説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】メンテナンス性がよく小型化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供する。
【解決手段】基体1の前面1aに取り付けられて電気部品を囲繞するハウジング30と、基体1の後面1bに取り付けられたモータ20と、を備え、ハウジング30は、第一ハウジング取付ねじ32と第二ハウジング取付ねじ33とによって基体1に固定されており、第一ハウジング取付ねじ32は、基体1における基体構成穴が配置された一側面側において、ハウジング30側からハウジング30のフランジ貫通孔32a,32bに挿通されて基体1に螺合され、第二ハウジング取付ねじ33は、基体1の他側面側において、基体1の後面側から貫通孔9に挿通されてハウジング30に螺合される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ブレーキ液圧制御装置として、特許文献1〜3に示すものが知られている。
特許文献1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置では、コントロールハウジング(以下、ハウジングと称す)に設けたフランジに貫通孔を形成し、この貫通孔にハウジング側からねじを挿通して基体に螺合させることで、ハウジングを基体に固定している。
【0003】
また、特許文献2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ハウジングの内部に貫通孔を形成し、この貫通孔にねじを挿通して基体に螺合させることで、ハウジングを基体に固定している。
【0004】
また、特許文献3に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置では、基体に貫通孔を形成し、ハウジングの取付面と反対側の面からねじを挿通してハウジングに螺合させることで、ハウジングを基体に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−47945号公報
【特許文献2】特開2000−159081号公報
【特許文献3】特開2009−6855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ハウジングに設けたフランジに貫通孔を形成しているので、ねじの頭部やねじ螺合用の取付治具(例えばドライバ等)がハウジングに干渉するのを防止することができる。
しかしながら、取付ねじの本数分、ハウジングにフランジを設けた上でハウジング内に必要な容積を確保しようとすると、ハウジングが大型化し、また、これに対応して基体も大型化するといった問題があった。
【0007】
この点、特許文献2の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ハウジング内に取付ねじが収容されているので、フランジが不要となり、ハウジングの大型化を回避することができる。しかしながら、ハウジング内に取付ねじが収容されてしまうので、組み付け後は、ハウジングと基体との分離が難くなり、特にカバーが接着や溶着等でハウジングに固着されている場合には、ハウジングと基体とを分離することができず、メンテナンス性が悪かった。
【0008】
また、特許文献3の車両用ブレーキ液圧制御装置では、取付ねじの数だけ貫通孔を基体に形成する必要があり、このことは、基体の小型化、ひいては車両用ブレーキ液圧制御装置の小型化を図る上で不利であった。
【0009】
このような観点から、本発明は、メンテナンス性がよく小型化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために創案された本発明は、基体と、この基体の前面に取り付けられて電気部品を囲繞するハウジングと、前記基体の前面の反対側となる後面に取り付けられて前記基体に内蔵されたポンプを駆動するモータと、を備え、前記基体に形成された液路構成部または内挿部品装着部である基体構成穴が、前記基体の前記前面と前記後面をつなぐ側面のうち一側面側に配置された車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記ハウジングは、第一の取付ねじと第二の取付ねじとによって前記基体に固定されており、前記第一の取付ねじは、前記基体の前記一側面側において、前記ハウジング側から当該ハウジングのフランジに形成されたフランジ貫通孔に挿通されて前記基体に螺合され、前記第二の取付ねじは、前記基体の一側面側の反対側となる他側面側において、前記基体の前記後面側から前記基体に形成された貫通孔に挿通されて前記ハウジングに螺合されるようになっていることを特徴とする。
ここで、基体に形成された液路構成部としては、基体に形成される流路や接続ポート(例えば、入口ポート、出口ポート)等がある。
また、基体に形成された内挿部品装着部としては、電磁弁、リザーバ、モータ、モータの端子棒、およびポンプ等を内挿する穴がある。
【0011】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ハウジングは、ハウジング側(前面側)からフランジ貫通孔に挿通されて基体に螺合される第一の取付ねじと、基体の後面側から基体の貫通孔に挿通されてハウジングに螺合される第二の取付ねじとによって基体の前後両側から固定されるようになっているので、ハウジングの取り付けに必要な全てのねじをハウジング側(前面側)から挿通して行う場合に比べて、ハウジング側に形成するフランジ貫通孔を減少することができ、その分、ハウジングの小型化を図ることができる。
また、これとは逆に、ハウジングの取り付けに必要な全てのねじを基体の後面側から挿通して行う場合に比べて、基体に形成する貫通孔を減少することができ、その分、基体が大型化するのを回避することができる。
【0012】
また、第一の取付ねじは、基体の一側面側(例えば、上端面側)において基体に螺合されるようになっているので、基体の一側面側において、基体に形成された液路構成部または内挿部品装着部である基体構成穴との干渉を回避しつつ一側面側のスペースを有効に利用してハウジングを取り付けることができる。これにより、基体における無駄なスペースを極力なくしてスペース効率を向上させることができる。
また、第二の取付ねじは、基体の他側面側(例えば、下端面側)において、基体の後面側から貫通孔に挿通されてハウジングに螺合されるようになっているので、基体の他側面側のスペースを有効に利用してハウジングを取り付けることができる。
【0013】
さらに、基体とハウジングとは、組み付け後であっても第一の取付ねじおよび第二の取付ねじを外すことによって再度分離することができるので、メンテナンス性も確保することができる。
【0014】
また、本発明は、前記基体は、前記第一の取付ねじを螺合する螺合穴と前記基体構成穴とを有し、前記螺合穴が、前記基体の前記一側面側で前記前面から穿設されているとともに、前記基体構成穴は、前記基体の前記一側面側で前記螺合穴よりも前記後面側において穿設された前記液路構成部として構成されており、前記螺合穴と前記液路構成部とは、互いに干渉せず、かつ前記前面または前記後面への投影面において少なくとも前記螺合穴の一部が前記液路構成部と重なっていることを特徴とする。
【0015】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、螺合穴と液路構成部とが、互いに干渉せず、かつ前面または前記後面への投影面において少なくとも前記螺合穴の一部が前記液路構成部と重なっているので、基体の一側面側のスペースを有効に利用してハウジングを取り付けることができる。これにより、基体における無駄なスペースを極力なくしてスペース効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明は、前記基体の前記前面および前記後面は、四角形状に形成されており、前記第一の取付ねじは、前記基体の前記一側面側の隅部において前記基体に螺合され、前記第二の取付ねじは、前記基体の前記他側面側の隅部において前記貫通孔に挿通されて前記ハウジングに螺合される構成とするのがよい。
【0017】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、デッドスペースになりやすい基体の一側面側および他側面側の隅部を有効に活用して、ハウジングを基体に固定することができるので、基体の他の部分に第一の取付ねじが螺合される場合や基体の他の部分に貫通孔が形成される場合に比べて、車両用ブレーキ液圧制御装置全体の小型化を図ることができる。
また、基体の一側面側および他側面側の隅部でハウジングが固定されることとなるので、基体の大きさを有効に利用してねじ間隔を広く設定した固定が可能となる。したがって、基体にハウジングを安定して固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メンテナンス性がよく小型化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の前面側から見た分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の後面側から見た分解斜視図である。
【図3】穴および流路の内面を可視化した基体の正面図である。
【図4】穴および流路の内面を可視化した基体の側面図である。
【図5】穴および流路の内面を可視化した基体の斜視図である。
【図6】穴および流路の内面を可視化した車両用ブレーキ液圧制御装置の後面側から見た斜視図である。
【図7】穴および流路の内面を可視化した車両用ブレーキ液圧制御装置の前面側から見た斜視図である。
【図8】車両用ブレーキ液圧制御装置の正面図である。
【図9】車両用ブレーキ液圧制御装置の背面図である。
【図10】(a)(b)は取付手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)Uは、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ制御装置Uを自動二輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ制御装置Uが搭載される車両を限定する趣旨ではない。
【0022】
図1に示すように、ブレーキ制御装置Uは、図示しない電磁弁等の部材が装着される基体1と、モータ20と、コントロールハウジング(ハウジング)30とを備えて構成されている。ハウジング30は、基体1の前面(正面)1aに組み付けられ、その内部に電子制御ユニットや電気部品を収容している。モータ20は、基体1の後面(背面)1b(図2、図8参照)に組み付けられている。
【0023】
(ブレーキ制御装置の構成)
次に、ブレーキ制御装置Uの構造を詳細に説明する。なお、以下の説明における「左右」「上下」は、図示の状態を基準として便宜的に定めたものであり、車両に取り付けた状態とは何ら関係はない。そして、基体1は、前面1aと後面1bをつなぐ、上面1e、下面1g、左面1fおよび右面1hの四つの側面を備えており、このうち上面1e側となる基体の上端面側1cが特許請求の範囲に記載の「基体の一側面側」に相当し、下面1g側となる基体の下端面側1dが同じく「基体の他側面側」に相当する。
【0024】
(基体)
まず、基体1の構成を、図1から図4を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、基体1は、略直方体を呈する金属製の部材であり、流路等(第一流路41等)を構成する液路構成部や、入口弁等を内挿する内挿部品装着部(入口弁装着穴4等)といった基体構成穴が形成されている。基体1の前面1aには、図示しない電磁弁やリザーバが組み付けられ、これらを覆う状態にハウジング30が組み付けられる。また、後面1bには、図2に示すように、モータ20が組み付けられ、後面1bの左右上端部には、入口ポート2,2(接続ポート)が開口して形成されている。また、基体1の上面1eには、出口ポート(接続ポート)3,3が開口して形成されている。なお、基体1の内部には、左面1fおよび右面1hに形成されたポンプ装着穴10,10を通じて図示しないポンプが組み付けられている。
【0025】
図1に示すように、前面1aには、二つの入口弁装着穴4,4と、二つの出口弁装着穴5,5と、二つのリザーバ穴6,6とが開口している。また、前面1aには、モータ20の図示しない二つの端子棒が挿通される端子孔7,7と、前面1a側からハウジング30を固定するための第一ハウジング取付ねじ(第一の取付ねじ)32が螺合される二つの螺合穴8,8とが開口している。
螺合穴8,8は、四角形状の前面1aの上端面側1cにおける左右隅部から後面1bに向かって形成(穿設)された有底の穴であり、基体1の後面1bの左右上端に配置される入口ポート2,2(図2参照、図4参照)に干渉しない深さを有して形成されている(図2参照)。
ここで、螺合穴8は、図3に示すように、基体1の前面1aまたは後面1b(この図では後面1b)への投影面において、螺合穴8の全体が入口ポート2と重なるように(オーバーラップするように)配置されている。
また、螺合穴8は、図4に示すように、基体1の側面1fまたは側面1h(この図では側面1f)への投影面において、入口ポート2と重ならないように(オーバーラップしないように)配置されている。さらに、本実施形態の螺合穴8は、基体1の側面1fまたは側面1h(この図では側面1f)への投影面において、入口ポート2の底面から流路構成部1Fの前面1aに向かって穿設された第一流路41に対しても重ならないように配置されている。
つまり、螺合穴8は、基体1の隅部のスペースを有効に利用して形成されている。
なお、本実施形態では、基体1の前面1aまたは後面1b(この図では後面1b)への投影面において、螺合穴8の全体が入口ポート2と重なるように配置したが、これに限られることはなく、基体1の前面1aまたは後面1b(この図では後面1b)への投影面において、螺合穴8の少なくとも一部が入口ポート2と重なるように配置してもよい。
【0026】
また、前面1aには、後面1b側からハウジング30を固定するための第二ハウジング取付ねじ(第二の取付ねじ)33が挿通される二つの貫通孔9,9が開口している。
貫通孔9,9は、四角形状の前面1aの下端面側1dの左右隅部から後面1bまで貫通(あるいは、後面1bの下端面側1dの左右隅部から前面1aまで貫通)して形成されている。
なお、本実施形態においては、入口ポート2,2、出口ポート3,3、入口弁装着穴4,4、出口弁装着穴5,5、リザーバ穴6,6、螺合穴8,8および貫通孔9,9は、各々、基体1の中心線Xを挟んで前面1aの同一平面上に左右対称に配置されている。端子孔7、7は、図2に示すように、モータ装着穴11の上下で、中心線X上(左右方向の中央)に配置されている。
ここで、中心線Xとは、モータ20の図示しない回転軸を通る(含む)平面で、かつポンプの中心軸を法線とする平面のうち、基体1の表面(前面1a、後面1b、上面1e、下面1g)との交線である。
【0027】
図2に示すように、後面1bには、モータ20の図示しない回転軸が挿入されるモータ装着穴11と、端子孔7,7と、第二ハウジング取付ねじ(第二の取付ねじ)33が挿通される二つの貫通孔9,9と、モータ取付ねじ21が螺合される二つのモータ取付穴19,19とが開口している。端子孔7,7とモータ装着穴11は、中心線X上(左右方向の中央)に配置されている。
また、左面1f、右面1hには、ポンプ孔10,10がそれぞれ開口している。
【0028】
図1および図2に示すように、基体1には、二つのブレーキ系統に対応する二つの流路構成部1F,1Rが形成されている。具体的には、前面1a側から見て基体1の右半分(中心線Xよりも右側にある領域)に前輪側のブレーキ系統に対応する流路構成部1Fが形成されており、基体1の左半分(図中に付した中心線Xよりも左側にある領域)に後輪側のブレーキ系統に対応する流路構成部1Rが形成されている。なお、図示は省略するが、基体1の右半分に後輪側のブレーキ系統に対応する流路構成部を形成し、左半分に前輪側のブレーキ系統に対応する流路構成部を形成しても差し支えない。また、流路構成部1F,1Rは、本実施形態では、その内部構成も含めて実質的に左右対称になっている。
【0029】
入口ポート2(図2参照)は、マスタシリンダ等の液圧源からの配管(図示せず)が接続される部分である。入口ポート2は、図2、図4に示すように、有底円筒状の穴であり、基体1の後面1bに開口している。本実施形態では、図4に示すように、基体1の後面上端部が後方に突出して肉厚が確保されており、この突出した部分に入口ポート2が形成されている。そして、入口ポート2は、図2に示すように、後面側から見て、基体1の上端面側1cの左右隅部に位置しており、この左右隅部のスペースを有効に利用して形成されている。
【0030】
入口ポート2は、図3、図4に示すように、第一流路41を介して第二流路42に連通し、第二流路42から第三流路43を介して入口弁装着穴4に連通している。第一流路41は、入口ポート2の底面から流路構成部1Fの前面1aに向かって穿設された横孔からなり、第二流路42に接続されている。第二流路42は、流路構成部1Fの上面1eから下面1gに向かって穿設された縦孔からなり、ポンプ孔10を上下方向に貫通して後記する第七流路47(図5参照)にまで達している。第三流路43は、流路構成部1Fの右面1hから反対側の左面1fに向けて穿設された横孔からなり、第二流路42に交差して入口弁装着穴4の側壁にまで達している。なお、第二流路42の上面1eへの開口部および第三流路43の右面1hへの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
【0031】
入口弁装着穴4は、入口弁となる図示しない常開型の電磁弁が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、出口ポート3の下方に形成されている。入口弁装着穴4は、第四流路44を介して出口弁装着穴5と連通している。第四流路44は、出口ポート3の底面から流路構成部1Fの下面1gに向かって穿設された縦孔からなり、入口弁装着穴4の側壁を上下方向に貫通して出口弁装着穴5の浅部(吸入側)にまで達している。
【0032】
出口ポート3は、車輪ブレーキに至る配管(図示せず)が接続される部分である。出口ポート3は、有底円筒状の穴であり、基体1の上面1eに開口している。出口ポート3は、第四流路44を介して入口弁装着穴4および出口弁装着穴5に連通している。
【0033】
出口弁装着穴5は、出口弁となる図示しない常閉型の電磁弁が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、ポンプ孔10を挟んで入口弁装着穴4の下方に形成されている。図5の流路構成部1Rを参照して、出口弁装着穴5は、その深部(吐出側)に接続された第五流路45および第六流路46を介してリザーバ穴6に連通している。第五流路45は、基体1の下面1gから流路構成部1Rの上面1eへ向かって穿設された縦孔からなり、出口弁装着穴5の深部の側壁を上下方向に貫通して第六流路46にまで達している。第六流路46は、リザーバ穴6の底面から流路構成部1Rの後面1bへ向かって穿設された横孔からなり、第五流路45にまで延設して連通している。なお、第五流路45の下面1gへの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
【0034】
リザーバ穴6は、図示しないリザーバが装着される有底円筒状の穴であり、ポンプ孔10の前方で、前面1aに開口して形成されている。リザーバ穴6は、ポンプ孔10よりも前面1a側に形成されており、図4に示すように、基体1の前面1a側から見て、少なくとも底面の一部がポンプ孔10の中心軸(不図示)と重なるように配設されている。
図5の流路構成部1Rを参照して、リザーバ穴6は、第六流路46および第五流路45を介して出口弁装着穴5に連通している。また、リザーバ穴6は、第七流路47および第二流路42を介してポンプ孔10の深部と連通している。第七流路47は、ポンプ孔10の底面から流路構成部1Rの後面1bに向かって穿設された横孔からなり、第二流路42に連通している。この第七流路47には、チェック弁6a(一方向弁)が装着されている。
【0035】
図2に示すように、モータ装着穴11は、モータ20の図示しない回転軸の先端部が挿入される有底の段付き円筒状の穴である。モータ装着穴11は、基体1の後面1bに開口して形成され、中心線X上(左右方向の中央)に配置されている。本実施形態では、図3に示すように、モータ装着穴11を囲むようにして入口弁装着穴4,4、出口弁装着穴5,5、リザーバ穴6,6が配置されている。モータ装着穴11の側面には、ポンプ孔10,10が開口している。
【0036】
ポンプ孔10は、図示しないポンプが装着される段付き円筒状の孔であり、基体1の右面1hからモータ装着穴11の側面に向かって貫通して形成されている。
【0037】
螺合穴8,8は、前記したように、基体1の前面1aの上端面側1cにおける左右隅部にそれぞれ形成されており、その内側には第一ハウジング取付ねじ32が螺合される雌ねじが形成されている。一方の螺合穴8は、流路構成部1Fの入口ポート2の前方において、第二流路42の側方の隅部となる側で、第三流路43の上方となる位置に形成されている。他方の螺合穴8は、流路構成部1Rの入口ポート2の前方において、第二流路42の側方の隅部となる側で、第三流路43の上方となる位置に形成されている。つまり、螺合穴8,8は、基体1の左右上端の隅部において他の穴や流路等に干渉しない位置にそれぞれ形成されている。
【0038】
貫通孔9,9は、前記したように、基体1の前面1aの下端面側1dにおける左右隅部にそれぞれ形成されている。左右隅部には、図3に示すように、図示しない車両へ基体1を固定するための固定穴1A,1Aが形成されており、一方の貫通孔9は、流路構成部1Fのリザーバ穴6の下方において、第五流路45の側方に形成されており、固定穴1Aよりもさらに隅部となる側に貫通して形成されている。他方の貫通孔9は、流路構成部1Rのリザーバ穴6の下方において、第五流路45の側方に形成されており、固定穴1Aよりもさらに隅部となる側に貫通して形成されている。つまり、貫通孔9,9は、基体1の左右下端の隅部において他の穴や流路等に干渉しない位置にそれぞれ形成されている。
さらに、貫通孔9,9は、図9に示すように、後面1b側から見てモータ20のフランジ22と重ならない位置に形成されている。言い換えれば、貫通孔9,9は、モータ20のフランジ22と当接する部分から所定の距離オフセットするように形成されており、後面1b側から挿通される第二ハウジング取付ねじ33の胴部および頭部がモータ20のフランジ22と干渉しないように構成されている。
【0039】
モータ取付穴19,19は、図2に示すように、基体1の後面1bの左右に二つ形成されており、その内側には固定ねじ21が螺合される雌ねじが形成されている。流路構成部1R側のモータ取付穴19は、図3に示すように、流路構成部1R側におけるポンプ孔10の上方位置に形成され、また、流路構成部1F側のモータ取付穴19は、流路構成部1F側のポンプ孔10の下方位置に形成されている。
本実施形態では、各モータ取付穴19,19が、他の穴に干渉しない位置で、螺合穴8から貫通孔9までの範囲の上下方向位置(図9参照)に形成されている。なお、モータ取付穴19,19は、モータ装着穴11の図示しない軸芯を中心として互いに点対称の位置に形成されている。
【0040】
(ハウジング)
図1および図2に示すように、ハウジング30は、図示しない電磁弁やリザーバを囲む筒状の側壁34を有しており、側壁34内における前方位置に、電子制御ユニットを構成する基板31(図1、図7参照)が支持されている。側壁34の前端開口には、蓋部材35が装着されている。
側壁34の基端部には、基体1の前面1aに装着されるフランジ部36が形成されており、このフランジ部36の左右上端部には、図1に示すように、第一ハウジング取付ねじ32が挿通されるフランジ貫通孔32a,32bが形成されている。また、フランジ部36の左右下端部には、第二ハウジング取付ねじ33が螺合される取付穴33a(図6,図7参照、一方のみ図示)が形成されている。
【0041】
フランジ貫通孔32a,32bは、基体1の前面1aに開口する螺合穴8,8に対応する位置に形成されており、図8に示すように、ハウジング30の前面側から見て側壁34の縁部に干渉しないように、側壁34の上端角部34aおよび上端部の一部34bが切り欠かれている。これによって、第一ハウジング取付ねじ32の頭部等が側壁34に干渉しないようになっている。
また、このように、側壁34の上端角部34aおよび上端部の一部34bが切り欠かれて第一ハウジング取付ねじ32が装着されるようになっているので、ハウジング30の最外周面からフランジ部36を大きく張り出す必要がなく、ハウジング30および基体1の小型化を達成することができる。これにより、ブレーキ制御装置Uの全体の小型化が可能となる。
【0042】
取付穴33a(図6参照、以下同じ)は、フランジ部36にインサートモールドにて埋設されたナット37からなる。取付穴33aは、基体1の前面1aに向かって開口しており、基体1の前面1aに開口する貫通孔9,9に対応する位置に配設されている。
【0043】
(モータ)
図1および図2に示すように、モータ20には、モータ取付用貫通孔23を備えたフランジ22が設けられている。モータ取付用貫通孔23は、基体1のモータ取付穴19に対応するように、二つ形成されており、モータ20の軸芯を中心として互いに点対称の位置に形成されている。
【0044】
(ハウジング、モータの基体への固定)
次に、ハウジング30およびモータ20を基体1に固定する手順について説明する。
【0045】
ハウジング30を基体1に固定するに際しては、基体1の前面1aに、図示しない電磁弁やリザーバを装着した後に、電磁弁を覆うように、ハウジング30を基体1の前面1aに当接させる(図10(a)参照)。そして、ハウジング30側から第一ハウジング取付ねじ32をハウジング30のフランジ貫通孔32a,32b(図1参照)にそれぞれ挿通し、その先端を基体1の前面1aに開口した螺合穴8,8(図1参照)にそれぞれ螺合させる。
一方、図10(b)に示すように、基体1の後面1b側から基体1の貫通孔9,9に第二ハウジング取付ねじ33を貫通させて、その先端をハウジング30の取付穴33a(図6、図7参照)にそれぞれ螺合させる。
これによって、ハウジング30の上端および下端が基体1に引き付けられつつ基体1の前面1aに密着し、ハウジング30が基体1に固定される。
【0046】
その後、モータ20を基体1の後面1bに当接させて、モータ取付ねじ21を、基体1の後面1b側からモータ取付用貫通孔23(図2参照)に貫通させて、基体1のモータ取付穴19(図2参照)に螺合させる。これによって、モータ20が基体1に押し付けられて固定される。
【0047】
なお、本実施形態では、基体1にハウジング30を固定した後にモータ20を固定しているが、ハウジング30とモータ20の基体1への取付順序は逆であっても構わない。
また、本実施形態では、第一ハウジング取付ねじ32を基体1の螺合穴8に螺合させてから、第二ハウジング取付ねじ33を貫通孔9に挿通してハウジング30に螺合させているが、螺合順序は逆であっても構わない。
【0048】
以上説明した本実施形態に係るブレーキ制御装置Uによれば、ハウジング30は、ハウジング30側(基体1の前面1a側)からフランジ貫通孔32a,32bに挿通されて基体1に螺合される第一ハウジング取付ねじ32と、基体1の後面1b側から基体1の貫通孔9,9に挿通されてハウジング30に螺合される第二ハウジング取付ねじ33とによって基体1の両側から固定されるようになっているので、ハウジング30の取り付けに必要な全てのねじをハウジング30側から挿通する場合に比べて、ハウジング30側に形成するフランジ貫通孔32a,32bを減少することができ、その分、ハウジング30の小型化を図ることができる。
【0049】
また、これとは逆に、ハウジング30の固定に必要な全てのねじを基体1の後面1b側から挿通して行う場合に比べて、基体1に形成する貫通孔9を減少することができ、その分、基体1が大型化するのを回避することができる。
【0050】
また、第一ハウジング取付ねじ32は、基体1の上端面側1cにおいて基体1に螺合されるようになっているので、基体1の上端面側1cにおける入口ポート2等との干渉を回避しつつ上端面側1cのスペースを有効に利用してハウジング30を取り付けることができる。これにより、基体1における無駄なスペースを極力なくしてスペース効率を向上させることができる。
【0051】
さらに、基体1とハウジング30とは、組み付け後であっても第一ハウジング取付ねじ32および第二ハウジング取付ねじ33を外すことによって再度分離することができるので、メンテナンス性も確保することができる。
【0052】
また、図3に示すように、基体1の前面1aまたは後面1b(この図では後面1b)への投影面において、螺合穴8の全体が入口ポート2と重なるように配置され、また、図4に示すように、基体1の側面1fまたは側面1h(この図では側面1f)への投影面において、螺合穴8と入口ポート2とが相互に重ならないように配置されているので、基体1の上端面側1cにおける隅部のスペースを有効に利用してハウジング30を取り付けることができる。
【0053】
また、基体1は略直方体を呈して前面1aおよび後面1bが四角形状に形成されており、第一ハウジング取付ねじ32は、基体1の上端面側1cの左右隅部において螺合穴8に螺合され、第二ハウジング取付ねじ33は、基体1の下端面側1dの左右隅部において貫通孔9に挿通されてハウジング30に螺合されるようになっているので、装着穴や流路等といった構成要素の配置されない基体1の隅部を有効に活用してハウジング30を基体1に固定することができ、基体1の小型化、ひいては、ブレーキ制御装置Uの小型化を図ることができる。
また、基体1の隅部でハウジング30が固定されることとなるので、基体1の大きさを有効に利用してねじ間隔を広く設定した固定が可能となる。したがって、基体1にハウジング30を安定して固定することができる。
【0054】
なお、前記実施形態では、基体1の上端面側1cで第一ハウジング取付ねじ32を螺合し、下端面側1dで第二ハウジング取付ねじ33を基体1に挿通して螺合する構成としたが、これに限られることはなく、基体1における構成要素(基体構成穴)の配置によっては、上端面側1cで第二ハウジング取付ねじ33を基体1に挿通して螺合し、下端面側1dで第一ハウジング取付ねじ32を螺合するように構成してもよい。
また、ハウジング30の取り付けは、一本の第一ハウジング取付ねじ32および一本の第二ハウジング取付ねじ33で行ってもよく、使用する本数は適宜設定することができる。
また、基体1の形状は、略直方体であるものに限られることはなく、種々の形状を採用することができる。この場合、第一ハウジング取付ねじ32が螺合される螺合穴8や第二ハウジング取付ねじ33が挿通される貫通孔9は、基体におけるハウジング30の取付面の端部近傍に設けられることが好ましい。
【0055】
また、本実施形態においては、自動二輪車に好適に用いられるブレーキ制御装置Uを例示したが、前記した技術的事項を自動四輪車に用いられるブレーキ制御装置に適用しても差し支えない。
【符号の説明】
【0056】
U ブレーキ制御装置(車両用ブレーキ液圧制御装置)
1 基体
1a 前面(正面)
1b 後面(背面)
1c 上端面側
1d 下端面側
2 入口ポート(接続ポート)
3 出口ポート(接続ポート)
8 螺合穴
9 貫通孔
20 モータ
30 ハウジング
32a,32b フランジ貫通孔
32 第一ハウジング取付ねじ(第一の取付ねじ)
33 第二ハウジング取付ねじ(第二の取付ねじ)
36 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、この基体の前面に取り付けられて電気部品を囲繞するハウジングと、前記基体の前面の反対側となる後面に取り付けられて前記基体に内蔵されたポンプを駆動するモータと、を備え、
前記基体に形成された液路構成部または内挿部品装着部である基体構成穴が、前記基体の前記前面と前記後面とをつなぐ側面のうち一側面側に配置された車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記ハウジングは、第一の取付ねじと第二の取付ねじとによって前記基体に固定されており、
前記第一の取付ねじは、前記基体の前記一側面側において、前記ハウジング側から当該ハウジングのフランジに形成されたフランジ貫通孔に挿通されて前記基体に螺合され、
前記第二の取付ねじは、前記基体の一側面側の反対側となる他側面側において、前記基体の前記後面側から前記基体に形成された貫通孔に挿通されて前記ハウジングに螺合されるようになっていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記基体は、前記第一の取付ねじを螺合する螺合穴と前記基体構成穴とを有し、
前記螺合穴が、前記基体の前記一側面側で前記前面から穿設されているとともに、
前記基体構成穴は、前記基体の前記一側面側で前記螺合穴よりも前記後面側において穿設された前記液路構成部として構成されており、
前記螺合穴と前記液路構成部とは、互いに干渉せず、かつ前記前面または前記後面への投影面において少なくとも前記螺合穴の一部が前記液路構成部と重なっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記基体の前記前面および前記後面は、四角形状に形成されており、
前記第一の取付ねじは、前記基体の前記一側面側の隅部において前記基体に螺合され、
前記第二の取付ねじは、前記基体の前記他側面側の隅部において前記貫通孔に挿通されて前記ハウジングに螺合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73634(P2011−73634A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229050(P2009−229050)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】