説明

車両用パワーシートの操作スイッチ

【課題】シートの前後スライド、背もたれのリクライニングおよびシート前、後部の高さ調整を感覚的に操作性良く行わせる車両用パワーシートの操作スイッチの提供。
【解決手段】シートの側部に設置されたスイッチ本体に対してスイッチの把持部1を取り付け、その把持部を前、後方向に移動させているあいだシートを前方、後方にスライドさせるスライド用スイッチと、その把持部を上、下方向に移動させているあいだシートの後部をアップ、ダウンさせる後部チルト用スライド用スイッチと、その把持部を前方、後方に回転させているあいだシートの背もたれを前方、後方にリクライニングさせるリクライニング用スライド用スイッチとをスイッチ本体に組み込むとともに、その把持部の前部に、ノブ31を上、下方向に操作しているあいだシートの前部をアップ、ダウンさせる前部チルト用スイッチを組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの前後スライド、リクライニングおよびシート前、後部の高さ調整を行わせる車両用パワーシートの操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用パワーシートの操作スイッチとして、シートの前後スライド、リクライニングおよびシート前、後部の高さ調整を行わせる各スイッチの組付性を良くするために、1つのケースにリクライニングスイッチと、シートの前後スライドおよび前、後部の高さ調整を行わせるシートスイッチとを組み付けて、それぞれ別途に独立したスイッチ操作を行わせるようにしたものが開発されている(特許文献1参照)。しかし、リクライニングスイッチとシートスイッチとが別途に設けられているので、手探りで各スイッチを選びながら目的とするスイッチの操作を行わなければならず、操作性が悪く、誤操作しやすいものになっている。
【0003】
【特許文献1】 特開平9−240340号公報
【0004】
また、従来、操作性の向上を図るべく、図7に示すように、シートの側部に設置された円形の把持部71を掴んで前後X方向に移動させることによってシートの前後スライドを行わせ、その把持部71を前後θ方向に回転させることによってシートの背もたれのリクライニングを行わせるようにしたうえで、その把持面の前部に上、下部分を押すことによってシート前部の高さ調整を行わせるシーソー型の押釦スイッチ72と、その把持面の後部に上、下部分を押すことによってシート後部の高さ調整を行わせるシーソー型の押釦スイッチ73とを組み込んで、シートの動きに即したスイッチ操作を行わせることができるようにしたものが開発されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献2】 実公平6−29111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、シートの動きに即したスイッチ操作を行わせることができるように、シートの側部に設けられた把持部を掴んで前後移動させることによってシートのスライドを行わせ、その把持部を前後方に回転させることによってシートの背もたれのリクライニングを行わせるようにしたものにあって、その把持面の前部、後部にシート前部、後部の高さ調整を行わせる各シーソー型の押釦スイッチを組み込むようにするのでは、把持部を掴んだ状態のままでその各シーソー型の押釦スイッチを操作することができないことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートの側部に設置されたスイッチ本体に対して、シートの前後、上下の各方向に移動できるとともに前方、後方に回転できるように、スイッチの把持部を取り付け、その把持部を前、後方向に移動させているあいだシートを前方、後方にスライドさせるスライド用スイッチと、その把持部を上、下方向に移動させているあいだシートの後部をアップ、ダウンさせる後部チルト用スライド用スイッチと、その把持部を前方、後方に回転させているあいだシートの背もたれを前方、後方にリクライニングさせるリクライニング用スライド用スイッチとをスイッチ本体に組み込むとともに、その把持部の前部に、ノブを上、下方向に操作しているあいだシートの前部をアップ、ダウンさせる前部チルト用スイッチを組み込むことによって、車両用パワーシートの操作スイッチを構成するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、把持部を掴んだ状態のままで、シートの前後スライド、背もたれのリクライニングおよびシート前、後部の高さ調整を、実際のシートの動きに即して感覚的に操作性良く行わせることができるようになる。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明に係るパワーシートの動作状態を示すもので、背もたれの前倒、後倒を行うリクライニング動作A、シート後部のアップ、ダウンを行う後部チルト動作B、シートの前後移動を行うスライド動作C、シート前部のアップ、ダウンを行う前部チルト動作Dおよび背もたれのランバーサポートの前方への押し出し、後方への引き込みを行うランバーサポート動作Eからなっている。そのパワーシートにおける各部動作の駆動機構としては、従来公知のものがそのまま適用されており、ここでは特に図示しない。
【0010】
本発明では、このようなパワーシートの操作スイッチとして、シートの側部に設置されたスイッチ本体に対して、シートの前後、上下の各方向に移動できるとともに前方、後方に回転できるように、スイッチの把持部を取り付けるようにしている。
【0011】
図2は把持部1を示しており、正面からみた形状がほぼ楕円形状のグリップからなっており、図3に示すように、全体を手の平で掴んで、前後X方向および上下Y方向に移動させ、前後θ方向に回転させることができるようになっている。
【0012】
図4は、スイッチ本体2側におけるシート後部のアップ、ダウンを行わせる後部チルト動作B用のスイッチ構造およびシートの前後移動を行わせるスライド動作C用のスイッチ構造を示している。図5は、その各スイッチ構造の接点部分を示している。
【0013】
ここでは、レバー21に取り付けられた把持部(図示せず)を前方、後方に移動させたときのレバー21の動きに応じて、接触子22を介して一対に設けられたシーソー型の各スイッチ部23を切り換えて、シートのスライド用の駆動モータの正転、逆転を行わせるようになっている。
【0014】
また、把持部を上方、下方に移動させたときのレバー21の動きに応じて、接触子24を介して一対に設けられたシーソー型の各スイッチ部25を切り換えて、シート後部チルト用の駆動モータの正転、逆転を行わせるようになっている。
【0015】
また、同様に、そのスイッチ本体2には、特に図示しないが、把持部を前方、後方に回転させたときの把持部に別途取り付けられたレバーの動きに応じて、接触子を介して一対に設けられたシーソー型の各スイッチ部を切り換えて、シートのリクライニング用の駆動モータの正転、逆転を行わせる従来と同様のスイッチ構造が組み込まれている。
【0016】
そして、図2に示すように、把持部1の前部には、ノブ31を上方に引き上げ、下方に押し下げる操作しているあいだシートの前部をアップ、ダウンさせる前部チルト用スイッチ3が組み込まれている。
【0017】
なお、リクライニング動作A用のスイッチ構造、シート後部チルト動作B用のスイッチ構造、スライド動作C用のスイッチ構造および前部チルト用スイッチ3としては、各スイッチ操作が行われないときには中立位置に自動的に復帰するようになっている。
【0018】
また、把持部1の中央部分には、シートの前後方向に対して、前方の押釦41を押しているあいだシートのランバーサポートを前方に押し出し、後方の押釦42を押しているあいだシートのランバーサポートを後方に引っ込める、シーソー型の一対の押釦スイッチ4が組み込まれている。
【0019】
図6は、把持部のスライド動作C時のスイッチ本体2における一対に設けられたシーソー型の各スイッチ部23の切り換え状態に応じてシートのスライド用の駆動モータM1の正転、逆転を行わせる駆動回路D1、把持部の後部チルト動作B時のスイッチ本体2における一対に設けられたシーソー型の各スイッチ部25の切り換え状態に応じてシート後部のチルトアップ、チルトダウン用の駆動モータM2の正転、逆転を行わせる駆動回路D2を示している。また、把持部のリクライニング動作A時のスイッチ本体2における一対に設けられたシーソー型の各スイッチ部26の切り換え状態に応じてシートのリクライニング用の駆動モータM3の正転、逆転を行わせる駆動回路D3、前部チルト用スイッチ3による前部チルト動作D時のスイッチ操作状態に応じてシート前部のチルトアップ、チルトダウン用の駆動モータM4の正転、逆転を行わせる駆動回路D4、ランバーサポート用の一対の押釦スイッチ4によるランバーサポート動作E時のスイッチ操作状態に応じてランバーサポート押し出し、引き込み用の駆動モータM5の正転、逆転を行わせる駆動回路D5を示している。
【0020】
なお、本発明による車両用パワーシートの操作スイッチにあっては、把持部1の中央部分にランバーサポート用の一対の押釦スイッチ4を必ずしも設ける必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、車両用パワーシートにおける操作スイッチの把持部を掴んだ状態のままで、シートの前後スライド、背もたれのリクライニングおよびシート前、後部のチルトの一連の調整を、実際のシートの動きに即して感覚的に操作性良く行わせることができるように工夫したもので、車両用パワーシートの操作スイッチとして使用するのに有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るパワーシートの動作状態を示す図である。
【図2】本発明による車両用パワーシートの操作スイッチにおける把持部の正面図である。
【図3】本発明による車両用パワーシートの操作スイッチにおける把持部を手の平で掴んで操作する状態を示す正面図である。
【図4】本発明による車両用パワーシートの操作スイッチにおけるスイッチ本体側の後部チルト動作用のスイッチ構造およびのスライド動作用のスイッチ構造を示す側面図である。その基本的な構成例による傾倒センサにおけるムーブメントを示す正面図である。
【図5】図4に示すスイッチ構造の接点部分を示す平面図である。
【図6】本発明による車両用パワーシートの操作スイッチにおける各スイッチ動作に応じた各部駆動用モータの駆動回路を示す図である。
【図7】従来の車両用パワーシートの操作スイッチの把持部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 把持部
2 スイッチ本体
3 前部チルト用スイッチ
4 ランバーサポート用の一対の押釦スイッチ4
A 車体リクライニング動作
B 後部チルト動作
C スライド動作
D 前部チルト動作
E ランバーサポート動作E

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの側部に設置されたスイッチ本体に対して、シートの前後、上下の各方向に移動できるとともに前方、後方に回転できるように、スイッチの把持部を取り付け、その把持部を前、後方向に移動させているあいだシートを前方、後方にスライドさせるスライド用スイッチと、その把持部を上、下方向に移動させているあいだシートの後部をアップ、ダウンさせる後部チルト用スライド用スイッチと、その把持部を前方、後方に回転させているあいだシートの背もたれを前方、後方にリクライニングさせるリクライニング用スライド用スイッチとをスイッチ本体に組み込むとともに、その把持部の前部に、ノブを上、下方向に操作しているあいだシートの前部をアップ、ダウンさせる前部チルト用スイッチを組み込むことによって構成された車両用パワーシートの操作スイッチ。
【請求項2】
把持部の中央部分に、シートの前後方向に対して一対の押釦スイッチを組み込んで、前方の押釦スイッチを押しているあいだシートのランバーサポートを前方に押し出し、後方の押釦スイッチを押しているあいだシートのランバーサポートを後方に引っ込めるようにしたことを特徴とする請求項1の記載による車両用パワーシートの操作スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−310243(P2006−310243A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160368(P2005−160368)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000222934)東洋電装株式会社 (69)
【Fターム(参考)】