説明

車両用ブレーキ装置

【課題】マスタピストンの背面を臨ませる倍力液圧作用室の液圧低下時にはバックアップピストンがマスタピストンを直接押圧すべく前進作動することを可能とした車両用ブレーキ装置において、部品点数の増大を回避した簡単な構成で、調圧弁手段の異常による倍力液圧作用室の液圧低下時に小さなブレーキ操作力でマスタシリンダからブレーキ液圧を確実に出力させる。
【解決手段】ケーシングおよびバックアップピストン64A間に形成されて液圧発生源に接続される入力側環状室93と、倍力液圧作用室22との間をシールする環状のシール手段95がケーシングおよびバックアップピストン64A間に介装され、バックアップピストン64Aが所定ストローク以上前進するのに応じて入力側環状室93および倍力液圧作用室22間を連通する連通路216が、バックアップピストン64Aおよびケーシングの一方に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倍力液圧作用室に背面を臨ませたマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダと、液圧発生源と、前面を前記倍力液圧作用室に臨ませるとともに後退限を規制されて前記ケーシングに摺動可能に嵌合されるバックアップピストンならびに液圧発生源の出力液圧を調圧して倍力液圧作用室に作用せしめることを可能としてバックアップピストンに内蔵される調圧弁手段を有するとともに倍力液圧作用室の液圧低下時にはバックアップピストンが液圧発生源の出力液圧に基づく液圧力に抗してマスタピストンを直接押圧すべく前進作動するように構成される液圧ブースタとを備える車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用ブレーキ装置では、倍力液圧作用室の液圧低下時に制御ピストンを液圧発生源の出力液圧に基づく液圧力に抗して前進させることでバックアップピストンを前進せしめ、バックアップピストンがマスタピストンを直接押圧することでマスタシリンダからブレーキ液圧を出力することが可能であり、液圧発生源の異常によって倍力液圧作用室の液圧が低下したときには、液圧発生源の出力液圧に基づいて制御ピストンに作用する液圧力が小さいので、バックアップピストンを前進作動せしめてマスタピストンを直接押圧するのに要する操作力は比較的小さくてすむ。しかるに液圧発生源が正常に作動している状態での調圧弁手段の異常によって倍力液圧作用室の液圧が低下したときには、液圧発生源の出力液圧に基づく液圧力に抗して制御ピストンを前進せしめ、さらにマスタピストンを直接押圧しつつバックアップピストンを前進作動せしめる必要があるので、マスタシリンダからブレーキ液圧を出力するのに大きなブレーキ操作力が必要となる。そこで液圧発生源および倍力液圧作用室間を結ぶ液圧路に液圧ブースタの調圧弁手段とは別の電磁開閉弁が設けられ、調圧弁手段に異常が生じたときには、前記電磁開閉弁を開弁して液圧発生源の出力液圧を倍力液圧作用室に導くようにして、調圧弁手段の異常時でも比較的小さなブレーキ操作力でマスタシリンダからブレーキ液圧を出力することを可能としたものが、特許文献1で知られている。
【特許文献1】特開2006−240542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示されるものでは、液圧ブースタ以外に電磁開閉弁が必要となり、部位品点数が多くなるだけでなく、万一、電磁開閉弁が閉弁固着してしまったときには、マスタピストンをバックアップピストンで直接押圧するのに大きなブレーキ操作力が必要となる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の増大を回避した簡単な構成で、調圧弁手段の異常による倍力液圧作用室の液圧低下時に、小さなブレーキ操作力でマスタシリンダからブレーキ液圧を確実に出力させるようにした車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、倍力液圧作用室に背面を臨ませたマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダと;ブレーキ操作部材の操作とは無関係に液圧を発生し得る液圧発生源と;前面を前記倍力液圧作用室に臨ませるとともに後退限を規制されて前記ケーシングに摺動可能に嵌合されるバックアップピストンと、前記液圧発生源の出力液圧を調圧して前記倍力液圧作用室に作用せしめることを可能として前記バックアップピストンに内蔵される調圧弁手段と、前記倍力液圧作用室の液圧に基づく反力ならびに前記ブレーキ操作部材によるブレーキ操作力が釣り合うように作動して前記調圧弁手段を調圧作動せしめる制御ピストンとを有し、前記倍力液圧作用室の液圧低下時に前記制御ピストンから前記バックアップピストンにブレーキ操作力が伝達されるのに応じて前記バックアップピストンが前記液圧発生源の出力液圧に基づく液圧力に抗して前記マスタピストンを直接押圧すべく前進作動するように構成される液圧ブースタと;を備える車両用ブレーキ装置において、前記ケーシングおよび前記バックアップピストン間に形成されて前記液圧発生源に接続される入力側環状室と、前記倍力液圧作用室との間をシールする環状のシール手段が前記ケーシングおよび前記バックアップピストン間に介装され、前記マスタピストンを直接押圧するようにして前記バックアップピストンが所定ストローク以上前進するのに応じて前記入力側環状室および前記倍力液圧作用室間を連通する連通路が、前記バックアップピストンおよび前記ケーシングの一方に設けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、倍力液圧作用室に背面を臨ませたマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダと;ブレーキ操作部材の操作とは無関係に液圧を発生し得る液圧発生源と;前面を前記倍力液圧作用室に臨ませるとともに後退限を規制されて前記ケーシングに摺動可能に嵌合されるバックアップピストンと、前記液圧発生源の出力液圧を調圧して前記倍力液圧作用室に作用せしめることを可能として前記バックアップピストンに内蔵される調圧弁手段と、前記倍力液圧作用室の液圧に基づく反力ならびに前記ブレーキ操作部材によるブレーキ操作力が釣り合うように作動して前記調圧弁手段を調圧作動せしめる制御ピストンとを有し、前記倍力液圧作用室の液圧低下時に前記制御ピストンから前記バックアップピストンにブレーキ操作力が伝達されるのに応じて前記バックアップピストンが前記液圧発生源の出力液圧に基づく液圧力に抗して前記マスタピストンを直接押圧すべく前進作動するように構成される液圧ブースタと;を備える車両用ブレーキ装置において、前記ケーシングおよび前記バックアップピストン間に形成されて前記液圧発生源に接続される入力側環状室と、リザーバに接続されて前記ケーシング内に形成される解放室との間をシールする環状のシール手段が前記ケーシングおよび前記バックアップピストン間に介装され、前記マスタピストンを直接押圧するようにして前記バックアップピストンが所定ストローク以上前進するのに応じて前記入力側環状室および前記解放室間を連通する連通路が、前記ケーシングおよび前記バックアップピストンの一方に設けられることを特徴とする。
【0007】
さらに請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記制御ピストンは前端に端壁を有して有底円筒状に形成され、前記ブレーキ操作部材の操作ストローク感を得るようにして前記ブレーキ操作部材および前記制御ピストン間に設けられるストロークシミュレータが、ブレーキ操作部材に連なる入力部材と、前記制御ピストンの端壁との間にストローク液室を形成して制御ピストンに摺動可能に嵌合されるとともに入力部材に連動、連結されるシミュレータピストンと、該シミュレータピストンおよび前記制御ピストン間に設けられる弾発手段とを備え、前記バックアップピストンに対する前記制御ピストンの前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じて閉塞される開口部が、開放時には前記ストローク液室をリザーバに通じさせるようにして前記制御ピストンの端壁に設けられることを特徴とする。
【0008】
なお第1〜第3実施例のブレーキペダル11が本発明のブレーキ操作部材に対応し、第1〜第3実施例の入力ロッド197が本発明の入力部材に対応し、第2および第3実施例のOリング233,244が本発明のシール手段に対応する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、マスタピストンを直接押圧するようにして前記バックアップピストンが所定ストローク以上前進するのに応じて、液圧発生源に接続される入力側環状室と、倍力液圧作用室とが、バックアップピストンおよびケーシングの一方に設けられる連通路を介して連通するので、部品点数の増大を回避した簡単な構成で、調圧弁手段の異常による倍力液圧作用室の液圧低下時にマスタシリンダのマスタピストンに液圧発生源から出力される液圧を作用せしめて前進作動せしめることができ、小さなブレーキ操作力でマスタシリンダからブレーキ液圧を確実に出力させることができる。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、マスタピストンを直接押圧するようにして前記バックアップピストンが所定ストローク以上前進するのに応じて、液圧発生源に接続される入力側環状室と、リザーバに接続される解放室とが、ケーシングおよびバックアップピストンの一方に設けられる連通路を介して連通するので、部品点数の増大を回避した簡単な構成で、調圧弁手段の異常による倍力液圧作用室の液圧低下時にマスタシリンダのマスタピストンを、液圧発生源の出力液圧がブレーキ操作力の作用方向とは反対側から作用していない状態にあるバックアップピストンで直接押圧するようにして前進作動せしめることができ、小さなブレーキ操作力でマスタシリンダからブレーキ液圧を確実に出力させることができる。
【0011】
さらに請求項3記載の発明によれば、バックアップピストンに対する制御ピストンの前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じて、ストローク液室が密閉状態となって制御ピストンに対するシミュレータピストンの前進方向の移動が規制されるので、ストロークシミュレータによるブレーキ操作部材のストロークの増大を抑えることができ、操作フィーリングの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図6は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図2は液圧ブースタおよびストロークシミュレータの縦断面図、図3は液圧ブースタの一部である増圧弁付近の閉弁状態での拡大縦断面図、図4は液圧ブースタの一部である減圧弁付近の開弁状態での拡大縦断面図、図5はストロークシミュレータの拡大縦断面図、図6はバックアップピストンが前進した状態での図3に対応した縦断面図である。
【0014】
先ず図1において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13Aと、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13A間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
【0015】
前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13Aに共通なケーシング15Aは、前端を閉じた有底円筒状のシリンダ体16と、内向き鍔部17aを後端に有して円筒状に形成されるとともにシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ17と、シリンダ体16の後端およびボディ17間に挟持されるリング体18、セパレータ19およびスリーブ20とで構成される。シリンダ体16の後端はボディ17の前部に液密に嵌合されており、リング体18はボディ17に液密に嵌合されてシリンダ体16の後端に当接され、スリーブ20はボディ17の内周中間部に設けられた環状の段部70で後退限が規制されるようにしてボディ17の前部に嵌合され、セパレータ19が前記リング体18および前記スリーブ20間に挟持される。
【0016】
シリンダ体16には前端を閉じた第1シリンダ孔21が形成されており、マスタシリンダMは、倍力液圧作用室22に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン23が第1シリンダ孔21に摺動可能に嵌合されるとともに、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン23の前方に配置される前部マスタピストン24が第1シリンダ孔21に摺動可能に嵌合されて成り、後部マスタピストン23および前部マスタピストン24間には後部出力液圧室25が形成され、シリンダ体16の前端閉塞部および前部マスタピストン24間に前部出力液圧室26が形成される。
【0017】
シリンダ体16には、後部出力液圧室25に通じる後部出力ポート27と、前部出力液圧室26に通じる前部出力ポート28とが設けられる。さらに後部出力液圧室25内で後部マスタピストン23および前部マスタピストン24間には後部マスタピストン23を後方側に付勢する後部戻しばね29が縮設され、前部出力液圧室26内でシリンダ体16の前部閉塞端および前部マスタピストン24間には前部マスタピストン24を後方側に向けて付勢する前部戻しばね30が縮設される。
【0018】
マスタシリンダMにはリザーバ31が付設されており、このリザーバ31には、第1、第2および第3液溜め室31a,31b,31cが相互に区画されて形成される。而して第2液溜め室31bに通じる円筒状の後部接続筒部32ならびに第1液溜め室31aに通じる円筒状の前部接続筒部33が第1シリンダ孔21の軸線に沿う方向に間隔をあけた位置で上方に突出するようにしてシリンダ体16に一体に設けられる。
【0019】
後部マスタピストン23の外周および第1シリンダ孔21の内面間には、後部接続筒部32内に通じる後部補給液室36が環状に形成されており、リザーバ31の第2液溜め室31bから補給されるブレーキ液が後部補給液室36に供給されることになる。また前部マスタピストン24の外周および第1シリンダ孔21の内面間には、前部接続筒部33内に通じる前部補給液室37が環状に形成されており、リザーバ31の第1液溜め室31aから補給されるブレーキ液が前部補給液室37に供給されることになる。
【0020】
後部マスタピストン23には、該後部マスタピストン23が後退限位置に戻ったときに後部出力液圧室25および後部補給液室36間を連通させる従来周知のセンターバルブ38が装着され、前部マスタピストン24には、該前部マスタピストン24が後退限位置に戻ったときに前部出力液圧室26および前部補給液室37間を連通させる従来周知のセンターバルブ39が装着される。
【0021】
すなわちマスタシリンダMは、後部マスタピストン23および前部マスタピストン24に、それらのマスタピストン23,24の後退時には後部および前部出力液圧室25,26にリザーバ31からのブレーキ液を補給するように開弁作動するセンターバルブ38,39が装着されたセンターバルブ型に構成されている。また後部および前部マスタピストン23,24間には、それらのマスタピストン23,24間の最大間隔を規制する最大間隔規制手段40が設けられる。
【0022】
マスタシリンダMの後部出力ポート27は、液圧モジュレータ41を介して右前輪用車輪ブレーキB1および左後輪用車輪ブレーキB2に接続されており、また前部出力ポート28は、液圧モジュレータ41を介して左前輪用車輪ブレーキB3および右後輪用車輪ブレーキB4に接続される。而して液圧モジュレータ41は、後部および前部出力ポート27,28から出力されるブレーキ液圧を自在に制御してブレーキ操作時のアンチロックブレーキ制御を実行し得るとともに、非ブレーキ操作状態でのトラクション制御等の自動ブレーキ制御を実行し得る従来周知のものである。
【0023】
図2において、液圧ブースタ13Aは、前端を倍力液圧作用室22に臨ませてケーシング15Aに収容される円筒状のバックアップピストン64Aと、増圧弁62および減圧弁63で構成されてバックアップピストン64Aに内蔵される調圧弁手段65と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作入力が釣り合うようにして前記調圧弁手段65を調圧作動せしめる制御ピストン66と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力を制御ピストン66に付与するようにして前記調圧弁手段65および制御ピストン66間に介装される第1反力ピストン67と、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなったときに第1反力ピストン67からの反力に加えて液圧発生源12の出力液圧および反力ばね112による反力を前記制御ピストン66に付与するようにして前記バックアップピストン64Aおよび第1反力ピストン67間に介装される第2反力ピストン68とを備える。
【0024】
ケーシング15Aの一部を構成してシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ17には、前記シリンダ体16の後端、リング体18、セパレータ19およびスリーブ20を前端側から嵌合せしめる大径孔69と、該大径孔69の後端との間に環状の段部70を形成して大径孔69の後端に同軸に連なるとともに大径孔69よりも小径に形成される中径孔71とが設けられ、中径孔71の後端を規定するようにしてボディ17が後端に備える内向き鍔部17aは、前記中径孔71よりも小径である小径孔72を形成する。
【0025】
前記リング体18は、マスタシリンダMにおけるシリンダ体16の第1シリンダ孔21よりもわずかに小径の第2シリンダ孔74を内周で形成するようにしてリング状に形成され、スリーブ20は、第2シリンダ孔74と同径である第3シリンダ孔75を形成するようにして円筒状に形成される。而して前記リング体18および前記スリーブ20は、相互間にセパレータ19を挟むようにしつつ前記シリンダ体16の後端および前記段部70間に挟まれるようにして大径孔69に液密に嵌合され、第2および第3シリンダ孔74,75に前記バックアップピストン64Aが摺動可能に嵌合される。
【0026】
ボディ17には、マスタシリンダMのシリンダ体16およびリング体18間に対応する位置で大径孔69の内面に開口する接続ポート77と、リング体18およびスリーブ20間に対応する位置で大径孔69の内面に開口する入力ポート78と、スリーブ20の軸方向中間部で大径孔69の内面に開口するとともに前記接続ポート77に接続される出力ポート79と、中径孔71の前部内面に開口する解放ポート80とが、前方から順に間隔をあけて設けられ、解放ポート80はリザーバ31の第3液溜め室31cに接続される。
【0027】
前記入力ポート78には液圧発生源12が接続される。この液圧発生源12は、リザーバ31の第3液溜め室31cからブレーキ液をくみ上げるポンプ81と、該ポンプ81の吐出側に接続されるアキュムレータ82と、アキュムレータ82の液圧を検出して前記ポンプ81の作動を制御するための液圧センサ83とを備えるものであり、ブレーキペダル11の操作とは無関係に高圧の一定液圧を出力することができ、液圧発生源12から出力される液圧は入力ポート78に供給される。また液圧発生源12の吐出側およびリザーバ31の第3液溜め室31c間にリリーフ弁84が設けられる。而して前記入力ポート78および前記接続ポート77間を結ぶ液圧路および前記リリーフ弁84は、ケーシング15Aにおけるボディ17に設けられ、液圧センサ83も前記ボディ17に配設される。
【0028】
ボディ17における大径孔69の内面には、接続ポート77の内端を開口せしめる環状凹部86と、入力ポート78の内端を開口せしめる環状凹部87と、出力ポート79の内端を開口せしめる環状凹部88とが設けられており、シリンダ体16の後端およびボディ17の前端間には前記環状凹部86および倍力液圧作用室22間を連通する通路73が形成される。
【0029】
前記環状凹部86,87,88は、マスタシリンダMのシリンダ体16、リング体18およびスリーブ20の外周に装着されるOリング89,90,91,92によってそれぞれ両側からシールされる。すなわち環状凹部86を両側からシールするOリング89,90が大径孔69の内面に弾発接触するようにしてシリンダ体16およびリング体18の外周に装着され、前記Oリング90との間に環状凹部87を挟むOリング91が大径孔69の内面に弾発接触するようにしてスリーブ20の外周に装着され、前記Oリング91との間に環状凹部88を挟むOリング92が大径孔69の内面に弾発接触するようにしてスリーブ20の外周に装着される。
【0030】
バックアップピストン64Aの前部は、リング体18の第2シリンダ孔74に液密にかつ摺動可能に嵌合され、バックアップピストン64Aの中間はスリーブ20の第3シリンダ孔75に液密にかつ摺動可能に嵌合される。またリング体18およびスリーブ20間に挟まれるセパレータ19は、第2および第3シリンダ孔74,75の直径よりも大きな内周直径を有してバックアップピストン64Aを同軸に囲繞するものであり、セパレータ19が配置される部分でケーシング15Aのリング体18およびスリーブ20と、バックアップピストン64Aの外周との間には、液圧発生源12に通じてボディ17における大径孔69の内面に設けられた環状凹部87に通じる入力側環状室93が形成され、入力側環状室93内に配置される前記セパレータ19には、入力側環状室93を分断することがないようにして複数の透孔94…が設けられる。
【0031】
図3を併せて参照して、前記倍力液圧作用室22と、前記入力側環状室93との間は、前記ケーシング15Aのリング体18および前記バックアップピストン64A間に介在してリング体18側に設けられる環状のシール手段95でシールされており、このシール手段95は、バックアップピストン64Aの外周に摺接する環状のシールリング96と、該シールリング96の外周に装着されるOリング97とから成り、セパレータ19およびリング体18で軸方向位置が規制されるようにしてリング体18の内周側に設けられる。
【0032】
図4を併せて参照して、スリーブ20の内周および前記バックアップピストン64A間には、スリーブ20に設けられた通路98…を介して前記環状凹部88に通じる出力側環状室99が形成されており、出力側環状室99および前記入力側環状室93間をシールするシール手段100が、スリーブ20およびバックアップピストン64A間に介装される。このシール手段100は、バックアップピストン64Aの外周に摺接するシールリング101と、該シールリング101の外周に装着されるOリング102とから成り、セパレータ19およびスリーブ20で軸方向位置が規制されるようにしてスリーブ20の内周に装着される。
【0033】
図5を併せて参照して、ボディ17における内向き鍔部17aには、リング状のストッパ103が当接されており、バックアップピストン64Aの後端部外周に装着された止め輪104に内周を前方側から当接、係合せしめたリテーナ105と、スリーブ20との間に、バックアップピストン64Aの後半部を囲繞するコイル状のばね106が縮設され、このばね106のばね力によりバックアップピストン64Aは後方に向けてばね付勢される。而してボディ17の内向き鍔部17aに当接したストッパ103に前記止め輪104を当接させた位置がバックアップピストン64Aの後退限であり、後退限にあるバックアップピストン64Aの前端は、倍力液圧作用室22に臨むとともに、非作動状態にある後部マスタピストン23の背面の外周縁部に全周にわたって当接し、その状態で後部マスタピストン23も後退限となる。
【0034】
ボディ17内でスリーブ20および内向き鍔部17a間には、前記ばね106を収容するようにしてバックアップピストン64Aを囲む解放室76が形成されており、この解放室76は解放ポート80に連通する。また解放室76と、出力ポート79に通じる環状凹部88との間はスリーブ20の外周に装着されたOリング92でシールされ、解放室76と、出力側環状室99との間はスリーブ20の内周に装着されるOリング85でシールされる。
【0035】
バックアップピストン64Aの軸方向中間部内面には、半径方向内方に張り出す内向き鍔部64aが一体に設けられており、内向き鍔部64aよりも前方でバックアップピストン64Aには段付き円筒状の第2反力ピストン68が摺動可能に嵌合され、第2反力ピストン68には第1反力ピストン67が同軸にかつ相対摺動可能に嵌合される。
【0036】
図3で示すように、バックアップピストン64Aの前端部には、倍力液圧作用室22に前面を臨ませる端壁部材109が液密に嵌合されており、この端壁部材109の外周縁部に前方から当接、係合する止め輪110がバックアップピストン64Aの前端部内周に装着される。さらに第2反力ピストン68の前端には、周方向に複数の開口部128…を有して有底円筒状に形成されるフィルタ枠127の後部が圧入されており、フィルタ枠127の内面にメッシュ部材129が設けられることでフィルタ111が構成され、このフィルタ111および前記端壁部材109間に縮設される反力ばね112のばね力で第2反力ピストン68は内向き鍔部64aに前方から当接する側に付勢される。
【0037】
而して第2反力ピストン68およびフィルタ111と、前記端壁部材109との間でバックアップピストン64A内には入力室113が形成されており、この入力室113は、バックアップピストン64Aに設けられる連通孔114ならびに端壁部材109に設けられた連通孔137を介して入力側環状室93に連通する。すなわち入力室113には液圧発生源12からの高圧のブレーキ液が導入されるものであり、端壁部材109の外周には、入力室113および倍力液圧作用室22間をシールするようにしてバックアップピストン64Aの内周に弾発接触するOリング115が装着される。なお図3の鎖線で示す連通孔138が、バックアップピストン64Aの前記連通孔114および端壁部材109の前記連通孔137に代えて、端壁部材109よりも後方で入力側環状室93を入力室113に直接連通させるようにしてバックアップピストン64Aに設けられてもよい。
【0038】
第2反力ピストン68の中間部内面には前方に臨む環状の段部68aが設けられており、第2反力ピストン68の前部には、第2反力ピストン68の内周に弾発接触するOリング116を外周に有する段付き円筒状の弁座部材117が前記段部68aに当接するようにして嵌合されており、第2反力ピストン68の前端に圧入される前記フィルタ枠127の後端および前記段部68a間に弁座部材117が挟持される。これにより弁座部材117は、第2反力ピストン68の前部に液密に嵌合、固定されることになり、第2反力ピストン68を介してバックアップピストン64Aに支持される。
【0039】
一方、第1反力ピストン67は、図4で示すように、第2反力ピストン68の後部内周に弾発接触する環状のシール部材120を外周に有して第2反力ピストン68の後部に摺動可能に嵌合されており、第2反力ピストン68内には、前記弁座部材117の背面を臨ませるとともに第1反力ピストン67の前端を臨ませる倍力液圧発生室121が形成される。また第2反力ピストン68の外周およびバックアップピストン64Aの内周間には環状室122が形成されており、第2反力ピストン68に設けられた連通孔123を介して倍力液圧発生室121は環状室122に連通される。さらにバックアップピストン64Aにおける中間部には、環状室122を出力側環状室99に通じさせる連通孔124が設けられており、倍力液圧発生室121は、連通孔123、環状室122、連通孔124、出力側環状室99、通路98および環状凹部88を介して出力ポート79に連通する。しかも第2反力ピストン68の外周には、環状室122を前後から挟むOリング125,126がバックアップピストン64Aの内周に弾発接触するようにして装着される。
【0040】
制御ピストン66は、前端に端壁66aを有した有底円筒状に形成されるものであり、ボディ17の後端の内向き鍔部17aが形成する小径孔72に摺動可能に嵌合されつつバックアップピストン64Aの後部に同軸に挿入される。しかも内向き鍔部17aの内周すなわち小径孔72の内面には制御ピストン66の外周に弾発接触する環状のシール部材130が装着されており、制御ピストン66の外面には、前記内向き鍔部17aの内周縁部に前方側から当接、係合することにより制御ピストン66の後退限を規制する規制突部131が全周にわたって一体に突設される。
【0041】
内向き鍔部64aの後方でバックアップピストン64Aおよび制御ピストン66間には解放室132が形成されており、この解放室132は、ストッパ100に設けられた連通孔133を介して解放室76に連通する。すなわち解放室132は、連通孔133、解放室76および解放ポート80を介してリザーバ31における第3液溜め室31cに連通する。
【0042】
第1反力ピストン67は、前記挿通孔108を貫通して後方に延びる延長筒部67aを同軸にかつ一体に有しており、この延長筒部67aの後端は、前記制御ピストン66の前端の端壁66aに常時当接される。また倍力液圧発生室121には、第1反力ピストン67の後端すなわち前記延長筒部67aの後端を制御ピストン66の端壁66aに接触させるようにばね付勢するばね力を発揮するばね134が収容され、このばね134のばね力はごく弱く設定される。
【0043】
また第2反力ピストン68には、第1反力ピストン67の延長筒部67aを同軸に囲繞するとともに内向き鍔部64aで形成される挿通孔108に挿通される延長筒部68bが同軸にかつ一体に設けられており、第2反力ピストン68が、バックアップピストン64Aの内向き鍔部64aに当接して後退限位置にある状態で、第2反力ピストン68における延長筒部68bの後端は、バックアップピストン64Aの内向き鍔部64aに当接して該バックアップピストン64Aに固定されるシートストッパ135よりも後方にあるものの、第1反力ピストン67における延長筒部67aの後端よりも前方に配置される。
【0044】
したがってバックアップピストン64Aに対する制御ピストン66の前進作動時に、第1反力ピストン67は制御ピストン66とともに前進し、第2反力ピストン68の後端は、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなって制御ピストン66の前進移動量が所定値以上となったときに制御ピストン66の前端の端壁66aに当接することになる。
【0045】
再び図3に注目して、増圧弁62は、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力の増大に応じて順次開弁するようにして制御ピストン66の軸方向に並ぶ第1および第2弁手段141,142とから成るものであり、第2弁手段142のシール径が第1弁手段141のシール径よりも大きく設定され、第2弁手段142は、開弁した第1弁手段141からの流量が最大になる前に開弁を開始すべく構成される。
【0046】
第1弁手段141は、前端に第1の弁座143が設けられる円筒状の摺動部材144と、液圧発生源12に通じる入力室113に連通する弁室145を内部に形成するリテーナ146と、弁室145内に臨む前記第1の弁座143に着座することを可能としつつ前記リテーナ146に摺動可能に嵌合される弁体147と、該弁体147を第1の弁座に着座させるように付勢しつつリテーナ146および弁体147間に設けられる第1の弁ばね148と、弁体147に当接することを可能として制御ピストン66に連動、連結されるとともに前記摺動部材144に軸方向相対移動可能に挿入される押圧ロッド149とで構成される。
【0047】
また第2弁手段142は、第1弁手段141と共通の構成要素である前記摺動部材144に設けられる弁部150と、前記摺動部材144を摺動可能に嵌合せしめるとともに第2の弁座151が前端に設けられる段付き円筒状の弁座部材117と、第1弁手段141と共通の構成要素である前記リテーナ146と、弁部150を第2の弁座151に着座させるように付勢しつつリテーナ146および前記摺動部材144間に設けられる第2の弁ばね152と、第1弁手段141と共通の構成要素である押圧ロッド149とで構成される。
【0048】
前記リテーナ146は、弁座部材117の前端部外周に圧入によって取付けられる。このリテーナ146内には、摺動部材144の前端の第1の弁座143ならびに弁座部材117の前端の第2の弁座151を臨ませる弁室145が形成され、リテーナ146の側壁には、液圧発生源12に通じる入力室113を弁室145に連通させるべく複数の連通孔165…が設けられる。
【0049】
またリテーナ146の前部には、入力室113に通じる開放孔153を中央部に有する端壁146aを前端に有して有底円筒状に形成されるガイド筒部146bが一体に設けられる。第1弁手段141の弁体147は、ガイド筒部146bに摺動可能に嵌合されるスライド部材154の後部に、第1の弁座143に着座可能な球体155が固着されて成るものである。すなわち弁体147はリテーナ146に摺動可能に嵌合されることになり、第1の弁ばね148は前記端壁146aおよびスライド部材154間に縮設される。
【0050】
摺動部材144には、前端を第1の弁座143の中央部に開口させた第1の弁孔157と、第1の弁孔157よりも大径にして第1の弁孔157に前端を通じさせるとともに後端を開放した摺動孔158とが同軸に設けられる。一方、弁座部材117には、前端を第2の弁座151の中央部に開口させる第2の弁孔159と、第2の弁孔159と同一径を有して第2の弁孔159に前端を通じさせるとともに後端を開放した摺動孔160とが同軸に設けられ、摺動部材144は、第2の弁孔159を移動可能として同軸に貫通するとともに摺動孔160に摺動可能に嵌合される。
【0051】
押圧ロッド149は、その前端部を第1の弁孔157内に配置して摺動部材144の摺動孔158に摺動可能に嵌合されるものであり、弁座部材117内で前記押圧ロッド149には、摺動部材144の後端に当接して摺動部材144を前方に押圧移動させることを可能とした押圧鍔部149aが一体に設けられ、弁座部材117には、前記押圧鍔部149に後方から当接することで押圧ロッド149の後退限を規制する規制鍔部117aが摺動孔160の後部内面から半径方向内方に張り出すようにして一体に設けられる。
【0052】
前記押圧鍔部149aよりも前方で押圧ロッド149には、摺動孔158の内面に摺接する摺動部149bが設けられており、この摺動部149bよりも前方側で押圧ロッド149は、摺動部材144の内面との間に環状室163を形成するようにして小径に形成される。
【0053】
而して押圧ロッド149の前端で弁体147を押圧して該弁体147を第1の弁座143から離座せしめたときには弁室145が前記環状室163に連通することになる。しかも規制段部117aに押圧鍔部149aが当接している状態で、押圧ロッド149の前端および弁体147間の距離は、摺動部材144の後端および押圧鍔部149a間の距離よりも小さいものであり、押圧ロッド149の前進時に、弁体147が第1の弁座143から離座した後に押圧ロッド149がさらに前進することで押圧鍔部149aにより摺動部材144が前方に押圧されることになる。
【0054】
第2弁手段142の弁部150は、第1の弁座143よりも後方で摺動部材144に設けられるものであり、弁体147が第1の弁座143に着座したときのシール径よりも大きなシール径を有して第2の弁座151に着座可能である。而して第1弁手段141が開弁した後に、押圧ロッド149がさらに前進して摺動部材144が前方に押圧されることにより弁部150が第2の弁座151から離座し、第2弁手段142が開弁することになる。
【0055】
弁座部材117における摺動孔160の内面には、後端を弁座部材117の後端に開放する複数状の流通溝161…が設けられており、摺動部材144には、前記環状室163を各流通溝161…に連通させる複数の連通孔164…が設けられる。
【0056】
而して弁座部材117における摺動孔160および複数の流通溝161…は流通路162を形成するものであり、第1弁手段141の開弁時には、弁室145から環状室163に流入した作動液が連通孔164…を経て流通路162内を倍力液圧発生室121側に流通し、第2弁手段142の開弁時には弁室145の作動液が流通路162内を倍力液圧発生室121側に流通することになる。
【0057】
前記押圧ロッド149の後部は、倍力液圧発生室121に突入されており、倍力液圧発生室121内で押圧ロッド149は円盤状の整流部材168の中央部に摺動可能に嵌合される。而して整流部材168は、弁座部材117の倍力液圧発生室121に臨む面に当接することで前記流通路162の倍力液圧発生室121への開口端を閉じ得るものであり、押圧ロッド149だけで軸方向の移動をガイドされる。しかも整流部材168の前記流通路162に臨む面は平坦面168aに形成される。
【0058】
図4に注目して、前記整流部材168よりも後方で押圧ロッド149にはばね受け部材169が圧入、固定されており、整流部材168およびばね受け部材169間にはばね170が縮設される。一方、第1反力ピストン67の前端も、前記押圧ロッド149と同軸にして倍力液圧発生室121に突入されており、この第1反力ピストン67の前部に嵌合、当接されるリテーナ171および整流部材168間にばね134が縮設される。而して整流部材168は、ばね134,170によるばね力で弁座部材117側に向けて付勢されることになるが、ばね134,170のばね力は、第1弁手段141の開弁によって液圧発生源12からの液圧が流通路162に作用するのに応じて整流部材168が弁座部材117から離間し得る程度に設定される。
【0059】
第1反力ピストン67の前部に嵌合されたリテーナ171は、第1反力ピストン67との間に弁室172を形成するものであり、リテーナ171には倍力液圧発生室121および弁室172間を連通する複数の連通孔173…が設けられる。またリテーナ171の中央部には円筒状のガイド筒部174が設けられており、押圧ロッド149の後端部がガイド筒部174に摺動可能に嵌合される。また弁室172に臨んで第1反力ピストン67の前端には弁座175が設けられ、押圧ロッド149の後端には弁座175に着座し得るようにして半球状に形成される弁部176が設けられる。
【0060】
減圧弁63は、前記弁座175と、該弁座175に着座可能な前記弁部176とで構成されるものであり、第1反力ピストン67には、前記弁座175の中央部に開口する弁孔177と、弁孔177よりも大径に形成されて前端を弁孔177に通じさせるとともに第1反力ピストン67の後端まで延びる解放路178とが同軸に設けられており、第1反力ピストン67の後端には制御ピストン66の前端の端壁66aが常時当接するので解放路178の後端は実質的には閉じられる。
【0061】
第1反力ピストン67の中間部には、前記解放路178に内端を通じさせる複数の連通孔179…が設けられており、減圧弁63の開弁時に、解放路178からの作動液は、前記連通孔179…、一次貯留室180およびオリフィス181を介して解放室132に流通する。
【0062】
前記一次貯留室180は、第1および第2反力ピストン67,68間に形成されるものであり、後方側に臨んで第1反力ピストン67の外周に設けられる環状の段部67bと、該段部67bに対向すべく前方側に臨んで第2反力ピストン68の内周に設けられる環状の段部68cとの間で、第1反力ピストン67を囲繞する環状に形成される。しかも連通孔179…は、少なくとも減圧弁63が閉弁状態から開弁し始めるときには一次貯留室180に対応する位置となるようにして、第1反力ピストン67に設けられる。
【0063】
また前記オリフィス181は、第1反力ピストン67における延長筒部67aの外周と、第2反力ピストン68の延長筒部68bの内周との間に形成されるものであり、延長筒部67aの外周および延長筒部68bの内周間に公差分だけの環状間隙を設定することにより前記オリフィス181が形成される。
【0064】
このような液圧ブースタ13Aでは、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力がストロークシミュレータ14を介して制御ピストン66に入力され、制御ピストン66から第1反力ピストン67に前方に向けての押圧力が作用する。而してバックアップピストン64Aに対する制御ピストン66の前進方向の移動量が所定値未満の状態では、制御ピストン66には第1反力ピストン67だけが当接しており、第1反力ピストン67の前進に応じて弁座175に弁部176が着座することで減圧弁63が閉弁して倍力液圧発生室121および解放室132間が遮断され、制御ピストン66、第1反力ピストン67および押圧ロッド149がさらに前進する。この押圧ロッド149の前進に応じて増圧弁62では、先ず弁体147が摺動部材144の前端の第1の弁座143から離座して第1弁手段141が開弁し、次いで押圧ロッド149がさらに前進することにより摺動部材144が押圧ロッド149で押されることになり、弁部150が第2の弁座151から離座して第2弁手段142が開弁する。
【0065】
また減圧弁63の閉弁状態では第1反力ピストン67の前端に倍力液圧発生室121の液圧が作用しており、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力と、倍力液圧発生室121の液圧に基づく液圧力とが釣り合うように第1反力ピストン67および制御ピストン66が後退することで減圧弁63が開弁するとともに増圧弁62が閉弁し、そのような増圧弁62および減圧弁63の開閉を繰り返すことで、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11からのブレーキ操作入力に応じた倍力液圧に調圧されて倍力液圧発生室121に作用することになる。またバックアップピストン64Aに対する制御ピストン66の前進方向の移動量が所定値以上になると、制御ピストン66には第1反力ピストン67だけでなく第2反力ピストン68も当接することになり、入力室113の液圧によって第2反力ピストン68を後方に向けて押圧する液圧力ならびに反力ばね112のばね力も反力として加わるので、制御ピストン66に作用する反力は大きくなる。
【0066】
図5に注目して、ストロークシミュレータ14は、制御ピストン66の前端の端壁66aとの間にストローク液室193を形成して制御ピストン66に液密にかつ軸方向摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン194と、該シミュレータピストン194および前記制御ピストン66の端壁66a間に介装されるようにしてストローク液室193に収容される弾発手段195とを備えて、制御ピストン66に内蔵される。
【0067】
シミュレータピストン194は、制御ピストン66の後端部に装着される止め輪196によって後退限位置が規制されるようにして、制御ピストン66の後部に摺動可能に嵌合され、ブレーキペダル11に連なる入力部材としての入力ロッド197の前端部がシミュレータピストン194に首振り可能に連接される。すなわちシミュレータピストン194には、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド197を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じてシミュレータピストン194は前進作動する。しかもシミュレータピストン194の外周には、制御ピストン66の内周に摺接する環状のシール部材198が装着される。
【0068】
弾発手段195は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成される弾性体199と、弾性体199よりもばね荷重を小さく設定した金属製のコイルばね200とが、制御ピストン66にスライド可能に収容されるスライド部材201を介して直列に接続されて成るものであり、弾性体199がスライド部材201およびシミュレータピストン194間に介設され、コイルばね200が制御ピストン66の前端の端壁66aおよびスライド部材201間に介設される。
【0069】
しかも弾性体199およびコイルばね200は、ブレーキペダル11のブレーキ操作初期にはコイルばね200が発揮するばね力が制御ピストン66に作用し、スライド部材201が制御ピストン66の前端の端壁66aに当接することでコイルばね200のばね力の制御ピストン66への作用が終了した後に弾性体199の弾性変形が開始されるようにして、シミュレータピストン194および制御ピストン66間に直列に介装されるものである。
【0070】
またコイルばね200のセット荷重は、前後方向のばね力を発揮するようにしてコイルばね200と直列に接続される他のばね部材のセット荷重よりも小さく設定されるものであり、この実施例では、第1反力ピストン67および制御ピストン66の端壁66aを介してコイルばね200に直列に接続されて倍力液圧発生室121に収容されるばね134のセット荷重よりも小さく設定される。
【0071】
スライド部材201の中央部には、制御ピストン66と同軸にして弾性体199を貫通するガイド軸202の前端部が圧入されており、このガイド軸202の後端部は、シミュレータピストン194に摺動可能に嵌合される。すなわちシミュレータピストン194の中央部には、ガイド軸202の後端部を摺動可能に嵌合せしめる摺動孔203と、該摺動孔203よりも大径に形成されて摺動孔203の後部に前端を連ならせるとともに後端を閉じた有底孔204とが同軸に設けられており、ガイド軸202の後端部はシミュレータピストン194がガイド軸202に対して前方に相対移動するのに応じて有底孔204に突入される。
【0072】
制御ピストン66の前端の端壁66aには、その端壁66aの前面を臨ませた解放室132をストローク液室193に連通させる複数の開口部205…が、制御ピストン66の中心からの距離を同一として穿設されており、制御ピストン66内のストローク液室193は、前記開口部205…の開放時には解放室132に通じることになる。
【0073】
前記各開口部205…は、制御ピストン66が所定の前進ストローク以上前進したときに、バックアップピストン64Aに固定されるシートストッパ135で閉じられるものであり、このシートストッパ135は、外周をバックアップピストン64Aの内周に圧入することで内向き鍔部64aに当接するようにしてバックアップピストン64Aに固定されるリテーナ206と、リテーナ206に保持される弾性シール部材207とから成る。
【0074】
リテーナ206は、剛性を有する材料たとえば金属によってリング状に形成されるものであり、第2反力ピストン68の前記延長筒部68bとの間に環状の微小間隙を形成するようにしてバックアップピストン64Aに圧入される。
【0075】
弾性シール部材207は、前記制御ピストン66の半径方向に沿って前記開口部205…の内側および外側で端壁66aの前面に接触することで各開口部205…を塞ぐように形成されてリテーナ206に焼き付け接着される。
【0076】
またリテーナ206の背面には、制御ピストン66の端壁66aが弾性シール部材207に接触した状態で、リテーナ206の内方側を解放室132のうち制御ピストン66の外側部分に通じさせる連通溝209が設けられる。
【0077】
すなわち制御ピストン66の端壁66aが弾性シール部材207に接触した状態では、第2反力ピストン68の延長筒部68bも前記端壁66aに接触しており、リテーナ206および延長筒部68b間は、前記微小間隙および連通溝209を介して、解放室132のうち制御ピストン66の外側部分に通じることになり、制御ピストン66の端壁66aが弾性シール部材207に接触した状態において、弾性シール部材207よりも内方でリテーナ206の後部が臨む空間が制御ピストン66の後退に応じて負圧になることはなく、大気圧に維持される。
【0078】
再び図5において、前記制御ピストン66は、シミュレータピストン194よりも前方側でその内周面の一部を前方に向かうにつれて小径となるテーパ面210として有底円筒状に形成されており、この実施例では、制御ピストン66の前半寄りの部分が内周面をテーパ面210としたテーパ筒部66bとして形成される。
【0079】
スライド部材201は、前記テーパ面210よりも前方で制御ピストン66内にスライド可能に収容される。またスライド部材210およびシミュレータピストン194間に介装される弾性体199は、シミュレータピストン194の前進作動に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて弾性変形するとともに前記軸方向圧縮力の増大に応じて前記テーパ面210による拘束で前部から順次変形が阻止されるようにして筒状に形成されるものであり、荷重の非作用状態では外径を軸方向全長にわたって同一とした円筒状である。
【0080】
ところで、シミュレータピストン194に嵌合することで該シミュレータピストン194に後端部を支持せしめたガイド軸202は、その軸方向全長にわたる解放路211を同軸に有して円筒状に形成されるものであり、シミュレータピストン194において、シール部材198が装着される部分よりも前部には、解放路211に通じる有底孔204に内端を開口した複数の通路212…がシミュレータピストン194の半径方向に沿うようにして設けられる。而して各通路212…ならびに前記有底孔204は、ストローク液室193において弾性体199および制御ピストン66間をガイド軸202の解放路211に連通させる。
【0081】
またスライド部材201には、前記解放路211の前端に同軸に連なる解放路213が設けられ、スライド部材201が制御ピストン66の前端の端壁66aに当接したときに解放路213が端壁66aで塞がれることを回避するための複数の溝214…が半径方向に沿ってスライド部材201の前端面に設けられる。
【0082】
このような構成により、制御ピストン66の前進時に開口部205…がシートストッパ135で閉じられてストローク液室193が液圧ロック状態となるまでは、制御ピストン66内の弾性体199および制御ピストン66間は、通路212…、有底孔204、解放路211,213、溝214および貫通孔205…を介して解放室132に連通している。すなわち弾性体199および制御ピストン66間は、作動液を制御ピストン66内に密閉するまでの制御ピストン66の前進ストロークでは解放室132すなわちリザーバ31に連通されることになる。
【0083】
ところで、前記バックアップピストン64Aには、図3で示すように、前記連通孔114よりも前方に位置する連通路216が設けられ、この連通路216の内端は、入力側環状室93に通じている前記入力室113に通じている。しかも倍力液圧作用室22の液圧低下時に、ブレーキペダル11の操作によってバックアップピストン64Aは後部マスタピストン23を直接押圧するように前進するのであるが、前記連通路216の外端が、バックアップピストン64Aが後退位置にあるときには入力側環状室93に通じるのであるが、図6で示すようにバックアップピストン64Aが後退位置から所定ストローク以上前進したときに、倍力液圧作用室22および入力側環状室93間をシールするようにしてリング体18の内周およびバックアップピストン64Aの外周間に介装されているシール手段95を通過して倍力液圧作用室22に通じるようにして、バックアップピストン64Aに前記連通路216が設けられる。
【0084】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、後部マスタピストン23を直接押圧するようにしてバックアップピストン64Aが所定ストローク以上前進するのに応じて連通路216がシール手段95を乗り越えることによって、液圧発生源12に接続される入力側環状室93と、倍力液圧作用室22とが、バックアップピストン64Aに設けられる連通路216を介して連通する。
【0085】
ところで増圧弁62が閉弁固着状態となった調圧弁手段65の異常時には、液圧発生源12が正常であっても倍力液圧作用室22に増幅された液圧が作用することはないが、入力室113に液圧発生源12からの高圧の液圧が作用したままであると、制御ピストン66の前進に伴う減圧弁63の閉弁状態では制御ピストン66の前端に当接する第1および第2反力ピストン67,68には入力室113の高液圧による液圧力が作用することになり、そのような液圧力に抗してブレーキペダル11を操作することでバックアップピストン64Aを前進せしめることができる。
【0086】
しかるに後部マスタピストン23を直接押圧するようにバックアップピストン64Aが所定ストローク以上前進すると、入力室113すなわち入力側環状室93が倍力液圧作用室22に通じることになり、倍力液圧作用室22に液圧発生源12からの高い液圧が作用することで、マスタシリンダMの後部マスタピストン23が前進してマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されることになる。
【0087】
この際、倍力液圧作用室22に液圧発生源12からの高い液圧が作用してバックアップピストン64Aに後方側に向けての反力が作用することになり、ブレーキペダル11によるブレーキ操作力と倍力液圧作用室22の液圧による液圧力とがバランスするようにバックアップピストン64Aが前後に動いて倍力液圧作用室22の液圧が調圧されることになる。
【0088】
すなわちバックアップピストン64Aが所定ストローク以上前進してからは、マスタシリンダMの後部マスタピストン23をバックアップピストン64Aで直接押圧することが不要となり、比較的小さなブレーキ操作力でマスタシリンダMからブレーキ液圧を確実に出力することが可能となり、しかも液圧ブースタ13A以外の電磁開閉弁は不要であるので部品点数の増大を回避することができ、バックアップピストン64Aに連通路216が設けられるだけであるので、構造が簡単である。
【0089】
また制御ピストン66は前端に端壁66aを有して有底円筒状に形成され、ブレーキペダル11および制御ピストン66間に設けられるストロークシミュレータ14が、前記制御ピストン66の端壁66aとの間にストローク液室193を形成して制御ピストン66に摺動可能に嵌合されるとともにブレーキペダル11に連なる入力ロッド197に連動、連結されるシミュレータピストン194と、該シミュレータピストン194および制御ピストン66間に設けられる弾発手段195とを備え、バックアップピストン64Aに対する制御ピストン66の前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じて閉塞される開口部205…が、開放時にはストローク液室193をリザーバ31に通じさせるようにして前記制御ピストン66の端壁66aに設けられているので、バックアップピストン64Aに対する制御ピストン66の前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じて、ストローク液室193が密閉状態となって制御ピストン66に対するシミュレータピストン194の前進方向の移動が規制されるので、ストロークシミュレータ14によるブレーキペダル11のストロークの増大を抑えることができ、操作フィーリングの向上を図ることができる。
【0090】
図7は本発明の第2実施例を示すものであり、上記第1実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで、詳細な説明は省略する。
【0091】
このブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13Bと、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13B間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
【0092】
前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13Bに共通なケーシング15Bは、前端を閉じた有底円筒状のシリンダ体16と、内向き鍔部219aを後端に有して円筒状に形成されるとともにシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ219と、シリンダ体16の後端およびボディ219間に挟持される円筒状のスリーブ183とで構成される。シリンダ体16の後端はボディ219の前部に液密に嵌合されており、スリーブ183は、ボディ219の内周中間部に設けられた環状の段部221およびシリンダ体16の後端間に挟まれるようにしてボディ219に液密に嵌合される。
【0093】
液圧ブースタ13Bは、前端を倍力液圧作用室22に臨ませてケーシング15Bに収容される円筒状のバックアップピストン64Bと、増圧弁62および減圧弁63で構成されてバックアップピストン64Bに内蔵される調圧弁手段65と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11(第1実施例参照)から入力されるブレーキ操作入力が釣り合うようにして前記調圧弁手段65を調圧作動せしめる制御ピストン66と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力を制御ピストン66に付与するようにして前記調圧弁手段65および制御ピストン66間に介装される第1反力ピストン67と、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなったときに第1反力ピストン67からの反力に加えて液圧発生源12の出力液圧および反力ばね112による反力を前記制御ピストン66に付与するようにして前記バックアップピストン64Bおよび第1反力ピストン67間に介装される第2反力ピストン68とを備える。
【0094】
ケーシング15Bの一部を構成してシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ219には、前記シリンダ体16の後端およびスリーブ183を前端側から嵌合せしめる大径孔222と、該大径孔222の後端との間に環状の段部221を形成して大径孔222の後端に同軸に連なるとともに大径孔222よりも小径に形成される中径孔223とが設けられ、中径孔223の後端を規定するようにしてボディ219が後端に備える内向き鍔部219aは、前記中径孔223よりも小径である小径孔224を形成する。
【0095】
前記スリーブ183には前記バックアップピストン64Bが摺動可能に嵌合される。またボディ219には、大径孔222の内面に開口する入力ポート225と、中径孔223の前部内面に開口する解放ポート226とが設けられ、入力ポート225は液圧発生源12に接続され、解放ポート226はリザーバ31(第1実施例参照)に接続される。
【0096】
ボディ219における大径孔222の内面およびスリーブ183の外周間には前記入力ポート225に通じる環状室227が形成され、スリーブ183の内周およびバックアップピストン64Bの外周間には入力側環状室184が形成され、スリーブ183には、環状室227の後部を入力側環状室228の前部に連通させる連通孔185が設けられる。
【0097】
前記環状室227は、スリーブ183の外周に装着されるOリング230,231によってそれぞれ両側からシールされる。またマスタシリンダMにおける後部マスタピストン23の背面を臨ませる倍力液圧作用室22と、前記入力側環状室184との間は、バックアップピストン64Bの外周に装着されてスリーブ183の内周に摺接される環状シール手段としてのOリング186でシールされる。
【0098】
ボディ219内でスリーブ183および内向き鍔部219a間には、バックアップピストン64Bを後方側に付勢するばね106を収容するようにしてバックアップピストン64Bを囲む解放室76が形成されており、この解放室76は解放ポート226に連通する。また解放室76と、前記入力側環状室184との間はスリーブ183の内周に装着されてバックアップピストン64Bの外周に摺接するOリング187でシールされる。
【0099】
バックアップピストン64Bの前端部には、倍力液圧作用室22に前面を臨ませる端壁部材109が液密に嵌合されており、第2反力ピストン68の前端に装着されるフィルタ111および第2反力ピストン68と、前記端壁部材109との間でバックアップピストン64B内に形成される入力室113に前記入力側環状室184を連通させる連通孔234がバックアップピストン64Bに設けられる。
【0100】
さらに第2反力ピストン68内には、第1反力ピストン67の前端を臨ませる倍力液圧発生室121が形成され,第2反力ピストン68の外周およびバックアップピストン64Bの内周間には倍力液圧発生室121に通じる環状室122が形成されるのであるが、前記バックアップピストン64Bには、環状室122を倍力液圧作用室22に通じさせる連通孔235が設けられる。
【0101】
前端に端壁66aを有した有底円筒状に形成される制御ピストン66は、ボディ219の後端の内向き鍔部219aが形成する小径孔224に摺動可能に嵌合されつつバックアップピストン64Bの後部に同軸に挿入される。しかも内向き鍔部219aの内周すなわち小径孔224の内面には制御ピストン66の外周に弾発接触する環状のシール部材130が装着されており、バックアップピストン64Bおよび制御ピストン66間には、前記解放室76に通じる解放室132が形成される。
【0102】
前記ケーシング15Bにおけるスリーブ183およびバックアップピストン64Bの一方、この第2実施例では前記スリーブ183には、倍力液圧作用室22に一端を通じさせた連通路188が設けられ、この連通路188の他端は、バックアップピストン64Bが後退限にあるときには、倍力液圧作用室22および入力側環状室184間をシールするようにしてバックアップピストン64Bの外周に装着されたOリング186よりも前方でスリーブ183の内周に開口する。
【0103】
しかも倍力液圧作用室22の液圧低下時に、ブレーキペダル11の操作によってバックアップピストン64Bは後部マスタピストン23を直接押圧するように前進するのであるが、バックアップピストン64Bが後退位置から所定ストローク以上前進したときに前記Oリング186が前記連通路188の他端を通過し、連通孔234を介して入力室113に通じる前記入力側環状室184を倍力液圧作用室22に連通させるようにして、バックアップピストン64Bに前記連通路188が設けられる。
【0104】
この第2実施例によれば、マスタシリンダMの後部マスタピストン23を直接押圧するようにしてバックアップピストン64Bが所定ストローク以上前進するのに応じてOリング186がスリーブ183の内周面への連通路188の開口端を通過することによって、液圧発生源12に接続される入力側環状室184と、倍力液圧作用室22とがケーシング15Bの一部を構成するスリーブ183に設けられた連通路188を介して連通する。
【0105】
したがって第1実施例と同様に、バックアップピストン64Bが所定ストローク以上前進してからは、マスタシリンダMの後部マスタピストン23をバックアップピストン64Bで直接押圧することが不要となり、比較的小さなブレーキ操作力でマスタシリンダMからブレーキ液圧を確実に出力することが可能となり、しかも液圧ブースタ13B以外の電磁開閉弁は不要であるので部品点数の増大を回避することができ、スリーブ183に連通路188が設けられるだけであるので、構造が簡単である。
【0106】
図8は本発明の第3実施例を示すものであり、上記第1および第2実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで、詳細な説明は省略する。
【0107】
このブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13Cと、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13C間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
【0108】
前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13Cに共通なケーシング15Cは、前端を閉じた有底円筒状のシリンダ体16と、内向き鍔部219aを後端に有して円筒状に形成されるとともにシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ219と、シリンダ体16の後端およびボディ219間に挟持される円筒状のスリーブ220とで構成される。シリンダ体16の後端はボディ219の前部に液密に嵌合されており、スリーブ220は、ボディ219の内周中間部に設けられた環状の段部221およびシリンダ体16の後端間に挟まれるようにしてボディ219に液密に嵌合される。
【0109】
液圧ブースタ13Cは、前端を倍力液圧作用室22に臨ませてケーシング15Cに収容される円筒状のバックアップピストン64Cと、増圧弁62および減圧弁63で構成されてバックアップピストン64Cに内蔵される調圧弁手段65と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11(第1実施例参照)から入力されるブレーキ操作入力が釣り合うようにして前記調圧弁手段65を調圧作動せしめる制御ピストン66と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力を制御ピストン66に付与するようにして前記調圧弁手段65および制御ピストン66間に介装される第1反力ピストン67と、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなったときに第1反力ピストン67からの反力に加えて液圧発生源12の出力液圧および反力ばね112による反力を前記制御ピストン66に付与するようにして前記バックアップピストン64Cおよび第1反力ピストン67間に介装される第2反力ピストン68とを備える。
【0110】
ケーシング15Cの一部を構成してシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ219には、前記シリンダ体16の後端およびスリーブ220を前端側から嵌合せしめる大径孔222と、該大径孔222の後端との間に環状の段部221を形成して大径孔222の後端に同軸に連なるとともに大径孔222よりも小径に形成される中径孔223とが設けられ、中径孔223の後端を規定するようにしてボディ219が後端に備える内向き鍔部219aは、前記中径孔223よりも小径である小径孔224を形成する。
【0111】
前記スリーブ220には前記バックアップピストン64Cが摺動可能に嵌合される。またボディ219には、大径孔222の内面に開口する入力ポート225と、中径孔223の前部内面に開口する解放ポート226とが設けられ、入力ポート225は液圧発生源12に接続され、解放ポート226はリザーバ31(第1実施例参照)に接続される。
【0112】
ボディ219における大径孔222の内面およびスリーブ220の外周間には前記入力ポート225に通じる環状室227が形成され、スリーブ220の内周およびバックアップピストン64Cの外周間には入力側環状室228が形成され、スリーブ220には、環状室227および入力側環状室228間を連通する連通孔229が設けられる。
【0113】
前記環状室227は、スリーブ220の外周に装着されるOリング230,231によってそれぞれ両側からシールされる。またマスタシリンダMにおける後部マスタピストン23の背面を臨ませる倍力液圧作用室22と、前記入力側環状室228との間は、スリーブ220の内周に装着されてバックアップピストン64Cの外周に摺接するOリング232でシールされる。
【0114】
ボディ219内でスリーブ220および内向き鍔部219a間には、バックアップピストン64Cを後方側に付勢するばね106を収容するようにしてバックアップピストン64Cを囲む解放室76が形成されており、この解放室76は解放ポート226に連通する。また解放室76と、前記入力側環状室228との間はスリーブ220の内周に装着されてバックアップピストン64Cの外周に摺接する環状シール手段としてのOリング233でシールされる。
【0115】
バックアップピストン64Cの前端部には、倍力液圧作用室22に前面を臨ませる端壁部材109が液密に嵌合されており、第2反力ピストン68の前端に装着されるフィルタ111および第2反力ピストン68と、前記端壁部材109との間でバックアップピストン64C内に形成される入力室113に前記入力側環状室228を連通させる連通孔234がバックアップピストン64Cに設けられる。
【0116】
さらに第2反力ピストン68内には、第1反力ピストン67の前端を臨ませる倍力液圧発生室121が形成され,第2反力ピストン68の外周およびバックアップピストン64Cの内周間には倍力液圧発生室121に通じる環状室122が形成されるのであるが、前記バックアップピストン64Cには、環状室122を倍力液圧作用室22に通じさせる連通孔235が設けられる。
【0117】
前端に端壁66aを有した有底円筒状に形成される制御ピストン66は、ボディ219の後端の内向き鍔部219aが形成する小径孔224に摺動可能に嵌合されつつバックアップピストン64Cの後部に同軸に挿入される。しかも内向き鍔部219aの内周すなわち小径孔224の内面には制御ピストン66の外周に弾発接触する環状のシール部材130が装着されており、バックアップピストン64Cおよび制御ピストン66間には、前記解放室76に通じる解放室132が形成される。
【0118】
前記ケーシング15Cにおけるスリーブ220およびバックアップピストン64Cの一方、この第2実施例ではバックアップピストン64Cには、バックアップピストン64Cが後退限にあるときには、解放室76および入力側環状室228間をシールするようにしてスリーブ220の内周に装着されたOリング233よりも後方に位置して解放室76,132間を連通する連通路237が設けられる。
【0119】
しかも倍力液圧作用室22の液圧低下時に、ブレーキペダル11の操作によってバックアップピストン64Cは後部マスタピストン23を直接押圧するように前進するのであるが、前記連通路237の外端がバックアップピストン64Cが後退位置から所定ストローク以上前進したときに前記Oリング233を通過し、入力側環状室228が連通路237を介して前記解放室132に通じるようにして、バックアップピストン64Cに前記連通路237が設けられる。
【0120】
この第3実施例によれば、マスタシリンダMの後部マスタピストン23を直接押圧するようにしてバックアップピストン64Cが所定ストローク以上前進するのに応じて連通路237がOリング233を乗り越えることによって、液圧発生源12に接続される入力側環状室228と、リザーバ31に接続される解放室132とが、バックアップピストン64Cに設けられる連通路237を介して連通するので、部品点数の増大を回避した簡単な構成で、調圧弁手段65の異常による倍力液圧作用室22の液圧低下時に、液圧発生源12の出力液圧がブレーキ操作力の作用方向とは反対側から作用していない状態にあるバックアップピストン64Cで前記後部マスタピストン23を直接押圧するようにして前進作動せしめることができ、小さなブレーキ操作力でマスタシリンダMからブレーキ液圧を確実に出力させることができる。
【0121】
図9は本発明の第4実施例を示すものであり、第1〜第3実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで詳細な説明は省略する。
【0122】
このブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13Dと、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13D間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
【0123】
前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13Dに共通なケーシング15Dは、前端を閉じた有底円筒状のシリンダ体16と、内向き鍔部219を後端に有して円筒状に形成されるとともにシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ219と、シリンダ体16の後端およびボディ219間に挟持される円筒状のスリーブ240とで構成される。シリンダ体16の後端はボディ219の前部に液密に嵌合されており、スリーブ240は、ボディ219の内周中間部に設けられた環状の段部221およびシリンダ体16の後端間に挟まれるようにしてボディ219に液密に嵌合される。
【0124】
液圧ブースタ13Dは、前端を倍力液圧作用室22に臨ませてケーシング15Dに収容される円筒状のバックアップピストン64Dと、増圧弁62および減圧弁63で構成されてバックアップピストン64Dに内蔵される調圧弁手段65と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11(第1実施例参照)から入力されるブレーキ操作入力が釣り合うようにして前記調圧弁手段65を調圧作動せしめる制御ピストン66と、前記倍力液圧作用室22の液圧に基づく反力を制御ピストン66に付与するようにして前記調圧弁手段65および制御ピストン66間に介装される第1反力ピストン67と、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなったときに第1反力ピストン67からの反力に加えて液圧発生源12の出力液圧および反力ばね112による反力を前記制御ピストン66に付与するようにして前記バックアップピストン64Dおよび第1反力ピストン67間に介装される第2反力ピストン68とを備える。
【0125】
前記スリーブ240には前記バックアップピストン64Dが摺動可能に嵌合される。ボディ219における大径孔222の内面およびスリーブ240の外周間には入力ポート225に通じる環状室241が形成され、スリーブ240の内周およびバックアップピストン64Dの外周間には入力側環状室242が形成され、スリーブ240には、環状室241および入力側環状室242間を連通する連通孔243が設けられる。
【0126】
前記環状室241は、スリーブ240の外周に装着されるOリング230,231によってそれぞれ両側からシールされる。またマスタシリンダMにおける後部マスタピストン23の背面を臨ませる倍力液圧作用室22と、前記入力側環状室242との間は、スリーブ240の内周に装着されてバックアップピストン64Dの外周に摺接するOリング232でシールされる。
【0127】
ボディ219内でスリーブ220および内向き鍔部219a間には、バックアップピストン64Dを後方側に付勢するばね106を収容するようにしてバックアップピストン64Dを囲む解放室76が形成されており、この解放室76は解放ポート226に連通する。また解放室76と、前記入力側環状室242との間はバックアップピストン64Dの外周に装着されてスリーブ240の内周に摺接する環状シール手段としてのOリング244でシールされる。
【0128】
バックアップピストン64Dの前端部には、倍力液圧作用室22に前面を臨ませる端壁部材109が液密に嵌合されており、第2反力ピストン68の前端に装着されるフィルタ111および第2反力ピストン68と、前記端壁部材109との間でバックアップピストン64D内に形成される入力室113に前記入力側環状室242を連通させる連通孔234がバックアップピストン64Dに設けられる。
【0129】
さらに第2反力ピストン68内には、第1反力ピストン67の前端を臨ませる倍力液圧発生室121が形成され,第2反力ピストン68の外周およびバックアップピストン64Dの内周間には倍力液圧発生室121に通じる環状室122が形成されるのであるが、前記バックアップピストン64Dには、環状室122を倍力液圧作用室22に通じさせる連通孔235が設けられる。
【0130】
制御ピストン66は、ボディ219の後端の内向き鍔部219aが形成する小径孔224に摺動可能に嵌合されつつバックアップピストン64Dの後部に同軸に挿入され、内向き鍔部219aの内周すなわち小径孔224の内面には制御ピストン66の外周に弾発接触する環状のシール部材130が装着され、バックアップピストン64Dおよび制御ピストン66間には、前記解放室76に通じる解放室132が形成される。
【0131】
前記ケーシング15Dにおけるスリーブ240およびバックアップピストン64Dの一方、この第4実施例ではスリーブ240には、バックアップピストン64Dが後退限にあるときには、解放室76および入力側環状室242間をシールするようにしてバックアップピストン64Dの外周に装着されたOリング244よりも前方に位置して環状室241および入力側環状室242間を連通する連通路245が設けられる。
【0132】
しかも倍力液圧作用室22の液圧低下時に、ブレーキペダル11の操作によってバックアップピストン64Dは後部マスタピストン23を直接押圧するように前進するのであるが、前記連通路245の内端をバックアップピストン64Dが後退位置から所定ストローク以上前進したときに前記Oリング244が通過し、入力側環状室242に通じる前記環状室241が連通路245を介して前記解放室76に通じるようにして、バックアップピストン64Dに前記連通路245が設けられる。
【0133】
この第4実施例によれば、マスタシリンダMの後部マスタピストン23を直接押圧するようにしてバックアップピストン64Dが所定ストローク以上前進するのに応じてOリング244が前記連通路245を通過することによって、液圧発生源12に接続される入力側環状室242と、リザーバ31に接続される解放室76とが、バックアップピストン64Dに設けられる連通路245を介して連通するので、部品点数の増大を回避した簡単な構成で、調圧弁手段65の異常による倍力液圧作用室22の液圧低下時に、液圧発生源12の出力液圧がブレーキ操作力の作用方向とは反対側から作用していない状態にあるバックアップピストン64Dで前記後部マスタピストン23を直接押圧するようにして前進作動せしめることができ、小さなブレーキ操作力でマスタシリンダMからブレーキ液圧を確実に出力させることができる。
【0134】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】第1実施例の車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図である。
【図2】液圧ブースタおよびストロークシミュレータの縦断面図である。
【図3】液圧ブースタの一部である増圧弁付近の閉弁状態での拡大縦断面図である。
【図4】液圧ブースタの一部である減圧弁付近の開弁状態での拡大縦断面図である。
【図5】ストロークシミュレータの拡大縦断面図である。
【図6】バックアップピストンが前進した状態での図3に対応した縦断面図である。
【図7】第2実施例の図2に対応した断面図である。
【図8】第3実施例の図2に対応した断面図である。
【図9】第4実施例の図2に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0136】
11・・・ブレーキ操作部材であるブレーキペダル
12・・・液圧発生源
13A,13B,13C,13D・・・液圧ブースタ
14・・・ストロークシミュレータ
15A,15B,15C,15D・・・ケーシング
22・・・倍力液圧作用室
23・・・マスタピストン
31・・・リザーバ
64A,64B,64C,64D・・・バックアップピストン
65・・・調圧弁手段
66・・・制御ピストン
66a・・・端壁
93,184,228,242・・・入力側環状室
76,132・・・解放室
95・・・シール手段
193・・・ストローク液室
194・・・シミュレータピストン
197・・・入力部材である入力ロッド
205・・・開口部
188,216,237,245・・・連通路
186,233,244・・・シール手段であるOリング
M・・・マスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倍力液圧作用室(22)に背面を臨ませたマスタピストン(23)がケーシング(15A,15B)に摺動可能に収容されるマスタシリンダ(M)と;ブレーキ操作部材(11)の操作とは無関係に液圧を発生し得る液圧発生源(12)と;前面を前記倍力液圧作用室(22)に臨ませるとともに後退限を規制されて前記ケーシング(15A,15B)に摺動可能に嵌合されるバックアップピストン(64A,64B)と、前記液圧発生源(12)の出力液圧を調圧して前記倍力液圧作用室(22)に作用せしめることを可能として前記バックアップピストン(64A,64B)に内蔵される調圧弁手段(65)と、前記倍力液圧作用室(22)の液圧に基づく反力ならびに前記ブレーキ操作部材(11)によるブレーキ操作力が釣り合うように作動して前記調圧弁手段(65)を調圧作動せしめる制御ピストン(66)とを有し、前記倍力液圧作用室(22)の液圧低下時に前記制御ピストン(66)から前記バックアップピストン(64A,64B)にブレーキ操作力が伝達されるのに応じて前記バックアップピストン(64A,64B)が前記液圧発生源(12)の出力液圧に基づく液圧力に抗して前記マスタピストン(23)を直接押圧すべく前進作動するように構成される液圧ブースタ(13A,13B)と;を備える車両用ブレーキ装置において、前記ケーシング(15A,15B)および前記バックアップピストン(64A,64B)間に形成されて前記液圧発生源(12)に接続される入力側環状室(93,184)と、前記倍力液圧作用室(22)との間をシールする環状のシール手段(95,186)が前記ケーシング(15A,15B)および前記バックアップピストン(64A,64B)間に介装され、前記マスタピストン(23)を直接押圧するようにして前記バックアップピストン(64A,64B)が所定ストローク以上前進するのに応じて前記入力側環状室(93,184)および前記倍力液圧作用室(22)間を連通する連通路(216,188)が、前記バックアップピストン(64A,64B)および前記ケーシング(15A,15B)の一方に設けられることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
倍力液圧作用室(22)に背面を臨ませたマスタピストン(23)がケーシング(15C,15D)に摺動可能に収容されるマスタシリンダ(M)と;ブレーキ操作部材(11)の操作とは無関係に液圧を発生し得る液圧発生源(12)と;前面を前記倍力液圧作用室(22)に臨ませるとともに後退限を規制されて前記ケーシング(15C,15D)に摺動可能に嵌合されるバックアップピストン(64C,64D)と、前記液圧発生源(12)の出力液圧を調圧して前記倍力液圧作用室(22)に作用せしめることを可能として前記バックアップピストン(64C,64D)に内蔵される調圧弁手段(65)と、前記倍力液圧作用室(22)の液圧に基づく反力ならびに前記ブレーキ操作部材(11)によるブレーキ操作力が釣り合うように作動して前記調圧弁手段(65)を調圧作動せしめる制御ピストン(66)とを有し、前記倍力液圧作用室(22)の液圧低下時に前記制御ピストン(66)から前記バックアップピストン(64C,64D)にブレーキ操作力が伝達されるのに応じて前記バックアップピストン(64C,64D)が前記液圧発生源(12)の出力液圧に基づく液圧力に抗して前記マスタピストン(23)を直接押圧すべく前進作動するように構成される液圧ブースタ(13C,13D)と;を備える車両用ブレーキ装置において、前記ケーシング(15C,15D)および前記バックアップピストン(64C,64D)間に形成されて前記液圧発生源(12)に接続される入力側環状室(228,242)と、リザーバ(31)に接続されて前記ケーシング(15C,15D)内に形成される解放室(76,132)との間をシールする環状のシール手段(233,244)が前記ケーシング(15C,15D)および前記バックアップピストン(64C,64D)間に介装され、前記マスタピストン(23)を直接押圧するようにして前記バックアップピストン(64C,64D)が所定ストローク以上前進するのに応じて前記入力側環状室(228,242)および前記解放室(76,132)間を連通する連通路(237,245)が、前記ケーシング(15C,15D)および前記バックアップピストン(64C,64D)の一方に設けられることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記制御ピストン(66)は前端に端壁(66a)を有して有底円筒状に形成され、前記ブレーキ操作部材(11)の操作ストローク感を得るようにして前記ブレーキ操作部材(11)および前記制御ピストン(66)間に設けられるストロークシミュレータ(14)が、ブレーキ操作部材(11)に連なる入力部材(197)と、前記制御ピストン(66)の端壁(66a)との間にストローク液室(193)を形成して制御ピストン(66)に摺動可能に嵌合されるとともに入力部材(197)に連動、連結されるシミュレータピストン(194)と、該シミュレータピストン(194)および前記制御ピストン(66)間に設けられる弾発手段(195)とを備え、前記バックアップピストン(64)に対する前記制御ピストン(66)の前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じて閉塞される開口部(205)が、開放時には前記ストローク液室(193)をリザーバ(31)に通じさせるようにして前記制御ピストン(66)の端壁(66a)に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−234525(P2009−234525A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86264(P2008−86264)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】