されるシリンダヘッドカバーに、気体燃料噴射装置が取り付けられ、この気体燃料噴射装置に備えられた気体燃料噴射弁と吸気分岐管とを気体燃料ホースで連絡した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来構造では、気体燃料ホースが液体燃料噴射装置の下側を通過するように配索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来構造では、気体燃料噴射装置および気体燃料ホースを、シリンダヘッドカバーの上部に配置しているため、以下に説明するような問題点があった。すなわち、上記の従来構造では、エンジン本体からシリンダヘッドカバーを取り外す際に、液体燃料噴射装置の取り外し、気体燃料噴射装置に接続されたそれぞれの吸気分岐管の接続部の取り外し、気体燃料噴射装置を取り外し、吸気分岐管に接続されたそれぞれの気体燃料ホース取り外しなどの多くの工程が必要であり、エンジンの分解性や組付性が低かった。
【0005】
また、上記の従来構造では、気体燃料噴射装置と吸気分岐管とが近接した配置であるため、気体燃料噴射装置と吸気分岐管とを連絡する気体燃料ホースの全長は短いものであった。したがって、上記の従来構造では、作業者が気体燃料ホースをエンジンに取り付ける際に、気体燃料ホースを変形させにくいため、取り回しが難しく、エンジンの組付性が低かった。
【0006】
さらに、上記の従来構造では、気体燃料噴射装置がシリンダヘッドカバーの上方で外側に露出した状態で取り付けられているため、シリンダヘッドカバーの上部から外側へ向けて気体燃料噴射装置の突出量が大きかった。このため、上記の従来構造では、車両に外力が作用した際に、気体燃料噴射装置と車両搭載部品(気体燃料噴射装置の周辺に配置される部品)とが干渉し易くなるという問題があった。
【0007】
また、上記の従来構造では、エンジンの上部にエアクリーナを配置した場合、突出量の大きな気体燃料噴射装置の干渉を受けるため、エアクリーナの容積が制限される虞があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、エアクリーナの容積を十分に確保しつつ、エンジンの組付性が向上されるとともに、車両に外力が作用した際に、気体燃料噴射装置を保護できる車両用バイフューエルエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、上部に着脱可能なシリンダヘッドカバーを有するエンジン本体と、エンジン本体の側部に、下流端部がこのエンジン本体内の吸気通路に連通するように接続された複数の吸気分岐管と、複数の吸気分岐管の上流端部がそれぞれ接続されたサージタンクと、サージタンクに連通するエアクリーナと、エンジン本体側に液体燃料を供給する液体燃料噴射装置と、それぞれの吸気分岐管の下流端部近傍に一端が接続された複数の気体燃料ホースと、気体燃料ホースの他端がそれぞれ接続された複数の気体燃料噴射弁が設けられた気体燃料噴射装置と、を備えた車両用バイフューエルエンジンにおいて、サージタンクは、エンジン本体の上方に、シリンダヘッドカバーの着脱作業を可能とする空間を隔てて配置され、吸気分岐管は、エンジン本体の側方に配置されて湾曲する湾曲部を備え、上流端部から湾曲部までの部分が上流端部から湾曲部へ向けて斜め下方に向けて傾斜するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記態様としては、エアクリーナは、上流端部から湾曲部までの吸気分岐管の上方に配置され、気体燃料噴射装置は、サージタンクとエアクリーナとの間隙に配置され、かつ気体燃料噴射弁は、上流端部の近傍に配置され、気体燃料ホースは、複数の吸気分岐管に沿って配置され、液体燃料噴射装置は、エンジン本体と吸気分岐管との間の空間に配置されることを特徴とする。
【0011】
上記態様としては、気体燃料噴射弁が、気体燃料ホースが接続される先端部が前記湾曲部の方向を向くように傾斜して配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記態様としては、気体燃料噴射弁および気体燃料ホースが、複数の吸気分岐管同士が並ぶ方向に沿って、吸気分岐管と交互に配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記態様としては、気体燃料噴射装置およびエアクリーナが、サージタンクに固定されていることを特徴とする。
【0014】
上記態様としては、エンジン本体が、吸気分岐管が車両の後方を向くように搭載されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジンの組付性を向上させ、かつエアクリーナの容積を十分に確保すると共に、車両に外力が作用した際に、気体燃料噴射装置を保護できる構造の車両用バイフューエルエンジンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る車両用バイフューエルエンジンの側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る車両用バイフューエルエンジンの背面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る車両用バイフューエルエンジンの平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る車両用バイフューエルエンジンの要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態に係る車両用バイフューエルエンジン(以下、エンジンと云う。)の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
(エンジンの概略構成)
図1に示すように、エンジン1は、車両前部2のエンジンルーム3内に搭載されている。このエンジン1は、エンジン本体4と、吸気マニホールド5と、排気マニホールド6と、エアクリーナ7と、液体燃料噴射装置8と、複数の気体燃料ホース9と、複数の気体燃料噴射弁10Bを有する気体燃料噴射装置11と、を備えている。
【0019】
(エンジン本体)
図1に示すように、エンジン本体4は、シリンダブロック12と、シリンダブロック12の上に配置されるシリンダヘッド13と、シリンダヘッド13の上に配置されるシリンダヘッドカバー14と、シリンダブロック12の下に配置されるクランクロアケース15と、クランクロアケース15の下に配置されるオイルパン16と、を備えて概略構成されている。
【0020】
クランクロアケース15は、クランク軸17を軸支している。シリンダブロック12は、内部に図示しない複数のシリンダ(気筒)が形成されている。それぞれのシリンダ内には、上下動する図示しないピストンが設けられている。このピストンの上下動は、図示しないコンロッドを介してクランク軸17に回転運動に変換されて伝達される。
【0021】
シリンダヘッド13には、図示しないシリンダ内に空気を導入するための複数の吸気通路18と複数の排気通路19が形成されている。また、シリンダヘッド13には、それぞれのシリンダの上部において、吸気通路18、排気通路19の開閉を行う、図示しない吸気バルブや排気バルブが設けられている。
【0022】
そして、シリンダヘッド13の上部には、これら吸気バルブや排気バルブを所定のタイミングで開弁させるための、図示しない動弁機構などが設けられている。このようなシリンダヘッド13の上部は、シリンダヘッドカバー14がボルト締めなどの固定手段により着脱可能に取り付けられている。上記した動弁機構(不図示)やその他の部材の調整、修理などのメンテナンスは、シリンダヘッドカバー14を取り外すことにより可能となる。
【0023】
(吸気マニホールド)
図1に示すように、吸気マニホールド5は、複数の吸気分岐管51と、サージタンク52と、で構成されている。サージタンク52は、シリンダヘッドカバー14の上方に配置されている。サージタンク52とシリンダヘッドカバー14との上下方向の距離Lは、シリンダヘッドカバー14をシリンダヘッド13から取り外す際に、シリンダヘッドカバー14がサージタンク52に干渉されることなく取り外しが可能な長さに設定されている。すなわち、図1に示すように、サージタンク52は、シリンダヘッドカバー14の上方に所定の作業用空間S1を隔てて配置されている。
【0024】
図1に示すように、シリンダヘッドカバー14を取り外した状態では、矢印Aの方向からシリンダヘッド13の上部に配置されている図示しない例えば動弁機構(カムシャフトなどを含む)の目視、および点検、修理などのメンテナンスが可能となる。
【0025】
図4に示すように、吸気分岐管51は、上流端部51Aがサージタンク52に複数箇所で連通するように、サージタンク52の長手方向(本実施の形態では左右方向)に沿って所定間隔D1を隔てて一体に設けられている。また、図1および図2に示すように、吸気分岐管51の下流端部51Bは、吸気通路18に連通するようにシリンダヘッド13の側部に接続されている。なお、本実施の形態では、吸気マニホールド5における複数の吸気分岐管51は、エンジンルーム3に搭載されたエンジン本体4に対して車両後側に配置されるように設定されている。
【0026】
吸気分岐管51における下流端部51Bに近い中間部には、湾曲部51Cが形成されている。この湾曲部51Cは、シリンダヘッド13の側部から側方(本実施の形態では車両にエンジンを搭載した状態で車両後方側)に延在された吸気分岐管51をサージタンク52へ向けて斜め上方へ傾斜させて延在させるために湾曲する部分である。したがって、上流端部51Aから湾曲部51Cに亘る部分は、後方に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜部51Dとなっている。
【0027】
上記のように、吸気分岐管51はシリンダヘッド13の側部からサージタンク52を直線的に結ぶのではなく、シリンダヘッド13の側方を迂回するような形態を有する。なお、図1および図3に示すように、排気マニホールド6は、シリンダヘッド13における吸気マニホールド5の取り付け部分と反対側(前側)の側部に取り付けられている。
【0028】
(液体燃料噴射装置)
図1および図2に示すように、複数の吸気分岐管51と、シリンダヘッド13およびシリンダヘッドカバー14と、の間には、液体燃料噴射装置8が配置されている。液体燃料噴射装置8は、液体燃料デリバリパイプ8Aと、液体燃料デリバリパイプ8Aに所定間隔を隔てて設けられた複数の液体燃料噴射弁8Bと、を備えている。
【0029】
液体燃料デリバリパイプ8Aは、複数の吸気分岐管51が並ぶ方向、すなわちエンジン1を車両搭載した場合の車両左右方向(または、車両幅方向)に沿って延在されている。そして、複数の液体燃料噴射弁8Bは、液体燃料(例えば、ガソリン)がそれぞれの吸気通路18へ噴射可能となるようにシリンダヘッド13へ固定されている。
【0030】
図2に示すように、液体燃料噴射装置8の液体燃料デリバリパイプ8Aは、液体燃料が貯蔵された液体燃料タンク8Cに接続されている。なお、液体燃料噴射弁8Bは、エンジン1が液体燃料を用いる運転を行う場合に、車両の制御装置からの制御信号に基づいて所定の燃料噴射動作を行うようになっている。
【0031】
上述のように、複数の吸気分岐管51と、シリンダヘッド13およびシリンダヘッドカバー14と、の間に液体燃料噴射装置8を配置できる程度の空間を確保するには、湾曲部51Cの曲率が適切に設定されることが好ましい。
【0032】
(エアクリーナ)
図1および図2に示すように、複数の吸気分岐管51の傾斜部51Dの直上には、上記サージタンク52に連通されるエアクリーナ7が配置されている。このエアクリーナ7は、傾斜部51Dの全長の範囲に亘って配置されている。また、このエアクリーナ7は、傾斜部51Dが湾曲部51Cに向けて斜め下方に下がっているため、湾曲部51C近傍の上方に配置させる部分の高さを十分確保することができる。図1および図3に示すように、このエアクリーナ7は、サージタンク52側に位置する縁部に設けられた板状の被取り付け部7Aが、ボルト20でサージタンク52に固定されている。
【0033】
このように本実施の形態では、エアクリーナ7が、従来の構造のように気体燃料噴射装置の干渉を受けることがない。したがって、本実施の形態におけるエアクリーナ7は、従来の構造に比較して、より大きな容積を確保することができる。
【0034】
(気体燃料噴射装置)
図1、図2および図4に示すように、気体燃料噴射装置11は、気体燃料デリバリパイプ10Aと、気体燃料噴射弁10Bと、気体燃料タンク10Cと、を備えている。図4に示すように、気体燃料デリバリパイプ10Aは、サージタンク52に接続された複数の吸気分岐管51の上流端部51Aを結ぶ線に平行をなすように延在されている。この気体燃料デリバリパイプ10Aには、気体燃料(例えば、CNG)が貯留された気体燃料タンク10Cが図示しないパイプを介して接続されている。
【0035】
図4に示すように、気体燃料デリバリパイプ10Aには、複数の気体燃料噴射弁10Bが設けられている。なお、これら気体燃料噴射弁10Bは、気体燃料デリバリパイプ10Aに対して複数箇所で連通するように、気体燃料デリバリパイプ10Aの長手方向(本実施の形態では車両左右方向)に沿って所定間隔D2を隔てて一体に設けられている。なお、気体燃料噴射弁10B同士の間隔D2は、上記した吸気分岐管51の上流端部51A同士の間隔D1と略同じ寸法に設定され、気体燃料噴射弁10Bと、吸気分岐管51の上流端部51Aとが、吸気分岐管51同士が並ぶ方向(本実施の形態では車両左右方向)に沿って、交互に配置されている。
【0036】
したがって、図1に示すように、複数の気体燃料噴射弁10Bおよび気体燃料デリバリパイプ10Aとでなる気体燃料噴射装置11は、エアクリーナ7とサージタンク52との間隙S2に配置されている。図1および図4に示すように、気体燃料噴射弁10Bは、吸気分岐管51の上流端部51Aの近傍で、これら上流端部51A(傾斜部51D)同士の間、もしくは側方に配置されている。このため、車両に外力が作用した際に、吸気分岐管51の傾斜部51Dによって、気体燃料噴射装置11において剛性の低い気体燃料噴射弁10Bが、車両搭載部品またはエンジン搭載部品と直接強く干渉することを防止できる。したがって、本実施の形態のエンジン1では、気体燃料噴射装置11を確実に保護することができる。
【0037】
また、図1に示すように、気体燃料噴射弁10Bは、気体燃料ホース9と接続される先端部10Dが吸気分岐管51の湾曲部51Cの方向を向くように傾斜して配置されている。なお、ここで先端部10Dが湾曲部51Cの方向を向くこととは、先端部10Dの軸線が湾曲部51Cもしくは湾曲部51Cの近傍を通るように配置されるという意味である。
【0038】
さらに、図1および図3に示すように、気体燃料噴射装置11は、気体燃料デリバリパイプ10Aと気体燃料噴射弁10Bとを一体に支持するブラケット状の被取り付け部10Eがサージタンク52にボルト21により固定されている。
【0039】
図1、図2および図4に示すように、気体燃料ホース9は、吸気分岐管51の下流端部51Bの近傍に一端部9Aが接続され、他端部9Bが気体燃料噴射弁10Bの先端部10Dに接続されている。図1に示すように、これら気体燃料ホース9は、吸気分岐管51に沿って配置されている。
【0040】
上記構成の気体燃料噴射装置11において、気体燃料噴射弁10Bは、エンジン1が気体燃料を用いる運転を行う場合に、車両の制御装置からの制御信号に基づいて所定の燃料噴射動作を行うようになっている。
【0041】
以上、本実施の形態に係るエンジン1について説明したが、このエンジン1では、吸気マニホールド5およびエアクリーナ7が、気体燃料噴射装置11の干渉を受けない構成であるため、気体燃料噴射装置11の影響を受けず、吸気マニホールド5の吸気分岐管51の管長を長くすることができるとともに、エアクリーナ7の容積を確保できる。また、本実施の形態では、エアクリーナ7の容積を確保するに留まらずにさらに拡大できるため、エアクリーナ7の吸気抵抗を小さくすることにも寄与する効果がある。
【0042】
本実施の形態では、気体燃料噴射装置11をサージタンク52とエアクリーナ7との間に配置したことにより、気体燃料噴射装置11の被取り付け部10Eとエアクリーナ7の被取り付け部7Aを両方ともサージタンク52に取り付けることができる。サージタンク52は、エンジン1の上部にあるため、これらエアクリーナ7、気体燃料噴射装置11等の組付性を向上することができる。
【0043】
加えて、気体燃料噴射装置11をサージタンク52とエアクリーナ7との間に配置したことにより、作業者がエンジン本体4からシリンダヘッドカバー14を取り外す際に、気体燃料噴射装置11(気体燃料デリバリパイプ10Aや気体燃料噴射弁10B)や気体燃料ホース9などを取り外す必要がない。このため、本実施の形態では、エンジン本体4の上部とサージタンク52との間の作業空間S1からシリンダヘッドカバー14を円滑に取り付けまたは取り外すことができ、エンジン1の組付性をさらに向上できる。
【0044】
本実施の形態によれば、管長が長くなった吸気分岐管51に沿うように気体燃料ホース9を気体燃料噴射弁10Bと吸気分岐管51の下流端部51Bとの間に配索することで、従来構造の場合に比べて、気体燃料ホース9の全長を長くすることができる。このため、作業者が気体燃料ホース9を気体燃料噴射弁10Bと吸気分岐管51の下流端部51Bとに接続する際に、気体燃料ホース9を曲げ変形させ易くできる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、気体燃料ホース9の全長を長くして曲げ変形し易くしたことにより、狭いエンジンルーム3内での気体燃料ホース9のエンジン本体4への取り回しや取り付けが容易となり、エンジン1の組付性を確実に向上できる。
【0046】
さらに、本実施の形態によれば、気体燃料ホース9を長くすることができるため、素材自体が可撓性が比較的小さいものを用いても取り回しが良いため作業性を阻害することはない。このため、耐久性の高く従来のものよりも剛性の高い素材で形成された気体燃料ホース9を用いることも可能となる。
【0047】
本実施の形態によれば、気体燃料噴射弁10Bが、吸気分岐管51の上流端部51Aの近傍で、これら上流端部51A(傾斜部51D)同士の間、もしくは側方に配置されている。このため、車両に外力が作用した際に、吸気分岐管51の傾斜部51Dによって、気体燃料噴射装置11において剛性の低い気体燃料噴射弁10Bが車両搭載部品またはエンジン搭載部品と直接強く干渉することを防止できる。したがって、本実施の形態のエンジン1では、気体燃料噴射装置11を確実に保護することができる。
【0048】
本実施の形態によれば、エアクリーナ7が板状の被取り付け部7Aで、ボルト20によりサージタンク52に固定されているため、取り付け、取り外しが簡単であり、組付性が向上する。
【0049】
本実施の形態によれば、気体燃料噴射弁10Bが、気体燃料ホース9と接続される先端部10Dが吸気分岐管51の湾曲部51Cの方向を向くように傾斜して配置されているため、組付け作業において、気体燃料ホース9を先端部10Dに取り付ける際に、作業者が図1に示す矢印Bの方向から先端部10Dを目視することができ、組付けの作業性を向上できるという利点がある。加えて、気体燃料ホース9の上端部を吸気分岐管51の傾斜部51Dに沿って上側に移動させることで、気体燃料ホース9を気体燃料噴射弁10Bの先端10Dに円滑に取り付けることが可能となり、気体燃料ホース9の組付作業性を向上でき、エンジン1の組付性を確実に向上できる。
【0050】
本実施の形態によれば、気体燃料噴射装置11が、気体燃料デリバリパイプ10Aと気体燃料噴射弁10Bとを一体に支持するブラケット状の被取り付け部10Eがサージタンク52にボルト21により固定されているため、取り付け作業が簡単となる利点がある。
【0051】
上述のように、本発明においては、吸気分岐管51の傾斜構造を利用することによりエアクリーナ7の配置空間を十分確保し、吸気分岐管51同士の間の空間を利用することで、気体燃料噴射装置11(気体燃料噴射弁10B)の保護を図ることが達成される。
【0052】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、この実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0053】
例えば、上記実施の形態では、気体燃料ホース9は吸気分岐管51に沿うように配置したが、吸気分岐管51よりも僅かにエンジン本体4側、すなわち、エンジン本体4と吸気分岐管51との間の空間を通るように気体燃料ホース9を配索する構造も本発明の適用範囲であることは云うまでもない。
【0054】
また、上記実施の形態では、エンジン1を車体に対して、吸気マニホールド5が車体の後側に配置したが、本発明はエンジン1の配置に拘わらず、上記の作用・効果を奏し得ることは云うまでもない。
【0055】
さらに、上記実施の形態では、液体燃料噴射装置8を、吸気分岐管51とエンジン本体4との間の空間に配置したが、液体燃料噴射装置8をこの空間の外に配置する場合も本発明の適用範囲であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
2 車両前部
3 エンジンルーム
4 エンジン本体
5 吸気マニホールド
7 エアクリーナ
7A 被取り付け部
8 液体燃料噴射装置
8A 液体燃料デリバリパイプ
8B 液体燃料噴射弁
8C 液体燃料タンク
9 気体燃料ホース
9A 一端部(気体燃料ホース)
9B 他端部(気体燃料ホース)
10A 気体燃料デリバリパイプ
10B 気体燃料噴射弁
10C 気体燃料タンク
10D 先端部(気体燃料噴射弁)
10E 被取り付け部
11 気体燃料噴射装置
12 シリンダブロック
13 シリンダヘッド
14 シリンダヘッドカバー
15 クランクロアケース
17 クランク軸
18 吸気通路
20 ボルト
21 ボルト
51 吸気分岐管
51A 上流端部
51B 下流端部
51C 湾曲部
51D 傾斜部
52 サージタンク
S1 作業用空間
S2 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に着脱可能なシリンダヘッドカバーを有するエンジン本体と、前記エンジン本体の側部に、下流端部が当該エンジン本体内の吸気通路に連通するように接続された複数の吸気分岐管と、前記複数の吸気分岐管の上流端部がそれぞれ接続されたサージタンクと、前記サージタンクに連通するエアクリーナと、前記エンジン本体側に液体燃料を供給する液体燃料噴射装置と、それぞれの前記吸気分岐管の前記下流端部近傍に一端が接続された複数の気体燃料ホースと、前記気体燃料ホースの他端がそれぞれ接続された複数の気体燃料噴射弁が設けられた気体燃料噴射装置と、を備えた車両用バイフューエルエンジンにおいて、
前記サージタンクは、前記エンジン本体の上方に、前記シリンダヘッドカバーの着脱作業を可能とする空間を隔てて配置され、
前記吸気分岐管は、前記エンジン本体の側方に配置されて湾曲する湾曲部を備え、前記上流端部から前記湾曲部までの部分が前記上流端部から前記湾曲部へ向けて斜め下方に向けて傾斜するように形成されている
ことを特徴とする車両用バイフューエルエンジン。
【請求項2】
前記エアクリーナは、前記上流端部から前記湾曲部までの前記吸気分岐管の上方に配置され、
前記気体燃料噴射装置は、前記サージタンクと前記エアクリーナとの間隙に配置され、かつ前記気体燃料噴射弁は、前記上流端部の近傍に配置され、
前記気体燃料ホースは、前記複数の前記吸気分岐管に沿って配置され、
前記液体燃料噴射装置は、前記エンジン本体と前記吸気分岐管との間の空間に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バイフューエルエンジン。
【請求項3】
前記気体燃料噴射弁は、前記気体燃料ホースが接続される先端部が前記湾曲部の方向を向くように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用バイフューエルエンジン。
【請求項4】
前記気体燃料噴射弁および前記気体燃料ホースは、前記複数の前記吸気分岐管同士が並ぶ方向に沿って、当該吸気分岐管と交互に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用バイフューエルエンジン。
【請求項5】
前記気体燃料噴射装置および前記エアクリーナは、前記サージタンクに固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用バイフューエルエンジン。
【請求項6】
前記エンジン本体は、前記吸気分岐管が車両の後方を向くように搭載されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用バイフューエルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108361(P2013−108361A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251707(P2011−251707)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】