説明

車両用バッテリーケース

【課題】防水性の高いバッテリーケースを提供する。
【解決手段】バッテリーVが載置される底壁11及び底壁の周囲を囲む周側壁12を有するバッテリートレイと、バッテリートレイを覆うバッテリーカバーとを備え、バッテリートレイは、周側壁の上面の全周に亘って形成された溝部41と、溝部の少なくとも外周側の開口縁部に立設された壁部と、溝部の全周に亘って連続するように形成され、溝部に組み付けられるシール部材40とを有し、溝部にシール部材を組み付けた状態でバッテリートレイとバッテリーカバーとが固定されることで、バッテリートレイとバッテリーカバーとの間にシール部材が挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用バッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車では車載バッテリーがかなりの重量および搭載スペースを占めるため、車体フロアの下側に複数個のバッテリーを搭載したバッテリーケースを載置し、バッテリーを車体フロアから密閉格納している。
【0003】
このようなバッテリーケースとしては、例えば、アッパーケースとロアーケースとをそれぞれのフランジ部でボルトにより締結しているものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−186390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したようにバッテリーケースは車体フロアの下側に載置されるものであるから、路面からの水が飛散して跳ね上がってバッテリーケースにかかることや、高圧洗車時の水がバッテリーケースにかかることもある。このため、バッテリーケースはより高度な防水処理がなされていることが望ましく、特許文献1に記載された構造では、シール部材等が設けられていないことから、防水処理が不十分である。
【0006】
ところで、防水処理としては、例えば携帯電話の電池パックなどでは、一対の電池パック用ケースを接合する場合に、接合部に溝を設け、この溝に封止材を流し込んで封止して接合することが知られている。しかし、このような電池パック等の車両用のバッテリーケース以外のケースにおける防水処理を車両用のバッテリーケースに適用することは難しいという問題がある。これは、バッテリーケースにおいては、バッテリー交換時等にバッテリーケースを開封することがあり、封止材により封止した場合には開封するとその再現性がなくなってしまうからである。
【0007】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、防水性の高いバッテリーケースを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用バッテリーケースは、バッテリーが載置される底壁及び該底壁の周囲を囲む周側壁を有するバッテリートレイと、該バッテリートレイを覆うバッテリーカバーとを備え、前記バッテリートレイは、前記周側壁の上面の全周に亘って形成された溝部と、該溝部の少なくとも外周側の開口縁部に立設された壁部と、前記溝部の全周に亘って連続するように形成され、前記溝部に収容されるシール部材とを有し、前記溝部にシール部材を組み付けた状態で前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとが固定されることで、前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとの間に前記シール部材が挟持されることを特徴とする。
【0009】
外周側の開口縁部に壁部を立設することで、バッテリートレイ外部から侵入した水がバッテリーが収容されている空間に侵入することを防止することで、防水性が高い。かつ、外周側の開口縁部に壁部を立設することで、仮に水が侵入したとしても、この壁部にぶつかり、シール部材に直接接触することがない。これにより、シール部材の変形を抑制でき防水性を高めることができる。さらには、外周側の開口縁部に壁部を立設することで、シール部材が規制されるので、シール部材が倒れてしまってシール不良となることを防止でき、防水性を高めることができる。
【0010】
前記バッテリーカバーには、前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとが固定されると前記溝部に収容された前記シール部材を押圧する突起部が、前記溝部に対応して形成されていることが好ましい。突起部が形成されていることで、シール部材をしっかりと押圧することができ、よりシール性を高めて防水性を高めることができる。
【0011】
前記バッテリーカバーには、前記壁部を覆う段差部が形成されていることが好ましい。バッテリーカバーはこのような段差部を有する形状となっていることで、その長手方向において剛性が高く、変形が抑制されるので防水性を高めることができる。
【0012】
前記バッテリートレイの周側壁の外側には、枠状フレームが設けられると共に、前記バッテリートレイは、前記周側壁の上面に設けられたフランジ部を備え、前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとが該フランジ部の溝部が形成された領域の外側に設けられた締結部材により前記枠状フレームの上面に固定されていることが好ましい。このように締結部材で締結される領域と、シール部材によりシールされる領域とを分けることで、シール部材によるシール反力が高かったとしても、十分にバッテリートレイとバッテリーカバーとを固定することができ、シール性を向上させている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバッテリーケースによれば、防水性が高いという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】バッテリーケースの設置を示すための電気自動車の模式的斜視図である。
【図2】バッテリーケースの分解斜視図である。
【図3】バッテリーケースの(a)上面図(b)A−A線における断面図である。
【図4】図3(b)の一部拡大図である。
【図5】実施形態1にかかる一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明にかかる実施形態1について以下説明する。
【0016】
バッテリーケースは、内部に形成された収容空間内にバッテリーを収容するものである。例えば図1に示すように、バッテリーケース1は、電気自動車Iの車体の下部に図示しないバッテリー設置用部材により設置され、バッテリーケース1に収容されたバッテリーより電気自動車Iのモーター等に電気を供給する。バッテリーケース1の構成について、図2〜図4を用いて以下詳細に説明する。
【0017】
バッテリーケース1は、具体的には、複数のバッテリーV(図3参照)が搭載されるバッテリートレイ10と、バッテリートレイ10の上面側に設けられ、バッテリートレイ10を封止するバッテリーカバー20と、バッテリートレイ10の外周を覆い、バッテリートレイ10を補強する枠状フレーム30と、バッテリーカバー20とバッテリートレイ10とをシールするシール部材40とを備える。
【0018】
バッテリートレイ10は、バッテリーケース1の下部を構成するものであり、薄肉(厚さ3〜8mm)樹脂から構成されている。バッテリートレイ10は、多角形状の底壁11を備える。この底壁11の周縁には、周側壁12が設けられている。底壁11と周側壁12とにより画成された空間が、バッテリーVの収容空間S1の下部を構成する。周側壁12は、車両の前方向に向けて曲折された曲折部を有する前側壁121と、前側壁121に対向する後側壁122と、前側壁121及び後側壁122を接続する左側壁123及び右側壁124とからなる。
【0019】
周側壁12より囲まれたバッテリートレイ10の内部は、左側壁123及び右側壁124の間に亘ってバッテリートレイ10の左右方向に第1仕切壁125が複数(図中では例として6個)設けられている。また、最前の第1仕切壁125と後側壁122との間に亘って、バッテリートレイ10の前後方向に第2仕切壁126が設けられている。図3に示すように、これらの第1仕切壁125及び第2仕切壁126により区画された空間に、バッテリーVが搭載される。
【0020】
周側壁12の端部(開口端部)には、外側にトレー側フランジ部13が延設されている。トレー側フランジ部13は、床面に対して平行となるように設けられている。
【0021】
また、周側壁12の直上に位置するトレー側フランジ部13の上面には、図4に示すように、シール部材40が収容される溝部41が形成されている。溝部41は、周側壁12の周方向に亘って形成されている。溝部41の深さ及び幅は、シール部材40の形状によって任意に設定されるものである。
【0022】
この溝部41の外周側の開口縁部には、周方向に亘って外周側壁部42が立設されている。また、溝部41の内周側の開口縁部にも、周方向に亘って内周側壁部43が立設されている。即ち、溝部41の開口縁部には、溝部41に周方向に沿って、外周側壁部42及び内周側壁部43からなる一対の壁部44がフランジ面よりも突出して形成されている。また、内周側壁部43は、周側壁12の内壁面と面一状態となっている。図5に示すように、この一対の壁部44及び溝部41からシール部材40を収容するシール部材収容空間S2が形成されている。
【0023】
シール部材40は、溝部41の全周に亘って連続するように形成され、溝部41に収容される。本実施形態では、シール部材40は、複数のシール部材を接合して一体としたものである。シール部材40は、本実施形態では断面形状が円形であるものを用いている。シール部材40は、本実施形態では、外側にスキン層が形成された発泡ゴムである。
【0024】
バッテリーカバー20は、樹脂製であり、バッテリーケース1の上部を構成する。バッテリーカバー20は、天井壁21を備える。天井壁21の周縁には、カバー側周側壁22が設けられている。カバー側周側壁22と天井壁21とにより画成された空間が、バッテリーVの収容空間S1の上部を構成する。カバー側周側壁22の端部には、カバー側フランジ部23が延設されている。カバー側フランジ部23は、トレー側フランジ部13に対応した形状となっている。即ち、カバー側フランジ部23は、平坦なトレー側フランジ部13に対応した形状であり、トレー側フランジ部13に当接する当接部24と、一対の壁部44に対応した形状であり、一対の壁部44を覆う段差部25とからなる。段差部25は、カバー側フランジ部23の端部に沿って周方向に亘って延設されている。
【0025】
また、段差部25の下面、即ち溝部41側には、カバー側周側壁22の周方向に亘って、溝部41に対向する突起26が設けられている。突起26は、シール部材収容空間S2に収容されたシール部材40を押圧するものであり、その先端部は断面視において円弧面を有しており、丸みを帯びている。当接部24は、トレー側フランジ部13と後述する締結部材により締結されている。
【0026】
枠状フレーム30は、バッテリートレイ10の周側壁12の外周に設けられる。枠状フレーム30は、複数の直線的な金属フレームからなる。即ち、枠状フレーム30は、最前側の最前フレーム部31と、最前フレーム部31の左側にジョイント部材J1を介して接続された前フレーム部32とを備える。また、前フレーム部32の他端側には、ジョイント部材J2を介して左フレーム部33が接続され、左フレーム部33の他端側には、ジョイント部材J3を介して後側左フレーム部34が接続されている。後側左フレーム部34には、最前フレーム部31と平行になるようにジョイント部材J4を介して後フレーム部35が接続されている。後フレーム部35の他端側には、ジョイント部材J5を介して、後側左フレーム部34と平行になるように後側右フレーム部36が接続されている。後側右フレーム部36の他端側には、ジョイント部材J6を介して、左フレーム部33と平行になるように右フレーム部37が接続されている。右フレーム部37の他端側には、ジョイント部材J7を介して、最前フレーム部31が接続されている。このように、枠状フレーム30は、複数の直線的な金属フレームとジョイント部材J1〜J7とでバッテリートレイ10の周側壁12を囲む枠状になるように組み立てられている。また、枠状フレーム30の左フレーム部33、後側左フレーム部34、右フレーム部37、後側右フレーム部36の下面側には、フレーム側フランジ部38が内側に延設されている。
【0027】
このように構成された枠状フレーム30の上面の幅は、バッテリートレイ10のトレー側フランジ部13の幅と同一となるように構成されている。また、枠状フレーム30を構成する各金属フレームは、押し出しにより形成され、図3及び図4に示すように、内部が中空であり、その中央付近には左右方向に亘って梁部39が設けられている。
【0028】
上述した各部材は、以下に説明するようにして固定される。
【0029】
バッテリートレイ10の外壁側には、上述のように枠状フレーム30が下側から取り付けられる。即ち、枠状フレーム30にバッテリートレイ10が嵌めこまれ、枠状フレーム30の上面には、バッテリートレイ10のトレー側フランジ部13が配される。そして、バッテリートレイ10の上側には、バッテリーカバー20が取り付けられる。
【0030】
バッテリートレイ10のシール部材収容空間S2には、シール部材40が一対の壁部44により位置決めされ、収容(組み付け)される。バッテリートレイ10のトレー側フランジ部13上には、バッテリーカバー20のカバー側フランジ部23が配される。カバー側フランジ部23が配されると、バッテリーカバー20に設けられた突起26がシール部材40の上に配されることとなる。このバッテリーカバー20とバッテリートレイ10とがシール部材収容空間S2内に収容されたシール部材40を挟んだ状態で、トレー側フランジ部13上に設置されたカバー側フランジ部23の当接部24とトレー側フランジ部13とは、当接され、枠状フレーム30上に、ブラインドナット51とボルト52とにより固定される。具体的には、枠状フレーム30にはブラインドナット51が所定位置に設けられており、当接部24側からボルト52をブラインドナット51に挿入して当接部24とトレー側フランジ部13と枠状フレーム30とが固定される。固定されることにより、図5(b)に示すように突起26がシール部材収容空間S2内に挿入され、シール部材40が押圧され変形し、シール部材40は、バッテリートレイ10及びバッテリーカバー20により挟持され、バッテリーケース1はシールされる。
【0031】
このようにして固定されると、バッテリーケース1の内部に、即ちバッテリーカバー20とバッテリートレイ10との間に収容空間S1が形成される。この収容空間S1は、シール部材40によりシールされた密閉性の高い空間である。バッテリーVはこの収容空間S1内に密閉された状態で収容されている。
【0032】
また、枠状フレーム30とバッテリートレイ10とは、枠状フレーム30のフレーム側フランジ部38とバッテリートレイ10の底壁11とが固定されていることで、上下方向についても固定されている。具体的には、底壁11に設けられたインサートナット53に底壁11側からボルト52を締結して、フレーム側フランジ部38とバッテリートレイ10の底壁11とが固定される。
【0033】
上述した構成のバッテリーケース1の効果について説明する。
【0034】
バッテリーケース1は、トレー側フランジ部13及び当接部24のブラインドナット51とボルト52により締結された領域よりも内側で、シール部材40によりバッテリートレイ10とバッテリーカバー20とがシールされている。そして、このシール部材40が、外周側壁部42により区画されたシール部材収容空間S2内に収容されていることから、仮に、高圧洗車時等の水がバッテリーカバー20及びバッテリートレイ10の間から侵入し、当接部24とトレー側フランジ部13との当接している領域を越えてきたとしても、外周側壁部42により水がバッテリーVが収容された収容空間S1に侵入することを抑制できる。これにより、本実施形態のバッテリーケース1は防水性が高い。そして、外周側壁部42によりシール部材40に水や油などの液体が直接触れることを抑制することから、シール部材40の変形(又は劣化)を抑制できる。例えば溝部41のみ設けて、シール部材を収容したとすれば、高圧洗車時の水などが当接部24を越えて侵入すると、シール部材に直接水があたり、シール部材を変形させ、水が収容空間S1に侵入してしまう虞がある。これに対し、本実施形態では、外周側壁部42によりシール部材40に直接水が接触することを防止して、シール部材40の変形を抑制し、これによりシール性を向上させているのである。
【0035】
また、本実施形態においては、一対の壁部44を形成することで、溝部41をシール部材40よりも深く形成する必要がなく、バッテリートレイ10の剛性を低下させることがない。仮に、一対の壁部44を設けずに溝部41を深く形成するとすれば、バッテリートレイ20の形状を変更する必要があり、この場合枠状フレーム30の形も変えなければならない。これに対し、本実施形態では、上述のように一対の壁部44を設けているので、溝部41を深く形成する必要がなく、バッテリートレイ10の剛性を保持できるために、変形に強く、シール性を高く保持することができる。また、溝部41をバッテリートレイ10の周側壁12の上面に設けることで、バッテリーケースを大型化してしまうことがない。例えば、周側壁12から離れた位置に形成するとなれば、さらにトレー側フランジ部13を延設する必要があり、バッテリーケース1全体が大型化してしまうことが考えられる。
【0036】
また、本実施形態では、シール部材40の断面形状が円形であり、かつ、シール部材収容空間S2内に収容されていることから、シール部材40が倒れにくい。例えば、楕円形のシール部材をその長径が溝の深さよりも十分長くなるように形成して、シール性を高めることも考えられる。しかし、この場合、シール部材が高さ方向に長いために溝から大きくはみ出てしまい、特に溝のコーナー部においてシール部材が倒れやすく、これがシール不良の原因となってしまう。これに対し、本実施形態では、上述のように、シール部材40は断面形状が円形であるものを用い、かつ、シール部材40は一対の壁部44の中に収容されるので、シール部材40は倒れにくく、シール不良を抑制できる。なお、例えばOリングなどの断面形状が円形であるシール部材は、剛性の高いもの、例えば金属からなる部材同士のシールには用いられるが、剛性の低い樹脂からなる部材同士のシールには一般に用いられない。これは、剛性が低いとシール反力が強く、シールのつぶし量を十分にとることができないからである。しかし、本実施形態においては、枠状フレーム30をバッテリートレイ10の外周側に設けることで、薄肉樹脂からなるバッテリートレイ10の剛性を高めていること、及び、一対の壁部44によりシール部材40を規制し、かつ、突起26によりシール部材40を押圧していることにより、本実施形態では、断面形状が円形であるシール部材40を用いることができ、上述のような効果を奏することができる。
【0037】
また、この外周側壁部42を溝部41の開口縁部に立設することで、シール部材40が安定してシール部材収容空間S2に収容されるので、シール部材40をシール部材収容空間S2に収容する場合に位置決めがしやすい。これにより、シール部材40の位置がずれることによるシール不良を防止して、シール性をより高めることが可能である。また一対の壁部44を設けたことで、シール部材40の位置が規制されるので、例えバッテリーカバー20がずれて設置されたとしても、固定の時に突起26がシール部材40の中央に位置しやすく、シール性が高い状態で固定することができる。
【0038】
さらにまた、バッテリーカバー20が段差部25を有していることにより、カバー側フランジ部23はその長手方向の変形に対して剛性が高い。これにより、バッテリーカバー20は変形しにくいためバッテリーケース1のシール性を高めることができる。
【0039】
また、突起26の先端が断面視において丸みを帯びているので、シール部材40を無理に変形させず、シール部材の劣化(へたりや亀裂)を抑制して防水性をより高めている。
【0040】
さらに、本実施形態においては、シール部材40としては、内側が発泡ゴムからなるものを用いることで、シール部材40の柔軟性が高く、これによりシール部材収容空間S2内のコーナー部においてシール部材にしわが寄ることがなく、より確実にバッテリーケース1のシール性を高めることができる。
【0041】
また、封止材ではなく、シール部材40によりシールしていることから、バッテリーケース1は再現性を有している。
【0042】
このように、本実施形態においては、樹脂製のバッテリーカバー20及び樹脂製のバッテリートレイ10を、シール部材40のシール反力に負けずに固定して、シール部材40をバッテリーカバー20及びバッテリートレイ10により挟持していることで、シール性が高い。この場合に、このシール部材40を収容するシール部材収容空間S2の外周側壁部42を設けることで、バッテリーの収容空間S1への水等の侵入を防止し、かつ、シール部材40の変形を抑制すると共に、シール部材40がコーナー部において倒れることを抑制しているので、シール性が高いと同時に防水性が高い。
【0043】
以下、その他の実施形態について説明する。
【0044】
上述した実施形態では、電気自動車Iにバッテリーケース1を設置した場合について説明したが、これに限定されない。バッテリーケース1は、車両用であり、例えばハイブリッド車のバッテリーケースとしても用いることが可能である。
【0045】
本実施形態では、突起26を設けてシール部材40を押圧したが、突起26を設けずに、段差部25の下面でシール部材40を押圧するように構成してもよい。しかしながら、突起26により押圧することで、上述したように、よりシール力を高めることができると共に、バッテリーカバー20の剛性を高めることができるため好ましい。
【0046】
本実施形態では、外周側壁部42と内周側壁部43とを設けたが、少なくとも外周側壁部42を設けることで、バッテリーケース1の外周側からの液体の侵入を抑制してバッテリーケース1の防水性を高めることが可能である。内周側壁部43を設けることで、シール部材40の位置決めが容易となり、これによりバッテリーケース1のシール性を向上させることができる。内周側壁部43は、本実施形態においては、周方向に亘って連続的に設けるようにしたが、断続的に設けることも可能である。
【0047】
本実施形態では、シール部材40は、断面視において円形状であるものを用いたが、これに限定されない。例えば、断面視において略正方形状であってもよい。また、シール部材40としては、しわがよりにくい素材であればよく、本実施形態に限定されない。例えば、本実施形態では、外側にスキン層が形成された発泡ゴムからなるシール部材を用いたが、シール部材40として外側が内側よりも硬いソリッドゴムで、内側が発泡ゴムからなるものを用いたり、中空のソリッドゴムのみからなっているものであってもよい。また、シール部材40は、外側にソリッドゴムがないものであってもよい。
【0048】
上述した各実施形態では、締結部材としてブラインドナット51を用いたが、これに限定されず、ウエルドナットやウエルドボルト等を用いてもよい。また、両者を固定できればボルトやナットに限定されず、例えば、クリップや押さえプレート等でもよい。
【0049】
バッテリーケース1の形状は、車両の形状により適宜定まるものであり、上述した形状に限定されない。例えば、上述した各実施形態では、バッテリーカバー20はカバー側周側壁22を備えるものであったが、例えば平面状のカバーであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のバッテリーケースは、強度、剛性が高く、かつ密封性が高いため例えば車両製造分野においてバッテリーの収容ケースとして利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 バッテリートレイ
11 底壁
12 周側壁
13 トレー側フランジ部
20 バッテリーカバー
21 天井壁
22 カバー側周側壁
23 カバー側フランジ部
24 当接部
25 段差部
26 突起
30 枠状フレーム
38 フレーム側フランジ部
39 梁部
40 シール部材
41 溝部
42 外周側壁部
51 ブラインドナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーが載置される底壁及び該底壁の周囲を囲む周側壁を有するバッテリートレイと、該バッテリートレイを覆うバッテリーカバーとを備え、
前記バッテリートレイは、
前記周側壁の上面の全周に亘って形成された溝部と、該溝部の少なくとも外周側の開口縁部に立設された壁部と、
前記溝部の全周に亘って連続するように形成され、前記溝部に収容されるシール部材とを有し、
前記溝部にシール部材を組み付けた状態で前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとが固定されることで、前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとの間に前記シール部材が挟持されることを特徴とする車両用バッテリーケース。
【請求項2】
前記バッテリーカバーには、前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとが固定されると前記溝部に収容された前記シール部材を押圧する突起部が、前記溝部に対応して形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用バッテリーケース。
【請求項3】
前記バッテリーカバーには、前記壁部を覆う段差部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用バッテリーケース。
【請求項4】
前記バッテリートレイの周側壁の外側には、枠状フレームが設けられると共に、
前記バッテリートレイは、前記周側壁の上面に設けられたフランジ部を備え、
前記バッテリートレイと前記バッテリーカバーとが該フランジ部の溝部が形成された領域の外側に設けられた締結部材により前記枠状フレームの上面に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用バッテリーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194982(P2011−194982A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62885(P2010−62885)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】