説明

車両用ヘッドアップディスプレイ

【課題】煩雑な操作を使用者に強いることなく、複数の画像情報の表示位置がフロントガラス上で互いに重なることが防止される、車両用ヘッドアップディスプレイを提供する。
【解決手段】表示手段12を介して画像情報を表示位置に表示させる制御手段20は、表示手段12が複数の画像情報をフロントガラス22上に表示する際に、それら複数の画像情報の各表示位置が互いに重なるか否かを判定する第1の重なり判定手段20と、第1の重なり判定手段20によって複数の画像情報の各表示位置が互いに重なると判定した場合に、予め定められた優先順位に基づいて、複数の画像情報の中から優先順位の最も高い画像情報を選択して表示位置に表示する第1の位置制御手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラス上に画像情報を表示する車両用ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ヘッドアップディスプレイは、車両内部に設けられたプロジェクタ等から画像情報をフロントガラス上に照射することによって、運転者に運転中の視線を大きく逸らさせることなく画像情報を視認させたり、運転者やその他乗員(以下、使用者ともいう。)に対して表示サイズの大きな画像情報を視認させたりする。
【0003】
近年、情報の多様化に伴い、例えば、車両の計器類(スピードメータやタコメータ、燃料計等)の画像情報を表示しつつ、新たに経路案内の画像情報を追加表示したり、経路案内の画像情報における地図情報や交通情報等を同時に表示させたりする等、複数の画像情報をフロントガラス上に表示することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−203309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の画像情報を表示する際に、画像情報の表示位置が互いに重なって、画像情報の表示に不具合が生じる場合がある。
このような問題に対処するため、例えば、各画像情報の表示サイズを小さくして、予め画像情報の表示位置が互いに重ならないように設定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、画像情報の表示サイズを小さくすることは、使用者に対して見易い画像情報を提供する趣旨に反し、現実的でない。
また、上記問題の解決策の一つとして、例えば、特許文献1に示されるように、使用者がリモコン装置等を用いて、画像情報の表示位置を変更し、表示位置が互いに重ならないようにすることも考えられる。
【0007】
しかしながら、複数の画像情報の表示位置の重なりを防止するために、使用者がリモコン装置等を用いて操作するとなると、使用者の負担が大きくなる可能性があった。
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、使用者に操作の負担を与えることなく、フロントガラス上において複数の画像情報の表示位置が互いに重なることが回避され、使用者に対して提供すべき画像情報が確実に表示される、車両用ヘッドアップディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために為された本発明に係る請求項1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイでは、制御手段が、状態検知手段によって検知された車両の各部の状態に基づいて、一又は複数の画像情報を生成すると共に、フロントガラス上で予め設定された基準位置に基づいて画像情報を表示する表示位置を設定し、かかる画像情報を表示手段を介して表示位置に表示させる。
【0009】
これにより、使用者がフロントガラス上に画像情報を表示するための特別な操作を行わなくとも、状態検知手段で検知された車両の状態に応じて、必要な画像情報が表示される。
【0010】
特に本発明においては、制御手段が予め設定された基準位置に基づいて複数の画像情報の各表示位置をフロントガラス上に設定する際に、第1の重なり判定手段が、かかるフロントガラス上においてそれら複数の画像情報の各表示位置が互いに重なるか否かを判定する。
【0011】
そして、第1の重なり判定手段が複数の画像情報の各表示位置が互いに重なると判定すると、第1の位置制御手段が、予め定められた優先順位に基づいて、それら複数の画像情報の中から優先順位の最も高い画像情報を選択して表示位置に表示する。
【0012】
これにより、複数の画像情報の表示位置が互いに重なる場合に、使用者がかかる重なりを防止するための特別な操作を行わなくとも、表示位置に表示すべき、即ち使用者に提供すべき画像情報が表示されるのである。
【0013】
なお、表示手段を介して画像情報を表示するフロントガラス上とは、フロントガラス自体の表面を示すことに加え、フロントガラスの表面に対して当接または離間して設けられたスクリーン部などを示す。
【0014】
また、本発明の車両用ヘッドアップディスプレイに関しては、例えば請求項2に記載のように、第1の位置制御手段が、複数の画像情報の中から優先順位の低い画像情報を選択してかかる優先順位の低い画像情報の表示位置を優先順位の高い他の画像情報の表示位置と重ならない位置に変更する構成を採用することが好ましい。これにより、使用者が優先順位の低い画像情報についても見たいという要求に応えることが出来る。
【0015】
さらに、本発明の車両用ヘッドアップディスプレイに関しては、例えば請求項3に記載のように、複数の画像情報が、車両の走行状態に関する情報を示す標準画像情報と、車両の運転の補助に関する情報を示す追加画像情報とを含み、この追加画像情報が標準画像情報よりも優先順位を高く設定されている構成を採用することが好ましい。
【0016】
これにより、例えば、車両の後進や右折、左折等の特定の運転操作をする場合やドアロック又はシートベルトが外れていることを警告する場合など、運転の補助の必要性が高い場合に、それら車両の各部の状態に関連する画像情報を、追加画像情報として標準画像情報よりも優先的に表示位置に表示させることが出来る。
【0017】
また、本発明の車両用ヘッドアップディスプレイに関しては、例えば請求項5に記載の構成を採用することが好ましい。この車両用ヘッドアップディスプレイの妨害物検知手段は、フロントガラス上において画像情報の表示位置への表示を妨害する妨害物があるか否かを検知する。
【0018】
さらに、上記車両用ヘッドアップディスプレイの第2の重なり判定手段は、妨害物検知手段によってフロントガラス上に妨害物があると検知した場合に、フロントガラス上において画像情報の表示位置と妨害物とが互いに重なるか否かを判定する。
【0019】
更にまた、当該車両用ヘッドアップディスプレイの第2の位置制御手段は、第2の重なり判定手段によってフロントガラス上において画像情報の表示位置が妨害物に重なったと判定した場合に、画像情報の表示位置を妨害物と重ならない位置に変更する。
【0020】
そして、前記第1の重なり判定手段は、第2の位置制御手段によって位置変更された画像情報に対しても、他の画像情報と表示位置が重なるか否かを判定する。
このような請求項5に記載の車両用ヘッドアップディスプレイによれば、画像情報におけるフロントガラス上への表示が妨害物によって妨害されることがなくなり、表示すべき画像情報がフロントガラス上に一層確実に表示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用ヘッドアップディスプレイの全体構成を示すブロック図。
【図2】自動車用ヘッドアップディスプレイのECUに記憶された制御マップを示す説明図。
【図3】自動車用ヘッドアップディスプレイにおける画像情報の表示を制御する処理を示すフローチャート。
【図4】図3のフローチャートにおける追加処理を詳細に示すフローチャート。
【図5】図3のフローチャートにおける移動処理を詳細に示すフローチャート。
【図6】図3のフローチャートにおける消去処理を詳細に示すフローチャート。
【図7】自動車用ヘッドアップディスプレイによってフロントガラスに表示される画像情報の位置を概略的に示すための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明の一実施形態としての自動車用ヘッドアップディスプレイ10の全体構成が示されている。この自動車用ヘッドアップディスプレイ10は、プロジェクタ12や電圧制御部14、状態検知装置群16、妨害物検知装置群18、表示制御装置(以下、ECUとも言う)20などを含んで構成されている。
【0023】
プロジェクタ12は、自動車のダッシュボード24内に設けられ(図7参照)、ECU20と電気的に接続されており、ECU20において生成された画像情報(以下、画像データとも言う)の表示用データを受けて、かかる表示用データに基づき画像情報をフロントガラス22上に照射するようになっている。
【0024】
フロントガラス22には、光透過率可変ガラスが採用されている。光透過率可変ガラスは、導電剤を添加したネマティック液晶層26を層の厚さ方向両側から通常のフロントガラス用ガラスで挟み込んだ構成とされている。
【0025】
電圧制御部14は、ECU20と電気的に接続されており、またフロントガラス22のネマティック液晶層26に電圧を印加するための電極を複数備えている。複数の電極は、ネマティック液晶層26の上部と下部に接続されている。
【0026】
フロントガラス22の光透過率を指示する信号がECU20から電圧制御部14に送られて、その光透過率を実現できるような動作電圧を電圧制御部14からフロントガラス22に印加すると、ネマティック液晶層26は動的散乱(Dynamic Scattering)効果によって白濁化し、フロントガラス22の光透過率が指示された光透過率に調整される。即ち、かかるフロントガラス22は、画像情報の表示時に光透過率を下げて、画像情報を鮮明に表示する一方、画像情報の非表示時に所定の光透過率を確保して、フロントガラス22を介した外観の視認性の低下を防止することが出来る。
【0027】
なお、本実施形態では、ネマティック液晶層26がフロントガラス22の略全体に亘って設けられているため、画像情報の表示時に、フロントガラス22の略全体が白濁化されるようになっているが、この白濁化を実現するための光透過率は、自動車の外観の視認性を確保しつつ、画像情報が見易くなる程度に調整される。
【0028】
状態検知装置群16は、ウインカ操作検知装置28やバックギア動作検知装置30、ドア開閉検知装置32、シートベルト装着検知装置34を含んで構成され、それぞれECU20と電気的に接続されている。
【0029】
ウインカ操作検知装置28は、右ウインカ及び左ウインカを表示する方向指示器を操作するレバー操作スイッチ36で構成されており(図7参照)、レバー操作スイッチ36における右ウインカ及び左ウインカのオン・オフ信号をECU20に出力する。
【0030】
バックギア動作検知装置30は、内燃機関や変速機構等を含んでなるパワーユニットに設置されて、バックギアのオン・オフ信号をECU20に出力する。
ドア開閉検知装置32は、自動車の複数のドア(本実施形態では4ドア)における各ドアロック装置で構成され、ドアロックのオン・オフ信号をECU20に出力する。
【0031】
シートベルト装着検知装置34は、運転席や助手席、後部座席等の各座席に設けられたシートベルトのベルト部を固定するバックルに設置され、ベルト部がバックルに固定されるか否かのオン・オフ信号をECU20に出力する。
【0032】
妨害物検知装置群18は、フロントガラス22上において画像情報の表示を妨害する妨害物があるか否かを検知する装置であり、ワイパ動き出し検知装置38とサンバイザ開閉検知装置40とヘッドライト動作検知装置42とを含んで構成されている。各検知装置38,40,42は、ECU20と電気的に接続されている。妨害物は、プロジェクタ12からフロントガラス22に画像情報を照射する照射線上に位置したり、車両外方からフロントガラス22における画像情報の表示領域に像を映したりすることで、画像情報の表示を完全に遮ったり、不鮮明にしたりするものである。本実施形態における妨害物の対象は、ワイパ44とサンバイザ46と対向車のヘッドライトの光とされている(図7参照)。
【0033】
ワイパ動き出し検知装置38は、ワイパ44の動作をオンオフするレバー操作スイッチ48で構成されており(図7参照)、レバー操作スイッチ48におけるワイパ44の動作のオン・オフ信号をECU20に出力する。
【0034】
サンバイザ開閉検知装置40は、サンバイザ46の開閉に伴いサンバイザ46に接触乃至は離間する部材、若しくはサンバイザ46とフロントガラス22との間のなす角度を検知する装置等で構成されており、かかる部材の接触乃至は離間状態の検知結果または前記角度の値に基づいて、サンバイザ46が開いて、プロジェクタ12からフロントガラス22への画像情報の照射線上に位置しているか否かの信号をECU20に出力する。
【0035】
ヘッドライト動作検知装置42は、自車のヘッドライトの操作スイッチ50により構成され(図7参照)、操作スイッチ50のオン・オフ信号をECU20に出力する。即ち、対向車のヘッドライトが自車のフロントガラス22を照らして画像情報の表示を妨害するか否かの検知には、自車のヘッドライト操作スイッチ50をオンする環境で対向車もヘッドライトをオンするという経験則を利用している。
【0036】
また、自動車には、運転者が見え難い車外風景を映すモニタカメラとして、自車の後方を映すバックカメラ52や右前方を映す右カメラ54、左前方を映す左カメラ56が一体的に若しくはそれぞれ独立して設けられている。
【0037】
さらに、自動車には、車速やエンジン回転数等の検知信号に基づいてエンジンの燃料噴射量や供給空気量等を制御するエンジン制御装置58や、車速やエンジン回転数に応じて、自動変速機(A/T)の変速比等を制御するA/T制御装置60が設けられている。
【0038】
更にまた、自動車には、ナビゲーションシステム62が設けられている。このナビゲーションシステム62は、人工衛星から送信された信号に基づいて自動車の位置や方位、速度等を検出するGPS受信機や、予め記憶された地図データと新たに入力された経路情報に基づいて、自動車の現在位置及び進行方向を掲載した地図の画像データと自動車の進行方向のみを示す画像データとの少なくとも一つを生成する制御装置等を備えている。
【0039】
上述のバックカメラ52や右カメラ54、左カメラ56、エンジン制御装置58、A/T制御装置60、ナビゲーションシステム62は、それぞれECU20と電気的に接続されている。
【0040】
ECU20は、CPUやROM、RAM等を含むマイクロコンピュータからなる。ECU20は、状態検知装置群16や妨害物検知装置群18によって検知された各信号に基づいて画像情報を生成すると共に、画像情報の内容や表示サイズ、表示位置、複数の画像情報を同時に表示する数などを調整して、プロジェクタ12を介してフロントガラス22上に映し出す画像情報を制御する。
【0041】
上述のROMには、図2に示されるような制御マップが記憶されている。制御マップには、状態検知装置群16や妨害物検知装置群18によって検知された各信号に基づいて表示すべき画像情報の種類や内容、フロントガラス22に初期表示する位置(基準位置)、優先順位、移動方向が書き込まれている。
【0042】
画像情報の優先順位とは、ECU20がフロントガラス22上において複数の画像情報の表示位置を設定する際に、複数の画像情報の表示位置がフロントガラス22上で互いに重なる場合に、当該表示位置(重なり位置)に優先的に表示する画像情報の順位のことである。ECU20が画像情報の表示を制御する処理の詳細については、後述するが、ECU20は、複数の画像情報の優先順位を比較して、優先順位の最も高い画像情報の表示位置を当該表示位置に設定し、優先順位の低い画像情報の表示位置を当該表示位置と重ならない位置に変更する。
【0043】
画像情報の移動方向は、画像情報の表示位置を別の位置に変更設定する際の指標とされている。例えば、移動方向が「右」とされている画像情報の表示位置は、ECU20によって、前回設定した表示位置から右方向に変更する。
【0044】
また、本実施形態における画像情報の内容には、バックモニタ用画像データや右モニタ用画像データ、左モニタ用画像データ、右ドア警告画像データ、左ドア警告画像データ、右席シートベルト警告画像データ、左席シートベルト警告画像データ、第1の標準画像データ、第2の標準画像データ、第3の標準画像データがある。
【0045】
バックモニタ用画像データは、バックギアの入力信号(オン信号)がバックギア動作検知装置30からECU20に出力された場合に、バックカメラ52により映された車両後方の風景をECU20において読み込んで生成される画像データである。このバックモニタ用画像データをプロジェクタ12を介してフロントガラス22上に初期表示する基準位置aは、フロントガラス22の略中央に設定されている(図7参照)。
【0046】
右モニタ用画像データは、右ウインカの入力信号がウインカ操作検知装置28からECU20に出力された場合に、右カメラ54により映された車両右方の風景をECU20において読み込んで生成される画像データである。右モニタ用画像データの基準位置bは、フロントガラス22の右端に設定されている(図7参照)。
【0047】
左モニタ用画像データは、左ウインカの入力信号がウインカ操作検知装置28からECU20に出力された場合に、左カメラ56により映された車両左方の風景をECU20において読み込んで生成される画像データである。左モニタ用画像データの基準位置cは、フロントガラス22の略中央に設定されている(図7参照)。
【0048】
右ドア警告画像データは、運転席ドアと右側後部ドアの少なくとも一方においてロックされていない信号(オフ信号)がドア開閉検知装置32からECU20に出力された場合に、ECU20において生成される画像データである。かかる画像データは、ドアが開いている(ドアロックされていない)ことを警告する警告マーク等からなる。右ドア警告画像データの基準位置dは、フロントガラス22の右端の下方に設定されている(図7参照)。
【0049】
左ドア警告画像データは、助手席ドアと左側後部ドアの少なくとも一方においてロックされていない信号がドア開閉検知装置32からECU20に出力された場合に、右ドア警告画像データと同様に、ECU20において生成される警告マーク等からなる画像データである。左ドア警告画像データの基準位置eは、フロントガラス22の左端の下方に設定されている(図7参照)。
【0050】
右席シートベルト警告画像データは、運転席と右側後部座席の少なくとも一方においてシートベルトが装着されていない信号がシートベルト装着検知装置34からECU20に出力された場合に、ECU20において生成される、シートベルトが装着されていない(ベルト部がバックルに固定されていない)ことを警告する警告マーク等からなる画像データである。右席シートベルト警告画像データの基準位置fは、フロントガラス22の右端の下方に設定されている(図7参照)。
【0051】
左席シートベルト警告画像データは、助手席と左側後部座席の少なくとも一方においてシートベルトが装着されていない信号がシートベルト装着検知装置34からECU20に出力された場合に、右席シートベルト警告画像データと同様に、ECU20において生成される警告マーク等からなる画像データである。左席シートベルト警告画像データの基準位置gは、フロントガラス22の左端の下方に設定されている(図7参照)。
【0052】
第1の標準画像データと第2の標準画像データと第3の標準画像データは、一般的な自動車のインストルメントパネルに設置されるスピードメータやタコメータ、オドメータ、燃料計、水温計、自動変速機のレンジ、ナビゲーションシステム62のモニタに映し出される経路案内の画像等の中から選択された画像データであり、且つ互いに異なる画像データである。本実施形態では、第1の標準画像データを、エンジン制御装置58からECU20に送られる車速データやエンジン回転数のデータに基づいてスピードメータやタコメータを示す画像情報とし、第2の標準画像データを、A/T制御装置60からECU20に送られる自動変速機の制御データに基づいてレンジを示す画像情報とし、第3の標準画像データを、ナビゲーションシステム62(制御装置)からECU20に送られる、経路情報や地図情報を含む制御データに基づいて経路案内の画像データを示す画像情報とする。
【0053】
第1の標準画像データの基準位置hは、フロントガラス22の右側の上方に設定されている。第2の標準画像データの基準位置jは、フロントガラス22の右端に設定されている。第3の標準画像データの基準位置lは、フロントガラス22の略中央の下方に設定されている。
【0054】
上述の複数の画像情報は、大別すると、第1乃至は第3の標準画像データからなる、自動車の走行状態に関する情報を示す標準画像情報と、バックモニタ、右モニタ及び左モニタ用画像データや左右のドア警告画像データ、シートベルト警告画像データ等の、自動車の運転の補助に関する情報を示す追加画像情報とに分けられる。
【0055】
ここで、画像情報の優先順位は、バックモニタ用画像データが最も高く設定されて、右モニタ用画像データ、左モニタ用画像データ、右ドア警告画像データ、左ドア警告画像データ、右席シートベルト警告画像データ、左席シートベルト警告画像データ、第1の標準画像データ、第2の標準画像データ、第3の標準画像データの順に低く設定されている。
【0056】
要するに、追加画像情報の優先順位が標準画像情報の優先順位よりも高く設定されており、フロントガラス22上で追加画像情報の表示位置と標準画像情報の表示位置とが重なると、ECU20は、追加画像情報の表示位置を当該表示位置に設定し、標準画像情報の表示位置を当該表示位置と重ならない位置に変更する。
【0057】
このような自動車用ヘッドアップディスプレイ10を用いて画像情報をフロントガラス22上に表示する処理の手順について、図3〜6を参照しつつ説明する。図3〜6に記載の「S」は「ステップ」の簡略表記である。
【0058】
なお、本実施形態のECU20は、イグニッションスイッチをオンすると、図3〜6に示される処理を実行し、イグニッションスイッチをオフすると、図3〜6に示される処理を終了するようにプログラミングされている。
【0059】
先ず、図3のS100においてECU20は、エンジン制御装置58やA/T制御装置60、ナビゲーションシステム62の各データに基づいて、スピードメータ及びタコメータを示す第1の標準画像データと、自動変速機のレンジを示す第2の標準画像データと、経路案内の画像データを示す第3の標準画像データとを、それぞれ生成する。
【0060】
S102においてECU20は、第1の標準画像データと第2の標準画像データと第3の標準画像データ(以下、各標準画像データを略称して「標準画像」とも言う)におけるフロントガラス22上の各表示位置を仮設定する。S102では、標準画像をフロントガラス22に初期表示する位置(デフォルト位置)を設定するので、図2の制御マップに記された基準位置が採用される。即ち、第1の標準画像データの表示位置を位置hに、第2の標準画像データの表示位置を位置jに、第3の標準画像データの表示位置を位置lに、それぞれ仮設定する。
【0061】
ところで、上述の表示位置h,j,lは、一般に運転者が運転中に画像情報を見易い位置を考慮して設定されている。
しかしながら、表示位置hは、サンバイザ46が開くと、プロジェクタ12からフロントガラス22上への画像情報の照射がサンバイザ46によって遮られる位置にある。また、表示位置jは、特に対向車のヘッドライトの焦点が集中し易く、ヘッドライトが当たると画像情報の視認性が低下する位置にある。更に、表示位置lは、ワイパ44の動作による残像効果が大きいワイパ44の基端部付近にあり、ワイパ44が動くと画像情報の視認性が低下する位置にある。
【0062】
そこで、ワイパ44が作動したり、サンバイザ46が開いたり、ヘッドライトが点灯したりする等、妨害物の少なくとも一つが作動する場合には、画像情報(標準画像)の表示が妨害物によって妨害されるのを解消すべく、ECU20は、仮設定した画像情報の表示位置の移動を設定をする処理を行う(S104〜S112及びS126参照)。
【0063】
つまり、S104においてECU20は、妨害物検知装置群18を構成するワイパ動き出し検知装置38とサンバイザ開閉検知装置40とヘッドライト動作検知装置42との各検知結果を読み込み、ワイパ44の動作状態とサンバイザ46の開閉状態とヘッドライトの点灯状態とのそれぞれについて検知する。
【0064】
ECU20は、S106においてS104の検知結果に基づき、ワイパ44、サンバイザ46及びヘッドライトが各表示位置h,j,lにそれぞれ重なるか否かを判断する。重ならない標準画像については(S106:NO(以下、Nと略記する))、S102において仮設定した表示位置h(j,l)を標準画像の表示位置として設定する(S108)。
【0065】
これにより、ECU20は、表示位置h(j,l)を設定した標準画像の表示用データをプロジェクタ12に送信する。そして、プロジェクタ12がかかる表示用データに基づく標準画像をフロントガラス22上に照射することで、運転者等は、フロントガラス22上の表示位置h(j,l)に表示された標準画像を視認することが可能となる。
【0066】
一方、仮設定した表示位置h(j,l)にワイパ44、サンバイザ46又は対向車のヘッドライトが重なる標準画像がある場合には(S106:YES(以下、Yと略記する))、仮設定した表示位置h(j,l)の移動を設定する(S110)。特に本実施形態では、仮設定した表示位置h(j,l)を移動する位置が予め設定されている(図2,7参照)。
【0067】
具体的に、第1の標準画像データの表示位置hを移動(変更設定)する位置iは、サンバイザ46が開いた状態でサンバイザ46と重ならない位置にあり、フロントガラス22の略中央の上方に設定されている。また、第2の標準画像データの表示位置jを移動する位置kは、対向車のヘッドライトの焦点から外れ易い位置にあり、フロントガラス22の略中央に設定されている。更に、第3の標準画像データの表示位置lを移動する位置mは、ワイパ44の基端部分から外れた位置にあり、フロントガラス22の略中央に設定されている。
【0068】
次に、ECU20は、S112において表示位置の移動を設定した画像があるか否かを判断し、かかる画像がある場合には(S112:Y)、処理を後述の移動処理に移行する(S126)。表示位置の移動を設定した画像がない場合には(S112:N)、処理をS114に移行する。
【0069】
S114においてECU20は、状態検知装置群16を構成するウインカ操作検知装置28とバックギア動作検知装置30とドア開閉検知装置32とシートベルト装着検知装置34との何れの出力が変化したか否かを判断する。
【0070】
出力の変化を検知するのは(S114:Y)、以下の(1)、(2)の場合が考えられる。
(1) 右又は左ウインカのオン信号、バックギアの入力信号、右又は左のドアロックのオフ信号、若しくは右又は左のシートベルト装着のオフ信号の少なくとも一つが検知されたことにより、画像を追加する必要が生じた場合。
(2) 右又は左ウインカのオフ信号、バックギアの入力オフの信号、右又は左のドアロックのオン信号、若しくは右又は左のシートベルト装着のオン信号の少なくとも一つが検知されたことにより、画像を消去する必要が生じた場合。
【0071】
従って、上記(1)、(2)の何れの場合の信号が入力されたかをS116において検知し、(1)の場合には(S116:追加)、S118の追加処理に移行して、(2)の場合には(S116:消去)、S120の消去処理に移行する。そして、追加処理または消去処理を実行すると、処理をS112に移行する。
【0072】
一方、状態検知装置群16の出力が変化しない場合には(S114:N)、S122において、画像情報の表示の妨害物となるワイパ44とサンバイザ46とヘッドライトの動作状態を、ワイパ動き出し検知装置38とサンバイザ開閉検知装置40とヘッドライト動作検知装置42を用いて検知し、妨害物が表示位置に重なる状態にあるか判定する。妨害物が画像情報の表示位置に重なる状態である場合には(S122:Y)、当該表示位置の移動を設定して(S124)、S126の移動処理に移行する。妨害物が画像情報の表示位置に重なる状態にない場合には、処理をS122に移行する。
【0073】
[追加処理]
図3の追加処理に関する詳細が図4に示されている。図4のS128では、図3のS114において状態検知装置群16により検知されたウインカ、バックギア、ドアロック及びシートベルトの検知結果に基づいて、追加する画像を生成する。
【0074】
具体的に、例えば、バックギア動作検知装置30によってバックギアの入力が検知された場合に、ECU20は、S128において、バックカメラ52により映された車両後方の風景を読み込み、バックモニタ用画像データを生成する。
【0075】
また、S130において追加画像の表示位置を仮設定する。バックモニタ用画像データでは、フロントガラス22上に初期に表示する基準位置がaとされているので、ECU20は、表示位置を位置aに仮設定する。
【0076】
S132においてECU20は、S130で仮設定した表示位置が他の画像の表示位置と重なっているか判定する。例えば、バックモニタ用画像データの表示位置aは、フロントガラス22の略中央に位置しているが、サンバイザ46が開いた場合に設定される第1の標準画像データの表示位置iやヘッドライトが点灯した場合に設定される第2の標準画像データの表示位置k、ワイパ44が動いた場合に設定される第3の標準画像データの表示位置mにおける少なくとも一部と重なる位置にある。
【0077】
従って、バックモニタ用画像データの表示位置aが表示位置i,k,mの少なくとも一つと重なっていないと判定した場合には(S132:N)、S130において仮設定した表示位置aを追加画像(バックモニタ用画像データ)の表示位置として設定する(S134)。
【0078】
これにより、ECU20は、図3のS108又はS110において表示位置を設定した標準画像と共に、表示位置aを設定したバックモニタ用画像データの表示用データをプロジェクタ12に送信する。そして、プロジェクタ12が表示用データに基づいて標準画像およびバックモニタ用画像データをフロントガラス22上に照射することで、運転者等は、標準画像データに加え、バックギアの入力に連動して、新たにフロントガラス22上の表示位置aに追加表示されたバックモニタ用画像データを視認することが可能となる。
【0079】
一方、バックモニタ用画像データの表示位置aが表示位置i,k,mの少なくとも一つと重なっていると判定した場合には(S132:Y)、S136において予めECU20のメモリに記憶された画像情報の優先順位に基づき(図2参照)、優先順位の比較を行う。
【0080】
本実施形態では、複数の画像情報の中でバックモニタ用画像データの優先順位が最も高く設定されているため、処理をS138に移行し(S136:Y)、仮設定した表示位置aをバックモニタ用画像データの表示位置として設定する。
【0081】
さらに、ECU20はS140において、他の画像の表示位置の移動を設定する。例えばバックモニタ用画像データと重なる他の画像が、表示位置iに設定された第1の標準画像データである場合に、予めメモリに記憶された移動方向に基づいて、表示位置iをフロントガラス22上で位置aと重ならない位置にある左方向に変更設定する。或いはバックモニタ用画像データと重なる他の画像が、第2の標準画像データまたは第3の標準画像データである場合には、予めメモリに記憶された移動方向に基づいて、それぞれ表示位置kまたは表示位置mをフロントガラス上で位置aと重ならない位置にある右方向に変更設定する。
【0082】
これにより、ECU20が、新たに表示位置を変更設定した標準画像と表示位置aを設定したバックモニタ用画像データとの表示用データをプロジェクタ12に送信して、運転者等は、プロジェクタ12を介して、互いに重ならない位置にある標準画像およびバックモニタ用画像データを視認することが可能となる。
【0083】
なお、上述のS136では、追加画像が、画像情報の優先順位の最も高いバックモニタ用画像データである場合を説明したので、処理をS138、S140に移行した。
しかし、例えば、追加画像が、表示位置を位置aに仮設定されたバックモニタ用画像データと位置cに仮設定された左モニタ用画像データとである場合や、位置eに仮設定された左ドア警告画像データと位置gに仮設定された左席シートベルト画像データとである場合等、同時に複数あって、表示位置が互いに重なる場合がある。
【0084】
このような場合には、S136においてそれら複数の追加画像に関する優先順位の比較を行い、優先順位の低い追加画像については、S142において仮設定した表示位置の移動を設定する。つまり、S132、S136、S140に記された「他の画像」は、標準画像と他の追加画像との何れをも含む。
【0085】
そして、S134、S140又はS142の処理を終えると、処理を図3のS112に移行する。
[移動処理]
図3の移動処理に関する詳細が図5に示されている。図5のS144では、図3のS126において移動処理に移行された画像の移動表示位置を仮設定する。この画像は、表示位置が妨害物と重なることにより図3のS110において移動設定された標準画像、若しくは表示位置が他の画像の表示位置と重なることにより図4のS134、S140又はS142において移動設定された追加画像又は標準画像である。
【0086】
S146においてECU20は、S144で仮設定した移動表示位置が他の画像の表示位置と重なっているか判定する。この移動表示位置が他の表示位置と重なっていないと判定した場合には(S146:N)、移動表示位置をS144で仮設定した画像の表示位置に設定する(S148)。これにより、ECU20は、S148で表示位置が設定された画像情報の表示用データをプロジェクタ12に送信して、プロジェクタ12が当該表示用データに基づく画像情報をフロントガラス22上に照射することで、運転者等は、移動表示位置に表示された画像情報を視認することができる。
【0087】
一方、S146において移動表示位置が他の表示位置と重なっていると判定した場合には(S146:Y)、S150において予めECU20のメモリに記憶された画像情報の優先順位に基づき(図2参照)、優先順位の比較を行う。
【0088】
そして、表示位置が移動表示位置に仮設定された画像情報の優先順位が、他の画像の優先順位よりも高い場合には(S150:Y)、移動表示位置を当該画像の表示位置として設定して(S152)、他の画像の表示位置の移動を設定する(S154)。即ち、他の画像の移動表示位置を予めECU20のメモリに記憶された画像情報の移動方向に基づいて、右方向又は左方向に変更設定する。
【0089】
これにより、ECU20が、表示位置を移動表示位置に設定した画像データとS154において表示位置を変更設定した他の画像データとの表示用データをプロジェクタ12に送信して、運転者等は、プロジェクタ12を介して、互いに重ならない位置にある複数の画像データを視認することが可能となる。
【0090】
また、表示位置を移動表示位置に設定した画像の優先順位が他の画像の優先順位よりも低いと判定された場合には(S150:N)、予めメモリに記憶された画像情報の移動方向に基づいて、移動表示位置の移動を設定する(S156)。そして、S148、S154又はS156の処理を終えると、処理を図3のS112に移行する。
【0091】
[消去処理]
図3のS120の消去処理は、図3のS114において状態検知装置群16により検知されたウインカ、バックギア、ドアロック及びシートベルトの検知結果に基づいて、画像を消去する。
【0092】
つまり、状態検知装置群16の検知結果に基づいて、前述の追加処理(図3のS118、図4参照)により追加された画像は、HUDとして運転中、常時表示される標準画像と異なり、運転を補助する特定の状態に応じて、一時的に表示される画像であるから、この特定の状態が解消されれば、追加画像も消去することとなる。例えば、追加画像が、バックギアの入力に連動して表示されたバックモニタ用画像データである場合に、S114においてバックギア動作検知装置30によってバックギアの入力解除の信号(オフ信号)が検知されると、バックモニタ用画像データの消去処理に移行する(S120)。この画像の消去処理が、図6に詳細に示されている。
【0093】
ECU20はS158において、消去対象の画像の表示位置を設定した際に、かかる表示位置は他の画像の表示位置と重なっていて、図2の画像の優先順位に基づいて、他の画像の表示位置の移動を設定したかを判定する。この消去対象の画像が消去されることに伴い、移動設定した他の画像の表示位置を移動前の表示位置に戻す必要があるからである。
【0094】
消去対象の画像の表示位置の設定時に、他の画像の表示位置の移動を設定していないのであれば(S158:N)、即座に消去対象の画像の表示位置の設定解除を行う(S162)。一方、消去対象の画像の表示位置の設定時に、他の画像の表示位置の移動を設定しているのであれば(S158:Y)、かかる他の画像の表示位置を移動前の表示位置に戻す移動設定をしてから(S160)、消去対象の画像の表示位置の設定を解除する(S162)。そして、処理を図3のS112に移行する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の自動車用ヘッドアップディスプレイ10によれば、状態検知装置群16で検知された自動車の状態に応じて、必要な画像情報が表示される。
また、プロジェクタ12が複数の画像情報をフロントガラス22上に表示する際に、それら画像情報の表示位置が互いに重なる場合には、予め定められた画像情報の優先順位に基づいて、当該表示位置に表示すべき画像情報を自動的に選択する。
【0096】
特に本実施形態において、上述の画像情報の優先順位に基づいて、複数の画像情報が重なる表示位置に表示しない画像情報については、当該表示位置に重ならない別の表示位置を自動的に設定して、表示する。
【0097】
また、本実施形態では、妨害物検知装置群18が設けられ、フロントガラス22上で画像情報の表示を妨害する妨害物が検知された場合には、画像情報の表示位置を自動的に変更設定する。
【0098】
さらに、本実施形態では、複数の画像情報を、自動車の走行状態に関する情報を示す標準画像情報と、自動車の運転の補助に関する情報を示す追加画像情報とにクラス分けをし、更にまた、追加画像情報の優先順位を標準画像情報の優先順位よりも高く設定している。これにより、画像情報の優先順位が系統立てて設定され、運転に大きな支障を来たすことなく、必要な画像情報がフロントガラス22上に確実に表示される。
【0099】
更にまた、本実施形態では、画像情報の表示位置の移動を設定(表示位置の変更設定)するに際して、フロントガラス22上における表示位置の移動方向を右又は左に定めたことから、一般に、上下方向(縦方向)よりも左右方向(横方向)の寸法が大きいフロントガラス22の形状特性を活かして、運転者の運転視野を著しく狭めることなく、複数の画像情報を表示することが出来る。
【0100】
それ故、本実施形態の自動車用ヘッドアップディスプレイ10によれば、フロントガラス22上の表示位置に表示すべき画像情報が確実に表示され、しかもかかる画像情報は、運転者その他の乗員が各画像情報を表示位置に表示するための特別な操作を行わなくとも、自動的に表示されることから、操作の煩雑性が回避されて、運転の集中効果や乗員のリラックス効果等の向上が図られるのである。
【0101】
なお、プロジェクタ12は、本発明の表示手段に相当する。また、状態検知装置群16は、本発明の状態検知手段に相当する。更に、妨害物検知装置群18は、本発明の妨害物検知手段に相当する。更にまた、表示制御装置(ECU)20は、本発明の制御手段に相当する。
【0102】
また、S132及びS146の処理は、本発明の第1の重なり判定手段に相当する。更に、S136、S138、S150及びS152の処理は、本発明の第1の位置制御手段に相当する。更にまた、S106及びS122の処理は、本発明の第2の重なり判定手段に相当する。また、S110及びS124の処理は、本発明の第2の位置制御手段に相当する。
【0103】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。
【0104】
例えば、前記実施形態では、複数の画像情報として、バックモニタ用画像データや左右のモニタ用画像データ、左右のドア警告画像データ、左右席のシートベルト警告画像データからなる追加画像情報と、第1乃至は第3の標準画像データからなる標準画像情報とを採用し、追加画像情報の優先順位を標準画像情報の優先順位よりも高く設定していた。
【0105】
しかし、これら画像情報の内容や標準画像情報と追加画像情報との分類(クラス分け)、画像情報の優先順位に加えて、画像情報をフロントガラス22上に初期に表示する表示位置(基準位置)や移動を設定する表示位置(移動表示位置)等は、使用者の視力や体格等を含む各種の要求特性やフロントガラスの形状やインストルメントパネルにおけるプロジェクタの設置スペース等の自動車の構造などに応じて、適宜に設定されるものであり、前記実施形態で示した態様に限定されるものでない。
【0106】
具体的に、例えば、ナビゲーションシステム62による経路案内の画像データが標準画像情報に分類されていたが、追加画像情報に分類させることも可能である。
また、複数の画像情報を分類しなかったり、三つ以上に分類したり、更に標準画像情報の優先順位を追加画像情報の優先順位よりも高く設定することも勿論可能である。
【0107】
また、前記実施形態のフロントガラス22には、ECU20による電圧制御部14の制御に応じて光透過率が変化する、光透過率可変ガラスが採用されていたが、例えば、通常のフロントガラス用ガラスに酸化金属膜を蒸着する等して光透過率が予め下げられた半透過ミラーを採用しても良い。
【0108】
また、前記実施形態では、一つのプロジェクタ12から複数の画像情報を一度に照射することで、複数の画像情報をフロントガラス22上の各位置に表示するようにしていたが、例えば、各画像情報に対応したプロジェクタを複数設けて、ECU20が各プロジェクタを制御することにより、プロジェクタ毎に画像情報が表示されるようにしても良い。
【0109】
さらに、上述のようにプロジェクタを複数設けて、画像情報の表示位置の移動を設定する場合には、所定のプロジェクタから照射された画像情報を別のプロジェクタから照射するように、ECU20において制御したり、或いは、各プロジェクタのインストルメントパネルにおける姿勢状態を変更することが可能な駆動モータを設けて、かかる駆動モータをECU20で制御して、プロジェクタの姿勢状態を変更したりすることで、画像情報の表示位置を変更することも可能である。
【0110】
また、前記実施形態では、表示位置が互いに重なる画像情報において、優先順位の低い画像情報が、当該表示位置と異なる位置で表示されるようになっていたが、かかる優先順位の低い画像情報について消去処理を実行し、画像情報を消去しても良い。
【0111】
また、前記実施形態では、イグニッションスイッチのオン・オフに連動して図3〜6に示される処理を実行又は終了するようにしていたが、例えば、「車速が0km/h以上の時」や「イグニッションスイッチがオンで、ヘッドライトの未使用時(つまり、朝昼の運転時)」等、任意の条件で処理を実行したり、所定の処理間隔Δτで処理が実行又は終了したりするようにしても良い。
【0112】
加えて、前記実施形態では、本発明の車両用ヘッドアップディスプレイを、自動車に適用したものの具体例が示されていたが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、電車やその他の車両に適用可能であることは、勿論である。
【符号の説明】
【0113】
10…自動車用ヘッドアップディスプレイ、12…プロジェクタ、14…電圧制御部、16…状態検知装置群、18…妨害物検知装置群、20…表示制御装置(ECU)、22…フロントガラス、28…ウインカ検知装置、30…バックギア検知装置、32…ドア開閉検知装置、34…シートベルト装着検知装置、38…ワイパ動き出し検知装置、40…サンバイザ開閉検知装置、42…ヘッドライト検知装置、58…エンジン制御装置、60…A/T検知装置、62…ナビゲーションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラス上に画像情報を表示する表示手段と、
前記車両の各部の状態を検知する状態検知手段と、
前記状態検知手段によって検知された前記車両の各部の状態に基づいて、一又は複数の前記画像情報を生成すると共に、予め設定された基準位置に基づいて該画像情報を前記フロントガラス上に表示する表示位置を設定し、該画像情報を該表示手段を介して該表示位置に表示させる制御手段とを備えた車両用ヘッドアップディスプレイであって、
前記制御手段は、
当該制御手段が前記基準位置に基づいて前記複数の画像情報の各表示位置を設定する際に、前記フロントガラス上においてそれら複数の画像情報の各表示位置が互いに重なるか否かを判定する第1の重なり判定手段と、
前記第1の重なり判定手段によって前記複数の画像情報の各表示位置が互いに重なると判定した場合に、予め定められた優先順位に基づいて、それら複数の画像情報の中から優先順位の最も高い画像情報を選択して該表示位置に表示する第1の位置制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第1の位置制御手段は、前記複数の画像情報の中から前記優先順位の低い画像情報を選択してかかる優先順位の低い画像情報の表示位置を優先順位の高い他の画像情報の表示位置と重ならない位置に変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記複数の画像情報は、前記車両の走行状態に関する情報を示す標準画像情報と、該車両の運転の補助に関する情報を示す追加画像情報とを含み、当該追加画像情報は当該標準画像情報よりも前記優先順位を高く設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記フロントガラス上において前記画像情報の前記表示位置への表示を妨害する妨害物があるか否かを検知する妨害物検知手段を備え、
前記制御手段は、
前記妨害物検知手段によって前記フロントガラス上に前記妨害物があると検知した場合に、該フロントガラス上において前記画像情報の表示位置と該妨害物とが互いに重なるか否かを判定する第2の重なり判定手段と、
前記第2の重なり判定手段によって前記フロントガラス上において前記画像情報の表示位置が前記妨害物に重なったと判定した場合に、該画像情報の表示位置を該妨害物と重ならない位置に変更する第2の位置制御手段とを備え、
前記第1の重なり判定手段は、前記第2の位置制御手段によって前記表示位置が位置変更された前記画像情報に対しても、他の該画像情報と表示位置が重なるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−79345(P2011−79345A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230702(P2009−230702)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】