説明

車両用ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】車両情報の判読性と車両内の意匠性とを共に高めたHUD装置を、提供すること。
【解決手段】発光像を投射口11bから車両1のフロントウインドシールド4へ投射することにより、当該発光像の虚像を表示させるHUD装置10であって、車両1のインストルメントパネル2の上面2aに開口するデフロスタグリル3内において、フロントウインドシールド4に吹き付ける空気が流通するデフロスタ通路6に対し、投射口11bが車両1の前後方向に並んで且つ且つインストルメントパネル2の上面2aよりも下方に、配設されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のヘッドアップディスプレイ装置(以下、「HUD装置」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両情報を表す発光像を投射口から車両のフロントウインドシールドへ投射することにより、当該発光像の虚像を表示させるHUD装置が、知られている。一般に、HUD装置の投射口は、車両においてフロントウインドシールと向き合うインストルメントパネルの上面に開口させられるため、当該上面の見栄えを低下させることが懸念される。
【0003】
そこで、特許文献1には、インストルメントパネルの上面に開口するデフロスタグリル内において、フロントウインドシールドに吹き付ける空気が流通するデフロスタ通路に対し、投射口を並んで配設させたHUD装置が、開示されている。このようにしてデフロスタ通路と並ぶことで投射口がデフロスタグリル内に収められることによれば、インストルメントパネル上面の見栄えを損なうことないので、車両内の意匠性を高め得るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示のHUD装置において投射口は、デフロスタグリル内にて車幅方向にデフロスタ通路と並んで配設されているため、フロントウインドシールドのうち投射口からの発光像の投射領域に対して、デフロスタ通路の出口部を向き合わせることができない。こうした構成では、デフロスタ通路の流通空気を投射領域に吹き付けて曇りを防止及び除去することが困難となるため、当該曇りの領域に投射された発光像の虚像表示は不鮮明となり、車両情報の視認性の低下を招いてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両情報の判読性と車両内の意匠性とを共に高めたHUD装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、発光像を投射口から車両のフロントウインドシールドへ投射することにより、当該発光像の虚像を表示させるHUD装置であって、車両のインストルメントパネルの上面に開口するデフロスタグリル内において、フロントウインドシールドに吹き付ける空気が流通するデフロスタ通路に対し、投射口が車両の前後方向に並んで配設されることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、インストルメントパネル上面に開口するデフロスタグリル内において、車両前後方向にHUD装置の投射口と並ぶデフロスタ通路の出口部は、フロントウインドシールドのうち当該投射口からの発光像の投射領域に対して、向き合い得る。これによれば、投射領域にデフロスタ通路の流通空気が吹き付けられて、曇りの防止作用乃至は除去作用が発揮されることになるので、当該領域に投射された発光像の虚像表示を鮮明なものとして、車両情報の判読性を高めることができる。しかも、投射口がデフロスタ通路と並ぶことでデフロスタグリル内に収められることによれば、インストルメントパネル上面の見栄えを損なうことがないので、車両内の意匠性を高めることもできるのである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、投射口を形成するハウジングを備え、ハウジングの外面は、デフロスタ通路に露出することにより、フロントウインドシールドのうち発光像の投射領域側へ向かって当該デフロスタ通路の流通空気を整流する。この発明のように、デフロスタ通路が露出するハウジングの外面により、フロントウインドシールドのうち発光像の投射領域側へ向かって整流されるデフロスタ通路の流通空気は、当該投射領域に確実に吹き付けられ得る。しかも、投射口を形成するハウジングの外面は、当該投射口の近くにて空気を整流し得るので、当該投射口からの発光像の投射領域に空気の吹き付け領域を正確に合わせ易い。これらによれば、投射領域の曇りに対する防止作用及び除去作用の発揮を確固たるものとして、虚像表示の鮮明さ、ひいては車両情報の判読性を高めることができるのである。
【0010】
請求項3に記載の発明によると、フロントウインドシールドのうち発光像の投射領域側へ向かってデフロスタ通路の流通空気を整流する複数の整流板により仕切られたデフロスタグリル内において、それら整流板間に投射口が配設される。この発明のように、デフロスタグリル内を仕切る複数の整流板により、フロントウインドシールドのうち発光像の投射領域側へ向かって整流されるデフロスタ通路の流通空気は、当該投射領域に確実に吹き付けられ得る。しかも、投射口が間に配設される各整流板は、当該投射口の近くにて空気を整流し得るので、当該投射口からの発光像の投射領域に空気の吹き付け領域を正確に合わせ易い。これらによれば、投射領域の曇りに対する防止作用及び除去作用の発揮を確固たるものとして、虚像表示の鮮明さ、ひいては車両情報の判読性を高めることができるのである。
【0011】
請求項4に記載の発明によると、デフロスタグリル内において、インストルメントパネルの上面よりも下方に投射口が配設される。この発明のように、インストルメントパネル上面に開口するデフロスタグリル内にて当該上面よりも下方の投射口は、車両内の乗員により視認され難い。故に、インストルメントパネル上面の見栄え、ひいては車両内の意匠性を高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態によるHUD装置の車両への搭載状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態によるHUD装置の車両への搭載状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第二実施形態によるHUD装置の車両への搭載状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態によるHUD装置の車両への搭載状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第三実施形態によるHUD装置の車両への搭載状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0014】
(第一実施形態)
図1,2は、本発明の第一実施形態によるHUD装置10の車両1への搭載状態を示している。
【0015】
車両1内において運転席前方のインストルメントパネル2には、デフロスタグリル3が装着されている。樹脂により矩形筒状に形成されているデフロスタグリル3は、インストルメントパネル2の上面2aのうち車両1のフロントウインドシールド4と向き合う箇所に、開口している。デフロスタグリル3内は、車幅方向に所定間隔をあけて並ぶ複数の整流板3aにより、仕切られている。デフロスタグリル3内において各整流板3a間には、車両のデフロスタダクト5と連通するデフロスタ通路6が、それぞれ個別に形成されている。ここで特に本実施形態では、各整流板3aの表面を含むデフロスタグリル3の内面3bにより、各デフロスタ通路6の全体が区画されている。
【0016】
このような各デフロスタ通路6は、車両1の空調装置(図示しない)により温度調節されてデフロスタダクト5から送られてくる空気を、それら各デフロスタ通路6を挟む整流板3aの表面に沿って流通させる。このとき各デフロスタ通路6の流通空気は、デフロスタグリル3の上方のフロントウインドシールド4のうち、それら各デフロスタ通路6の出口部6aと向き合う領域側へ向かって整流されることにより、当該領域へと吹き付けられる。したがって、温度調節された空気の吹付領域においては、フロントウインドシールド4に曇りが生じるのを防止することや、フロントウインドシールド4の曇りが生じていても除去することが、できるのである。
【0017】
車両1においてHUD装置10は、デフロスタグリル3内のうち各デフロスタ通路6の後方に、それぞれ個別に設置されている。第一実施形態において各HUD装置10の構成は、実質的に互いに同一であるので、以下では、一つのHUD装置10の構成を代表して説明する。
【0018】
HUD装置10は、ハウジング11、光源12及びカバーレンズ13を備えている。樹脂により中空箱状に形成されているハウジング11は、HUD装置10に対応するデフロスタ通路6の後方において、デフロスタグリル3に装着されている。ハウジング11は、デフロスタグリル3内のうちインストルメントパネル2の上面2aよりも下方においてフロントウインドシールド4と向き合う上部11aに、投射口11bを形成している。これにより、本実施形態の投射口11bは、デフロスタグリル3内において車両の前後方向にデフロスタ通路6と並ぶ形態に、且つインストルメントパネル2の上面2aよりも下方に、配設されている。
【0019】
光源12は、本実施形態では発光ダイオード(LED)からなり、ハウジング11の内部空間11cに収容されている。光源12は、車両1の表示制御回路(図示しない)により通電制御されて発光することで、所定色の光を出射する。樹脂により板状に形成されているカバーレンズ13は、ハウジング11の投射口11bに装着されている。カバーレンズ13は、所定の車両情報を図柄や文字等により表すインジケータを、形成している。図1の矢印の如く、カバーレンズ13が光源12からの出射光により透過照明されることで、インジケータの発光像が投射口11bから上方のフロントウインドシールド4へ投射される。このとき特に本実施形態では、HUD装置10に対応するデフロスタ通路6を挟んだ整流板3aが空気を整流する側に、フロントウインドシールド4における発光像の投射領域4aが位置するようになっている。こうしてフロントウインドシールドに投影される発光像は、車両1において当該シールド4の前方にて結像されることで、図1の矢印の如く、虚像として運転席側へと向かって表示されることになる。
【0020】
以上説明の第一実施形態によると、デフロスタグリル3内にて各HUD装置10の投射口11bと車両前後方向に並ぶ各デフロスタ通路6の出口部6aは、フロントウインドシールド4のうち、それら投射口11bからの発光像の投射領域4aに対して向き合う状態となる。これによれば、各HUD装置10による発光像の投射領域4aに各デフロスタ通路6の流通空気が吹き付けられて、曇りの防止作用及び除去作用が発揮されることで、それら発光像の虚像表示が鮮明となるので、車両情報の判読性を高めることができるのである。
【0021】
また、第一実施形態によると、デフロスタグリル3内の整流板3aは、各HUD装置10による発光像の投射領域4a側へ向かって各デフロスタ通路6の流通空気を整流するので、それら投射領域4aには、各デフロスタ通路6の流通空気が確実に吹き付けられ得る。しかも、投射口11bが間に配設される各整流板3aは、当該投射口11bの近くにて空気を整流し得るので、当該投射口11bからの発光像の投射領域4aに空気の吹き付け領域を正確に合わせ易い。これらによれば、各HUD装置10による発光像の投射領域4aの曇りに対して、防止作用及び除去作用の発現を確固たるものとして、虚像表示の鮮明さ、ひいては車両情報の判読性を高めることができるのである。
【0022】
さらに第一実施形態によると、各HUD装置10の投射口11bは、各デフロスタ通路6と並んでデフロスタグリル3内に収められると共に、インストルメントパネル2の上面2aよりも下方に配設されているので、車両1内の乗員から視認され難い。これによれば、インストルメントパネル2の上面2aの見栄えを損なうことがないので、車両1内の意匠性も高めることができる。
【0023】
(第二実施形態)
図3,4に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。車両1において各HUD装置210は、デフロスタグリル3内のうち各デフロスタ通路206の前方に、それぞれ個別に設置されている。それと共に、各HUD装置210のハウジング211の外面211dは、各整流板3aの表面を含むデフロスタグリル3の内面3bと共同して、各デフロスタ通路206を区画している。
【0024】
このような構成により各HUD装置210では、対応するデフロスタ通路206に露出する外面211dが、フロントウインドシールド4のうち発光像の投射領域4a側へと向かう整流作用を、当該対応通路206の流通空気に与え得る。したがって、各HUD装置210による発光像の投射領域4aには、各整流板3aによる整流作用と相俟って、各デフロスタ通路206の流通空気が確実に吹き付けられ得る。しかも、各HUD装置210において投射口11bを形成するハウジング211の外面211dは、当該投射口11bの近くにて空気を整流し得るので、当該投射口11bからの発光像の投射領域4aに空気の吹き付け領域を正確に合わせ易い。これらによれば、各HUD装置210による発光像の投射領域4aの曇りに対して、防止作用及び除去作用の発現を確固たるものとして、虚像表示の鮮明さ、ひいては車両情報の判読性を高めることができるのである。
【0025】
(第三実施形態)
図5に示すように、本発明の第三実施形態は第一実施形態の変形例である。各HUD装置310は、ハウジング311の一部がデフロスタグリル3外に張り出すことにより、当該ハウジング311の内部空間311cが拡大された形となっている。それと共に、各HUD装置310は、ハウジング311の内部空間311cに収容される反射鏡314を、さらに備えている。この反射鏡314は、光源12からの出射光を一旦反射してカバーレンズ13へ入射させることにより、当該カバーレンズ13を透過照明することとなる。
【0026】
このような構成の各HUD装置310にあっても、デフロスタグリル3内にて投射口11bが車両前後方向に各デフロスタ通路6と並んでいるので、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0028】
具体的に第一〜第三実施形態では、HUD装置10,210,310をデフロスタグリル3内に一つだけ配設してもよく、またその場合等には、デフロスタグリル3に整流板3aを形成しない構成を、採用してもよい。さらに、第一〜第三実施形態では、デフロスタグリル3内においてインストルメントパネル2の上面2aと実質同一平面上に、HUD装置10,210,310の投射口11bを配設してもよい。またさらに、第一〜第三実施形態では、各HUD装置10,210,310のハウジング11,211,311の構成として、例えば液晶モニタ等に表示した画像の発光像を投射口11bから投射するための構成を、採用してもよい。
【0029】
加えて、第二実施形態に準じて第一及び第三実施形態では、デフロスタグリル3内のうち各デフロスタ通路6の前方に各HUD装置10,310を設置してもよい。さらに加えて、第一実施形態に準じて第二実施形態では、デフロスタグリル3内のうち各デフロスタ通路206の後方に各HUD装置210を設置してもよい。またさらに加えて、第三実施形態に準じて第二実施形態では、各HUD装置210のハウジング211の一部をデフロスタグリル3外に張り出させて、例えば反射鏡314等の光学系を当該ハウジング211の内部空間11cに収容させてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 車両、2 インストルメントパネル、2a 上面、3 デフロスタグリル、3a 整流板、3b 内面、4 フロントウインドシールド、4a 投射領域、5 デフロスタダクト、6,206 デフロスタ通路、6a 出口部、10,210,310 HUD装置、11,211,311 ハウジング、11a 上部、11b 投射口、11c,311c 内部空間、12 光源、13 カバーレンズ、211d 外面、314 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を表す発光像を投射口から車両のフロントウインドシールドへ投射することにより、当該発光像の虚像を表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記車両のインストルメントパネルの上面に開口するデフロスタグリル内において、前記フロントウインドシールドに吹き付ける空気が流通するデフロスタ通路に対し、前記投射口が前記車両の前後方向に並んで配設されることを特徴とする車両用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記投射口を形成するハウジングを備え、
前記ハウジングの外面は、前記デフロスタ通路に露出することにより、前記フロントウインドシールドのうち前記発光像の投射領域側へ向かって当該デフロスタ通路の流通空気を整流することを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記フロントウインドシールドのうち前記発光像の投射領域側へ向かって前記デフロスタ通路の流通空気を整流する複数の整流板により仕切られた前記デフロスタグリル内において、それら整流板間に前記投射口が配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記デフロスタグリル内において、前記インストルメントパネルの上面よりも下方に前記投射口が配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101718(P2012−101718A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253071(P2010−253071)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】